説明

半導体封止用エポキシ樹脂組成物、その製造方法及び半導体装置

【課題】 環境面や、衛生面などに影響がない金属水酸化物を難燃剤として含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止した場合において、耐薬品性試験における前記樹脂組成物の耐酸性を向上し、パッケージの白化を抑制する。
【解決手段】 エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物に、表面にアルミニウム化合物が被着した金属水酸化物を添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関し、特にその耐酸性の向上に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、及び溶融シリカや結晶シリカ等の無機充填材等を主成分とし、これに難燃剤を配合して調製されている。そして、この難燃剤として従来から臭素などのハロゲン化合物や、酸化アンチモンなどのアンチモン化合物が主として使用されているが、これらのハロゲン系難燃剤やアンチモン化合物は環境面や、衛生面等の点から問題がある。
【0003】
このため、上記のような難燃剤の代替として、赤りんやリン酸エステルなどのリン系難燃剤の他、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物が提案されている(特許文献1〜3)。
【特許文献1】特開平9−241483号
【特許文献2】特開2000−302948号
【特許文献3】特開平11−217487号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような金属水酸化物、特に水酸化マグネシウムを用いると、最終的なパッケージに白化が生じ易いという問題がある。具体的には、パッケージを封止後に封止の信頼性を確認するため、酸性水に対する耐薬品性試験が行われるが、この試験において樹脂組成物中に配合された金属水酸化物から金属イオンが溶出し、このためパッケージに白化が発生しやすく、レーザーマーキングが不鮮明になるという外観不良の問題があった。
【0005】
本発明は上記の問題を解決すべくなされたものであり、難燃剤として金属水酸化物を用いることにより環境面や、衛生面などの問題を解消するとともに、酸性条件下でも白化を抑制することができる半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びこれにより封止された半導体装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、及び、表面にアルミニウム化合物が被着した金属水酸化物を含有した樹脂組成物とすることにより、耐薬品性試験において酸性水と接触させた時の金属イオンの溶出を低減でき、耐酸性を向上して、白化の発生を抑制したものである。
【0007】
そして、前記アルミニウム化合物とともに、珪素化合物が表面を被着した金属水酸化物を用いることにより、さらに耐酸性を改善したものである。
【0008】
また、本発明は、前記金属水酸化物に水酸化マグネシウム、特に天然水酸化マグネシウムを用いることにより金属水酸化物自体の耐酸性を向上し、さらに白化を抑制したものである。
【0009】
さらに、上記エポキシ樹脂組成物を作製する場合、上記の金属水酸化物とエポキシ樹脂を予め混合した後、他の成分を混合することにより、均一な樹脂組成物とすることができ、優れた耐酸性を発揮し、白化の発生をさらに低減できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いることにより、難燃剤としてハロゲン化合物や酸化アンチモンなどの使用を不要とし、環境面、衛生面での問題を解消するとともに、酸性条件下でも、金属イオンの溶出を抑制し、封止後のパッケージにおいて白化の発生を抑制でき、レーザーマーキングが不鮮明になる外観不良を低減できる。
【0011】
また、本発明は、上記アルミニウム化合物とともに、珪素化合物も被着することにより、さらに耐酸性を向上し、確実に白化の発生を低減できる。
【0012】
そして、金属水酸化物として、水酸化マグネシウム、特に、天然水酸化マグネシウムを用いた場合、金属水酸化物自体の耐酸性を向上し、難燃性と耐酸性の両方に優れた樹脂組成物が得られる。
【0013】
さらに、本発明は、エポキシ樹脂と前記金属水酸化物を混合した後、他の成分を混合することにより、樹脂成分と上記金属水酸化物との相溶性も向上し、均一な樹脂組成物とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明を具体的に説明する。
【0015】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、及び、表面にアルミニウム化合物が被着した金属水酸化物を含有するものである。
【0016】
本発明においてエポキシ樹脂としては、半導体封止用に使用されるものであれば制限されることなく用いることができるが、例えばo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ブロム含有型エポキシ樹脂などを挙げることができ、一種または複数種を用いることができる。エポキシ樹脂の含有量は適宜調整されるが、組成物全量に対して、7〜35重量%の範囲であることが好ましい。
【0017】
また硬化剤としては、エポキシ樹脂硬化用のものであれば特に制限されないが、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、各種の多価フェノール樹脂などのフェノール系樹脂を挙げることができ、一種または複数種を用いることができる。硬化剤の含有量も適宜調整されるが、エポキシ樹脂に対して、硬化剤の化学量論上の当量比が0.5〜1.5、特に0.8〜1.2の範囲となるようにすることが好ましい。
【0018】
さらに必要に応じて、硬化促進剤を併用することもできる。硬化促進剤としては、特に制限されるものではないが、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン等の有機ホスフィン類、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、ベンジルジメチルアミン等の三級アミン、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類を用いることができる。硬化促進剤を配合する場合、その含有量も適宜調整されるが、好ましくはエポキシ樹脂と硬化剤の合計量に対して、0.1〜5重量%の範囲となるようにする。
【0019】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上記のような樹脂成分とともに、表面にアルミニウム化合物を被着した金属水酸化物を含有するものである。
【0020】
すなわち、金属水酸化物を含有することにより、環境面、衛生面での改善を図ることができるが、耐薬品性試験ではエポキシ樹脂組成物中から難燃剤として使用した金属水酸化物の金属イオンが酸性水に接触することによって溶出するため、パッケージに白化が発生しやすい。従って、この金属イオンの溶出を抑制できる金属水酸化物であれば、耐薬品性試験で白化が抑制されたエポキシ樹脂組成物とすることができると考えられた。
【0021】
本発明では、上記観点から、金属イオンの溶出を抑制するため、表面にアルミニウム化合物を被着させた金属水酸化物を用いることにより、耐酸性を向上させたものである。
【0022】
前記アルミニウム化合物としては、例えば、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどの水可溶性塩、およびアルミン酸ナトリウムなどの水可溶性アルミン酸塩あるいは有機アルミニウム化合物などが好適なものとして挙げられ、これらの中でも、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウムが好ましい。
【0023】
また、本発明の金属水酸化物は、上記アルミニウム化合物とともに、珪素化合物を被着することにより、更に金属イオンの溶出を低減することができる。
【0024】
このような、珪素化合物としては、コロイダルシリカ、エチルシリケート等のシリカ前駆体、オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、種々の組成の水ガラスなどの水溶性珪酸塩などが好適なものとして挙げられ、これらの中でもコロイダルシリカ、珪酸ナトリウム及びエチルシリケート等のシリカ前駆体が好ましい。上記アルミニウム化合物及び珪素化合物は、それぞれ1種または複数を使用することができ、またアルミノシリケートなどの反応物も用いることができる。
【0025】
なお、上記アルミニウム化合物、珪素化合物の金属水酸化物の表面への被着は、物理的、化学的いずれであっても良く、表面処理によりこれらの化合物が付着あるいは吸着していれば足りる。
【0026】
本発明の上記アルミニウム化合物の処理量としては、金属水酸化物に対して酸化物(Al23)換算で、0.05〜5重量%、好ましくは、1〜4重量%である。また、珪素化合物の処理量としては、金属水酸化物に対して酸化物(SiO2)換算で、0〜5重量%であり、好ましくは、1〜4重量%である。アルミニウム化合物または珪素化合物の処理量を上記範囲にすることにより、さらに耐酸性を改善することができる。
【0027】
また、アルミニウム化合物あるいは珪素化合物の表面処理の合計量としては、金属水酸化物に対して、各酸化物換算で、(Al23+SiO2)を、0.05〜8重量%とすることが好ましい。なお、アルミニウム化合物及び珪素化合物を併用する場合、各処理量の割合は特に制限されず、被着する各化合物の種類に応じて適宜選択できるが、好ましくは各酸化物換算で等量である。
【0028】
本発明に用いられる上記金属水酸化物としては、従来一般に難燃剤として使用されている水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化チタンなどを挙げることができ、これらの中でも水酸化マグネシウムが好ましい。このような金属水酸化物により樹脂組成物に十分な難燃性を付与することができる。
【0029】
また、水酸化マグネシウムを用いる場合、合成水酸化マグネシウムと天然水酸化マグネシウムがあるが、天然物を用いることが好ましい。天然水酸化マグネシウムは、例えば、水酸化マグネシウム(ブルーサイト鉱石)を粉砕して得ることができる。天然物の水酸化マグネシウムは、合成水酸化マグネシウムと比べて、白化の発生が抑制できることも本発明者等は見出している。この理由は明らかではないが、酸性水との接触による白化は水酸化マグネシウムが炭酸マグネシウムに変化するために生じるものと考えられており、一方、天然水酸化マグネシウムの方が合成水酸化マグネシウムよりも比表面積が小さく、このため天然水酸化マグネシウムの方が酸等と反応しうる面積が小さくなって、炭酸マグネシウムの生成が抑制され、白化が抑制されるものと考えられる。
【0030】
天然水酸化マグネシウムは、合成水酸化マグネシウムのように均一な六角形状や、扁平形状でなく、一定の形状をしていないため、その平均粒径が30μm以下のものを用いることが好ましく、より好ましくは15μm以下である。このような粒径の天然水酸化マグネシウムを用いることにより、樹脂成分との相溶性が高まり、更に白化の発生が抑制されるという点でも好ましい。粒径の下限は特に限定されないが、成形性を考慮すれば、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上である。
【0031】
上記金属水酸化物をアルミニウム化合物、あるいはこれと珪素化合物で被着処理する方法としては、気相、液相いずれでも可能であるが、製造を考慮すれば液相処理が容易である。例えば、水酸化マグネシウムでは、これを水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶液に混合し、180〜200℃で、5〜15時間水熱処理した後、水で洗浄して水酸化マグネシウム溶液を調整する。この溶液に、上記のようなアルミニウム化合物、あるいはアルミニウム化合物と珪素化合物の混合水溶液を常温で添加して被着処理した後、洗浄し、ろ過、乾燥、粉砕して、アルミニウム化合物、珪素化合物が被着した水酸化マグネシウムを得ることができる。なお、アルミニウム化合物、珪素化合物を併用する場合、いずれかを先に投入して処理することも可能であるが、均一な被着を行うためにも、混合液で添加することが好ましい。
【0032】
また、本発明の金属水酸化物は、さらにシランカップリング剤で処理されていることが好ましい。このような表面処理剤により、エポキシ樹脂との相溶性を向上し、白化をさらに抑制できる。シランカップリング剤としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのグリシドキシシラン、あるいはアミノシランなどを用いることができる。特に、前述の天然水酸化マグネシウムは、その形状から樹脂と均一に混合することに困難な場合があるが、上記のようなシランカップリング剤による表面処理が施された天然水酸化マグネシウムを用いると、水酸化マグネシウムと樹脂との相溶性が高くなり、組成物中に水酸化マグネシウムを均一に分散させることができるものであり、このためにパッケージ表面に露出する水酸化マグネシウムの表面積が低減されることからパッケージの白化をさらに低減可能であるため好ましい。
【0033】
本発明の樹脂組成物中での金属水酸化物の量は、半導体装置のパッケージに所望の難燃性を付与することができるように適宜の量に調整できるが、組成物全体に対して、5〜30重量%の範囲であることが好ましい。
【0034】
また、本発明では無機充填材として、非晶質シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカや、アルミナ、ガラス、ミルドフアイバーガラス、酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、カオリン、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等の従来から公知の無機充填材を上記金属水酸化物とともに用いることができるが、特に好ましいのは非晶質シリカ、結晶シリカ、合成シリカ等のシリカ類や、球状アルミナである。
【0035】
また、本発明では樹脂組成物中に、離型剤、着色剤、シリコーン可とう剤などの種々の添加剤を適宜配合することできる。例えばシリコーン可とう剤としては、エポキシ/ポリエーテル基含有ポリシロキサンを挙げることができる。
【0036】
上記のような成分から本発明のエポキシ樹脂組成物を調整するに当たっては、一般的な製法を適宜採用することができる。例えば、調整される組成物の性状が液体状である場合には各成分を配合した後に溶解混合するか、またはミキサー、ブレンダーなどで均一に混合した後に、ニーダーやロール等で加熱混練して、液体状の樹脂組成物を得ることができる。また、調整される樹脂組成物の性状が固体状である場合は、各成分を配合した後に溶解混合するか、またはミキサーやブレンダーなどで均一に混合した後に、ニーダーやロール等で加熱混練したものを、冷却固化した後、粉砕して粉末状の樹脂組成部を得るものである。またさらに必要に応じて粉末状の樹脂組成物をタブレット状に打錠することもできる。
【0037】
また、このエポキシ樹脂組成物の調整に当たっては、エポキシ樹脂の全部または一部と金属水酸化物を予め加熱混合し、これと残りの成分とを上記のように混合することが好ましい。このときエポキシ樹脂の全部又は一部と金属水酸化物とは100〜120℃で加熱混合することが好ましい。
【0038】
上記のようにして得られた半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて半導体を封止するにあたっては、一般的な手法を適宜採用することができるが、半導体装置を製造する一例を挙げると、先ずリードフレーム上に半導体素子をダイボンディングした後、Au等の細線ワイヤを用いたワイヤボンディング法などでリードフレームと半導体素子を結線する。次に、上記の半導体封止用樹脂組成物を用いて、半導体装置と結線部分とを樹脂封止する。
【0039】
ここで、樹脂封止を行うにあたっては、封止用エポキシ樹脂組成物が固体状である場合には、粉末状またはタブレット状の半導体封止用エポキシ樹脂組成物をトランスファー成形等により金型成形することができ、半導体封止用エポキシ樹脂組成物が液体状である場合には、キャスティングやポッティング、印刷等の方法により注型、固化することができる。また必要に応じて、アフターキュアを施すようにしてもよい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0041】
<金属水酸化物の被着処理>
[水酸化マグネシウム(1)]
合成水酸化マグネシウム(協和化学工業(株)製、品番「キスマ8」、平均粒径1.7μm)100重量部、水酸化ナトリウム300重量部を水1500重量部に撹拌混合して溶液を調整した。オートクレーブを用い、この溶液を撹拌しながら200℃、5時間水熱処理した後、大量の水で十分洗浄し、水中に投入して混合液を作製した。混合液を常温で撹拌しながら、アルミン酸ナトリウム及びコロイダルシリカの混合水溶液を添加した。アルミン酸ナトリウム、コロイダルシリカの添加量は、Al23、SiO2に換算してそれぞれ水酸化マグネシウムに対し3重量部とした。1時間撹拌後、ろ過、水洗、乾燥し、粉砕してアルミニウム化合物及び珪素化合物を被着した水酸化マグネシウム(1)を作製した。
【0042】
[水酸化マグネシウム(2)]
水酸化マグネシウム(1)の作製において、水熱処理時間を10時間とした以外は同様にして、アルミニウム化合物及び珪素化合物を被着した水酸化マグネシウム(2)を作製した。
【0043】
[水酸化マグネシウム(3)]
水酸化マグネシウム(1)の作製において、コロイダルシリカを添加しなかった以外は同様にして、アルミニウム化合物を被着した水酸化マグネシウム(3)を作製した。
【0044】
[水酸化マグネシウム(4)]
水酸化マグネシウム(1)の作製において、合成水酸化マグネシウムの代わりに、天然水酸化マグネシウム(神島化学工業(株)製、品番「WH−25」、平均粒径:6.7μm)を用いた以外は同様にして、アルミニウム化合物及び珪素化合物を被着した水酸化マグネシウム(4)を作製した。
【0045】
<実施例1〜5及び比較例1>
[エポキシ樹脂組成物の作製(A)]
下記表1に示す組成となるように、水酸化マグネシウムと溶融シリカをシランカップリング剤で処理し、その混合物に残りの成分を配合し、ブレンダーで30分間混合し、均一化した後、80℃に加熱したニーダーで混練溶融させて押し出し、冷却後、粉砕機で粉砕して、粒状のエポキシ樹脂組成物を作製した。
【0046】
[エポキシ樹脂組成物の作製(B)]
下記表1に示す組成となるように、まず上記水酸化マグネシウム(1)をエポキシ樹脂と100℃で加熱混合し、その後上記エポキシ樹脂組成物の作製(A)の条件と同様にして残りの成分を混合し、エポキシ樹脂組成物を作製した。
【0047】
表1中に示された各成分の詳細は以下の通りである。
・o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂:住友化学(株)製、品番「ESCN195XL」、エポキシ当量195
・フェノールノボラック樹脂:荒川化学(株)製、品番「タマノール752」、水酸基当量104
・溶融シリカ:電気化学工業株式会社製、品番「FB820」と、(株)アドマテックス製、品番「SO−25R」とを、重量比率が9:1となるように混合した混合物
・γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:信越化学工業(株)製、品番「KBM403」
・エポキシ/ポリエーテル基含有ポリシロキサン:東レ・ダウコーニング(株)製、品番「SF8421」
・カーボンブラック:三菱化学社製、品番「40B」
・硬化促進剤:トリフェニルホスフィン、北興化学工業(株)製、品番「TPP」
・カルナバワックス:大日化学社製、品番「Fl−100」
【0048】
以上のようにして作製した各エポキシ樹脂組成物を用い、金型温度175℃、注入圧力70kgf/cm2(6.9MPa)、成形時間90秒の条件でトランスファ成形を行い、評価用のパッケージ(16DIP)を作製して、白化試験及びプレッシャー・クッカー・バイアス信頼性試験による評価を行った。これらの結果を表1に示す。
【0049】
[白化試験]
得られたパッケージを、0.1N(0.1mol/l)の塩酸水溶液中に24時間浸漬した後の外観を観察し、初期のパッケージの色(黒色)を10、シリカの色(白色)を0として、11段階で評価した。
【0050】
[プレッシャー・クッカー・バイアス信頼性試験(PCBT)]
得られたパッケージを、138.5℃、相対湿度85%、印加電圧25Vの条件で試験を行った。試験は各20個のサンプルについて行い、このサンプル数(分母)に対する不良発生数(分子)にて評価した。
【0051】
【表1】

【0052】
表1に示すように、実施例1〜5の本発明のアルミニウム化合物あるいはアルミニウム化合物と珪素化合物の両方を被着した水酸化マグネシウムからなるエポキシ樹脂組成物を用いて作製したパッケージは、白化の程度が小さく、耐酸性が改善されていることが分かる。特に、実施例3のアルミニウム化合物及び珪素化合物の両者を被着処理した水酸化マグネシウムをエポキシ樹脂と予備混合してなるエポキシ樹脂組成物を用いた場合、白化が全くみられず、優れた耐酸性を有している。また、天然水酸化マグネシウムを用いた実施例5でも、同様に白化が見られず、合成水酸化マグネシウムと比べ、耐酸性が向上していることが分かる。さらに、表1に示すように、PCBTにおいても、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた場合、金属イオンの溶出が抑制されるため、不良発生数を低下できることが分かる。
【0053】
これに対して、被着処理をしていない合成水酸化マグネシウムを用いた比較例1のエポキシ樹脂組成物は、白化の程度が大きく、耐酸性が不十分であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、及び、表面にアルミニウム化合物が被着した金属水酸化物を含有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記金属水酸化物が、さらに珪素化合物を被着した金属水酸化物である請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記アルミニウム化合物、珪素化合物の被着量が、前記金属水酸化物に対して酸化物換算で、Al23が、0.05〜5重量%、SiO2が、0〜5重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記アルミニウム化合物が、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム及びアルミン酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3いずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記珪素化合物が、コロイダルシリカ、珪酸ナトリウム、シリカ前駆体からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2〜4いずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記金属水酸化物が水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
前記水酸化マグネシウムが天然物であることを特徴とする請求項6記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7いずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物を用いて封止した半導体装置。
【請求項9】
エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、及び、表面にアルミニウム化合物が被着した金属水酸化物からなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法であって、前記エポキシ樹脂と、前記金属水酸化物を混合した後、他の成分を混合することを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法。

【公開番号】特開2006−8839(P2006−8839A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187592(P2004−187592)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】