説明

半導体用接着剤組成物、半導体用接着シートおよび半導体装置の製造方法

【課題】 一定期間保管した後においても、厳しい熱湿条件およびリフロー工程を経た場合のパッケージ信頼性や接着性に優れた半導体用接着剤組成物等を提供する。
【解決手段】 本発明に係る半導体用接着剤組成物は、アクリル重合体(A)、エポキシ系熱硬化樹脂(B)、熱硬化剤(C)、有機官能基を有し、分子量が300以上でアルコキシ当量が13mmol/gより大きいシラン化合物(D)、および有機官能基を有し、分子量が300以下でアルコキシ当量が13mmol/g以下であるシラン化合物(E)を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子(半導体チップ)を有機基板もしくはリードフレームのダイパッド部または別の半導体チップへダイボンディングする工程、および半導体ウエハをダイシングして半導体チップとし、半導体チップを被着部にダイボンディングする工程での使用に適した半導体用接着剤組成物、該接着剤組成物からなる接着剤層を有する半導体用接着シートおよびこれを用いた半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハは大径の状態で製造される。半導体ウエハは、素子小片(半導体チップ)に切断分離(ダイシング)された後に、次工程であるボンディング工程に移されている。この際、半導体ウエハは予め接着シートに貼着された状態でダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンディングおよびピックアップの各工程が加えられた後、次工程のボンディング工程に移送される。
【0003】
これらの工程の中で、ピックアップ工程およびボンディング工程のプロセスを簡略化するため、ウエハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えたダイシング・ダイボンディング用粘接着シートが種々提案されている(例えば特許文献1〜4参照)。特許文献1〜4に開示されている粘接着シートは、いわゆるダイレクトダイボンディングを可能にし、ダイ接着用粘接着剤の塗布工程を省略できるようになる。例えば、前記粘接着シートを用いることにより、有機基板−チップ間、リードフレーム−チップ間、チップ−チップ間などのダイレクトダイボンディングが可能となる。
【0004】
ところで、近年の半導体装置に対する要求物性は非常に厳しいものとなっている。例えば、厳しい熱湿環境下における高いパッケージ信頼性が求められている。また電子部品の接続においては、パッケージ全体が半田融点以上の高温下にさらされる表面実装法(リフロー)が行われている。近年では鉛を含まない半田への移行により、実装温度は260℃程度まで上昇している。このため、半導体パッケージ内部で発生する応力が従来よりも大きくなり、接着界面における剥離やパッケージクラックといった不具合を生じる可能性が高まっている。
【0005】
通常、これを解決するためにシランカップリング剤を用いて接着性を向上させているが、分子量が小さく、反応性の低いモノマータイプのシランカップリング剤では充分な接着性を発揮させることができない。そのために、特許文献4では、オリゴマータイプのシランカップリング剤を用いることにより接着性を向上させている。
【0006】
また、粘接着シートは通常、一定期間保管した後に使用されるため、常温以上の温度での保存安定性が重要である。特許文献4においては、反応性の高いオリゴマータイプのシランカップリング剤を用いており、特許文献4の粘接着シートは保存安定性が高いことが開示されている。しかしながら、特許文献4における保存安定性の評価方法は、粘接着シートに50℃で5日間という促進処理を行って硬化させた後、直ちに粘接着シートの接着性(剥離強度)を測定する方法である。つまり、半導体装置用接着剤として用いた場合の実装後の熱湿等の環境変化を考慮していない。また、評価方法も粘接着シートを用いて2枚の金属板を貼り合わせ、接着剤を硬化後、金属板を引き剥がすという評価方法を採っているが、この方法により評価される硬化後の接着剤の主たる特性は、凝集性である。オリゴマータイプのシランカップリング剤を用いた場合、その反応性の高さから粘接着シートの保存中にアルコキシ基同士や、アルコキシ基と無機充填材表面との反応が進行してしまう。保存時にアルコキシ基同士の反応や、アルコキシ基と無機充填材表面の反応が進行しても、硬化後の凝集性への影響は少ない。しかし、粘接着シートと被着体との界面の接着性については、硬化時に被着体表面と反応すべきアルコキシ基が十分に残存していないことに起因して、低下する傾向がある。その結果、粘接着シートを一定期間保管後に接着硬化させ、通常よりも厳しい熱湿環境下に曝した場合、その接着性を維持することができず、パッケージ信頼性やダイ接着機能の低下がより大きな問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平02−032181号公報
【特許文献2】特開平08−239636号公報
【特許文献3】特開平10−008001号公報
【特許文献4】特開2000−017246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、一定期間保管した後においても、厳しい熱湿条件およびリフロー工程を経た場合のパッケージ信頼性や接着性に優れた半導体用接着剤組成物、該接着剤組成物からなる接着剤層を有する半導体用接着シートおよびこれを用いた半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、シランカップリング剤として、反応性の低いモノマータイプのシランカップリング剤とともに、反応性の高いオリゴマータイプのシランカップリング剤を併用することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明の要旨は以下の通りである。
(1)アクリル重合体(A)、エポキシ系熱硬化樹脂(B)、熱硬化剤(C)、有機官能基を有し、分子量が300以上でアルコキシ当量が13mmol/gより大きいシラン化合物(D)、および有機官能基を有し、分子量が300以下でアルコキシ当量が13mmol/g以下であるシラン化合物(E)を含む半導体用接着剤組成物。
【0011】
(2)前記シラン化合物(D)または前記シラン化合物(E)における有機官能基が、エポキシ基である(1)に記載の半導体用接着剤組成物。
【0012】
(3)上記(1)または(2)に記載の半導体用接着剤組成物からなる接着剤層を、基材上に形成してなる半導体用接着シート。
【0013】
(4)上記(3)に記載の半導体用接着シートの接着剤層に半導体ウエハを貼着し、該半導体ウエハをダイシングして半導体チップとし、該半導体チップ裏面に前記接着剤層を固着残存させて基材から剥離し、該半導体チップを被着部に前記接着剤層を介して熱圧着する工程を有する半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一定期間保管した後においても、厳しい熱湿条件およびリフロー工程を経た場合のパッケージ信頼性や接着性に優れた半導体用接着剤組成物、該接着剤組成物からなる接着剤層を有する半導体用接着シートおよびこれを用いた半導体装置の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の半導体用接着剤組成物、半導体用接着シートおよび半導体装置の製造方法の詳細を説明する。なお、以下において、本発明の半導体用接着剤組成物を単に「接着剤組成物」と、本発明の半導体用接着シートを単に「接着シート」と、本発明の半導体用接着剤組成物から形成された接着剤層を単に「接着剤層」と記載する。
【0016】
〔半導体用接着剤組成物〕
本発明の半導体用接着剤組成物は、アクリル重合体(A)、エポキシ系熱硬化樹脂(B)、熱硬化剤(C)、有機官能基を有し、分子量が300以上でかつアルコキシ当量が13mmol/gより大きいシラン化合物(D)、および有機官能基を有し、分子量が300以下でかつアルコキシ当量が13mmol/g以下であるシラン化合物(E)を含有する。また、接着剤組成物の各種物性を改良するため、必要に応じて他の成分を配合してもよい。以下、これら各成分について具体的に説明する。
【0017】
アクリル重合体(A)
アクリル重合体(A)としては従来公知のアクリル重合体を用いることができる。アクリル重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜200万であることが好ましく、10万〜150万であることがより好ましい。アクリル重合体(A)のMwが低過ぎると、接着剤層と基材との接着力が高くなってチップのピックアップ不良が起こることがある。アクリル重合体(A)のMwが高すぎると、被着体の凹凸へ接着剤層が追従できないことがあり、ボイドなどの発生要因になることがある。アクリル重合体(A)のMwは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0018】
アクリル重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、−60〜70℃であることが好ましく、−30〜50℃であることがより好ましい。アクリル重合体(A)のTgが低過ぎると、接着剤層と基材との剥離力が大きくなってチップのピックアップ不良が起こることがある。アクリル重合体(A)のTgが高過ぎると、ウエハを固定するための接着力が不充分となるおそれがある。
【0019】
アクリル重合体(A)を構成するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルおよびその誘導体が挙げられる。具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどの環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。また、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などを用いてもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
これらの中では、アクリル重合体(A)を構成するモノマーとして、エポキシ系熱硬化樹脂(B)との相溶性が良いアクリル重合体が得られることから、少なくとも水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを用いることが好ましい。この場合、アクリル重合体(A)において、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位は、1〜20重量%の範囲で含まれることが好ましく、3〜15重量%の範囲で含まれることがより好ましい。アクリル重合体(A)として、具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が好ましい。
【0021】
また、上記(メタ)アクリル酸エステルおよびその誘導体などと共に、本発明の目的を損なわない範囲で、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンなどをアクリル重合体(A)の原料モノマーとして用いてもよい。
【0022】
エポキシ系熱硬化樹脂(B)
エポキシ系熱硬化樹脂(B)としては、従来公知の種々のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、複素環型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、縮合環芳香族炭化水素変性エポキシ樹脂や、これらのハロゲン化物などの、構造単位中に2つ以上の官能基が含まれるエポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に限定されないが、150〜1000(g/eq)であることが好ましい。なお、エポキシ当量は、JIS K7236:2008に準じて測定される値である。
【0024】
本発明の接着剤組成物において、エポキシ系熱硬化樹脂(B)の含有量は、アクリル重合体(A)100重量部に対して、通常は1〜1500重量部、好ましくは3〜1000重量部である。エポキシ系熱硬化樹脂(B)の含有量が前記範囲を下回ると、充分な接着力を有する接着剤層が得られないことがある。また、エポキシ系熱硬化樹脂(B)の含有量が前記範囲を上回ると、造膜性がなくなり接着剤層をシート状にすることができず製造が困難になる。
【0025】
熱硬化剤(C)
熱硬化剤(C)は、エポキシ系熱硬化樹脂(B)に対する熱硬化剤として機能する。熱硬化剤(C)としては、エポキシ基と反応しうる官能基を分子中に2個以上有する化合物が挙げられ、その官能基としてはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基などが挙げられる。これらの中では、フェノール性水酸基、アミノ基および酸無水物基が好ましく、フェノール性水酸基およびアミノ基がより好ましい。
【0026】
熱硬化剤(C)の具体例としては、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、トリフェノールメタン型フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂などのフェノール性熱硬化剤;DICY(ジシアンジアミド)などのアミン系熱硬化剤が挙げられる。熱硬化剤(C)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
本発明の接着剤組成物において、熱硬化剤(C)の含有量は、エポキシ系熱硬化樹脂(B)100重量部に対して、通常は0.1〜500重量部、好ましくは1〜200重量部である。熱硬化剤(C)の含有量が前記範囲を下回ると、接着剤組成物の硬化性が不足して充分な接着力を有する接着剤層が得られないことがある。熱硬化剤(C)の含有量が前記範囲を上回ると、接着剤組成物の吸湿率が高まり、半導体パッケージの信頼性が低下することがある。
【0028】
有機官能基を有し、分子量が300以上でかつアルコキシ当量が13mmol/gより大きいシラン化合物(D)
有機官能基を有し、分子量が300以上でかつアルコキシ当量が13mmol/gより大きいシラン化合物(D)(以下において、単に「シラン化合物(D)」と記載することがある。)の有機官能基としては、アクリル重合体(A)やエポキシ系熱硬化樹脂(B)などが有する官能基と反応するものが好ましく、このようなものとして、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基中のビニル基を除くビニル基、メルカプト基が挙げられる。これらのうちでも、エポキシ基が好ましい。なお、アルコキシ当量は化合物の単位重量当たりに含まれるアルコキシ基の絶対数を示し、本発明において同様である。
【0029】
高分子量体であるシラン化合物(D)は、加水分解反応を受けやすい。そのため、接着剤組成物の加熱硬化時に、シラン化合物(D)は被着体表面と化学的な反応を効率的かつ容易に起こし、被着体表面に結合しやすく、また、被着体表面と双極子的な相互作用を持ちやすい。したがって、接着剤層とした後、保管期間を置かずにすぐに使用に供した場合でも、接着剤層と被着体表面との界面の接着を強固なものとすることができるので、接着剤層が高温高湿状態でさらされても、接着剤層と被着体との接着界面への水分の侵入を防ぎ、のちに熱刺激を受けても接着状態を維持できる効果(以下において、「熱湿後接着状態維持効果」と記載することがある。)が高い。
【0030】
シラン化合物(D)として、具体的にはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタクリロプロピル)トリメトキシシラン等のアルコキシ基を2つまたは3つ有する低分子シラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシ基を4つ有する低分子シラン化合物などをアルコキシ基の加水分解および脱水縮合により縮合した生成物であるオリゴマータイプのものが挙げられる。特に、上記の低分子シラン化合物のうち、アルコキシ基を2つまたは3つ有する低分子シラン化合物と、アルコキシ基を4つ有する低分子シラン化合物とが脱水縮合により縮合した生成物であるオリゴマーが、アルコキシ基の反応性に富み、かつ有機官能基の十分な数を有しているので好ましく、例えば、ポリ3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルメトキシシロキサンとポリジメトキシシロキサンの共重合体であるオリゴマーが挙げられる。
【0031】
本発明の接着剤組成物において、シラン化合物(D)の含有量は、接着剤組成物全体(固形分換算)のうち、通常は0.01〜7.0重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%である。また、シラン化合物(D)の含有量は、成分(A)〜(E)の合計100重量部(固形分換算)に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜3重量部である。シラン化合物(D)の含有量が前記範囲を下回ると、接着剤組成物の加熱硬化時に、シラン化合物(D)が被着体表面と化学的な反応を起こしたり、被着体表面と双極子的な相互作用を持ったりすることが困難になることがあり、その結果、十分な接着性を発現することができないことがある。シラン化合物(D)の含有量が前記範囲を上回ると、接着剤組成物の表面張力の上昇を招き、シート状にする際、はじきの原因になり製造が困難になることがある。また、チップ裏面に接着剤層を固着残存させたまま基材から剥離できず、加工が困難になることがある。つまり、製造上および加工上の不具合が発生することがある。
【0032】
本発明の半導体用接着剤組成物は、シラン化合物(D)以外のシラン化合物であって、分子量が300以上でかつアルコキシ当量が13mmol/gより大きいシラン化合物(D’) (以下において、単に「シラン化合物(D’)」と記載することがある。)を含有していてもよい。シラン化合物(D’)は、有機官能基を有さないのでアクリル重合体(A)やエポキシ系熱硬化樹脂(B)などが有する官能基と反応しないが、アルコキシ基を有するので、他の分子のアルコキシ基や、被着体表面、場合によって配合される無機充填材(J)の表面と反応して接着剤組成物の硬化に関与する。シラン化合物(D’)としてはポリメトキシシロキサン、ポリエトキシシロキサン、ポリメトキシシロキサンとポリジメチルシロキサンの共重合体等が挙げられる。
【0033】
有機官能基を有し、分子量が300以下でかつアルコキシ当量が13mmol/g以下であるシラン化合物(E)
有機官能基を有し、分子量が300以下でかつアルコキシ当量が13mmol/g以下であるシラン化合物(E)(以下において、単に「シラン化合物(E)」と記載することがある。)の有機官能基としては、アクリル重合体(A)やエポキシ系熱硬化樹脂(B)などが有する官能基と反応するものが好ましく、このようなものとして、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基中のビニル基を除くビニル基、メルカプト基が挙げられる。これらのうちでも、エポキシ基が好ましい。
【0034】
シラン化合物(E)は、分子量が300以下であり、アルコキシ当量が13mmol/g以下であるため、反応性が低く加水分解反応を受けにくいので、一定期間の保管後もアルコキシ基が残存しやすい。また、接着剤層とした後、一定の保管期間を置くと、シラン化合物(E)のアルコキシ基は、反応性が乏しいものの一部は分子間で縮合反応を起こし、多量体化する。そのため、一定期間保管後における接着剤組成物の加熱硬化時に、シラン化合物(E)はシラン化合物(D)と同様、被着体表面に結合しやすくなり、また、被着体表面と双極子的な相互作用を持ちやすくなる。これにより、接着剤層と被着体表面との界面の接着が強固なものとすることができるので、一定期間保管後の熱湿後接着状態維持効果が高い。
【0035】
シラン化合物(E)として、具体的にはγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−(メタクリロプロピル)トリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシランなどが挙げられる。
【0036】
本発明の接着剤組成物において、シラン化合物(E)の含有量は、接着剤組成物全体(固形分換算)のうち、通常は0.01〜7.0重量%、好ましくは0.1〜2.0重量%である。また、シラン化合物(E)の含有量は、成分(A)〜(E)の合計100重量部(固形分換算)に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜3重量部である。シラン化合物(E)の含有量が前記範囲を下回ると、一定期間室温以上で保管した後に接着剤組成物の加熱硬化時に充分な接着性を発現することができないことがある。シラン化合物(E)の含有量が前記範囲を上回ると、接着剤組成物の表面張力の上昇を招き、シート状にする際、はじきの原因になり製造が困難になることがある。また、チップ裏面に接着剤層を固着残存させたまま基材から剥離できず、加工が困難になることがある。つまり、製造上および加工上の不具合が発生することがある。
【0037】
本発明の半導体用接着剤組成物は、シラン化合物(E)以外の、分子量が300以下でかつアルコキシ当量が13mmol/g以下であるシラン化合物(E’)(以下において、単に「シラン化合物(E’)」と記載することがある。)を含有していてもよい。シラン化合物(E’)は、有機官能基を有さないのでアクリル重合体(A)やエポキシ系熱硬化樹脂(B)などが有する官能基と反応しないが、アルコキシ基を有するので、他の分子のアルコキシ基や、被着体表面、場合によって配合される無機充填材(J)の表面と反応して接着剤組成物の硬化に関与する。シラン化合物(E’)としては、例えばフェニルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン等を用いることができる。
【0038】
シラン化合物(D)とシラン化合物(E)の併用により得られる効果
シラン化合物(D)は、接着シートの製造直後から、一定の保管期間を置かずに使用した場合に、熱湿後接着状態維持効果が高い一方で、接着シートの製造後、一定の保管期間を置くと、シラン化合物(D)のアルコキシ基が他のアルコキシ基や場合によって添加される無機充填材と反応して消失していくため、被着体表面に結合したり、被着体表面と双極子的な相互作用を持ちにくくなり、接着剤層と被着体表面との界面の接着を強固にできず、熱湿後接着状態維持効果が低くなることがある。
【0039】
他方、シラン化合物(E)は、接着シートの製造後、一定の保管期間を置いて使用した場合に、熱湿後接着状態維持効果が高い一方で、接着シートの製造後、保管期間を置かずにすぐに使用した場合、元来反応性に劣り、加水分解反応を受けにくいので、被着体表面に結合したり、被着体表面と双極子的な相互作用を持ちにくく、接着剤層と被着体表面との界面の接着を強固にできず、熱湿後接着状態維持効果が低くなることがある。
【0040】
本発明の接着剤組成物は、シラン化合物(D)とシラン化合物(E)のいずれも含有するので、これらが保管期間前後の熱湿後接着状態維持効果の互いの欠点を補い合い、保管期間前後のいずれでも高い熱湿後接着状態維持効果が得られる。その結果、本発明の接着剤組成物からなる接着剤層は、保存安定性に優れる。
【0041】
シラン化合物(D)の含有量(d)とシラン化合物(E)の含有量(e)との比(d)/(e)は、(d)と(e)がそれぞれ上記含有量の範囲であればよく、すなわち通常は0.0014〜700、好ましくは0.05〜20である。
【0042】
その他のシラン化合物(F)
本発明において、接着剤組成物の被着体に対する接着力をより向上させるため、シラン化合物(D)、シラン化合物(D’)、シラン化合物(E)およびシラン化合物(E’)以外にその他のシラン化合物(F)を用いてもよい。
【0043】
シラン化合物(F)としては、アクリル重合体(A)やエポキシ系熱硬化樹脂(B)などが有する官能基と反応する基を有する化合物が好ましく使用される。
【0044】
具体的にはγ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−6−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これら、その他のシラン化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
硬化促進剤(G)
硬化促進剤(G)は、接着剤組成物の硬化速度を調整するために用いられる。硬化促進剤としては、好ましくは、エポキシ基とフェノール性水酸基やアミン等との反応を促進し得る化合物である。この化合物としては、具体的には、3級アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、テトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0046】
3級アミン類としては、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられる。
【0047】
イミダゾール類としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0048】
有機ホスフィン類としては、トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
【0049】
テトラフェニルボロン塩としては、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0050】
なお、本発明の接着剤組成物に含まれる硬化促進剤(G)は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0051】
本発明の接着剤組成物には、エポキシ系熱硬化樹脂(B)と熱硬化剤(C)の合計100重量部に対して、硬化促進剤(G)が、好ましくは0.001〜100重量部、より好ましくは0.01〜50重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部含まれる。
【0052】
エネルギー線重合性化合物(H)
本発明の接着剤組成物は、エネルギー線重合性化合物(H)を含有してもよい。エネルギー線重合性化合物(H)をエネルギー線照射によって重合させることで、接着シートにおける接着剤層の接着力を低下させることができる。このため、半導体チップのピックアップ工程において、基材と接着剤層との層間剥離を容易に行えるようになる。
【0053】
エネルギー線重合性化合物(H)は、紫外線や電子線などのエネルギー線の照射を受けると重合・硬化する化合物である。エネルギー線重合性化合物(H)としては、分子内に1つ以上のエネルギー線重合性二重結合を有する化合物、例えばアクリレート系化合物が挙げられる。
【0054】
上記アクリレート系化合物としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジシクロペンタジエンジメトキシジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレート、イタコン酸オリゴマーなどが挙げられる。
【0055】
エネルギー線重合性化合物(H)の分子量(オリゴマーまたはポリマーの場合は重量平均分子量)は、通常は100〜30000、好ましくは200〜9000程度である。 本発明の接着剤組成物において、エネルギー線重合性化合物(H)の含有量は、アクリル重合体(A)100重量部に対して、通常は1〜400重量部、好ましくは3〜300重量部、より好ましくは10〜200重量部である。エネルギー線重合性化合物(H)の含有量が前記範囲を上回ると、有機基板やリードフレームなどに対する接着剤層の接着力が低下することがある。
【0056】
光重合開始剤(I)
本発明の接着剤組成物の使用に際して、前記エネルギー線重合性化合物(H)を使用する場合、紫外線などのエネルギー線を照射して、接着剤層の接着力を低下させることが好ましい。接着剤組成物中に光重合開始剤(I)を含有させることで、重合・硬化時間および光線照射量を少なくすることができる。
【0057】
光重合開始剤(I)としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、1,2−ジフェニルメタン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、β−クロールアンスラキノンなどが挙げられる。光重合開始剤(I)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
光重合開始剤(I)の含有量は、エネルギー線重合性化合物(H)100重量部に対して、通常は0.1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部である。光重合開始剤(I)の含有量が前記範囲を下回ると光重合の不足で満足なピックアップ性が得られないことがあり、前記範囲を上回ると光重合に寄与しない残留物が生成し、接着剤組成物の硬化性が不充分となることがある。
【0059】
無機充填材(J)
本発明において、無機充填材(J)を用いてもよい。無機充填材(J)を接着剤組成物に配合することにより、該組成物の熱膨張係数を調整することが可能となる。半導体チップ、リードフレームおよび有機基板に対して硬化後の接着剤層の熱膨張係数を最適化することで、パッケージ信頼性をより向上させることができる。また、接着剤層の硬化後の吸湿率をより低減することも可能となる。
【0060】
無機充填材(J)としては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維、ガラス繊維などが挙げられる。これらの中でも、シリカフィラーおよびアルミナフィラーが好ましい。無機充填材(J)は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明の接着剤組成物において、無機充填材(J)の含有量は、接着剤組成物全体(固形分換算)に対して、通常は1〜80重量%である。また、無機充填材(J)の含有量は、成分(A)〜(E)の合計100重量部(固形分換算)に対して、好ましくは1〜80重量部、より好ましくは2〜70重量部、さらに好ましくは、5〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。無機充填剤(J)の含有量がこのような範囲にあると、接着剤層の硬化後の吸湿をさらに低減させることができ、かつ接着剤層における無機充填材の比率が過度に大きくならず、接着性を損なうことが少ない。
【0062】
その他の成分(K)
本発明の接着剤組成物には、上記各成分の他に、必要に応じて各種添加剤が含有されてもよい。各種添加剤としては、ポリエステル樹脂等の可とう性成分、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料、染料などが挙げられる。
【0063】
本発明の接着剤組成物は、保存安定性に優れ、接着性(例えば感圧接着性)と加熱硬化性とを有し、未硬化状態では各種被着体を一時的に保持する機能を有する。特に、一定期間保管後においても、熱硬化を経て最終的には耐衝撃性の高い硬化物を与えることができ、しかもせん断強度と剥離強度とのバランスにも優れ、厳しい熱湿条件下においても充分な接着性を保持し得る。
【0064】
本発明の接着剤組成物は、上記各成分を適宜の割合で混合して得られる。混合に際しては、各成分を予め溶媒で希釈しておいてもよく、また混合時に溶媒を加えてもよい。また、接着剤組成物の使用時に、溶媒で希釈してもよい。
【0065】
かかる溶媒としては、酢酸エチル、酢酸メチル、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、ヘプタンなどが挙げられる。
【0066】
本発明の接着剤組成物は、少なくともシリコン、ガリウム-砒素等を材料とする半導体チップを被着体として、半導体チップと基板などの他のものとを、あるいは半導体チップ同士を接着するための半導体用接着剤として使用される。とりわけ、いわゆるダイボンディングシート、ダイシングダイボンディングシート、特にダイシングダイボンディングシートを構成する接着剤層の形成材料として、好適に用いることができる。
【0067】
〔接着シート〕
本発明に係る接着シートは、上記接着剤組成物からなる接着剤層を、基材上に形成してなる。本発明に係る接着シートの形状は、テープ状、ラベル状など、あらゆる形状をとり得る。
【0068】
接着シートの基材としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等の透明フィルム、またはこれらの透明フィルムの架橋フィルムが挙げられる。また、基材としては、これらの単層フィルムであってもよいし、これらの積層フィルムであってもよい。また、上記の透明フィルムの他、これらを着色した不透明フィルム、フッ素樹脂フィルム等を用いることができる。
【0069】
本発明の接着シートは、各種の被着体に貼付され、被着体に所要の加工を施した後、接着剤層を被着体に固着残存させて基材から剥離される。すなわち、接着剤層を、基材から被着体に転写する工程を含むプロセスに使用される。このため、基材の接着剤層に接する面の表面張力は、好ましくは40mN/m以下、さらに好ましくは37mN/m以下、特に好ましくは35mN/m以下である。このように表面張力が比較的低い基材は、材質を適宜に選択して得ることが可能である。また、基材の表面に剥離剤を塗布して剥離処理を施して表面張力の比較的低い基材を得ることもできる。
【0070】
基材の剥離処理に用いられる剥離剤としては、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系等の剥離剤が挙げられるが、この中でも、耐熱性を有する観点から、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系の剥離剤が好ましい。
【0071】
上記剥離剤を用いて基材の表面を剥離処理するためには、剥離剤をそのまま(無溶剤)で、または溶剤に希釈された状態やエマルション化した状態で、グラビアコーター、メイヤーバーコーター、エアナイフコーター、ロールコーター等により塗布して、剥離剤が塗布された基材を、常温下または加熱下に供するか、または電子線により硬化させたり、ウェットラミネーションやドライラミネーション、熱溶融ラミネーション、溶融押出ラミネーション、共押出加工などで積層体を形成したりすればよい。
【0072】
また、基材の表面に粘着剤を塗布して粘着処理を施してもよい。基材の粘着処理に用いられる粘着剤としては、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、ウレタン系等の粘着剤が挙げられる。
粘着剤として、再剥離性の粘着剤を用いることが好ましく、再剥離性の粘着剤としては、粘着性の微弱な粘着剤、表面凹凸のある粘着剤、エネルギー線硬化型粘着剤、熱膨張成分含有粘着剤等が挙げられる。再剥離性の粘着剤を用いることで、被着体の加工の間は基材と接着剤層間を強固に固定し、その後接着剤層を被着体に固着残存させて基材から剥離することが容易となる。
【0073】
基材の膜厚は、通常は10〜500μm、好ましくは15〜300μm、特に好ましくは20〜250μm程度である。また、接着剤層の厚みは、通常は1〜500μm、好ましくは5〜300μm、特に好ましくは5〜150μm程度である。
【0074】
なお、接着シートを被着体に貼着する前には、接着シートの接着剤層を保護するために、接着剤層の表面(被着体に接触する面)に表面を保護するための剥離フィルムを積層しておいてもよい。
【0075】
接着シートは、例えば、基材上に、接着剤層を構成する組成物を塗布し、乾燥して製造されてもよいし、接着剤層を剥離フィルム上に設けた後に、該接着剤層を基材に転写して製造されてもよい。
【0076】
また、接着剤層の表面(被着体に接触する面)の外周部には、リングフレーム等の他の治具を固定するために、別途接着剤層や粘着テープが設けられていてもよい。
【0077】
〔半導体装置の製造方法〕
次に本発明に係る接着シートの使用方法について、該接着シートを半導体装置の製造に適用した場合を例にとって説明する。
【0078】
本発明の接着シートを用いた半導体装置の製造方法においては、まず、半導体ウエハの一方の面およびリングフレームを本発明に係る接着シートの接着剤層に載置し、軽く押圧し、ウエハを貼着する。次いで、ダイシング装置上でダイシングソーなどの切断手段を用いて、上記の半導体ウエハを切断し半導体チップを得る。ここで、切断の深さは、半導体ウエハの厚みと、接着剤層の厚みとの合計およびダイシングソーの磨耗分を加味した深さである。なお、エネルギー線硬化性化合物(H)を本発明の接着剤組成物に用いた場合には、半導体ウエハを切断する前後に、接着シートの基材面から紫外線を照射してもよい。
【0079】
次いで必要に応じ、接着シートのエキスパンドを行い、半導体チップ間隔を拡張させて、半導体チップのピックアップをさらに容易に行えるようにする。ここで、接着剤層と基材との間にずれが発生することになり、接着剤層と基材との間の接着力が減少して、チップのピックアップ性が向上する。
【0080】
このようにして半導体チップのピックアップを行うと、切断された接着剤層を半導体チップ裏面に固着残存させながら、該チップを基材から剥離することができる。次いで、半導体チップを、被着部(例えば、基板上のダイパッド部や他の半導体チップ)に接着剤層を介して載置する。被着部は半導体チップを載置する前に加熱されているか、載置直後に加熱される。ここで、チップを圧着(ダイボンド)するときの加熱温度は、通常は80〜200℃、好ましくは100〜180℃であり、加熱時間は、通常は0.1秒〜5分、好ましくは0.5秒〜3分であり、圧着するときの圧力は、通常1kPa〜1GPaである。圧力は、載置した後に加えてもよいが、載置と同時に圧力を加えることが好ましい。
【0081】
半導体チップを被着部上に載置した後、必要に応じさらに加熱を行ってもよい。この際の加熱条件は、上記加熱温度の範囲であって、加熱時間は通常1〜180分、好ましくは10〜180分である。
【0082】
また、載置後の加熱処理は行わずに仮接着状態としておき、パッケージ製造において通常行われる樹脂封止での加熱を利用して接着剤層を硬化させてもよい。その際には、通常は150〜180℃で0.5〜10分程度、1.0〜20MPaの圧力が加わる。また封止樹脂を充分硬化させるために、封止工程後、通常は150〜180℃で2〜8時間程度の加熱が常圧下で行われる。上記の加熱処理に加えて、封止工程後での加熱処理を利用してもよい。
【0083】
このような工程を経ることで、接着剤層が硬化し、半導体チップと被着部とを強固に接着することができる。接着剤層はダイボンド条件下では流動化しているため、被着部の凹凸にも充分に埋め込まれ、ボイドの発生を防止できる。
【0084】
すなわち、得られる実装品においては、半導体チップの固着手段である接着剤が硬化し、かつ被着部の凹凸にも充分に埋め込まれた構成となるため、過酷な条件下にあっても、充分なパッケージ信頼性が達成される。
【0085】
なお、半導体チップを他の半導体チップ上に接着剤層を介して熱圧着する工程を含む半導体チップ装置の製造方法には、有機基板またはリードフレームのダイパッド部上に載置された他の半導体チップ上に接着剤層を介して半導体チップを熱圧着する工程、または有機基板またはリードフレームのダイパッド部上に載置されていない他の半導体チップ上に接着剤層を介して半導体チップを熱圧着する工程を含むものとする。
【0086】
本発明の接着剤組成物および接着シートは、上記のような使用方法の他、半導体化合物、ガラス、セラミックス、金属などの接着に使用することもできる。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例または比較例で得られた接着シートについては、促進処理(40℃、7日間静置)を行った接着シートと、促進処理を行わず、23℃、相対湿度50%の環境下で7日間保管した接着シートを用いて、以下の各評価を行った。
【0088】
(1)せん断強度測定
(1−1)上段チップの作成
ウエハバックサイドグラインド装置(DISCO社製、DGP8760)により、表面をドライポリッシュ処理したシリコンウエハ(200mm径、厚さ500μm)のドライポリッシュ処理面に、実施例または比較例で得られた接着シートをテープマウンター(リンテック社製、Adwill(登録商標) RAD2500 m/8)を用いて貼付し、同時にリングフレームに固定した。その後、紫外線照射装置(リンテック社製、Adwill(登録商標) RAD2000)を用いて、前記シートの基材面から紫外線を照射(350mW/cm2、190mJ/cm2)した。
【0089】
次に、ダイシング装置(DISCO社製、DFD651)を使用し、5mm×5mmのサイズのチップにダイシングし、接着シートの接着剤層とともにチップを基材からピックアップして、上段チップを得た。ダイシングの際の切り込み量は、接着シートの基材に対して20μm切り込むようにした。
【0090】
(1−2)測定用試験片の作成
ポリイミド系樹脂(日立化成デュポンマイクロシステムズ社製PLH708)がコーティングされたシリコンウエハ(200mm径、厚さ725μm)に、ダイシングテープ(リンテック社製、Adwill D−650)を上記と同様にテープマウンターを用いて貼付した。次いで、上記と同様にダイシング装置を用いて、シリコンウエハを12mm×12mmのチップサイズにダイシングし、チップをピックアップした。チップのポリイミド系樹脂がコーティングされた面(ポリイミド面)に、上記(1−1)で得た上段チップを、接着剤層を介して100℃かつ300gf/chip、1秒間の条件にてボンディングした。その後、125℃で60分、さらに175℃で120分間加熱し接着剤層を硬化させ、試験片を得た。
【0091】
得られた試験片を、85℃85%RH環境下に48時間放置し吸湿させ、吸湿後の試験片に対して、最高温度260℃、加熱時間1分間のIRリフロー(リフロー炉:相模理工製、WL−15−20DNX型)を3回行い、さらにプレッシャークッカーテスト(条件:121℃、2.2気圧、100%RH)を168時間行い、熱湿処理された試験片(測定用試験片)を得た。
【0092】
(1−3)せん断強度の測定
ボンドテスター(Dage社製、ボンドテスターSeries4000)の測定ステージを250℃に設定し、測定用試験片を測定ステージ上に30秒間放置した。ボンディング界面(接着剤層界面)より100μmの高さの位置よりスピード500μm/sで接着剤層界面に対し水平方向(せん断方向)に応力をかけ、試験片のポリイミド面における接着状態が破壊するときの力(せん断強度)(N)を測定した。なお、6サンプルの測定用試験片について、それぞれのせん断強度を測定し、その平均値をせん断強度(N)とした。
【0093】
(2)表面実装性の評価
(2−1)上段チップの作成
ウエハバックサイドグラインド装置(DISCO社製、DGP8760)により、表面をドライポリッシュ処理したシリコンウエハ(200mm径、厚さ75μm)のドライポリッシュ処理面に、実施例または比較例で得られた接着シートをテープマウンター(リンテック社製、Adwill(登録商標) RAD2500 m/8)を用いて貼付し、同時にリングフレームに固定した。その後、紫外線照射装置(リンテック社製、Adwill(登録商標) RAD2000)を用いて、前記シートの基材面から紫外線を照射(350mW/cm2、190mJ/cm2)した。
【0094】
次に、ダイシング装置(DISCO社製、DFD651)を使用し、8mm×8mmのサイズのチップにダイシングし、接着シートの接着剤層とともにチップを基材からピックアップして、上段チップを得た。ダイシングの際の切り込み量は、接着シートの基材に対して20μm切り込むようにした。
【0095】
(2−2)下段チップの作成
上段チップの作成(2−1)と同様、ウエハバックサイドグラインド装置(DISCO社製、DGP8760)により、表面をドライポリッシュ処理したシリコンウエハ(200mm径、厚み75μm)のドライポリッシュ処理面に、ダイシングダイボンディングシート(リンテック社製、Adwill (登録商標)LE4738)をテープマウンター(リンテック社製、Adwill (登録商標) RAD2500 m/8)を用いて貼付し、同時にリングフレームに固定した。その後、紫外線照射装置(リンテック社製、Adwill(登録商標) RAD2000)を用いて、前記シートの基材側から紫外線を照射(350mW/cm2、190mJ/cm2)した。
【0096】
次に、ダイシング装置(DISCO社製、DFD651)を使用し、8mm×8mmのサイズのチップにダイシングし、ダイシングダイボンディングシートの接着剤層とともにチップを基材からピックアップして、下段チップを得た。ダイシングの際の切り込み量は、ダイシングダイボンディングシートの基材に対して20μm切り込むようにした。
【0097】
(2−3)半導体パッケージの製造
チップをダイボンドする配線基板として、銅箔張り積層板(三菱ガス化学社製、BTレジンCCL−HL832HS)の銅箔に回路パターンが形成され、該パターン上にソルダーレジスト(太陽インキ社製、PSR−4000AUS303)を有している2層両面基板(LNTEG0001、サイズ:157mm×70mm×0.22t、最大凹凸15μm、日本CMK製)を用いた。なお、基板は水分の除去を目的に125℃の雰囲気下に20時間静置して乾燥した。
【0098】
上記(2−2)で得た下段チップを接着剤層ごとピックアップし、上記配線基板上に接着剤層を介して載置し、同時に125℃、250gf、0.5秒間の条件でダイボンドした。次いで、120℃30分、更に140℃30分の条件で加熱し、接着剤層を充分加熱硬化させた。
【0099】
次いで、上記(2−1)で得た上段チップを接着剤層ごとピックアップし、先に接着硬化させた下段チップ上に125℃、250gf、0.5秒間の条件でダイボンドした。その後、125℃1時間の条件で、上段チップの接着剤層を加熱硬化させた。
【0100】
モールド樹脂(京セラケミカル株式会社製、KE−G1250)で封止厚400μmになるように配線基板を、封止装置(アピックヤマダ株式会社製、MPC−06M Trial Press)を使用し、180℃、樹脂注入圧6.9MPa、120秒の条件でトランスファー成型し封止した。その後、常圧下において175℃5時間でモールド樹脂を充分硬化させた。
【0101】
次いで、封止された配線基板をダイシングテープ(リンテック社製、Adwill(登録商標) D−510T)に貼付して、ダイシング装置(DISCO社製、DFD651)を使用して15.25mm×15.25mmのサイズにダイシングすることで、表面実装性評価用の半導体パッケージを得た。
【0102】
(2−4)半導体パッケージの表面実装性の評価
得られた半導体パッケージを、85℃85%RH条件下に168時間放置して吸湿させた後、最高温度260℃、加熱時間1分間のIRリフロー(リフロー炉:相模理工製、WL−15−20DNX型)を3回行った。上段チップと下段チップとの接合部の浮き・剥がれの有無、パッケージクラック発生の有無を、走査型超音波探傷装置(日立建機ファインテック(株)製、Hye−Focus)および断面観察により評価した。なお、上段チップと下段チップとの接合部に、面積が5.0mm2以上の剥離を観察した場合を剥離していると判断して、パッケージを25個試験に投入し接合部の浮き・剥がれ、パッケージクラックが発生しなかった個数(良品数)を数えた。
【0103】
[接着剤組成物の成分]
接着剤組成物を構成する各成分は下記および表1の通りである。表1の成分および配合量に従い、各成分を配合して接着剤組成物を調製した。
(A)アクリル重合体:日本合成化学工業株式会社製 コーポニールN−4617(Mw:約37万)
(B)エポキシ系熱硬化樹脂:
(B1)液状エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂20重量%アクリル粒子含有品(株式会社日本触媒製 エポセットBPA328、エポキシ当量235g/eq)
(B2)固体エポキシ樹脂:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製 EOCN−104S、エポキシ当量213〜223g/eq、軟化点90〜94℃)
(B3)固体エポキシ樹脂:多官能型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製 EPPN−502H、エポキシ当量158〜178g/eq、軟化点60〜72℃)
(B4)固体エポキシ樹脂:DCPD型エポキシ樹脂(大日本インキ化学株式会社製 EPICLON HP−7200HH、エポキシ当量265〜300g/eq、軟化点75〜90℃)
(C)熱硬化剤:ノボラック型フェノール樹脂(旭有機材工業株式会社製 PAPS-PN4、フェノール性水酸基当量104g/eq、軟化点111℃)
(D)有機官能基を有し、分子量が300以上でアルコキシ当量が13mmol/gより大きいシラン化合物:
(D1)ポリ3−(2,3−エポキシプロポキシ)プロピルメトキシシロキサンとポリジメトキシシロキサンの共重合体(メトキシ当量13.7〜13.8mmol/g、分子量2000〜3000)(三菱化学(株)製 MKCシリケートMSEP2(D’との混合物、82重量%含有))
(D2)オリゴマータイプシランカップリング剤(信越化学工業株式会社製 X−41−1056 メトキシ当量17.1mmol/g、分子量500〜1500)
(D’)シラン化合物(D)以外のシラン化合物であって、分子量が300以上でアルコキシ当量が13mmol/gより大きいシラン化合物:ポリメトキシシロキサン(メトキシ当量20.8mmol/g、分子量600)(三菱化学(株)製 MKCシリケートMSEP2(D1との混合物、18重量%含有))
(E)有機官能基を有し、分子量が300以下でアルコキシ当量が13mmol/g以下であるシラン化合物:
(E1)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBM−403 メトキシ当量12.7mmol/g、分子量236.3)
(E2)γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBE−403 メトキシ当量8.1mmol/g、分子量278.4)
(E3)γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越化学工業株式会社製 KBE−402 メトキシ当量10.8mmol/g、分子量248.4)
(G)硬化促進剤:2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール(四国化成工業(株)製 キュアゾール2PHZ)
(H)エネルギー線重合性化合物:ジシクロペンタジエンジメトキシジアクリレート(日本化薬(株)製 KAYARAD R−684)
(I)光重合開始剤:α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184)
(J)無機充填材:Siフィラー(株式会社トクヤマ製 UF−310)
(K)その他の成分:熱可塑性ポリエステル樹脂(東洋紡社製 バイロン220)
【0104】
[実施例および比較例]
表1に記載の組成の接着剤組成物を使用した。表1中、各成分の数値は固形分換算の重量部を示し、本発明において固形分とは溶媒以外の全成分をいう。なお、実施例1および比較例1において、成分D1とD’は、これらの混合物、三菱化学(株)製 MKCシリケートMSEP2を添加することにより接着剤組成物に加えた。表1に記載の組成の接着剤組成物を、メチルエチルケトンにて固形分濃度が50重量%となるように希釈し、シリコーン処理された剥離フィルム(リンテック社製、SP−PET381031)上に乾燥後厚みが約60μmになるように塗布・乾燥(乾燥条件:オーブンにて100℃、2分間)して、剥離フィルム上に形成された接着剤層を得た。その後、接着剤層と基材であるポリエチレンフィルム(厚み100μm、表面張力33mN/m)とを貼り合せて、接着剤層を基材上に転写することで、所望の接着シートを得た。各評価結果を表2に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
表2より、実施例では、促進処理を行った後でも高いせん断強度(150N/chip以上)を維持し、また厳しいリフロー条件に曝された場合であっても高いパッケージ信頼性を有している。つまり、実施例の接着シートは、一定期間保管後においても、厳しい熱湿条件およびリフロー工程を経た場合の接着性やパッケージ信頼性に優れている。
【0108】
一方比較例では、シラン化合物(D)を含まない接着シート(比較例2〜5)は、促進処理を行う前において、実施例と比較して、せん断強度に劣り、またパッケージ信頼性も低下している。つまり、比較例2〜5の接着シートは、厳しい熱湿条件およびリフロー工程を経た場合の接着性やパッケージ信頼性に劣る。
【0109】
また、シラン化合物(E)を含まない接着シート(比較例1)は、実施例と比較して、促進処理を行った後のせん断強度に劣り、またパッケージ信頼性も低下している。つまり、比較例1の接着シートは、一定期間保管後における厳しい熱湿条件およびリフロー工程を経た場合の接着性やパッケージ信頼性に劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル重合体(A)、エポキシ系熱硬化樹脂(B)、熱硬化剤(C)、有機官能基を有し、分子量が300以上でアルコキシ当量が13mmol/gより大きいシラン化合物(D)、および有機官能基を有し、分子量が300以下でアルコキシ当量が13mmol/g以下であるシラン化合物(E)を含む半導体用接着剤組成物。
【請求項2】
前記シラン化合物(D)または前記シラン化合物(E)における有機官能基が、エポキシ基である請求項1に記載の半導体用接着剤組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体用接着剤組成物からなる接着剤層を、基材上に形成してなる半導体用接着シート。
【請求項4】
請求項3に記載の半導体用接着シートの接着剤層に半導体ウエハを貼着し、該半導体ウエハをダイシングして半導体チップとし、該半導体チップ裏面に前記接着剤層を固着残存させて基材から剥離し、該半導体チップを被着部に前記接着剤層を介して熱圧着する工程を有する半導体装置の製造方法。

【公開番号】特開2012−156474(P2012−156474A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16899(P2011−16899)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】