説明

半導体発光素子及びその製造方法

【課題】発光効率の高い半導体発光素子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体発光素子は、第1面10a及び第2面11bを有する第1導電型半導体を含む第1領域Aと、第1面13a及び第2面15aを有する第2導電型半導体を含む第2領域Bと、前記第1領域Aの第2面11bと前記第2領域Bの第1面13aとの間に配置された発光層12とを備える。前記第1領域Aの第1面10aと前記第2領域Bの第2面15aとの間には、閉じられた複数の空洞18が周期的に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒化物半導体を利用した可視光発光ダイオード(LED)やレーザーダイオード(LD)が実用化されており、さらなる性能の改善が要望されている。更に最近では蛍光灯に変わる白色光源や、空気または水の清浄化及び殺菌用として紫外LEDが注目を集めている。
【0003】
これらの半導体発光素子を実用化するには、発光層をn型半導体とp型半導体とで挟んだダブルへテロ(DH)構造が有用である。以前は、窒化物半導体をp型化することが困難であったが、アニールによるp型不純物の活性化技術が開発され、DH構造の作製が可能となった。発光層には、発光効率の高い多重量子井戸(MQW)あるいは単一量子井戸(SQW)が有用である。以降、多重量子井戸(MQW)及び単一量子井戸(SQW)をまとめてQWと記す。InGaN−QW発光層を有するLEDは、高転位密度でありながら高い発光効率を示す。そのために、ここ数年間で高効率化と高出力化が急速に進み、青色、紫色、近紫外LEDの外部量子効率は40%を超えるまでに至っている。
【0004】
通常、窒化物半導体発光素子のQW発光層の井戸層には、AlInGaN極薄膜が採用されている。井戸層の膜厚を厚くすると、電子と正孔の波動関数が空間的に分離され、再結合確率が減少する。これによって転位あるいは点欠陥等の非発光再結合中心の影響を強く受けて、発光効率が低下しうる。よって、井戸層は厚くすることは好ましくなく、3nm前後の厚さのものが一般的であろう。
【0005】
QW発光層の発光波長は、井戸層の組成と膜厚に依存する。しかしながら、AlInGaN極薄膜井戸層を、例えば2インチウェハー上に組成と膜厚をどちらも十分均一に作製することは容易ではない。3nm前後の極薄い井戸層の波長に対する膜厚依存性は大きく、AlやIn組成を均一に作製するだけでも困難であるに加えて、ウェハー面内の微小な膜厚分布が大きな発光波長分布を発生させる。更には、MOCVD等の成長用装置のバッチ間での微小な膜厚のズレも発光波長に大きく影響する。LEDも勿論であるが、特にDVD用途の波長スペックの厳しいLDに適用する場合には、製造歩留りの低下が深刻な問題となる。
【0006】
また、一般的に、窒化物半導体はC軸に沿ったC面への成長が最も良好な結晶性が得られる。しかし、C軸方向には、特有の自発分極がある。また、例えばInGaN等の井戸層は、GaNに比べて格子定数が大きいので、圧縮歪による圧電分極が自発分極に畳重する。現在実用化されているInGaN−QW発光層を用いた近紫外〜青色の発光素子では、GaNに比べて格子定数差が大きいことから圧電分極が支配的となる。これらの分極電場は、量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)を引き起こし、注入電流密度による発光波長シフトや発光効率低下の原因となっている。発光波長が電流値により変化することは、発光素子としては望ましくない特性である。
【0007】
一方、発光層にQWが適用される以前は、短期間ではあるがバルク発光層のLEDが検討された。バルク発光層の場合には、QW発光層と異なり、発光波長は組成のみに依存し膜厚分布に影響されない。本明細書中では、バルク発光層とは、電子のド・ブロイ波長以上の膜厚を有する量子サイズ効果を発現しない程度に十分に厚い発光層を意味する。n型不純物を添加したバルクInGaN発光層を用いたDH構造が特許文献1や特許文献2に開示されている。これらによると、InGaN発光層に適量のn型不純物を添加することで大幅に発光効率を改善することができる。あるいは、特許文献3には、薄いアンドープのバルク発光層と厚いn型不純物添加バルク発光層のLED構造が開示されている。
【0008】
一般的に、バルク発光層の発光スペクトル半値幅は、QW発光層に比べて広く、色純度が悪い。しかしながら、バルク発光層の発光スペクトル半値幅は、バルク発光層にn型不純物を添加することによって狭くすることができる。非特許文献1には、Si添加によるInGaNバルク層のPL発光のピーク強度増加とスペクトル半値幅の減少が報告されている。
【0009】
窒化物半導体のLEDが登場した当時は、GaN自立基板のような窒化物半導体に格子整合するような窒化物半導体基板は入手が困難であり、LEDはサファイア等の異種基板上に形成されていた。この場合には、基板と半導体層との大きな格子不整合や熱膨張率差により、半導体層中に多数の貫通転位が発生する。この貫通転位は発光層へも達し、非発光再結合中心として働くため、このような発光素子の発光効率は十分なものではなかった。高転位密度でありながら高い発光効率を示すQW発光層のLEDと比較すると、バルク発光層のLEDの発光効率は実用レベルではなかった。QW発光層とバルク発光層の発光効率の差は、高転位密度の窒化物半導体発光素子において特に顕著である。
【特許文献1】特開平6−177423号公報
【特許文献2】特開平6−260682号公報
【特許文献3】特開平11−191638号公報
【特許文献4】特開2005−129939号公報
【特許文献5】特開2006−80274号公報
【特許文献6】特開2006−49855号公報
【非特許文献1】Li et al., J. Crystal Growth 290, 374 (2006)
【非特許文献2】T. Takeuchi et al., Jpn. J. Appl. Phys. 36, L382 (1997)
【非特許文献3】A. David et al., Appl. Phys. Lett. 88, 133514 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先にも述べたように、QW発光層において歩留まり良く均一な発光波長を得るには、発光層の組成と膜厚の両方の厳しい管理が必要である。特に、ウェハー内の膜厚分布やバッチ間膜厚分布は、MOCVD装置の反応室の汚れによるガス流変化に起因することが多いので、均一性を向上させようとすると、頻繁な反応室の清掃が必要であり、装置の稼働率低下及び製造コスト悪化を招いてしまう。組成は、一旦原料混合比やウェハー面内の温度分布を調整してしまえば反応室の汚れによってそれほど変化することは無いので、発光波長が膜厚分布に因らなければ製造歩留まりを向上することが可能となり、コストダウンに繋がる。
【0011】
また、電流注入密度による発光波長シフトや発光効率低下の対策として、近年、QCSEを引き起こす分極電場効果を受けないa面あるいはm面の非極性や半極性面へ発光素子を形成し、注入電流密度による発光波長シフトや発光効率低下を防止する研究が盛んに行われている。しかしながら、これらの面への高品質の結晶を成長させることは困難であり、高転位密度や積層欠陥のため高い発光効率は得られていない。
【0012】
本発明者らは、現在の成長技術の範囲では高品質の結晶が得られるC面成長が有用であると考え、C面成長でありながら電流注入による発光波長シフトの小さい発光波長の安定した発光素子の作製が可能であるかどうかを検討した。
【0013】
バルク発光層の場合には、C面成長でありながら発光波長の安定した発光素子を作製することができる可能性がある。厚さ40nmの歪バルクInGaNではQWに比べて励起光強度による発光波長シフトが小さいことが非特許文献2に報告されている。したがって、QW発光層と同等の高発光効率のバルク発光層発光素子を作製することが可能であれば、ウェハー面内あるいはバッチ間の発光波長均一性が向上し、製造歩留まりを改善することができる可能性がある。更には、このようなバルク発光層発光素子は、電流値による発光波長の変化が小さく波長の安定性に優れた発光素子としても期待される。
【0014】
本発明は、以上の現状認識を契機としてんされたものであり、例えば、発光効率の高い半導体発光素子及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第1の側面は、半導体発光素子に係り、前記半導体発光素子は、第1面及び第2面を有する第1導電型半導体を含む第1領域と、第1面及び第2面を有する第2導電型半導体を含む第2領域と、前記第1領域の第2面と前記第2領域の第1面との間に配置された発光層とを備え、前記第1領域の第1面と前記第2領域の第2面との間に、閉じられた複数の空洞が周期的に形成されている。
【0016】
本発明の第2の側面は、半導体発光素子の製造方法に係り、前記製造方法は、露出面に周期的なパターンを有する基板を準備する工程と、前記基板上に第1導電型半導体を成長させることにより第1領域を形成する工程と、前記第1領域の上に発光層を形成する工程と、前記発光層の上に第2導電型半導体を成長させることによって第2領域を形成する工程とを含み、前記周期的なパターンの存在により、前記第1領域、前記発光層及び前記第2領域を含む構造体の中に、閉じられた複数の空洞が周期的に形成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、例えば、発光効率の高い半導体発光素子及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本明細書において「A層の上に形成されたB層」または「Aの上に形成されたB層」という表現は、文脈に反しない限り、A層またはAの上面にB層の底面が接するようにB層が形成されている場合と、A層またはAの上面に1以上の層が形成され、更にその層の上にB層が形成されている場合の両方を含む。また、A層またはAの上面とB層の底面が部分的に接していて、その他の部分ではA層またはAとB層の間に1以上の層が存在している場合も、上記表現に含まれる。
【0019】
また、「〜」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
【0020】
本発明者らは、高発光効率のバルク発光層発光素子の作製の可否を検討した。先に述べたように、QW発光層の発光素子とバルク発光層の発光素子とでは、その発光効率に大きな開きがある。QW発光層とバルク発光層の発光効率の差は、バンド構造の状態密度の差という根本的な違いに起因する。更に、窒化物半導体発光素子においては、QW発光層よりもバルク発光層の方が貫通転位密度に敏感である。そこで、本発明者らは、まず、バルク発光層発光素子をGaNに代表される窒化物半導体基板上に形成し、貫通転位を大幅に削減することで発光効率の改善を試みた。
【0021】
まず、GaN基板上にアンドープバルクInGaN発光層を持つLED構造を作製した。比較のために、同一構造のLEDをサファイア基板上にも作製した。これらのPL強度を比較したところ、GaN基板上の方が1桁大きい発光強度が得られた。したがって、貫通転位を低減することで、バルク発光層発光素子の発光効率を大幅に向上させうることが裏付けられた。
【0022】
次に、本発明者らは、更にバルク発光層発光素子の発光効率をQW発光層発光素子に近づけるべく鋭意検討した結果、バルク発光層であれば発光層中に直接2次元フォトニック結晶構造を造り込むことが可能であることに気が付いた。これにより、従来のQW発光層発光素子に形成していた2次元フォトニック結晶構造よりも効果的にフォトニック効果が得られ、バルク発光層発光素子の発光効率の大幅な改善が可能となった。
【0023】
一般的に窒化物半導体LEDの場合、半導体層と空気の光屈折率差が大きいために光取り出し効率が低く、以前から光取出し面を粗面化することで光取り出し効率を改善しようとする報告が数多く成されている。最近では、LEDに2次元フォトニック結晶構造を組み入れることで、光取り出し効率を向上させる研究が盛んに行われている。
【0024】
2次元フォトニック構造とは、結晶の基板面に平行な2つの直交する軸に沿ってある間隔で周期的に異なる誘電物質を配することにより、面内にフォトニックバンドギャップ(PBG)を持たせたものである。PBG中では、面内のいかなる方向から入射する光も反射される。発光素子に2次元フォトニック結晶構造を適用すると、発光層の面に平行な光を禁止し、発光層に垂直方向の光すなわち面発光に寄与する光を増大させることができる。
【0025】
理想的な2次元フォトニック構造は、基板面に垂直な軸に沿った方向に均一な構造である。しかし、これは必ずしも必要ではなく、ある間隔において面内に離散的な並進対称性を持った2次元周期構造であればPBGを形成することは可能である。また、実際に発光素子に面に垂直な軸に沿って均一な構造を造り込むことは困難であり、ある程度の傾斜や湾曲はやむを得ない。また、2次元周期構造は正方格子でもよいが、光のTMモードとTEモードの両方にPBGの重なりが存在する6回対称の三角格子が好ましい。この三角格子を例えば半導体層中の円柱形の空隙で実現する場合には、円柱同士の間隔をa、円柱の半径をrとすると、最も両方のPBGが重なり合うr/a=0.4〜0.5であることが好ましい。
【0026】
2次元フォトニック結晶構造のLEDへの適用技術としては、電子ビームフォトリソグラフィーと反応性イオンエッチング(RIE)技術によって、光取り出し面であるp型半導体層の表面から該p型半導体層の内部又は発光層に達する2次元的に周期的なパターンの穴を形成する方法がある。
【0027】
しかしながら、p型半導体層の表面から基板をドライエッチングする方法では、エッチングによる該p型層半導体層又は発光層へのイオンダメージにより結晶性が悪化する。具体的には、イオンダメージによりp型半導体中にN空孔が形成され、これらがドナーとして機能するため該p型半導体層の抵抗値の増大を招く。更に、p型半導体層または発光層中に深い準位の結晶欠陥を形成し、内部量子効率の低下及び光を吸収するため発光効率が低下する。
【0028】
更に、p型半導体層の表面からのドライエッチングでは、効果的なフォトニック効果を引き出そうとして発光層までエッチングすると、フォトニック効果は増大するものの、上述した発光層へのイオンダメージに加えて結果的に発光層の面積が小さくなり、取り出し効率は大きくできても内部量子効率は小さくなってしまう。
【0029】
フォトニック構造作製時のp型半導体層及び発光層へのイオンダメージを回避する方法として、n型半導体層に2次元周期構造を作製する方法が提案されている。半導体発光素子を基板上に形成し、基板をレーザーリフトオフ等の技術で剥離し、n型半導体層表面から周期的な穴を形成する技術が非特許文献3に報告されている。しかし、n型半導体層及び発光層はイオンダメージを受けるため、良好な特性は得られない。
【0030】
あるいは、p型半導体層上にn型半導体層を形成し、該n型半導体中に2次元周期構造を作製する方法が特許文献4に開示されている。しかし、この方法では、フォトニック構造と発光層が離れてしまうため、十分なフォトニック効果を得られない。また、この方法では、トンネル接合を利用しているため、通過抵抗は十分低いとは言えない。更に、結晶性があまり良好でないp型半導体層上に良好な結晶性のn型半導体を成長させることは困難である。
【0031】
更に、ドライエッチングを使用せずに2次元周期構造を作製する方法も提案されている。特許文献5では、バイアスを印加しながら電解液中でフォトニック構造を作製する方法が開示されている。しかしながら、この方法では、p型半導体層に構造を造り込むため、該p型半導体層にある程度の厚さが必要となり、発光素子の通過抵抗の増大をもたらす。
【0032】
また、あらかじめ基板表面に2次元周期構造を形成し、半導体との界面に周期構造を転写し、基板を剥離することで、半導体表面に2次元フォトニック結晶構造を作製する技術が特許文献6に開示されている。しかし、加工基板上に結晶を成長させてQW発光層が形成可能な平坦面を得るには、2次元周期構造が消失するまで膜厚を増した後に、更にある程度厚く結晶を成長させる必要があり、発光層に直接あるいは発光層の極近傍にフォトニック構造を作製できないため、その効果は低い。更に、異種基板を用いた場合には、基板界面からの貫通転位をある程度抑制するために数μmの半導体膜厚が必要となるため、フォトニック効果を更に減少させる。つまり、この方法では、フォトニック現象を効果的に発する発光層近くまで、垂直に近い形状を保ちながら、深い穴を形成するのは困難である。
【0033】
上記のいずれの技術も、光取り出し面又はその反対の半導体層表面に、2次元周期的なフォトニック結晶構造が露出している。2次元フォトニック構造は、2種類の互いに異なる誘電率の物質を2次元周期的に配したものであるので、この観点から見ると半導体と空気の誘電率差は大きく、穴の形成は非常に有効な手段である。
【0034】
上記のいずれの技術においても、発光層に直接又は発光層に極めて近傍に2次元周期構造を作製することができないため、フォトニック効果を十分発揮できない。例えば、p型半導体層表面から2次元周期的構造を形成すると、穴による半導体層の面積減少やイオンダメージにより発光素子の通過抵抗が増大する。したがって、仮に光取り出し効率が高くても、動作電圧を高くする必要があるので、発熱による発光素子の劣化や破壊が発生し、発光素子全体のパフォーマンスは低下する。
【0035】
更に、光取り出し面にフォトニック結晶構造を作製した場合、表面の凹凸が光の波長よりも小さいため、半導体と空気との屈折率差に起因した幾何学的な光取り出し効率は十分得られない。
【0036】
本発明の好適な実施形態の半導体発光素子は、第1面及び第2面を有する第1導電型半導体を含む第1領域と、第1面及び第2面を有する第2導電型半導体を含む第2領域と、前記第1領域の第2面と前記第2領域の第1面との間に配置された発光層とを備える。前記第1領域の第1面と前記第2領域の第2面との間には、閉じられた複数の空洞が周期的に形成される。ここで、閉じられた空洞とは、前記第1領域の第1面及び前記第2領域の第2面に対して、該空洞が開口していないことを意味する。周期的な複数の空洞は、2次元フォトニック構造を構成する。
【0037】
ここで、各空洞の少なくとも一部分が、前記発光層の中に位置することが好ましい。
【0038】
前記第1領域は、少なくとも2つの半導体領域の積層構造を有してもよい。例えば、前記第1領域は、GaN基板と、その上に形成されたGaN層とを含みうる。
【0039】
前記半導体発光素子の構造は、例えば、前記第1領域が周期的な構造を有するパターンを含み、前記パターンが前記第1導電型半導体とは異なる材料を含み、前記閉じられた複数の空洞の周期が前記パターンの周期に一致したものでありうる。
【0040】
前記発光層は、バルク発光層であることが好ましい。或いは、前記発光層は、20nm以上1000nm以下の厚さを有することが好ましい。
【0041】
前記発光層は、AlInyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1)で構成されることが好ましい。前記第1、第2導電型半導体は、窒化物半導体であることが好ましい。
【0042】
前記第1領域及び前記第2領域の少なくとも一方は、反射層を含むことが好ましい。
【0043】
本発明の好適な実施形態の半導体発光素子の製造方法は、露出面に周期的なパターンを有する基板を準備する工程と、前記基板上に第1導電型半導体を成長させることにより第1領域を形成する工程と、前記第1領域の上に発光層を形成する工程と、前記発光層の上に第2導電型半導体を成長させることによって第2領域を形成する工程とを含む。ここで、前記周期的なパターンの存在により、前記第1領域、前記発光層及び前記第2領域を含む構造体の中に、閉じられた複数の空洞が周期的に形成される。
【0044】
ここで、前記第1領域を形成する工程では、例えば、材料基板をエッチングすることにより、前記周期的なパターンとして周期的な溝を形成することができる。
【0045】
前記露出面は、第1露出面と第2露出面とを含み、前記第1、第2露出面によって前記周期的なパターンが構成され、前記第1露出面上への前記第1導電型半導体の成長速度が前記第2露出面上への前記第1導電型半導体の成長速度と異なりうる。
【0046】
本発明の好適な実施形態によれば、発光層をバルク発光層とすることにより、容易に発光層自体に2次元フォトニック構造を形成することができる。
【0047】
ここで、2次元周期構造が形成された基板又はテンプレート基板上に、直接又は下地層を介して、バルク発光層を成長させることができる。発光層中には、複数の空洞を含む2次元周期構造が転写されるが、発光層をバルク発光層として発光層自体に十分な厚さを持たせることにより、2次元フォトニック構造を構成する複数の空洞がそれぞれ閉じられて、発光層の上面は、空洞が開口していない連続面、或いは、平坦面となる。バルク発光層を発光層とする半導体発光素子では、発光波長が発光層の膜厚に依存しないので発光層の膜厚を自由に決定することができる。そのため、発光層中に又は発光層の極近傍に、複数の空洞からなる2次元フォトニック構造を容易に造り込むことができる。これにより、大きなフォトニック効果を得ることができる。
【0048】
バルク発光層は、電子のド・ブロイ波長以上の膜厚を有する量子サイズ効果を発現しない程度に厚い発光層であり、この明細書では、20nm以上の厚さを有する発光層というものとする。これを下回る厚さでは量子サイズ効果が発生し、先述したQCSEの影響を強く受け、注入電流による発光波長シフトや発光効率低下が起こる。また、厚すぎると素子自体の抵抗値の増加や、結晶性悪化による発光効率低下を招くため、バルク発光層の厚さは20〜1000nmが好ましい。
【0049】
また、本発明の好適な実施形態の製造方法は、半導体層の成長後に開口を形成することによって2次元周期構造を形成する方法とは異なり、ドライエッチングが不要であり、イオンダメージによる結晶性の悪化を避けることができる。また、半導体層の表面に開口しないように2次元周期構造を形成することにより、電流通過層の面積の減少による抵抗値の増大を防ぐことができる。
【0050】
更に、本発明の好適な実施形態によれば、フォトニック結晶構造が半導体層の表面に露出しないので、フォトニック構造とは別に光取り出し面の粗面化加工が可能であり、光取り出しに有効な発光波長以上の大きさの凹凸あるいは先細り形状の凹凸面の形成が可能である。
【0051】
本発明の好適な実施形態では、窒化物半導体基板又は該基板上に形成した窒化物半導体積層構造の表面に、電子ビームフォトリソグラフィーや、RIE(例えば、ICP−RIE)等のドライエッチングにより微細な2次元周期構造の凹凸を形成し、その上に直接又はn型半導体層を介して、AlInGaN発光層を成長させる。該凹凸の凸部の平面から成長したAlInGaNは、隣の凸部の平面から成長したAlInGaNと会合して平坦面を形成する。該凹凸の凹部の上には2次元周期構造を構成する空洞が形成されうる。空洞の一部は、発光層の中まで伸びうる。
【0052】
あるいは、2次元の周期なパターンを有する誘電体又は金属からなる成長抑止層を発光層と該基板との間に形成してもよい。成長抑止層の上への半導体層の成長速度は、成長抑止層がない開口部(成長抑止層と成長抑止層との間の部分、つまり、下地の露出部分)の上への半導体層の成長速度よりも遅い。まず、窒化物半導体基板上、又は、該基板上に形成した窒化物半導体積層構造表面に、電子ビームフォトリソグラフィーと、気相化学成長法(CVD)、スパッター又は電子ビーム蒸着法等とを用いて、2次元周期構造の成長抑止層を形成する。その後、その上に直接又はn型半導体層を介してAlInGaN発光層を成長させる。成長抑止層に覆われていない開口部から成長したAlInGaNは、隣の開口部から成長したAlInGaNと会合して平坦面を形成する。該成長抑止層の上には空洞が形成される。したがって、2次元の周期なパターンを有する誘電体又は金属からなる成長抑止層のパターンに倣って、2次元周期構造の空洞が形成される。各空隙の一部は、発光層の中まで伸びうる。
【0053】
基板に形成する凹凸の凹部又は成長抑止層の平面形状は、例えば、円形、楕円形又は多角形であることが好ましい。AlInGaN発光層は、該基板又は該基板上に形成したn型半導体層表面の凹凸の凸部又は成長抑止層で覆われていない開口部から成長し、該凹凸の凹部又は成長抑止層の上に空洞を形成した後に該空洞の天井を形成するように会合する。
【0054】
このように、バルク発光層を用いた場合には、ドライエッチング等のイオンダメージを受けることなく発光層中に2次元周期構造を形成することが可能である。凹凸加工基板を使用した場合には基板の凹部の上と凸部の上とにおいて、成長抑止層を形成した場合には該抑止層の上とそれがない開口部の上とにおいて、AlInGaN発光層の膜厚が大きく異なるが、バルク発光層の場合には組成が均一であれば特に問題はない。このような技術は、厳しい精度での膜厚均一性が要求されるQW発光層には適用することができない。
【0055】
また、バルク発光層は、QW発光層と比較すると、量子サイズ効果が発生しないため、同じ発光波長で発光素子を設計した場合、例えば、発光層のIn組成を低くすることができる。そのために、例えば緑色〜アンバー色発光のような長波長の発光素子で問題となっているIn組成増加に伴う結晶品質低下による発光効率の低下を軽減できる可能性がある。加えて、n型不純物添加による長波長化により一層のIn組成低減が可能である。
【0056】
あるいは、発光層の一部にp型不純物を添加することも可能であり、n型不純物と同時に少量のp型不純物を添加するコドープとしてもよい。
【0057】
更に、QW発光層を有する発光素子の場合、長波長領域ではInGaN発光層のIn組成が高くなるため、QCSEによる電流値による発光波長のシフトがより顕著となってくる。これに対して、本発明の好適な実施形態では、バルク発光層であるので波長シフトが小さく、上述のIn組成削減効果とあわせて、発光波長の安定した高発光効率の長波長発光素子の作製が可能である。
【0058】
更に、バルク発光層のLDやLEDでは構造が簡単であり、QW発光層に比べて発光層が厚いため、高い逆電圧耐性を持つことが期待される。加えて、劣化特性もQW発光層に比べ優れている可能性もあり、素子寿命の改善も期待される。
【0059】
また、窒化物半導体基板を使用すると、該基板と発光層の間に互いに光屈折率の異なる窒化物半導体からなるDistributed Bragg Reflector(DBR)を容易に形成することが可能である。
【0060】
窒化物半導体でDBRを構成する場合、一般的にはGaNとAlGaNの積層構造が用いられる。しかし、両者の光屈折率差が小さいため、高い反射率を得ようとすると高Al組成のAlGaNあるいはAlNを用いるか、層数を増やさなければならない。Al組成を高くすると低抵抗のn型半導体を得にくくなり、層数を増やすとクラック発生の問題がある。良好なn型導電性と高屈折率差を両立するには、AlGaNのAl組成は0.3〜0.5が好ましい。また、高反射率とクラック発生防止を両立するには、層数は10〜60対が好ましい。窒化物半導体基板を使用すると、サファイア等の異種基板に比べるとクラックは発生しにくい。
【0061】
これにより、窒化物半導体の面発光レーザー(VCSEL)の作製も可能である。本発明をVCSELに適用した場合には、発光層に上述したような2次元フォトニック結晶構造を造り込むことで面に平行な方向の光を禁止し、垂直方向の光の利得を向上することができる。また、厚いバルク発光層を適用することで、キャビティー長を大きくすることができるため、更に光の利得を上げることができ、効率のよいVCSELを作製することが可能である。
【0062】
また、本発明にしたがってp型半導体層表面を光取り出し面としたLEDを作製した場合には、窒化物半導体基板と発光層の間にDBR反射層を挿入することによって、発光層で発生した光のうち基板側に向かう光を反射し、より光取り出し効率を高めることが可能である。
【0063】
DBRの膜厚は、λ/(4n)であることが好ましい。ここで、λは反射する光の中心波長、nは光屈折率である。しかし、先述したように窒化物半導体の場合は光屈折率差が小さいためストップバンド幅は狭い。DBRをLEDに適用する場合は、VCSELと異なり、ピーク反射率よりもむしろストップバンド幅の方が重要である。発光層から基板に向かう光を効果的に反射するにはストップバンド幅を広げる必要があるため、中心波長をずらしたDBRの組み合わせ、あるいは膜厚を徐々に変化させる等の対策が有効である。
【0064】
DBRのような反射層を発光層と基板の間に形成した場合、発光層と反射層との間の距離を発光波長程度に薄くすると、発光層から基板側に向かう光と反射した光が干渉し、光取り出し効率に影響する。この場合、発光層と反射層の間の距離を調整することで、Resonant Cavity(RC)−LEDとすることもできる。但し、光取り出し効率は、この距離に敏感であり、厳しい膜厚の調節が要求される。
【0065】
光取り出し効率を向上させるには、光取り出し面の粗面化が有効である。しかし、2次元周期的又は非周期的パターンマスクとドライエッチングを使用して粗面化する場合、p型半導体層をある程度厚く成長させる必要があり、LEDの通過抵抗を低くすることが困難となる。更に、ドライエッチングによるイオンダメージも高抵抗化を助長する。LEDの性能のみを追求すると、光取り出し面はn型半導体層表面とする方が好ましい。但し、基板を剥離する工程が必要となり、コストパフォーマンスと歩留りについては不利となる。
【0066】
基板を剥離する場合は、例えば、基板上に半導体積層構造を成長した後に、p型半導体表面にAg等の高反射率の金属反射膜を形成した後、導電性の支持基板を半田で接着することができる。次に、研磨やレーザーリフトオフによって基板を剥離することができる。反射層には、金属反射膜の他に、誘電体と金属を組み合わせた積層体としてもよい。これらは、p型半導体表面を光取り出し面とした場合のDBR反射層と比較し、広範囲の光の入射角度で高い反射率が得られるため、光取り出し効率を一層向上させることができる。更に、p側電極面積を大きく取れるので、通過抵抗低下にも有効である。
【0067】
n型半導体表面の光取り出し面の粗面化は、この場合は、N面が表面となるのでドライエッチングの他にウェットエッチングも用いることができる。また、あらかじめ基板表面に凹凸を形成しておけば、半導体成長中にn型半導体層表面に凹凸が形成され、基板を剥離することで粗面化された光取り出し面を得られ粗面化工程を省略することができる。特に、n型半導体層をAlGaNとした場合には、先細りの凹凸形状が得られ、光取り出し効率向上には好ましい。
【0068】
従来は、サファイア等の異種基板上に発光素子構造を形成していたため、高転位密度にも関わらず高発光効率である薄い井戸層のQW発光層が一般的に採用され実用化されている。そのため膜厚分布に起因した発光波長分布による製造歩留まりの低下や、注入電流値変化による発光波長シフトといった解決し難い問題があった。しかし、本発明の好適な実施形態によれば、窒化物半導体基板上に結晶品質に優れた低転位密度のバルク発光層を得ることが可能となったため、従来のQW発光層では実現不可能な構造の窒化物半導体発光素子を提供することができる。
【0069】
本発明の好適な実施形態では、バルク発光層を採用しているため、発光波長はAlInGaNの組成のみに依存する。従って、従来のQW発光層のようにウェハー面内やバッチ間の膜厚分布が発光波長に影響しないので、発光波長スペックアウトによる歩留まり低下を防止することができる。
【0070】
バルク発光層を採用すると、QW発光層に比べて注入電流値の変化による発光波長シフトが小さい。したがって、発光波長の安定した発光素子を提供することができる。
【0071】
本発明の好適な実施形態によれば、バルク発光層を採用しているため、発光層中に直接2次元周期構造、すなわちフォトニック結晶構造を容易に作製することができる。これは、従来のQW発光層では実現することが困難な技術である。また、本発明の好適な実施形態によれば、n型半導体層表面又はp型半導体層表面から貫通穴を形成しなくてもよいので、半導体発光素子の通過抵抗を上昇させることなく、貫通穴形成に伴う半導体層へのイオンダメージを受けることなくフォトニック効果を十分に引き出すことが可能であり、光取り出し効率を向上することができる。
【0072】
本発明をLEDに適用する場合において、例えば、p型半導体層表面を光取り出し面とすることができる。この場合、発光層と基板の間にDBRを形成することで、発光層から基板側に向かう光を反射し、更に光取り出し効率を高めることができる。更に、本発明は、VCSELに応用することも可能である。
【0073】
あるいは、機械研磨により窒化物半導体基板を十分薄くし、又はレーザーリフトオフ等を用いて基板を分離することにより、n型半導体表面を光取り出し面とすることが可能である。この場合、p型半導体層表面に金属等の反射層を形成することも可能であり、p側電極面積を大きく取れることで発光素子の通過抵抗を低減することができる。また、n側光取り出し面のドライ及びウェットエッチングや表面加工基板を用いることで、光取り出し面に凹凸を形成し、更に光取り出し効率を向上させることができる。
【0074】
露出面に周期的なパターンを有する基板は、GaN、InGaN、AlGaN、AlInGaN、AlN等のIII族窒化物半導体基板、又は、該基板上に窒化物半導体の単層膜又は多層膜を成長させた基板であることが好ましい。
【0075】
基板の面方位は特に限定されず、更にジャスト基板でもよいし、オフ角を付与した基板であってもよい。
【0076】
この明細書で説明される各半導体層は、単層であってもよいし、組成またはキャリア濃度が異なる多層構造又は超格子構造であってもよい。また、厚さ方向にグラジュアルもしくは階段状に組成またはキャリア濃度を変化することも可能である。
【0077】
また、発光素子を構成する各半導体層に添加する不純物として、p型の不純物としては、例えば、マグネシウムや亜鉛又はカルシウム等が好適であり、n型不純物としては、例えば、シリコン、硫黄、セレン、テルル又はゲルマニウム等を挙げることができる。
【0078】
以上のように、発光素子を形成する基板としてGaN基板に代表される窒化物半導体基板を採用し、更には発光素子の発光層にバルク発光層を採用することにより、発光効率を低下させる貫通転位密度の削減と、更にはQW発光層では成し得ない効果的な2次元フォトニック構造の形成が可能となる。これらの相乗効果によりバルク発光層発光素子の発光効率をQW発光層発光素子と同等なまでに引き上げる効果がある。従って、発光波長が膜厚分布に因らず製造歩留まりが高く、更にはC面成長でありながら電流注入による発光波長シフトの小さく、高発光効率のバルク発光層の発光素子が得られる。
【0079】
以下、本発明の半導体発光素子及びその製造方法について、より具体的な実施形態を説明する。
【0080】
「第1実施形態」
図1は、本発明の第1実施形態の半導体発光素子の構成を示す図である。ここでは、一例として、発光波長が405nmの近紫外LEDの製造方法について説明する。基板10は、窒化物半導体基板である。窒化物半導体基板としては、例えば、GaN、AlGaN、AlNからなる基板が好適である。更に、基板10は、導電性であることが好ましいが、絶縁性基板上に窒化物半導体層を形成したテンプレート基板であってもよい。以下では、基板10として、GaN基板を使用した例を説明する。
【0081】
まず、GaN基板10の表面に、電子ビームフォトリソグラフィーや、RIE(例えば、ICP(誘導結合プラズマ)−RIE)等のドライエッチング技術により、2次元周期構造の凹凸加工を施す。ここで、基板に直接凹凸加工してもよいし、基板上にあらかじめDBRのような多層構造を含む半導体層を成長しておき、その表面を凹凸加工してもよい。
【0082】
2次元周期構造は、6回対称のパターンが好ましく、該周期構造の凹部の形状としては、略円柱形、略円錐形、多角形等が可能であり、特に限定はされない。ここでは、円柱形を採用した。例えば、2次元周期構造の周期(凹部の中央同士の間隔)を約200nmとし、凹部の円柱の半径を約90nmとし、凹部の深さは約200nmとすることができる。後の成長でInGaN発光層中の空洞の半径が凹部の円柱の半径より小さくなるので、凹部の円柱の半径は、それを考慮して決定される。
【0083】
次に、凹凸加工したGaN基板(露出面に周期的なパターンを有するGaN基板)10をMOCVD装置のリアクターのサセプターにセットする。MOCVD装置への投入前にGaN基板10に対して酸洗浄、有機洗浄、アンモニア水による前処理を施してもよい。GaN基板の投入後、リアクター内に水素、窒素、アンモニアガスを導入し、1000〜1200℃に基板を加熱し、0〜10分間保持し基板表面を清浄化する。
【0084】
引き続き、トリメチルガリウム(TMG)、ドーピングガスとしてSiHを導入し、厚さ0.1μmのn型GaN層11を成長させる。n型GaN層11は、凹凸加工されたGaN基板10表面の凸部10bの平坦面から凹部10cを覆うように成長するが、隣り合う凸部10bから成長するn型GaNが完全に会合する前に成長を中断する。もちろん、n型GaNを完全に会合させた後に平坦なInGaN発光層を形成してもよいが、n型GaNを会合させない方が直接発光層中に2次元周期構造が形成されるので好ましい。この時、トリメチルアルミニウム(TMA)やトリメチルインジウム(TMI)も導入し、n型AlGaN、InGaN、AlInGaNとしてもよい。
【0085】
以上の工程によって、第1面10a及び第2面11bを有する第1導電型半導体を含む第1領域Aが形成される。
【0086】
次に、基板温度を800〜1000℃に下げ、TMGとTMI、更にドーピングガスとしてSiHを導入して、厚さ200nmのn型InGaN発光層12を成長させる。InGaN発光層12の成長は、横方向成長を含み、離隔していたInGaNが完全に会合して平坦面が得られる。更に、TMIを停止して、厚さ10nmのn型GaN保護層13を成長させる。
【0087】
基板温度を900〜1100℃に上げ、TMGとTMA、更にp型不純物としてシクロペンタジエニルマグネシウム(CpMg)を導入して、厚さ50nmのp型Al0.1GaN電流ブロック層14を成長させる。
【0088】
引き続き、同温度で厚さ100nmのp型GaNコンタクト層15を成長させる。Mg添加量は、例えば1×1020cm−3である。成長の終了後、基板は、100℃以下まで自然冷却され、MOCVD装置のリアクターから取り出される。
【0089】
以上の工程によって、第1導電型半導体を含む第1領域Aの第2面11bの上にInGaN発光層12を有し、その上に、第1面13a及び第2面15aを有する第2導電型半導体を含む第2領域Bが形成される。ここで、前記第1領域Aの第1面10aと前記第2領域Bの第2面15aとの間に、閉じられた複数の空洞18が周期的に形成される。
【0090】
次に、p型半導体層に導入したMgを活性化させるため、RTA炉に投入し、窒素雰囲気中で800〜1000℃、1〜10分間アニールを実施する。
【0091】
その後、RTA炉から取り出した基板のp型GaNコンタクト層15の表面にNi/Au電極16を形成し、基板10を100μm程度の厚さまで裏面から研磨した後に基板裏面にTi/Al電極17を形成する。次に、300×300μm程度の適当な大きさにダイシングすることでLEDが得られる。
【0092】
「第2実施形態」
図2は、本発明の第2実施形態の半導体発光素子の構成を示す図である。ここでは、一例として、発光波長が405nmの近紫外LEDの製造方法について説明する。基板20は、n型GaN基板である。
【0093】
まず、GaN基板20表面に、電子ビームフォトリソグラフィーと、スパッター又はCVDにより、2次元周期構造の酸化シリコン膜(成長抑止層)200を島状に形成する。ここで、基板に直接酸化シリコン膜を形成してもよいし、基板上にあらかじめDBRのような多層構造を含む半導体層を成長しておき、その表面に酸化シリコン膜を形成してもよい。
【0094】
2次元周期構造は、6回対称のパターンが好ましく、島状の酸化シリコン膜の形状としては、略円形、多角形等が可能であり、特に限定はされない。ここでは、円形を採用した。例えば、2次元周期構造の周期(円形の酸化シリコン膜の中心同士の間隔)を約200nmとして、円の半径を約90nmとして、酸化シリコン膜の厚さを約100nmとすることができる。後の成長でInGaN発光層中の空洞の半径は酸化シリコン膜の半径より小さくなるので、酸化シリコン膜の半径は、それを考慮して決定される。
【0095】
次に、表面に酸化シリコン膜200のパターンが形成されたGaN基板をMOCVD装置のリアクターのサセプターにセットする。MOCVD装置への投入前にGaN基板20に対して酸洗浄、有機洗浄、アンモニア水による前処理を施してもよい。GaN基板の投入後、リアクター内に水素、窒素、アンモニアガスを導入し、1000〜1200℃に基板を加熱し、0〜10分間保持し基板表面を清浄化する。
【0096】
引き続き、TMG、ドーピングガスとしてSiHを導入し、厚さ0.1μmのn型GaN層21を成長させる。ここで、酸化シリコン膜200は、その上へのn型GaNの成長を抑止するので、酸化シリコン膜200で覆われていない基板20の露出面(第1露出面)20eへのn型GaNの縦方向の成長速度は、酸化シリコン膜200の露出面(第2露出面)200eへのn型GaNの縦方向の成長速度よりも大きい。n型GaN層21の成長は、酸化シリコン膜200を挟んで対向するn型GaNが完全に会合する前に中断する。もちろん、n型GaNが完全に会合させた後に平坦なInGaN発光層を形成してもよいが、n型GaNを会合させない方が直接発光層中に2次元周期構造が形成されるので好ましい。この時、TMAやTMIも導入し、n型AlGaNあるいはInGaN、AlInGaNとしてもよい。
【0097】
以上の工程によって、第1面20a及び第2面21bを有する第1導電型半導体を含む第1領域Aが形成される。
【0098】
次に、基板温度を800〜1000℃に下げ、TMGとTMI、更にドーピングガスとしてSiHを導入して、厚さ200nmのn型InGaN発光層22を成長させる。InGaN発光層22の成長は、横方向成長を含み、離隔していたInGaNが完全に会合して平坦面が得られている。更にTMIを停止し厚さ10nmのn型GaN保護層23を成長させる。
【0099】
基板温度を900〜1100℃に上げ、TMGとTMA、更にp型不純物としてCpMgを導入して、厚さ50nmのp型Al0.1GaN電流ブロック層24を成長させる。
【0100】
引き続き、同温度で厚さ100nmのp型GaNコンタクト層25を成長させる。Mg添加量は、例えば1×1020cm−3である。成長の終了後、基板は、100℃以下まで自然冷却され、MOCVD装置のリアクターから取り出される。
【0101】
以上の工程によって、第1導電型半導体を含む第1領域Aの第2面21bの上にInGaN発光層22を有し、その上に、第1面23a及び第2面25aを有する第2導電型半導体を含む第2領域Bが形成される。ここで、前記第1領域Aの第1面20aと前記第2領域Bの第2面25aとの間に、閉じられた複数の空洞28が周期的に形成される。
【0102】
次に、p型半導体層に導入したMgを活性化させるため、RTA炉に投入し、窒素雰囲気中で800〜1000℃、1〜10分間アニールを実施する。
【0103】
その後、RTA炉から取り出した基板のp型コンタクト層25表面にNi/Au電極26を形成し、基板20を100μm程度の厚さまで裏面から研磨した後に基板裏面にTi/Al電極27を形成する。次に300×300μm程度の適当な大きさにダイシングすることでLEDが得られる。
【0104】
[第3実施形態]
図3は、本発明の第3実施形態の半導体発光素子の構成を示す図である。ここでは、一例として、発光波長が405nmの近紫外LEDの製造方法について説明する。基板30は、n型GaN基板である。
【0105】
まず、GaN基板30をMOCVD装置のリアクターのサセプターにセットする。MOCVD装置への投入前にGaN基板30に対して酸洗浄、有機洗浄、アンモニア水による前処理を施してもよい。GaN基板の投入後、リアクター内に水素、窒素、アンモニアガスを導入し、1000〜1200℃に基板を加熱し、0〜10分間保持し基板表面を清浄化する。
【0106】
引き続き、TMG、ドーピングガスとしてSiHを導入し、厚さ0.5μmのn型GaN第1バッファー層301を成長させる。この時、TMAも導入し、n型バッファー層をAlGaNとしても良く、また組成の異なる多層膜とすることもできる。
【0107】
引き続き、同じ基板温度で、TMGとTMA、ドーピングガスとしてSiHを導入し、n型DBR層302を成長させる。例えば、厚さ39.9nmのn型GaNと、厚さ42.7nmのn型Al0.4GaNを交互に20対積層する。
【0108】
更に、TMG、ドーピングガスとしてSiHを導入し、厚さ0.5μmのn型GaN第2バッファー層303を成長させる。
【0109】
次に、基板をリアクターから取り出し、n型GaN層303表面に、電子ビームフォトリソグラフィーと、通常のRIE又はICP(誘導結合プラズマ)−RIE等のドライエッチング技術により、2次元周期構造の凹凸加工を施す。
【0110】
2次元周期構造は、6回対称のパターンが好ましく、該周期構造の凹部の形状としては、略円柱形、略円錐形、多角形等が可能であり、特に限定はされない。ここでは、円柱形を採用した。例えば、2次元周期構造の周期(凹部の中央同士の間隔)を約200nmとし、凹部の円柱の半径を約90nmとし、凹部の深さは約200nmとすることができる。後の成長でInGaN発光層中の空洞の半径が凹部の円柱の半径より小さくなるので、凹部の円柱の半径は、それを考慮して決定される。
【0111】
次に、凹凸加工した基板(露出面に周期的なパターンを有するGaN基板)を再度MOCVD装置のリアクターのサセプターにセットする。MOCVD装置への投入前にエピ基板に対して酸洗浄、有機洗浄、アンモニア水による前処理を施してもよい。基板の投入後、リアクター内に水素、窒素、アンモニアガスを導入し、1000〜1200℃に基板を加熱し、0〜10分間保持し基板表面を清浄化する。
【0112】
引き続き、TMG、ドーピングガスとしてSiHを導入し、厚さ0.1μmのn型GaN層31を成長させる。n型GaN層31は、凹凸加工されたn型GaN層303表面の凸部303aの平坦面から凹部303bを覆うように成長するが、隣り合う凸部303aから成長するn型GaNが完全に会合する前に成長を中断する。もちろん、n型GaNを完全に会合させた後に平坦なInGaN発光層を形成してもよいが、n型GaN層を会合させない方が直接発光層中に2次元周期構造が形成されるので好ましい。この時、TMAやTMIも導入し、n型AlGaNあるいはInGaN、AlInGaNとしてもよい。
【0113】
以上の工程によって、第1面30a及び第2面31bを有する第1導電型半導体を含む第1領域Aが形成される。
【0114】
次に、基板温度を800〜1000℃に下げ、TMGとTMI、更にドーピングガスとしてSiHを導入して、厚さ200nmのn型InGaN発光層32を成長させる。InGaN発光層32の成長は、横方向成長を含み、離隔していたInGaNが完全に会合して平坦面が得られる。更にTMIを停止して、厚さ10nmのn型GaN保護層33を成長させる。
【0115】
基板温度を900〜1100℃に上げ、TMGとTMA、更にp型不純物としてCpMgを導入し、厚さ50nmのp型Al0.1GaN電流ブロック層34を成長させる。
【0116】
引き続き、同温度で厚さ100nmのp型GaNコンタクト層35を成長させる。Mg添加量は、例えば1×1020cm−3である。成長の終了後、基板は、100℃以下まで自然冷却され、MOCVD装置のリアクターから取り出される。
【0117】
以上の工程によって、第1導電型半導体を含む第1領域Aの第2面31bの上にInGaN発光層32を有し、その上に、第1面33a及び第2面35aを有する第2導電型半導体を含む第2領域Bが形成される。ここで、前記第1領域Aの第1面30aと前記第2領域Bの第2面35aとの間に、閉じられた複数の空洞38が周期的に形成される。
【0118】
次に、p型半導体層に導入したMgを活性化させるため、RTA炉に投入し、窒素雰囲気中で800〜1000℃、1〜10分間アニールを実施する。
【0119】
その後、RTA炉から取り出した基板のp型コンタクト層35表面にNi/Au電極36を形成し、基板30を100μm程度の厚さまで裏面から研磨した後に基板裏面にTi/Al電極37を形成する。次に300×300μm程度の適当な大きさにダイシングすることでLEDが得られる。
【0120】
[第4実施形態]
図4は、本発明の第4実施形態の半導体発光素子の構成を示す図である。ここでは、一例として、発光波長が405nmの近紫外LEDの製造方法について説明する。基板40は、n型GaN基板である。
【0121】
まず、GaN基板40をMOCVD装置のリアクターのサセプターにセットする。MOCVD装置への投入前にGaN基板40に対して酸洗浄、有機洗浄、アンモニア水による前処理を施してもよい。GaN基板の投入後、リアクター内に水素、窒素、アンモニアガスを導入し、1000〜1200℃に基板を加熱し、0〜10分間保持し基板表面を清浄化する。
【0122】
引き続き、TMG、ドーピングガスとしてSiHを導入し、厚さ0.5μmのn型GaN第1バッファー層401を成長させる。この時、TMAも導入し、n型バッファー層をAlGaNとしても良く、また組成の異なる多層膜とすることもできる。
【0123】
引き続き、同じ基板温度でTMGとTMA、ドーピングガスとしてSiHを導入し、n型DBR層402を成長させる。例えば、厚さ39.9nmのn型GaNと、厚さ42.7nmのn型Al0.4GaNを交互に20対積層する。
【0124】
更に、TMG、ドーピングガスとしてSiHを導入し、厚さ0.2μmのn型GaN第2バッファー層403を成長させる。
【0125】
次に、基板をリアクターから取り出し、n型GaN層403表面に、電子ビームフォトリソグラフィーと、スパッター又はCVDにより、2次元周期構造の酸化シリコン膜(成長抑止層)400を島状に形成する。
【0126】
ここで、2次元周期構造は、6回対称のパターンが好ましく、島状の酸化シリコン膜の形状としては、略円形、多角形等が可能であり、特に限定はされない。ここでは、円形を採用した。例えば、2次元周期構造の周期(円形の酸化シリコン膜の中心同士の間隔)を約200nmとして、円の半径を約90nmとして、酸化シリコン膜の厚さを約100nmとすることができる。後の成長でInGaN発光層中の空洞の半径は酸化シリコン膜の半径より小さくなるので、酸化シリコン膜の半径は、それを考慮して決定される。
【0127】
次に、表面に酸化シリコン膜400のパターンが形成された基板を再度MOCVD装置のリアクターのサセプターにセットする。MOCVD装置への投入前に基板に対して酸洗浄、有機洗浄、アンモニア水による前処理を施してもよい。基板の投入後、リアクター内に水素、窒素、アンモニアガスを導入し、1000〜1200℃に基板を加熱し、0〜10分間保持し基板表面を清浄化する。
【0128】
引き続き、TMG、ドーピングガスとしてSiHを導入し、厚さ0.1μmのn型GaNクラッド層41を成長させる。ここで、酸化シリコン膜400は、その上へのn型GaNの成長を抑止するので、酸化シリコン膜400で覆われていないn型GaN層403の露出面(第1露出面)403eへのn型GaNの縦方向の成長速度は、酸化シリコン膜400の露出面(第2露出面)400eへのn型GaNの縦方向の成長速度よりも大きい。n型GaN層41の成長は、酸化シリコン膜400を挟んで対向するn型GaNが完全に会合する前に中断する。もちろん、n型GaNが完全に会合させた後に平坦なInGaN発光層を形成してもよいが、n型GaNが会合させない方が直接発光層中に2次元周期構造が形成されるので好ましい。この時、TMAやTMIも導入し、n型AlGaNあるいはInGaN、AlInGaNとしてもよい。
【0129】
以上の工程によって、第1面40a及び第2面41bを有する第1導電型半導体を含む第1領域Aが形成される。
【0130】
次に、基板温度を800〜1000℃に下げ、TMGとTMI、更にドーピングガスとしてSiHを導入して、厚さ200nmのn型InGaN発光層42を成長させる。InGaN発光層42の成長は、横方向成長を含み、離隔していたInGaNが完全に会合して平坦面が得られている。更にTMIを停止し厚さ10nmのn型GaN保護層43を成長させる。
【0131】
基板温度を900〜1100℃に上げ、TMGとTMA、更にp型不純物としてCpMgを導入して、厚さ50nmのp型Al0.1GaN電流ブロック層44を成長させる。
【0132】
引き続き、同温度で厚さ100nmのp型GaNコンタクト層45を成長させる。Mg添加量は、例えば1×1020cm−3である。成長の終了後、基板は、100℃以下まで自然冷却され、MOCVD装置のリアクターから取り出される。
【0133】
以上の工程によって、第1導電型半導体を含む第1領域Aの第2面41bの上にInGaN発光層42を有し、その上に、第1面43a及び第2面45aを有する第2導電型半導体を含む第2領域Bが形成される。ここで、前記第1領域Aの第1面40aと前記第2領域Bの第2面45aとの間に、閉じられた複数の空洞48が周期的に形成される。
【0134】
次に、p型半導体層に導入したMgを活性化させるため、RTA炉に投入し、窒素雰囲気中で800〜1000℃、1〜10分間アニールを実施する。
【0135】
その後、RTA炉から取り出した基板のp型コンタクト層45表面にNi/Au電極46を形成し、基板40を100μm程度の厚さまで裏面から研磨した後に基板裏面にTi/Al電極47を形成する。次に300×300μm程度の適当な大きさにダイシングすることでLEDが得られる。
【0136】
図5は、本発明の第5実施形態の半導体発光素子の構成を示す図である。ここでは、一例として、発光波長が405nmの近紫外LEDの製造方法について説明する。基板50は、n型GaN基板である。
【0137】
まず、GaN基板50の表面に、電子ビームフォトリソグラフィーと、通常のRIE又はICP(誘導結合プラズマ)−RIE等のドライエッチング技術により、2次元周期構造の凹凸加工を施す。ここで、基板に直接凹凸加工してもよいし、基板上にあらかじめ多層構造を含む半導体層を成長しておき、その表面を凹凸加工してもよい。
【0138】
2次元周期構造は、6回対称のパターンが好ましく、該周期構造の凹部の形状としては、略円柱形、略円錐形、多角形等が可能であり、特に限定はされない。ここでは、円柱形を採用した。例えば、2次元周期構造の周期(凹部の中央同士の間隔)を約200nmとし、凹部の円柱の半径を約90nm、凹部深さを約200nmとすることができる。後の成長でInGaN発光層中の空洞の半径が凹部の円柱の半径より小さくなるので、凹部の円柱の半径は、それを考慮して決定される。
【0139】
次に、凹凸加工したGaN基板50をMOCVD装置のリアクターのサセプターにセットする。MOCVD装置への投入前にGaN基板50に対して酸洗浄、有機洗浄、アンモニア水による前処理を施してもよい。GaN基板の投入後、リアクター内に水素、窒素、アンモニアガスを導入し、1000〜1200℃に基板を加熱し、0〜10分間保持し基板表面を清浄化する。
【0140】
引き続き、TMG、ドーピングガスとしてSiHを導入し、厚さ0.1μmのn型GaN層51を成長させる。n型GaN層51は、凹凸加工されたGaN基板50表面の凸部50bの平坦面から凹部50cを覆うように成長するが、隣り合う凸部50bから成長するn型GaNが完全に会合する前に成長を中断する。もちろん、n型GaNを完全に会合させた後に平坦なInGaN発光層を形成してもよいが、会合させない方が直接発光層中に2次元周期構造が形成されるので好ましい。この時、TMAやTMIも導入し、n型AlGaN、InGaN、AlInGaNとしてもよい。
【0141】
以上の工程によって、第1面50a及び第2面51bを有する第1導電型半導体を含む第1領域Aが形成される。
【0142】
次に、基板温度を800〜1000℃に下げ、TMGとTMI、更にドーピングガスとしてSiHを導入して、厚さ200nmのn型InGaN発光層52を成長させる。InGaN発光層52成長は、横方向成長を含み、離隔していたInGaNが完全に会合して平坦面が得られる。更にTMIを停止して、厚さ10nmのn型GaN保護層53を成長させる。
【0143】
基板温度を900〜1100℃に上げ、TMGとTMA、更にp型不純物としてCp2Mgを導入して、厚さ50nmのp型Al0.1GaN電流ブロック層54を成長させる。
【0144】
引き続き、同温度で厚さ100nmのp型GaNコンタクト層55を成長させる。Mg添加量は、例えば1×1020cm−3である。成長の終了後、基板は、100℃以下まで自然冷却され、MOCVD装置のリアクターから取り出される。
【0145】
以上の工程によって、第1導電型半導体を含む第1領域Aの第2面51bの上にInGaN発光層52を有し、その上に、第1面53a及び第2面55aを有する第2導電型半導体を含む第2領域Bが形成される。ここで、前記第1領域Aの第1面50aと前記第2領域Bの第2面55aとの間に、閉じられた複数の空洞58が周期的に形成される。
【0146】
次に、p型半導体層に導入したMgを活性化させるため、RTA炉に投入し、窒素雰囲気中で800〜1000℃、1〜10分間アニールを実施する。
【0147】
次に、電子ビーム蒸着装置によってp−GaN層55の表面に高反射率のAg、Al、Rh等を蒸着し、400〜600℃、5〜20分間のアニールを施し、p側電極56を形成する。これらのうちAgを用いる方が最も高い反射率が得られ望ましい。
【0148】
更に、p電極56にAu−Sn等の半田(図示せず)を用いて、p側電極56表面に支持基板としてCu−W合金基板504を接着する。支持基板は、導電性であれば何でも構わないが、熱伝導性の良好なものを選ぶのが望ましい。
【0149】
次に、GaN基板を第1面50a側から機械研磨により50〜200nmの厚さまで薄くする。
【0150】
次に、基板をKOH等のアルカリに浸漬し紫外線を照射する。n型半導体表面に光取り出しに有効な凹凸が形成される。
【0151】
更に、電子ビーム蒸着装置にてn型半導体層表面に、Ti/Alを蒸着し400〜600℃、5〜20分間のアニールを施しn電極57を形成する。あるいはn電極は透光性電極とすることもできる。
【0152】
次に、300×300μm程度の適当な大きさにダイシングすることで第5実施形態に係るLEDの作製が完了した。
【0153】
以上、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない範囲であらゆる変更や変形が可能である。
【0154】
本発明の好適な実施形態によれば、窒化物半導体基板の採用と、発光層に直接2次元フォトニック構造を造り込むことで、バルク発光層でありながら高発光効率の窒化物半導体半導体素子を作製することが可能である。バルク発光層は発光波長が膜厚に依存しないため、発光波長のスペックアウトによる発光素子の製造歩留まりを大幅に改善することができる。更にQW発光層に比べて注入電流値による発光波長の変化が小さく、発光波長の安定した発光素子を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0155】
【図1】本発明の第1実施形態の半導体発光素子の構成を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態の半導体発光素子の構成を示す図である。
【図3】本発明の第3実施形態の半導体発光素子の構成を示す図である。
【図4】本発明の第4実施形態の半導体発光素子の構成を示す図である。
【図5】本発明の第5実施形態の半導体発光素子の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0156】
10、20、30、40、50…n型GaN基板、11、21、31、41、51…n型GaNクラッド層、12、22、32、42、52…n型InGaN発光層、13、23、33、43、53…n型GaN保護層、14、24、34、44、54…p型AlGaN電流ブロック層、15、25、35、45、55…p型GaNコンタクト層、16、26、36、46、56…p電極、17、27、37、47、57…n電極、18、28、38、48、58、空洞、301、401…n型GaN第1バッファー層、302、402…n型DBR反射層、303、403…n型GaN第2バッファー層、200、400…酸化シリコン膜、504…支持基板、10a、20a、30a、40a、50a・・・第1領域の第1面、11b、21b、31b、41b、51b・・・第1領域の第2面、13a、23a、33a、43a、53a・・・第2領域の第1面、15a、25a、35a、45a、55a・・・第2領域の第2面、10b・・・凸部、10c・・・凹部、20e・・・第1露出面、200e・・・第2露出面、303a・・・凸部、303b・・・凹部、400e・・・第2露出面、403e・・・第1露出面、50b・・・凸部、50c・・・凹部、A・・・第1領域、B・・・第2領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面及び第2面を有する第1導電型半導体を含む第1領域と、
第1面及び第2面を有する第2導電型半導体を含む第2領域と、
前記第1領域の第2面と前記第2領域の第1面との間に配置された発光層とを備え、
前記第1領域の第1面と前記第2領域の第2面との間に、閉じられた複数の空洞が周期的に形成されていることを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
各空洞の少なくとも一部分が、前記発光層の中に位置することを特徴とする請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記第1領域が少なくとも2つの半導体領域の積層構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第1領域が周期的な構造を有するパターンを含み、前記パターンが前記第1導電型半導体とは異なる材料を含み、前記閉じられた複数の空洞の周期が前記パターンの周期に一致していることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記発光層がバルク発光層であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記発光層が20nm以上1000nm以下の厚さを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記発光層がAlxInyGa1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1)で構成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記第1、第2導電型半導体が窒化物半導体であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記第1領域及び前記第2領域の少なくとも一方が反射層を含むことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【請求項10】
露出面に周期的なパターンを有する基板を準備する工程と、
前記基板上に第1導電型半導体を成長させることにより第1領域を形成する工程と、
前記第1領域の上に発光層を形成する工程と、
前記発光層の上に第2導電型半導体を成長させることによって第2領域を形成する工程と、
を含み、前記周期的なパターンの存在により、前記第1領域、前記発光層及び前記第2領域を含む構造体の中に、閉じられた複数の空洞が周期的に形成されることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記第1領域を形成する工程では、材料基板をエッチングすることにより、前記周期的なパターンとして周期的な溝を形成することを特徴とする請求項10に記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記露出面は、第1露出面と第2露出面とを含み、前記第1、第2露出面によって前記周期的なパターンが構成され、前記第1露出面上への前記第1導電型半導体の成長速度が前記第2露出面上への前記第1導電型半導体の成長速度と異なることを特徴とする請求項10に記載の半導体発光素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−117922(P2008−117922A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−299348(P2006−299348)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】