半導体デバイスの製造方法
【課題】 半導体デバイスに不良を発生させることなく、接着シートにバリを発生させることなく、更に先ダイシング法で分割された半導体デバイスでも容易に接着剤を配設可能な半導体デバイスの製造方法を提供することである。
【解決手段】 裏面に接着剤が配設された半導体デバイスの製造方法であって、表面に格子状に設けられた分割予定ラインによって区画された各領域に半導体回路素子がそれぞれ形成された半導体ウエーハを、該分割予定ラインに沿って個々の半導体デバイスへと分割する分割ステップと、該分割ステップの前又は後に、1個の半導体デバイスを収容する収容穴を複数有する収容トレイの該収容穴底部に接着剤を配設する接着剤配設ステップと、該分割ステップで分割された個々の半導体デバイスの表面を上にして該収容穴中へ半導体デバイスを収容するとともに、該接着剤を半導体デバイスの裏面に接着する接着ステップと、を具備したことを特徴とする。
【解決手段】 裏面に接着剤が配設された半導体デバイスの製造方法であって、表面に格子状に設けられた分割予定ラインによって区画された各領域に半導体回路素子がそれぞれ形成された半導体ウエーハを、該分割予定ラインに沿って個々の半導体デバイスへと分割する分割ステップと、該分割ステップの前又は後に、1個の半導体デバイスを収容する収容穴を複数有する収容トレイの該収容穴底部に接着剤を配設する接着剤配設ステップと、該分割ステップで分割された個々の半導体デバイスの表面を上にして該収容穴中へ半導体デバイスを収容するとともに、該接着剤を半導体デバイスの裏面に接着する接着ステップと、を具備したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面に接着剤が配設された半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイス技術においては、デバイスの高密度化や小型化を達成するために、MCP(Multi Chip Package)、SiP(System in Package)等の複数の半導体デバイスを積層(スタック)した積層型パッケージが有効に利用されている。
【0003】
このような積層型パッケージを構成する半導体デバイスは、裏面にDAF(Die Attach Film)と呼ばれるダイボンディング用の接着シートが貼られており、この接着シートで半導体デバイスの積層状態を保持している。
【0004】
この接着シートはリードフレームに半導体デバイス(半導体チップ)をマウントする際に、従来から使用されている銀ペースト樹脂等の接着剤に替わるものとして広く使用されている。
【0005】
接着シートが裏面に貼着された半導体デバイスは一般的に以下の方法で製造される。まず、表面に格子状に設けられた複数の分割予定ラインによって区画された各領域に半導体デバイスが形成された半導体ウエーハの裏面を研削して薄化する。
【0006】
その後、薄化された半導体ウエーハの裏面に接着シートを貼着してから、整形の切削ブレードで半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切削するとともに接着シートも切削して分割することで、裏面に接着シートが配設された半導体デバイスを製造する。
【0007】
一方、近年の電子機器の軽薄短小化に伴い、半導体デバイスの厚さを数10μm以下へと薄く形成することが望まれている。このような薄い半導体デバイスを形成する方法として、ウエーハの表面側にデバイスの仕上がり厚さに相当する切削溝を形成し、その後、ウエーハの裏面を研削して裏面側から切削溝を表出させることで半導体ウエーハを個々の半導体デバイスへと分割する、所謂先ダイシング法(Dicing Before Grinding)が特開平11−40520号公報で提案され、広く採用されつつある。
【0008】
先ダイシング法では、半導体ウエーハの裏面を研削して個々の半導体デバイスへと分割するため、半導体デバイスへと分割する前に接着シートを裏面に貼着しておくことができない。
【0009】
そこで、分割された各デバイスが保護テープによって一体的に支持された状態の半導体ウエーハ裏面側にDAF等の接着シートを配設した後、保護テープを除去して接着シートを切断することで、裏面に接着シートが配設された半導体デバイスを形成する。接着シートの切断には、例えば特開2002−118081号公報に開示されたようなレーザビームを照射して接着シートを溶断する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−40520号公報
【特許文献2】特開2002−118081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述した一般的な方法のように、切削ブレードで半導体ウエーハと接着シートとを同時に切削すると、切削ブレードに接着シートが絡みつき、切削ブレードに目詰まり等の不具合を生じさせ、半導体ウエーハから切削されて形成された半導体デバイスには欠けやクラック等の不良が生じてしまう。また、接着シートにはひげ状のバリが発生してワイヤーボンディング時にこのバリが断線の原因となる。
【0012】
また、上述した先ダイシング法を採用した場合には、各デバイスが保護テープによって支持された状態で搬送等のハンドリングを行うと、保護テープが撓み各デバイス間の間隔がまちまちになったり、切削溝が曲がったりする。その後、裏面側にDAF等の接着シートを配設した後、切削溝を介してレーザビームを照射して接着シートを溶断する。
【0013】
しかし、切削溝が曲がったりしているため、切削溝を介してレーザビームを照射することが困難であり、先ダイシング法では裏面に接着シートが配設された半導体デバイスを製造することは困難であるという問題がある。
【0014】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体デバイスに不良を発生させることなく、接着シートにバリを発生させることなく、更に、先ダイシング法で分割された半導体デバイスでも裏面に容易に接着シートを配設できる半導体デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によると、裏面に接着剤が配設された半導体デバイスの製造方法であって、表面に格子状に設けられた分割予定ラインによって区画された各領域に半導体回路素子がそれぞれ形成された半導体ウエーハを、該分割予定ラインに沿って個々の半導体デバイスへと分割する分割ステップと、該分割ステップの前又は後に、1個の半導体デバイスを収容する収容穴を複数有する収容トレイの該収容穴底部に接着剤を配設する接着剤配設ステップと、該分割ステップで分割された個々の半導体デバイスの表面を上にして該収容穴中へ書く半導体デバイスを収容するとともに、該接着剤を半導体デバイスの裏面に接着する接着ステップと、を具備したことを特徴とする半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0016】
好ましくは、前記接着剤は加熱によって接着性を発現する接着剤から構成され、前記接着ステップを実施するのと同時に、又は前記接着ステップを実施する前に該接着剤を加熱する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、分割された半導体デバイスを収容トレイに収容する際に、半導体デバイス裏面に接着剤が貼着される。従って、切削ブレードで半導体ウエーハとともに接着シートを切削する必要が無いため、切削ブレードが接着シートを切削することに起因する半導体デバイスの不良やバリの発生を防止できる。更に、先ダイシング法で分割された半導体デバイスでもその裏面に容易に接着剤を配設できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】半導体ウエーハの表面側斜視図である。
【図2】図2(A)は切削溝形成ステップの説明図、図2(B)は切削溝が形成された半導体ウエーハの断面図である。
【図3】切削溝が形成された半導体ウエーハの表面側斜視図である。
【図4】図4(A)は半導体ウエーハの表面に保護テープを貼着する様子を示す斜視図、図4(B)は半導体ウエーハの表面に保護テープが貼着された状態の斜視図である。
【図5】図5(A)は半導体ウエーハの裏面を研削する切削溝表出ステップの説明図、図5(B)は研削により半導体ウエーハの裏面に切削溝が表出された状態の断面図、図5(C)は半導体ウエーハの裏面に切削溝が表出された状態の半導体ウエーハの斜視図である。
【図6】ピックアップ用シート配設ステップを示す説明図である。
【図7】保護テープ除去ステップを示す説明図である。
【図8】ピックアップ工程を示す説明図である。
【図9】収容トレイの斜視図である。
【図10】接着剤配設ステップを示す斜視図である。
【図11】接着性発現ステップを示す斜視図である。
【図12】接着ステップを示す断面図である。
【図13】裏面に接着剤が接着された半導体デバイスのピックアップステップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、半導体ウエーハ2の表面側斜視図が示されている。半導体ウエーハ2は、例えば、厚さが700μmのシリコンウエーハからなっており、表面2aには複数の分割予定ライン(ストリート)4が格子状に形成されている。そして、半導体ウエーハ2の表面2aには、格子状に形成された複数の分割予定ライン4によって区画された各領域にそれぞれIC、LSI等のデバイス6が形成されている。
【0020】
本発明実施形態の半導体デバイスの製造方法では、まず、半導体ウエーハ2を分割予定ライン4に沿って個々の半導体デバイス6に分割する分割ステップを実施する。以下の説明では、この分割ステップを先ダイシング法により実施する実施形態について説明する。
【0021】
この先ダイシング法では、まず切削溝形成ステップを実施する。即ち、ウエーハ2の表面2aに形成された分割予定ラインに沿って所定深さ(各デバイスの仕上がり厚さに相当する深さ)の切削溝を形成する。
【0022】
この切削溝形成ステップは、図2(A)に示す切削装置10を用いて実施する。図2(A)に示す切削装置10は、吸引保持手段を備えX軸方向に移動可能なチャックテーブル8と、切削ユニット12と、切削ユニット12と一体的にY軸方向及びZ軸方向に移動可能なアライメントユニット14を含んでいる。
【0023】
切削ユニット12は、図示しないモータにより回転駆動されるスピンドル16と、スピンドル16の先端部に装着された切削ブレード18を備えている。アライメントユニット14は、CCDカメラ等の撮像手段20を備えている。
【0024】
切削溝形成ステップを実施するには、チャックテーブル8上に半導体ウエーハ2をその表面2aを上にして載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、ウエーハ2をチャックテーブル8上に保持する。
【0025】
このようにして、ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル8は、図示しない切削送り機構によって撮像手段20の直下に位置付けられる。チャックテーブル8が撮像手段20の直下に位置付けられると、撮像手段20及び図示しない制御手段によって、ウエーハ2に切削溝を形成すべき切削領域を検出するアライメント作業を実施する。
【0026】
すなわち、撮像手段20及び図示しない制御手段は、ウエーハ2の第1の方向に形成されている分割予定ライン4と、切削ブレード18との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、切削領域のアライメントを遂行する。更に、ウエーハ2に形成されている上記第1の方向に対して直角な第2の方向に伸びる分割予定ライン4に対しても、同様に切削領域のアライメントが遂行される。
【0027】
このようなアライメント実施後、ウエーハ2を保持したチャックテーブル8を切削領域の切削開始位置に移動する。そして、切削ブレード18を図2(A)において矢印21で示す方向に回転しつつ下方に移動して所定量の切り込み送りを実施する。この切り込み送り量は、切削ブレード18の外周縁がウエーハ2の表面2aからデバイスの仕上がり厚さに相当する深さ位置(例えば50μm)に設定される。
【0028】
このようにして、切削ブレード18の切り込み送りを実施したならば、切削ブレード18を回転しつつチャックテーブル8を図2(A)においてX軸方向、すなわち矢印X1で示す方向に切削送りすることによって、図2(B)に示すように、分割予定ライン4に沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さ(例えば50μm)の切削溝22が形成される(切削溝形成ステップ)。この切削溝形成ステップをウエーハ2に形成された全ての分割予定ライン4に沿って実施する。その結果得られたウエーハ2の上面側斜視図が図3に示されている。
【0029】
切削溝形成ステップを実施後に、図4(A)に示すように半導体ウエーハ2の表面2a(デバイス6が形成されている面)に研削用の保護テープ24を貼着する。保護テープ24としては、例えば厚さが150μmのポリオレフィンテープが用いられる。ウエーハ2の表面2aに保護テープ24を貼着した状態が図4(B)に示されている。
【0030】
次に、表面に保護テープ24を貼着したウエーハ2の裏面2bを研削し、切削溝22を裏面2bに表出させてウエーハ2を個々のデバイス6に分割する。この切削溝表出ステップは、図5(A)に示すように、チャックテーブル28と研削ユニット30を備えた研削装置26によって実施する。研削ユニット30は、スピンドル33の先端部に固定されたマウンタ32と、このマウンタ32にボルト34により固定された研削砥石36とから構成される。
【0031】
この切削溝表出ステップは、チャックテーブル28上にウエーハ2の裏面2bを上にして保持し、例えば、チャックテーブル28を矢印29で示す方向に300rpmで回転しつつ、研削砥石36を矢印31で示す方向に6000rpmで回転して、ウエーハ2の裏面2bに研削砥石36を接触させることによりウエーハ2の裏面2bを研削して実施する。この研削は、図5(B)に示すように、切削溝22がウエーハ2の裏面2bに表出するまで実施する。
【0032】
このように切削溝22が表出するまで研削することによって、図5(C)に示すように、ウエーハ2は個々のデバイス6に分割される。尚、分割された複数のデバイス6は、その表面2aに保護テープ24が貼着されているので、ばらばらにはならずウエーハ2の形態が維持される。
【0033】
半導体ウエーハを個々の半導体デバイスに分割する分割ステップは、上述した先ダイシング法に限定されるものではなく、様々な分割方法を採用可能である。例えば、切削ブレードを使用した通常のダイシング方法、レーザビームによるフルカット、レーザビームでウエーハ内部に変質層を形成後に外力を付与して分割する方法、レーザビームでアブレーション加工後に外力を付与して分割する方法、スクライブ加工後にブレーキングで分割する方法等を採用可能である。
【0034】
分割ステップ実施後、図6に示すように個々の半導体デバイス6に分割された半導体ウエーハ2の裏面にピックアップ用シート36を貼着する。特に図示しないが、ピックアップ用シート36の外周部はハンドリングを容易にするために環状フレームに装着されるのが好ましい。
【0035】
ピックアップ用シート配設ステップを実施後、図7に示すように半導体ウエーハ2の表面から保護テープ24を剥離する。次いで、図8に示すように、ピックアップ装置のピックアップコレット38でピックアップ用シート36から半導体デバイスをピックアップする。
【0036】
尚、このピックアップステップでは、エキスパンド装置にピックアップ用シート36を搭載し、ピックアップ用シート36を半径方向に拡張して半導体デバイス6と6の間の間隙を広げてからピックアップするのが好ましい。
【0037】
次に図9を参照すると、液体DAF(Die Attach Film)を収容する複数の収容穴42を有する収容トレイ40の斜視図が示されている。図10に示すように、液体DAF供給ノズル44から液体DAF46を各収容穴42中に滴下する。
【0038】
液体DAF46はこのままでは接着性を発現しないが、図11に示すようにランプヒータ48で加熱することにより硬化するとともに接着性を発現してDAF46aとなる。ランプヒータ48にかわって収容トレイ40の加熱又は収容トレイ40周りの雰囲気を加熱することにより液体DAFを硬化させて接着性を発現するようにしてもよい。
【0039】
上述した収容トレイ40の収容穴42中に液体DAF46を滴下して硬化させる実施形態にかわって、収容トレイ40の各収容穴42中にチップサイズにカットされたDAFを収容するようにしてもよい。
【0040】
このように収容トレイ40の各収容穴42中にDAF46aを配設した後、図8に示すピックアップステップでピックアップコレット38によりピックアップした半導体ウエーハ6を、図12の矢印Aに示すように各収容穴42中に収容する。
【0041】
収容穴42中にはDAF46aが配設されているため、半導体デバイス6の裏面にDAF46aが接着される。よって、図13に示すように、ピックアップコレット38で半導体デバイス6を矢印Bに示すように収容トレイ40からピックアップすると、裏面にDAF46aが接着された半導体デバイス6を得ることができる。
【0042】
各収容穴42の底面及び側面にはテフロンコーティングが施されていることが好ましい。尚、テフロンはデュポン社の登録商標であり、普通名称はポリ4フッ化エチレンである。このように収容穴42の底面及び側面にテフロンコーティングを施すことにより、図13に示すピックアップステップで、DAF46aは収容穴42の底面から容易に剥離されて半導体デバイス6の裏面に接着され易くなる。
【符号の説明】
【0043】
2 半導体ウエーハ
6 半導体デバイス
22 切削溝
24 保護テープ
36 ピックアップ用シート
38 ピックアップコレット
40 収容トレイ
42 収容穴
46 液体DAF
46a DAF
48 ランプヒータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面に接着剤が配設された半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイス技術においては、デバイスの高密度化や小型化を達成するために、MCP(Multi Chip Package)、SiP(System in Package)等の複数の半導体デバイスを積層(スタック)した積層型パッケージが有効に利用されている。
【0003】
このような積層型パッケージを構成する半導体デバイスは、裏面にDAF(Die Attach Film)と呼ばれるダイボンディング用の接着シートが貼られており、この接着シートで半導体デバイスの積層状態を保持している。
【0004】
この接着シートはリードフレームに半導体デバイス(半導体チップ)をマウントする際に、従来から使用されている銀ペースト樹脂等の接着剤に替わるものとして広く使用されている。
【0005】
接着シートが裏面に貼着された半導体デバイスは一般的に以下の方法で製造される。まず、表面に格子状に設けられた複数の分割予定ラインによって区画された各領域に半導体デバイスが形成された半導体ウエーハの裏面を研削して薄化する。
【0006】
その後、薄化された半導体ウエーハの裏面に接着シートを貼着してから、整形の切削ブレードで半導体ウエーハを分割予定ラインに沿って切削するとともに接着シートも切削して分割することで、裏面に接着シートが配設された半導体デバイスを製造する。
【0007】
一方、近年の電子機器の軽薄短小化に伴い、半導体デバイスの厚さを数10μm以下へと薄く形成することが望まれている。このような薄い半導体デバイスを形成する方法として、ウエーハの表面側にデバイスの仕上がり厚さに相当する切削溝を形成し、その後、ウエーハの裏面を研削して裏面側から切削溝を表出させることで半導体ウエーハを個々の半導体デバイスへと分割する、所謂先ダイシング法(Dicing Before Grinding)が特開平11−40520号公報で提案され、広く採用されつつある。
【0008】
先ダイシング法では、半導体ウエーハの裏面を研削して個々の半導体デバイスへと分割するため、半導体デバイスへと分割する前に接着シートを裏面に貼着しておくことができない。
【0009】
そこで、分割された各デバイスが保護テープによって一体的に支持された状態の半導体ウエーハ裏面側にDAF等の接着シートを配設した後、保護テープを除去して接着シートを切断することで、裏面に接着シートが配設された半導体デバイスを形成する。接着シートの切断には、例えば特開2002−118081号公報に開示されたようなレーザビームを照射して接着シートを溶断する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−40520号公報
【特許文献2】特開2002−118081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上述した一般的な方法のように、切削ブレードで半導体ウエーハと接着シートとを同時に切削すると、切削ブレードに接着シートが絡みつき、切削ブレードに目詰まり等の不具合を生じさせ、半導体ウエーハから切削されて形成された半導体デバイスには欠けやクラック等の不良が生じてしまう。また、接着シートにはひげ状のバリが発生してワイヤーボンディング時にこのバリが断線の原因となる。
【0012】
また、上述した先ダイシング法を採用した場合には、各デバイスが保護テープによって支持された状態で搬送等のハンドリングを行うと、保護テープが撓み各デバイス間の間隔がまちまちになったり、切削溝が曲がったりする。その後、裏面側にDAF等の接着シートを配設した後、切削溝を介してレーザビームを照射して接着シートを溶断する。
【0013】
しかし、切削溝が曲がったりしているため、切削溝を介してレーザビームを照射することが困難であり、先ダイシング法では裏面に接着シートが配設された半導体デバイスを製造することは困難であるという問題がある。
【0014】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体デバイスに不良を発生させることなく、接着シートにバリを発生させることなく、更に、先ダイシング法で分割された半導体デバイスでも裏面に容易に接着シートを配設できる半導体デバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によると、裏面に接着剤が配設された半導体デバイスの製造方法であって、表面に格子状に設けられた分割予定ラインによって区画された各領域に半導体回路素子がそれぞれ形成された半導体ウエーハを、該分割予定ラインに沿って個々の半導体デバイスへと分割する分割ステップと、該分割ステップの前又は後に、1個の半導体デバイスを収容する収容穴を複数有する収容トレイの該収容穴底部に接着剤を配設する接着剤配設ステップと、該分割ステップで分割された個々の半導体デバイスの表面を上にして該収容穴中へ書く半導体デバイスを収容するとともに、該接着剤を半導体デバイスの裏面に接着する接着ステップと、を具備したことを特徴とする半導体デバイスの製造方法が提供される。
【0016】
好ましくは、前記接着剤は加熱によって接着性を発現する接着剤から構成され、前記接着ステップを実施するのと同時に、又は前記接着ステップを実施する前に該接着剤を加熱する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、分割された半導体デバイスを収容トレイに収容する際に、半導体デバイス裏面に接着剤が貼着される。従って、切削ブレードで半導体ウエーハとともに接着シートを切削する必要が無いため、切削ブレードが接着シートを切削することに起因する半導体デバイスの不良やバリの発生を防止できる。更に、先ダイシング法で分割された半導体デバイスでもその裏面に容易に接着剤を配設できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】半導体ウエーハの表面側斜視図である。
【図2】図2(A)は切削溝形成ステップの説明図、図2(B)は切削溝が形成された半導体ウエーハの断面図である。
【図3】切削溝が形成された半導体ウエーハの表面側斜視図である。
【図4】図4(A)は半導体ウエーハの表面に保護テープを貼着する様子を示す斜視図、図4(B)は半導体ウエーハの表面に保護テープが貼着された状態の斜視図である。
【図5】図5(A)は半導体ウエーハの裏面を研削する切削溝表出ステップの説明図、図5(B)は研削により半導体ウエーハの裏面に切削溝が表出された状態の断面図、図5(C)は半導体ウエーハの裏面に切削溝が表出された状態の半導体ウエーハの斜視図である。
【図6】ピックアップ用シート配設ステップを示す説明図である。
【図7】保護テープ除去ステップを示す説明図である。
【図8】ピックアップ工程を示す説明図である。
【図9】収容トレイの斜視図である。
【図10】接着剤配設ステップを示す斜視図である。
【図11】接着性発現ステップを示す斜視図である。
【図12】接着ステップを示す断面図である。
【図13】裏面に接着剤が接着された半導体デバイスのピックアップステップを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1を参照すると、半導体ウエーハ2の表面側斜視図が示されている。半導体ウエーハ2は、例えば、厚さが700μmのシリコンウエーハからなっており、表面2aには複数の分割予定ライン(ストリート)4が格子状に形成されている。そして、半導体ウエーハ2の表面2aには、格子状に形成された複数の分割予定ライン4によって区画された各領域にそれぞれIC、LSI等のデバイス6が形成されている。
【0020】
本発明実施形態の半導体デバイスの製造方法では、まず、半導体ウエーハ2を分割予定ライン4に沿って個々の半導体デバイス6に分割する分割ステップを実施する。以下の説明では、この分割ステップを先ダイシング法により実施する実施形態について説明する。
【0021】
この先ダイシング法では、まず切削溝形成ステップを実施する。即ち、ウエーハ2の表面2aに形成された分割予定ラインに沿って所定深さ(各デバイスの仕上がり厚さに相当する深さ)の切削溝を形成する。
【0022】
この切削溝形成ステップは、図2(A)に示す切削装置10を用いて実施する。図2(A)に示す切削装置10は、吸引保持手段を備えX軸方向に移動可能なチャックテーブル8と、切削ユニット12と、切削ユニット12と一体的にY軸方向及びZ軸方向に移動可能なアライメントユニット14を含んでいる。
【0023】
切削ユニット12は、図示しないモータにより回転駆動されるスピンドル16と、スピンドル16の先端部に装着された切削ブレード18を備えている。アライメントユニット14は、CCDカメラ等の撮像手段20を備えている。
【0024】
切削溝形成ステップを実施するには、チャックテーブル8上に半導体ウエーハ2をその表面2aを上にして載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより、ウエーハ2をチャックテーブル8上に保持する。
【0025】
このようにして、ウエーハ2を吸引保持したチャックテーブル8は、図示しない切削送り機構によって撮像手段20の直下に位置付けられる。チャックテーブル8が撮像手段20の直下に位置付けられると、撮像手段20及び図示しない制御手段によって、ウエーハ2に切削溝を形成すべき切削領域を検出するアライメント作業を実施する。
【0026】
すなわち、撮像手段20及び図示しない制御手段は、ウエーハ2の第1の方向に形成されている分割予定ライン4と、切削ブレード18との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、切削領域のアライメントを遂行する。更に、ウエーハ2に形成されている上記第1の方向に対して直角な第2の方向に伸びる分割予定ライン4に対しても、同様に切削領域のアライメントが遂行される。
【0027】
このようなアライメント実施後、ウエーハ2を保持したチャックテーブル8を切削領域の切削開始位置に移動する。そして、切削ブレード18を図2(A)において矢印21で示す方向に回転しつつ下方に移動して所定量の切り込み送りを実施する。この切り込み送り量は、切削ブレード18の外周縁がウエーハ2の表面2aからデバイスの仕上がり厚さに相当する深さ位置(例えば50μm)に設定される。
【0028】
このようにして、切削ブレード18の切り込み送りを実施したならば、切削ブレード18を回転しつつチャックテーブル8を図2(A)においてX軸方向、すなわち矢印X1で示す方向に切削送りすることによって、図2(B)に示すように、分割予定ライン4に沿ってデバイスの仕上がり厚さに相当する深さ(例えば50μm)の切削溝22が形成される(切削溝形成ステップ)。この切削溝形成ステップをウエーハ2に形成された全ての分割予定ライン4に沿って実施する。その結果得られたウエーハ2の上面側斜視図が図3に示されている。
【0029】
切削溝形成ステップを実施後に、図4(A)に示すように半導体ウエーハ2の表面2a(デバイス6が形成されている面)に研削用の保護テープ24を貼着する。保護テープ24としては、例えば厚さが150μmのポリオレフィンテープが用いられる。ウエーハ2の表面2aに保護テープ24を貼着した状態が図4(B)に示されている。
【0030】
次に、表面に保護テープ24を貼着したウエーハ2の裏面2bを研削し、切削溝22を裏面2bに表出させてウエーハ2を個々のデバイス6に分割する。この切削溝表出ステップは、図5(A)に示すように、チャックテーブル28と研削ユニット30を備えた研削装置26によって実施する。研削ユニット30は、スピンドル33の先端部に固定されたマウンタ32と、このマウンタ32にボルト34により固定された研削砥石36とから構成される。
【0031】
この切削溝表出ステップは、チャックテーブル28上にウエーハ2の裏面2bを上にして保持し、例えば、チャックテーブル28を矢印29で示す方向に300rpmで回転しつつ、研削砥石36を矢印31で示す方向に6000rpmで回転して、ウエーハ2の裏面2bに研削砥石36を接触させることによりウエーハ2の裏面2bを研削して実施する。この研削は、図5(B)に示すように、切削溝22がウエーハ2の裏面2bに表出するまで実施する。
【0032】
このように切削溝22が表出するまで研削することによって、図5(C)に示すように、ウエーハ2は個々のデバイス6に分割される。尚、分割された複数のデバイス6は、その表面2aに保護テープ24が貼着されているので、ばらばらにはならずウエーハ2の形態が維持される。
【0033】
半導体ウエーハを個々の半導体デバイスに分割する分割ステップは、上述した先ダイシング法に限定されるものではなく、様々な分割方法を採用可能である。例えば、切削ブレードを使用した通常のダイシング方法、レーザビームによるフルカット、レーザビームでウエーハ内部に変質層を形成後に外力を付与して分割する方法、レーザビームでアブレーション加工後に外力を付与して分割する方法、スクライブ加工後にブレーキングで分割する方法等を採用可能である。
【0034】
分割ステップ実施後、図6に示すように個々の半導体デバイス6に分割された半導体ウエーハ2の裏面にピックアップ用シート36を貼着する。特に図示しないが、ピックアップ用シート36の外周部はハンドリングを容易にするために環状フレームに装着されるのが好ましい。
【0035】
ピックアップ用シート配設ステップを実施後、図7に示すように半導体ウエーハ2の表面から保護テープ24を剥離する。次いで、図8に示すように、ピックアップ装置のピックアップコレット38でピックアップ用シート36から半導体デバイスをピックアップする。
【0036】
尚、このピックアップステップでは、エキスパンド装置にピックアップ用シート36を搭載し、ピックアップ用シート36を半径方向に拡張して半導体デバイス6と6の間の間隙を広げてからピックアップするのが好ましい。
【0037】
次に図9を参照すると、液体DAF(Die Attach Film)を収容する複数の収容穴42を有する収容トレイ40の斜視図が示されている。図10に示すように、液体DAF供給ノズル44から液体DAF46を各収容穴42中に滴下する。
【0038】
液体DAF46はこのままでは接着性を発現しないが、図11に示すようにランプヒータ48で加熱することにより硬化するとともに接着性を発現してDAF46aとなる。ランプヒータ48にかわって収容トレイ40の加熱又は収容トレイ40周りの雰囲気を加熱することにより液体DAFを硬化させて接着性を発現するようにしてもよい。
【0039】
上述した収容トレイ40の収容穴42中に液体DAF46を滴下して硬化させる実施形態にかわって、収容トレイ40の各収容穴42中にチップサイズにカットされたDAFを収容するようにしてもよい。
【0040】
このように収容トレイ40の各収容穴42中にDAF46aを配設した後、図8に示すピックアップステップでピックアップコレット38によりピックアップした半導体ウエーハ6を、図12の矢印Aに示すように各収容穴42中に収容する。
【0041】
収容穴42中にはDAF46aが配設されているため、半導体デバイス6の裏面にDAF46aが接着される。よって、図13に示すように、ピックアップコレット38で半導体デバイス6を矢印Bに示すように収容トレイ40からピックアップすると、裏面にDAF46aが接着された半導体デバイス6を得ることができる。
【0042】
各収容穴42の底面及び側面にはテフロンコーティングが施されていることが好ましい。尚、テフロンはデュポン社の登録商標であり、普通名称はポリ4フッ化エチレンである。このように収容穴42の底面及び側面にテフロンコーティングを施すことにより、図13に示すピックアップステップで、DAF46aは収容穴42の底面から容易に剥離されて半導体デバイス6の裏面に接着され易くなる。
【符号の説明】
【0043】
2 半導体ウエーハ
6 半導体デバイス
22 切削溝
24 保護テープ
36 ピックアップ用シート
38 ピックアップコレット
40 収容トレイ
42 収容穴
46 液体DAF
46a DAF
48 ランプヒータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に接着剤が配設された半導体デバイスの製造方法であって、
表面に格子状に設けられた分割予定ラインによって区画された各領域に半導体回路素子がそれぞれ形成された半導体ウエーハを、該分割予定ラインに沿って個々の半導体デバイスへと分割する分割ステップと、
該分割ステップの前又は後に、1個の半導体デバイスを収容する収容穴を複数有する収容トレイの該収容穴底部に接着剤を配設する接着剤配設ステップと、
該分割ステップで分割された個々の半導体デバイスの表面を上にして該収容穴中へ半導体デバイスを収容するとともに、該接着剤を半導体デバイスの裏面に接着する接着ステップと、
を具備したことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記接着剤は加熱によって接着性を発現する接着剤から構成され、
前記接着ステップを実施するのと同時に、又は前記接着ステップを実施する前に該接着剤を加熱するステップを更に具備した請求項1記載の半導体デバイスの製造方法。
【請求項1】
裏面に接着剤が配設された半導体デバイスの製造方法であって、
表面に格子状に設けられた分割予定ラインによって区画された各領域に半導体回路素子がそれぞれ形成された半導体ウエーハを、該分割予定ラインに沿って個々の半導体デバイスへと分割する分割ステップと、
該分割ステップの前又は後に、1個の半導体デバイスを収容する収容穴を複数有する収容トレイの該収容穴底部に接着剤を配設する接着剤配設ステップと、
該分割ステップで分割された個々の半導体デバイスの表面を上にして該収容穴中へ半導体デバイスを収容するとともに、該接着剤を半導体デバイスの裏面に接着する接着ステップと、
を具備したことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項2】
前記接着剤は加熱によって接着性を発現する接着剤から構成され、
前記接着ステップを実施するのと同時に、又は前記接着ステップを実施する前に該接着剤を加熱するステップを更に具備した請求項1記載の半導体デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−181733(P2011−181733A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45246(P2010−45246)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
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