説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】 ダイシングに伴う膜剥れの防止および異常放電防止に好適な半導体装置を提供する。
【解決手段】 半導体装置はスクライブ領域003とIC領域004からなり、スクライブ領域003の層間絶縁膜002には少なくとも一つの分離溝007が設けられ、分離溝007の両側の側壁にはプラグ金属膜からなるサイドウォール011が形成され、少なくともサイドウォールを覆うパッシベーション膜を設ける構成とした半導体装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイシングに伴う膜剥れの防止および異常放電防止に好適な半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを作成するに当たり、半導体ウエハを分割して半導体チップとするダイシング技術は欠かせない。しかし、このダイシングの衝撃や、ダイシング後の半導体チップの取り扱いで膜剥れを起こす場合がある。図3は従来の半導体装置の膜剥れ問題を示す断面図である。図3(a)はダイシング前、図3(b)はダイシング後の断面形状を示すものである。半導体基板001の上に層間絶縁膜002が堆積している構成で複数のIC領域004の間のスクライブ領域003をダイシングすると、ダイシングにて切断除去された領域006に接する半導体チップの端面からダメージが入り、図3(b)に示すように積層された層間絶縁膜002が半導体基板001から剥れ、IC領域004にも膜剥れ部分005が発生しまう場合がある。
【0003】
このようなダイシング起因の膜剥れを防ぐ方法として半導体基板上に堆積された膜を物理的に分離するという方法がある。(例えば、特許文献1参照)。図4はこの方法を用いて膜剥れに対処した半導体装置の断面図である。図4(a)はダイシング前、図4(b)はダイシング後の断面形状を示す。スクライブ領域003とIC領域004の境界付近の層間絶縁膜002に分離溝007を設け、それぞれの領域間の層間絶縁膜を物理的に分離する。図4(b)に示すようにダイシングを行なうと、そのダメージによって切断除去された領域006に接する半導体チップの端面付近の層間絶縁膜は小片008となって半導体基板001から剥離飛散するが、層間絶縁膜が無い部分ではダメージは伝播されずにIC領域004上の層間絶縁膜002に剥離は発生しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−309351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属プラグを有する半導体装置に上記従来技術を適用すると以下のような課題があることが出願人の調査によってわかった。図5は従来技術とプラグ技術を併用した場合に生じる不具合を示す断面図である。図5(a)は、半導体基板001上の層間絶縁膜002に分離溝007を設け、プラグ金属膜010を層間絶縁膜002および露出した半導体基板001上にプラグ金属膜010を堆積した後の断面図である。開口の小さいコンタクトホールの中はプラグ金属膜010で完全充填されているが、開口の大きい分離溝007は金属膜で満たされることなく分離溝の底部および側壁に沿ってプラグ金属膜010が堆積される。図5(b)は、堆積したプラグ金属膜010をエッチバックした後の断面図を示し、分離溝007の側壁にはプラグ金属膜のサイドウォール011が形成されている。図5(c)は、コンタクトホール009内のプラグ金属膜と接続する金属配線012を形成した後、半導体ウエハ上にパッシベーション膜013を堆積した時の断面図である。IC領域004にパッドエッチング用レジスト014を被覆してパッド開口エッチングした時の断面図を図5(d)に示す。パッシベーション膜がエッチングによって除去されて下地が露出するとプラグ金属膜のサイドウォール001上に異常放電015が発生し、ウエハ表面が焦げてしまうという不具合が生じる場合があることが分かった。更なる対処が必要とされる課題であると認識された。
本発明は、上記課題に鑑み成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は以下のような手段を用いる。
まず、半導体基板上に第1の絶縁膜を形成した半導体装置であって、半導体装置はスクライブ領域とIC領域からなり、スクライブ領域の第1の絶縁膜は少なくとも一つの分離溝を有し、分離溝の側壁に形成したプラグ金属膜からなるサイドウォールと、少なくともサイドウォールを覆う第2の絶縁膜とを有することを特徴とする半導体装置とした。
【0007】
そして、第2の絶縁膜は、パッシベーション膜であることを有することを特徴とする半導体装置とした。
【0008】
また、プラグ金属膜からなるサイドウォールは、分離溝内の対向するサイドウォールの底部が互いに接触していることを特徴とする半導体装置とした。
【0009】
また、半導体基板上に第1の絶縁膜を形成した半導体装置の製造方法であって、第1の絶縁膜にコンタクトホールを形成すると同時に分離溝を形成する工程と、第1の絶縁膜および露出した半導体基板上にプラグ金属膜を堆積し、少なくともコンタクトホールの中にプラグ金属膜を完全充填する工程と、プラグ金属膜をエッチバックして分離溝の側壁にサイドウォールを形成する工程と、サイドウォール上に第2の絶縁膜を堆積する工程と、少なくとも分離溝の上方にある第2の絶縁膜を覆うようにエッチング用レジスト膜をパターニングする工程と、エッチング用レジスト膜をマスクとして下地の第2の絶縁膜をドライエッチングする工程とからなることを特徴とする半導体装置の製造方法とした。
【0010】
また、第2の絶縁膜は、パッシベーション膜であることを有することを特徴とする半導体装置の製造方法とした。
【0011】
そして、パッドエッチング用レジストが感光性ポリイミドであることを特徴とする半導体装置の製造方法とした。
【発明の効果】
【0012】
上記手段を用いることにより、ダイシング後の層間絶縁膜剥れ対策用の分離溝を設けた半導体ウエハにおいて、ドライエッチング時にプラグ金属膜のサイドウォールに異常放電を起こすことのない半導体装置を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す半導体装置の断面図である。
【図2】本発明の半導体装置の製造方法を示す断面図であり、エッチング終了時を示す。
【図3】従来の半導体装置の膜剥れ問題を示す断面図である。 (a)ダイシング前の図 (b)ダイシング後の図
【図4】膜剥れ問題を解決するための半導体装置の断面図である。 (a)ダイシング前の図 (b)ダイシング後の図
【図5】図4の従来技術とプラグ技術を併用した場合に生じる問題を示す断面図である。 (a)プラグ金属膜堆積後の図 (b)プラグ金属膜エッチバック後の図 (c)パッシベーション膜堆積後の図 (d)パッド開口するためのパッシベーション膜ドライエッチング中の図
【図6】本発明の第2の実施形態を示す半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態を示す半導体装置の断面図である。本発明の半導体装置はスクライブ領域003とIC領域004とからなり、両領域は同一の半導体基板001上に層間絶縁膜002を有し、IC領域004においては層間絶縁膜002にコンタクトホール009が開口され、その中にプラグ金属膜が完全に充填され、層間絶縁膜012上にはプラグ金属膜に接続して金属配線012が形成されている。そして、パッド開口部(図示していない)を除き金属配線012および層間絶縁膜002を覆うようにパッシベーション膜013を設けている。
【0015】
一方、スクライブ領域003においては半導体基板001上の層間絶縁膜002に分離溝007が形成され、分離溝007の側壁にはプラグ金属膜のサイドウォール011が形成されている。プラグ金属膜のサイドウォール011を完全に覆うようにパッシベーション膜013が被覆されている。ダイシング後においては、図中のスクライブ領域003の左端は半導体チップの端面であって、その左側はダイシングによって切断除去された領域(図4の符号006を参照)となっている。このような構成とすることにより、ダイシング時のダメージによって半導体チップの端面から内部のIC領域に向かって膜剥れが発生することも無く、パッド開口のためのエッチングにおいて異常放電することも防止できる。
【0016】
また、図4(b)で小片008が飛散することを説明したが、本発明では図1内の左端の層間絶縁膜の小片008がプラグ金属膜のサイドウォール011やパッシベーション膜013に接しているため、小片となって飛散する懸念も無い。
【0017】
上記実施例では、分離溝の開口幅をプラグ金属膜の膜厚に対し2倍以上の大きさで図示したが、図6に示す第2の実施形態のように、分離溝の開口幅をプラグ金属膜の膜厚の2倍以下とすることで、分離溝内にプラグ金属膜が十分に充填されることになり、分離溝内の両側の側壁に形成され、対向するサイドウォールの分離溝底部での膜厚が分離溝開口幅の半分(2分の1)以上となる。その結果、対向するサイドウォールの底部が接触することになり小片をより強固に保持することが可能な半導体装置となる。
【0018】
次に、本発明の半導体装置の製造方法について図5および図2を用いて説明する。
まず、図5(a)に示すように、半導体基板001上の層間絶縁膜002にコンタクトホール009を形成すると同時に分離溝007を設け、層間絶縁膜002および露出した半導体基板001上にプラグ金属膜010を堆積する。このとき、開口の小さいコンタクトホールの中はプラグ金属膜010で完全充填されているが、開口の大きい分離溝007は金属膜で満たされることなく分離溝の底部および側壁に沿ってプラグ金属膜010が堆積される。
【0019】
次いで、図5(b)に示すように、堆積したプラグ金属膜010をエッチバックすると、分離溝007の両側の側壁にはプラグ金属膜のサイドウォール011、そして、上部までプラグ金属膜が充填されたコンタクトホールが形成される。
【0020】
そして、図5(c)に示すように、コンタクトホール009内のプラグ金属膜と接続する金属配線012を形成した後、半導体ウエハ上にパッシベーション膜を堆積する。そして、パッド開口のためのレジスト014を図2に示すようにパターニングする。即ち、IC領域においてはパッド開口部(図示していない)を除くパッシベーション膜013を覆うようにレジスト膜014設け、スクライブ領域003においては、少なくとも分離溝007の上方にあるパッシベーション膜013を覆うようにパッドエッチング用レジスト膜014をパターニングする。パッドエッチング用レジスト膜014をマスクとして下地のパッシベーション膜013をエッチングすると、IC領域ではパッド開口され、スクライブ領域003では層間絶縁膜の小片008と分離溝007を覆うパッシベーション膜が残り、ダイシングで切断除去される領域(図示していない)のパッシベーション膜013は除去するようにエッチングする。
【0021】
以上のような製造方法を用いることにより、パッド開口エッチング中にプラグ金属膜のサイドウォール011がエッチングプラズマ内に曝されることなく、異常放電を防ぐことができる。
【0022】
上記実施例では、パッシベーション膜のパターニングとしてレジストを用いた例を示したが、レジストに代えて感光性ポリイミドとし、感光性ポリイミドを所定の形状にパターニング後、それをマスクとして下地のパッシベーション膜をエッチングするという製造方法としても構わない。
【0023】
また、上記例では金属配線が1層の場合について説明をしたが、多層配線にも適用できるものである。
【0024】
以上のように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変形して実施可能である。
【符号の説明】
【0025】
001 半導体基板
002 層間絶縁膜
003 スクライブ領域
004 IC領域
005 膜剥れ部分
006 ダイシングにて切断除去された領域
007 分離溝
008 層間絶縁膜の小片
009 半導体チップ内のコンタクトホール
010 プラグ用金属膜
011 プラグ金属膜のサイドウォール
012 金属配線
013 パッシベーション膜
014 パッドエッチング用レジスト
015 異常放電

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクライブ領域とIC領域とからなる半導体装置であって、
半導体基板と、
前記スクライブ領域と前記IC領域とに亘って前記半導体基板上に配置された第1の絶縁膜と、
前記スクライブ領域の前記第1の絶縁膜に設けられた分離溝と、
前記分離溝の側壁に形成されたプラグ金属膜からなるサイドウォールと、
前記サイドウォールを覆う第2の絶縁膜と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記第2の絶縁膜は、パッシベーション膜であることを有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記プラグ金属膜からなるサイドウォールは、前記分離溝内の対向する前記サイドウォールの底部が互いに接触していることを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体基板上に第1の絶縁膜を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜にコンタクトホールを形成すると同時に分離溝を形成する工程と、
前記第1の絶縁膜および露出した半導体基板上にプラグ金属膜を堆積し、少なくとも前記コンタクトホールの中にプラグ金属膜を完全充填する工程と、
前記プラグ金属膜をエッチバックして前記分離溝の側壁にサイドウォールを形成する工程と、
前記サイドウォール上に第2の絶縁膜を堆積する工程と、
少なくとも前記分離溝の上方にある前記第2の絶縁膜を覆うようにエッチング用レジスト膜をパターニングする工程と、
前記エッチング用レジスト膜をマスクとして下地の第2の絶縁膜をドライエッチングする工程と、
からなることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2の絶縁膜は、パッシベーション膜であることを有することを特徴とする請求項4記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記パッドエッチング用レジストが感光性ポリイミドであることを特徴とする請求項4または請求項5記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−192846(P2011−192846A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58449(P2010−58449)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】