説明

半導体装置、及びその製造方法

【課題】多孔質低誘電率絶縁膜が用いられていても、絶縁破壊耐性に優れた配線構造の半導体装置を提供する。
【解決手段】CMP処理工程を経て配線膜が構成される半導体装置の製造方法であって、CMP処理によって汚染された多孔質低誘電率絶縁膜に対して、酸処理、アニール処理、あるいは汚染個所の清浄化処理工程を施し、前記多孔質低誘電率絶縁膜表面の有機成分量、水分量、銅、ナトリウム、カリウム等の残存量を規定値以下に低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置にあっては、動作速度向上の観点から、配線に起因した遅延時間の短縮化が求められている。配線による遅延時間を短縮する為、配線抵抗や配線容量の低減が求められている。配線抵抗の低抵抗化は、配線材料をAlからCuに変更することによって、実現されている。そして、これ以上の低抵抗化は、今日では、困難である。配線容量の低減は、絶縁膜の低容量化が大きな要素である。これは絶縁膜材料として低誘電率のものを用いることで実現される。例えば、多孔質絶縁膜材料を用いることで実現される。
【0003】
ところで、上記の如きの低誘電率絶縁膜は機械的強度が弱い。この為、研磨耐性が低い。更には、エッチング耐性やアッシング耐性も低い。そこで、前記の如きの材料で絶縁膜を構成する場合、機械的強度が高い絶縁膜(例えば、シリコン酸化膜)をCAP膜として積層することが提案されている。しかしながら、シリコン酸化膜は、機械的強度が高いものの、誘電率が高い。従って、多孔質絶縁膜材料を用いて低誘電率化を図っても、多孔質絶縁膜材料の機械的強度を補充する為に、SiO膜を用いたことから、折角の低誘電率化が目論見通りには低くならなかった。
【0004】
例えば、特開平10−256363号公報には、配線間容量の低容量化を達成する為、多孔質低誘電率絶縁膜を用いた配線構造が開示されている。この技術は、これまで、一般的に採用されて来た非多孔質低誘電率絶縁膜とCAP膜との積層構造における非多孔質低誘電率絶縁膜を、より誘電率の低い多孔質低誘電率絶縁膜に置き換えた構造である。従って、配線間容量の低減効果は、一応、奏されている。
【0005】
例えば、特開2001−308175号公報には、配線間容量の低容量化を達成する為、無機多孔質絶縁膜と有機低誘電率膜の積層構造の低誘電率絶縁膜を用いた銅配線構造の製造方法が開示されている。この技術は、これまで、一般的に採用されて来た低誘電率絶縁膜とCAP膜との積層構造と比べ、誘電率の高いCAP膜の代わりに、多孔質低誘電率絶縁膜を用いている。この手法は、多孔質低誘電率絶縁膜の上層に直接レジスト膜を形成して配線パターンを形成する為、CAP膜のような誘電率が高い層が存在せず、配線間容量の低減効果は、一応、奏されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−256363号公報
【特許文献2】特開2001−308175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特開平10−256363号公報の技術は、多孔質低誘電率絶縁膜とCAP膜との積層構造を採用している点において、配線間容量の点で問題が有る。
【0008】
特開2001−308175号公報の技術は、多孔質低誘電率絶縁膜の上層のレジスト膜を加工する際に、多孔質低誘電率絶縁膜が、直接、アッシングガスに曝され、又、レジスト膜を構成する成分が多孔質低誘電率膜内に侵入する。この為、多孔質低誘電率絶縁膜の変質の問題点が有る。更に、化学的機械的研磨(CMP)を用いて、配線銅および多孔質低誘電率絶縁膜が露出した配線構造を形成する場合、CMPに用いられた研磨剤成分が多孔質低誘電率膜内に侵入する。又、CMPによって、水分や金属成分が多孔質低誘電率絶縁膜内に残留(侵入)する問題点も有る。
【0009】
従って、本発明が解決しようとする課題は、多孔質低誘電率絶縁膜が用いられていても、絶縁破壊耐性に優れた配線構造の半導体装置を提供することである。特に、CMPを経て配線膜が構成される場合において、多孔質低誘電率絶縁膜が用いられていても、絶縁破壊耐性などの問題点が少ない技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記問題点についての検討が、本発明者によって、推し進められて行った。この検討過程において、前記問題点、即ち、絶縁破壊耐性の問題点は、CMP処理において発生した物質が多孔質低誘電率絶縁膜内に入り込み、これによって絶縁破壊耐性が低下したのであろうとの啓示を得るに至った。斯かる啓示を基にして、多孔質低誘電率絶縁膜を調べた処、CMPに起因した種々の物質が、表面から約2nm程度の深さまでの個所に、入り込んでいることが判って来た。そして、この侵入物質によって絶縁破壊耐性が低下している等の因果関係が突き止められるに至った。従って、CMPによる汚染物が除去されておれば、前記問題点が解決されるであろうとの啓示を得るに至った。斯かる啓示を基にして本発明が達成された。
【0011】
すなわち、前記の課題は、
CMP処理工程を経て配線膜が構成される半導体装置の製造方法であって、
CMP処理によって汚染された多孔質低誘電率絶縁膜の汚染個所が清浄化される清浄化処理工程
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法によって解決される。
【0012】
前記の課題は、
CMP処理工程を経て配線膜が構成される半導体装置の製造方法であって、
CMP処理を受けた多孔質低誘電率絶縁膜が酸で処理される酸処理工程
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法によって解決される。
【0013】
前記の課題は、
CMP処理工程を経て配線膜が構成される半導体装置の製造方法であって、
CMP処理を受けた多孔質低誘電率絶縁膜がフッ酸で処理されるフッ酸処理工程
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法によって解決される。
【0014】
前記の課題は、
CMP処理工程を経て配線膜が構成される半導体装置の製造方法であって、
CMP処理を受けた多孔質低誘電率絶縁膜が酸で処理される酸処理工程と、
CMP処理を受けた多孔質低誘電率絶縁膜がアニール処理されるアニール処理工程
とを具備することを特徴とする半導体装置の製造方法によって解決される。
【0015】
前記の課題は、
CMP処理工程を経て配線膜が構成される半導体装置の製造方法であって、
CMP処理を受けた多孔質低誘電率絶縁膜がフッ酸で処理されるフッ酸処理工程と、
CMP処理を受けた多孔質低誘電率絶縁膜がアニール処理されるアニール処理工程
とを具備することを特徴とする半導体装置の製造方法によって解決される。
【0016】
前記の課題は、
CMP処理工程を経て配線膜が構成される半導体装置の製造方法であって、
CMP処理を受けた多孔質低誘電率絶縁膜がアニール処理されるアニール処理工程
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法によって解決される。
【0017】
前記の課題は、前記半導体装置の製造方法によって製造されてなる半導体装置によって解決される。
【0018】
前記の課題は、
導電部と絶縁部とを有する配線構造を具備した半導体装置であって、
前記絶縁部は多孔質低誘電率絶縁膜で構成されてなり、
前記多孔質低誘電率絶縁膜は、表面部における水分量が1×10−8A・℃/100mg以下であり、表面部における有機成分量が7×10−10A・℃/100mg以下である
ことを特徴とする半導体装置によって解決される。
【0019】
前記の課題は、
導電部と絶縁部とを有する配線構造を具備した半導体装置であって、
前記絶縁部は多孔質低誘電率絶縁膜で構成されてなり、
前記多孔質低誘電率絶縁膜は、表面部における水分量が1×10−8A・℃/100mg以下である
ことを特徴とする半導体装置によって解決される。
【0020】
前記の課題は、
導電部と絶縁部とを有する配線構造を具備した半導体装置であって、
前記絶縁部は多孔質低誘電率絶縁膜で構成されてなり、
前記多孔質低誘電率絶縁膜は、表面部における有機成分量が7×10−10A・℃/100mg以下である
ことを特徴とする半導体装置によって解決される。
【0021】
前記半導体装置であって、好ましくは、前記多孔質低誘電率絶縁膜の表面部における金属成分量が検出限界未満であることを特徴とする半導体装置によって解決される。
【0022】
前記半導体装置であって、好ましくは、前記金属成分がCu,Na,Kの一つ又は二つ以上であることを特徴とする半導体装置によって解決される。
【0023】
前記半導体装置であって、好ましくは、Cuは5.0×1011atoms/cm以下、Naは2.5×1011atoms/cm以下、Kは4.6×1010atoms/cm以下であることを特徴とする半導体装置によって解決される。
【発明の効果】
【0024】
多孔質低誘電率絶縁膜が用いられたので、配線容量が低減した。この為、半導体装置の動作速度が向上する。かつ、CMPを経て配線膜が構成された場合においても、絶縁破壊耐性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明になる半導体装置製造工程における概略断面図
【図2】本発明になる半導体装置製造工程における概略断面図
【図3】本発明になる半導体装置製造工程における概略断面図
【図4】本発明になる半導体装置製造工程における概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
第1の本発明は半導体装置の製造方法である。特に、CMP処理工程を経て配線膜が構成される半導体装置の製造方法である。本方法は、CMP処理によって汚染された多孔質低誘電率絶縁膜の汚染個所が清浄化される清浄化処理工程を具備する。清浄化処理工程は、例えばCMP処理を受けた多孔質低誘電率絶縁膜が酸で処理される酸処理工程である。特に、フッ酸で処理されるフッ酸処理工程である。或いは、清浄化処理工程は、CMP処理を受けた多孔質低誘電率絶縁膜がアニール処理されるアニール処理工程である。清浄化処理工程は、前記酸処理工程(例えば、フッ酸処理工程)と、前記アニール処理工程との双方を有するものでも良い。酸処理工程(例えば、フッ酸処理工程)とアニール処理工程との双方を有する場合、工程数が増えたものの、清浄化度は一段と向上した。好ましくは、前記酸処理工程(例えば、フッ酸処理工程)の後、前記アニール処理工程が行われる。酸処理(例えば、フッ酸処理)は、例えば酸(例えば、フッ酸)中に浸漬されることで達成される。或いは、酸(例えば、フッ酸)が吹き付けられることで達成される。
【0027】
第2の本発明は半導体装置である。特に、導電部と絶縁部とを有する配線構造を具備した半導体装置である。前記配線構造は、例えばダマシン配線構造を有する半導体装置の配線構造に適用される。第1層の配線構造に限られない。第2層の配線構造、第3層の配線構造、…、第n層の配線構造に適用される。すなわち、多層配線構造に適用される。前記絶縁部は多孔質低誘電率絶縁膜で構成されている。前記多孔質低誘電率絶縁膜は、表面部における水分量が、好ましくは、1×10−8A・℃/100mg以下である。更に好ましくは、9.7×10−9A・℃/100mg以下である。表面部における有機成分量が、好ましくは、7×10−10A・℃/100mg以下である。更に好ましくは、6×10−10A・℃/100mg以下である。勿論、好ましくは、表面部における水分量が10×10−9A・℃/100mg以下(特に、9.7×10−9A・℃/100mg以下)で、かつ、表面部における有機成分量が7×10−10A・℃/100mg以下(特に、6×10−10A・℃/100mg以下)である。更に好ましくは、前記多孔質低誘電率絶縁膜の表面部における金属成分(例えば、Cu,Na,Kの一つ又は二つ以上)量が検出限界未満である。Cu量は、好ましくは、5.0×1011atoms/cm以下である。更に好ましくは、4.5×1011atoms/cm以下である。特に、4.1×1011atoms/cm以下である。Fe量は、好ましくは、1.5×1010atoms/cm以下である。Na量は、好ましくは、2.5×1011atoms/cm以下である。K量は、好ましくは、4.6×1010atoms/cm以下である。前記特徴の半導体装置は、例えば前記半導体装置の製造方法によって製造される。従って、前記半導体装置は、例えば前記半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置である。
【0028】
そして、CMPによる汚染層が出来た多孔質低誘電率絶縁膜が用いられた従来の半導体装置に対して、本実施形態の半導体装置は、多孔質低誘電率絶縁膜中に侵入した汚染物が除去されている。例えば、絶縁耐性を劣化させる金属成分、有機成分、水分などが除去されている。そして、配線間容量が小さく、かつ、絶縁耐性が向上し、信頼性に富む銅/多孔質低誘電率絶縁膜構造の配線膜が歩留り良く得られた。
【0029】
以下、更に詳しく説明する。
【0030】
図1〜図4は本発明になる半導体装置の各々の製造工程での断面図である。
【0031】
各図中、1は基板である。基板1は、例えばSiで構成される。2はバリア絶縁膜である。バリア絶縁膜2は、例えばシリコン窒化膜、シリコン炭窒化膜で構成される。これらの材料からなる一層または二層以上の積層構造でも良い。更に、下地膜、例えばシリコン酸化膜などが設けられても良い。
【0032】
3は絶縁膜である。絶縁膜3は、例えば配線間絶縁膜である。絶縁膜3はバリア絶縁膜2の上に設けられている。絶縁膜3は、ポーラス(多孔質)低誘電率絶縁膜で構成されている。絶縁膜3は、例えばシロキサン結合で主鎖が構成される含ケイ素ポリマーにメチル基やフェニル基等の有機基が結合した物質が用いられて構成された膜である。例えば、ケイ素にメチル基の結合したメチルポリシロキサンを主成分とする有機成分を含有する物質が用いられて構成されたシリカガラス膜である。或いは、多孔質な無機シリカガラス膜である。基本的に、Si−O骨格を有する膜である。この膜はポーラス(多孔質)材料で構成されている。従って、誘電率が低い。例えば、誘電率は2.5以下である。低誘電率であるものの、多孔質であるが故に、内部には各種の物質(成分)が侵入し易い。絶縁膜3は塗布方法あるいはCVD等の気相成長方法で成膜される。
【0033】
4は高誘電率絶縁膜である。高誘電率絶縁膜4は多孔質低誘電率絶縁膜3の上に設けられている。高誘電率絶縁膜4は、例えばシリコン酸化膜、シロキサン骨格を有する膜、無機シリカガラス、シリコン窒化膜、シリコン炭窒化膜などで構成される。高誘電率絶縁膜4は、単層構造、積層構造の何れでも良い。高誘電率絶縁膜4の誘電率は、例えば3.0〜6.5である。誘電率は大きいが、機械的強度に富む。高誘電率絶縁膜4は塗布方法あるいはCVD等の気相成長方法で成膜される。
【0034】
基板1の上に所定厚のバリア絶縁膜2が設けられ、バリア絶縁膜2の上に所定厚の多孔質低誘電率絶縁膜3が設けられ、多孔質低誘電率絶縁膜3の上に所定厚の高誘電率絶縁膜4が設けられた図1の積層体に対して、フォトレジスト技術により、配線用の溝が形成される。この溝内面にバリアメタル膜5が薄く設けられる。バリアメタル膜5の材料は、例えばタンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、ルテニウム、コバルト、ニッケル等である。バリアメタル膜5は、単層構造であっても、複数の材料が組み合わさった積層構造でも良い。バリアメタル膜5が設けられた後、配線用の金属6が前記溝内に充填される(図2参照)。配線用金属6は、例えばCu(又はCu合金)である。
【0035】
この後、CMPが行われる。すなわち、CMPによって、高誘電率絶縁膜4が除去される。そして、Cu/多孔質低誘電率絶縁膜の配線構造が形成される(図3参照)。しかしながら、多孔質低誘電率絶縁膜3の表層部分(例えば、表面から約2nm程度の深さまで)には、CMPによって、汚染が起きている。すなわち、CMP使用時における各種の成分や、CMPによって除去されたCu等の金属分が、前記表層部分(表層部の孔内)に、侵入している。図3中、7は汚染層である。
【0036】
前記CMPに用いられる剤(研磨剤)には、一般的には、次のような成分が含まれている。例えば、(A)砥粒、(B)有機酸、(C)酸化剤、(D)界面活性剤、(E)防食剤、(F)pH調整剤、(G)分散媒である。
【0037】
砥粒は、例えば平均二次粒子径が60〜170nmのコロイダルシリカである。砥粒は、被研磨物(絶縁層)を研磨する際に良好な被研磨面および研磨速度の両方を得る為のものである。
【0038】
有機酸は、例えば炭素数4以上の脂肪族有機酸である。この種の有機酸としては、例えば炭素数が4以上の脂肪族多価カルボン酸、炭素数が4以上のヒドロキシル酸などが好ましい。脂肪族多価カルボン酸の好ましい例としては、例えばアジピン酸、グルタル酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。ヒドロキシル酸の好ましい例としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。
【0039】
酸化剤は、例えば過硫酸塩、過酸化水素、無機酸、有機過酸化物などである。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。無機酸としては、硝酸、硫酸などが挙げられる。有機過酸化物としては、過酢酸、過安息香酸などが挙げられる。
【0040】
界面活性剤は、例えばカチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、水溶性ポリマー等が挙げられる。特に、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、水溶性ポリマーが好ましく用いられる。アニオン性界面活性剤としては、例えばカルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩などが挙げられる。カルボン酸塩としては、例えば脂肪族石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩などが挙げられる。スルホン酸塩としては、例えばアルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩などが挙げられる。硫酸エステル塩としては、例えば高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩などが挙げられる。リン酸エステル塩としては、例えばアルキルリン酸エステル塩などが挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコール型界面活性剤、アセチレングリコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコール等が挙げられる。水溶性ポリマーとしては、例えばアニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、両性ポリマー、ノニオン性ポリマー等が挙げられる。アニオン性ポリマーとしては、例えばポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。カチオン性ポリマーとしては、例えばポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。両性ポリマーとしては、例えばポリアクリルアミド等が挙げられる。ノニオン性ポリマーとしては、例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等が挙げられる。
【0041】
防食剤は、例えばベンゾトリアゾールおよびその誘導体が挙げられる。ここで、ベンゾトリアゾール誘導体とは、ベンゾトリアゾールの有する1個または2個以上の水素原子が、例えばカルボキシル基、メチル基、アミノ基、ヒドロキシル基等で置換された化合物である。
【0042】
pH調整剤は、例えば有機塩基、無機塩基、無機酸が挙げられる。有機塩基としては、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルアミン等が挙げられる。無機塩基としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。無機酸としては、硝酸、硫酸、塩酸、酢酸などが挙げられる。
【0043】
分散媒は、例えば水、混合媒体(水/アルコール)、混合溶媒(水/水相溶性有機溶媒)などが挙げられる。
【0044】
従って、汚染層7には、有機成分、研磨された銅、水分の存在下で移動し易いNa,Kなどの金属成分が含まれることになる。
【0045】
そして、汚染層7がCMPによって形成されたことから、この汚染層7に起因した各種の問題点が起きていることが突き止められた。従って、この汚染層7における汚染物質が排除されておれば、問題点が解決されることになる。
【0046】
汚染物除去方法、特に、多孔質低誘電率絶縁膜3に大きな損傷を引き起こすこと無く、CMPに起因する有機成分や金属成分の汚染物を効率良く除去する具体的方法として、例えば酸を用いる方法が提案された。又、熱処理方法が提案された。勿論、酸処理と熱処理との組み合わせも提案された。例えば、表層付近の高濃度の汚染に対して、先ず、酸処理が施され、次に熱処理が施されることで、多孔質低誘電率絶縁膜3の表層部分の汚染が効果的に除去された。
【0047】
酸処理方法の詳細が説明される。例えば、フッ酸を純水で希釈した希フッ酸が用いられる。好ましくは、0.05〜10重量%(特に、0.2〜2重量%)の濃度の希フッ酸が用いられる。処理温度は、好ましくは、15〜25℃である。処理時間は、好ましくは、1〜5分である。短すぎると、汚染物が残る恐れが有る。長すぎると、銅配線に腐食などが起きる恐れが有る。
【0048】
熱処理方法の詳細が説明される。アニール処理温度は、好ましくは、100〜1000℃である。更に好ましくは、200〜400℃である。アニール処理時間は、好ましくは、10〜60分である。アニール処理は、好ましくは、0.5〜2Torrの圧力下で行われる。更に好ましくは、1.0〜1.5Torrの圧力下で行われる。雰囲気は、好ましくは、窒素などの不活性ガス雰囲気である。特に、酸素が排除された雰囲気が好ましい。
【0049】
上記の如きの処理によって、CMPに用いられた研磨剤成分や、Cu,Na,K等の金属成分が、効率良く、除去できた。しかも、多孔質低誘電率絶縁膜3に大きなダメージは認められなかった。
【0050】
以下、具体的な実施例が挙げられて説明される。
【0051】
[実施例1]
シリコン基板上に1000nm厚のシリコン酸化膜が設けられた。このシリコン酸化膜上に50nm厚のシリコン炭窒化膜が設けられた。このシリコン炭窒化膜上に、シルセスキオキサンを主成分とする有機成分を含有する物質によるシリカガラス膜(多孔質低誘電率絶縁膜:配線間絶縁膜:誘電率2.4)が設けられた。尚、このシリカガラス膜(配線間絶縁膜)の厚さは100nmである。シリカガラス膜(配線間絶縁膜)上に30nm厚のシリコン酸化膜が設けられた(図1参照)。この後、レジストマスクを用い、エッチングにより、配線間絶縁膜に溝が形成された。この溝の内面がタンタル膜で被覆された。この後、Cuが充填された(図2参照)。この後、CMPが行われ、銅/多孔質低誘電率膜の配線構造が形成された(図3参照)。
【0052】
次に、上記のようにして得られたサンプルに対して、東京エレクトロン社製ファーネス装置Alpha−303が用いられ、減圧・低酸素状態で、400℃/30分のアニール処理が行われた。このアニール処理により、CMPによって汚染された多孔質低誘電率膜の表層部は清浄化された(図4参照)。
【0053】
上記アニール処理後のサンプルが二つ用意された。一方は表面分析用のサンプルであり、他方は絶縁破壊測定用のサンプルである。絶縁破壊測定用サンプルについては、その上部にバリア絶縁膜が設けられた。このバリア絶縁膜が設けられることにより、外部から水分による吸湿が遮断され、耐水性に優れた構造になる。そして、更に、上部にシリコン酸化膜が成膜され、アルミ配線が設けられた。このものについて、東京精密社製オートプローバー装置UF−3000が用いられ、銅/多孔質低誘電率絶縁膜の配線構造の絶縁破壊耐圧、及びウエハ面内での歩留まりが測定された。
【0054】
[実施例2]
シリコン基板上に500nm厚のシリコン酸化膜が設けられた。このシリコン酸化膜上に30nm厚のシリコン炭窒化膜が設けられた。このシリコン炭窒化膜上に、シルセスキオキサンを主成分とする有機成分を含有する物質によるシリカガラス膜(多孔質低誘電率絶縁膜:配線間絶縁膜:誘電率2.4)が設けられた。尚、このシリカガラス膜(配線間絶縁膜)の厚さは100nmである。シリカガラス膜(配線間絶縁膜)上に30nm厚のシリコン酸化膜が設けられた(図1参照)。この後、レジストマスクを用い、エッチングにより、配線間絶縁膜に溝が形成された。この溝の内面がタンタル膜で被覆された。この後、Cuが充填された(図2参照)。この後、CMPが行われ、銅/多孔質低誘電率膜の配線構造が形成された(図3参照)。
【0055】
次に、上記のようにして得られたサンプルに対して、荏原製作所社製研磨装置F☆REX300が用いられ、1重量%希フッ酸による酸洗処理が1分間に亘って行われた。この酸洗処理により、CMPによって汚染された多孔質低誘電率膜の表層部が清浄化された(図4参照)。
【0056】
上記酸洗処理後のサンプルが二つ用意された。一方は表面分析用のサンプルであり、他方は絶縁破壊測定用のサンプルである。絶縁破壊測定用サンプルについては、その上部にバリア絶縁膜が設けられた。このバリア絶縁膜が設けられることにより、外部から水分による吸湿が遮断され、耐水性に優れた構造になる。そして、更に、上部にシリコン酸化膜が成膜され、アルミ配線が設けられた。このものについて、東京精密社製オートプローバー装置UF−3000が用いられ、銅/多孔質低誘電率絶縁膜の配線構造の絶縁破壊耐圧、及びウエハ面内での歩留まりが測定された。
【0057】
[実施例3〜実施例8]
実施例1および実施例2に準じて行われた。そして、銅/多孔質低誘電率絶縁膜の配線構造の絶縁破壊耐圧、及びウエハ面内での歩留まりが測定された。
【0058】
[比較例1]
シリコン基板上に1000nm厚のシリコン酸化膜が設けられた。このシリコン酸化膜上に50nm厚のシリコン炭窒化膜が設けられた。このシリコン炭窒化膜上に、シルセスキオキサンを主成分とする有機成分を含有する物質によるシリカガラス膜(多孔質低誘電率絶縁膜:配線間絶縁膜:誘電率2.4)が設けられた。尚、このシリカガラス膜(配線間絶縁膜)の厚さは100nmである。シリカガラス膜(配線間絶縁膜)上に30nm厚のシリコン酸化膜が設けられた(図1参照)。この後、レジストマスクを用い、エッチングにより、配線間絶縁膜に溝が形成された。この溝の内面がタンタル膜で被覆された。この後、Cuが充填された(図2参照)。この後、CMPが行われ、銅/多孔質低誘電率膜の配線構造が形成された(図3参照)。
【0059】
上記CMP後のサンプルが二つ用意された。一方は表面分析用のサンプルであり、他方は絶縁破壊測定用のサンプルである。絶縁破壊測定用サンプルについては、その上部にバリア絶縁膜が設けられた。更に、上部にシリコン酸化膜が成膜され、アルミ配線が設けられた。このものについて、東京精密社製オートプローバー装置UF−3000が用いられ、銅/多孔質低誘電率絶縁膜の配線構造の絶縁破壊耐圧、及びウエハ面内での歩留まりが測定された。
【0060】
[比較例2]
シリコン基板上に500nm厚のシリコン酸化膜が設けられた。このシリコン酸化膜上に30nm厚のシリコン炭窒化膜が設けられた。このシリコン炭窒化膜上に、シルセスキオキサンを主成分とする有機成分を含有する物質によるシリカガラス膜(多孔質低誘電率絶縁膜:配線間絶縁膜:誘電率2.4)が設けられた。尚、このシリカガラス膜(配線間絶縁膜)の厚さは100nmである。シリカガラス膜(配線間絶縁膜)上に30nm厚のシリコン酸化膜が設けられた(図1参照)。この後、レジストマスクを用い、エッチングにより、配線間絶縁膜に溝が形成された。この溝の内面がタンタル膜で被覆された。この後、Cuが充填された(図2参照)。この後、CMPが行われ、銅/多孔質低誘電率膜の配線構造が形成された(図3参照)。
【0061】
上記CMP後のサンプルが二つ用意された。一方は表面分析用のサンプルであり、他方は絶縁破壊測定用のサンプルである。絶縁破壊測定用サンプルについては、その上部にバリア絶縁膜が設けられた。更に、上部にシリコン酸化膜が成膜され、アルミ配線が設けられた。このものについて、東京精密社製オートプローバー装置UF−3000が用いられ、銅/多孔質低誘電率絶縁膜の配線構造の絶縁破壊耐圧、及びウエハ面内での歩留まりが測定された。
【0062】
[特性]
上記各例での測定結果が表−1に示される。
【0063】
表−1

【0064】
この表−1から次のことが判る。
実施例1,3,5,6のサンプルは、アニール処理によって、多孔質低誘電率絶縁膜表面におけるCMPに起因の汚染層が清浄化されていることから、Line/Space(L/S)=90/90nm櫛型パターンにおいて、対向長10000mmの絶縁破壊耐圧が5MV/cm以上を示し、歩留まりが略100%である。
【0065】
実施例2,4,6(尚、実施例6のサンプルは、酸処理後にアニール処理が行われた例である。)のサンプルは、酸処理によって、多孔質低誘電率絶縁膜表面におけるCMPに起因の汚染層が清浄化されていることから、Line/Space(L/S)=90/90nm櫛型パターンにおいて、対向長10000mmの絶縁破壊耐圧が5MV/cm以上を示し、歩留まりが略100%である。
【0066】
これに対して、比較例1のサンプルは、多孔質低誘電率絶縁膜表面にはCMPに起因の汚染層が存在しており、絶縁破壊耐圧が2MV/cm以下である。かつ、歩留まりも非常に悪い。比較例2のサンプルも、絶縁破壊耐圧が低くなっている。かつ、歩留まりも悪い。尚、櫛型パターンは、L/S幅が短く、かつ、対向長が長いほど、歩留まりが低下するのが一般的である。しかしながら、対向長が長い本実施例の場合でも、略100%の歩留まりが確保されていると言うことは、汚染層の浄化が確実に行われていると考えられる。
【0067】
又、実施例1,2と比較例1,2のサンプルについて、リガク社製全反射蛍光X線装置TXRF 300 Fabによる全反射蛍光X線分析(TXRF)が用いられ、CMPに起因の多孔質低誘電率絶縁膜表面の汚染度(浄化度:研磨剤成分、金属成分、及び水分の残留量)が調べられた。又、電子科学社製昇温脱離分析装置WA1000S/Wによる昇温脱離分析(TDS)が行われた。TDSによる残留量は、測定温度領域におけるイオン電流値(Intensity)を積分した面積強度として表される。TDS測定は、表面温度領域は50〜300℃、測定質量数(M/z)は1〜200の範囲で行われた。浄化処理前後で、顕著な変化を示した有機成分起因の特定の質量数と水分起因のM/z=18について、残留量が比較された。その結果が表−2に示される。
【0068】
表−2

【0069】
この表−2から、実施例1,2のものは、比較例1,2のものに比べて、有機成分量や水分量が減少している。かつ、金属成分量は検出限界未満であった。
【0070】
TDS測定用試料は1cm角のシリコン基板上に80nm〜100nmの多孔質低誘電率絶縁膜が形成されている試料を用いた。ここで、残留物は、多孔質低誘電率絶縁膜の表層に存在する為、多孔質低誘電率絶縁膜の膜厚には依存せず、多孔質低誘電率絶縁膜の表面積に依存する。表面積で規格化するに当たり、サンプル間で表面積を正確に測定することが重要である。但し、厳密に測定することは困難である。シリコン基板と多孔質低誘電率絶縁膜の厚みが一定の場合に、表面積は試料の重量に比例することになる。従って、各サンプルについて、表面積で規格化する意味で、試料重量100mg当たりの面積強度とした。本例では、シリコン基板は、厚さにおいて、±2μmのバラツキが認められた。しかしながら、この場合、重量に対する影響は±0.5mgとなり、重量で規格化した面積強度に対する影響は±0.5%と見積もることが出来る。従って、有機成分は、測定精度を含めて、7.0×10-10A・℃/100mg以下であれば良く、水分は、測定精度を含めて、1.0×10-8A・℃/100mg以下であれば良い。
【0071】
CMP時に残留し易い金属成分としてのCuは、TXRFの測定精度を含めて、5.0×1011atoms/cm以下であれば良い。同じく、半導体素子の電気特性に重大な影響を与える重金属成分としてのFeは、1.5×1010atoms/cm以下であればよいことが判る。
【0072】
そして、酸洗処理やアニール処理を施すことで、多孔質低誘電率絶縁膜表層(汚染層)が清浄化されることが判った。
【符号の説明】
【0073】
1 基板
2 バリア絶縁膜
3 多孔質低誘電率絶縁膜
4 高誘電率絶縁膜
5 バリアメタル
6 配線金属(銅)
7 汚染層
8 浄化層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
CMP処理工程を経て配線膜が構成される半導体装置の製造方法であって、
CMP処理を受けた多孔質低誘電率絶縁膜がフッ酸で処理されるフッ酸処理工程
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
CMP処理工程を経て配線膜が構成される半導体装置の製造方法であって、
CMP処理を受けた多孔質低誘電率絶縁膜が酸で処理される酸処理工程
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
CMP処理工程を経て配線膜が構成される半導体装置の製造方法であって、
CMP処理を受けた多孔質低誘電率絶縁膜が酸で処理される酸処理工程と、
CMP処理を受けた多孔質低誘電率絶縁膜がアニール処理されるアニール処理工程
とを具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
CMP処理工程を経て配線膜が構成される半導体装置の製造方法であって、
CMP処理を受けた多孔質低誘電率絶縁膜がアニール処理されるアニール処理工程
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
CMP処理工程を経て配線膜が構成される半導体装置の製造方法であって、
CMP処理によって汚染された多孔質低誘電率絶縁膜の汚染個所が清浄化される清浄化処理工程
を具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5いずれかの半導体装置の製造方法によって製造されてなる半導体装置。
【請求項7】
導電部と絶縁部とを有する配線構造を具備した半導体装置であって、
前記絶縁部は多孔質低誘電率絶縁膜で構成されてなり、
前記多孔質低誘電率絶縁膜は、表面部における水分量が1×10−8A・℃/100mg以下であり、表面部における有機成分量が7×10−10A・℃/100mg以下である
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
導電部と絶縁部とを有する配線構造を具備した半導体装置であって、
前記絶縁部は多孔質低誘電率絶縁膜で構成されてなり、
前記多孔質低誘電率絶縁膜は、表面部における水分量が1×10−8A・℃/100mg以下である
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
導電部と絶縁部とを有する配線構造を具備した半導体装置であって、
前記絶縁部は多孔質低誘電率絶縁膜で構成されてなり、
前記多孔質低誘電率絶縁膜は、表面部における有機成分量が7×10−10A・℃/100mg以下である
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
前記多孔質低誘電率絶縁膜の表面部における金属成分量が検出限界未満である
ことを特徴とする請求項6〜請求項8いずれかの半導体装置。
【請求項11】
金属成分がCu,Na,Kの一つ又は二つ以上である
ことを特徴とする請求項10の半導体装置。
【請求項12】
Cuは5.0×1011atoms/cm以下、Naは2.5×1011atoms/cm以下、Kは4.6×1010atoms/cm以下である
ことを特徴とする請求項10又は請求項11の半導体装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−30653(P2013−30653A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166383(P2011−166383)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(504371594)次世代半導体材料技術研究組合 (82)
【Fターム(参考)】