説明

半導体測定装置

【課題】 厚みが薄い試験対象ウエハであっても撓みなく支持できるとともに、簡単な構造で試験対象ウエハの裏面電極にプローブ針を確実かつ簡便に接触させることができる半導体測定装置を提供することを課題とする。
【解決手段】 試験対象ウエハを支持する支持面を備えたウエハチャックと;
前記ウエハチャックを上下方向に貫通する少なくとも3本のチャックピンと;前記チャックピンを上下方向に移動させる第1移動機構と;前記チャックピンの内側に内挿される少なくとも1本の下プローブ針と;前記下プローブ針を上下方向に移動させる第2移動機構と;前記ウエハチャックを上下方向及び水平方向に移動させる第3移動機構と;前記上プローブ針及び前記下プローブ針と電気的に接続されるテスタ装置とを有している半導体測定装置を提供することによって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子、特に、パワートランジスタなどの電力用半導体素子の電気的特性を試験する半導体測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワートランジスタ、整流ダイオード、サイリスタ、パワーMOSFETなどの電力用半導体素子は、発電や送電などの電力分野を始めとして、電気鉄道分野、自動車、家庭用電化製品など非常に幅広く使用されており、その電気的特性を試験する測定装置も多数提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上下動自在な裏面電極針と、上部電極針との間に半導体素子が形成されたウエハを支持するウエハ支持枠を設け、ウエハ支持枠をフォーシング端子、裏面電極をセンシング端子として、被験半導体素子の真裏側面でケルビンコンタクトをとるようにした測定装置が開示されている。また、特許文献2には、被験半導体素子が形成されたウエハの外縁部をウエハホルダーで支持し、ウエハの裏面から接触するプローブの接触面積を被験半導体素子の裏面の面積と等しくして、半導体素子の裏面の不具合を検出するようにした測定装置が提案されている。さらに、特許文献3には、半導体ウエハに上下から接触するプローブの可動量を制御する制御手段を設けることによって、厚みの薄いウエハにおいても適切な押圧力でプローブを接触させることができるようにした試験装置が開示されている。
【0004】
しかし、これら従来の測定装置或いは試験装置においては、ウエハをウエハ支持枠或いはウエハホルダーなどによってその外縁で支持しているので、ウエハの厚さが薄くなると、ウエハ自身が撓み、プローブ針と半導体素子の電極との間で正確なコンタクトが行えないという問題点がある。また、ウエハ支持枠或いはウエハホルダーは、ウエハの外縁部と接しているだけであるので、ウエハ支持枠或いはウエハホルダーを介してのウエハの温度制御が難しいという欠点もある。
【0005】
一方、特許文献4及び特許文献5には、ステージと呼ばれるウエハ支持台をウエハの裏面全体と接触させてウエハを支持することにより、薄いウエハであっても撓みが発生しないようにした測定装置及び試験装置がそれぞれ開示されている。これらの測定装置又は試験装置においては、ウエハの裏面電極とプローブ針との接触は、前記ステージに複数の挿入孔を形成しておいて、測定時には、被験半導体素子のほぼ真下に位置する挿入孔の下までプローブ針を移動させて、その位置でプローブ針を上昇させてプローブ針をウエハの裏面電極に接触させる(特許文献4)か、或いは、ステージに設けられた複数の挿入孔のそれぞれに予めコンタクトピンを挿入しておき、測定時には、被験半導体素子のほぼ真下に位置するコンタクトピンの下までコンタクト片を移動させ、その位置でコンタクト片を上昇させて直上のコンタクトピンを押し上げて、ウエハの裏面電極と接触するようにしている(特許文献5)。これにより、これらの測定装置又は試験装置においては、測定電流はウエハ裏面電極の厚み方向に流れ、被験半導体素子の真裏からプローブ針との接触点までの電位差が抵抗分として測定値に重畳されることがないので、精度の高い測定ができるとされている。
【0006】
しかし、特許文献4及び特許文献5に開示されている測定装置及び試験装置においては、試験対象ウエハを新しいウエハに切り替えたり、同じ試験対象ウエハ上であっても被験半導体素子を次の半導体素子へと切り替えると、それに合わせて測定用のプローブ針又はコンタクト片を新たな被験半導体素子のほぼ真下に位置する挿入孔又はコンタクトピンの下まで移動させる必要があり、その移動位置の割り出し作業が煩雑である上に、プローブ針又はコンタクト片を実際に所定の位置まで移動させる移動機構を必要とし、移動にも時間を要するので測定効率が悪くなるという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平4−14933号公報
【特許文献2】特開2000−114325号公報
【特許文献3】特開2003−332395号公報
【特許文献4】実開平3−45643号公報
【特許文献5】特開2004−311799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の半導体測定装置の不都合や欠点を解消するために為されたもので、厚みが薄い試験対象ウエハであっても撓みなく支持できるとともに、簡単な構造で試験対象ウエハの裏面電極にプローブ針を確実かつ簡便に接触させることができる半導体測定装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、従来から試験対象ウエハを一時的に支持するために用いられているチャックピンがウエハチャックを貫通してウエハチャックに対して相対的に上下動するものであることに着目し、このチャックピンの内部にプローブ針を内挿させ、かつ、内挿したプローブ針をウエハチャックに対して相対的に上下方向に移動可能とすることによって、試験対象ウエハを支持する支持面を備えたウエハチャックを使用しつつ、簡単な構造で、下プローブ針を試験対象ウエハの裏面電極と簡便に接触させることができることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、ウエハ上に形成された複数の半導体素子の各々の表面電極と前記ウエハの裏面電極のそれぞれにプローブ針を接触させて半導体素子の特性を試験する半導体測定装置であって、試験対象ウエハを支持する支持面を備えたウエハチャックと;前記ウエハチャックを上下方向に貫通する少なくとも3本のチャックピンと;前記チャックピンを前記ウエハチャックに対して相対的に上下方向に移動させる第1移動機構と;前記チャックピンの内側に内挿される少なくとも1本の下プローブ針と;前記下プローブ針を前記ウエハチャックに対して相対的に上下方向に移動させる第2移動機構と;前記ウエハチャックを、前記チャックピン及び前記下プローブ針とともに、前記ウエハチャックの上部に位置する上プローブ針に対して相対的に上下方向及び水平方向に移動させる第3移動機構と;前記上プローブ針及び前記下プローブ針と電気的に接続されるテスタ装置とを有している半導体測定装置を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0011】
本発明の半導体測定装置においては、上述のとおり、少なくとも3本あるチャックピンのうちの少なくとも1本に下プローブ針が内挿されており、この下プローブ針がウエハチャックに対して相対的に上下方向に移動可能とされているので、前記チャックピンを用いて試験対象ウエハをウエハチャックの支持面上に載置、支持させた後、チャックピンに内挿されている下プローブ針を上昇させることによって、下プローブ針を試験対象ウエハの裏面電極に接触させることができる。
【0012】
下プローブ針は1本以上あれば良いが、2本、若しくは3本以上であっても良い。下プローブ針が2本若しくは2本以上であれば、2本の下プローブ針間の導通の有無を調べることによって、ウエハの有無を検知したり、下プローブ針とウエハの裏面電極との接触状態の良否や、テスタ装置の動作の良否を確認することができるので便利である。なお、チャックピンの径が比較的大きい場合には、1本のチャックピン内に複数本の下プローブ針を内挿するようにしても良いが、通常は1本のチャックピン内には1本の下プローブ針を内挿させるのが好ましい。
【0013】
また、チャックピンは、その上端で試験対象ウエハを支持する必要上、少なくとも3本は必要である。4本以上のチャックピンを設けても良いが、通常は3本で十分である。チャックピンが3本である場合、各チャックピンは、その上端が平面的に見て正三角形を形成するように等間隔に配置されるのが好ましい。いずれにせよ、3本若しくは4本以上のチャックピンの上端面は、試験対象ウエハの裏面とうまく接触するように単一平面上に位置させるのが良い。
【0014】
本発明の半導体測定装置は、その好ましい一態様において、前記ウエハチャックが導電性であり、前記ウエハチャックの中央部に接続されるフォース線と、前記下プローブ針と接続されるセンス線とを備え、かつ、前記上プローブ針がフォース側上プローブ針とセンス側上プローブ針とからなり、前記フォース側上プローブ針と接続されるフォース線と、前記センス側上プローブ針と接続されるセンス線とを備えている。各センス線及び各フォース線は前記テスタ装置に接続される。本発明の半導体測定装置がこのようなフォース線及びセンス線を備えている場合には、ケルビン接続により、より正確な測定ができるので好ましい。
【0015】
さらに、本発明の半導体測定装置は、その好ましい一態様において、前記チャックピンが、その上端部で試験対象ウエハを支持したときに、試験対象ウエハを吸引支持する吸引用の孔を備えている。これにより、チャックピンによる試験対象ウエハの支持をより確実なものとすることができる。
【0016】
また、本発明の半導体測定装置は、その好ましい一態様において、前記ウエハチャックの前記支持面を加熱又は冷却する加熱手段及び/又は冷却手段を備えている。本発明の半導体測定装置がこのような加熱手段及び/又は冷却手段を備えている場合には、ウエハチャックの支持面の温度を適宜制御して、所望の温度若しくは温度変化時における半導体素子の電気的特性を試験することができるので便利である。
【0017】
なお、本発明の半導体測定装置が対象とする半導体素子は、それらがウエハ上に形成されており、各半導体素子上の電極とウエハの裏面電極とにプローブ針を接触させてその電気的特性を試験することができるものである限りいかなるものであっても良いが、一般にパワーデバイスと呼ばれるパワートランジスタ、パワーMOSFET、サイリスタ、整流ダイオード、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、トライアックなどの電力用半導体素子を対象とする場合に、本発明の半導体測定装置及び半導体測定方法は最も効果的である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の半導体測定装置によれば、チャックピンを用いて試験対象ウエハをウエハチャックの支持面上に載置し、ウエハチャックによって支持させた後、チャックピンに内挿された下プローブ針を試験対象ウエハに向かって上昇させるだけで下プローブ針を試験対象ウエハの裏面電極と接触させることができる。このため、本発明の半導体測定装置によれば、試験対象ウエハの自重による撓みを危惧することなく、簡単な構成で速やかに試験対象ウエハの表裏からプローブ針を接触させてウエハ上に形成されている半導体素子の電気的特性を試験することができるという利点が得られる。また、本発明の半導体測定装置におけるウエハチャックに、その試験対象ウエハの支持面を加熱又は冷却する加熱手段及び/又は冷却手段が設けられる場合には、支持面の温度を適宜制御して、所望の温度若しくは温度変化時における半導体素子の電気的特性を試験することができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の半導体測定装置の一例を示す部分断面側面図である。
【図2】ウエハチャック部分の部分断面拡大図である。
【図3】チャックピンの拡大断面図である。
【図4】ウエハチャックの平面図である。
【図5】ウエハチャック、チャックピン、及び下プローブ針の位置関係を示す分解斜視図である。
【図6】本発明の半導体測定装置の動作を説明する部分断面側面図である。
【図7】本発明の半導体測定装置の動作を説明する部分断面側面図である。
【図8】本発明の半導体測定装置の動作を説明する部分断面側面図である。
【図9】本発明の半導体測定装置の動作を説明する部分断面側面図である。
【図10】本発明の半導体測定装置の他の一例の要部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0021】
図1は、本発明の半導体測定装置の一例を示す部分断面側面図である。図1において、1は本発明の半導体測定装置であり、2は試験対象ウエハ、3はウエハチャック、4は、試験対象ウエハ2を支持するウエハチャック3の支持面、5a、5b、5cはチャックピン、6はチャックピンベース板である。図1においては、チャックピン5a〜5cのうち、チャックピン5aと5cだけが断面で示されている。また、図に示すとおり、チャックピン5a〜5cは、ウエハチャック3を上下方向に貫通している。7は、チャックピン5a〜5cをチャックピンベース板6ごとウエハチャック3に対して上下方向に移動させる第1移動機構であり、ウエハチャックベース板8に取り付けられている。
【0022】
図1に示す状態においては、チャックピン5a〜5cの上端面は支持面4よりも若干、下方に下がった位置にあり、試験対象ウエハ2の裏面は、ウエハチャック3の支持面4と接触している。なお、本例においては、チャックピン5a〜5cは3本であるが、4本若しくは5本以上であっても良い。ただし、チャックピン5a〜5cは、その上端面が支持面4よりも上にある状態で試験対象ウエハ2を安定に支持する必要上、少なくとも3本必要である。また、図示の例では、第1移動機構7によって、チャックピン5a〜5cをウエハチャック3に対して上下方向に移動させるようにしているが、チャックピン5a〜5cはウエハチャック3に対して相対的に上下方向に移動すれば良く、ウエハチャック3をチャックピン5a〜5cに対して上下方向に移動させるようにしても良い。
【0023】
9a、9b、9cは、それぞれチャックピン5a、5b、5cに内挿された下プローブ針、10は下プローブ針ベース板、11は下プローブ針9a〜9cを下プローブ針ベース板10ごとウエハチャック3に対して上下方向に移動させる第2移動機構であり、第1移動機構7と同様に、ウエハチャックベース板8に取り付けられている。なお、図示の例では、下プローブ針9a〜9cは、チャックピン5a〜5cの各々に各1本ずつ内挿されているが、必ずしも全てのチャックピン5a〜5c内に下プローブ針9a〜9cを内挿させる必要はなく、3本のチャックピン5a〜5cのうちの2本又は1本にのみ、下プローブ針を内挿させるようにしても良い。また、図示の例では、第2移動機構11によって、下プローブ針9a〜9cをウエハチャック3に対して上下方向に移動させるようにしているが、下プローブ針9a〜9cはウエハチャック3に対して相対的に上下方向に移動すれば良く、ウエハチャック3を下プローブ針9a〜9cに対して上下方向に移動させるようにしても良い。
【0024】
本例において、ウエハチャック3は導電性であり、ウエハチャック3の下面中央部には、フォース線12fが接続され、フォース線12fの他端は、テスタ装置Tに接続されている。12sはセンス線であり、センス線12sの一端は下プローブ針ベース板10を介して、下プローブ針9a〜9cと接続され、他端はテスタ装置Tに接続されている。13はXYZθステージであり、13a、13b、13c、13dは、それぞれ、X軸移動機構、Y軸移動機構、Z軸移動機構、及びθ軸移動機構である。XYZθステージ13は、ウエハチャック3を、チャックピン5a〜5c、及び下プローブ針9a〜9cとともに、ウエハチャック3の上部に位置する上プローブ針に対して相対的に上下方向及び水平方向に移動させる第3移動機構を構成している。
【0025】
14sはセンス側上プローブ針、14fはフォース側上プローブ針であり、15sはセンス側上プローブ針14sとテスタ装置Tを接続するセンス線、15fはフォース側上プローブ針14fとテスタ装置Tを接続するフォース線である。16はプローブマニュピレータ、17はプローバベース板である。なお、図示の例では、上プローブ針として、センス側上プローブ針14s及びフォース側上プローブ針14fが設けられ、下プローブ針9a〜9c及びウエハチャック3の下面中央部に接続されたフォース線12fとで、ケルビン接続を構成しているが、本発明の半導体測定装置1におけるプローブ針の接続はケルビン接続に限られず、下プローブ針9a〜9cと1本の上プローブ針とで構成される単接続であっても良い。また、図示の例では、センス側上プローブ針14sとフォース側上プローブ針14fとは、プローブマニュピレータ16に取り付けられているが、上プローブ針はプローブカードに取り付けられていても良い。
【0026】
図2は、図1におけるウエハチャック3の部分断面拡大図であり、図1におけると同じ部材には同じ符号を付してある。図2において、18a、18b、18cは、ウエハチャック3の支持面4に設けられた吸引溝、19はウエハチャック3に内蔵された加熱及び/又は冷却手段である。加熱及び/又は冷却手段19としては、ウエハチャック3を加熱又は冷却することができる限りどのようなものを使用しても良く、例えば加熱だけであれば、電気エネルギーを熱エネルギーに変えるヒータを用いれば良く、また、加熱と冷却の双方を行わせるのであれば、例えば、ペルチエ効果を利用したペルチエ素子などを用いることができる。
【0027】
図3はチャックピン5aを拡大断面図である。図に示すとおり、チャックピン5aは、外筒20と、外筒20と同軸の内筒21からなる二重構造を有しており、外筒20と内筒21との間には空気通路22が形成されている。空気通路22の一端は、外筒20及び内筒21の上端から上方外部に向かって開口しており、他端は管路23を介して図示しない適宜の吸引装置と接続されている。吸引装置を作動させて空気通路22内を吸引することにより、チャックピン5aは、外筒20と内容21の上端で試験対象ウエハを吸着、支持することができる。内筒21の内側には下プローブ針9aが内挿されており、下プローブ針9aは内筒21の内側を自在に上下方向に移動可能である。なお、下プローブ針9aは図示しない弾性手段によって上方に向かって付勢されている。下プローブ針9aとしては、自身の内部に弾性付勢手段を備える、例えば、ポゴピンを用いても良い。なお、以上はチャックピン5aについてのみ説明したが、他のチャックピン5b、5cについても同様である。
【0028】
図4は、ウエハチャック3の平面図である。図に示すとおり、ウエハチャック3の支持面4には、同心状に吸引溝18a、18b、18cが形成されており、各吸引溝18a〜18cは連絡溝24によって連通状態にあり、連絡溝24の先端は管路23を介して図示しない吸引装置に接続されている。吸引装置を作動させて、吸引溝18a、18b、18c内を吸引することにより、ウエハチャック3は、支持面4上に試験対象ウエハを吸着、支持することができる。
【0029】
図5は、ウエハチャック3、チャックピン5a〜5c、及び下プローブ針9a〜9cの位置関係を示す分解斜視図である。図に示すとおり、ウエハチャック3には、ウエハチャック3を上下に貫通する孔3a、3b、3cが設けられており、チャックピン5a、5b、5cは、それぞれ貫通孔3a、3b、3cを貫通する位置に配置されている。また、下プローブ針9a、9b、9cは、それぞれ、チャックピン5a、5b、5cを貫通する位置に配置されている。ウエハチャック3の下側中央部には、フォース線12fが接続されており、下プローブ針9a、9b、9cには、センス線12sが接続されている。2は試験対象ウエハである。
【0030】
次に図6〜図9を用いて、本発明の半導体測定装置1の動作を説明する。図6は、第1移動機構7が図中矢印方向に作動して、チャックピン5a〜5cがウエハチャック3の支持面4よりも上方に上昇した状態を示している。この状態で図示しない吸引装置を作動させ、チャックピン5a〜5cの前述した各空気通路22の吸引を開始する。一方、適宜の搬送アームによってチャックピン5a〜5cの上に搬送されてきた試験対象ウエハ2は、ゆっくりと下降してチャックピン5a〜5cに載置され、チャックピン5a〜5cの空気通路22が吸引状態にあるので、チャックピン5a〜5c上に吸着、支持される。このとき、下プローブ針9a〜9cは、その上端が支持面4よりも下方に下がった位置にある。また、図示しない吸引装置が作動して、支持面4に形成されている吸引溝18a〜18cの吸引を開始する。2a、2b、2c・・・は、試験対象ウエハ2上に形成されている半導体素子である。
【0031】
試験対象ウエハ2がチャックピン5a〜5c上に吸着、支持されると、図7に示すように、第1移動機構7が図中矢印方向に作動して、チャックピン5a〜5cを下降させ、試験対象ウエハ2をウエハチャック3の支持面4上に載置する。支持面4に形成されている吸引溝18a〜18cは吸引状態にあるので、試験対象ウエハ2は、支持面4上に吸引、支持される。同時に、下側のフォース線12fが試験対象ウエハ2の裏面電極と電気的に接続される。このようにしてチャックピン5a〜5cから支持面4への試験対象ウエハ2の受け渡しが終わると、チャックピン5a〜5cの空気通路22の吸引は停止され、チャックピン5a〜5cは、その上端がウエハチャック3の支持面4よりも若干下方となる位置まで下降し、その位置で停止する。
【0032】
試験対象ウエハ2が支持面4上に吸着、支持されて、下側のフォース線12fが試験対象ウエハ2の裏面電極と電気的に接続されると、図8に示すように、第2移動機構11が図中矢印方向に作動して、下プローブ針9a〜9cを上昇させ、その先端を試験対象ウエハ2の裏面電極に接触させる。これにより下側のセンス線12sが試験対象ウエハ2の裏面電極と電気的に接続されたことになる。前述したとおり、下プローブ針9a〜9cは弾性手段によって上方に向かって付勢されているので、下プローブ針9a〜9cは、その先端が試験対象ウエハ2の裏面電極と接触した位置よりも若干下方に押し込まれ、下プローブ針9a〜9cと試験対象ウエハ2の裏面電極との接触、すなわち、下側のセンス線12sと試験対象ウエハ2の裏面電極との電気的接続が確実に行われる。
【0033】
以上のようにして、下プローブ針9a〜9cと試験対象ウエハ2の裏面電極との接触が達成されると、XYZθステージ13のX軸移動機構13a、Y軸移動機構13b、及びθ軸移動機構13dが作動して、ウエハチャック3の支持面4上に支持されている試験対象ウエハ2のX、Y、θ位置を所定の位置に合わせるアライメントを行う。なお、この試験対象ウエハ2のアライメントと、下プローブ針9a〜9cの試験対象ウエハ2の裏面電極への接触とは、どちらを先に行っても良い。
【0034】
次に、XYZθステージ13のX軸移動機構13a及びY軸移動機構13bを作動させて、試験対象となる半導体素子2dが、センス側上プローブ針14s及びフォース側上プローブ針14fに対して測定位置にくるように試験対象ウエハ2をウエハチャック3ごと移動させる。試験対象となる半導体素子2dが所定の測定位置にくると、図9に示すように、Z軸移動機構13cが作動して、チャックピン5a〜5c及び下プローブ針9a〜9cとともに、ウエハチャック3を図中矢印で示す上方に移動させ、試験対象ウエハ2に形成されている半導体素子2dの表面電極と、センス側上プローブ針14s及びフォース側上プローブ針14fとを接触させ、テスタ装置Tによって、半導体素子2dの電気的特性が測定される。
【0035】
半導体素子2dの測定が終わると、XYZθステージ13のZ軸移動機構13cが作動して、ウエハチャック3を一旦下降させ、次いで、X軸移動機構13a又はY軸移動機構13b、或いはその双方を作動させて、例えば、次の半導体素子2cが測定位置にくるようにウエハチャック3を移動させる。半導体素子2cが測定位置にくると、前述したのと同様に、Z軸移動機構13cが作動して、チャックピン5a〜5c及び下プローブ針9a〜9cとともに、ウエハチャック3を図中矢印で示す上方に移動させ、半導体素子2cの表面電極と、センス側上プローブ針14s及びフォース側上プローブ針14fとを接触させ、テスタ装置Tによって、半導体素子2cの電気的特性が測定される。
【0036】
このような動作を繰り返して、試験対象ウエハ2上の全半導体素子の測定が終了すると、下プローブ針9a〜9cが下降し、下側センス線12sと試験対象ウエハ2の裏面電極との電気的接続が解除される。続いて、支持面4上の吸引溝18a〜18cの吸引が停止されるとともに、チャックピン5a〜5cの空気通路22の吸引が開始され、チャックピン5a〜5cが上昇して試験対象ウエハ2を、吸着、支持しながら、搬送アーム等に受け渡す位置まで持ち上げる。試験対象ウエハ2が支持面4上から離れたときに、下側フォース線12fと試験対象ウエハ2の裏面電極との電気的接続が解除される。
【0037】
以上のとおり、本発明の半導体測定装置1によれば、チャックピン5a〜5cによって、試験対象ウエハ2をウエハチャック3の支持面4上に吸着、支持させた後に、下プローブ針9a〜9cを上昇させるという簡単な動作で、下プローブ針9a〜9cを試験対象ウエハ2の裏面電極と接触させて、下側センス線12sを試験対象ウエハ2の裏面電極と電気的に接続させることができる。
【0038】
図10は、本発明の半導体測定装置1の他の一例の要部を示す斜視図であり、これまでと同じ部材には同じ符号を付してある。本例においては、チャックピンベース板6に第4のチャックピン5dが設けられており、下プローブ針ベース板10に第4の下プローブ針9dが設けられている点が先の例とは異なっている。すなわち、本例においては、フォース線12fをウエハチャック3の下面中央部に接続する代わりに、第4の下プローブ針9dを設け、これにフォース線12fを接続してある。また、ウエハチャック3には、第4のチャックピン5dに対応して第4の貫通孔3dが形成されている。
【0039】
このような本例の半導体測定装置1によれば、試験対象ウエハ2をウエハチャック3の支持面4上に吸着、支持した後に、下プローブ針9a〜9dを試験対象ウエハ2に向かって上昇させることにより、センス線12sが接続されている下プローブ針9a〜9cを試験対象ウエハ2の裏面電極に接触させることができると同時に、フォース線12fが接続されている下プローブ針9dを試験対象ウエハ2の裏面電極に接触させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上述べたとおり、本発明の半導体測定装置によれば、試験対象ウエハの裏面全体をウエハチャックの支持面で支持しつつ、下プローブ針を試験対象ウエハに向かって上昇させるだけで下プローブ針と試験対象ウエハの裏面電極との接触を実現することができるので、試験対象ウエハの撓みを防止することができるとともに、移動位置を割り出して下プローブ針を移動させる必要がなく、簡単な構成で、半導体素子の効率の良い測定が可能となる。したがって、本発明の半導体測定装置は、半導体素子、特に、今後用途の更なる拡大が見込まれる電力用半導体素子の品質並びに性能の向上に大きく寄与し、多大なる産業上の利用可能性を有するものである。
【符号の説明】
【0041】
1 半導体測定装置
2 試験対象ウエハ
3 ウエハチャック
4 支持面
5a、5b、5c、5d チャックピン
6 チャックピンベース板
7 第1移動機構
8 ウエハチャックベース板
9a、9b、9c、9d 下プローブ針
10 下プローブ針ベース板
11 第2移動機構
12f、15f フォース線
12s、15s センス線
13 XYZθステージ
14s センス側上プローブ針
14f フォース側上プローブ針
16 プローブマニュピレータ
17 プローバベース板
18a、18b、18c 吸引溝
19 加熱及び/又は冷却手段
20 外筒
21 内筒
22 空気通路
23 管路
24 接続溝
T テスタ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハ上に形成された複数の半導体素子の各々の表面電極と前記ウエハの裏面電極のそれぞれにプローブ針を接触させて半導体素子の特性を試験する半導体測定装置であって、試験対象ウエハを支持する支持面を備えたウエハチャックと;
前記ウエハチャックを上下方向に貫通する少なくとも3本のチャックピンと;前記チャックピンを前記ウエハチャックに対して相対的に上下方向に移動させる第1移動機構と;前記チャックピンの内側に内挿される少なくとも1本の下プローブ針と;前記下プローブ針を前記ウエハチャックに対して相対的に上下方向に移動させる第2移動機構と;前記ウエハチャックを、前記チャックピン及び前記下プローブ針とともに、前記ウエハチャックの上部に位置する上プローブ針に対して相対的に上下方向及び水平方向に移動させる第3移動機構と;前記上プローブ針及び前記下プローブ針と電気的に接続されるテスタ装置とを有している半導体測定装置。
【請求項2】
前記ウエハチャックが導電性であり、前記ウエハチャックの中央部に接続されるフォース線と、前記下プローブ針と接続されるセンス線とを備え、かつ、前記上プローブ針がフォース側上プローブ針とセンス側上プローブ針とからなり、前記フォース側上プローブ針と接続されるフォース線と、前記センス側上プローブ針と接続されるセンス線とを備え、各センス線及び各フォース線が前記テスタ装置に接続される請求項1記載の半導体測定装置。
【請求項3】
前記チャックピンが、その上端部で試験対象ウエハを支持したときに、前記試験対象ウエハを吸引支持する吸引用の孔を備えている請求項1又は2記載の半導体測定装置。
【請求項4】
前記ウエハチャックの前記支持面を加熱又は冷却する加熱手段及び/又は冷却手段が設けられている請求項1〜3のいずれかに記載の半導体測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−89680(P2012−89680A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235091(P2010−235091)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000153018)株式会社日本マイクロニクス (349)
【Fターム(参考)】