半導体レーザ及びその製造方法
【課題】動作電流が小さく、高温動作特性に優れ、かつ耐サージ特性に優れた半導体レーザ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】実屈折率型半導体レーザ1において、基板2と、第1のクラッド層4と、活性層5と、第2のクラッド層6と、リッジ部8と電流狭窄層9とを備え、第2のクラッド層6のリッジ部8直下にp型の第1の半導体領域6Pが配設され、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下にn型の第2の半導体領域6Nが配設される。第2のクラッド層6の第2の半導体領域6Nは電流狭窄層9からのn型ドーパントの拡散によりn型に反転したものである。
【解決手段】実屈折率型半導体レーザ1において、基板2と、第1のクラッド層4と、活性層5と、第2のクラッド層6と、リッジ部8と電流狭窄層9とを備え、第2のクラッド層6のリッジ部8直下にp型の第1の半導体領域6Pが配設され、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下にn型の第2の半導体領域6Nが配設される。第2のクラッド層6の第2の半導体領域6Nは電流狭窄層9からのn型ドーパントの拡散によりn型に反転したものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ及びその製造方法に関し、特に光情報処理、光計測等の光源として使用される半導体レーザ及びその製造方法に関する。更に、本発明は、AlGaInP系化合物半導体を用いた実屈折率型半導体レーザ及びその製造方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
AlGaInP系化合物半導体を用いて製作された半導体レーザにおいては、高温動作特性の改善が強く求められている。この高温特性に優れた半導体レーザとして、動作電流を小さくすることができる実屈折率型半導体レーザの開発が進められている。
【0003】
この種の実屈折率型半導体レーザは、n型GaAs基板上にそれぞれ積層されたn型GaAsバッファ層、n型AlGaInPクラッド層、ノンドープ多重量子井戸(MQW)活性層、p型AlGaInPクラッド層、p型InGaPエッチング停止層、リッジ部を備え、更にリッジ部を挟持する電流狭窄層を備えている。リッジ部は、p型AlGaInPクラッド層とその上に積層されたp型GaInPキャップ層とを備えている。n型GaAs基板のn型GaAsバッファ層が積層された表面とは反対の裏面にn型オーミック電極が形成されている。電流狭窄層はn型AlInP層により形成されている。リッジ部のp型GaInPキャップ層上及び電流狭窄層上にはp型GaAsコンタクト層が形成され、このp型GaAsコンタクト層上にはp型オーミック電極が形成されている。実屈折率型半導体レーザは、その製造プロセスにおいて上記の内部構造を有する半導体ウエーハをリッジ部に対して垂直な方向に所定の長さで劈開し、この劈開された端面をミラーとして使用する。
【0004】
実屈折率型半導体レーザの発振動作は以下の通りである。まず最初に、p型オーミック電極からn型オーミック電極に向かって順方向電流が注入される。この電流が発振閾値以上になったとき、リッジ部の下部に対応した活性層からレーザ発振が生じ、実屈折率型半導体レーザからレーザ光を出射することができる。
【0005】
このような実屈折率型半導体レーザにおいては、動作電流が小さいので、高温動作特性が優れている。ところが、同一レベルの動作電流が印加されても大きな光出力において発振が生じるので、小さなサージ電圧によっても端面が破壊され易く、耐サージ特性を十分に確保することが難しい。
【0006】
例えば下記特許文献1には、耐サージ特性を向上することができる半導体レーザが開示されている。この半導体レーザは、電流狭窄効果がなくならず、かつ適当な電圧によってターンオンするような範囲内に電流狭窄層の厚さを調整している。この半導体レーザにおいては、サージ電圧がある電圧以上になると電流狭窄を行っているpnpn構造のサイリスタのターンオン動作が生じ、サージ電流が電流狭窄部を流れ、発光部分の電流が増加しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2685332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、実屈折率型半導体レーザの耐サージ特性を改善するために、実屈折率型半導体レーザの構造に上記特許文献1に開示された半導体レーザの構造を利用した場合、以下の点について配慮がなされていなかった。例えば実屈折率型半導体レーザは20mA以下の低い電流で発振するので、サイリスタのターンオン動作が生じる前に端面を破壊するほどの電流が流れてしまう。従って、実屈折率型半導体レーザの耐サージ特性を実効的に改善することができなかった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。従って、本発明は、動作電流が小さく、高温動作特性に優れ、かつ耐サージ特性に優れた半導体レーザ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の実施例に係る第1特徴は、半導体レーザにおいて、基板と、基板上に配設された第1の導電型の第1のクラッド層と、第1のクラッド層上に配設された活性層と、活性層上の一部に配設され、第1の導電型の第1のドーパント及び第1の導電型とは反対の第2の導電型の第2のドーパントの双方を有し、第2のドーパントの濃度が第1のドーパントの濃度に比べて高い第2の導電型の第1の半導体領域、及び活性層上の他の一部に配設され、第1のドーパント及び第2のドーパントの双方を有し、第1のドーパントの濃度が第2のドーパントの濃度に比べて高い第1の導電型の第2の半導体領域を有する第2のクラッド層と、第2のクラッド層の第1の半導体領域上に配設され、第2の導電型の第3のクラッド層を有するリッジ部と、第2のクラッド層の第2の半導体領域上に配設され、第1の導電型の第3の半導体領域及びこの第3の半導体領域上の第2の導電型の第4の半導体領域を有する電流狭窄層とを備える。
【0011】
第1の特徴に係る半導体レーザにおいて、リッジ部下における活性層と第2のクラッド層の第1の半導体領域との接合部のバンドギャップに比べて、電流狭窄層の第3の半導体領域と第4の半導体領域との接合部のバンドギャップが大きいことが好ましい。また、第1の特徴に係る半導体レーザにおいて、第2のドーパントの拡散速度は第1のドーパントの拡散速度に比べて速いことが好ましい。また、第1の特徴に係る半導体レーザにおいて、第1のドーパントはSiであり、第2のドーパントはZnであることが好ましい。また、第1の特徴に係る半導体レーザにおいて、電流狭窄層の第3の半導体領域から電流狭窄層下の第1のクラッド層に至る活性層、第2のクラッド層の第2の半導体領域が第1の導電型に設定されていることが好ましい。更に、第1の特徴に係る半導体レーザにおいて、電流狭窄層の第3の半導体領域、第4の半導体領域はいずれもAlを含む化合物半導体により構成され、第3の半導体領域と第4の半導体領域との間に、第1の導電型を有し、第3の半導体領域のAl組成比に対して異なるAl組成比を有する第5の半導体領域を備えることが好ましい。
【0012】
本発明の実施例の第2の特徴は、半導体レーザの製造方法において、基板上に第1の導電型の第1のクラッド層を形成する工程と、第1のクラッド層上に活性層を形成する工程と、活性層上に第1の導電型の第1のドーパント及び第1の導電型とは反対の第2の導電型の第2のドーパントの双方を有する第2のクラッド層を形成する工程と、第2のクラッド層上の一部に第2の導電型の第3のクラッド層を有するリッジ部を形成する工程と、第2のクラッド層上の他の一部に第1の導電型の第3の半導体領域及びこの第3の半導体領域上の第2の導電型の第4の半導体領域を有する電流狭窄層を形成する工程と、第2のクラッド層において、リッジ部下に第2のドーパントの濃度が第1のドーパントの濃度に比べて高い第2の導電型の第1の半導体領域を形成し、電流狭窄層下に第1のドーパントの濃度が第2のドーパントの濃度に比べて高い第1の導電型の第2の半導体領域を形成する工程とを備える。
【0013】
第2の特徴に係る半導体レーザの製造方法において、第2のクラッド層の第1の半導体領域及び第2の半導体領域を形成する工程は、第2のクラッド層を形成した後に熱処理を行い、第2のクラッド層の電流狭窄層下の第2のドーパントを第2のクラッド層のリッジ部下に拡散することにより、リッジ部下に第2のドーパントの濃度が第1のドーパントの濃度に比べて高い第1の半導体領域を形成し、電流狭窄層下に第1のドーパントの濃度が第2のドーパントの濃度に比べて高い第2の半導体領域を形成する工程であることが好ましい。
【0014】
本発明の実施例に係る第3の特徴は、半導体レーザにおいて、基板と、基板上に配設された第1の導電型の第1のクラッド層と、第1のクラッド層上に配設された活性層と、活性層上に配設された第2のクラッド層と、第2のクラッド層上の一部に配設され、第1の導電型とは反対の第2の導電型の第3のクラッド層を有するリッジ部と、第2のクラッド層上の他の一部に配設され、第1の導電型の第1のドーパントを有する第1の導電型の第1の半導体領域及びこの第1の半導体領域上の第2の導電型の第2の半導体領域を有する電流狭窄層と、リッジ部下において第2のクラッド層に配設され、第2の導電型の第2のドーパントを有する第2の導電型の第3の半導体領域と、電流狭窄層下において第2のクラッド層に配設され、電流狭窄層の第1の半導体領域の第1のドーパントと同一の第1のドーパントを有する第1の導電型の第4の半導体領域とを備える。
【0015】
第3の特徴に係る半導体レーザにおいて、第1のドーパントはSeであることが好ましい。また、第3の特徴に係る半導体レーザにおいて、電流狭窄層の第1の半導体領域から電流狭窄層下の第1のクラッド層に至る活性層、第2のクラッド層の第4の半導体領域が第1の導電型に設定されていることが好ましい。また、第3の特徴に係る半導体レーザにおいて、電流狭窄層の第1の半導体領域、第2の半導体領域はいずれもAlを含む化合物半導体により構成され、第1の半導体領域と第2の半導体領域との間に、第1の導電型を有し、第1の半導体領域のAl組成比に対して異なるAl組成比を有する第5の半導体領域を更に備えることが好ましい。
【0016】
本発明の実施例に係る第4の特徴は、半導体レーザの製造方法において、基板上に第1の導電型の第1のクラッド層を形成する工程と、第1のクラッド層上に活性層を形成する工程と、活性層上に第1の導電型とは反対の第2の導電型の第2のドーパントを有し第2の導電型の第1の半導体領域が生成される第2のクラッド層を形成する工程と、第2のクラッド層上の一部に第2の導電型の第3のクラッド層を有するリッジ部を形成する工程と、第2のクラッド層上の他の一部に第1の導電型の第1のドーパントを有する第1の導電型の第3の半導体領域及びこの第3の半導体領域上の第2の導電型の第4の半導体領域を有する電流狭窄層を形成する工程と、電流狭窄層の第3の半導体領域の第1のドーパントを電流狭窄層下の第2のクラッド層に拡散し、この第2のクラッド層に第1の導電型の第2の半導体領域を形成する工程とを備える。
【0017】
第4の特徴に係る半導体レーザの製造方法において、第2のクラッド層の第2の半導体領域を形成する工程は、第2のクラッド層上に電流狭窄層を形成した後に熱処理を行い、電流狭窄層下の第2のクラッド層に第3の半導体領域の第1のドーパントを拡散し、電流狭窄層下の第2のクラッド層の第2の導電型を第1の導電型に反転させた第2の半導体領域を形成する工程であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、動作電流が小さく、高温動作特性に優れ、かつ耐サージ特性に優れた半導体レーザ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザの要部拡大断面図である。
【図2】(A)及び(B)は図1に示す実屈折率型半導体レーザのリッジ部及びその直下を含む縦方向のドーパント密度プロファイルを示す図である。
【図3】(A)及び(B)は図1に示す実屈折率型半導体レーザの電流狭窄層及びその直下を含む縦方向のドーパント密度プロファイルを示す図である。
【図4】実施例1に係る実屈折率型半導体レーザの電流−電圧特性を示す図である。
【図5】実施例1に係る実屈折率型半導体レーザの光出力−電圧特性を示す図である。
【図6】実施例1に係る実屈折率型半導体レーザの製造方法を説明する第1の工程断面図である。
【図7】第2の工程断面図である。
【図8】第3の工程断面図である。
【図9】第4の工程断面図である。
【図10】第5の工程断面図である。
【図11】第6の工程断面図である。
【図12】第7の工程断面図である。
【図13】実施例1の変形例に係る実屈折率型半導体レーザの要部拡大断面図である。
【図14】本発明の実施例2に係る実屈折率型半導体レーザの要部拡大断面図である。
【図15】(A)及び(B)は図14に示す実屈折率型半導体レーザのリッジ部及びその直下を含む縦方向のドーパント密度プロファイルを示す図である。
【図16】(A)及び(B)は図14に示す実屈折率型半導体レーザの電流狭窄層及びその直下を含む縦方向のドーパント密度プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0021】
また、以下に示す実施例はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0022】
(実施例1)
本発明の実施例1は、本発明を実屈折率型半導体レーザに適用した例を説明するものである。ここで、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ及びその製造方法は、本願発明者が実施した基礎研究により発見された下記現象に基づきなされたものである。すなわち、実屈折率型半導体レーザの製造プロセスにおいて、Zn(亜鉛)とSi(珪素)とをコドーピングしたAlGaInPクラッド層を形成し、このAlGaInPクラッド層上にZnをドーピングしたAlGaInPクラッド層を有するリッジ部を形成した後の熱履歴によって、リッジ部直下のAlGaInPクラッド層はリッジ部等からのZnの拡散によってp型のままであるが、リッジ部直下の外周囲のAlGaInPクラッド層はZnが外部に拡散しSiのドーピング濃度が支配的となるのでn型に反転する、という現象である。Znはp型ドーパントであり、Siはn型ドーパントである。
【0023】
[実屈折率型半導体レーザのデバイス構造]
図1に示すように、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1は、第1の導電型の基板2と、基板2上に配設された第1の導電型の第1のクラッド層4と、第1のクラッド層4上に配設された活性層5と、活性層5上の一部に配設され、第1の導電型の第1のドーパント及び第1の導電型とは反対の第2の導電型の第2のドーパントの双方を有し、第2のドーパントの濃度が第1のドーパントの濃度に比べて高い第2の導電型の第1の半導体領域6P、及び活性層5上の他の一部に配設され、第1のドーパント及び第2のドーパントの双方を有し、第1のドーパントの濃度が第2のドーパントの濃度に比べて高い第1の導電型の第2の半導体領域6Nを有する第2のクラッド層6と、第2のクラッド層6の第1の半導体領域6P上に配設され、第2の導電型の第3のクラッド層8Aを有するリッジ部8と、第2のクラッド層6の第2の半導体領域6N上に配設され、第1の導電型の第3の半導体領域9A及びこの第3の半導体領域9A上の第2の導電型の第4の半導体領域9Bを有する電流狭窄層9とを備えている。リッジ部8は、第2のクラッド層6の第1の半導体領域6P上に配設された第3のクラッド層8Aと、この第3のクラッド層8A上に配設された第2の導電型のキャップ層8Bとを備えている。
【0024】
更に、実屈折率型半導体レーザ1は、基板2と第1のクラッド層4との間に配設された第1の導電型のバッファ層3と、第2のクラッド層6とリッジ部8及び電流狭窄層9との間に配設された第2の導電型のエッチング停止層7と、リッジ部8上及び電流狭窄層9上に配設された第2の導電型のコンタクト層10とを備えている。
【0025】
実施例1並びにこれ以降の実施例において、第1の導電型とはn型であり、第2の導電型とはp型である。
【0026】
実屈折率型半導体レーザ1の基板2にはn型GaAs基板が使用される。基板2のバッファ層3が配設された表面とは対向する裏面の全域にn型オーミック電極12が配設されている。n型オーミック電極12には例えばAuの単層又はそれを含む複合膜が使用される。なお、基板2の表面上にバッファ層3等の化合物半導体の結晶成長を良好に行うことができ、かつ基板2の表面側にn型オーミック電極12が配設される場合には、基板2は絶縁基板であってもよい。
【0027】
バッファ層3は例えばn型GaAs層により構成されている。このn型GaAs層にはSiが例えば1×1018atoms/cm3の濃度にドーピングされており、n型GaAs層の厚みは例えば250nm〜500nmに設定されている。
【0028】
第1のクラッド層4は例えばn型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層により構成されている。このn型AlGaInP層にはSiが例えば1×1018atoms/cm3の濃度にドーピングされており、n型AlGaInP層の厚みは例えば1μm〜2μmに設定されている。
【0029】
活性層5は例えばノンドープIn0.53Ga0.47Pウエル層とノンドープ(Al0.3Ga0.7)0.5In0.5Pバリア層との二重量子井戸構造により構成されている。また、活性層5は、例えば20nm〜40nmの厚さを有するノンドープ(Al0.3Ga0.7)0.5In0.5Pガイド層、5nmの厚さを有するノンドープIn0.53Ga0.47Pウエル層、5nmの厚さを有するノンドープ(Al0.3Ga0.7)0.5In0.5Pバリア層、5nmの厚さを有するノンドープIn0.53Ga0.47Pウエル層、20nm〜40nmの厚さを有するノンドープ(Al0.3Ga0.7)0.5In0.5Pガイド層のそれぞれを順次積層して構成してもよい。いずれの場合にも、第1のクラッド層4、活性層5、第2のクラッド層6のそれぞれの接合構造はダブルヘテロ接合構造である。
【0030】
第2のクラッド層6は例えば(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層により構成されている。このAlGaInP層には、第1のドーパント(n型ドーパント)として例えばSiが2×1017 atoms/cm3の濃度にドーピングされており、第2のドーパント(p型ドーパント)として例えばZnが5×1017 atoms/cm3の濃度にドーピングされている。つまり、第2のクラッド層6には互いに異なる導電型のドーパントであるSi及びZnがコドーピングされている。AlGaInP層の厚さは例えば0.1μm〜0.2μmに設定されている。
【0031】
図2(A)は熱処理前若しくは熱履歴が生じる前におけるリッジ部8及びその直下を含む縦方向(図1に示すP1−P1線上)のドーパント濃度のプロファイルを示す。図3(A)は同様に熱処理前若しくは熱履歴が生じる前における電流狭窄層9及びその直下を含む縦方向(図1に示すP2−P2線上)のドーパント濃度のプロファイルを示す。図2(B)は熱処理後若しくは熱履歴が生じた後のリッジ部8及びその直下を含む縦方向のドーパント濃度のプロファイルを示す。図3(B)は同様に熱処理後若しくは熱履歴が生じた後の電流狭窄層9及びその直下を含む縦方向のドーパント濃度のプロファイルを示す。図2(A)、図2(B)、図3(A)及び図3(B)において、横軸は第1のクラッド層4、活性層5、第2のクラッド層6、コンタクト層10の各領域を示し、縦軸はドーパント濃度(atoms/cm3)を示す。
【0032】
図2(A)に示すように、熱処理前若しくは熱履歴が生じる前において、第2のクラッド層6のリッジ部8直下のSiのドーパント濃度は2×1017 atoms/cm3であり、Znのドーパント濃度は5×1017 atoms/cm3であり、Si及びZnの双方が混在している。図2(B)に示すように、熱処理後若しくは熱履歴が生じた後において、第2のクラッド層6のリッジ部8直下のSiのドーパント濃度並びにZnのドーパント濃度のプロファイルの形状に若干変化はあるものの、実効的な変化は生じていない。Siはほとんど拡散を生じないのに対して、Znの拡散速度はSiの拡散速度に比べて速く、Znには拡散による移動が発生する。ところが、第2のクラッド層6のリッジ部8直下においては、リッジ部8の第3のクラッド層8Aからの拡散によるZnの供給により、コドーピング直後に対してZnのドーピング濃度にはほとんど変化が見られない。従って、この第2のクラッド層6のリッジ部8直下においては、Znのドーパント濃度が維持され、Znのドーパント濃度がSiのドーパント濃度に比べて高く、p型の第1の半導体領域6Pが生成される。
【0033】
一方、図3(A)に示すように、熱処理前若しくは熱履歴を生じる前において、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下のSiのドーパント濃度及びZnのドーパント濃度は、第2のクラッド層6のリッジ部8直下のSiのドーパント濃度及びZnのドーパント濃度と同等である。図3(B)に示すように、熱処理後若しくは熱履歴が生じた後において、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下のSiのドーパント濃度は実効的な変化を生じないが、Znには拡散による移動が発生する。この第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下のZnは電流狭窄層9の第3の半導体領域9A、活性層5の電流狭窄層9直下にそれぞれ拡散され、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下等のZnのドーパント濃度はSiのドーパント濃度に比べて低くなる。すなわち、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下には、Znのドーパント濃度の低下に伴いSiのドーパント濃度が支配的になるので、p型からn型に反転し、第2のクラッド層6にn型の第2の半導体領域6Nが生成される。更に、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下から拡散により移動されたZnは、第2のクラッド層6の上層のエッチング停止層7をn型化された第2の半導体領域7Nに、第2のクラッド層6の下層の活性層5をn型化された第2の半導体領域5N又はそれに近い状態に改変する。結果的に、電流狭窄層9の第3の半導体領域9Aから第1のクラッド層4に至る経路(第2の半導体領域7N、6N及び5N)、更には第1のクラッド層4から基板2に至る経路はすべてn型化される。
【0034】
エッチング停止層7は例えばp型Ga0.5In0.5P層により構成されている。このp型GaInP層には例えば1×1018atoms/cm3の濃度においてZnのドーピングが行われ、p型GaInP層の厚みは例えば2nm〜4nmに設定されている。エッチング停止層7は、実屈折率型半導体レーザ1の製造プロセスにおいてリッジ部8のパターンニング(メサエッチング)を行う際のエッチング量を制御し、一定形状具体的にはエッチング停止層7側の底面幅が広く底面に対向する上面幅が狭い断面台形形状のリッジ部8を形成するために使用されている。エッチング停止層7は、レーザ光に対する吸収損失を抑えるために極力薄い膜厚に設定されている。
【0035】
リッジ部8の第3のクラッド層8Aは例えばp型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層により構成されている。このp型AlGaInP層には例えば1×1018atoms/cm3の濃度においてZnのドーピングが行われ、p型AlGaInP層の厚みは例えば1μm〜2μmに設定されている。キャップ層8Bは例えばp型Ga0.5In0.5P層により構成されている。p型GaInP層には例えば2×1018atoms/cm3の濃度においてZnのドーピングが行われ、p型GaInP層の厚みは例えば100nm〜200nmに設定されている。
【0036】
図1に示す実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、紙面の都合上、各層の比率を明確に示していないが、リッジ部8の幅寸法L1は同一方向の基板2の寸法L2に対してかなり小さい。例えば、基板2の寸法L2は200μmに設定され、リッジ部8の幅寸法L1は4μm〜5μmに設定されている。比率としては、基板2の寸法L2はリッジ部8の幅寸法L1の約40倍の大きさに設定されている。リッジ部8の平面形状は、特に図示していないが、同一幅寸法において基板2の表面上の一辺から対向する他の一辺に向かって延伸する細長い長方形形状により構成されている。同様に、リッジ部8の平面面積は基板2の表面面積に対して数十倍の大きさになる。
【0037】
電流狭窄層9は、基板2の表面上の中央に配設されたリッジ部8を中心に、このリッジ部8の側面にそれぞれ配設され、リッジ部8の領域を除く基板2の表面上の全域に配設されている。電流狭窄層9の第3の半導体領域(n型電流狭窄層)9Aは例えばn型Al0.5In0.5P層により構成されている。このn型AlInP層には例えば5×1017atoms/cm3の濃度においてSiのドーピングが行われ、n型AlInP層の厚さは例えば0.1μm〜0.3μmに設定されている。電流狭窄層9の第4の半導体領域(p型電流狭窄層)9Bは例えばp型Al0.5In0.5P層により構成されている。このp型AlInP層には例えば1×1018atoms/cm3の濃度においてZnのドーピングが行われ、p型AlInP層の厚さは例えば0.1μm〜0.3μmに設定されている。
【0038】
コンタクト層10は例えばp型GaAs層により構成されている。このp型GaAs層には例えば2×1018atoms/cm3の濃度においてZnがドーピングされ、p型GaAs層の厚さは例えば1μm〜2μmに設定されている。コンタクト層10の表面上にはその全域にp型オーミック電極12が配設されている。p型オーミック電極12には例えばAuの単層又はそれを含む複合膜が使用される。
【0039】
[実屈折率型半導体レーザの動作並びに特性]
前述の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の発振動作は以下の通りである。まず最初に、p型オーミック電極11からn型オーミック電極12に向かって順方向電流(発振動作電流)が注入される。図4及び図5に示すように、この電流が発振閾値以上になったとき、リッジ部8の下部に対応した活性層5からレーザ発振が生じ、実屈折率型半導体レーザ1からレーザ光を出射することができる。
【0040】
ここで、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、第2のクラッド層6のリッジ部8直下にp型の第1の半導体領域6Pが配設され、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下にn型の第2の半導体領域7N、6N及び5Nが配設されているので、リッジ部8直下における活性層5と第2のクラッド層6の第1の半導体領域6Pとのヘテロ接合部のバンドギャップに比べて、電流狭窄層9の第3の半導体領域9Aと第4の半導体領域9Bとのpn接合部のバンドギャップが大きくなる。電流狭窄部9の立ち上がり電圧は、電流狭窄部9の第3の半導体領域9Aと第4の半導体領域9Bとのpn接合部のバンドギャップにより決まるので、活性層5のバンドギャップで決まる立ち上がり電圧よりも大きくなる。このため、リッジ部8の抵抗による電圧降下がその立ち上がり電圧差に等しくなるまでリッジ部8のみに電流が流れ、低い発振動作電流によって実屈折率型半導体レーザ1の発振が生じるが、それ以上の電流が流れ電圧が上昇すると、電流狭窄効果がなくなり、図4に示すように、電流狭窄層9全体からエッチング停止層7の第2の半導体領域7N、第2のクラッド層6の第2の半導体領域6N、活性層5の第2の半導体領域5N、第1のクラッド層4,バッファ層3、基板2のそれぞれを通じてn型オーミック電極12に電流が流れる。図4において、リッジ部8の電流−電圧特性を示す線と電流狭窄層9の電流−電圧特性を示す線との交点を境に電圧が上昇すると、リッジ部8の面積よりも遙かに大面積の電流狭窄層9を通じてn型オーミック電極12側に電流を流すことができる。
【0041】
この結果、実屈折率型半導体レーザ1においては、サージ電圧のような高い電圧がp型オーミック電極11に印加されても、或いは極性が反対の高い電圧がn型オーミック電極12に印加されても、図5に示すように、端面が破壊されない光出力でしか発振が生じない。従って、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、低電圧駆動を実現して高温動作特性を改善しつつ、高電圧が印加されても電流狭窄層9の全域において余分な電流を放出することができるので、端面が破壊されず、サージ耐性を向上することができる。実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、発振動作電流が30mA〜50mAに達するとそれをピークとして光出力が劣化する。
【0042】
[実屈折率型半導体レーザの製造方法]
前述の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の製造方法は以下の通りである。まず最初に、図6に示すように、n型GaAs基板からなる基板2が準備される。基板2はここでは複数の実屈折率型半導体レーザ1の製作に使用される化合物半導体ウエーハの状態(劈開前の状態)にある。
【0043】
例えばMOCVD法を用いて、基板2の表面上の全域にバッファ層3,第1のクラッド層4、活性層5のそれぞれが順次形成される(図7参照。)。引き続き、図7に示すように、例えばMOCVD法を用いて、活性層5の表面上の全域に第2のクラッド層6が形成される。第2のクラッド層6はここでは前述のようにn型(AlGa)InP層により形成され、この第2のクラッド層6にはn型ドーパント(第1のドーパント)であるSi及びp型ドーパント(第2のドーパント)であるZnのコドーピングが行われる。図8に示すように、引き続き、例えばMOCVD法を用いて、第2のクラッド層6の表面上の全域にエッチング停止層7、リッジ部8を形成するための第3のクラッド層8A及びキャップ層8Bのそれぞれが順次形成される。
【0044】
図9に示すように、キャップ層8Bの表面上においてリッジ部8の形成領域(基板2の表面上の一部の領域)にマスク20が形成される。マスク20には例えばSiO2膜が使用される。マスク20は、例えばCVD法を用いてキャップ層8Bの表面上の全域に成膜され、フォトリソグラフィ技術を用いパターンニングを行うことにより、所定形状に形成される。
【0045】
図10に示すように、マスク20を用いてキャップ層8B及び第3のクラッド層8Aにパターンニングが行われ、台形形状の断面形状を有し、図示しないが細長いストライプ形状の平面形状を有するリッジ部8が形成される。リッジ部8の形成には例えばメサエッチングが使用される。
【0046】
図11に示すように、例えばMOCVD法を用いて、マスク20の領域以外すなわちリッジ部8以外の領域(基板2の表面上の他の一部の領域)であってエッチング停止層7の表面上の全域に電流狭窄層9が形成される。マスク20をエッチング除去した後、図12に示すように、引き続き、MOCVD法を用いて、リッジ部8の表面上及び電流狭窄層9の表面上を含む全域にコンタクト層10が形成される。
【0047】
ここで、第2のクラッド層6の形成後、第2のクラッド層6にコドーピングが行われたZnの拡散速度がSiの拡散速度に比べて非常に速いので、エッチング停止層7及びそれ以降の層の成膜に伴う熱履歴によって、Znの移動が生じる。Siの拡散速度はZnの拡散速度に比べて非常に遅いので、Siの移動はほとんど生じない。すなわち、前述の図3(A)及び図3(B)に示すように、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下のZnは、第2のクラッド層6の上層の電流狭窄層9に拡散され、Znのドーピング密度がSiのドーピング密度よりも低下し、p型からn型に反転された第2の半導体領域5N、6N及び7Nが電流狭窄層9直下に形成される。一方、前述の図2(A)及び図2(B)に示すように、第2のクラッド層6のリッジ部8直下においては、リッジ部8の第3のクラッド層8AにドーピングがなされたZnの拡散があるので、Siのドーピング密度よりZnのドーピング密度が高い状態において維持され、p型の第1の半導体領域6Pが形成される。
【0048】
実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の製造方法においては、別途熱処理工程を追加することなく、第2のクラッド層6の形成後の熱履歴を利用して、この第2のクラッド層6のリッジ部8直下に第1の半導体領域6Pを形成することができ、同時に第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下に第2の半導体領域6N等を形成することができる。しかも、第1の半導体領域6P及び第2の半導体領域6N等は、製造用マスクを用いてアライメントを行い形成しているのではなく、Znの拡散により形成されているので、リッジ部8に対してセルフアライメントにより形成されている。つまり、アライメントずれは生じない。なお、製造工程数は若干増加するものの、別途最適な条件によって組み込まれた熱処理を用いて、第2のクラッド層6に第1の半導体領域6P及び第2の半導体領域6N等を形成することができる。
【0049】
次に、コンタクト層10の表面上の全域にp型オーミック電極11及び基板2の裏面にn型オーミック電極12のそれぞれが形成される(図1参照。)。そして、リッジ部8に対して垂直な方向に所定の長さで劈開して端面を露出させることによって、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1を完成させることができる。
【0050】
以上説明したように、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、第2のクラッド層6のリッジ部8直下にp型の第1の半導体領域6Pを備え、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下にn型の第2の半導体領域6N等を備えたので、低電圧駆動を実現して高温動作特性を改善しつつ、高電圧が印加されても端面が破壊されないのでサージ耐性を向上することができる。
【0051】
[実屈折率型半導体レーザの変形例]
この変形例は、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1において、電流狭窄層9の構造を代えた例を説明するものである。
【0052】
図13に示すように、変形例に係る実屈折率型半導体レーザ1は、電流狭窄層9のn型の第3の半導体領域9Aとp型の第4の半導体領域9Bとの間に、第3の半導体領域9Aと同一導電型であるn型を有し、第3の半導体領域9AのAl組成比に対して異なるAl組成比を有する第5の半導体領域(n型電流狭窄層)9Cを備えている。第5の半導体領域9Cは例えばn型Al0.5In0.5P層により構成されている。このn型AlInP層には例えば5×1017atoms/cm3の濃度においてSiがドーピングされ、n型AlInP層の厚さは例えば0.1μm〜0.3μmに設定されている。
【0053】
電流狭窄層9の第3の半導体領域9Aはリッジ部8との屈折率の関係でAl組成比に一定の割合が必要であり、実屈折率型半導体レーザ1の物理的特性に変化を及ぼすので、第3の半導体領域9AのAl組成比は基本的に変えない。一方、電流狭窄部9の立ち上がり電圧は電流狭窄部9のpn接合部のバンドギャップにより決まるので、Al組成比を調節して電流狭窄層9の立ち上がり電圧レベルを制御するために、第4の半導体領域9Bとのpn接合部の生成に第5の半導体領域9Cが使用される。
【0054】
第5の半導体領域9CのAl組成比が第3の半導体領域9AのAl組成比に比べて大きい場合、電流狭窄層9の立ち上がり電圧は高くなる。逆に、第5の半導体領域9CのAl組成比が第3の半導体領域9AのAl組成比に比べて小さい場合、電流狭窄層9の立ち上がり電圧は低くなる。
【0055】
このように構成される実施例1の変形例に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1により得られる作用効果に加えて、電流狭窄層9の立ち上がり電圧レベルを調節することができる。
【0056】
なお、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1において、第1のドーパントにSiが使用され、第2のドーパントにZnが使用されているが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、第1のドーパントとしてn型の半導体領域を生成しかつ拡散速度が遅い元素であればよく、第2のドーパントとしてp型の半導体領域を生成しかつ拡散速度の速い元素であれば、他の元素を用いてもよい。
【0057】
(実施例2)
本発明の実施例2は、前述の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の電流狭窄層9直下のn型化領域の他の製造方法並びにその製造方法を用いて製作された実屈折率型半導体レーザ1を説明するものである。
【0058】
[実屈折率型半導体レーザのデバイス構造]
図14に示すように、実施例2に係る実屈折率型半導体レーザ1は、基本的には前述の図1に示す実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の断面構造と同一の断面構造を有するが、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下のn型の第2の半導体領域6N、エッチング停止層7のn型の第2の半導体領域7N及び活性層5のn型の第2の半導体領域5Nを生成するn型ドーパントと電流狭窄層9のn型の第3の半導体領域9Aを生成するn型ドーパントとを同一としたものである。つまり、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1は、n型ドーパントとしてSi、p型ドーパントとしてZnを使用し、第2のクラッド層6にSi及びZnのコドーピングを行い、その後の熱処理又は熱履歴によって第2のクラッド層6にp型の第1の半導体領域6P及びn型の第2の半導体領域6N等を生成したが、実施例2に係る実屈折率型半導体レーザ1は、第2のクラッド層6にp型ドーパントとしてのZnのドーピングを行い、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下のn型の第2の半導体領域6N等を電流狭窄層9のn型の第3の半導体領域9Aにドーピングを行ったn型ドーパンの拡散により生成している。実施例2において、n型ドーパントには拡散速度が速いSeが使用され、Seのドーパント濃度は例えば7×1017atoms/cm3〜8×1017atoms/cm3に設定されている。
【0059】
図15(A)は熱処理前若しくは熱履歴が生じる前におけるリッジ部8及びその直下を含む縦方向(図14に示すP3−P3線上)のドーパント密度プロファイルを示す。図16(A)は同様に熱処理前若しくは熱履歴が生じる前における電流狭窄層9及びその直下を含む縦方向(図14に示すP4−P4線上)のドーパント密度プロファイルを示す。図15(B)は熱処理後若しくは熱履歴が生じた後のリッジ部8及びその直下を含む縦方向のドーパント密度プロファイルを示す。図16(B)は同様に熱処理後若しくは熱履歴が生じた後の電流狭窄層9及びその直下を含む縦方向のドーパント密度プロファイルを示す。図15(A)、図15(B)、図16(A)及び図16(B)において、横軸は第1のクラッド層4、活性層5、第2のクラッド層6、コンタクト層10の各領域を示し、縦軸はドーパント濃度(atoms/cm3)を示す。
【0060】
図15(A)に示すように、熱処理前若しくは熱履歴が生じる前において、第2のクラッド層6のリッジ部8直下のZnのドーパント濃度は5×1017 atoms/cm3である。図15(B)に示すように、熱処理後若しくは熱履歴が生じた後において、第2のクラッド層6のリッジ部8直下のZnのドーパント濃度は、若干のプロファイルの形状変化はあるものの、実効的な変化を生じていない。従って、この第2のクラッド層6のリッジ部8直下においては、Znのドーパント濃度が維持され、p型の第1の半導体領域6Pが生成される。
【0061】
一方、図16(A)に示すように、熱処理前若しくは熱履歴を生じる前において、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下にはリッジ部8直下と同様にZnがドーピングされているので、クラッド層6の電流狭窄層9直下のZnのドーパント濃度はリッジ部8直下のZnのドーパント濃度と同等である。電流狭窄層9の第3の半導体領域9Aには例えば1×1018 atoms/cm3のドーパント濃度においてSeのドーピングが行われている。図16(B)に示すように、熱処理後若しくは熱履歴が生じた後において、電流狭窄層9の第3の半導体領域9Aからその直下のエッチング停止層7,第2のクラッド層6、活性層5にSeの拡散が生じ、Seのドーピング濃度がZnのドーピング濃度を上回り、エッチング停止層7にn型の第2の半導体領域7N、第2のクラッド層6にn型の第2の半導体領域6N、活性層5にn型の第2の半導体領域5Nが生成される。すなわち、電流狭窄層9直下には、p型からn型に反転された、第2の半導体領域7N、6N及び5Nが生成される。結果的に、電流狭窄層9の第3の半導体領域9Aから第1のクラッド層4に至る経路、更に第1のクラッド層4から基板2に至る経路はすべてn型化される。
【0062】
このように構成される実施例2に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、基本的には実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1と同様に、サージ電圧のような高い電圧がp型オーミック電極11に印加されても、或いは極性が反対の高い電圧がn型オーミック電極12に印加されても、前述の図5に示すように、端面が破壊されない光出力でしか発振が生じない。従って、実施例2に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、低電圧駆動を実現して高温動作特性を改善しつつ、高電圧が印加されても端面が破壊されないのでサージ耐性を向上することができる。
【0063】
[実屈折率型半導体レーザの製造方法]
実施例2に係る実屈折率型半導体レーザ1の製造方法は、基本的には実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の製造方法と同様であるが、以下点において異なる。
【0064】
第1に、前述の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の製造方法の図7に示す第2のクラッド層6を形成する工程において、第2のクラッド層6にはp型ドーパントであるZnのみのドーピングが行われる。
【0065】
第2に、前述の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の製造方法の図9に示す電流狭窄層9を形成する工程において、下層の第3の半導体領域9Aにはn型ドーパントとして拡散速度が速いSeのドーピングが行われる。なお、n型ドーパントとしてSeに限定されるものではない。
【0066】
第3に、前述の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の製造方法の図12に示す第2のクラッド層6に第2の半導体領域6N等を形成する工程において、第2の半導体領域6Nは電流狭窄層9の第3の半導体領域9Aからのn型ドーパントの拡散により形成される。
【0067】
このように構成される実施例2に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1により得られる作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0068】
[実屈折率型半導体レーザの変形例1]
実施例2の変形例1に係る実屈折率型半導体レーザ1は、前述の実施例1の変形例に係る実屈折率型半導体レーザ1と同様に、電流狭窄層9のn型の第3の半導体領域9Aとp型の第4の半導体領域9Bとの間に第3の半導体領域9AとはAl組成比が異なる同一導電型のn型の第5の半導体領域9Cを備えてもよい。
【0069】
[実屈折率型半導体レーザの変形例2]
実施例2に係る実屈折率型半導体レーザ1は、前述の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1又は実施例1の変形例に係る実屈折率型半導体レーザ1に組み合わせることができる。すなわち、変形例2に係る実屈折率型半導体レーザ1は、予めZn及びSiの第2のクラッド層6へのコドーピングを行い、一方電流狭窄層9の第3の半導体領域9AにはSeのドーピングを行う。そして、実屈折率型半導体レーザ1においては、第2のクラッド層6のZnの拡散による移動に併せて、電流狭窄層9からのSeの拡散によって、活性層5にn型の第2の半導体領域5Nを形成し、第2のクラッド層6にn型の第2の半導体領域6Nを形成し、エッチング停止層7にn型の第2の半導体領域7Nを形成する。
【0070】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明を複数の実施例並びに変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものでない。本発明は様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、動作電流が小さく、高温動作特性に優れ、かつ耐サージ特性に優れた半導体レーザ及びその製造方法に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…実屈折率型半導体レーザ、2…基板、3…バッファ層、4…第1のクラッド層、5…活性層、5N、6N、7N…第2の半導体領域、6…第2のクラッド層、6P…第1の半導体領域、7…エッチング停止層、8…リッジ部、9…電流狭窄層、10…コンタクト層、11…p型オーミック電極、12…n型オーミック電極、20…マスク。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ及びその製造方法に関し、特に光情報処理、光計測等の光源として使用される半導体レーザ及びその製造方法に関する。更に、本発明は、AlGaInP系化合物半導体を用いた実屈折率型半導体レーザ及びその製造方法に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
AlGaInP系化合物半導体を用いて製作された半導体レーザにおいては、高温動作特性の改善が強く求められている。この高温特性に優れた半導体レーザとして、動作電流を小さくすることができる実屈折率型半導体レーザの開発が進められている。
【0003】
この種の実屈折率型半導体レーザは、n型GaAs基板上にそれぞれ積層されたn型GaAsバッファ層、n型AlGaInPクラッド層、ノンドープ多重量子井戸(MQW)活性層、p型AlGaInPクラッド層、p型InGaPエッチング停止層、リッジ部を備え、更にリッジ部を挟持する電流狭窄層を備えている。リッジ部は、p型AlGaInPクラッド層とその上に積層されたp型GaInPキャップ層とを備えている。n型GaAs基板のn型GaAsバッファ層が積層された表面とは反対の裏面にn型オーミック電極が形成されている。電流狭窄層はn型AlInP層により形成されている。リッジ部のp型GaInPキャップ層上及び電流狭窄層上にはp型GaAsコンタクト層が形成され、このp型GaAsコンタクト層上にはp型オーミック電極が形成されている。実屈折率型半導体レーザは、その製造プロセスにおいて上記の内部構造を有する半導体ウエーハをリッジ部に対して垂直な方向に所定の長さで劈開し、この劈開された端面をミラーとして使用する。
【0004】
実屈折率型半導体レーザの発振動作は以下の通りである。まず最初に、p型オーミック電極からn型オーミック電極に向かって順方向電流が注入される。この電流が発振閾値以上になったとき、リッジ部の下部に対応した活性層からレーザ発振が生じ、実屈折率型半導体レーザからレーザ光を出射することができる。
【0005】
このような実屈折率型半導体レーザにおいては、動作電流が小さいので、高温動作特性が優れている。ところが、同一レベルの動作電流が印加されても大きな光出力において発振が生じるので、小さなサージ電圧によっても端面が破壊され易く、耐サージ特性を十分に確保することが難しい。
【0006】
例えば下記特許文献1には、耐サージ特性を向上することができる半導体レーザが開示されている。この半導体レーザは、電流狭窄効果がなくならず、かつ適当な電圧によってターンオンするような範囲内に電流狭窄層の厚さを調整している。この半導体レーザにおいては、サージ電圧がある電圧以上になると電流狭窄を行っているpnpn構造のサイリスタのターンオン動作が生じ、サージ電流が電流狭窄部を流れ、発光部分の電流が増加しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2685332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、実屈折率型半導体レーザの耐サージ特性を改善するために、実屈折率型半導体レーザの構造に上記特許文献1に開示された半導体レーザの構造を利用した場合、以下の点について配慮がなされていなかった。例えば実屈折率型半導体レーザは20mA以下の低い電流で発振するので、サイリスタのターンオン動作が生じる前に端面を破壊するほどの電流が流れてしまう。従って、実屈折率型半導体レーザの耐サージ特性を実効的に改善することができなかった。
【0009】
本発明は上記課題を解決するためになされたものである。従って、本発明は、動作電流が小さく、高温動作特性に優れ、かつ耐サージ特性に優れた半導体レーザ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の実施例に係る第1特徴は、半導体レーザにおいて、基板と、基板上に配設された第1の導電型の第1のクラッド層と、第1のクラッド層上に配設された活性層と、活性層上の一部に配設され、第1の導電型の第1のドーパント及び第1の導電型とは反対の第2の導電型の第2のドーパントの双方を有し、第2のドーパントの濃度が第1のドーパントの濃度に比べて高い第2の導電型の第1の半導体領域、及び活性層上の他の一部に配設され、第1のドーパント及び第2のドーパントの双方を有し、第1のドーパントの濃度が第2のドーパントの濃度に比べて高い第1の導電型の第2の半導体領域を有する第2のクラッド層と、第2のクラッド層の第1の半導体領域上に配設され、第2の導電型の第3のクラッド層を有するリッジ部と、第2のクラッド層の第2の半導体領域上に配設され、第1の導電型の第3の半導体領域及びこの第3の半導体領域上の第2の導電型の第4の半導体領域を有する電流狭窄層とを備える。
【0011】
第1の特徴に係る半導体レーザにおいて、リッジ部下における活性層と第2のクラッド層の第1の半導体領域との接合部のバンドギャップに比べて、電流狭窄層の第3の半導体領域と第4の半導体領域との接合部のバンドギャップが大きいことが好ましい。また、第1の特徴に係る半導体レーザにおいて、第2のドーパントの拡散速度は第1のドーパントの拡散速度に比べて速いことが好ましい。また、第1の特徴に係る半導体レーザにおいて、第1のドーパントはSiであり、第2のドーパントはZnであることが好ましい。また、第1の特徴に係る半導体レーザにおいて、電流狭窄層の第3の半導体領域から電流狭窄層下の第1のクラッド層に至る活性層、第2のクラッド層の第2の半導体領域が第1の導電型に設定されていることが好ましい。更に、第1の特徴に係る半導体レーザにおいて、電流狭窄層の第3の半導体領域、第4の半導体領域はいずれもAlを含む化合物半導体により構成され、第3の半導体領域と第4の半導体領域との間に、第1の導電型を有し、第3の半導体領域のAl組成比に対して異なるAl組成比を有する第5の半導体領域を備えることが好ましい。
【0012】
本発明の実施例の第2の特徴は、半導体レーザの製造方法において、基板上に第1の導電型の第1のクラッド層を形成する工程と、第1のクラッド層上に活性層を形成する工程と、活性層上に第1の導電型の第1のドーパント及び第1の導電型とは反対の第2の導電型の第2のドーパントの双方を有する第2のクラッド層を形成する工程と、第2のクラッド層上の一部に第2の導電型の第3のクラッド層を有するリッジ部を形成する工程と、第2のクラッド層上の他の一部に第1の導電型の第3の半導体領域及びこの第3の半導体領域上の第2の導電型の第4の半導体領域を有する電流狭窄層を形成する工程と、第2のクラッド層において、リッジ部下に第2のドーパントの濃度が第1のドーパントの濃度に比べて高い第2の導電型の第1の半導体領域を形成し、電流狭窄層下に第1のドーパントの濃度が第2のドーパントの濃度に比べて高い第1の導電型の第2の半導体領域を形成する工程とを備える。
【0013】
第2の特徴に係る半導体レーザの製造方法において、第2のクラッド層の第1の半導体領域及び第2の半導体領域を形成する工程は、第2のクラッド層を形成した後に熱処理を行い、第2のクラッド層の電流狭窄層下の第2のドーパントを第2のクラッド層のリッジ部下に拡散することにより、リッジ部下に第2のドーパントの濃度が第1のドーパントの濃度に比べて高い第1の半導体領域を形成し、電流狭窄層下に第1のドーパントの濃度が第2のドーパントの濃度に比べて高い第2の半導体領域を形成する工程であることが好ましい。
【0014】
本発明の実施例に係る第3の特徴は、半導体レーザにおいて、基板と、基板上に配設された第1の導電型の第1のクラッド層と、第1のクラッド層上に配設された活性層と、活性層上に配設された第2のクラッド層と、第2のクラッド層上の一部に配設され、第1の導電型とは反対の第2の導電型の第3のクラッド層を有するリッジ部と、第2のクラッド層上の他の一部に配設され、第1の導電型の第1のドーパントを有する第1の導電型の第1の半導体領域及びこの第1の半導体領域上の第2の導電型の第2の半導体領域を有する電流狭窄層と、リッジ部下において第2のクラッド層に配設され、第2の導電型の第2のドーパントを有する第2の導電型の第3の半導体領域と、電流狭窄層下において第2のクラッド層に配設され、電流狭窄層の第1の半導体領域の第1のドーパントと同一の第1のドーパントを有する第1の導電型の第4の半導体領域とを備える。
【0015】
第3の特徴に係る半導体レーザにおいて、第1のドーパントはSeであることが好ましい。また、第3の特徴に係る半導体レーザにおいて、電流狭窄層の第1の半導体領域から電流狭窄層下の第1のクラッド層に至る活性層、第2のクラッド層の第4の半導体領域が第1の導電型に設定されていることが好ましい。また、第3の特徴に係る半導体レーザにおいて、電流狭窄層の第1の半導体領域、第2の半導体領域はいずれもAlを含む化合物半導体により構成され、第1の半導体領域と第2の半導体領域との間に、第1の導電型を有し、第1の半導体領域のAl組成比に対して異なるAl組成比を有する第5の半導体領域を更に備えることが好ましい。
【0016】
本発明の実施例に係る第4の特徴は、半導体レーザの製造方法において、基板上に第1の導電型の第1のクラッド層を形成する工程と、第1のクラッド層上に活性層を形成する工程と、活性層上に第1の導電型とは反対の第2の導電型の第2のドーパントを有し第2の導電型の第1の半導体領域が生成される第2のクラッド層を形成する工程と、第2のクラッド層上の一部に第2の導電型の第3のクラッド層を有するリッジ部を形成する工程と、第2のクラッド層上の他の一部に第1の導電型の第1のドーパントを有する第1の導電型の第3の半導体領域及びこの第3の半導体領域上の第2の導電型の第4の半導体領域を有する電流狭窄層を形成する工程と、電流狭窄層の第3の半導体領域の第1のドーパントを電流狭窄層下の第2のクラッド層に拡散し、この第2のクラッド層に第1の導電型の第2の半導体領域を形成する工程とを備える。
【0017】
第4の特徴に係る半導体レーザの製造方法において、第2のクラッド層の第2の半導体領域を形成する工程は、第2のクラッド層上に電流狭窄層を形成した後に熱処理を行い、電流狭窄層下の第2のクラッド層に第3の半導体領域の第1のドーパントを拡散し、電流狭窄層下の第2のクラッド層の第2の導電型を第1の導電型に反転させた第2の半導体領域を形成する工程であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、動作電流が小さく、高温動作特性に優れ、かつ耐サージ特性に優れた半導体レーザ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザの要部拡大断面図である。
【図2】(A)及び(B)は図1に示す実屈折率型半導体レーザのリッジ部及びその直下を含む縦方向のドーパント密度プロファイルを示す図である。
【図3】(A)及び(B)は図1に示す実屈折率型半導体レーザの電流狭窄層及びその直下を含む縦方向のドーパント密度プロファイルを示す図である。
【図4】実施例1に係る実屈折率型半導体レーザの電流−電圧特性を示す図である。
【図5】実施例1に係る実屈折率型半導体レーザの光出力−電圧特性を示す図である。
【図6】実施例1に係る実屈折率型半導体レーザの製造方法を説明する第1の工程断面図である。
【図7】第2の工程断面図である。
【図8】第3の工程断面図である。
【図9】第4の工程断面図である。
【図10】第5の工程断面図である。
【図11】第6の工程断面図である。
【図12】第7の工程断面図である。
【図13】実施例1の変形例に係る実屈折率型半導体レーザの要部拡大断面図である。
【図14】本発明の実施例2に係る実屈折率型半導体レーザの要部拡大断面図である。
【図15】(A)及び(B)は図14に示す実屈折率型半導体レーザのリッジ部及びその直下を含む縦方向のドーパント密度プロファイルを示す図である。
【図16】(A)及び(B)は図14に示す実屈折率型半導体レーザの電流狭窄層及びその直下を含む縦方向のドーパント密度プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0021】
また、以下に示す実施例はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は各構成部品の配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0022】
(実施例1)
本発明の実施例1は、本発明を実屈折率型半導体レーザに適用した例を説明するものである。ここで、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ及びその製造方法は、本願発明者が実施した基礎研究により発見された下記現象に基づきなされたものである。すなわち、実屈折率型半導体レーザの製造プロセスにおいて、Zn(亜鉛)とSi(珪素)とをコドーピングしたAlGaInPクラッド層を形成し、このAlGaInPクラッド層上にZnをドーピングしたAlGaInPクラッド層を有するリッジ部を形成した後の熱履歴によって、リッジ部直下のAlGaInPクラッド層はリッジ部等からのZnの拡散によってp型のままであるが、リッジ部直下の外周囲のAlGaInPクラッド層はZnが外部に拡散しSiのドーピング濃度が支配的となるのでn型に反転する、という現象である。Znはp型ドーパントであり、Siはn型ドーパントである。
【0023】
[実屈折率型半導体レーザのデバイス構造]
図1に示すように、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1は、第1の導電型の基板2と、基板2上に配設された第1の導電型の第1のクラッド層4と、第1のクラッド層4上に配設された活性層5と、活性層5上の一部に配設され、第1の導電型の第1のドーパント及び第1の導電型とは反対の第2の導電型の第2のドーパントの双方を有し、第2のドーパントの濃度が第1のドーパントの濃度に比べて高い第2の導電型の第1の半導体領域6P、及び活性層5上の他の一部に配設され、第1のドーパント及び第2のドーパントの双方を有し、第1のドーパントの濃度が第2のドーパントの濃度に比べて高い第1の導電型の第2の半導体領域6Nを有する第2のクラッド層6と、第2のクラッド層6の第1の半導体領域6P上に配設され、第2の導電型の第3のクラッド層8Aを有するリッジ部8と、第2のクラッド層6の第2の半導体領域6N上に配設され、第1の導電型の第3の半導体領域9A及びこの第3の半導体領域9A上の第2の導電型の第4の半導体領域9Bを有する電流狭窄層9とを備えている。リッジ部8は、第2のクラッド層6の第1の半導体領域6P上に配設された第3のクラッド層8Aと、この第3のクラッド層8A上に配設された第2の導電型のキャップ層8Bとを備えている。
【0024】
更に、実屈折率型半導体レーザ1は、基板2と第1のクラッド層4との間に配設された第1の導電型のバッファ層3と、第2のクラッド層6とリッジ部8及び電流狭窄層9との間に配設された第2の導電型のエッチング停止層7と、リッジ部8上及び電流狭窄層9上に配設された第2の導電型のコンタクト層10とを備えている。
【0025】
実施例1並びにこれ以降の実施例において、第1の導電型とはn型であり、第2の導電型とはp型である。
【0026】
実屈折率型半導体レーザ1の基板2にはn型GaAs基板が使用される。基板2のバッファ層3が配設された表面とは対向する裏面の全域にn型オーミック電極12が配設されている。n型オーミック電極12には例えばAuの単層又はそれを含む複合膜が使用される。なお、基板2の表面上にバッファ層3等の化合物半導体の結晶成長を良好に行うことができ、かつ基板2の表面側にn型オーミック電極12が配設される場合には、基板2は絶縁基板であってもよい。
【0027】
バッファ層3は例えばn型GaAs層により構成されている。このn型GaAs層にはSiが例えば1×1018atoms/cm3の濃度にドーピングされており、n型GaAs層の厚みは例えば250nm〜500nmに設定されている。
【0028】
第1のクラッド層4は例えばn型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層により構成されている。このn型AlGaInP層にはSiが例えば1×1018atoms/cm3の濃度にドーピングされており、n型AlGaInP層の厚みは例えば1μm〜2μmに設定されている。
【0029】
活性層5は例えばノンドープIn0.53Ga0.47Pウエル層とノンドープ(Al0.3Ga0.7)0.5In0.5Pバリア層との二重量子井戸構造により構成されている。また、活性層5は、例えば20nm〜40nmの厚さを有するノンドープ(Al0.3Ga0.7)0.5In0.5Pガイド層、5nmの厚さを有するノンドープIn0.53Ga0.47Pウエル層、5nmの厚さを有するノンドープ(Al0.3Ga0.7)0.5In0.5Pバリア層、5nmの厚さを有するノンドープIn0.53Ga0.47Pウエル層、20nm〜40nmの厚さを有するノンドープ(Al0.3Ga0.7)0.5In0.5Pガイド層のそれぞれを順次積層して構成してもよい。いずれの場合にも、第1のクラッド層4、活性層5、第2のクラッド層6のそれぞれの接合構造はダブルヘテロ接合構造である。
【0030】
第2のクラッド層6は例えば(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層により構成されている。このAlGaInP層には、第1のドーパント(n型ドーパント)として例えばSiが2×1017 atoms/cm3の濃度にドーピングされており、第2のドーパント(p型ドーパント)として例えばZnが5×1017 atoms/cm3の濃度にドーピングされている。つまり、第2のクラッド層6には互いに異なる導電型のドーパントであるSi及びZnがコドーピングされている。AlGaInP層の厚さは例えば0.1μm〜0.2μmに設定されている。
【0031】
図2(A)は熱処理前若しくは熱履歴が生じる前におけるリッジ部8及びその直下を含む縦方向(図1に示すP1−P1線上)のドーパント濃度のプロファイルを示す。図3(A)は同様に熱処理前若しくは熱履歴が生じる前における電流狭窄層9及びその直下を含む縦方向(図1に示すP2−P2線上)のドーパント濃度のプロファイルを示す。図2(B)は熱処理後若しくは熱履歴が生じた後のリッジ部8及びその直下を含む縦方向のドーパント濃度のプロファイルを示す。図3(B)は同様に熱処理後若しくは熱履歴が生じた後の電流狭窄層9及びその直下を含む縦方向のドーパント濃度のプロファイルを示す。図2(A)、図2(B)、図3(A)及び図3(B)において、横軸は第1のクラッド層4、活性層5、第2のクラッド層6、コンタクト層10の各領域を示し、縦軸はドーパント濃度(atoms/cm3)を示す。
【0032】
図2(A)に示すように、熱処理前若しくは熱履歴が生じる前において、第2のクラッド層6のリッジ部8直下のSiのドーパント濃度は2×1017 atoms/cm3であり、Znのドーパント濃度は5×1017 atoms/cm3であり、Si及びZnの双方が混在している。図2(B)に示すように、熱処理後若しくは熱履歴が生じた後において、第2のクラッド層6のリッジ部8直下のSiのドーパント濃度並びにZnのドーパント濃度のプロファイルの形状に若干変化はあるものの、実効的な変化は生じていない。Siはほとんど拡散を生じないのに対して、Znの拡散速度はSiの拡散速度に比べて速く、Znには拡散による移動が発生する。ところが、第2のクラッド層6のリッジ部8直下においては、リッジ部8の第3のクラッド層8Aからの拡散によるZnの供給により、コドーピング直後に対してZnのドーピング濃度にはほとんど変化が見られない。従って、この第2のクラッド層6のリッジ部8直下においては、Znのドーパント濃度が維持され、Znのドーパント濃度がSiのドーパント濃度に比べて高く、p型の第1の半導体領域6Pが生成される。
【0033】
一方、図3(A)に示すように、熱処理前若しくは熱履歴を生じる前において、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下のSiのドーパント濃度及びZnのドーパント濃度は、第2のクラッド層6のリッジ部8直下のSiのドーパント濃度及びZnのドーパント濃度と同等である。図3(B)に示すように、熱処理後若しくは熱履歴が生じた後において、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下のSiのドーパント濃度は実効的な変化を生じないが、Znには拡散による移動が発生する。この第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下のZnは電流狭窄層9の第3の半導体領域9A、活性層5の電流狭窄層9直下にそれぞれ拡散され、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下等のZnのドーパント濃度はSiのドーパント濃度に比べて低くなる。すなわち、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下には、Znのドーパント濃度の低下に伴いSiのドーパント濃度が支配的になるので、p型からn型に反転し、第2のクラッド層6にn型の第2の半導体領域6Nが生成される。更に、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下から拡散により移動されたZnは、第2のクラッド層6の上層のエッチング停止層7をn型化された第2の半導体領域7Nに、第2のクラッド層6の下層の活性層5をn型化された第2の半導体領域5N又はそれに近い状態に改変する。結果的に、電流狭窄層9の第3の半導体領域9Aから第1のクラッド層4に至る経路(第2の半導体領域7N、6N及び5N)、更には第1のクラッド層4から基板2に至る経路はすべてn型化される。
【0034】
エッチング停止層7は例えばp型Ga0.5In0.5P層により構成されている。このp型GaInP層には例えば1×1018atoms/cm3の濃度においてZnのドーピングが行われ、p型GaInP層の厚みは例えば2nm〜4nmに設定されている。エッチング停止層7は、実屈折率型半導体レーザ1の製造プロセスにおいてリッジ部8のパターンニング(メサエッチング)を行う際のエッチング量を制御し、一定形状具体的にはエッチング停止層7側の底面幅が広く底面に対向する上面幅が狭い断面台形形状のリッジ部8を形成するために使用されている。エッチング停止層7は、レーザ光に対する吸収損失を抑えるために極力薄い膜厚に設定されている。
【0035】
リッジ部8の第3のクラッド層8Aは例えばp型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層により構成されている。このp型AlGaInP層には例えば1×1018atoms/cm3の濃度においてZnのドーピングが行われ、p型AlGaInP層の厚みは例えば1μm〜2μmに設定されている。キャップ層8Bは例えばp型Ga0.5In0.5P層により構成されている。p型GaInP層には例えば2×1018atoms/cm3の濃度においてZnのドーピングが行われ、p型GaInP層の厚みは例えば100nm〜200nmに設定されている。
【0036】
図1に示す実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、紙面の都合上、各層の比率を明確に示していないが、リッジ部8の幅寸法L1は同一方向の基板2の寸法L2に対してかなり小さい。例えば、基板2の寸法L2は200μmに設定され、リッジ部8の幅寸法L1は4μm〜5μmに設定されている。比率としては、基板2の寸法L2はリッジ部8の幅寸法L1の約40倍の大きさに設定されている。リッジ部8の平面形状は、特に図示していないが、同一幅寸法において基板2の表面上の一辺から対向する他の一辺に向かって延伸する細長い長方形形状により構成されている。同様に、リッジ部8の平面面積は基板2の表面面積に対して数十倍の大きさになる。
【0037】
電流狭窄層9は、基板2の表面上の中央に配設されたリッジ部8を中心に、このリッジ部8の側面にそれぞれ配設され、リッジ部8の領域を除く基板2の表面上の全域に配設されている。電流狭窄層9の第3の半導体領域(n型電流狭窄層)9Aは例えばn型Al0.5In0.5P層により構成されている。このn型AlInP層には例えば5×1017atoms/cm3の濃度においてSiのドーピングが行われ、n型AlInP層の厚さは例えば0.1μm〜0.3μmに設定されている。電流狭窄層9の第4の半導体領域(p型電流狭窄層)9Bは例えばp型Al0.5In0.5P層により構成されている。このp型AlInP層には例えば1×1018atoms/cm3の濃度においてZnのドーピングが行われ、p型AlInP層の厚さは例えば0.1μm〜0.3μmに設定されている。
【0038】
コンタクト層10は例えばp型GaAs層により構成されている。このp型GaAs層には例えば2×1018atoms/cm3の濃度においてZnがドーピングされ、p型GaAs層の厚さは例えば1μm〜2μmに設定されている。コンタクト層10の表面上にはその全域にp型オーミック電極12が配設されている。p型オーミック電極12には例えばAuの単層又はそれを含む複合膜が使用される。
【0039】
[実屈折率型半導体レーザの動作並びに特性]
前述の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の発振動作は以下の通りである。まず最初に、p型オーミック電極11からn型オーミック電極12に向かって順方向電流(発振動作電流)が注入される。図4及び図5に示すように、この電流が発振閾値以上になったとき、リッジ部8の下部に対応した活性層5からレーザ発振が生じ、実屈折率型半導体レーザ1からレーザ光を出射することができる。
【0040】
ここで、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、第2のクラッド層6のリッジ部8直下にp型の第1の半導体領域6Pが配設され、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下にn型の第2の半導体領域7N、6N及び5Nが配設されているので、リッジ部8直下における活性層5と第2のクラッド層6の第1の半導体領域6Pとのヘテロ接合部のバンドギャップに比べて、電流狭窄層9の第3の半導体領域9Aと第4の半導体領域9Bとのpn接合部のバンドギャップが大きくなる。電流狭窄部9の立ち上がり電圧は、電流狭窄部9の第3の半導体領域9Aと第4の半導体領域9Bとのpn接合部のバンドギャップにより決まるので、活性層5のバンドギャップで決まる立ち上がり電圧よりも大きくなる。このため、リッジ部8の抵抗による電圧降下がその立ち上がり電圧差に等しくなるまでリッジ部8のみに電流が流れ、低い発振動作電流によって実屈折率型半導体レーザ1の発振が生じるが、それ以上の電流が流れ電圧が上昇すると、電流狭窄効果がなくなり、図4に示すように、電流狭窄層9全体からエッチング停止層7の第2の半導体領域7N、第2のクラッド層6の第2の半導体領域6N、活性層5の第2の半導体領域5N、第1のクラッド層4,バッファ層3、基板2のそれぞれを通じてn型オーミック電極12に電流が流れる。図4において、リッジ部8の電流−電圧特性を示す線と電流狭窄層9の電流−電圧特性を示す線との交点を境に電圧が上昇すると、リッジ部8の面積よりも遙かに大面積の電流狭窄層9を通じてn型オーミック電極12側に電流を流すことができる。
【0041】
この結果、実屈折率型半導体レーザ1においては、サージ電圧のような高い電圧がp型オーミック電極11に印加されても、或いは極性が反対の高い電圧がn型オーミック電極12に印加されても、図5に示すように、端面が破壊されない光出力でしか発振が生じない。従って、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、低電圧駆動を実現して高温動作特性を改善しつつ、高電圧が印加されても電流狭窄層9の全域において余分な電流を放出することができるので、端面が破壊されず、サージ耐性を向上することができる。実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、発振動作電流が30mA〜50mAに達するとそれをピークとして光出力が劣化する。
【0042】
[実屈折率型半導体レーザの製造方法]
前述の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の製造方法は以下の通りである。まず最初に、図6に示すように、n型GaAs基板からなる基板2が準備される。基板2はここでは複数の実屈折率型半導体レーザ1の製作に使用される化合物半導体ウエーハの状態(劈開前の状態)にある。
【0043】
例えばMOCVD法を用いて、基板2の表面上の全域にバッファ層3,第1のクラッド層4、活性層5のそれぞれが順次形成される(図7参照。)。引き続き、図7に示すように、例えばMOCVD法を用いて、活性層5の表面上の全域に第2のクラッド層6が形成される。第2のクラッド層6はここでは前述のようにn型(AlGa)InP層により形成され、この第2のクラッド層6にはn型ドーパント(第1のドーパント)であるSi及びp型ドーパント(第2のドーパント)であるZnのコドーピングが行われる。図8に示すように、引き続き、例えばMOCVD法を用いて、第2のクラッド層6の表面上の全域にエッチング停止層7、リッジ部8を形成するための第3のクラッド層8A及びキャップ層8Bのそれぞれが順次形成される。
【0044】
図9に示すように、キャップ層8Bの表面上においてリッジ部8の形成領域(基板2の表面上の一部の領域)にマスク20が形成される。マスク20には例えばSiO2膜が使用される。マスク20は、例えばCVD法を用いてキャップ層8Bの表面上の全域に成膜され、フォトリソグラフィ技術を用いパターンニングを行うことにより、所定形状に形成される。
【0045】
図10に示すように、マスク20を用いてキャップ層8B及び第3のクラッド層8Aにパターンニングが行われ、台形形状の断面形状を有し、図示しないが細長いストライプ形状の平面形状を有するリッジ部8が形成される。リッジ部8の形成には例えばメサエッチングが使用される。
【0046】
図11に示すように、例えばMOCVD法を用いて、マスク20の領域以外すなわちリッジ部8以外の領域(基板2の表面上の他の一部の領域)であってエッチング停止層7の表面上の全域に電流狭窄層9が形成される。マスク20をエッチング除去した後、図12に示すように、引き続き、MOCVD法を用いて、リッジ部8の表面上及び電流狭窄層9の表面上を含む全域にコンタクト層10が形成される。
【0047】
ここで、第2のクラッド層6の形成後、第2のクラッド層6にコドーピングが行われたZnの拡散速度がSiの拡散速度に比べて非常に速いので、エッチング停止層7及びそれ以降の層の成膜に伴う熱履歴によって、Znの移動が生じる。Siの拡散速度はZnの拡散速度に比べて非常に遅いので、Siの移動はほとんど生じない。すなわち、前述の図3(A)及び図3(B)に示すように、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下のZnは、第2のクラッド層6の上層の電流狭窄層9に拡散され、Znのドーピング密度がSiのドーピング密度よりも低下し、p型からn型に反転された第2の半導体領域5N、6N及び7Nが電流狭窄層9直下に形成される。一方、前述の図2(A)及び図2(B)に示すように、第2のクラッド層6のリッジ部8直下においては、リッジ部8の第3のクラッド層8AにドーピングがなされたZnの拡散があるので、Siのドーピング密度よりZnのドーピング密度が高い状態において維持され、p型の第1の半導体領域6Pが形成される。
【0048】
実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の製造方法においては、別途熱処理工程を追加することなく、第2のクラッド層6の形成後の熱履歴を利用して、この第2のクラッド層6のリッジ部8直下に第1の半導体領域6Pを形成することができ、同時に第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下に第2の半導体領域6N等を形成することができる。しかも、第1の半導体領域6P及び第2の半導体領域6N等は、製造用マスクを用いてアライメントを行い形成しているのではなく、Znの拡散により形成されているので、リッジ部8に対してセルフアライメントにより形成されている。つまり、アライメントずれは生じない。なお、製造工程数は若干増加するものの、別途最適な条件によって組み込まれた熱処理を用いて、第2のクラッド層6に第1の半導体領域6P及び第2の半導体領域6N等を形成することができる。
【0049】
次に、コンタクト層10の表面上の全域にp型オーミック電極11及び基板2の裏面にn型オーミック電極12のそれぞれが形成される(図1参照。)。そして、リッジ部8に対して垂直な方向に所定の長さで劈開して端面を露出させることによって、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1を完成させることができる。
【0050】
以上説明したように、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、第2のクラッド層6のリッジ部8直下にp型の第1の半導体領域6Pを備え、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下にn型の第2の半導体領域6N等を備えたので、低電圧駆動を実現して高温動作特性を改善しつつ、高電圧が印加されても端面が破壊されないのでサージ耐性を向上することができる。
【0051】
[実屈折率型半導体レーザの変形例]
この変形例は、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1において、電流狭窄層9の構造を代えた例を説明するものである。
【0052】
図13に示すように、変形例に係る実屈折率型半導体レーザ1は、電流狭窄層9のn型の第3の半導体領域9Aとp型の第4の半導体領域9Bとの間に、第3の半導体領域9Aと同一導電型であるn型を有し、第3の半導体領域9AのAl組成比に対して異なるAl組成比を有する第5の半導体領域(n型電流狭窄層)9Cを備えている。第5の半導体領域9Cは例えばn型Al0.5In0.5P層により構成されている。このn型AlInP層には例えば5×1017atoms/cm3の濃度においてSiがドーピングされ、n型AlInP層の厚さは例えば0.1μm〜0.3μmに設定されている。
【0053】
電流狭窄層9の第3の半導体領域9Aはリッジ部8との屈折率の関係でAl組成比に一定の割合が必要であり、実屈折率型半導体レーザ1の物理的特性に変化を及ぼすので、第3の半導体領域9AのAl組成比は基本的に変えない。一方、電流狭窄部9の立ち上がり電圧は電流狭窄部9のpn接合部のバンドギャップにより決まるので、Al組成比を調節して電流狭窄層9の立ち上がり電圧レベルを制御するために、第4の半導体領域9Bとのpn接合部の生成に第5の半導体領域9Cが使用される。
【0054】
第5の半導体領域9CのAl組成比が第3の半導体領域9AのAl組成比に比べて大きい場合、電流狭窄層9の立ち上がり電圧は高くなる。逆に、第5の半導体領域9CのAl組成比が第3の半導体領域9AのAl組成比に比べて小さい場合、電流狭窄層9の立ち上がり電圧は低くなる。
【0055】
このように構成される実施例1の変形例に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1により得られる作用効果に加えて、電流狭窄層9の立ち上がり電圧レベルを調節することができる。
【0056】
なお、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1において、第1のドーパントにSiが使用され、第2のドーパントにZnが使用されているが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、第1のドーパントとしてn型の半導体領域を生成しかつ拡散速度が遅い元素であればよく、第2のドーパントとしてp型の半導体領域を生成しかつ拡散速度の速い元素であれば、他の元素を用いてもよい。
【0057】
(実施例2)
本発明の実施例2は、前述の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の電流狭窄層9直下のn型化領域の他の製造方法並びにその製造方法を用いて製作された実屈折率型半導体レーザ1を説明するものである。
【0058】
[実屈折率型半導体レーザのデバイス構造]
図14に示すように、実施例2に係る実屈折率型半導体レーザ1は、基本的には前述の図1に示す実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の断面構造と同一の断面構造を有するが、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下のn型の第2の半導体領域6N、エッチング停止層7のn型の第2の半導体領域7N及び活性層5のn型の第2の半導体領域5Nを生成するn型ドーパントと電流狭窄層9のn型の第3の半導体領域9Aを生成するn型ドーパントとを同一としたものである。つまり、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1は、n型ドーパントとしてSi、p型ドーパントとしてZnを使用し、第2のクラッド層6にSi及びZnのコドーピングを行い、その後の熱処理又は熱履歴によって第2のクラッド層6にp型の第1の半導体領域6P及びn型の第2の半導体領域6N等を生成したが、実施例2に係る実屈折率型半導体レーザ1は、第2のクラッド層6にp型ドーパントとしてのZnのドーピングを行い、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下のn型の第2の半導体領域6N等を電流狭窄層9のn型の第3の半導体領域9Aにドーピングを行ったn型ドーパンの拡散により生成している。実施例2において、n型ドーパントには拡散速度が速いSeが使用され、Seのドーパント濃度は例えば7×1017atoms/cm3〜8×1017atoms/cm3に設定されている。
【0059】
図15(A)は熱処理前若しくは熱履歴が生じる前におけるリッジ部8及びその直下を含む縦方向(図14に示すP3−P3線上)のドーパント密度プロファイルを示す。図16(A)は同様に熱処理前若しくは熱履歴が生じる前における電流狭窄層9及びその直下を含む縦方向(図14に示すP4−P4線上)のドーパント密度プロファイルを示す。図15(B)は熱処理後若しくは熱履歴が生じた後のリッジ部8及びその直下を含む縦方向のドーパント密度プロファイルを示す。図16(B)は同様に熱処理後若しくは熱履歴が生じた後の電流狭窄層9及びその直下を含む縦方向のドーパント密度プロファイルを示す。図15(A)、図15(B)、図16(A)及び図16(B)において、横軸は第1のクラッド層4、活性層5、第2のクラッド層6、コンタクト層10の各領域を示し、縦軸はドーパント濃度(atoms/cm3)を示す。
【0060】
図15(A)に示すように、熱処理前若しくは熱履歴が生じる前において、第2のクラッド層6のリッジ部8直下のZnのドーパント濃度は5×1017 atoms/cm3である。図15(B)に示すように、熱処理後若しくは熱履歴が生じた後において、第2のクラッド層6のリッジ部8直下のZnのドーパント濃度は、若干のプロファイルの形状変化はあるものの、実効的な変化を生じていない。従って、この第2のクラッド層6のリッジ部8直下においては、Znのドーパント濃度が維持され、p型の第1の半導体領域6Pが生成される。
【0061】
一方、図16(A)に示すように、熱処理前若しくは熱履歴を生じる前において、第2のクラッド層6の電流狭窄層9直下にはリッジ部8直下と同様にZnがドーピングされているので、クラッド層6の電流狭窄層9直下のZnのドーパント濃度はリッジ部8直下のZnのドーパント濃度と同等である。電流狭窄層9の第3の半導体領域9Aには例えば1×1018 atoms/cm3のドーパント濃度においてSeのドーピングが行われている。図16(B)に示すように、熱処理後若しくは熱履歴が生じた後において、電流狭窄層9の第3の半導体領域9Aからその直下のエッチング停止層7,第2のクラッド層6、活性層5にSeの拡散が生じ、Seのドーピング濃度がZnのドーピング濃度を上回り、エッチング停止層7にn型の第2の半導体領域7N、第2のクラッド層6にn型の第2の半導体領域6N、活性層5にn型の第2の半導体領域5Nが生成される。すなわち、電流狭窄層9直下には、p型からn型に反転された、第2の半導体領域7N、6N及び5Nが生成される。結果的に、電流狭窄層9の第3の半導体領域9Aから第1のクラッド層4に至る経路、更に第1のクラッド層4から基板2に至る経路はすべてn型化される。
【0062】
このように構成される実施例2に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、基本的には実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1と同様に、サージ電圧のような高い電圧がp型オーミック電極11に印加されても、或いは極性が反対の高い電圧がn型オーミック電極12に印加されても、前述の図5に示すように、端面が破壊されない光出力でしか発振が生じない。従って、実施例2に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、低電圧駆動を実現して高温動作特性を改善しつつ、高電圧が印加されても端面が破壊されないのでサージ耐性を向上することができる。
【0063】
[実屈折率型半導体レーザの製造方法]
実施例2に係る実屈折率型半導体レーザ1の製造方法は、基本的には実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の製造方法と同様であるが、以下点において異なる。
【0064】
第1に、前述の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の製造方法の図7に示す第2のクラッド層6を形成する工程において、第2のクラッド層6にはp型ドーパントであるZnのみのドーピングが行われる。
【0065】
第2に、前述の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の製造方法の図9に示す電流狭窄層9を形成する工程において、下層の第3の半導体領域9Aにはn型ドーパントとして拡散速度が速いSeのドーピングが行われる。なお、n型ドーパントとしてSeに限定されるものではない。
【0066】
第3に、前述の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1の製造方法の図12に示す第2のクラッド層6に第2の半導体領域6N等を形成する工程において、第2の半導体領域6Nは電流狭窄層9の第3の半導体領域9Aからのn型ドーパントの拡散により形成される。
【0067】
このように構成される実施例2に係る実屈折率型半導体レーザ1においては、実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1により得られる作用効果と同様の作用効果を奏することができる。
【0068】
[実屈折率型半導体レーザの変形例1]
実施例2の変形例1に係る実屈折率型半導体レーザ1は、前述の実施例1の変形例に係る実屈折率型半導体レーザ1と同様に、電流狭窄層9のn型の第3の半導体領域9Aとp型の第4の半導体領域9Bとの間に第3の半導体領域9AとはAl組成比が異なる同一導電型のn型の第5の半導体領域9Cを備えてもよい。
【0069】
[実屈折率型半導体レーザの変形例2]
実施例2に係る実屈折率型半導体レーザ1は、前述の実施例1に係る実屈折率型半導体レーザ1又は実施例1の変形例に係る実屈折率型半導体レーザ1に組み合わせることができる。すなわち、変形例2に係る実屈折率型半導体レーザ1は、予めZn及びSiの第2のクラッド層6へのコドーピングを行い、一方電流狭窄層9の第3の半導体領域9AにはSeのドーピングを行う。そして、実屈折率型半導体レーザ1においては、第2のクラッド層6のZnの拡散による移動に併せて、電流狭窄層9からのSeの拡散によって、活性層5にn型の第2の半導体領域5Nを形成し、第2のクラッド層6にn型の第2の半導体領域6Nを形成し、エッチング停止層7にn型の第2の半導体領域7Nを形成する。
【0070】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明を複数の実施例並びに変形例によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものでない。本発明は様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、動作電流が小さく、高温動作特性に優れ、かつ耐サージ特性に優れた半導体レーザ及びその製造方法に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…実屈折率型半導体レーザ、2…基板、3…バッファ層、4…第1のクラッド層、5…活性層、5N、6N、7N…第2の半導体領域、6…第2のクラッド層、6P…第1の半導体領域、7…エッチング停止層、8…リッジ部、9…電流狭窄層、10…コンタクト層、11…p型オーミック電極、12…n型オーミック電極、20…マスク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配設された第1の導電型の第1のクラッド層と、
前記第1のクラッド層上に配設された活性層と、
前記活性層上の一部に配設され、前記第1の導電型の第1のドーパント及び前記第1の導電型とは反対の第2の導電型の第2のドーパントの双方を有し、前記第2のドーパントの濃度が前記第1のドーパントの濃度に比べて高い前記第2の導電型の第1の半導体領域、及び前記活性層上の他の一部に配設され、前記第1のドーパント及び前記第2のドーパントの双方を有し、前記第1のドーパントの濃度が前記第2のドーパントの濃度に比べて高い前記第1の導電型の第2の半導体領域を有する第2のクラッド層と、
前記第2のクラッド層の前記第1の半導体領域上に配設され、前記第2の導電型の第3のクラッド層を有するリッジ部と、
前記第2のクラッド層の前記第2の半導体領域上に配設され、前記第1の導電型の第3の半導体領域及びこの第3の半導体領域上の前記第2の導電型の第4の半導体領域を有する電流狭窄層と、
を備えたことを特徴とする半導体レーザ。
【請求項2】
前記リッジ部下における前記活性層と前記第2のクラッド層の前記第1の半導体領域との接合部のバンドギャップに比べて、前記電流狭窄層の前記第3の半導体領域と前記第4の半導体領域との接合部のバンドギャップが大きいことを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項3】
前記第2のドーパントの拡散速度は前記第1のドーパントの拡散速度に比べて速いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体レーザ。
【請求項4】
前記第1のドーパントはSiであり、前記第2のドーパントはZnであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体レーザ。
【請求項5】
前記電流狭窄層の前記第3の半導体領域から前記電流狭窄層下の前記第1のクラッド層に至る前記活性層、前記第2のクラッド層の前記第2の半導体領域が前記第1の導電型に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の半導体レーザ。
【請求項6】
前記電流狭窄層の前記第3の半導体領域、前記第4の半導体領域はいずれもAlを含む化合物半導体により構成され、
前記第3の半導体領域と前記第4の半導体領域との間に、前記第1の導電型を有し、前記第3の半導体領域のAl組成比に対して異なるAl組成比を有する第5の半導体領域を更に備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の半導体レーザ。
【請求項7】
基板上に第1の導電型の第1のクラッド層を形成する工程と、
前記第1のクラッド層上に活性層を形成する工程と、
前記活性層上に前記第1の導電型の第1のドーパント及び前記第1の導電型とは反対の第2の導電型の第2のドーパントの双方を有する第2のクラッド層を形成する工程と、
前記第2のクラッド層上の一部に前記第2の導電型の第3のクラッド層を有するリッジ部を形成する工程と、
前記第2のクラッド層上の他の一部に前記第1の導電型の第3の半導体領域及びこの第3の半導体領域上の前記第2の導電型の第4の半導体領域を有する電流狭窄層を形成する工程と、
前記第2のクラッド層において、前記リッジ部下に前記第2のドーパントの濃度が前記第1のドーパントの濃度に比べて高い前記第2の導電型の第1の半導体領域を形成し、前記電流狭窄層下に前記第1のドーパントの濃度が前記第2のドーパントの濃度に比べて高い前記第1の導電型の第2の半導体領域を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体レーザの製造方法。
【請求項8】
前記第2のクラッド層の前記第1の半導体領域及び前記第2の半導体領域を形成する工程は、前記第2のクラッド層を形成した後に熱処理を行い、前記第2のクラッド層の前記電流狭窄層下の前記第2のドーパントを前記第2のクラッド層の前記リッジ部下に拡散することにより、前記リッジ部下に前記第2のドーパントの濃度が前記第1のドーパントの濃度に比べて高い前記第1の半導体領域を形成し、前記電流狭窄層下に前記第1のドーパントの濃度が前記第2のドーパントの濃度に比べて高い前記第2の半導体領域を形成する工程であることを特徴とする請求項7に記載の半導体レーザの製造方法。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配設された第1の導電型の第1のクラッド層と、
前記第1のクラッド層上に配設された活性層と、
前記活性層上の一部に配設され、前記第1の導電型の第1のドーパント及び前記第1の導電型とは反対の第2の導電型の第2のドーパントの双方を有し、前記第2のドーパントの濃度が前記第1のドーパントの濃度に比べて高い前記第2の導電型の第1の半導体領域、及び前記活性層上の他の一部に配設され、前記第1のドーパント及び前記第2のドーパントの双方を有し、前記第1のドーパントの濃度が前記第2のドーパントの濃度に比べて高い前記第1の導電型の第2の半導体領域を有する第2のクラッド層と、
前記第2のクラッド層の前記第1の半導体領域上に配設され、前記第2の導電型の第3のクラッド層を有するリッジ部と、
前記第2のクラッド層の前記第2の半導体領域上に配設され、前記第1の導電型の第3の半導体領域及びこの第3の半導体領域上の前記第2の導電型の第4の半導体領域を有する電流狭窄層と、
を備えたことを特徴とする半導体レーザ。
【請求項2】
前記リッジ部下における前記活性層と前記第2のクラッド層の前記第1の半導体領域との接合部のバンドギャップに比べて、前記電流狭窄層の前記第3の半導体領域と前記第4の半導体領域との接合部のバンドギャップが大きいことを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項3】
前記第2のドーパントの拡散速度は前記第1のドーパントの拡散速度に比べて速いことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体レーザ。
【請求項4】
前記第1のドーパントはSiであり、前記第2のドーパントはZnであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の半導体レーザ。
【請求項5】
前記電流狭窄層の前記第3の半導体領域から前記電流狭窄層下の前記第1のクラッド層に至る前記活性層、前記第2のクラッド層の前記第2の半導体領域が前記第1の導電型に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の半導体レーザ。
【請求項6】
前記電流狭窄層の前記第3の半導体領域、前記第4の半導体領域はいずれもAlを含む化合物半導体により構成され、
前記第3の半導体領域と前記第4の半導体領域との間に、前記第1の導電型を有し、前記第3の半導体領域のAl組成比に対して異なるAl組成比を有する第5の半導体領域を更に備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の半導体レーザ。
【請求項7】
基板上に第1の導電型の第1のクラッド層を形成する工程と、
前記第1のクラッド層上に活性層を形成する工程と、
前記活性層上に前記第1の導電型の第1のドーパント及び前記第1の導電型とは反対の第2の導電型の第2のドーパントの双方を有する第2のクラッド層を形成する工程と、
前記第2のクラッド層上の一部に前記第2の導電型の第3のクラッド層を有するリッジ部を形成する工程と、
前記第2のクラッド層上の他の一部に前記第1の導電型の第3の半導体領域及びこの第3の半導体領域上の前記第2の導電型の第4の半導体領域を有する電流狭窄層を形成する工程と、
前記第2のクラッド層において、前記リッジ部下に前記第2のドーパントの濃度が前記第1のドーパントの濃度に比べて高い前記第2の導電型の第1の半導体領域を形成し、前記電流狭窄層下に前記第1のドーパントの濃度が前記第2のドーパントの濃度に比べて高い前記第1の導電型の第2の半導体領域を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体レーザの製造方法。
【請求項8】
前記第2のクラッド層の前記第1の半導体領域及び前記第2の半導体領域を形成する工程は、前記第2のクラッド層を形成した後に熱処理を行い、前記第2のクラッド層の前記電流狭窄層下の前記第2のドーパントを前記第2のクラッド層の前記リッジ部下に拡散することにより、前記リッジ部下に前記第2のドーパントの濃度が前記第1のドーパントの濃度に比べて高い前記第1の半導体領域を形成し、前記電流狭窄層下に前記第1のドーパントの濃度が前記第2のドーパントの濃度に比べて高い前記第2の半導体領域を形成する工程であることを特徴とする請求項7に記載の半導体レーザの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−245271(P2010−245271A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92128(P2009−92128)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]