説明

半導体発光素子及びそれを用いた偏光表示装置

【課題】出射光の偏光比が高い半導体発光素子及びそれを用いた偏光表示装置を提供する。
【解決手段】半導体発光素子200は、基板201上に形成され、少なくとも2種類以上の偏光を有する光を発生する光ガイド領域を含む積層構造体202と、積層構造体202の主面に設けられ、光を光ガイド領域内において所定の方向に導波させるストライプ形状の導波路とを備え、積層構造体202は、光の導波方向と垂直な積層構造体202の端面の一部において、少なくとも光ガイド領域の一部を含んで凹形状に形成されたスリット部217を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端面出射形の半導体発光素子及びそれを用いた偏光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小型、安価、高出力などの優れた特徴をもつことから、LED(Light Emitting Diode)や半導体レーザなどの半導体発光素子が、通信、光ディスクなどのIT技術のほか、医療、一部照明など、幅広い技術分野で用いられている。近年では、特に、液晶プロジェクタや液晶ディスプレイなどの偏光表示装置の小型、薄型、低消費電力化を実現するために、光源として半導体発光素子を用いた偏光表示装置の開発が活発に行われている。このような偏光表示装置用途の光源としては、波長420nmから波長660nm程度の範囲にある赤色光、緑色光、青色光、いわゆるRGBの光を発光する光源が必要となる。このため、従来の偏光表示装置においては、青色LEDと蛍光体を組み合わせた白色LEDを用いるタイプのものや、各色の光を発する3種類のLED(赤色/緑色/青色LED)を組み合わせたものなどが開発されている。また、液晶プロジェクタのような投影型の偏光表示装置の場合、光源の光をより効率良く画像として投影するために、光源からの出射光は指向性が高いことが好まれる。このような高指向性の半導体発光素子を実現するため、可視の波長の光を出射する半導体レーザなどの開発も進められている。
【0003】
このような半導体発光素子において、波長420〜550nmの青色光から緑色光を発光する発光素子については、主に窒化ガリウム(GaN)系半導体素子が用いられている。また、波長550nmから660nmの赤色を発光する発光素子としては、主にガリウム砒素(GaAs)系半導体発光素子が用いられている。また、GaN系半導体素子を用いた緑色〜赤色発光素子の研究開発が進められている。
【0004】
偏光表示装置では、光源からの光を効率よく利用するために、出射光の偏光比(TE/TM偏光比)と指向性が高いことが望まれている。このため、半導体発光素子として、出射光の偏光比が比較的高く、指向性の高い半導体レーザを用いる方法も提案されている。しかしながら、半導体発光素子として半導体レーザを用いた場合、出射光の可干渉性により投影像のちらつき、つまりスペックルノイズが重要な問題となる。
【0005】
そこで、可干渉性の低く、指向性の高い半導体発光素子として、誘導自然放出光を出射するスーパールミネッセントダイオード(SLD)を液晶プロジェクタの光源として用いることが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。また、偏光表示装置の光源としてSLD素子を用いた場合、出射光の拡がり角が60°(半値全幅)と指向性が高く、また、偏光性を有しているため、偏光表示装置の半導体発光素子からの光を効率よく利用することができる(例えば、非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】E. Feltin, et al.,“Broadband blue superluminescent light−emitting diodes based on GaN”,Appl.Phys.Lett.,95,081107(2009).
【非特許文献2】Alphonse, G.A,et al., “High−power superluminescent diodes”,Quantum Electronics, IEEE Journal of quantum electronics Volume 24 Issue 12 pp.2454(1988).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、TE/TM偏光比が高い(例えば、偏光比15)のSLD素子を利用しても、およそ7%の光は液晶パネルの前段にある偏光子に吸収され熱に変換される。この熱は偏光子の温度を上昇させ、その結果、偏光子の偏光比を低下させる。この結果、偏光表示装置の投影像のコントラストの低下、つまり、画質の低下という課題が発生する。
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、出射光の偏光比が高い半導体発光素子及びそれを用いた偏光表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一形態に係る半導体発光素子は、基板上に形成され、少なくとも2種類以上の偏光を有する光を発生する光ガイド領域を含む積層構造体と、前記積層構造体の主面に設けられ、前記光を前記光ガイド領域内において所定の方向に導波させるストライプ形状の導波路とを備え、前記積層構造体は、前記光の導波方向と垂直な前記積層構造体の端面の一部において、少なくとも前記光ガイド領域の一部を含んで凹形状に形成されたスリット部を備える。
【0010】
この構成によれば、光導波路に導波されて光ガイド領域を伝搬するTM光に選択的に損失を与え、TE/TM偏光比を増加することが可能となる。従って、出射光の偏光比が高い半導体発光素子を提供することができる。なお、本発明における光ガイド領域とは、積層構造体における活性層を含む領域であって、光が導波する領域を意味する。
【0011】
ここで、前記半導体発光素子は、前記積層構造体の端面に凹凸形状を有することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、半導体発光素子の出射光の偏光比を向上するだけでなく、端面の反射率を低減することが可能となる。
【0013】
ここで、前記半導体発光素子は、前記スリット部以外の前記積層構造体の端面に光反射膜を有することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、積層構造体において、n側光ガイド層、p側光ガイド層及び活性層を導波するSLD光のみがSLD素子の外部へ出射し、n及びp側光ガイド層を導波する光は反射され、SLD素子の内部へとフィードバックされる。従って、効率よく出射光の偏光比を向上することができる。
【0015】
ここで、前記スリット部は、前記積層構造体の端面からの深さが30μm以上であることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、TE光とTM光の強度比をおよそ10倍程度に増加することが可能となる。従って、出射光の偏光比がより高い半導体発光素子を提供することができる。
【0017】
ここで、前記基板は、c面またはm面を主面とする六方晶GaN系半導体基板であることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、c面GaNまたはm面GaN上に積層構造体を形成することで、劈開が容易なm面またはc面を光出射面とし、偏光比の高い発光素子を形成することができる。
【0019】
ここで、前記半導体発光素子は、半導体スーパールミネッセントダイオード(SLD)素子であることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、半導体発光素子として、レーザダイオードの高輝度(高出力)とLEDの低コヒーレンス性を併せ持つSLD素子を用いることにより、半導体発光素子の偏光比を増加することが可能となる。
【0021】
ここで、前記半導体発光素子は、III族窒化物半導体であることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、III族窒化物半導体を用いることで、紫外〜赤外の幅広い波長域で動作する、高偏光比の半導体発光素子を形成することができる。
【0023】
ここで、前記半導体発光素子は、AlxGayIn1-x-yAsz1-zであることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、x、y、zの組成比を調整して赤色発光させた半導体発光素子において、赤色半導体発光素子の偏光比を増加することが可能となる。
【0025】
また、本発明の一形態に係る偏光表示装置は、上記した半導体発光素子と、前記半導体発光素子から出射された光を偏光する偏光子と、前記半導体発光素子と前記偏光子との間に設けられた液晶パネルとを備える。
【0026】
この構成によれば、光源の偏光比が増加するために、偏光子によって吸収される光が減少し、偏光子の発熱を低減することができるほか、偏光表示装置の消費電力を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、出射光の偏光比が高い半導体発光素子及びそれを用いた偏光表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1の実施形態に係る偏光表示装置の概略図である。
【図2】第1の実施形態に係るSLD素子の概略図であり、(a)は、SLD素子の平面図、(b)は、(a)におけるSLD素子のA−A’線における断面図、(c)は、(a)におけるSLD素子のB−B’線における断面図である。
【図3】第1の実施形態に係るSLD素子の製造方法を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係るSLD素子の製造方法を示す図である。
【図5】第1の実施形態に係るSLD素子の製造方法を示す図である。
【図6】第1の実施形態に係るSLD素子の製造方法を示す図である。
【図7】第1の実施形態に係るSLD素子の製造方法を示す図である。
【図8】第1の実施形態に係るSLD素子の製造方法を示す図である。
【図9】第1の実施形態に係るSLD素子のシミュレーション結果を示す図であり、(a)は、スリット部近傍における光の伝搬シミュレーション結果を示す図、(b)は、シミュレーション結果から得られたTE/TM偏光比の凹部のエッチング深さ依存性を示す図である。
【図10】第1の実施形態に係るSLD素子と、従来例のSLD素子の光出力の偏光角度依存性を示すグラフである。
【図11】第2の実施形態に係るSLD素子の概略図であり、(a)は、SLD素子の平面図、(b)は、(a)におけるSLD素子のA−A’線における断面図、(c)は、(a)におけるSLD素子のB−B’線における断面図である。
【図12】第3の実施形態に係るSLD素子の概略図であり、(a)は、SLD素子の平面図、(b)は、(a)におけるSLD素子のA−A’線における断面図、(c)は、(a)におけるSLD素子のB−B’線における断面図である。
【図13】第4の実施形態に係るSLD素子の概略図であり、(a)は、SLD素子の平面図、(b)は、(a)におけるSLD素子のA−A’線における断面図、(c)は、(a)におけるSLD素子のB−B’線における断面図である。
【図14】第5の実施形態に係る偏光表示装置を示す図である。
【図15】第6の実施形態に係る偏光表示装置を示す図である。
【図16】第7の実施形態に係る偏光表示装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、本発明について、以下の実施形態及び添付の図面を用いて説明を行うが、これは例示を目的としており、本発明がこれらに限定されることを意図しない。
【0030】
(第1の実施形態)
本実施形態に係る半導体発光素子は、基板上に形成され、少なくとも2種類以上の偏光を有する光を発生する光ガイド領域を含む積層構造体と、積層構造体の主面に設けられ、光を前記光ガイド領域内において所定の方向に導波させるストライプ形状の導波路とを備え、積層構造体は、光の導波方向と垂直な積層構造体の端面の一部において、少なくとも光ガイド領域の一部を含んで凹形状に形成されたスリット部を備える。このような構成により、出射光の偏光比が高い半導体発光素子及びそれを用いた偏光表示装置を提供することができる。
【0031】
以下、本実施形態に係る半導体発光素子及び偏光表示装置について、六方晶系に属するGaN系半導体を用いる青色(波長450nm)SLD素子を例に、図を参照しながら説明する。
【0032】
まず、図1を用いて、本実施形態における偏光表示装置の一例である液晶プロジェクタについて説明する。図1に示すように、液晶プロジェクタ100は、光源として青色LED101、緑色LED102、赤色LED103の3種類のLEDを備え、コリメートレンズ104、105、106と、ミラー107、108、109とにより構成される。各色LED(青色LED101、緑色LED102、赤色LED103)から出射された光は、コリメートレンズ104、105、106により平行光となり、ミラー107、108、109で反射、合波され、偏光子110に入射する。偏光子110を透過した光は、特定の方向の偏光成分を持った偏光光となり、液晶パネル111に入射する。このとき、液晶パネル111では、画素ごとに電圧を変化させることで、透過する光の偏光方向を変調させる。この変調させた光は、偏光子112を透過する際に画素ごとの光強度変化に変換され、投影レンズ113により投影像として見ることができるようになる。
【0033】
このような液晶プロジェクタ100において、半導体発光素子である青色LED101、緑色LED102、赤色LED103の光を効率よく利用するためには、偏光子110での変換ロスを減らすことと、コリメートレンズ104、105、106での光取り込み効率を向上させる必要がある。
【0034】
ここで、液晶プロジェクタ100において使用される光源は、青色LED101、緑色LED102、赤色LED103に限らずスーパールミネッセントダイオード(SLD)でもよい。以下、本実施形態では、光源としてAlxGayIn1-x-yAsz1-zからなるSLD素子を用いた液晶プロジェクタを例として説明する。
【0035】
図2(a)〜(c)は、本実施形態に係る青色のSLD素子200の概略図である。図2(a)は、SLD素子200を上面方向から見た平面図である。図2(b)は、図2(a)におけるSLD素子200のA−A’線における断面図である。図2(c)は、図2(a)におけるSLD素子200のB−B’線における断面図である。
【0036】
ここで、図2(a)〜(c)において、六方晶系に属するGaN系結晶の面方位を、図中c、a、mで示す。cは(0001)面の法線ベクトル、即ちc軸を、aは(11−20)面とその等価面の法線ベクトル、即ちa軸を、mは(1−100)面とその等価面の法線ベクトル、即ちm軸を意味する。ここで、面方位におけるミラー指数に付した負符号”−”は、該負符号に続く一の指数の反転を便宜的に表している。また、本発明における光ガイド領域とは、積層構造体における活性層を含む領域であって、光が導波する領域を意味する。
【0037】
以下、SLD素子200の構造を説明する。
【0038】
図2(a)〜(c)に示すように、SLD素子200は、m軸方向に長尺な形状であり、基板201上に積層構造体202を備えている。詳細には、図2(b)及び同図(c)に示すように、積層構造体202として、n型クラッド層203と、n側光ガイド層204と、多重量子井戸(MQW)活性層206と、p側光ガイド層207と、キャリアオーバフロー抑制層(OFS層)208と、p型クラッド層209とを備えている。なお、n側光ガイド層204と、多重量子井戸(MQW)活性層206と、p側光ガイド層207が本発明における光ガイド領域に相当する。
【0039】
p型クラッド層209には、m軸に平行なリッジストライプ型の光導波路(リッジストライプ部)が形成されている。光導波路は、多重量子井戸(MQW)活性層206で発生した光を導波する。ここで、多重量子井戸(MQW)活性層206で発生した光は、TE光、TM光の2種類の偏光を有する光である。
【0040】
また、m面とほぼ平行な面である端面には、図2(b)、(c)に示すように、凹形状のスリット部217が形成されている。スリット部217は、n側光ガイド層204と、多重量子井戸(MQW)活性層206と、p側光ガイド層207の一部を含む位置に形成されている。
【0041】
さらに、積層構造体202上には、絶縁膜(パッシベーション膜)212と、p型コンタクト層210と、p側電極213と、配線電極214と、パッド電極215と、n側電極216とが形成されている。
【0042】
以下、SLD素子200の製造方法を説明する。
【0043】
まず、六方晶系に属し主面が(0001)面(c面)であるn型GaNからなる基板201上に、例えば有機金属気相成長法(Metalorganic Chemical Vapor Deposition;MOCVD法)により、厚さが2μmのAl0.03Ga0.97Nからなるn型クラッド層203を成長する。その上に、厚さが0.1μmのn−GaNからなるn側光ガイド層204を成長する。さらに、In0.02Ga0.98Nバリア層とIn0.16Ga0.84N量子井戸層3周期からなる多重量子井戸(MQW)活性層206を成長する。次に、MQW活性層206の上に、厚さが0.1μmのp型GaNからなるp側光ガイド層207を成長する。続いて、p側光ガイド層207の上に、厚さが10nmのAl0.20Ga0.80Nからなるキャリアオーバフロー抑制層(OFS層)208を成長する。さらに、OFS層208の上に、厚さがそれぞれ1.5nmのp型Al0.16Ga0.84N層とGaN層とを160周期分繰り返してなる厚さ0.48μmの歪超格子からなるp型クラッド層209を成長する。さらに、厚さが0.05μmのp型GaNからなるp型コンタクト層210を成長する。
【0044】
積層構造体202を形成する際の結晶成長法には、MOCVD法の他に、分子ビーム成長(Molecular Beam Epitaxy:MBE)法または化学ビーム成長(Chemical Beam Epitaxy:CBE)法等の、GaN系青紫色半導体レーザ構造が成長可能な成長方法を用いてもよい。MOCVD法を用いた場合の原料としては、例えばGa原料としてトリメチルガリウム(TMG)、In原料としてトリメチルインジウム(TMI)及びAl原料としてトリメチルアルミニウム(TMA)を用い、N原料としてアンモニア(NH3)を用いればよい。さらに、n型不純物であるSi原料にはシラン(SiH4)ガスを用い、p型不純物であるMg原料にはビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いればよい。
【0045】
次に、例えば熱CVD法により、p型コンタクト層210の上に、膜厚が0.3μmのSiO2からなる第2のマスク膜(図示せず)を成膜する。リソグラフィ法及びエッチング法により、第2のマスク膜を幅が1.5μmのリッジストライプ形状で、且つ、図2(a)に示すように、m軸方向と0〜25°程度の角度を持つようにパターニングする。
【0046】
次に、誘導結合型(Inductive Coupled Plasma:ICP)エッチング法により、第2のマスク膜を用いて積層構造体202の上部を0.35μmの深さにエッチングして、p型コンタクト層210及びp型クラッド層209の上部に、光導波路(リッジストライプ部)を形成する。その後、フッ化水素酸を用いて第2のマスク膜を除去する。
【0047】
次に、再度、熱CVD法により、露出したp型クラッド層209の上にリッジストライプ部を含む全面にわたって、膜厚が200nmのSiO2からなる絶縁膜212を形成する。
【0048】
次に、リソグラフィ法により、絶縁膜212におけるリッジストライプ部の上面に、該リッジストライプ部に沿って幅が1.3μmの開口部を有するレジストパターン(図示せず)を形成する。続いて、例えば三フッ化メタン(CHF3)ガスを用いた反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)により、レジストパターンをマスクとして絶縁膜212をエッチングすることにより、リッジストライプ部の上面からp型コンタクト層210を露出する。
【0049】
次に、例えば電子ビーム(Electron Beam:EB)蒸着法により、少なくともリッジストライプ部の上面から露出したp型コンタクト層210の上に、厚さが40nmのパラジウム(Pd)と厚さが35nmの白金(Pt)とからなる金属積層膜を形成する。その後、レジストパターンを除去するリフトオフ法により、金属積層膜のリッジストライプ部を除く領域を除去して、p側電極213を形成する。
【0050】
次に、図2(b)に示すように、リソグラフィ法及びリフトオフ法により、絶縁膜212の上にリッジストライプ部の上部のp側電極213を覆うように、例えばリッジストライプ部に平行な方向の平面寸法が500μmで、且つ、リッジストライプ部に垂直な方向の平面寸法が150μmの配線電極214を選択的に形成する。ここで、配線電極214は、それぞれ厚さが50nm、200nm及び100nmのチタン(Ti)/白金(Pt)/金(Au)の金属積層膜により形成する。
【0051】
なお、一般に、基板201はウェハ状態であって、複数のSLD素子200は基板201の主面上に行列状に形成される。従って、ウェハ状態にある基板201に形成されたSLD素子200を個々のSLD素子200に分割する際に、配線電極214を切断すると、該配線電極214に密着したp側電極213がp型コンタクト層210から剥がれるおそれがある。そこで、図2(a)に示すように、配線電極214は、互いに隣接する素子同士で繋がっていないことが望ましい。
【0052】
さらに、電解めっき法により、配線電極214の上層のAu層の厚さを10μm程度にまで増やして、パッド電極215を形成する。このようにすると、ワイヤボンディングによるレーザチップの実装が可能となると共に、MQW活性層206における発熱を効果的に放熱させることができるため、SLD素子200の信頼性を向上することができる。
【0053】
次に、パッド電極215まで形成されたウェハ状態の基板201の裏面を、ダイヤモンドスラリを用いて機械研磨して、基板201の厚さが100μm程度になるまで薄膜化する。その後、例えばEB蒸着法により、基板201の裏面に、厚さが5nmのTi、厚さが10nmの白金及び厚さが1000nmのAuからなる金属積層膜によりn側電極216を形成する。なお、基板研磨手法としては、スラリによる機械研磨のほか、例えばKOH溶液を補助的に用いる化学/機械研磨を用いても良い。
【0054】
図3〜図8は、上記の方法によって複数のSLD素子200が形成されたウェハの分割プロセスの概略を示したものである。
【0055】
図3は、上記した複数のSLD素子200が形成されたウェハ状態の基板301を示す。
【0056】
次に、ウェハ状態の基板301を、m軸方向の長さが600μmとなるように、m面に沿って1次劈開し、複数のSLDバー302に分割する(図4(a))。さらに、Si等のスペーサを用いてSLDバー302を挟持し、劈開したSLDバー302の端面を露出する(図4(b))。次に、例えばECRスパッタ法により、一方の端面に高反射率コート304aを施す(図5)。コート後SLDバー302を裏返し、未コート面を露出させる。ECRスパッタ法により他方の端面にSiO2マスク304bを形成する(図6(a))。次に、マスクアライメントを用いて光導波路(リッジストライプ部)303及びその下の光ガイド領域を含む領域に、例えばc軸方向の長さが0.5μm、a軸方向の長さが50μmの矩形の開口305を形成する(図6(b))。
【0057】
次に、例えばICPエッチング法を用いて、開口305の位置に、図2(b)、(c)に示したスリット部306を形成する(図7)。c軸方向の長さが0.5μm、a軸方向の長さが50μm、m軸方向の深さが35μmになるようにエッチングして、スリット部306を形成する。
【0058】
このとき、c軸方向の長さが短いと偏光比が十分にとれず、長すぎると光損失が増大してしまう。発明者らの検討によれば、光損失を十分に小さくしつつ偏光比を大きくすることができるc軸方向の長さとして、0.05〜0.7μmが好適であり、0.05〜0.2μmの範囲がより好ましい。
【0059】
また、a軸方向の長さとしては、光導波路(リッジストライプ部)の傾斜を考慮して十分に長く取ることが望ましい。傾斜角をθ、スリットのm軸方向の深さをLとすると、a軸方向の長さとして、少なくともL・sin(θ)以上であることが望ましい。
【0060】
また、スリット部306の深さが深いほど、SLD素子200の偏光比が大きくなる。例えば、スリット深さは、35μmより大きいことが望ましい。スリット部306の深さを35μm以上とすることで、SLD素子200の偏光比>100を実現することが可能となる。
【0061】
さらに好ましくは、TE光の広がりを考慮して、L・sin(θ)+3.5μm以上あると良い。なお、上記例において、ICPエッチング法を用いてスリット部を形成したが、エッチング可能な方法であれば他の手法でも構わない。例えば、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)や、収束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)を用いることも可能である。また、エッチングに伴い、導体結晶表面に光吸収や電流リークの起源となる損傷層が形成されることがある。このような場合には、Ar等のイオンミリングによるダメージ層除去を行ってもよい。また、塩酸、燐酸、KOH等を用いたウェットエッチングを用いてダメージ層除去を行ってもよい。
【0062】
その後、図8のように、1次劈開されたSLDバー302を、a軸方向の長さが200μmとなるようにa面に沿って2次劈開する。
【0063】
図9(a)は、本実施形態のスリット部近傍における光の伝搬の様子を有限差分時間領域法(Finite−difference time−domain method;FDTD method)を用いて計算した一例である。図9(a)は、凹形状のスリット部424が形成された積層構造体の端面におけるFDTDの計算結果を示しており、n型クラッド層401及びp型クラッド層403の間に形成されたMQW活性層402の近傍にスリット部424が形成された場合のFDTDの計算結果である。また、同図において、xはGaN基板のa軸方向、yはm軸方向、zはc軸方向を示している。図9(a)に示すように、スリット部424によって伝搬光が散乱/回折を受ける様子がわかる。
【0064】
また、スリット部424の深さをパラメータとして、図9(a)の右側から出射する光のTE/TM光の強度比(偏光比)を計算した結果を図9(b)に示す。図9(b)に示すように、スリット部424の光照射端面からの深さを深くするにつれ、半導体発光素子の偏光比が増加し、スリット深さを約30μm以上とすることで、100を超える偏光比を得ることができる。
【0065】
図10は、図1に示した本実施形態に係る偏光表示装置(液晶プロジェクタ100)におけるSLD素子(青色LED101、緑色LED102、赤色LED103)のSLD発光の偏光角度依存性の実験結果である。実験では、SLD素子と受光素子の間に偏光角度を制御可能な偏光子を設置し、偏光子の偏光角を順次変えながら、SLD素子の光強度を測定した。また、図10に実線で示す光強度501は、従来の偏光表示装置に係るSLD素子の光強度、同図に破線で示す光強度502は、液晶プロジェクタ100におけるSLD素子の光強度を、各出力の最大値を100%として相対的に示している。
【0066】
図10に示すように、光強度501及び光強度502は、共に、偏光子の偏光角度を90°としたときに光出力が最低となっている。偏光角度90°のとき、偏光子はTE光を遮光しTM光を透過する条件となっている。SLD素子では、TE/TM偏光比>1のため、TE光を遮光することにより光出力が低下することとなる。つまり、偏光角度90°のときには、TE光が遮断されSLD素子の出力光にはTM光のみが含まれる。また、偏光角度0°または180°のときには、TM光が遮断されSLD素子の出力光にはTE光のみが含まれる。従って、TM光が遮断される0°または180°における光強度(TE光による光強度)と、TE光が遮断される90°における光強度(TM光による光強度)の比から、SLDの偏光比を算出することが可能である。
【0067】
ここで、従来の偏光表示装置におけるSLD素子では、偏光比がおよそ15であるのに対し、本実施形態の偏光表示装置におけるSLD素子では、一例として偏光比は114と、一桁高い偏光比を実現しており、理論的に予測された偏光比の向上が、実験結果においても確かめられている。つまり、上記したように、SLD素子の端面にスリット部を設けることにより、SLD素子の出射光の偏光比を高くすることが可能となる。
【0068】
なお、本実施形態において、SiO2マスクにより開口を設けたのちエッチングして凹形状のスリット部を設けたが、スリット部を設ける手法は、マスキングとエッチングに限らない。例えば、集束イオンビーム(FIB)を用いてスリット部を設けても良い。
【0069】
また、本実施形態においては、積層構造体の成長用基板に、六方晶系に属するGaN系基板(GaN基板、AlGaN基板等)を用いたが、GaN系材料を成長可能な他の基板、例えば炭化シリコン(SiC)、シリコン(Si)、サファイア(単結晶Al23)または酸化亜鉛(ZnO)等を用いることができる。
【0070】
また、本実施形態において、TE光とTM光が導波する場合について記載したが、TE光及びTM光により構成された円偏光や楕円偏光、直線偏光が導波する場合においても、各偏光成分に含まれるTE光やTM光の偏光比を大きくすることができる。
【0071】
また、本実施形態においては、光導波路について、リッジストライプ型の形状に形成された光導波路について説明したが、リッジストライプ型の導波路以外に、埋め込みストライプ型の光導波路を用いてもよい。この場合の効果は、リッジストライプ型の光導波路と変わらない。ただし、製造方法としてはリッジストライプ型の方がより簡便である。リッジストライプ型が1回の結晶成長で済むのに対して、埋め込みストライプ型の光導波路を用いる場合には2回以上の結晶成長を必要とするからである。
【0072】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係るSLD素子について図面を参照しながら説明する。
【0073】
図11(a)〜(c)は、本実施形態に係る青色SLD素子600の概略図である。図11(a)は、SLD素子600を上面方向から見た平面図である。図11(b)は、図11(a)におけるSLD素子600のA−A’線における断面図である。図11(c)は、図11(a)におけるSLD素子600のB−B’線における断面図である。
【0074】
本実施形態に係るSLD素子600が第1の実施形態に係るSLD素子200と異なる点は、図11(a)〜(c)に示すように、SLD素子600の端面にスリット部を設けることで偏光比を向上すると共に、端面の全面に凹凸形状を設けることで反射率を低減し、動作可能な最大光出力を増加した点である。
【0075】
以下、SLD素子600の構造を説明する。
【0076】
図11(a)〜(c)に示すように、SLD素子600は、m軸方向に長尺な形状であり、基板601上に積層構造体602を備えている。詳細には、図11(b)及び同図(c)に示すように、積層構造体602として、n型クラッド層603と、n側光ガイド層604と、多重量子井戸(MQW)活性層606と、p側光ガイド層607と、キャリアオーバフロー抑制層(OFS層)608と、p型クラッド層609とを備えている。なお、n側光ガイド層604と、多重量子井戸(MQW)活性層606と、p側光ガイド層607が本発明における光ガイド領域に相当する。
【0077】
p型クラッド層609には、m軸に平行なリッジストライプ型の光導波路が形成されている。また、m面とほぼ平行な面である端面には、図11(b)、(c)に示すように、凹形状のスリット部617が形成されている。スリット部617は、n側光ガイド層604と、多重量子井戸(MQW)活性層606と、p側光ガイド層607の一部を含む位置に形成されている。さらに、端面には、凹凸形状が形成されている。
【0078】
さらに、積層構造体602上には、絶縁膜(パッシベーション膜)612と、p型コンタクト層610と、p側電極613と、配線電極614と、パッド電極615と、n側電極616とが形成されている。
【0079】
以下、SLD素子600の製造方法を説明する。
【0080】
半導体基板上に積層構造体602を成長し、適時加工を施し、1次劈開によりSLD素子バーを得る工程までは、第1の実施形態と同様であるから省略する。
【0081】
その後、得られたSLD素子バーを、例えばKOH溶液中で紫外光を当てて光電気化学(Photo−enhanced chemical wet etching:PEC)エッチングを行う。PECエッチングによって、六方晶系に属するGaNのm面が露出した劈開面のエッチングが行われ、凹凸面が露出する。
【0082】
また、Inを含むMQW活性層606及びn側光ガイド層607が選択的に深くエッチングされ、スリット部617を形成する。スリット部617は、第1の実施形態で示したSLDバー302と同様に、SLD素子バー全面にわたり連続的に繋がって形成される。PECエッチングの条件としては、例えば、1mol/l濃度のKOH中にSLD素子バーを入れ、光強度10mW/cm2の重水素ランプにて10分間エッチングを行えば良い。上記により、およそ40μmの深さのスリットの形成が可能となる。PECエッチングによりスリット部617の形成が行われる他、図11(a)〜(c)に示すように、端面に微小な凹凸面が形成される。これにより、端面の反射率が低下する効果もある。
【0083】
SLD素子では、通常、端面の反射率を1×10-6以下にまで低下してレーザ発振を生じ難くする。本実施形態では、光導波路(リッジストライプ部)を端面に対して傾斜することで、反射率を低減している。しかしながら、光出力を増加するために注入電流を増して行くと、ごく僅かな端面からの光反射により誘導放出が生じてレーザ発振することがある。本実施形態により反射率をさらに低減することで、SLD素子が動作する電流領域をさらに大きくし、高出力のSLD光を得ることが可能となる。
【0084】
その後、2次劈開以降の工程は第1の実施形態と同様であるから省略する。なお、本実施形態において、Inを含むMQW活性層606及び一部の光ガイド層604、607をSLD素子バーにわたりエッチングしてスリット部617を形成したが、スリット部617の深さによっては2次劈開によってスリット部617近傍においてSLD素子600が折れてしまうことがある。これは、スリット部617がバー全体に連続しているために、機械的な強度に対して弱いためである。これを防ぐためには、光導波路下とその近傍以外の領域を、フォトリソグラフィを用い、例えばSiO2を用いたマスクで被覆してからエッチングを行えば良い。
【0085】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係るSLD素子について図面を参照しながら説明する。
【0086】
図12(a)〜(c)は、本実施形態に係る赤色SLD素子700の概略図である。図12(a)は、SLD素子700を上面方向から見た平面図である。図12(b)は、図12(a)におけるSLD素子700のA−A’線における断面図である。図12(c)は、図12(a)におけるSLD素子700のB−B’線における断面図である。
【0087】
本実施形態に係るSLD素子700が第1の実施形態に係るSLD素子200と異なる点は、図12(a)〜(c)に示すように、SLD素子700の端面にスリット部を設けることで偏光比を向上した、GaAs基板上に形成した赤色SLD素子である点である。
【0088】
以下、SLD素子700の構造を説明する。
【0089】
図12(a)〜(c)に示すように、SLD素子700は、m軸方向に長尺な形状であり、基板701上に積層構造体702を備えている。詳細には、図12(b)及び同図(c)に示すように、積層構造体702として、n型クラッド層703と、n側光ガイド層704と、多重量子井戸(MQW)活性層706と、p側光ガイド層707と、p型クラッド層709とを備えている。なお、n側光ガイド層704と、多重量子井戸(MQW)活性層706と、p側光ガイド層707が本発明における光ガイド領域に相当する。
【0090】
p型クラッド層709には、m軸に平行なリッジストライプ型の光導波路が形成されている。また、m面とほぼ平行な面である端面には、図12(b)、(c)に示すように、凹形状のスリット部717が形成されている。スリット部717は、n側光ガイド層704と、多重量子井戸(MQW)活性層706と、p側光ガイド層707の一部を含む位置に形成されている。
【0091】
さらに、積層構造体702上には、絶縁膜(パッシベーション膜)712と、p型コンタクト層710と、p側電極713と、配線電極714と、パッド電極715と、n側電極716とが形成されている。
【0092】
以下、SLD素子700の製造方法を説明する。
【0093】
まず、立方晶系に属し主面が(001)面であるn型GaAsからなる基板701上に、例えばMOCVD法により、n型AlGaInからなるn型クラッド層703を成長する。その上に、AlGaInPからなるn側光ガイド層704を成長する。さらに、AlGaInPバリア層に挟持されたGaInP量子井戸層2周期からなるMQW活性層706を成長する。次に、MQW活性層706の上に、AlGaInPからなるp側光ガイド層707、p−AlGaInPからなるp型クラッド層709を成長する。さらに、厚さが0.05μmのp型GaAsからなるp型コンタクト層710を成長する。
【0094】
積層構造体702を形成する際の結晶成長法には、MOCVD法の他に、分子ビーム成長(Molecular Beam Epitaxy:MBE)法または化学ビーム成長(Chemical Beam Epitaxy:CBE)法等の、GaN系青紫色半導体レーザ構造が成長可能な成長方法を用いてもよい。MOCVD法を用いた場合の原料としては、例えばGa原料としてトリエチルガリウム(TEG)、In原料としてトリメチルインジウム(TMI)及びAl原料としてトリメチルアルミニウム(TMA)を用い、As原料としてアルシン(AsH3)を用いればよい。さらに、n型不純物であるSi原料にはシラン(SiH4)ガスを用い、p型不純物であるZn原料にはトリエチルジンク(TEZn)を用いればよい。
【0095】
次に、例えば熱CVD法により、p型コンタクト層710の上に、膜厚が0.3μmのSiO2からなる第2のマスク膜(図示せず)を成膜する。リソグラフィ法及びエッチング法により、第2のマスク膜を幅が2.3μmのストライプ状で、且つ、図12(a)に示すように、m軸方向と0〜25°程度の角度を持つようにパターニングする。
【0096】
次に、ICPエッチング法により、第2のマスク膜を用いて積層構造体702の上部を0.7μmの深さにエッチングして、p型コンタクト層710及びp型クラッド層709の上部に、光導波路(リッジストライプ部)を形成する。その後、フッ化水素酸を用いて第2のマスク膜を除去する。
【0097】
次に、再度、熱CVD法により、露出したp型クラッド層709の上にリッジストライプ部を含む全面にわたって、膜厚が200nmのSiO2からなる絶縁膜712を形成する。
【0098】
次に、リソグラフィ法により、絶縁膜712におけるリッジストライプ部の上面に、該リッジストライプ部に沿って幅が2.0μmの開口部を有するレジストパターン(図示せず)を形成する。続いて、例えば三フッ化メタン(CHF3)ガスを用いた反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)により、レジストパターンをマスクとして絶縁膜712をエッチングすることにより、リッジストライプ部の上面からp型コンタクト層710を露出する。
【0099】
次に、例えば電子ビーム(Electron Beam:EB)蒸着法により、少なくともリッジストライプ部の上面から露出したp型コンタクト層710の上に、厚さが10nmの金(Au)と、と厚さが50nmの亜鉛(Zn)と、厚さが100nmのAuとからなる金属積層膜を形成する。その後、レジストパターンを除去するリフトオフ法により、金属積層膜のリッジストライプ部を除く領域を除去して、p側電極713を形成する。
【0100】
次に、図12(b)に示すように、リソグラフィ法及びリフトオフ法により、絶縁膜712の上にリッジストライプ部の上部のp側電極713を覆うように、例えばリッジストライプ部に平行な方向の平面寸法が500μmで、且つリッジストライプ部に垂直な方向の平面寸法が150μmの配線電極714を選択的に形成する。ここで、配線電極714は、それぞれ厚さが50nm、100nmのチタン(Ti)/金(Au)の金属積層膜により形成する。
【0101】
なお、一般に、基板701はウェハ状態であって、複数のSLD素子700は基板701の主面上に行列状に形成される。従って、ウェハ状態にある基板701に形成されたSLD素子700を個々のSLD素子700に分割する際に、配線電極714を切断すると、該配線電極714に密着したp側電極713がp型コンタクト層710から剥がれるおそれがある。そこで、図1(a)に示すように、配線電極714は、互いに隣接する素子同士で繋がっていないことが望ましい。
【0102】
さらに、電解めっき法により、配線電極714の上層のAu層の厚さを10μm程度にまで増やして、パッド電極715を形成する。このようにすると、ワイヤボンディングによるレーザチップの実装が可能となると共に、MQW活性層706における発熱を効果的に放熱させることができるため、SLD素子700の信頼性を向上することができる。
【0103】
次に、パッド電極715まで形成されたウェハ状態の基板701の裏面を、ダイヤモンドスラリを用いて機械研磨して、基板701の厚さが100μm程度になるまで薄膜化する。その後、例えばEB蒸着法により、基板701の裏面に、厚さが100nmの金ゲルマニウム合金(AuGe)、厚さが200nmのAuからなる金属積層膜によりn側電極716を形成する。なお、基板研磨手法としては、スラリによる機械研磨のほか、例えばKOH溶液を補助的に用いる化学/機械研磨を用いても良い。
【0104】
その後、第1の実施形態と同様に、複数のSLD素子700が形成されたウェハの分割を行いSLD素子700が完成する。
【0105】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係るSLD素子800について図面を参照しながら説明する。
【0106】
図13(a)〜(c)は、本実施形態に係るSLD素子800の概略図である。図13(a)は、SLD素子800を上面方向から見た平面図である。図13(b)は、図13(a)におけるSLD素子800のA−A’線における断面図である。図13(c)は、図13(a)におけるSLD素子800のB−B’線における断面図である。
【0107】
本実施形態に係るSLD素子800が第1の実施形態に係るSLD素子200と異なる点は、図13(a)〜(c)に示すように、SLD素子800の端面にスリット部を設けることで偏光比を向上すると共に、端面の全面に端面コートを設けることでn及びp型クラッド層を伝搬する光を端面コートで反射し、光の利用効率を向上した点である。
【0108】
以下、SLD素子800の構造を説明する。
【0109】
図13(a)〜(c)に示すように、SLD素子800は、m軸方向に長尺な形状であり、基板801上に積層構造体802を備えている。詳細には、図13(b)及び同図(c)に示すように、積層構造体802として、n型クラッド層803と、n側光ガイド層804と、多重量子井戸(MQW)活性層806と、p側光ガイド層807と、p型クラッド層809とを備えている。なお、n側光ガイド層804と、多重量子井戸(MQW)活性層806と、p側光ガイド層807が本発明における光ガイド領域に相当する。
【0110】
p型クラッド層809には、m軸に平行なリッジストライプ型の光導波路が形成されている。また、m面とほぼ平行な面である端面には、図13(b)、(c)に示すように、凹形状のスリット部817が形成されている。スリット部817は、n側光ガイド層804と、多重量子井戸(MQW)活性層806と、p側光ガイド層807の一部を含む位置に形成されている。
【0111】
さらに、積層構造体802上には、絶縁膜(パッシベーション膜)812と、p型コンタクト層810と、p側電極813と、配線電極814と、パッド電極815と、n側電極816とが形成されている。
【0112】
以下、SLD素子800の製造方法を説明する。
【0113】
半導体基板上に積層構造体802を形成し、加工を施した後に1次劈開し、端面にスリット部817を設ける工程までは第1の実施形態と同様であるから省略する。
【0114】
次に、端面が上面を向くようにスペーサを用いて挟持した状態とし、端面に例えばECRスパッタ装置を用いて高反射率の光反射コート膜818を施す。このとき、端面がスパッタ源と、例えば30°の角度を有するように対向させ、スリット部817の底部にはコーティング材料が付着しないようにする。このことにより、n側光ガイド層804、p側光ガイド層807及びMQW活性層806を導波するSLD光がSLD素子800の外部へ出射し、n及びp側光ガイド層804、807を導波する光は反射され、SLD素子800の内部へとフィードバックされる。n及びp側光ガイド層804、807を導波する光は、出射光の放射パターンのうち主ピークから離れた低角及び広角側に位置するため、利用効率が低い。この光を選択的に素子内部へとフィードバックすることで、素子の発光効率をさらに高めることが可能である。
【0115】
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態に係る偏光表示装置について、図面を参照しながら説明する。
【0116】
図14は、本実施形態に係る偏光表示装置の一例としての液晶プロジェクタ900の概略図である。同図に示すように、液晶プロジェクタ900は、第1の半導体発光素子901と、第2の半導体発光素子902と、第3の半導体発光素子903と、プリズム904、905と、コリメートレンズ906と、2枚の偏光子908に挟持された液晶パネル907と、投影レンズ909とが、筐体910内に配置された偏光表示装置(液晶プロジェクタ)である。
【0117】
第1、第2、第3の半導体発光素子901、902、903には、例えば第1〜第4の実施形態に示した高偏光比のSLD素子200、600、700、800のいずれかを用いる。また、例えばIII族窒化物半導体からなる半導体発光素子であってもよい。
【0118】
図1に示すLED光源を用いた液晶プロジェクタ100では、LED光源(青色LED101、緑色LED102、赤色LED103)の指向性が低いため、各光源から出た光は空間を伝播するに従い幅広く広がってしまう。そのために、コリメートレンズ104、105、106を個別に設けて並行光としたのちにミラー107、108、109を用いて合波して液晶パネル111に入射している。
【0119】
一方、図14に示すように、光源に指向性が高いSLD素子を使用した第1の半導体発光素子901、第2の半導体発光素子902、第3の半導体発光素子903を利用すると、伝搬に伴う光の広がりが小さいために、プリズム904、905を用いて合波した後に、各光源からの出射光をまとめてコリメートすることが可能である。そのために、コリメートレンズを省略してコストを低減することができる。また、部品点数が減ることで光学部品サイズを低減することが可能である。
【0120】
高指向性のSLD素子を用いても同様の構成が可能であるが、光源のコヒーレンスが高いためにスペックルが生じて映像を見辛いという欠点がある。上記したSLD素子は、コヒーレンスが低く指向性が高いという利点があり、高品質な映像を低コストで提供することが可能である。
【0121】
さらに、本実施形態に係る液晶プロジェクタ900では、偏光比を向上したSLD素子を用いていることから、偏光子908により吸収される偏光成分が小さいという特徴がある。そのために、偏光子908の発熱が低減され、偏光子908の劣化を低減することができる。また、熱による偏光遮断特性の低下を低減して、コントラスト比の高い画像を表示することが可能である。
【0122】
(第6の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態に係る偏光表示装置について、図面を参照しながら説明する。
【0123】
図15は、本実施形態に係る偏光表示装置の一例としての液晶プロジェクタ1000の概略図である。同図に示すように、液晶プロジェクタ1000は、第1の半導体発光素子1001と、第2の半導体発光素子1002と、第3の半導体発光素子1003と、プリズム1004、1005と、コリメートレンズ1006と、液晶パネル1007と、偏光子1008と、投影レンズ1009とが、筐体1010内に配置された偏光表示装置(液晶プロジェクタ)である。
【0124】
第1、第2、第3の半導体発光素子1001、1002、1003には、例えば第1〜第4の実施形態に示した高偏光比SLD素子200、600、700、800のいずれかを用いたことを特徴としている。
【0125】
本実施形態は、例えば、第5の実施形態において図14に示した光源と液晶パネルの間に位置する偏光子908を除去した構成となっている。高偏光比のSLD素子200、600、700、800のいずれかを用いることで、液晶パネル1007に入射する光の偏光を揃える目的の偏光子を除去することが可能である。
【0126】
SLD素子の偏光比としては、1000以上であることが望ましい。そのために、例えば、図2(b)に示したように、スリット部217の深さを70μm以上とすることが望ましい。本実施形態の構成により、偏光子1008のコストを低減して安価な偏光表示装置を提供することが可能となる。
【0127】
(第7の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態に係る偏光表示装置について、図面を参照しながら説明する。
【0128】
図16は、本実施形態に係る偏光表示装置の一例としての液晶プロジェクタ1100の概略図である。同図に示すように、液晶プロジェクタ1100は、第1の半導体発光素子1101と、第2の半導体発光素子1102と、第3の半導体発光素子1103と、プリズム1104、1105と、コリメートレンズ1106と、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)パネル1107と、偏光ビームスプリッタ1108と、投影レンズ1109とが筐体1110内に配置されたLCOS型の偏光表示装置(液晶プロジェクタ)である。第1、第2、第3の半導体発光素子1101、1102、1103には、例えば第1〜第4の実施形態に示した高偏光比のSLD素子200、600、700、800のいずれかを用いたことを特徴としている。
【0129】
第1、第2、第3の半導体発光素子1101、1102、1103からの光は、プリズム1104、1105により合波されたのち、コリメートレンズ1106でまとめて集光され、LCOSパネル1107に入射される。本実施形態の構成とすることで、LEDを用いた従来構成に比べて、コリメートレンズを省略して低コスト化を図ることが可能となる。
【0130】
なお、本実施形態においては、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形を行ってもよい。
【0131】
例えば、本実施形態において、SiO2マスクにより開口を設けたのちエッチングして凹形状のスリット部を設けたが、スリット部を設ける手法は、マスキングとエッチングに限らない。例えば、集束イオンビーム(FIB)を用いてスリット部を設けても良い。
【0132】
また、本実施形態においては、光導波路について、リッジストライプ型の形状に形成された光導波路について説明したが、リッジストライプ型の導波路以外に、埋め込みストライプ型の光導波路を用いてもよい。
【0133】
また、本実施形態においては、積層構造体の成長用基板に、六方晶系に属するGaN系基板(GaN基板、AlGaN基板等)を用いたが、GaN系材料を成長可能な他の基板、例えば炭化シリコン(SiC)、シリコン(Si)、サファイア(単結晶Al23)または酸化亜鉛(ZnO)等を用いることができる。
【0134】
また、本実施形態において、TE光とTM光が導波する場合について記載したが、TE光及びTM光により構成された円偏光や楕円偏光、直線偏光が導波する場合においても、各偏光成分に含まれるTE光やTM光の偏光比を大きくすることができる。
【0135】
また、上記した半導体発光素子は、SLDに限らず、III族窒化物半導体レーザやLEDであってもよい。
【0136】
また、半導体発光素子の基板の材料は、上記したAlxGayIn1-x-yAsz1-zにおいてx、y、zの値を変更したものや、その他の半導体材料であってもよい。
【0137】
また、光導波路の長さ、幅、高さ、端面に対する角度等は、上記したものに限らず適宜変更してもよい。
【0138】
また、エッチングガスやエッチング溶液は、上記したものに限らず適宜変更してもよい。
【0139】
また、本発明に係る半導体発光素子には、上記実施形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施形態や、実施形態に対して本発明の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本発明に係る半導体発光素子を備えた各種デバイスなども本発明に含まれる。例えば、本発明に係る半導体発光素子を備えた液晶プロジェクタも本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明に係る半導体発光素子は、高輝度、低消費電力の液晶プロジェクタやバックライトに用いることができる。
【符号の説明】
【0141】
100、900、1000、1100 液晶プロジェクタ(偏光表示装置)
101 青色LED(半導体発光素子)
102 緑色LED(半導体発光素子)
103 赤色LED(半導体発光素子)
110、112、908、1008、1108 偏光子
111、907、1007、1107 液晶パネル
200、600、700、800 SLD素子(半導体発光素子)
201、301、601、701、801 基板
202、602、702、802 積層構造体
203、401、603、703、803 n型クラッド層(積層構造体)
204、604、704、804 n側光ガイド層(積層構造体)
206、402、606、706、806 多重量子井戸(MQW)活性層(積層構造体)
207、607、707、807 p側光ガイド層(積層構造体)
208、608 キャリアオーバフロー抑制層(OFS層)(積層構造体)
209、403、609、709、809 p型クラッド層(積層構造体)
210、610、710、810 p型コンタクト層(積層構造体)
212、612、712、812 絶縁膜(積層構造体)
217、424、617、717、817 スリット部
818 光反射コート膜(光反射膜)
901、1001、1101 第1の半導体発光素子(半導体発光素子)
902、1002、1102 第2の半導体発光素子(半導体発光素子)
903、1003、1103 第3の半導体発光素子(半導体発光素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成され、少なくとも2種類以上の偏光を有する光を発生する光ガイド領域を含む積層構造体と、
前記積層構造体の主面に設けられ、前記光を前記光ガイド領域内において所定の方向に導波させるストライプ形状の導波路とを備え、
前記積層構造体は、
前記光の導波方向と垂直な前記積層構造体の端面の一部において、少なくとも前記光ガイド領域の一部を含んで凹形状に形成されたスリット部を備える
半導体発光素子。
【請求項2】
前記半導体発光素子は、前記積層構造体の端面に凹凸形状を有する
請求項1に記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記半導体発光素子は、前記スリット部以外の前記積層構造体の端面に光反射膜を有する
請求項1または2に記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記スリット部は、前記積層構造体の端面からの深さが30μm以上である
請求項1〜3のいずれかに記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記基板は、c面またはm面を主面とする六方晶GaN系半導体基板である
請求項1〜4のいずれかに記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記半導体発光素子は、半導体スーパールミネッセントダイオード素子である
請求項1〜5のいずれかに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記半導体発光素子は、III族窒化物半導体である
請求項1〜5のいずれかに記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記半導体発光素子は、AlxGayIn1-x-yAsz1-zである
請求項7に記載の半導体発光素子。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の半導体発光素子と、
前記半導体発光素子から出射された光を偏光する偏光子と、
前記半導体発光素子と前記偏光子との間に設けられた液晶パネルとを備える
偏光表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−233787(P2011−233787A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104508(P2010−104508)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】