説明

半導体装置の製造方法および半田付け用治具

【課題】 半田付け時の半田の温度を制御して好適に半田付けを行うことができる半田付け用治具および半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】 半田70の半田付けに際して,半田付け用治具100を用いる。半田付け用治具100は,下側基材110と上側基材120とを有している。下側基材110には,温度制御部材111と蓋部材112とを備えている。温度制御部材111は,半田付けに用いられる半田の融点より低い融点の材質のものである。半田付けの際には,下側基材110の側と上側基材120の側とから加熱される。その加熱により温度制御部材111の温度が融点に達すると,温度制御部材111は溶融する。温度制御部材111が溶融するため,素子下電極30の温度は温度制御部材111の融点に保たれる。これにより,半田70は溶融して半田付けに供されるが,既に半田付けされた半田50は溶融しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,半導体装置の製造方法および半田付け用治具に関する。さらに詳細には,半田付けを好適に行うことのできる半田付け用治具および半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置では,半導体素子が回路基板等に半田付けされていることが一般的である。このような半導体装置として,複数層の半田層を有するものがある。複数層の半田層を有する半導体装置を製造する場合には,一般に第1層の半田付けを行った後,第2層の半田付けを行う。そして,順次半田付けを行うことにより半導体装置が製造される。その場合,複数層の半田付けを行う際に同じ融点の半田を用いると,既に半田付けした半田層が溶融してしまう。そのため,再度溶融した半田が半田層からはみ出したり,半田付けされた各部品の位置精度が低いものとなってしまう。
【0003】
一度半田付けした半田が再度溶融しないように,低融点半田を用いることがある。その場合にはまず,高融点半田を用いて第1層を半田付けする。次に,低融点半田を用いて第2層を半田付けするのである。その際に,高融点半田の融点より低い半田付け温度で半田付けをする。既に半田付けされた第1層の半田層が再び溶融しないようにするためである。半田層が再び溶融すると,既に半田付けした各部品の位置精度が悪くなるおそれがあるからである。
【0004】
例えば特許文献1では,高融点半田を用いて基板本体に半導体ペレットを半田付けし,さらに低融点半田を用いて基板本体にテープ・キャリア・パッケージを半田付けする半導体装置の製造方法が開示されている。これにより,テープ・キャリア・パッケージを半田付けする際に,高融点半田が溶融するおそれがないとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−145379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし,低融点半田は,高融点半田に比べて半田付け性能において劣る。つまり,低融点半田は,塑性変形しやすい。そして,繰り返し応力を受けると,疲労破壊しやすい。さらに,低融点半田の融点は,電子部品の使用温度範囲(例えば,最高値で150〜175℃)に近い温度である。すなわち,半導体装置としての使用時に,低融点半田が溶融するおそれがある。加えて,低融点半田を製造するために鉛やカドミウムを用いることは,環境上好ましくない。とはいえ,インジウムなどの希少な金属を用いると,コスト面で不利である。
【0007】
本発明は,前述した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,半田付け時の半田の温度を制御して好適に半田付けを行うことができる半田付け用治具および半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の一態様における半田付け用治具は,半田付け対象部品を載置するための下側部と,半田付け対象部品の上側に載置される上側部とを有するものである。そして,下側部と上側部との少なくとも一方は,所定の温度で溶融する温度制御部材と,温度制御部材の融点よりも高い融点の材質の部材であって,温度制御部材と半田付け対象部品との間に配置される中間部材とを有するものである。かかる半田付け用治具は,半田付け時の半田の温度を制御し,好適に半田付けを行うことができる。
【0009】
上記に記載の半田付け用治具において,温度制御部材は,半田付けに用いられる半田の融点と同じ融点の同融点温度制御部材であるとよい。半田付けの際に,半田の温度が上昇しすぎないからである。そのため,半田が突沸したりするおそれがない。
【0010】
上記に記載の半田付け用治具において,温度制御部材は,半田付けに用いられる半田の融点より低い融点の低融点温度制御部材であるとよい。半田付けの際に,半田の温度が上昇しすぎないからである。そして,既に半田付けを施した半田が再び溶融するおそれがない。したがって,この半田付け用治具を用いて半田付けされた半田接合体の形状精度は高い。
【0011】
上記に記載の半田付け用治具において,下側部と上側部との一方に配置された第1の温度制御部材と,下側部と上側部との他方に配置された第2の温度制御部材とを有し,第1の温度制御部材は,半田付けに用いられる半田の融点より低い融点である低融点温度制御部材であり,第2の温度制御部材は,半田付けに用いられる半田の融点より高い融点である高融点温度制御部材であるとなおよい。加熱する両側で温度制御を行うことができるからである。
【0012】
上記に記載の半田付け用治具において,温度制御部材は,溶融後の体積が溶融前の体積よりも小さい材質のものであり,中間部材は,下側部または上側部の基材に固定されている高剛性部材であるとよい。温度制御部材の溶融後に,温度制御部材の配置されている空間が減圧状態となるからである。このように形成された減圧層は高い断熱効果を有する。つまり,半田付け用治具からの加熱用の熱が半田へ伝わるのを防いで,半田の過熱を防止することができる。
【0013】
上記に記載の半田付け用治具において,温度制御部材は,溶融後の体積が溶融前の体積よりも小さい材質のものであり,中間部材は,下側部または上側部の基材に固定されているとともに,温度制御部材の溶融により弾性変形する材質のものであるとよい。温度制御部材の溶融後に,蓋部材が弾性変形して,半田付け対象部品と蓋部材との間に空気層ができるからである。すなわち,断熱効果が生じる。そのため,半田付け対象部品への加熱が抑制される。
【0014】
上記に記載の半田付け用治具において,温度制御部材は,溶融後の体積が溶融前の体積よりも小さい材質のものであり,中間部材は,下側部または上側部の基材に固定されていないものであるとともに,半田付け対象部品から遠ざかる向きに移動可能なものであるとよい。温度制御部材の溶融後に,蓋部材と半田付け対象部品との接触が解除されるからである。すなわち,伝熱経路が遮断されるとともに,半田付け対象部品と蓋部材との間に空気層ができて断熱効果が生じる。そのため,半田付け対象部品への加熱が抑制される。
【0015】
上記に記載の半田付け用治具において,温度制御部材として,所定の温度で溶融する材質のものに代えて所定の温度で気化する材質のものを用いるとよい。かかる温度制御部材を用いても,半田付け対象部品の温度を制御することができることに変わりないからである。すなわち,半田付け対象部品に至る伝熱経路の途中に空気層ができることで,断熱効果が生じる。そのため,半田付け対象部品への加熱が抑制される。
【0016】
上記に記載の半田付け用治具において,温度制御部材は,気化した状態で還元性を備える還元性ガスとなるものであり,温度制御部材の配置されている箇所から半田付け対象部品の載置されている箇所まで達する貫通孔が形成されているとよい。半田付け対象部品の表面から酸化皮膜を除去し,半田付けを促進することができるからである。
【0017】
また,本発明の一態様における半導体装置の製造方法は,半導体素子を第1の基材に半田付けして第1の半田接合体とする第1の半田付け工程を有する方法である。そして,第1の半田付け工程では,所定の温度で溶融する温度制御部材と,温度制御部材の融点よりも高い融点の材質の部材であって,温度制御部材と第1の基材との間に配置される中間部材とを有する第1の半田付け用治具を用い,温度制御部材と第1の基材との間に中間部材が位置するように第1の基材を配置し,その状態で加熱して半田付けを行う。かかる半導体装置の製造方法では,半田付け時の半田の温度を制御し,好適に半田付けを行うことができる。
【0018】
また,本発明の別の一態様における半導体装置の製造方法は,半導体素子を第1の基材に半田付けして第1の半田接合体とする第1の半田付け工程と,第2の基材を第1の半田接合体に半田付けして両面冷却型の半導体装置とする第2の半田付け工程とを有する方法である。そして,第2の半田付け工程では,第1の基材の側と第2の基材の側との少なくとも一方に,所定の温度で溶融する温度制御部材と,温度制御部材の融点よりも高い融点の材質の部材であって第1の基材と第2の基材との少なくとも一方と温度制御部材との間に配置される中間部材とを有する第2の半田付け用治具を用い,第1の基材と第2の基材との少なくとも一方と温度制御部材との間に中間部材が位置するように第1の基材または第2の基材を配置し,その状態で加熱して半田付けを行う。かかる半導体装置の製造方法では,複数層の半田層を有する両面冷却型の半導体装置を好適に半田付けすることができるからである。
【0019】
上記に記載の半導体装置の製造方法において,第1の半田付け工程と第2の半田付け工程との少なくとも一方では,温度制御部材として,半田付けに用いられる半田の融点と同じ融点の同融点温度制御部材を用いるとよい。半田付けの際に,半田の温度が上昇しすぎないからである。そのため,半田が突沸したりするおそれがない。
【0020】
上記に記載の半導体装置の製造方法において,第1の半田付け工程と第2の半田付け工程との少なくとも一方では,温度制御部材として,半田付けに用いられる半田の融点より低い融点の低融点温度制御部材を用いるとよい。半田付けの際に,半田の温度が上昇しすぎないからである。そして,既に半田付けを施した半田が再び溶融するおそれがない。したがって,この半田付け用治具を用いて半田付けされた半田接合体の形状精度は高い。
【0021】
上記に記載の半導体装置の製造方法において,第2の半田付け用治具として,第1の基材の側と第2の基材の側との一方の側に,半田付けに用いる半田の融点より低い融点である低融点温度制御部材を備えるとともに,第1の基材の側と第2の基材の側との他方の側に,半田付けに用いる半田の融点より高い融点である高融点温度制御部材を備えるものを用いるとよい。加熱する両側で温度制御を行うことができるからである。そのため,既に半田付けした半田層を再び溶融させることなく,第2の半田付け工程で半田付けする半田を好適な半田付け温度で半田付けすることができるからである。
【0022】
上記に記載の半導体装置の製造方法において,高融点温度制御部材以外の温度制御部材として,溶融後の体積が溶融前の体積よりも小さい材質のものを用い,中間部材として,第1の基材と第2の基材との少なくとも一方に固定されている高剛性部材を備える治具を用いるとよい。温度制御部材の溶融後に,温度制御部材の配置されている空間が減圧状態となるからである。このように形成された減圧層は高い断熱効果を有し,半田の過熱を防止することができる。
【0023】
上記に記載の半導体装置の製造方法において,高融点温度制御部材以外の温度制御部材として,溶融後の体積が溶融前の体積よりも小さい材質のものを用い,中間部材として,第1の基材と第2の基材との少なくとも一方に固定されているとともに,温度制御部材の溶融により弾性変形する材質のものを備える治具を用いるとよい。温度制御部材の溶融後に,蓋部材が弾性変形して,半田付け対象部品と蓋部材との間に空気層ができるからである。すなわち,断熱効果が生じる。そのため,半田付け対象部品への加熱が抑制される。
【0024】
上記に記載の半導体装置の製造方法において,高融点温度制御部材以外の温度制御部材として,溶融後の体積が溶融前の体積よりも小さい材質のものを用い,中間部材として,半田付け対象部品から遠ざかる向きに移動可能なものを備える治具を用いるとよい。温度制御部材の溶融後に,蓋部材と半田付け対象部品との接触が解除されるからである。すなわち,伝熱経路が遮断されるとともに,半田付け対象部品と蓋部材との間に空気層ができて断熱効果が生じる。そのため,半田付け対象部品への加熱が抑制される。
【0025】
上記に記載の半導体装置の製造方法において,高融点温度制御部材以外の温度制御部材として,所定の温度で溶融する材質のものに代えて所定の温度で気化する材質のものであるとともに,その気化したガスが還元性を備えるものを用いるとよい。かかる温度制御部材を用いても,半田付け対象部材の温度を制御することができることに変わりないからである。半田付け対象部品の表面から酸化皮膜を除去し,半田付けを促進することができるからである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば,半田付け時の半田の温度を制御して好適に半田付けを行うことができる半田付け用治具および半導体装置の製造方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態から第3の実施形態において製造される両面冷却式のパワーモジュールを説明するための断面図である。
【図2】第1の実施形態に係る半田付け用治具を説明するための断面図である。
【図3】第1の実施形態に係るパワーモジュールの製造方法を説明するための断面図(その1)である。
【図4】第1の実施形態に係るパワーモジュールの製造方法を説明するための断面図(その2)である。
【図5】第1の実施形態に係るパワーモジュールの製造方法を説明するための断面図(その3)である。
【図6】第1の実施形態に係るパワーモジュールの製造方法における半田付けを行う際の半田の温度の変化を示すグラフである。
【図7】第2の実施形態に係る半田付け用治具およびパワーモジュールの製造方法を説明するための断面図である。
【図8】第2の実施形態に係る別の半田付け用治具を説明するための断面図(その1)である。
【図9】第2の実施形態に係る別の半田付け用治具を説明するための断面図(その2)である。
【図10】第3の実施形態に係る半田付け用治具を説明するための断面図である。
【図11】第4の実施形態および第5の実施形態において製造される片面冷却式のパワーモジュールを説明するための断面図である。
【図12】第4の実施形態に係る半田付け用治具を説明するための平面図である。
【図13】第4の実施形態に係る半田付け用治具を説明するための断面図である。
【図14】第4の実施形態に係る別の半田付け用治具を説明するための断面図(その1)である。
【図15】第4の実施形態に係る別の半田付け用治具を説明するための断面図(その2)である。
【図16】第5の実施形態に係る半田付け用治具を説明するための断面図である。
【図17】第5の実施形態に係る別の半田付け用治具を説明するための断面図(その1)である。
【図18】第5の実施形態に係る別の半田付け用治具を説明するための断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,パワーモジュールの製造方法およびそれに用いられる半田付け用治具について,本発明を具体化したものである。
【0029】
(第1の実施形態)
1.パワーモジュール
本実施の形態で製造されるパワーモジュール1の断面図を図1に示す。パワーモジュール1は,両面冷却型の半導体装置である。パワーモジュール1は,図1に示すように,パワー素子10と,ブロック電極20と,素子下電極30と,素子上電極40と,半田50,60,70とを有している。
【0030】
パワー素子10は,IGBTやダイオードなどの半導体素子である。ブロック電極20は,パワー素子10と素子上電極40との間に半田付けされる電極である。素子下電極30は,パワーモジュール1のうち最も外側に位置する電極である。素子上電極40も,パワーモジュール1のうち最も外側に位置する電極である。これらの電極の材質として,例えば銅が挙げられる。素子下電極30および素子上電極40の外側の面31,41は,冷却されることとなる面である。これらの各部品は,半田付けの対象となる半田付け対象部品である。
【0031】
半田50は,パワー素子10と素子下電極30とを接合している半田層である。半田60は,パワー素子10とブロック電極20とを接合している半田層である。半田70は,ブロック電極20と素子上電極40とを接合している半田層である。半田50,60,70は,いずれも同じ種類の半田からなる層である。例えば,SnCu(融点:227℃付近)である。そのためもちろん,これらの半田50,60,70の融点は同じである。
【0032】
パワー素子10の厚みは,100〜500μm程度である。ブロック電極20の厚みは,0.5〜5mm程度である。半田50,60,70の厚みは,50〜500μm程度である。素子下電極30および素子上電極40の厚みは,1〜10mm程度である。図1では,構造を分かりやすく示すために,各部品の厚みを強調して描いてある。しかし,実際には,素子下電極30と素子上電極40とに挟まれた各部品の厚みは非常に薄い。
【0033】
2.半田付け用治具
本形態の半田付け用治具100の断面図を図2に示す。半田付け用治具100は,パワー素子10等の半田付けを行う際に用いられる治具である。その半田付けを行う際の加熱方法として,加熱プレート等を用いる伝熱方式,赤外線等を用いる輻射方式,高温の雰囲気中に曝して加熱する対流方式のいずれの方式をも用いることができる。もちろん,これらを適宜組み合わせてもよい。
【0034】
半田付け用治具100は,図2に示すように,下側基材110と,温度制御部材111と,蓋部材112と,上側基材120と,高さ決めピン130とを有している。下側基材110と,温度制御部材111と,蓋部材112とは,半田付け対象部品を載置される下側部である。上側基材120は,半田付け対象部品の上側に載置される上側部である。
【0035】
下側基材110は,半田付け対象部品を支持するための第1の基材である。また,温度制御部材111や蓋部材112を支持するためのものでもある。下側部材110には,凹部115が形成されている。下側基材110の厚みは,3〜20mmである。下側基材110の材質として,例えば炭素素材が挙げられる。その他,溶融した温度制御部材111とともに合金を形成しにくい材質であるとよい。半田付け用治具100を繰り返し使用することができるためである。または,下側基材110に表面処理を施すこととしてもよい。
【0036】
温度制御部材111は,下側基材110の凹部115の内部に配置されている。温度制御部材111は,下側基材110と蓋部材112との間の空間に位置している。温度制御部材111の材質は,半田付けに用いられる半田の融点より低い融点の低融点温度制御部材である。つまり,温度制御部材111は,常温(大気圧下)では固体状態であり,半田付け温度(大気圧下)では液体状態であるものである。そして,固体状態の体積と液体状態の体積とがほとんど変わらないようなものである。温度制御部材111は,素子下電極30の板面の占める面積の大部分にわたって存在しているとよい。
【0037】
蓋部材112は,温度制御部材111に蓋をするためのものである。また,半田付け時には,温度制御部材111と図1に示した素子下電極30との間に配置される中間部材である。蓋部材112は,半田付けの際に溶融することがない。つまり,蓋部材112の融点は,半田付け温度よりも高い。したがって,蓋部材112の融点は,温度制御部材111の融点よりも高い。なお,下側基材110の凹部115の内側の面と,凹部115の内側に位置する蓋部材112の外側の面とは,接合されている。つまり,蓋部材112は,下側基材110に固定されている。
【0038】
上側基材120は,素子上電極40を上側から押さえるための第2の基材である。上側基材120は,後述するように,溶融した半田70が濡れ広がるようにするための錘の役割を果たすものである。上側基材120の材質として,例えば炭素素材が挙げられる。上側基材120の厚みは,3〜20mmである。高さ決めピン130は,パワーモジュール1の高さを揃えるためのものである。また,パワーモジュール1の面31,41の平行度を保持するためのものでもある。
【0039】
なお,図2から明らかなように,温度制御部材111は,半田付け用治具100の構成要素である。しかし,パワーモジュール1の構成要素ではない。すなわち,温度制御部材111は,製造後にパワーモジュール1に残留するものではない。もちろん,半田付け用治具100そのものも,製造後にパワーモジュール1に残留するものではない。
【0040】
3.パワーモジュールの製造方法
パワーモジュール1の製造方法について説明する。本形態のパワーモジュール1の製造方法は,半田付け用治具100を用いることに特徴のあるものである。
【0041】
3−1.素子下電極接合工程
まず,パワー素子10等の各部品を素子下電極30に半田付けする(素子下電極接合工程)。この素子下電極接合工程は,第1の半田付け工程である。この工程では,必ずしも前述の半田付け用治具100を用いる必要はない。
【0042】
図3は,素子下電極30に各部品を半田付けする様子を説明するための断面図である。図3に示すように,素子下電極30の上に半田50を載置し,その半田50の上にパワー素子10を載置する。そして,そのパワー素子10の上に半田60を載置し,その半田60の上にブロック電極20を載置する。さらにブロック電極20の上に半田70を載置する。この段階では,半田50,60,70は,その上下の部材と未だ接合していない。
【0043】
次に,図3のように,各部材を積層したものを加熱して,半田50,60,70を溶融させる。この加熱には,加熱プレート等の伝熱方式の加熱方法を用いてもよいし,赤外線等の輻射方式の加熱方法を用いてもよい。また,高温の雰囲気中に曝す等,対流方式の加熱方法を用いてもよい。半田50,60,70の材質は同じであるため,半田50,60,70はほとんど同時に溶融し始める。
【0044】
そして,溶融した半田50は,素子下電極30とパワー素子10との間で濡れ広がる。同様に,溶融した半田60は,パワー素子10とブロック電極20との間で濡れ広がる。さらに,半田70はブロック電極20の上で濡れ広がる。半田50,60,70が十分に溶融したところで,加熱を中止する。そして,各部材を積層したものを冷却する。この冷却は,自然冷却により行ってもよい。また,その他の冷却方法を用いてもよい。この冷却により,半田50および半田60は再度凝固する。これにより,素子下電極30と,パワー素子10と,ブロック電極20とは半田付けされて半田接合体となる。なお,この半田接合体の半田70は,図4に示すように,底面71から上部にかけて凸形状となっている。
【0045】
3−2.素子上電極接合工程
続いて,図3に示した,各部を積層して半田付けした半田接合体に,さらに素子上電極40を半田付けする(素子上電極接合工程)。この工程では,半田付け用治具100を用いる。そのため,図4に示すように,蓋部材112の上に図3に示した素子下電極30,パワー素子10,ブロック電極20の接合体を載置する。
【0046】
ここで,前述のように,半田70の形状は,底面71から上部にかけて凸形状となっている。高さ決めピン130の下端131を下側基材110のピン用穴113に挿入する。このとき,高さ決めピン130の上端132の高さは,半田70の頂部72の高さよりもわずかに低く,ブロック電極20の上端,すなわち底面71よりもわずかに高い。
【0047】
次に,半田70の頂部72の上に素子上電極40を載置する。図4に示すように,半田70は複数個あるため,素子上電極40を載置するにあたって問題はない。そして,素子上電極40の上に上側基材120を載置する。上側基材120は,錘の役割を果たすものである。つまり,半田70が溶融した際に,溶融半田70が十分に濡れ広がるようにするためのものである。
【0048】
そして,図4の状態で,これらの部材を加熱する。この加熱には,加熱プレート等を用いる伝熱方式の加熱方法を用いてもよいし,赤外線等を用いる輻射方式の加熱方法を用いてもよい。また,加熱炉内で高温の雰囲気中に曝す等,対流方式の加熱方法を用いてもよい。
【0049】
これらの加熱は主に,下側基材110と上側基材120とを介して行われる。加熱プレートを用いる場合には,2つの加熱プレートをそれぞれ,下側基材110と上側基材120とに接触させる。赤外線を用いる場合には,下側基材110と上側基材120とに向けて赤外線を照射する。また,加熱炉を用いる場合には,高温の雰囲気は実質的に下側基材110と上側基材120とを加熱する。パワーモジュール1を製造するための各部品は,前述のとおり非常に薄いからである。そのため,高温の雰囲気が各部品をそれらの側面から加熱することはほとんどない。
【0050】
このように加熱を続けると,下側基材110とともに温度制御部材111も加熱される。そして,温度制御部材111の温度が融点に達する。そのため,温度制御部材111は溶融し始める。この後の加熱は,温度制御部材111の溶融に用いられることとなる。つまり,温度制御部材111が溶融し始めてから完全に溶融し終えるまで,温度制御部材111の温度は,温度制御部材111の融点に保たれる。したがって,その期間では,下側基材110に接触している蓋部材112の温度も,温度制御部材111の融点と同じかそれ以下の温度である。もちろん,蓋部材112と接触している素子下電極30の温度も同様である。
【0051】
前述のとおり,温度制御部材111の融点は半田50の融点よりも低い。そして,半田50が接している素子下電極30の温度は,半田50の融点よりも低い。このため,半田50が溶融するおそれはほとんどない。半田60についても同様である。
【0052】
一方,素子上電極40の側では,温度制御部材111が溶融している間にも,素子上電極40の温度は上昇し続ける。そのため,素子上電極40の温度は,半田70の融点を超える。そして,素子上電極40と接している半田70は,溶融し始める。そのため,半田70は,ブロック電極20と素子上電極40との間で濡れ広がる。なお,溶融前の半田70は,上に凸部がある形状であるため,溶融する際にエアが入らずボイドが発生しにくい。
【0053】
半田70が溶融して濡れ広がると,図5に示すように,素子上電極40がそれに伴って下方に下りてくる。そして,素子上電極40は,高さ決めピン130と接触したところ位置で停止する。この段階で,素子上電極40と素子下電極30との間の距離が決定する。また,素子上電極40と素子下電極30との間の平行度も決まる。高さ決めピン130があることにより,素子上電極40と素子下電極30との間の距離および平行度はよい。
【0054】
そして,この後,積層した各部材を冷却することにより,パワーモジュール1が製造される。パワーモジュール1の形状精度は高い。なお,半田付け用治具100は,何度でも使用可能である。温度制御部材111は,冷却された後再び固体となるからである。
【0055】
4.従来技術との比較
ここで,本形態の半導体装置の製造方法と従来の半導体装置の製造方法との比較について,図6により説明する。図6は,半田50における温度の時間変化を示すグラフである。横軸は時間である。縦軸は半田50の温度である。
【0056】
図6中の実線は,本形態の加熱方法により加熱された半田50の温度を示している。破線は,従来の加熱方法(両面加熱)により加熱された半田50の温度を示している。二点鎖線は,従来の加熱方法(上面からのみの加熱)により加熱された半田50の温度を示している。
【0057】
図6では,時刻t1で加熱をし始めることとしている。したがって,時刻t1より前の時刻では,半田50の温度は同じである。時刻t1で加熱をし始めると,本形態(実線)と従来技術の両面加熱(破線)の場合に,半田50の温度が早く上昇する。一方,上面からのみの加熱方法(二点鎖線)では,半田50の温度上昇は他の2つの加熱方法に比べて遅い。
【0058】
そして,加熱を続けることにより,半田50の温度は温度制御部材111の融点(T1)に達する。ここで,本形態の加熱方法では,半田50の温度は温度T1で一定となる。そのため,半田50が半田50の融点(T2)に達するおそれがない。すなわち,半田50は溶融しない。
【0059】
従来の両面加熱による加熱方法(破線)では,温度T1を超えて半田50の融点(T2)に達する。そのため,半田50は溶融する。つまり,一度半田付けされた半田50が再度溶融することとなるのである。そしてさらに,半田50の温度は上昇する。従来の片面加熱による加熱方法(二点鎖線)についても同様である。そして,その後,半田50が再度凝固することは,いずれの加熱方法を用いても同様である。
【0060】
このように,従来の両面加熱による加熱方法(破線)や片面加熱による加熱方法(二点鎖線)では,半田70の半田付けの際に,既に半田付けした半田50が再び溶融してしまう。そのため,従来の両面加熱による加熱方法(破線)や片面加熱による加熱方法(二点鎖線)を用いて製造されたパワーモジュール1は,素子下電極30と素子上電極40との平行度が低い。特に図4の状態で半田70が溶ける前に半田50や半田60が先に溶けると,素子上電極40と上側基材120の重さにより半田50と半田60とが押しつぶされる。これにより,パワー素子10やブロック電極20の下から,溶融した半田がはみだして半田接合不良となる。そのため,各部材間の平行度が失われることとなる。一方,本形態に係る半田付け用治具を用いたパワーモジュールの製造方法では,素子下電極30と素子上電極40との平行度が高いパワーモジュール1が製造される。
【0061】
5.変形例
本形態では,温度制御部材111として半田の融点より低い融点の材質のものを用いた。しかし,半田の融点と同じ融点である同融点温度制御部材を用いてもよい。例えば半田付けに用いる半田と同じ種類の半田を用いることができる。その場合であっても,既に半田付けされた半田が過熱されることを防止することができる。つまり,ボイドの発生や半田の飛散等を防止できる。
【0062】
また,半田付け用治具100では,蓋部材112の上に半田付け対象部品を載置することとした。しかし,下側基材110を上下逆にしても構わない。この場合,図2で凹部115の形成されている底部が,温度制御部材111と半田付け対象部品との間に配置される。すなわち,この場合には,下側基材110そのものが中間部材である。
【0063】
6.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る半田付け用治具100は,半田の融点よりも低い融点である温度制御部材111を下側基材110の凹部115の内部に有している。そのため,半田付けの加熱の際に,既に半田付けを行った半田の温度が融点に達することがない。すなわち,既に半田付けを行った半田が再度溶融するおそれがない。これにより,半田付け時の加熱によって,既に半田付けした半田を溶融させるおそれのない半田付け用治具が実現されている。
【0064】
また,本形態に係る半導体装置の製造方法では,既に半田付けした半田を再度溶融させることなく,複数層の半田付けを行うことができる。そして,素子下電極30と素子上電極40との間の平行度の高いパワーモジュールを製造することができる。また,パワー素子10やブロック電極20の傾いていないパワーモジュールを製造することができる。
【0065】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,パワーモジュール以外の他の半導体装置の製造についても適用することができる。もちろん,片面冷却型の半導体装置の製造にも適用することができる。
【0066】
また,本形態の半田付け用治具100は,半導体装置の製造に限らず適用することができる。半田付けを行うものであれば,それによって製造される製品によらない。
【0067】
さらに,半田付けに限らず,加熱処理を行うものであれば適用することができる。例えば,適当な融点の温度制御部材を選択することにより,樹脂成形などにも適用することができる。その場合,BiやInを添加すると融点を下げることができる。例えば,SnBiIn(79℃),SnIn(117℃),SnBi(138〜139℃),SnBiAg(138〜139℃)を用いることができる。
【0068】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について説明する。本形態に係るパワーモジュールの製造方法は,第1の実施形態のパワーモジュールの製造方法とほぼ同様である。第1の実施形態と異なる点は,温度制御部材111として,溶融した状態の体積が固体のときの体積よりも小さいものを用いることである。
【0069】
1.半田付け用治具
本形態の半田付け用治具200は,図7に示すように,図2に示した半田付け用治具100とほぼ同様である。異なる点は,下側基材110と蓋部材112との間に配置される温度制御部材211の材質である。温度制御部材211の液体での体積は,固体での体積よりも小さい。
【0070】
半田付け時における半田付け用治具200について説明する。前述のとおり,温度制御部材211は,固体状態での体積より液体状態での体積のほうが小さいものである。半田付けにおける加熱時には,温度制御部材211は溶融する。すなわち,温度制御部材211は低融点温度制御部材である。ここで,温度制御部材211は密閉された状態にある。一方,下側基材110と蓋部材112との間に形成された空間の容積は変化しない。そのため,温度制御部材211の占める空間では,減圧状態の空間212が実現している。場合によっては,温度制御部材211の成分がその空間212に気化している。なお,蓋部材112は,このような減圧状態であっても変形しない程度の強度を備える高剛性部材である。
【0071】
空間212が減圧状態にあるため,半田付け時において半田付け用治具200には断熱効果がある。そのため,半田付け用治具200は,第1の実施形態の半田付け用治具100に比べて,より半田50を溶融させにくい。
【0072】
このように,半田付け用治具200を用いることにより,加熱装置による加熱を強くすることができる。すなわち,半田付け時間を短縮することができる。その場合,加熱装置から主に加熱を受ける下側基材110および上側基材120の温度がより高い温度となる。しかし,温度制御部材211の断熱効果により,半田50が溶融するおそれはほとんどない。
【0073】
つまり,蓋部材112から素子下電極30に熱を伝える伝熱経路は,温度制御部材211の温度が温度制御部材211の融点に達するまではつながっている。しかし,温度制御部材211の温度が融点に達して温度制御部材211が融解し始めると,その伝熱経路は次第に遮断されることとなる。つまり,本形態に係る半田付け用治具200は,第1の実施形態の半田付け用治具100よりも断熱効果が高い。そのため,第1の実施形態よりも強い加熱で半田付けを行うことができる。そのようにしても,半田50が再び溶融するおそれがないからである。加熱を強いものとすると,温度上昇のために要する時間を短いものとすることができる。すなわち,サイクルタイムは短い。
【0074】
なお,第1の実施形態と第2の実施形態とで異なる材質の温度制御部材を用いることとした。しかし,実際には,固体が液体に相転移した場合には体積が変化するのが通常である。そして多くの物質では,固体状態の体積のほうが液体状態の体積より大きい。すなわち,説明の便宜上,第1の実施形態と第2の実施形態との区別を行ったにすぎない。採用する温度制御部材の融点や,固体状態と液体状態とでの体積比によって,実施形態を使い分けることができることに変わりない。
【0075】
2.変形例
2−1.可動蓋
ここで,本形態の変形例について説明する。本形態の半田付け用治具200では,下側基材110と蓋部材112とは固定されていた。そのため,温度制御部材211が配置されている空間は密閉状態であった。しかし,蓋部材を可動にしてもよい。すなわち,下側基材と,蓋部材とを固定しないのである。
【0076】
図8に示す半田付け用治具300では,下側基材310と,蓋部材312とが互いに可動である。つまり,下側基材310と,蓋部材312とが互いに固定されていない。そのため,温度制御部材211が溶融した場合には,蓋部材312は下方に移動する。つまり,蓋部材312が半田付け対象部品から遠ざかるように移動するのである。そのため,蓋部材312と,素子下電極30との間には,隙間が生じる。そのため,温度制御部材211の温度がその融点に達したところで,素子下電極30と蓋部材312との接触状態は解除される。すなわち,蓋部材312から素子下電極30への熱伝導の経路はほとんど遮断されることとなる。ここで,下側基材310と素子下電極30との接触箇所は存在する。しかし,その面積は十分に小さい。よって,その接触箇所から伝わる熱量は十分に小さい。
【0077】
2−2.変形蓋
ここで,本形態の別の変形例について説明する。前述のように蓋部材312を可動とする代わりに,蓋部材そのものが変形することとしてもよい。このようにしても,蓋部材から素子下電極30への伝熱経路がほとんど遮断されることに変わりないからである。
【0078】
図9に示す半田付け用治具400では,弾性変形する材質の蓋部材412が用いられている。下側基材410と,蓋部材412とは,互いに固定されている。この蓋部材412の材質として,例えばアルミニウムがある。また,その他の材質であっても,十分に薄ければ変形可能である。温度制御部材211が溶融して体積減少が生ずれば,温度制御部材211の配置されている空間での圧力は減少する。この減圧により,蓋部材412が変形するのである。
【0079】
3.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る半田付け用治具200は,半田の融点よりも低い融点である温度制御部材211を下側基材110の凹部の内部に有している。温度制御部材211の液体状態での体積は,固体状態での体積よりも小さい。そのため,温度制御部材211の融解の開始により,蓋部材112から素子下電極30への熱伝導はほとんどなくなる。よって,既に半田付けを行った半田が再度溶融するおそれがない。これにより,半田付け時の加熱によって,既に半田付けした半田を溶融させるおそれのない半田付け用治具が実現されている。
【0080】
また,本形態に係る半導体装置の製造方法では,既に半田付けした半田を再度溶融させることなく,複数層の半田付けを行うことができる。そして,素子下電極30と素子上電極40との間の平行度の高いパワーモジュールを製造することができる。また,パワー素子10やブロック電極20の傾いていないパワーモジュールを製造することができる。
【0081】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,パワーモジュール以外の他の半導体装置の製造についても適用することができる。また,片面冷却型の半導体装置の製造にも適用することができる。
【0082】
また,本形態の半田付け用治具200は,半導体装置の製造に限らず適用することができる。半田付けを行うものであれば,それによって製造される製品によらない。
【0083】
さらに,半田付けに限らず,加熱処理を行うものであれば適用することができる。例えば,適当な融点の温度制御部材を選択することにより,樹脂成形などにも適用することができる。その場合,BiやInを添加すると融点を下げることができる。例えば,SnBiIn(79℃),SnIn(117℃),SnBi(138〜139℃),SnBiAg(138〜139℃)を用いることができる。
【0084】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について説明する。本形態に係る半導体装置の製造方法は,第1の実施形態の半導体装置の製造方法とほぼ同様である。本形態が第1の実施形態と異なる点は,温度制御部材が下側基材にも上側基材にも設けられていることである。
【0085】
1.半田付け用治具
本形態の半田付け用治具500は,図10に示すように,下側基材110と上側基材520とを有している。下側基材110の凹部には温度制御部材111が配置されている。そして,上側基材520の凹部にも温度制御部材521が配置されている。すなわち,半田付け用治具500は,下側からの加熱の際に,温度制御部材111により温度制御を行うことができるものであるとともに,上側からの加熱の際にも,温度制御部材521により温度制御を行うことができるものである。
【0086】
ここで,半田,温度制御部材111,521の材質および融点は,表1に示すとおりである。半田の材質はSnCuである。温度制御部材111の材質はSnAgCuである。温度制御部材521の材質はSnSbである。温度制御部材111の融点は半田の融点よりも低い。つまり,温度制御部材111は,低融点温度制御部材である。そして,温度制御部材521の融点は半田の融点よりも高い。つまり,温度制御部材521は,高融点温度制御部材である。
【0087】
[表1]
材質 融点
半田 SnCu 227℃程度
温度制御部材111 SnAgCu 217〜224℃
温度制御部材521 SnSb 232〜240℃
【0088】
したがって,半田付けの際に,温度制御部材111が溶融することは第1の実施形態と同様である。温度制御部材521は,上方から,すなわち上側基材520の側からの加熱が強い場合に溶融する。すなわち,温度制御部材521の温度がその融点を超えた場合に,温度制御部材521は溶融する。そのため,半田70の温度は,温度制御部材521の融点以下の温度に保たれることとなる。
【0089】
このように,半田付け時の半田70の温度を制御することができる。半田付けの際の半田の最高到達温度は,半田の融点より5〜30℃程度高いことが望ましい。この温度範囲内であれば,半田が突沸するおそれがない。つまり,半田が周囲に飛散したり,ボイドが生じたりするおそれがない。また,半田が部品の金属と脆性を示す合金を形成するおそれもない。したがって,半田70の融点より5〜30℃高い温度の範囲内に融点がある材質のものを温度制御部材521として用いるとよい。
【0090】
本形態では,温度制御部材111のみならず温度制御部材521も設けられている。したがって,下方からの加熱のみならず,上方からの加熱においても温度制御を行うものである。そのため,第1の実施形態よりも強い加熱を行ったとしても,半田70の温度が上昇しすぎるおそれがない。そのため,溶融した半田の過熱を原因とするボイドの発生を抑制することができる。
【0091】
2.パワーモジュールの製造方法
本形態の半田付け用治具500を用いたパワーモジュールの製造方法は,第1の実施形態のものとほぼ同様である。本形態のパワーモジュールの製造方法では,半田付け用治具500を用いることにより,加熱を行う両側で温度制御を行うことができる。そのため,第1の実施形態よりも強い加熱を行っても,好適な半田付けを行うことができる。すなわち,本形態のパワーモジュールの製造方法は,第1の実施形態のパワーモジュールの製造方法より,サイクルタイムを短いものとすることができる。
【0092】
3.変形例
本形態では,下側基材110の凹部に半田の融点より低い融点の温度制御部材111を配置するとともに,上側基材520の凹部に半田の融点より高い融点の温度制御部材521を配置することとした。しかし,下側基材110に半田の融点より高い融点の高融点温度制御部材を配置するとともに,上側基材520に半田の融点より低い融点の低融点温度制御部材を配置することとしても良い。
【0093】
本形態では,第1の実施形態と同様に密閉した温度制御部材111を用いることとした。しかし,第2の実施形態で説明したような断熱効果を有する構成にしてもよい。つまり,温度制御部材211を用いることができる。その場合には,固定された蓋部材112(図7),可動である蓋部材312(図8),変形可能な蓋部材412(図9)を用いることができる。
【0094】
4.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る半田付け用治具500は,下側基材110に温度制御部材111を備えるとともに,上側基材520にも温度制御部材521を備えるものである。そのため,既に半田付けを行った半田50を溶融させないで半田70の半田付けを行うことができるとともに,半田70を好適な温度条件で半田付けすることができる。これにより,好適な半田付けを行うことのできる半田付け用治具が実現されている。
【0095】
また,本形態に係る半導体装置の製造方法では,既に半田付けした半田を再度溶融させることなく,複数層の半田付けを行うことができる。そして,素子下電極30と素子上電極40との間の平行度の高いパワーモジュールを製造することができる。また,パワー素子10やブロック電極20の傾いていないパワーモジュールを製造することができる。
【0096】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,パワーモジュール以外のその他の半導体装置の製造についても適用することができる。また,片面冷却型の半導体装置の製造にも適用することができる。
【0097】
また,本形態の半田付け用治具500は,半導体装置の製造に限らず適用することができる。半田付けを行うものであれば,それによって製造される製品によらない。
【0098】
さらに,半田付けに限らず,加熱処理を行うものであれば適用することができる。例えば,適当な融点の温度制御部材を選択することにより,樹脂成形などにも適用することができる。その場合,BiやInを添加すると融点を下げることができる。例えば,SnBiIn(79℃),SnIn(117℃),SnBi(138〜139℃),SnBiAg(138〜139℃)を用いることができる。
【0099】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について説明する。第1の実施形態から第3の実施形態にかけて説明したパワーモジュールの製造方法により製造されるパワーモジュール1は,両面冷却式の半導体装置であった。本形態の半導体装置の製造方法により製造されるパワーモジュールは,片面冷却式の半導体装置である。
【0100】
1.片面冷却式のパワーモジュール
本形態で製造されるパワーモジュール2を図11に示す。パワーモジュール2は片面冷却式の半導体装置である。パワーモジュール2は,パワー素子11と,基板80と,半田90とを有している。パワー素子11は,IGBT等の半導体素子である。基板80は,絶縁基板である。回路の形成された回路基板であっても適用できる。パワー素子11と基板80とは半田90により接合されている。
【0101】
半田90は,パワー素子11と基板80とを接合するための接合部である。基板80の表面81にパワー素子11が半田付けされている。裏面82に,ヒートシンクを設けるようにしてもよい。その接合を半田付けにより行うこととしてもよいし,ロウ付けにより行うこととしてもよい。
【0102】
2.半田付け用治具
本形態の半田付け用治具600を図12に示す。図12は,半田付け用治具600の平面図である。半田付け用治具600は,図12に示すように,下側基材610と,上側基材620とを有している。
【0103】
図13は,図12のAA断面を示す断面図である。図13に示すように,下側基材610は,温度制御部材611と,蓋部材612とを有している。温度制御部材611の材質は,半田90の融点よりも低い融点の材質である。蓋部材612は,下側基材610に固定されている。
【0104】
3.パワーモジュールの製造方法
本形態のパワーモジュールの製造方法は,第1の実施形態のパワーモジュールの製造方法とほぼ同様である。異なる点は,半田付け時の熱伝導経路である。よって,半田付け時の熱伝導経路について説明する。
【0105】
半田付け時においては,下側基材610および上側基材620が主に加熱される。下側基材610の蓋部材612は,基板80の下面82と接触している。上側基材620は,基板80の上面81と接触している。したがって,基板80は,その上面81と下面82から加熱されることとなる。
【0106】
ここで,基板80の下面82は,半田90の融点より低い温度である。温度制御部材611があることにより,温度が制御されるからである。一方,基板80の上面81は,半田90の融点を超える温度となりうる。基板80の上面81側の熱は,基板80の下面82側にほとんど逃げることがない。基板80の下面82側の温度は半田90の融点には満たないものの,基板80の上面81側の温度に近い温度に達しているからである。
【0107】
加熱を続けると,半田90の温度はやがて融点に達する。よって,半田90は溶融する。その際に,基板80の下面82側の温度は半田90の温度より低い。そのため,半田90の熱はわずかに温度制御部材611に伝わることとなる。したがって,半田90の温度が高くなりすぎるおそれはない。つまり,半田が周囲に飛散したり,ボイドが生じたりするおそれがない。これにより,半田90が高温となりすぎることなく,好適に半田付けを行うことができる。
【0108】
4.変形例
4−1.蓋部材
本形態では,第1の実施形態と同様に密閉した温度制御部材111を用いることとした。しかし,第2の実施形態で説明したような断熱効果を有する構成にしてもよい。つまり,温度制御部材211を用いることができる。その場合には,固定された蓋部材112(図7),可動である蓋部材312(図8),変形可能な蓋部材412(図9)を用いることができる。
【0109】
4−2.上部に温度制御部材(その1)
本形態では,下側基材610に温度制御部材611を設けた。しかし,図14に示すように,パワー素子11の上部に温度制御部材を設けることとしてもよい。図14に示す半田付け用治具700は,下側基材710と,上側基材720と,素子上部材730とを有している。素子上部材730の凹部には,温度制御部材731と,蓋部材732とが設けられている。
【0110】
半田付け時において,素子上部材730は半田90の融点より低い温度である。温度制御部材731があるためである。半田付け時には,パワー素子11は半田90の融点に近い温度に達しうる。半田90に接触しているためである。しかし,素子上部材730があることにより,パワー素子11の温度が上昇しすぎるおそれはない。また,半田90の温度も上昇しすぎるおそれはほとんどない。半田90の熱がパワー素子11を介して素子上部材730に逃げることができるからである。
【0111】
4−3.上部に温度制御部材(その2)
また,図15に示すように,上側基材820そのものに温度制御部材831を設けるようにしてもよい。半田付け用治具800は,図15に示すように,下側基材810と上側基材820とを有している。上側基材820には,温度制御部材831と蓋部材832とが設けられている。
【0112】
半田付け用治具800を用いて半田付けを行う場合について説明する。半田付け用治具800を用いると,本形態とは逆に基板80の上面81の温度が半田90の融点より低い温度で保持される。そして,基板80の下面82の温度が半田90の融点より高い温度となりうる。
【0113】
このように,半田90は,基板80の上面81および下面82の双方から熱が与えられる。そして半田90は,基板80の下面82からの加熱により,半田90の融点に達する。これにより,半田90は溶融する。そして,半田90が濡れ広がり,冷却により再凝固する。このようにして,半田付けがなされる。
【0114】
4−4.その他
その他に,第3の実施形態で説明したように,下側基材610と上側基材620との両方に,温度制御部材を配置することとしてもよい。その場合には,上側基材620の側の配置する温度制御部材として,半田90の融点より高いものを用いるとよい。
【0115】
5.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る半田付け用治具600は,片面冷却式の半導体装置の製造に用いることのできるものである。半田付け用治具600は,下側基材610の凹部に温度制御部材611を備えるものである。そのため,半田付けを好適に行うことができる半田付け用治具600が実現されている。
【0116】
また,本形態に係る半導体装置の製造方法では,既に半田付けした半田を再度溶融させることなく,複数層の半田付けを行うことができる。そして,形状精度の高いパワーモジュールを製造することができる。また,パワー素子11等の傾いていないパワーモジュールを製造することができる。
【0117】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,パワーモジュール以外のその他の半導体装置の製造についても適用することができる。
【0118】
また,本形態の半田付け用治具600は,半導体装置の製造に限らず適用することができる。半田付けを行うものであれば,それによって製造される製品によらない。
【0119】
さらに,半田付けに限らず,加熱処理を行うものであれば適用することができる。例えば,適当な融点の温度制御部材を選択することにより,樹脂成形などにも適用することができる。その場合,BiやInを添加すると融点を下げることができる。例えば,SnBiIn(79℃),SnIn(117℃),SnBi(138〜139℃),SnBiAg(138〜139℃)を用いることができる。
【0120】
(第5の実施形態)
第5の実施形態について説明する。本形態で製造するパワーモジュールは,第4の実施形態で製造したパワーモジュール2と同様である。すなわち,片面冷却式の半導体装置である。本形態が第1の実施形態から第4の実施形態までと異なる点は,温度制御部材の材質である。本形態の温度制御部材は,大気圧下の常温で液体であり,大気圧下の半田付け温度で気体である。または,常温で固体であっても,半田の融点付近の温度で気体である物質であってもよい。
【0121】
1.半田付け用治具
本形態の半田付け用治具900の断面図を図16に示す。半田付け用治具900は,下側基材910と,上側基材920と,チャンバー950とを有している。下側基材910は,温度制御部材911と,蓋部材912とを有している。また,下側基材910には,貫通孔913が設けられている。
【0122】
チャンバー950は,気体を閉じ込めておくためのケースである。温度制御部材911は,半田90の融点と近い沸点の液体である。ここで,半田付け温度が170〜200℃であるとする。そうすると,温度制御部材911として,サリチルアルデヒド(沸点:195℃)やベンズアルデヒド(沸点:179℃)を用いることができる。その他に,ペリルアルデヒド(沸点:237℃)やシンアムアルデヒド(沸点:251℃)を用いてもよい。これらの融点は,半田付け温度の最高到達温度の−30〜30℃の範囲内にある。これらは,気体であるときに還元性を示す物質である。貫通孔913は,温度制御部材911のある箇所から半田付け対象部品のある箇所まで貫通している貫通孔である。
【0123】
第1の実施形態から第4の実施形態までで説明したように,本形態の温度制御部材911は,半田の温度制御を行う。本形態の温度制御部材911はさらに,各部品の表面で酸化還元反応を起こすことができる。すなわち,半田付けにより各部品の表面に形成される酸化膜を除去することができる。
【0124】
2.変形例
2−1.上部に温度制御部材(その1)
本形態では,下側基材910に温度制御部材911を設けた。しかし,パワー素子11の上側に温度制御部材を設けてもよい。図17に示す半田付け用治具1000は,下側基材1010と,上側基材1020と,素子上部材1030とを有している。素子上部材1030の凹部には,温度制御部材1031と,蓋部材1032とが配置されている。蓋部材1032には,貫通孔1033が形成されている。貫通孔1033は,気化した還元性ガスをチャンバー1050の内部に流入させるためのものである。このようにしても,半田90の温度を制御することができることに変わりない。また,各部品の表面の酸化皮膜を除去できることに変わりない。
【0125】
2−2.上部に温度制御部材(その2)
また,図18に示すような半田付け用治具1100を用いてもよい。半田付け用治具1100は,下側基材1010と,上側基材1120と,チャンバー1050とを有している。上側基材1120の凹部には,温度制御部材1121と,蓋部材1122とが配置されている。蓋部材1122には,貫通孔1123が形成されている。貫通孔1123は,気化した還元性ガスをチャンバー1050の内部に流入させるためのものである。このようにしても,半田90の温度を制御することができることに変わりない。また,各部品の表面の酸化皮膜を除去できることに変わりない。
【0126】
2−3.その他
その他に,第3の実施形態で説明したように,下側基材と上側基材との両方に,温度制御部材を配置することとしてもよい。その場合には,上側基材の側の配置する温度制御部材として,半田90の融点より高いものを用いるとよい。
【0127】
3.まとめ
以上,詳細に説明したように,本実施の形態に係る半田付け用治具900は,半田の融点付近に沸点がある温度制御部材911を用いるものである。そのため,半田が過熱するおそれがほとんどない。また,気化した温度制御部材は,還元性である。そのため,各部品の酸化皮膜を除去することができる。つまり,還元ガスを別途供給する必要はない。これにより,好適に半田付けをすることのできる半田付け用治具900が実現されている。
【0128】
また,本形態に係る半導体装置の製造方法では,既に半田付けした半田を再度溶融させることなく,複数層の半田付けを行うことができる。そして,形状精度の高いパワーモジュールを製造することができる。また,パワー素子11等の傾いていないパワーモジュールを製造することができる。また,本形態の半導体装置の製造方法は,第1の実施形態から第2の実施形態までで説明した半導体装置の製造方法に比べて,断熱効果が高い。気体の熱伝導性は液体の熱伝導性よりも低いからである。
【0129】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,パワーモジュール以外のその他の半導体装置の製造についても適用することができる。
【0130】
また,本形態の半田付け用治具900は,半導体装置の製造に限らず適用することができる。半田付けを行うものであれば,それによって製造される製品によらない。
【0131】
さらに,半田付けに限らず,加熱処理を行うものであれば適用することができる。例えば,適当な融点の温度制御部材を選択することにより,樹脂成形などにも適用することができる。その場合,BiやInを添加すると融点を下げることができる。例えば,SnBiIn(79℃),SnIn(117℃),SnBi(138〜139℃),SnBiAg(138〜139℃)を用いることができる。
【符号の説明】
【0132】
1,2…パワーモジュール
10,11…パワー素子
20…ブロック電極
30…素子下電極
40…素子上電極
50,60,70,90…半田
80…基板
81…上面
82…下面
100,200,300,400,500,600,700,800,900,1000,1100…半田付け用治具
110,310,410,610,710…下側基材
111,211,521,611,731,831…温度制御部材
112,312,412,522,612,732,832…蓋部材
120,520,620,720,820…上側基材
130…高さ決めピン
630…位置決めピン
730…素子上部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田付け対象部品を載置するための下側部と,
前記半田付け対象部品の上側に載置される上側部とを有する半田付け用治具であって,
前記下側部と前記上側部との少なくとも一方は,
所定の温度で溶融する温度制御部材と,
前記温度制御部材の融点よりも高い融点の材質の部材であって,前記温度制御部材と前記半田付け対象部品との間に配置される中間部材とを有することを特徴とする半田付け用治具。
【請求項2】
請求項1に記載の半田付け用治具であって,
前記温度制御部材は,
半田付けに用いられる半田の融点と同じ融点の同融点温度制御部材であることを特徴とする半田付け用治具。
【請求項3】
請求項1に記載の半田付け用治具であって,
前記温度制御部材は,
半田付けに用いられる半田の融点より低い融点の低融点温度制御部材であることを特徴とする半田付け用治具。
【請求項4】
請求項1に記載の半田付け用治具であって,
前記下側部と前記上側部との一方に配置された第1の温度制御部材と,
前記下側部と前記上側部との他方に配置された第2の温度制御部材とを有し,
前記第1の温度制御部材は,
半田付けに用いられる半田の融点より低い融点である低融点温度制御部材であり,
前記第2の温度制御部材は,
半田付けに用いられる半田の融点より高い融点である高融点温度制御部材であることを特徴とする半田付け用治具。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の半田付け用治具であって,
前記温度制御部材は,
溶融後の体積が溶融前の体積よりも小さい材質のものであり,
前記中間部材は,
前記下側部または前記上側部の基材に固定されている高剛性部材であることを特徴とする半田付け用治具。
【請求項6】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の半田付け用治具であって,
前記温度制御部材は,
溶融後の体積が溶融前の体積よりも小さい材質のものであり,
前記中間部材は,
前記下側部または前記上側部の基材に固定されているとともに,前記温度制御部材の溶融により弾性変形する材質のものであることを特徴とする半田付け用治具。
【請求項7】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の半田付け用治具であって,
前記温度制御部材は,
溶融後の体積が溶融前の体積よりも小さい材質のものであり,
前記中間部材は,
前記下側部または前記上側部の基材に固定されていないものであるとともに,
前記半田付け対象部品から遠ざかる向きに移動可能なものであることを特徴とする半田付け用治具。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の半田付け用治具であって,
前記温度制御部材として,
所定の温度で溶融する材質のものに代えて所定の温度で気化する材質のものを用いることを特徴とする半田付け用治具。
【請求項9】
請求項8に記載の半田付け用治具であって,
前記温度制御部材は,
気化した状態で還元性を備える還元性ガスとなるものであり,
前記温度制御部材の配置されている箇所から前記半田付け対象部品の載置されている箇所まで達する貫通孔が形成されていることを特徴とする半田付け用治具。
【請求項10】
半導体素子を第1の基材に半田付けして第1の半田接合体とする第1の半田付け工程を有する半導体装置の製造方法であって,
前記第1の半田付け工程では,
所定の温度で溶融する温度制御部材と,前記温度制御部材の融点よりも高い融点の材質の部材であって,前記温度制御部材と前記第1の基材との間に配置される中間部材とを有する第1の半田付け用治具を用い,
前記温度制御部材と前記第1の基材との間に中間部材が位置するように前記第1の基材を配置し,
その状態で加熱して半田付けを行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
半導体素子を第1の基材に半田付けして第1の半田接合体とする第1の半田付け工程と,
第2の基材を前記第1の半田接合体に半田付けして両面冷却型の半導体装置とする第2の半田付け工程とを有する半導体装置の製造方法であって,
前記第2の半田付け工程では,
前記第1の基材の側と前記第2の基材の側との少なくとも一方に,所定の温度で溶融する温度制御部材と,前記温度制御部材の融点よりも高い融点の材質の部材であって前記第1の基材と前記第2の基材との少なくとも一方と前記温度制御部材との間に配置される中間部材とを有する第2の半田付け用治具を用い,
前記第1の基材と前記第2の基材との少なくとも一方と前記温度制御部材との間に中間部材が位置するように前記第1の基材または前記第2の基材を配置し,
その状態で加熱して半田付けを行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項10または請求項11に記載の半導体装置の製造方法であって,
前記第1の半田付け工程と前記第2の半田付け工程との少なくとも一方では,
前記温度制御部材として,
半田付けに用いられる半田の融点と同じ融点の同融点温度制御部材を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項10または請求項11に記載の半導体装置の製造方法であって,
前記第1の半田付け工程と前記第2の半田付け工程との少なくとも一方では,
前記温度制御部材として,
半田付けに用いられる半田の融点より低い融点の低融点温度制御部材を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11に記載の半導体装置の製造方法であって,
前記第2の半田付け用治具は,
前記第1の基材の側と前記第2の基材の側との一方の側に,
半田付けに用いる半田の融点より低い融点である低融点温度制御部材を備えるとともに,
前記第1の基材の側と前記第2の基材の側との他方の側に,
半田付けに用いる半田の融点より高い融点である高融点温度制御部材を備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項10から請求項14までのいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって,
前記高融点温度制御部材以外の前記温度制御部材として,
溶融後の体積が溶融前の体積よりも小さい材質のものを用い,
前記中間部材として,
前記第1の基材と前記第2の基材との少なくとも一方に固定されている高剛性部材を備える治具を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項10から請求項14までのいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって,
前記高融点温度制御部材以外の前記温度制御部材として,
溶融後の体積が溶融前の体積よりも小さい材質のものを用い,
前記中間部材として,
前記第1の基材と前記第2の基材との少なくとも一方に固定されているとともに,前記温度制御部材の溶融により弾性変形する材質のものを備える治具を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項10から請求項14までのいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって,
前記高融点温度制御部材以外の前記温度制御部材として,
溶融後の体積が溶融前の体積よりも小さい材質のものを用い,
前記中間部材として,
前記半田付け対象部品から遠ざかる向きに移動可能なものを備える治具を用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項10から請求項17までのいずれかに記載の半導体装置の製造方法であって,
前記高融点温度制御部材以外の前記温度制御部材として,
所定の温度で溶融する材質のものに代えて所定の温度で気化する材質のものであるとともに,その気化したガスが還元性を備えるものを用いることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−30273(P2012−30273A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173983(P2010−173983)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】