説明

半導体レーザモジュール

【課題】モード競合雑音を抑制できる半導体レーザモジュールを提供する。
【解決手段】主モード181と高次モード182を有する横マルチモード半導体レーザ100と、レンズと、を備える半導体レーザモジュールであって、高次モードの光182が仮想的な点光源からの光であるとした場合に、高次モードの光のニアフィールドパターンおよびファーフィールドパターンから得られる仮想的な点光源の位置180を高次モードの光の発光位置であるとして、半導体レーザとレンズとの距離を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザモジュールに関し、特に、垂直共振器型の面発光型半導体レーザ素子(VCSEL: Vertical Cavity Surface Emitting LASER)と光ファイバとを結合させる半導体レーザモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
VCSELの縦モードはシングルモードであるが、横モードは、シングルモードのものと、マルチモードものがある。この横マルチモードのVCSELを光ファイバと結合させる従来の半導体レーザモジュールでは、主モードの結合が一番強くなるようにしていた。すなわち、半導体レーザモジュールは、VCSELの出射光を受けるためのレンズを内蔵しているが、主モードの結合が一番強くなるようにこのレンズの光学設計を行っていた。
【0003】
図5は、このような従来の半導体レーザモジュールのアイ(Eye)波形を示す図である。このように、従来の半導体レーザモジュールでは、大きいジッタ500が発生していた。これは、従来の半導体レーザモジュールでは、主モードの結合が一番強くなるように設計したレンズを使用していたので、主モードに対して高次モードの結合が悪くなっており、その結果、モード間遷移が起こりにくくなってモード競合雑音が発生し、ジッタが増えるからであると考えられる。
【0004】
なお、このように高次モードの結合が悪くなるとジッタが増えることは、下記非特許文献1に記載されているように既に知られた事項である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL. 19, NO. 6, JUNE 2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、モード競合雑音を抑制できる半導体レーザモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
主モードと高次モードを有する横マルチモード半導体レーザと、レンズと、を備える半導体レーザモジュールであって、
前記高次モードの光が仮想的な点光源からの光であるとした場合に、前記高次モードの光のニアフィールドパターンおよびファーフィールドパターンから得られる仮想的な点光源の位置を高次モードの光の発光位置であるとして、前記半導体レーザと前記レンズとの距離を設定した半導体レーザモジュールが提供される。
【0008】
好ましくは、前記半導体レーザのレーザ光の発光面から前記高次モードの光が出射しているとして前記半導体レーザと前記レンズとを結合させた場合よりも、前記半導体レーザの前記発光面の位置と前記仮想的な点光源の位置との間の距離だけ、前記レンズの焦点距離を短くすると共に前記半導体レーザと前記レンズとの間の距離を近づける。
【0009】
また、好ましくは、前記仮想的な点光源の位置を前記レンズの前記半導体レーザ側の焦点位置とする。
【0010】
また、好ましくは、前記高次モードの光のニアフィールドパターンの径を“a”とし、前記高次モードの光のファーフィールドパターンを形成する前記高次モードの光の拡がり角度を“θ”としたときに、d=a/tanθで定義される距離d程度だけ、前記半導体レーザのレーザ光の発光面から前記半導体レーザの内側の位置を前記仮想的な点光源の位置とする。
【0011】
好ましくは、前記半導体レーザのレーザ光の発光面は、レーザ光出射側の反射鏡の表面である。
【0012】
好ましくは、前記高次モードが複数の高次モードからなる場合には、それぞれのモードの光の前記レンズとの結合効率が前記複数の高次モード間で均一となるように、前記半導体レーザのレーザ光の発光面から前記高次モードの光が出射しているとして前記半導体レーザと前記レンズとを結合させた場合よりも、前記半導体レーザと前記レンズとの間の距離を近づける。
【0013】
また、好ましくは、前記高次モードが複数の高次モードからなる場合には、前記レンズが、前記複数の高次モードの光が、各高次モード毎の仮想的な点光源からの光であるとした場合に、前記各高次モードの光のニアフィールドパターンおよびファーフィールドパターンからそれぞれ得られる仮想的な点光源の位置を、各高次モードの光の発光位置であるとし、前記各高次モードの仮想的な点光源の位置をそれぞれ基点として、前記複数の高次モードの焦点がそれぞれ合うような光学系のレンズである。
【0014】
この場合に、好ましくは、前記レンズは、中心付近では焦点距離を短く、周縁部は焦点距離が長く、前記複数の高次モードの焦点がそれぞれ合うような光学系のレンズである。
【0015】
さらに好ましくは、前記レンズは、中心付近では焦点距離を短く、周縁部は焦点距離が長く、前記主モードおよび前記複数の高次モードの焦点がそれぞれ合うような光学系のレンズである。
【0016】
前記複数の高次モードは、好ましくは、LP11,LP12,LP21,LP02,LP31である。
【0017】
前記半導体レーザは好ましくは、VCSELである。
【0018】
また、好ましくは、上記VCSELの変調速度は、少なくとも10Gbps以上である。
【0019】
また、本発明によれば、主モードと複数の高次モードを有する横マルチモード半導体レーザと、レンズと、を備える半導体レーザモジュールであって、複数の高次モードのそれぞれのモードの光の前記レンズとの結合効率が前記複数の高次モード間で均一となるように、前記半導体レーザのレーザ光の発光面から前記高次モードの光が出射しているとして前記半導体レーザと前記レンズとを結合させた場合よりも、前記半導体レーザと前記レンズとの間の距離を近づけた半導体レーザモジュールが提供される。
【0020】
また、本発明によれば、上記半導体レーザモジュールを用いた光通信システムが提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、モード競合雑音を抑制できる半導体レーザモジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好ましい実施の形態の半導体レーザモジュールを説明するための概略縦断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施の形態の半導体レーザモジュールに使用される半導体レーザの一例を説明するための概略縦断面図である。
【図3】本発明の好ましい実施の形態の半導体レーザモジュールを説明するための概略斜視図である。
【図4】本発明の好ましい実施の形態の半導体レーザモジュールに使用される半導体レーザの他の例を説明するための概略縦断面図である。
【図5】横マルチモード面発光型半導体レーザ素子を光ファイバに、半導体レーザモジュールを用いて結合させる際に生じる問題点を説明するためのアイ波形である。
【図6】横マルチモード面発光型半導体レーザ素子と光ファイバとの距離を変化させた際の、光ファイバに結合したレーザ光のスペクトルの変化を示す図である。
【図7】横マルチモード面発光型半導体レーザ素子と光ファイバとの距離を変化させた際の、光ファイバに結合したレーザ光のスペクトルの変化を示す図である。
【図8】図6、図7に示す第3のピーク63、73の強度とランダムジッタとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態に係る半導体レーザモジュールを詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0024】
まず、横マルチモード面発光型半導体レーザ素子と光ファイバとの距離と、光ファイバに結合したレーザ光のスペクトルとの関係、および光ファイバに結合したレーザ光の高次モードの強度とジッタとの関係について説明する。
【0025】
図6、図7は、異なる2つの横マルチモード面発光型半導体レーザ素子と光ファイバとの距離zを変化させた際の、光ファイバに結合したレーザ光のスペクトルの変化を示す図である。図6、7において、横軸は光の波長(nm)であり、縦軸は、強度(dB)である。横マルチモード面発光型半導体レーザ素子と光ファイバとの距離Zの単位はμmである。
【0026】
第1のピーク61、71は主モード(LP01)であり、距離zを変化させても、その強度は殆ど変化しない。主モードはビームの広がりが小さく中心において均等に分布しているので、距離zを変化させても、光ファイバに結合する強度は殆ど変化しないと考えられる。
【0027】
第2のピーク62、72のモードは、一次モードLP11であり、横マルチモード面発光型半導体レーザ素子と光ファイバとの距離zが大きくなると、光ファイバに結合する強度は減少する。
【0028】
第3のピーク63、73のモードは、LP02,LP21であり、この2つの高次モードが同じピーク位置にある。この第3のピーク63、73も横マルチモード面発光型半導体レーザ素子と光ファイバとの距離zが大きくなると、光ファイバに結合する強度は減少する。
【0029】
横マルチモードの半導体レーザでは、これらの高次モード(LP11,LP02,LP31,LP21)は横方向にスプリットしていて、広がり角度も大きいので、横マルチモード面発光型半導体レーザ素子と光ファイバとの距離zが大きくなると、光ファイバへの結合率が悪くなるからである。
【0030】
図8は、図6、図7に示す第3のピーク63、73の強度とランダムジッタとの関係を示す図である。横軸は主モードと第3のピーク63、73の強度比(dB)であり、縦軸は、ランダムジッタを表している。第3のピーク63、73の強度が低下すると、ランダムジッタが増加していることがわかる。
【0031】
このように、横マルチモード面発光型半導体レーザ素子と光ファイバとの距離zを増加させると、高次モードの結合が劣化し、その結果ジッタが増加してしまうことがわかる。
【0032】
本発明の好ましい実施の形態では、これらのことを考慮して、垂直共振器型の面発光型半導体レーザ素子(VCSEL)と光ファイバとを結合させる半導体レーザモジュールを作成した。
【0033】
図1を参照すれば、本発明の好ましい実施の形態の半導体レーザモジュール10は、VCSEL100を搭載するレーザ搭載部材140と、VCSEL100からのレーザ光をファイバに結合する結合部材160とを備えている。結合部材160は、レンズ161、163と45度ミラー162とを備えている。VCSEL100からのレーザ光130は、レンズ161に入射し、45度ミラー162で紙面右側に反射され、レンズ163によってファイバ170に結合される。
【0034】
図2には、本実施の形態の半導体レーザモジュール10に使用されるVCSEL100の一例の概略を示している。
【0035】
このVCSEL100は、基板101と、基板101上に設けられた半導体多層膜反射鏡層102と、半導体多層膜反射鏡層102上に設けられたn型クラッド層103と、n型クラッド層103上に設けられた活性層104と、活性層104上に設けられ、中央に電流注入部106を有する電流狭窄層105と、電流狭窄層105上に設けられたp型クラッド層107と、p型クラッド層107上に設けられたp側円環電極108と、p側円環電極108上に設けられた誘電体多層膜反射鏡層109と、n型クラッド層103に接続して設けられたn側電極110とを備えている。誘電体多層膜反射鏡層109の表面120からレーザ光が出射する。誘電体多層膜反射鏡層109の表面120が発光面150となる。
【0036】
このVCSEL100を使用した半導体レーザモジュールでは、VCSEL100が、図1に示すレーザ搭載部材140に搭載され、VCSEL100の発光面150から出射したレーザ光130は、レンズ161によって結合部材160と結合される。
【0037】
図3を参照すれば、従来は、VCSEL100の発光面150を基準の発光基準面171として、この発光面150からレーザ光が出射するものとして、レンズ161を設計していた。このようにすれば、主モードの光181に関しては、一番強い結合が得られる。しかしながら、上述のように、主モードの光181に対して高次モードの光182結合が悪くなってしまう。そこで、本実施の形態では、高次モードの光182の結合が最適となるようにする。
【0038】
高次モードの光182は横方向にスプリットしていて、広がり角度も大きい。そこで、高次モードの光182は仮想的な点光源からの光であるとした場合に、高次モードの光182のニアフィールドパターン(NFP:Near Field Pattern)およびファーフィールドパターン(FFP:Fear Field Pattern)から得られる仮想的な点光源の位置180を高次モードの光182の発光位置であるとして、この点を基点としてレンズ161との結合を最適化する。具体的には、仮想的な点光源の位置180に対してレンズ161の焦点距離を設計する。なお、この仮想的な点光源の位置180を含み、発光面150に平行な面を仮想的な発光基準面172とする。
【0039】
VCSEL100の発光面150を基準の発光基準面171とし、この発光面150からレーザ光が出射するものとして、レンズ161を設計した場合のレンズ161の焦点距離よりも、VCSEL100の発光面150と仮想的な点光源の位置180との間の距離“d”だけ、レンズ161の焦点距離を短くすると共に、距離“d”だけ、VCSEL100とレンズ161との間の距離を近づけている。この場合に、仮想的な点光源の位置180がレンズ161のVCSEL100側の焦点位置となる。
【0040】
上記のようにして高次モードの光182を結合させても、主モードの光181は、広がりが小さく中心において均等に分布しているので、主モードの光181のレンズ161との結合効率は殆ど変化しない。
【0041】
従って、高次モードの光182および主モードの光181の両方の結合が良くなって、モード競合雑音を抑制して、ジッタを抑制できる。
【0042】
高次モードの光182のニアフィールドパターンの径を“a”とし、高次モードの光182のファーフィールドパターンを形成する高次モードの光182の拡がり角度を“θ”としたときに、VCSEL100の発光面150からレーザ光が出射するものとしていた場合よりも、d=a/tanθで定義される距離d程度だけ、VCSEL100の発光面150からVCSEL100の内側の位置を仮想的な点光源の位置180としている。そして、VCSEL100の発光面150からレーザ光が出射するものとしていた場合よりも、この距離“d” 程度だけ、レンズ161の焦点距離を短く設計し、レンズ161とVCSEL100との間の距離を、VCSEL100の発光面150からレーザ光が出射するものとしていた場合よりも、この距離“d” 程度だけ近くする。
【0043】
例えば、2次モードのニアフィールドパターンのうち最も光強度の高い点が発光中心に対して、直径7μmの周円上に配置され、ファーフィールドパターンを形成する高次モードの光182の拡がり角度が18度の場合、仮想された点光源位置180はVCSEL100の発光面150よりも約50μmVCSEL100の内側よりとなり、レンズ161のVCSEL100側の焦点距離を50μm短くし、レンズ161とVCSEL100との距離を50μm近づける設計となる。
【0044】
高次モードの光182が、複数のモードの光からなる場合には、それぞれのモードの光の結合効率を、複数のモード間でできる限り等しくすることが好ましい。そのためには、それぞれのモードの光の結合効率のばらつきが最小となるように距離dを決定することが好ましい。なお、ここで、結合効率とは、発光面150から出射した各モードのレーザ光の強度に対して、レンズ161と結合した当該モードのレーザ光の強度の割合をいう。
【0045】
高次モードの光182が、複数のモードの光からなる場合には、それぞれのモードの光の結合効率を、複数のモード間で均一となるように、VCSEL100の発光面150から高次モードの光182が出射しているとしてVCSEL100とレンズ161とを結合させた場合よりも、VCSEL100とレンズ161との間の距離を近づけることが好ましい。
【0046】
本実施の形態においては、高次モードの光182として、LP11,LP12,LP21,LP02,LP31のモードの光を考慮することが好ましく、LP11,LP12,LP21,LP02,LP31の各モードの光のレンズ161との間の結合効率が、これらのモード間でできる限り等しくなるように、距離dを決定する。
【0047】
また、高次モードの光182が、複数のモードの光からなる場合には、レンズ161をVCSEL100の発光面150に近接させ、レンズ161が、複数の高次モードの光が、各高次モード毎の仮想的な点光源からの光であるとした場合に、各高次モードの光のニアフィールドパターンおよびファーフィールドパターンからそれぞれ得られる仮想的な点光源の位置を、各高次モードの光の発光位置であるとし、各高次モードの仮想的な点光源の位置をそれぞれ基点として、複数の高次モードの焦点がそれぞれ合うような光学系のレンズとすることが好ましい。複数の高次モードの光182として、LP11,LP12,LP21,LP02,LP31のモードの光を考慮することが好ましい。
【0048】
この場合に、レンズ161は、中心付近では焦点距離を短く、周縁部は焦点距離が長く、前記複数の高次モードの焦点がそれぞれ合うような光学系のレンズであることが好ましく、より好ましくは、中心付近では焦点距離を短く、周縁部は焦点距離が長く、主モードおよび複数の高次モードの焦点がそれぞれ合うような光学系のレンズである。
【0049】
VCSELを通信に使用する場合には、高速になるとともに要求されるジッタ特性は厳しくなり、VCSELの変調速度が、10Gbps以上の場合に、本実施の形態の半導体レーザモジュール10は特に有効に使用することができる。10Gbpsの伝送に必要なEye開口マージンを,最大10ps程度改善することができる。Eye開口マージンは,10Gbpsであれば100psの最大開口であるが,入力電気波形・受光感度レベル・チャネル間のクロストーク等を考慮にいれると、VCSEL100と+結合部材160で許容されるジッタ量は高々20〜30ps程度しか許容できない。このため10psは非常に大きな改善である。
【0050】
上述の実施例ではレンズ161とVCSEL100との使用時の相対的な位置関係について詳述してきたが、それらの部材の相対的な距離が使用時の熱など外的な要因によって変化する場合はそれらの外的な要因による距離の変化を考慮に入れた上でレンズ161とVCSEL100との距離を設定すると更に都合が良い。
【0051】
図4には、本実施の形態の半導体レーザモジュール10に使用されるVCSELの他の例の概略を示している。
【0052】
このVCSEL200は、基板201と、基板201上に設けられた半導体多層膜反射202と、半導体多層膜反射鏡層202上に設けられたn型クラッド層203と、n型クラッド層203上に設けられた活性層204と、活性層204上に設けられたp型クラッド層205と、p型クラッド層205上に設けられた反射鏡兼電極206とを備えている。さらに、基板201の裏面207側から孔220が設けられ、孔220の底部において、半導体多層膜反射鏡層202の表面210上に設けられたレンズ260が露出している。半導体多層膜反射鏡層202の表面210からレーザ光が出射する。半導体多層膜反射鏡層202の表面210が発光面250となる。
【0053】
このVCSEL200を使用した半導体レーザモジュールでは、このVCSEL200が、図1に示すレーザ搭載部材140に搭載され、半導体多層膜反射鏡層202の表面210発光面250から出射したレーザ光はレンズ260によって集光され、図1の45度ミラー162に向かう。なお、この場合にはレンズ161は使用しない。
【0054】
このようにレンズを半導体レーザの表面(発光面)に一体化させた場合においても、高次モードの光は仮想的な点光源からの光であるとして、各高次モードの光のニアフィールドパターンおよびファーフィールドパターンから得られる仮想的な点光源の位置を各高次モードの光の発光位置であるとし、この点を基点として、レンズ260の設計を行い、レンズ260との結合を最適化する。具体的には、仮想的な点光源の位置に対してレンズ260の焦点距離を設計する。
【0055】
高次モードの光が、複数のモードの光からなる場合には、それぞれのモードの光の結合効率を、複数のモード間でできる限り等しくするようにすることが好ましい。そのためには、それぞれのモードの光の結合効率のばらつきが最小となるようにレンズ260の焦点距離を決定することが好ましい。
【0056】
本実施の形態においても、高次モードの光として、LP11,LP12,LP21,LP02,LP31のモードの光を考慮することが好ましく、LP11,LP12,LP21,LP02,LP31の各モードの光のレンズ161との間の結合効率が、これらのモード間でできる限り等しくなるように、レンズ260の焦点距離を決定することが好ましい。
【0057】
さらに、このようにレンズが一体化された場合には、レンズ260として、例えば、フレネルレンズや回折光学素子を使用すれば、面内方向で焦点位置を変えることができる。従って、上述のようにしてニアフィールドパターンおよびファーフィールドパターンから得られる各高次モードの仮想的な点光源の位置をそれぞれ基点として、好ましくは、対象とする全ての高次モードの焦点が合うように、さらに好ましくは、対象とする全ての高次モードおよび主モードの焦点が合うように、レンズ260を設計することがより好ましい。その場合には、中心付近では焦点距離を短く、周縁部は焦点距離が長くなるようにレンズ260を設計することがさらに好ましい。
【0058】
この場合にも、高次モードの光として、LP11,LP12,LP21,LP02,LP31のモードの光を考慮することが好ましく、好ましくは、高次モードのLP11,LP12,LP21,LP02,LP31の全てのモードの光の焦点が合うように、より好ましくは、主モードのLP01と、高次モードのLP11,LP12,LP21,LP02,LP31の全てのモードの光の焦点が合うように、中心付近では焦点距離を短く、周縁部は焦点距離が長くなるようにレンズ260を設計する。
【0059】
要求されるジッタ特性に関するマージンが支配的要因である,例えば10Gbps*12chのような高速かつ並列伝送に対して有利なために、上述した本発明の好ましい実施の形態では、半導体レーザモジュールに使用される半導体レーザとして、横マルチモードのVCSEL100、200を使用したが、横マルチモードのVCSEL100、200に代えて、横マルチモードの半導体レーザであれば、他のものも使用でき、例えば、横マルチモードのファイバレーザや、横マルチモードの光増幅のポンピング用のいられる端面発光型レーザ等も好ましく使用できる。
さらに、本発明の半導体レーザモジュールを光通信システムに適用した場合、モード競合雑音を抑制して光通信システムのS/Nを改善でき、特に100mを超える長距離マルチモード光通信に適している。また、本発明の半導体レーザモジュールは出力の変動が少ないので、出力の安定性が求められる用途、例えば、微細レーザ加工システムなどの光源にも適用可能である。
【0060】
以上、本発明の種々の典型的な実施の形態を説明してきたが、本発明はそれらの実施の形態に限定されない。従って、本発明の範囲は、次の特許請求の範囲によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0061】
10 半導体レーザモジュール
61、71 第1ピーク
62、72 第2ピーク
63、73 第3ピーク
100、200 面発光型半導体レーザ素子
101、201 基板
102、202 半導体多層膜反射鏡層
103、203 n型クラッド層
104、204 活性層
105 電流狭窄層
106 電流注入部
107、205 p型クラッド層
108 p側円環電極
109 誘電体多層膜反射鏡層
110 n側電極
120 表面
130 レーザ光
140 レーザ搭載部材
150、250 発光面
160 結合部材
161、163 レンズ
162 45度ミラー
170 光ファイバ
171 発光面基準面
172 発光面基準面
181 主モード光
182 高次モード光
206 反射鏡兼電極
207 裏面
210 表面
220 孔
260 レンズ
500 ジッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主モードと高次モードを有する横マルチモード半導体レーザと、レンズと、を備える半導体レーザモジュールであって、
前記高次モードの光が仮想的な点光源からの光であるとした場合に、前記高次モードの光のニアフィールドパターンおよびファーフィールドパターンから得られる仮想的な点光源の位置を高次モードの光の発光位置であるとして、前記半導体レーザと前記レンズとの距離を設定したことを特徴とする半導体レーザモジュール。
【請求項2】
前記半導体レーザのレーザ光の発光面から前記高次モードの光が出射しているとして前記半導体レーザと前記レンズとを結合させた場合よりも、前記半導体レーザの前記発光面の位置と前記仮想的な点光源の位置との間の距離だけ、前記レンズの焦点距離を短くすると共に前記半導体レーザと前記レンズとの間の距離を近づけた請求項1記載の半導体レーザモジュール。
【請求項3】
前記仮想的な点光源の位置を前記レンズの前記半導体レーザ側の焦点位置とした請求項1記載の半導体レーザモジュール。
【請求項4】
前記高次モードの光のニアフィールドパターンの径を“a”とし、前記高次モードの光のファーフィールドパターンを形成する前記高次モードの光の拡がり角度を“θ”としたときに、d=a/tanθで定義される距離dだけ、前記半導体レーザのレーザ光の発光面から前記半導体レーザの内側の位置を前記仮想的な点光源の位置とする請求項1乃至3のいずれかに記載の半導体レーザモジュール。
【請求項5】
前記半導体レーザのレーザ光の発光面は、レーザ光出射側の反射鏡の表面である請求項1乃至4のいずれかに記載の半導体レーザモジュール。
【請求項6】
前記高次モードが複数の高次モードからなる場合には、それぞれのモードの光の前記レンズとの結合効率が前記複数の高次モード間で均一となるように、前記半導体レーザのレーザ光の発光面から前記高次モードの光が出射しているとして前記半導体レーザと前記レンズとを結合させた場合よりも、前記半導体レーザと前記レンズとの間の距離を近づけた請求項1記載の半導体レーザモジュール。
【請求項7】
前記高次モードが複数の高次モードからなる場合には、前記レンズが、前記複数の高次モードの光が、各高次モード毎の仮想的な点光源からの光であるとした場合に、前記各高次モードの光のニアフィールドパターンおよびファーフィールドパターンからそれぞれ得られる仮想的な点光源の位置を、各高次モードの光の発光位置であるとし、前記各高次モードの仮想的な点光源の位置をそれぞれ基点として、前記複数の高次モードの焦点がそれぞれ合うような光学系のレンズである請求項1記載の半導体レーザモジュール。
【請求項8】
前記レンズは、中心付近では焦点距離を短く、周縁部は焦点距離が長く、前記複数の高次モードの焦点がそれぞれ合うような光学系のレンズである請求項7記載の半導体レーザモジュール。
【請求項9】
前記レンズは、中心付近では焦点距離を短く、周縁部は焦点距離が長く、前記主モードおよび前記複数の高次モードの焦点がそれぞれ合うような光学系のレンズである請求項7記載の半導体レーザモジュール。
【請求項10】
主モードと複数の高次モードを有する横マルチモード半導体レーザと、レンズと、を備える半導体レーザモジュールであって、複数の高次モードのそれぞれのモードの光の前記レンズとの結合効率が前記複数の高次モード間で均一となるように、前記半導体レーザのレーザ光の発光面から前記高次モードの光が出射しているとして前記半導体レーザと前記レンズとを結合させた場合よりも、前記半導体レーザと前記レンズとの間の距離を近づけた半導体レーザモジュール。
【請求項11】
前記複数の高次モードは、LP11,LP12,LP21,LP02,LP31である請求項6ないし10のいずれかに記載の半導体レーザモジュール。
【請求項12】
前記半導体レーザはVCSELである請求項1ないし11のいずれかに記載の半導体レーザモジュール。
【請求項13】
上記VCSELの変調速度は、少なくとも10Gbps以上である請求項12記載の半導体レーザモジュール。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の半導体レーザモジュールを用いた光通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−102914(P2011−102914A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258048(P2009−258048)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】