説明

半導体装置の製造方法及びプラズマドーピング装置

【課題】フィン型半導体領域の側面に不純物を導入して低抵抗の不純物領域を形成できるようにし、それによって、所望の特性を持つフィン型半導体装置を実現する。
【解決手段】基板11上にフィン型半導体領域13を形成した後、不純物含有ガスと酸素含有ガスとを用いて、フィン型半導体領域13に対してプラズマドーピングを行うことによって、フィン型半導体領域13の少なくとも側部に不純物導入領域27Bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法及びプラズマドーピング装置に関し、特に、基板上にフィン形状の半導体領域を有する3次元構造の半導体装置を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の高集積化、高機能化及び高速化に伴って、半導体装置の微細化の要求がますます高まっている。そこで、基板上におけるトランジスタの占有面積の低減を目指して、種々のデバイス構造が提案されている。その中でも、フィン型構造を持つ電界効果トランジスタが注目されている。このフィン型構造を持つ電界効果トランジスタは、一般的にフィン型FET(field effect transistor )と呼ばれ、基板の主面に対して垂直に設けられた薄い壁(フィン)状の半導体領域(以下、フィン型半導体領域という)からなる活性領域を有している。フィン型FETにおいては、半導体領域の側面をチャネル面として用いることができるため、基板上におけるトランジスタの占有面積を低減することができる(例えば特許文献1、非特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、フィン型シリコン領域に対して斜め方向からイオン注入を行うことにより、ソースドレイン領域となるエクステンション領域及び高濃度不純物領域を形成する技術が提案されている。この斜め方向からのイオン注入によって、例えば不純物領域を形成した場合、フィン型シリコン領域の側部には一方向からイオン注入が行われるのに対して、フィン型シリコン領域の上部には二方向からイオン注入が行われる。このため、フィン型シリコン領域の上部における不純物領域の注入ドーズ量は、フィン型シリコン領域の側部における不純物領域の注入ドーズ量の2倍の大きさになる。言い換えれば、フィン型シリコン領域の側部に、低抵抗の不純物領域を形成することは困難である。
【0004】
そこで、近年、フィン型半導体領域の側面に対して不純物をドーピングするために、プラズマドーピングを用いることが注目されている。
【0005】
非特許文献1には、フィン型FETの不純物領域を形成するためのプラズマドーピング技術として、パルスDCプラズマ技術が提案されている。パルスDCプラズマ技術では、プラズマを断続的に発生させることにより、フィン型半導体領域のエッチングを抑制できるという効果が得られる。
【0006】
また、フィン型FETの不純物領域を形成するためのプラズマドーピング技術として、特許文献2には、誘導結合プラズマ(ICP)方式のプラズマドーピング技術が提案されている。ICP方式では、パルスDCプラズマ方式と比べて比較的長い時間領域(ドーピング時間)を用いることによって、例えば直径300mmのウェハ等の大きな基板の面内において均一にドーピングを行うことができるという効果が得られる。
【0007】
また、幅の狭い微細なフィン型半導体領域の側面に対してプラズマドーピングを行うことを目的とするものではないが、特許文献3には、トレンチ側面にドーピングを行うためのプラズマドーピング技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−196821号公報
【特許文献2】国際公開第2006/064772号公報
【特許文献3】特開平1−295416号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】D.Lenoble 他、Enhanced performance of PMOS MUGFET via integration of conformal plasma-doped source/drain extensions、2006 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers、p.212
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のように、フィン型半導体領域の側面に対して不純物をドーピングするために、様々なプラズマドーピングを用いることが提案されている。
【0011】
しかしながら、微細なフィン型半導体領域の側面に砒素(As)等の不純物を導入しようとした場合、半導体に対する不純物(特にN型不純物)の吸着性が悪いため、フィン型半導体領域の側部に低抵抗の不純物領域を形成することができない。その結果、所望の特性を持つフィン型FETを得ることができないという問題点がある。
【0012】
尚、特許文献3に開示されているような、寸法の大きいトレンチの側面にドーピングを行う方法を、フィン型FETの不純物領域の形成に適用することは、以下のように至難である。すなわち、このようなトレンチ側面に対するプラズマドーピング方法では、フィン型FET形成においてクリティカルな技術的課題であるフィン型半導体領域のアモルファス化やフィン型半導体領域の上部コーナーの削れ等が全く考慮されていない。このため、フィン型半導体領域の大部分がアモルファス化してしまい、アニール後にも結晶回復が困難になってしまうという問題や、フィン型半導体領域の上部コーナーが大きく削れてしまうという問題が発生してしまう。その結果、このようなトレンチ側面に対するプラズマドーピング方法を転用して、幅の狭い微細なフィン型半導体領域の側部に不純物を導入し、当該不純物をアニールにより電気的に活性化させたとしても、低抵抗の不純物領域を形成することはできない。
【0013】
前記に鑑み、本発明は、フィン型半導体領域の側面に不純物を導入して低抵抗の不純物領域を形成できるようにし、それによって、所望の特性を持つフィン型半導体装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本願発明者らは種々の検討を行ったところ、次のような知見を得た。
【0015】
通常、フィン型半導体領域に不純物をプラズマドーピングする際に用いるガス中には酸素が含まれていないことが好ましいと考えられている。その理由は、フィン型半導体領域を構成する半導体や導入された不純物の酸化を防止し、それにより、フィン型半導体領域に形成された不純物領域(例えばエクステンション領域)の抵抗の増大を防止するためである。
【0016】
ところが、本願発明者らが実験を行ったところ、全く酸素を含まない雰囲気で不純物のプラズマドーピングを行った場合と比較して、微量の酸素を含む雰囲気で不純物のプラズマドーピングを行った場合の方が、フィン型半導体領域の側部に形成される不純物領域の抵抗が小さくなるという、予想外の結果を得た。
【0017】
これは、不純物が付着した半導体表面を薄い酸化物層によって覆うことにより、吸着性の悪い不純物が活性化熱処理等の際に外方拡散することを抑制できたためであると考えられる。尚、この酸化物層については、後工程で洗浄等によって除去してもよい。
【0018】
また、不純物のプラズマドーピング時に酸素を添加することにより前述の効果が得られる他の理由として、次のようなことも考えられる。
【0019】
高温の酸化雰囲気でシリコン(Si)結晶の酸化が起こると、Si結晶中に格子間Si(interstitial Si )が増えることによって、酸化増速拡散(oxidation enhanced diffusion:OED)という現象が生じる。具体的には、高温中で熱拡散を生じているSi結晶には、熱平衡状態で点欠陥(空孔(Vacancy )や格子間Si)が存在しているが、酸化雰囲気中では、酸化によってSiがSiO2 に変質する際に体積膨張が生じる。この膨張に起因する歪の発生、又は、Si結晶中に大量に含まれている酸素の高温による析出に起因する歪の発生によって、Si結晶中からSiが放出されて格子間Siになる。
【0020】
Si結晶中の不純物、例えば砒素(As)の活性化を妨げる要因として、AsとSi中の空孔欠陥との複合体の形成がある。この複合体は、Asが高濃度の場合に特に形成されやすく、複合体を形成したAsはN型のドナーとしては働かない、電気的に不活性なAsとなる。このような複合体の多いAs拡散層のシート抵抗は高くなってしまう。
【0021】
また、Asと空孔との複合体は、通常、1個のAs原子と数個の空孔とが複合したものが安定であると考えられているが、このような複合体は大きい体積を有するため、容易には熱拡散しないので、拡散係数の低下をもたらす場合もある。
【0022】
それに対して、空孔と格子間Siとが結合すると、両者は消滅するので、格子間Siが多ければ、空孔の密度が減少し、Asが空孔と複合体を形成する機会が減少する結果、Asの活性化率が向上するものと考えられる。
【0023】
以上のように、不純物のプラズマドーピング時に酸素を添加することにより、Si結晶中の格子間Siが増大するため、後工程の活性化熱処理時等において不純物の活性化が促進されるので、不純物領域の抵抗が低減するものと考えられる。
【0024】
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであって、本発明に係る半導体装置の製造方法は、基板上にフィン型半導体領域を形成する工程(a)と、不純物含有ガスと酸素含有ガスとを用いて、前記フィン型半導体領域に対してプラズマドーピングを行うことによって、前記フィン型半導体領域の少なくとも側部に不純物導入領域を形成する工程(b)とを備えている。
【0025】
尚、本願において、不純物含有ガスに含まれており且つ半導体中に導入されて不純物導入領域を形成する不純物とは、半導体にドナー準位又はアクセプタ準位を生成する不純物、つまりN型又はP型の不純物を意味する。
【0026】
本発明に係る半導体装置の製造方法によると、フィン型半導体領域の側部にプラズマドーピングによって不純物を導入する際に不純物含有ガスと共に酸素含有ガスを用いるため、全く酸素を含まない雰囲気で不純物のプラズマドーピングを行った場合と比較して、フィン型半導体領域の側部に形成される不純物導入領域の抵抗を小さくすることができる。従って、所望の特性を持つフィン型半導体装置を実現することができる。特に、不純物として、半導体に対する吸着性が悪いN型不純物をプラズマドーピングにより導入する場合、従来技術と比較して、前述の効果が顕著に得られる。
【0027】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記工程(b)において、前記不純物含有ガスと前記酸素含有ガスとを混合した後、当該混合ガスを、前記基板が載置されたチャンバー内に供給して、前記混合ガスを用いてプラズマを発生させてもよい。或いは、前記工程(b)において、前記不純物含有ガスと前記酸素含有ガスとを別々に、前記基板が載置されたチャンバー内に供給して当該チャンバー内で混合した後、当該混合ガスを用いてプラズマを発生させてもよい。このようにすると、プラズマドーピング実施時の安全性が向上する。
【0028】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記工程(b)において、前記酸素含有ガスを用いて、前記フィン型半導体領域に対して第1のプラズマドーピングを行った後、前記不純物含有ガスを用いて、前記フィン型半導体領域に対して第2のプラズマドーピングを行うことによって、前記フィン型半導体領域の前記側部に前記不純物導入領域を形成してもよい。或いは、前記工程(b)において、前記不純物含有ガスを用いて、前記フィン型半導体領域に対して第1のプラズマドーピングを行うことによって、前記フィン型半導体領域の前記側部に前記不純物導入領域を形成した後、前記酸素含有ガスを用いて、前記フィン型半導体領域に対して第2のプラズマドーピングを行ってもよい。これらの場合、前記第1のプラズマドーピングと前記第2のプラズマドーピングとを同じチャンバー内で行ってもよいし、前記第1のプラズマドーピングと前記第2のプラズマドーピングとを異なるチャンバー内で行ってもよい。
【0029】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記不純物含有ガスはAsH3 であってもよい。また、不純物含有ガスとして、AsH3 等の砒素(As)含有ガスに代えて、例えばリン(P)を含むガス等を用いてもよい。
【0030】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記不純物含有ガスは希釈ガスによって希釈されていてもよい。この場合、前記希釈ガスはHeであってもよい。また、希釈ガスとして、Heに代えて、例えば水素(H2 )又はネオン(Ne)等を用いてもよい。
【0031】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記酸素含有ガスは、O2 、H2 O、N2 O及びCO2 のうちの少なくとも1つであってもよい。
【0032】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記酸素含有ガスは希釈ガスによって希釈されていてもよい。この場合、前記希釈ガスはHeであってもよい。また、希釈ガスとして、Heに代えて、例えば水素(H2 )又はネオン(Ne)等を用いてもよい。
【0033】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記不純物導入領域はエクステンション領域であり、前記工程(a)と前記工程(b)との間に、前記不純物導入領域と隣接する部分の前記フィン型半導体領域を覆うようにゲート電極を形成する工程をさらに備えていてもよい。
【0034】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記不純物導入領域はソースドレイン領域であり、前記工程(a)と前記工程(b)との間に、前記不純物導入領域から離間した部分の前記フィン型半導体領域を覆うようにゲート電極を形成する工程と、前記不純物導入領域と前記ゲート電極との間に位置する部分の前記フィン型半導体領域、及び前記ゲート電極の側面をそれぞれ覆うように絶縁性サイドウォールスペーサを形成する工程とをさらに備えていてもよい。
【0035】
本発明に係る半導体装置の製造方法において、前記工程(b)よりも後に、前記不純物導入領域に対して活性化熱処理を行う工程をさらに備えていてもよい。
【0036】
本発明に係る第1のプラズマドーピング装置は、半導体に不純物をプラズマドーピングによって導入するプラズマドーピング装置であって、プラズマを発生させるチャンバーと、前記チャンバー内に不純物含有ガス及び酸素含有ガスを供給するガス供給部とを備え、前記ガス供給部は、前記酸素含有ガスの供給量を制御する。
【0037】
本発明に係る第1のプラズマドーピング装置によると、フィン型半導体領域の側部にプラズマドーピングによって不純物を導入する際に不純物含有ガスと共に酸素含有ガスを用いることができる。このため、全く酸素を含まない雰囲気で不純物のプラズマドーピングを行った場合と比較して、フィン型半導体領域の側部に形成される不純物導入領域の抵抗を小さくすることができる。従って、所望の特性を持つフィン型半導体装置を実現することができる。特に、不純物として、半導体に対する吸着性が悪いN型不純物をプラズマドーピングにより導入する場合、従来技術と比較して、前述の効果が顕著に得られる。
【0038】
本発明に係る第1のプラズマドーピング装置において、前記ガス供給部は、前記不純物含有ガスと前記酸素含有ガスとを混合してから前記チャンバー内に供給してもよい。或いは、前記ガス供給部は、前記不純物含有ガスと前記酸素含有ガスとを別々に前記チャンバー内に供給し、前記不純物含有ガスと前記酸素含有ガスとは前記チャンバー内で混合されてもよい。このようにすると、プラズマドーピング実施時の安全性が向上する。
【0039】
本発明に係る第1のプラズマドーピング装置において、前記ガス供給部は、前記チャンバー内に載置された被処理体の中央部及び周縁部のそれぞれに対して別々に設けられていてもよい。このようにすると、均一性良くプラズマドーピングを実施することができる。
【0040】
本発明に係る第1のプラズマドーピング装置において、前記プラズマ中における酸素濃度を測定するモニター部をさらに備えていてもよい。このようにすると、制御性良くプラズマドーピングを実施することができる。
【0041】
本発明に係る第1のプラズマドーピング装置において、前記ガス供給部は、前記不純物含有ガスを希釈ガスによって希釈して供給してもよい。
【0042】
本発明に係る第1のプラズマドーピング装置において、前記ガス供給部は、前記酸素含有ガスを希釈ガスによって希釈して供給してもよい。
【0043】
本発明に係る第2のプラズマドーピング装置は、半導体に不純物をプラズマドーピングによって導入するプラズマドーピング装置であって、第1のプラズマを発生させる第1のチャンバーと、第2のプラズマを発生させる第2のチャンバーと、前記第1のチャンバー内に不純物含有ガスを供給する第1のガス供給部と、前記第2のチャンバー内に酸素含有ガスを供給する第2のガス供給部とを備え、前記第2のガス供給部は、前記酸素含有ガスの供給量を制御する。
【0044】
本発明に係る第2のプラズマドーピング装置によると、酸素含有ガスを用いて第1のプラズマドーピングを行った後、不純物含有ガスを用いて第2のプラズマドーピングを行うこと、又は、不純物含有ガスを用いて第1のプラズマドーピングを行った後、酸素含有ガスを用いて第2のプラズマドーピングを行うことができる。このため、全く酸素を含まない雰囲気で不純物のプラズマドーピングを行った場合と比較して、フィン型半導体領域の側部に形成される不純物導入領域の抵抗を小さくすることができる。従って、所望の特性を持つフィン型半導体装置を実現することができる。特に、不純物として、半導体に対する吸着性が悪いN型不純物をプラズマドーピングにより導入する場合、従来技術と比較して、前述の効果が顕著に得られる。
【0045】
本発明に係る第2のプラズマドーピング装置において、前記第1のガス供給部は、前記第1のチャンバー内に載置された被処理体の中央部及び周縁部のそれぞれに対して別々に設けられていてもよい。このようにすると、均一性良くプラズマドーピングを実施することができる。
【0046】
本発明に係る第2のプラズマドーピング装置において、前記第2のガス供給部は、前記第2のチャンバー内に載置された被処理体の中央部及び周縁部のそれぞれに対して別々に設けられていてもよい。このようにすると、均一性良くプラズマドーピングを実施することができる。
【0047】
本発明に係る第2のプラズマドーピング装置において、前記第2のプラズマ中における酸素濃度を測定するモニター部をさらに備えていてもよい。このようにすると、制御性良くプラズマドーピングを実施することができる。
【0048】
本発明に係る第2のプラズマドーピング装置において、前記第1のガス供給部は、前記不純物含有ガスを希釈ガスによって希釈して供給してもよい。
【0049】
本発明に係る第2のプラズマドーピング装置において、前記第2のガス供給部は、前記酸素含有ガスを希釈ガスによって希釈して供給してもよい。
【発明の効果】
【0050】
本発明によると、フィン型半導体領域の側面に不純物を導入して低抵抗の不純物領域を形成することができるので、所望の特性を持つフィン型半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1(a)〜(g)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、実施形態に係る半導体装置の構造を示す図であり、図2(a)は平面図であり、図2(b)は図2(a)におけるA−A線の断面図であり、図2(c)は図2(a)におけるB−B線の断面図である。
【図3】図3は、実施形態に係るプラズマドーピング装置の第1例の概略構成を示す図である。
【図4】図4は、実施形態に係るプラズマドーピング装置の第2例の概略構成を示す図である。
【図5】図5(a)及び(b)は、実施形態に係るプラズマドーピング装置の第3例の概略構成を示す図である。
【図6】図6(a)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法のプロセスフローであり、図6(b)は、実施形態の第1変形例に係る半導体装置の製造方法のプロセスフローであり、図6(c)は、実施形態の第2変形例に係る半導体装置の製造方法のプロセスフローである。
【図7】図7(a)は、実施形態に係る半導体装置の製造方法により得られたフィン型半導体装置を示す図であり、図7(b)は、当該フィン型半導体装置のフィン型半導体領域上部における拡がり抵抗と深さとの関係を示す図であり、図7(c)は、当該フィン型半導体装置のフィン型半導体領域側部における拡がり抵抗と水平距離との関係を示す図である。
【図8】図8(a)は、複数のサンプルについてプラズマドーピング条件を色々変えて不純物導入を行うことにより得られた、フィン型半導体領域上部でのシート抵抗及び拡がり抵抗のそれぞれの値を示す図であり、図8(b)は、図8(a)に示すシート抵抗と拡がり抵抗との相関関係をグラフにして示す図であり、図8(c)は、実施形態におけるフィン型半導体領域側部の拡がり抵抗を、図8(b)に示す相関関係を用いてシート抵抗に換算した結果を示す図であり、図8(d)は、実施形態におけるフィン型半導体領域側部での水平距離と拡がり抵抗との関係を、一のサンプルにおけるフィン型半導体領域上部での深さと拡がり抵抗との関係と比較して示す図であり、図8(e)は、実施形態におけるフィン型半導体領域側部での水平距離と拡がり抵抗との関係を、他のサンプルにおけるフィン型半導体領域上部での深さと拡がり抵抗との関係と比較して示す図である。
【図9】図9は、比較例に係るプラズマドーピング装置の概略構成を示す図である。
【図10】図10(a)は、比較例に係る半導体装置の製造方法により得られたフィン型半導体装置を示す図であり、図10(b)は、当該フィン型半導体装置のフィン型半導体領域上部における拡がり抵抗と深さとの関係を示す図であり、図10(c)は、当該フィン型半導体装置のフィン型半導体領域側部における拡がり抵抗と水平距離との関係を示す図である。
【図11】図11(a)は、複数のサンプルについてプラズマドーピング条件を色々変えて不純物導入を行うことにより得られた、フィン型半導体領域上部でのシート抵抗及び拡がり抵抗のそれぞれの値を示す図であり、図11(b)は、図11(a)に示すシート抵抗と拡がり抵抗との相関関係をグラフにして示す図であり、図11(c)は、比較例におけるフィン型半導体領域側部の拡がり抵抗を、図11(b)に示す相関関係を用いてシート抵抗に換算した結果を示す図であり、図11(d)は、比較例におけるフィン型半導体領域側部での水平距離と拡がり抵抗との関係を、一のサンプルにおけるフィン型半導体領域上部での深さと拡がり抵抗との関係と比較して示す図であり、図11(e)は、比較例におけるフィン型半導体領域側部での水平距離と拡がり抵抗との関係を、他のサンプルにおけるフィン型半導体領域上部での深さと拡がり抵抗との関係と比較して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
(実施形態)
以下、一実施形態に係る半導体装置の製造方法について、当該製造方法において用いるプラズマドーピング装置と共に、図面を参照しながら説明する。
【0053】
図1(a)〜(g)は、本実施形態に係る半導体装置の製造方法の各工程を示す断面図である。
【0054】
まず、図1(a)に示すように、例えばシリコンからなる厚さ800μmの支持基板11上に例えば酸化シリコンからなる厚さ150nmの絶縁層12が設けられ、且つ絶縁層12上に例えばシリコンからなる厚さ50nmの半導体層が設けられたSOI(Semiconductor On Insulator)基板を準備する。その後、前記半導体層をパターニングして、活性領域となるp型のフィン型半導体領域13を形成する。フィン型半導体領域13においては、ゲート幅方向の幅aが例えば5nm以上で且つ15nm以下であり、ゲート長方向の幅bが例えば200nm程度であり、高さ(厚さ)cが例えば50nm程度であり、ピッチdが例えば幅aの2倍程度以下である(図2(a)参照)。
【0055】
次に、図1(b)に示すように、フィン型半導体領域13の表面に例えばシリコン酸窒化膜からなる厚さ3nmのゲート絶縁膜14を形成した後、支持基板12上の全面に亘って例えば厚さ60nmのポリシリコン膜15Aを形成する。
【0056】
次に、図1(c)に示すように、ポリシリコン膜15A及びゲート絶縁膜14を順次エッチングして、フィン型半導体領域13上にゲート絶縁膜14を介して、ゲート長方向の幅が例えば20nmのゲート電極15を形成する。
【0057】
次に、図1(d)に示すように、フィン型半導体領域13上が開口されたレジストパターン18及びゲート電極15をそれぞれマスクとして、フィン型半導体領域13の上部及び側部に不純物をプラズマドーピングによって導入することにより、フィン型半導体領域13の上部及び側部にそれぞれエクステンション領域17となる第1のN型不純物領域17a及び第2のN型不純物領域17bを形成する。ここで、プラズマドーピング条件は、例えば、原料ガスがHe(ヘリウム)で希釈したAsH3 (アルシン)であり、原料ガス中でのAsH3 濃度が0.5質量%であり、AsH3 流量が0.12cm3 /分(標準状態)であり、原料ガスのガス総流量が475cm3 /分(標準状態)であり、チャンバー内圧力が0.5Paであり、ソースパワー(プラズマ生成用高周波電力)が500Wであり、バイアス電圧(Vpp)が250Vであり、基板温度が22℃であり、プラズマドーピング時間が60秒である。
【0058】
本実施形態の特徴として、エクステンション領域17を形成するためのプラズマドーピング時に、不純物含有ガスであるAsH3 と共に、酸素含有ガスとして、微量の酸素(O2 )ガスをHeで希釈して用いる。ここで、O2 /He混合ガス中でのO2 濃度は例えば1.0質量%であり、O2 流量は例えば0.0166cm3 /分(標準状態)であり、O2 /He混合ガスのガス総流量は例えば13.2cm3 /分(標準状態)である。これにより、フィン型半導体領域13の側部のエクステンション領域17となる第2のN型不純物領域17bの拡がり抵抗を9.09×103 Ω程度に抑制することができた。
【0059】
次に、例えば洗浄によってレジストパターン18を除去した後、支持基板12上の全面に亘って例えば厚さ60nmの絶縁膜を形成し、その後、異方性ドライエッチングを用いて当該絶縁膜をエッチバックする。これにより、図1(e)に示すように、ゲート電極15の側面上に絶縁性サイドウォールスペーサ16が形成される。
【0060】
次に、図1(f)に示すように、フィン型半導体領域13上が開口されたレジストパターン19、ゲート電極15及び絶縁性サイドウォールスペーサ16をそれぞれマスクとして、フィン型半導体領域13の上部及び側部に不純物をプラズマドーピングによって導入することにより、フィン型半導体領域13の上部及び側部にそれぞれソースドレイン領域27となる第3のN型不純物領域27a及び第4のN型不純物領域27bを形成する。ここで、プラズマドーピング条件は、例えば、原料ガスがHe(ヘリウム)で希釈したAsH3 (アルシン)であり、原料ガス中でのAsH3 濃度が0.5質量%であり、AsH3 流量が0.12cm3 /分(標準状態)であり、原料ガスのガス総流量が475cm3 /分(標準状態)であり、チャンバー内圧力が0.5Paであり、ソースパワー(プラズマ生成用高周波電力)が500Wであり、バイアス電圧(Vpp)が250Vであり、基板温度が22℃であり、プラズマドーピング時間が60秒である。
【0061】
本実施形態の特徴として、ソースドレイン領域27を形成するためのプラズマドーピング時、不純物含有ガスであるAsH3 と共に、酸素含有ガスとして、微量の酸素(O2 )ガスをHeで希釈して用いる。ここで、O2 /He混合ガス中でのO2 濃度は例えば1.0質量%であり、O2 流量は例えば0.0166cm3 /分(標準状態)であり、O2 /He混合ガスのガス総流量は例えば13.2cm3 /分(標準状態)である。これにより、フィン型半導体領域13の側部のソースドレイン領域27となる第4のN型不純物領域27bの拡がり抵抗を9.09×103 Ω程度に抑制することができた。
【0062】
次に、図1(g)に示すように、例えば洗浄によってレジストパターン19を除去した後、活性化熱処理を行って、エクステンション領域17及びソースドレイン領域27のそれぞれに導入されているAsを活性化させる。これにより、フィン型FETを形成することができる。
【0063】
図2(a)〜(c)は、以上のように形成された本実施形態のフィン型FETの構造を示す図であり、図2(a)は平面図であり、図2(b)は図2(a)におけるA−A線の断面図であり、図2(c)は図2(a)におけるB−B線の断面図である。尚、図1(g)は、図2(a)におけるC−C線の要部断面図に相当する。
【0064】
本実施形態のフィン型FETは、図2(a)〜(c)及び図1(g)に示すように、例えばシリコンからなる支持基板11と、支持基板11上に形成された例えば酸化シリコンからなる絶縁層12と、絶縁層12上に形成された複数のフィン型半導体領域13と、各フィン型半導体領域13上にゲート絶縁膜14を介して形成されたゲート電極15と、ゲート電極15の側面上に形成された絶縁性サイドウォールスペーサ16と、各フィン型半導体領域13におけるゲート電極15を挟む両側方領域に形成されたエクステンション領域17と、各フィン型半導体領域13におけるゲート電極15及び絶縁性サイドウォールスペーサ16を挟む両側方領域に形成されたソースドレイン領域27とを有している。各フィン型半導体領域13は、絶縁層12上においてゲート幅方向に一定間隔で並ぶように配置されている。ゲート電極15は、ゲート幅方向に各フィン型半導体領域13を跨ぐように形成されている。エクステンション領域17は、フィン型半導体領域13の上部に形成された第1のN型不純物領域17aと、フィン型半導体領域13の側部に形成された第2のN型不純物領域17bとから構成されている。また、ソースドレイン領域27は、フィン型半導体領域13の上部に形成された第3のN型不純物領域27aと、フィン型半導体領域13の側部に形成された第4の不純物領域27bとから構成されている。尚、ポケット領域の説明及び図示については省略している。
【0065】
以上に説明したように、本実施形態によると、エクステンション領域17を形成するためのプラズマドーピングにおいて、不純物含有ガスと共に酸素含有ガスを用いるため、全く酸素を含まない雰囲気で不純物のプラズマドーピングを行った場合と比較して、フィン型半導体領域13の側部に形成される第2のN型不純物領域17bの抵抗を小さくすることができる。従って、所望の特性を持つフィン型半導体装置を実現することができる。また、フィン型半導体領域13の側部に形成された第2のN型不純物領域17bの抵抗を小さくすることができるので、エクステンション領域17のゲート幅方向の幅において第2のN型不純物領域17bの幅が占める割合が大きくなっても、所望のトランジスタ特性を得ることができる。
【0066】
また、本実施形態によると、ソースドレイン領域27を形成するためのプラズマドーピングにおいて、不純物含有ガスと共に酸素含有ガスを用いるため、全く酸素を含まない雰囲気で不純物のプラズマドーピングを行った場合と比較して、フィン型半導体領域13の側部に形成される第4のN型不純物領域27bの抵抗を小さくすることができる。従って、所望の特性を持つフィン型半導体装置を実現することができる。また、フィン型半導体領域13の側部に形成された第4のN型不純物領域27bの抵抗を小さくすることができるので、ソースドレイン領域27のゲート幅方向の幅において第4のN型不純物領域27bの幅が占める割合が大きくなっても、所望のトランジスタ特性を得ることができる。さらに、フィン型半導体領域13の側部に形成された第4の不純物領域27bの抵抗をエクステンション領域17の抵抗と同程度に設定することができるため、ソースドレイン領域27からエクステンション領域17へのキャリアの移動が容易となるので、所望のトランジスタ特性を得ることができる。
【0067】
また、本実施形態によると、フィン型半導体領域13にエクステンション領域17やソースドレイン領域27を形成するためにプラズマドーピングを用いるため、イオン注入を用いた場合のようにフィン型半導体領域がアモルファス化してアニール後にも結晶回復が困難になってしまうという問題を回避することができる。
【0068】
尚、本実施形態において、フィン型半導体領域13の上部及び両側部にエクステンション領域17及びソースドレイン領域27を備えたトリプルゲート型のフィン型半導体装置を製造した。しかし、これに代えて、フィン型半導体領域13の両側部のみにエクステンション領域17及びソースドレイン領域27を備えたダブルゲート型のフィン型半導体装置を製造してもよい。
【0069】
また、本実施形態において、エクステンション領域17及びソースドレイン領域27を形成するためのプラズマドーピングにおいて、原料ガス(Heで希釈したAsH3 :以下同じ)中でのAsH3 濃度を0.5質量%、AsH3 流量を0.12cm3 /分(標準状態)、原料ガスのガス総流量を475cm3 /分(標準状態)に設定したが、これに限らず、原料ガス中でのAsH3 濃度を0.5質量%以上の任意の値、AsH3 流量を0.12cm3 /分(標準状態)以上の任意の値、原料ガスのガス総流量を475cm3 /分(標準状態)以上の任意の値に設定してもよい。
【0070】
また、本実施形態において、エクステンション領域17及びソースドレイン領域27を形成するためのプラズマドーピングにおいて、O2 /He混合ガス中でのO2 濃度を1.0質量%、O2 流量を0.0166cm3 /分(標準状態)に設定した。しかし、これに限らず、O2 /He混合ガス中でのO2 濃度を0.000168質量%以上で且つ3.24質量%以下に設定すると共に、O2 流量を0.0001cm3 /分(標準状態)以上で且つ2.0cm3 /分(標準状態)以下に設定してもよい。尚、O2 流量を0.0001cm3 /分(標準状態)未満に設定すると、酸素添加によるフィン型半導体領域側部の抵抗低減効果が発現しにくくなる。一方、O2 流量を2.0cm3 /分(標準状態)よりも大きく設定すると、酸素によるシリコン領域の酸化が顕著となり、酸化によるシリコン表面の絶縁物化(酸化膜の形成)が進みすぎて不純物導入領域の抵抗が逆に上昇してしまうという問題が発生してしまう。また、酸素によるシリコン領域の酸化を確実に抑制して不純物導入領域を低抵抗化するためには、O2 流量を0.2cm3 /分(標準状態)以下に設定すると共にO2 濃度を0.334質量%以下に設定することが望ましい。
【0071】
また、本実施形態において、エクステンション領域17及びソースドレイン領域27を形成するためのプラズマドーピング時に酸素含有ガスとして、酸素(O2 )ガスを用いたが、これに代えて、他の酸素含有ガス、例えば、H2 O、N2 O又はCO2 を用いてもよい。また、O2 を含むこれらの酸素含有ガスを2つ以上用いてもよい。
【0072】
また、本実施形態において、エクステンション領域17及びソースドレイン領域27を形成するためのプラズマドーピングの原料ガスとして、Heで希釈したAsH3 を用いたが、原料ガスは、フィン型半導体領域13に注入する不純物を含むガスであれば、特に限定されるものではない。例えば、AsH3 に代えて、砒素原子を含む他の分子、又は砒素原子と水素原子とからなる他の分子を用いてもよい。或いは、燐(P)原子を含むPH3 等を用いてもよい。特に、不純物として、半導体に対する吸着性が悪いN型不純物をプラズマドーピングにより導入する場合、従来技術と比較して、前述の効果が顕著に得られるが、ボロン等のP型不純物を含むガスを原料ガスとして用いる場合にも、従来技術と比較して、フィン型半導体領域側部の不純物導入領域の抵抗低減効果を得ることができる。
【0073】
また、本実施形態において、プラズマドーピング時に不純物含有ガス及び酸素含有ガスを希釈する希釈ガスとして、Heを用いたが、これに代えて、例えばネオン(Ne)等の他の希ガス、又は水素(H2 )を用いてもよい。或いは、不純物含有ガス及び酸素含有ガスを希釈ガスによって希釈しなくてもよい。
【0074】
また、本実施形態において、プラズマの発生方式は特に限定されないが、例えばICP方式又はパルス方式等のプラズマ発生方式を用いてもよい。
【0075】
以下、本実施形態のプラズマドーピングに使用可能な装置構成、本実施形態のプラズマドーピングを含むプロセスフローの変形例、及び本実施形態の効果の詳細について、順次説明する。
【0076】
[プラズマドーピングに使用可能な装置構成]
まず、本実施形態のプラズマドーピングに使用可能な装置構成について、図面を参照しながら説明する。
【0077】
図3は、本実施形態のプラズマドーピングに使用可能な装置の第1例の概略構成を示す図である。
【0078】
図3に示すように、プラズマを発生させるチャンバー本体51の内部には、被処理ウェハが載置される下部電極52が支持部53を介して設けられている。チャンバー本体51の上部には、下部電極52を囲むようにインナーチャンバー54が設けられている。インナーチャンバー54には、ウェハ搬送用ゲート55が設けられている。インナーチャンバー54を覆うようにアッパーチャンバー56及び天板57が設けられている。チャンバー本体51の底部には排気口58が設けられており、当該排気口58に排気バルブ59を介して排気ポンプ60が取り付けられている。
【0079】
天板57を貫通するようにガスインジェクター61が設けられている。ガスインジェクター61には、ガス供給部70A及びガス供給部70Bからそれぞれガス供給ライン77A及びガス供給ライン77Bを通じて不純物含有ガス(例えばHeで希釈されたAsH3 )及び酸素含有ガス(例えばHeで希釈されたO2 )が供給される。ここで、ガス供給部70Aからガス供給ライン77Aを通ってガスインジェクター61まで供給されたガスは、ガス供給口62から、チャンバー本体51内に載置された被処理ウェハの中央部に向けて噴出される。また、ガス供給部70Bからガス供給ライン77Bを通ってガスインジェクター61まで供給されたガスは、ガス供給口63から、チャンバー本体51内に載置された被処理ウェハの周縁部に向けて噴出される。
【0080】
ガス供給部70Aは、例えば、AsH3 /He混合ガスボンベ71Aと、Heガスボンベ72Aと、O2 /He混合ガスボンベ73Aと、AsH3 /He混合ガスボンベ71Aからガス供給ライン77Aに供給されるAsH3 /He混合ガスの流量を制御するマスフローコントローラ(以下、MFCという)74Aと、Heガスボンベ72Aからガス供給ライン77Aに供給されるHeガスの流量を制御するMFC75Aと、O2 /He混合ガスボンベ73Aからガス供給ライン77Aに供給されるO2 /He混合ガスの流量を制御するMFC76Aとを備えている。
【0081】
ガス供給部70Bは、例えば、AsH3 /He混合ガスボンベ71Bと、Heガスボンベ72Bと、O2 /He混合ガスボンベ73Bと、AsH3 /He混合ガスボンベ71Bからガス供給ライン77Bに供給されるAsH3 /He混合ガスの流量を制御するMFC74Bと、Heガスボンベ72Bからガス供給ライン77Bに供給されるHeガスの流量を制御するMFC75Bと、O2 /He混合ガスボンベ73Bからガス供給ライン77Bに供給されるO2 /He混合ガスの流量を制御するMFC76Bとを備えている。
【0082】
以上のように、図3に示す第1例のプラズマドーピング装置は、不純物含有ガスであるAsH3 と酸素含有ガスであるO2 と希釈ガスであるHeとを混合してからチャンバー内に供給し、当該混合ガスを用いてプラズマを発生させる構成を有している。
【0083】
尚、図3に示す第1例のプラズマドーピング装置において、プラズマ中における酸素濃度を測定するモニター部をさらに設けてもよい。このようにすると、プラズマ中の酸素濃度をモニターしながら、MFC76A及び76BによってO2 /He混合ガスの流量を適切に調節できるので、制御性良くプラズマドーピングを実施することができる。
【0084】
図4は、本実施形態のプラズマドーピングに使用可能な装置の第2例の概略構成を示す図である。尚、図4において、図3に示す第1例のプラズマドーピング装置と同じ構成要素には同じ符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0085】
図4に示す第2例のプラズマドーピング装置が、図3に示す第1例のプラズマドーピング装置と異なっている点は次の通りである。すなわち、図4に示す第2例のプラズマドーピング装置においては、ガス供給部70Aには、O2 /He混合ガスボンベ73A及びMFC76Aは設けられていないと共に、ガス供給部70Bには、O2 /He混合ガスボンベ73B及びMFC76Bは設けられていない。すなわち、ガスインジェクター61には、ガス供給部70A及びガス供給部70Bからそれぞれガス供給ライン77A及びガス供給ライン77Bを通じて不純物含有ガス(例えばHeで希釈されたAsH3 )が供給され、酸素含有ガス(例えばHeで希釈されたO2 )は供給されない。一方、図4に示す第2例のプラズマドーピング装置においては、ガス供給部80が設けられている。ガス供給部80から供給された酸素含有ガス(例えばHeで希釈されたO2 )はガス供給ライン83を通って、天板57に設けられたガス供給口64から、チャンバー本体51内に載置された被処理ウェハの周縁部に向けて噴出される。ここで、ガス供給部80は、例えば、O2 /He混合ガスボンベ81と、O2 /He混合ガスボンベ81からガス供給ライン83に供給されるO2 /He混合ガスの流量を制御するMFC82とを備えている。
【0086】
以上のように、図4に示す第2例のプラズマドーピング装置は、不純物含有ガスであるAsH3 と酸素含有ガスであるO2 とを別々にチャンバー内に供給して当該チャンバー内で混合し、当該混合ガスを用いてプラズマを発生させる構成を有している。このようにすると、プラズマドーピング実施時の安全性が向上する。
【0087】
尚、図4に示す第2例のプラズマドーピング装置において、プラズマ中における酸素濃度を測定するモニター部をさらに設けてもよい。このようにすると、プラズマ中の酸素濃度をモニターしながら、MFC82によってO2 /He混合ガスの流量を適切に調節できるので、制御性良くプラズマドーピングを実施することができる。
【0088】
図5(a)及び(b)は、本実施形態のプラズマドーピングに使用可能な装置の第3例の概略構成を示す図である。すなわち、第3例のプラズマドーピング装置は、図5(a)及び(b)のそれぞれに示す装置部分の組合せにより構成されている。
【0089】
図5(a)に示す装置部分においては、プラズマを発生させるチャンバー本体51Aの内部に、被処理ウェハが載置される下部電極52Aが支持部53Aを介して設けられている。チャンバー本体51Aの上部には、下部電極52Aを囲むようにインナーチャンバー54Aが設けられている。インナーチャンバー54Aには、ウェハ搬送用ゲート55Aが設けられている。インナーチャンバー54Aを覆うようにアッパーチャンバー56A及び天板57Aが設けられている。チャンバー本体51Aの底部には排気口58Aが設けられており、当該排気口58Aに排気バルブ59Aを介して排気ポンプ60Aが取り付けられている。
【0090】
また、図5(a)に示す装置部分においては、天板57Aを貫通するようにガスインジェクター61Aが設けられている。ガスインジェクター61Aには、ガス供給部70A及びガス供給部70Bからそれぞれガス供給ライン77A及びガス供給ライン77Bを通じて不純物含有ガス(例えばHeで希釈されたAsH3 )が供給される。ここで、ガス供給部70Aからガス供給ライン77Aを通ってガスインジェクター61Aまで供給されたガスは、ガス供給口62Aから、チャンバー本体51A内に載置された被処理ウェハの中央部に向けて噴出される。また、ガス供給部70Bからガス供給ライン77Bを通ってガスインジェクター61Aまで供給されたガスは、ガス供給口63Aから、チャンバー本体51A内に載置された被処理ウェハの周縁部に向けて噴出される。
【0091】
ガス供給部70Aは、例えば、AsH3 /He混合ガスボンベ71Aと、Heガスボンベ72Aと、AsH3 /He混合ガスボンベ71Aからガス供給ライン77Aに供給されるAsH3 /He混合ガスの流量を制御するMFC74Aと、Heガスボンベ72Aからガス供給ライン77Aに供給されるHeガスの流量を制御するMFC75Aとを備えている。
【0092】
ガス供給部70Bは、例えば、AsH3 /He混合ガスボンベ71Bと、Heガスボンベ72Bと、AsH3 /He混合ガスボンベ71Bからガス供給ライン77Bに供給されるAsH3 /He混合ガスの流量を制御するMFC74Bと、Heガスボンベ72Bからガス供給ライン77Bに供給されるHeガスの流量を制御するMFC75Bとを備えている。
【0093】
一方、図5(b)に示す装置部分においては、プラズマを発生させるチャンバー本体51Bの内部に、被処理ウェハが載置される下部電極52Bが支持部53Bを介して設けられている。チャンバー本体51Bの上部には、下部電極52Bを囲むようにインナーチャンバー54Bが設けられている。インナーチャンバー54Bには、ウェハ搬送用ゲート55Bが設けられている。インナーチャンバー54Bを覆うようにアッパーチャンバー56B及び天板57Bが設けられている。チャンバー本体51Bの底部には排気口58Bが設けられており、当該排気口58Bに排気バルブ59Bを介して排気ポンプ60Bが取り付けられている。
【0094】
また、図5(b)に示す装置部分においては、天板57Bを貫通するようにガスインジェクター61Bが設けられている。ガスインジェクター61Bには、ガス供給部90A及びガス供給部90Bからそれぞれガス供給ライン93A及びガス供給ライン94Bを通じて酸素含有ガス(例えばHeで希釈されたO2 )が供給される。ここで、ガス供給部90Aからガス供給ライン93Aを通ってガスインジェクター61Bまで供給されたガスは、ガス供給口62Bから、チャンバー本体51B内に載置された被処理ウェハの中央部に向けて噴出される。また、ガス供給部70Bからガス供給ライン77Bを通ってガスインジェクター61Bまで供給されたガスは、ガス供給口63Bから、チャンバー本体51B内に載置された被処理ウェハの周縁部に向けて噴出される。
【0095】
ガス供給部90Aは、例えば、O2 /He混合ガスボンベ91Aと、O2 /He混合ガスボンベ91Aからガス供給ライン93Aに供給されるO2 /He混合ガスの流量を制御するMFC92Aとを備えている。
【0096】
ガス供給部90Bは、例えば、O2 /He混合ガスボンベ91Bと、O2 /He混合ガスボンベ91Bからガス供給ライン93Bに供給されるO2 /He混合ガスの流量を制御するMFC92Bとを備えている。
【0097】
以上のように、第3例のプラズマドーピング装置は、不純物含有ガスであるAsH3を一のチャンバー内に供給し、当該不純物含有ガスを用いてプラズマを発生させる構成部分(図5(a))と、酸素含有ガスであるO2 を他のチャンバー内に供給し、当該酸素含有ガスを用いてプラズマを発生させる構成部分(図5(b))とを有している。この第3例のプラズマドーピング装置を用いたプロセスフローについては後述する。
【0098】
尚、第3例のプラズマドーピング装置における図5(b)に示す装置部分において、プラズマ中における酸素濃度を測定するモニター部をさらに設けてもよい。このようにすると、プラズマ中の酸素濃度をモニターしながら、MFC92A及び92BによってO2 /He混合ガスの流量を適切に調節できるので、制御性良くプラズマドーピングを実施することができる。
【0099】
また、第3例のプラズマドーピング装置における図5(a)に示す装置部分と図5(b)に示す装置部分との間でのウェハ移動は、真空中又は不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。
【0100】
また、第1例〜第3例のプラズマドーピング装置において、不純物含有ガスとしてAsH3 、酸素含有ガスとしてO2 を用いる場合を例として装置構成について説明したが、使用するガスに応じて、装置構成(特にガス供給部)を適宜変更してよいことは言うまでもない。また、採用するプラズマ発生方式に応じて装置構成(特にチャンバー構成)を適宜変更してよいことも言うまでもない。
【0101】
[プロセスフローの変形例]
次に、前述の本実施形態のプラズマドーピングを含むプロセスフローの変形例について、図面を参照しながら説明する。
【0102】
図6(a)は、図1(a)〜(g)に示した本実施形態に係る半導体装置の製造方法を簡単に表したプロセスフローである。尚、ゲート電極形成工程やソースドレイン形成工程等については図示を省略している。
【0103】
図6(a)に示す本実施形態のプロセスフローの特徴は、エクステンション領域を形成するためのプラズマドーピング時に、不純物含有ガスと同時に微量の酸素含有ガスを用いることであった。これにより、不純物が付着したフィン型半導体領域側面を薄い酸化物層によって覆うことが可能となった。その結果、吸着性の悪い不純物が活性化熱処理等の際に外方拡散することを抑制でき、それによって、フィン型半導体領域側部に形成される不純物領域の抵抗を小さくすることができた。また、酸化物層形成に伴って半導体(具体的にはSi)結晶中の格子間Siが増大することによって、後工程の活性化熱処理時等において不純物の活性化が促進されて不純物領域の抵抗が低減するという効果も得られた。
【0104】
このような図6(a)に示す本実施形態のプロセスフローは、例えば、前述の図3又は図4に示すプラズマドーピング装置を用いて実施することができる。
【0105】
図6(b)は、第1変形例のプロセスフローを示している。尚、ゲート電極形成工程やソースドレイン形成工程等については図示を省略している。
【0106】
第1変形例のプロセスフローが本実施形態のプロセスフローと異なっている点は、図6(b)に示すように、エクステンション領域を形成する際に、酸素含有ガスを用いて、フィン型半導体領域に対して第1のプラズマドーピングを行った後、不純物含有ガスを用いて、フィン型半導体領域に対して第2のプラズマドーピングを行うことである。この場合も、フィン型半導体領域側面上に先に形成されている酸化物層を通過してフィン型半導体領域側面に付着した不純物について、本実施形態のプロセスフローと同様のメカニズムが働き、フィン型半導体領域側部に形成される不純物領域の抵抗を小さくすることができた。また、酸化物層形成に伴って半導体(具体的にはSi)結晶中の格子間Siが増大することによって、後工程の活性化熱処理時等において不純物の活性化が促進されて不純物領域の抵抗が低減するという効果も得られた。
【0107】
このような図6(b)に示す第1変形例のプロセスフローは、例えば、前述の図3又は図4に示すプラズマドーピング装置を用いて、チャンバー内に酸素含有ガスを供給して第1のプラズマを発生させた後、同じチャンバー内に不純物含有ガスを供給して第2のプラズマを発生させることによって、実施可能である。或いは、前述の図5(a)及び(b)に示すプラズマドーピング装置を用いて、図5(b)に示すチャンバー内に酸素含有ガスを供給して第1のプラズマを発生させた後、図5(a)に示すチャンバー内に不純物含有ガスを供給して第2のプラズマを発生させることによっても、実施可能である。
【0108】
図6(c)は、第2変形例のプロセスフローを示している。尚、ゲート電極形成工程やソースドレイン形成工程等については図示を省略している。
【0109】
第2変形例のプロセスフローが本実施形態のプロセスフローと異なっている点は、図6(c)に示すように、エクステンション領域を形成する際に、不純物含有ガスを用いて、フィン型半導体領域に対して第1のプラズマドーピングを行った後、酸素含有ガスを用いて、フィン型半導体領域に対して第2のプラズマドーピングを行うことである。この場合も、フィン型半導体領域側面に付着した不純物について、本実施形態のプロセスフローと同様のメカニズムが働き、フィン型半導体領域側部に形成される不純物領域の抵抗を小さくすることができた。また、酸化物層形成に伴って半導体(具体的にはSi)結晶中の格子間Siが増大することによって、後工程の活性化熱処理時等において不純物の活性化が促進されて不純物領域の抵抗が低減するという効果も得られた。
【0110】
このような図6(c)に示す第2変形例のプロセスフローは、例えば、前述の図3又は図4に示すプラズマドーピング装置を用いて、チャンバー内に不純物含有ガスを供給して第1のプラズマを発生させた後、同じチャンバー内に酸素含有ガスを供給して第2のプラズマを発生させることによって、実施可能である。或いは、前述の図5(a)及び(b)に示すプラズマドーピング装置を用いて、図5(a)に示すチャンバー内に不純物含有ガスを供給して第1のプラズマを発生させた後、図5(b)に示すチャンバー内に酸素含有ガスを供給して第2のプラズマを発生させることによっても、実施可能である。
【0111】
尚、以上の説明では、エクステンション領域形成工程を例として、プロセスフローの変形例について説明したが、ソースドレイン領域形成工程でも同様のプロセスフローの変形が可能であることは言うまでもない。
【0112】
[効果の詳細]
次に、前述の本実施形態による効果の詳細について、図面を参照しながら説明する。
【0113】
図7(a)は、図1(a)〜(g)に示した本実施形態に係る半導体装置の製造方法により得られたフィン型半導体装置を示す図であり、図7(b)は、当該フィン型半導体装置のフィン型半導体領域上部における拡がり抵抗と深さとの関係を示す図であり、図7(c)は、当該フィン型半導体装置のフィン型半導体領域側部における拡がり抵抗と水平距離との関係を示す図である。尚、図7(b)は、図7(a)に示す位置1〜4での深さと拡がり抵抗との関係を示しており、図7(c)は、図7(a)に示す位置5〜7での水平距離と拡がり抵抗との関係を示している。ここで、図7(b)における深さの基準(0)はフィン型半導体領域上面であり、図7(c)における水平距離の基準(0)は、図7(a)に示す領域の左端である。また、以下の説明では、特に断らない限り、拡がり抵抗についてはSSRM(2D Scanning Spreading Resistance Microscopy )分析法を、シート抵抗については四探針法をそれぞれ用いて測定を行ったものとする。
【0114】
図7(b)及び(c)に示すように、本実施形態に係る半導体装置の製造方法により得られたフィン型半導体装置においては、フィン型半導体領域側部に形成された不純物領域の拡がり抵抗を、フィン型半導体領域上部に形成された不純物領域の拡がり抵抗と同程度に低減することができている。具体的には、フィン型半導体領域側部の位置6での拡がり抵抗の最小値は9.09×103 Ω程度であり、後述する比較例(プラズマドーピング時の酸素添加無し)と比較して半分以下の大きさになっている。
【0115】
図8(a)は、複数のサンプルA〜Gについてプラズマドーピング条件を色々変えて不純物導入を行うことにより得られた、フィン型半導体領域上部でのシート抵抗及び拡がり抵抗のそれぞれの値を示し、図8(b)は、図8(a)に示すシート抵抗と拡がり抵抗との相関関係をグラフにして示したものである。ここで、図8(a)に示すシート抵抗及び拡がり抵抗は、プラズマドーピング実施後に活性化熱処理を行うことにより得られたものである。図8(b)に示すように、シート抵抗と拡がり抵抗との間には比例関係([シート抵抗y]=0.0217×[拡がり抵抗x]+279.86)が見られる。
【0116】
図8(c)は、本実施形態におけるフィン型半導体領域側部の拡がり抵抗を、図8(b)に示す相関関係を用いて、シート抵抗に換算したものである。すなわち、図8(c)に示すように、本実施形態におけるフィン型半導体領域側部の拡がり抵抗9.09×103 Ωは、シート抵抗477Ω/sq.に換算される。
【0117】
図8(d)は、本実施形態におけるフィン型半導体領域側部の位置6(図7(a)参照)での水平距離と拡がり抵抗との関係を、サンプルCにおけるフィン型半導体領域上部の位置1及び2(図7(a)参照)での深さと拡がり抵抗との関係と比較して示している。また、図8(e)は、本実施形態におけるフィン型半導体領域側部における位置6(図7(a)参照)での水平距離と拡がり抵抗との関係を、サンプルDにおけるフィン型半導体領域上部の位置1及び2(図7(a)参照)での深さと拡がり抵抗との関係と比較して示している。
【0118】
図8(d)及び(e)に示すように、本実施形態におけるフィン型半導体領域側部の拡がり抵抗は、サンプルC及びDにおけるフィン型半導体領域上部の拡がり抵抗と同程度の小ささである。また、サンプルC及びDにおけるフィン型半導体領域上部で拡がり抵抗の最小値の2倍までの抵抗を持つ領域の厚さが20nm程度であるのに対して、本実施形態におけるフィン型半導体領域側部で拡がり抵抗の最小値の2倍までの抵抗を持つ領域の厚さは同程度の23nm程度であり、図8(c)に示す、拡がり抵抗からシート抵抗への換算が妥当であることが分かる。
【0119】
(比較例)
以下、比較例に係る半導体装置の製造方法について、当該製造方法において用いるプラズマドーピング装置と共に、図面を参照しながら説明する。
【0120】
比較例に係る半導体装置の製造方法が、図1(a)〜(g)に示す前述の実施形態に係る半導体装置の製造方法と異なっている点は、エクステンション領域及びソースドレイン領域のそれぞれを形成するためのプラズマドーピング時に、酸素含有ガスを用いないことである。
【0121】
比較例によると、前述の実施形態と比較して、フィン型半導体領域側部に形成される不純物領域の抵抗が大きくなった。具体的には、フィン型半導体領域側部に形成される不純物領域の拡がり抵抗が2.25×104 Ω程度と前述の実施形態の2倍を超える値となった。
【0122】
図9は、比較例のプラズマドーピングに使用した装置の概略構成を示す図である。
【0123】
図9に示すように、プラズマを発生させるチャンバー本体151の内部には、被処理ウェハが載置される下部電極152が支持部153を介して設けられている。チャンバー本体151の上部には、下部電極152を囲むようにインナーチャンバー154が設けられている。インナーチャンバー154には、ウェハ搬送用ゲート155が設けられている。インナーチャンバー154を覆うようにアッパーチャンバー156及び天板157が設けられている。チャンバー本体151の底部には排気口158が設けられており、当該排気口158に排気バルブ159を介して排気ポンプ160が取り付けられている。
【0124】
天板157を貫通するようにガスインジェクター161が設けられている。ガスインジェクター161には、ガス供給部170A及びガス供給部170Bからそれぞれガス供給ライン177A及びガス供給ライン177Bを通じて不純物含有ガス(例えばHeで希釈されたAsH3 )が供給される。ここで、ガス供給部170Aからガス供給ライン177Aを通ってガスインジェクター161まで供給されたガスは、ガス供給口162から、チャンバー本体151内に載置された被処理ウェハの中央部に向けて噴出される。また、ガス供給部170Bからガス供給ライン177Bを通ってガスインジェクター161まで供給されたガスは、ガス供給口163から、チャンバー本体151内に載置された被処理ウェハの周縁部に向けて噴出される。
【0125】
ガス供給部170Aは、例えば、AsH3 /He混合ガスボンベ171Aと、Heガスボンベ172Aと、AsH3 /He混合ガスボンベ171Aからガス供給ライン177Aに供給されるAsH3 /He混合ガスの流量を制御するMFC174Aと、Heガスボンベ172Aからガス供給ライン177Aに供給されるHeガスの流量を制御するMFC175Aとを備えている。
【0126】
ガス供給部170Bは、例えば、AsH3 /He混合ガスボンベ171Bと、Heガスボンベ172Bと、AsH3 /He混合ガスボンベ171Bからガス供給ライン177Bに供給されるAsH3 /He混合ガスの流量を制御するMFC174Bと、Heガスボンベ172Bからガス供給ライン177Bに供給されるHeガスの流量を制御するMFC175Bとを備えている。
【0127】
すなわち、図9に示す比較例のプラズマドーピング装置においては、図3、図4又は図5(a)、(b)に示す前述の実施形態のプラズマドーピング装置のような酸素含有ガスの供給機構は設けられていない。
【0128】
図10(a)は、比較例に係る半導体装置の製造方法により得られたフィン型半導体装置を示す図であり、図10(b)は、当該フィン型半導体装置のフィン型半導体領域上部における拡がり抵抗と深さとの関係を示す図であり、図10(c)は、当該フィン型半導体装置のフィン型半導体領域側部における拡がり抵抗と水平距離との関係を示す図である。尚、図10(b)は、図10(a)に示す位置1〜4での深さと拡がり抵抗との関係を示しており、図10(c)は、図10(a)に示す位置5〜7での水平距離と拡がり抵抗との関係を示している。ここで、図10(b)における深さの基準(0)はフィン型半導体領域上面であり、図10(c)における水平距離の基準(0)は、図10(a)に示す領域の左端である。また、以下の説明では、特に断らない限り、拡がり抵抗についてはSSRM分析法を、シート抵抗については四探針法をそれぞれ用いて測定を行ったものとする。
【0129】
図10(b)及び(c)に示すように、比較例に係る半導体装置の製造方法により得られたフィン型半導体装置においては、フィン型半導体領域側部に形成された不純物領域の拡がり抵抗は、フィン型半導体領域上部に形成された不純物領域の拡がり抵抗と比較して、かなり高くなっている。具体的には、フィン型半導体領域側部の位置6での拡がり抵抗の最小値は2.25×104 Ω程度であり、前述の実施形態により得られた値9.09×103 Ωの2倍を超える値となっている。
【0130】
尚、比較例に係る半導体装置の製造方法により得られたフィン型半導体装置において、フィン型半導体領域上部に形成された不純物領域の拡がり抵抗は、前述の実施形態により得られた値(図7(b)参照)と同程度となっている。このことから、プラズマドーピング時における酸素添加による抵抗低減効果は、主としてフィン型半導体領域側部に生じることが分かる。これは、プラズマドーピングによるフィン型半導体領域上面に対する不純物の導入においては、バイアス電圧による注入イオンの影響が大きいため(図12(b)参照)、半導体表面に吸着した不純物に対する酸素添加による抵抗低減効果の影響が相対的に小さくなるためであると考えられる。
【0131】
図11(a)は、複数のサンプルA〜Gについてプラズマドーピング条件を色々変えて不純物導入を行うことにより得られた、フィン型半導体領域上部でのシート抵抗及び拡がり抵抗のそれぞれの値を示し、図11(b)は、図11(a)に示すシート抵抗と拡がり抵抗との相関関係をグラフにして示したものである。ここで、図11(a)に示すシート抵抗及び拡がり抵抗は、プラズマドーピング実施後に活性化熱処理を行うことにより得られたものである。図11(b)に示すように、シート抵抗と拡がり抵抗との間には比例関係([シート抵抗y]=0.0217×[拡がり抵抗x]+279.86)が見られる。
【0132】
図11(c)は、比較例におけるフィン型半導体領域側部の拡がり抵抗を、図11(b)に示す相関関係を用いて、シート抵抗に換算したものである。すなわち、図11(c)に示すように、比較例におけるフィン型半導体領域側部の拡がり抵抗2.25×104 Ωは、シート抵抗768Ω/sq.に換算される。
【0133】
図11(d)は、比較例におけるフィン型半導体領域側部の位置6(図10(a)参照)での水平距離と拡がり抵抗との関係を、サンプルEにおけるフィン型半導体領域上部の位置1及び2(図10(a)参照)での深さと拡がり抵抗との関係と比較して示している。また、図11(e)は、比較例におけるフィン型半導体領域側部における位置6(図10(a)参照)での水平距離と拡がり抵抗との関係を、サンプルFにおけるフィン型半導体領域上部の位置1及び2(図10(a)参照)での深さと拡がり抵抗との関係と比較して示している。
【0134】
図11(d)及び(e)に示すように、比較例におけるフィン型半導体領域側部の拡がり抵抗は、サンプルEにおけるフィン型半導体領域上部の拡がり抵抗よりも大きく、サンプルFにおけるフィン型半導体領域上部の拡がり抵抗よりも小さい。また、サンプルFにおけるフィン型半導体領域上部で拡がり抵抗の最小値の2倍までの抵抗を持つ領域の厚さが27nm程度であるのに対して、比較例におけるフィン型半導体領域側部で拡がり抵抗の最小値の2倍までの抵抗を持つ領域の厚さは同程度の28nm程度であり、図11(c)に示す、拡がり抵抗からシート抵抗への換算が妥当であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
以上に説明したように、本発明は、半導体装置の製造方法及びプラズマドーピング装置に関し、特に、基板上にフィン型半導体領域を有する3次元構造の半導体装置の製造に好適である。
【符号の説明】
【0136】
11 支持基板
12 絶縁層
13 フィン型半導体領域
14 ゲート絶縁膜
15A ポリシリコン膜
15 ゲート電極
16 絶縁性サイドウォールスペーサ
17 エクステンション領域
17a 第1のN型不純物領域
17b 第2のN型不純物領域
18 レジストパターン
19 レジストパターン
27 ソースドレイン領域
27a 第3のN型不純物領域
27b 第4のN型不純物領域
51、51A、51B、151 チャンバー本体
52、52A、52B、152 下部電極
53、53A、53B、153 支持部
54、54A、54B、154 インナーチャンバー
55、55A、55B、155 ウェハ搬送用ゲート
56、56A、56B、156 アッパーチャンバー
57、57A、57B、157 天板
58、58A、58B、158 排気口
59、59A、59B、159 排気バルブ
60、60A、60B、160 排気ポンプ
61、61A、61B、161 ガスインジェクター
62、62A、62B、63、63A、63B、64 ガス供給口
70A、70B、80、90A、90B ガス供給部
71A、71B AsH3 /He混合ガスボンベ
72A、72B Heガスボンベ
73A、73B、81、91A、91B O2 /He混合ガスボンベ
74A、74B、75A、75B、76A、76B、82、92A、92B MFC
77A、77B、83、93A、93B ガス供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にフィン型半導体領域を形成する工程(a)と、
不純物含有ガスと酸素含有ガスとを用いて、前記フィン型半導体領域に対してプラズマドーピングを行うことによって、前記フィン型半導体領域の少なくとも側部に不純物導入領域を形成する工程(b)とを備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(b)において、前記不純物含有ガスと前記酸素含有ガスとを混合した後、当該混合ガスを、前記基板が載置されたチャンバー内に供給して、前記混合ガスを用いてプラズマを発生させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(b)において、前記不純物含有ガスと前記酸素含有ガスとを別々に、前記基板が載置されたチャンバー内に供給して当該チャンバー内で混合した後、当該混合ガスを用いてプラズマを発生させることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(b)において、前記酸素含有ガスを用いて、前記フィン型半導体領域に対して第1のプラズマドーピングを行った後、前記不純物含有ガスを用いて、前記フィン型半導体領域に対して第2のプラズマドーピングを行うことによって、前記フィン型半導体領域の前記側部に前記不純物導入領域を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(b)において、前記不純物含有ガスを用いて、前記フィン型半導体領域に対して第1のプラズマドーピングを行うことによって、前記フィン型半導体領域の前記側部に前記不純物導入領域を形成した後、前記酸素含有ガスを用いて、前記フィン型半導体領域に対して第2のプラズマドーピングを行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1のプラズマドーピングと前記第2のプラズマドーピングとを同じチャンバー内で行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1のプラズマドーピングと前記第2のプラズマドーピングとを異なるチャンバー内で行うことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記不純物含有ガスはAsH3 であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記不純物含有ガスは希釈ガスによって希釈されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体装置の製造方法において、
前記希釈ガスはHeであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記酸素含有ガスは、O2 、H2 O、N2 O及びCO2 のうちの少なくとも1つであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記酸素含有ガスは希釈ガスによって希釈されていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の半導体装置の製造方法において、
前記希釈ガスはHeであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記不純物導入領域はエクステンション領域であり、
前記工程(a)と前記工程(b)との間に、前記不純物導入領域と隣接する部分の前記フィン型半導体領域を覆うようにゲート電極を形成する工程をさらに備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記不純物導入領域はソースドレイン領域であり、
前記工程(a)と前記工程(b)との間に、前記不純物導入領域から離間した部分の前記フィン型半導体領域を覆うようにゲート電極を形成する工程と、前記不純物導入領域と前記ゲート電極との間に位置する部分の前記フィン型半導体領域、及び前記ゲート電極の側面をそれぞれ覆うように絶縁性サイドウォールスペーサを形成する工程とをさらに備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記工程(b)よりも後に、前記不純物導入領域に対して活性化熱処理を行う工程をさらに備えていることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
半導体に不純物をプラズマドーピングによって導入するプラズマドーピング装置であって、
プラズマを発生させるチャンバーと、
前記チャンバー内に不純物含有ガス及び酸素含有ガスを供給するガス供給部とを備え、
前記ガス供給部は、前記酸素含有ガスの供給量を制御することを特徴とするプラズマドーピング装置。
【請求項18】
請求項17に記載のプラズマドーピング装置において、
前記ガス供給部は、前記不純物含有ガスと前記酸素含有ガスとを混合してから前記チャンバー内に供給することを特徴とするプラズマドーピング装置。
【請求項19】
請求項17に記載のプラズマドーピング装置において、
前記ガス供給部は、前記不純物含有ガスと前記酸素含有ガスとを別々に前記チャンバー内に供給し、
前記不純物含有ガスと前記酸素含有ガスとは前記チャンバー内で混合されることを特徴とするプラズマドーピング装置。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか1項に記載のプラズマドーピング装置において、
前記ガス供給部は、前記チャンバー内に載置された被処理体の中央部及び周縁部のそれぞれに対して別々に設けられていることを特徴とするプラズマドーピング装置。
【請求項21】
請求項17〜20のいずれか1項に記載のプラズマドーピング装置において、
前記プラズマ中における酸素濃度を測定するモニター部をさらに備えていることを特徴とするプラズマドーピング装置。
【請求項22】
請求項17〜21のいずれか1項に記載のプラズマドーピング装置において、
前記ガス供給部は、前記不純物含有ガスを希釈ガスによって希釈して供給することを特徴とするプラズマドーピング装置。
【請求項23】
請求項17〜22のいずれか1項に記載のプラズマドーピング装置において、
前記ガス供給部は、前記酸素含有ガスを希釈ガスによって希釈して供給することを特徴とするプラズマドーピング装置。
【請求項24】
半導体に不純物をプラズマドーピングによって導入するプラズマドーピング装置であって、
第1のプラズマを発生させる第1のチャンバーと、
第2のプラズマを発生させる第2のチャンバーと、
前記第1のチャンバー内に不純物含有ガスを供給する第1のガス供給部と、
前記第2のチャンバー内に酸素含有ガスを供給する第2のガス供給部とを備え、
前記第2のガス供給部は、前記酸素含有ガスの供給量を制御することを特徴とするプラズマドーピング装置。
【請求項25】
請求項24に記載のプラズマドーピング装置において、
前記第1のガス供給部は、前記第1のチャンバー内に載置された被処理体の中央部及び周縁部のそれぞれに対して別々に設けられていることを特徴とするプラズマドーピング装置。
【請求項26】
請求項24又は25に記載のプラズマドーピング装置において、
前記第2のガス供給部は、前記第2のチャンバー内に載置された被処理体の中央部及び周縁部のそれぞれに対して別々に設けられていることを特徴とするプラズマドーピング装置。
【請求項27】
請求項24〜26のいずれか1項に記載のプラズマドーピング装置において、
前記第2のプラズマ中における酸素濃度を測定するモニター部をさらに備えていることを特徴とするプラズマドーピング装置。
【請求項28】
請求項24〜27のいずれか1項に記載のプラズマドーピング装置において、
前記第1のガス供給部は、前記不純物含有ガスを希釈ガスによって希釈して供給することを特徴とするプラズマドーピング装置。
【請求項29】
請求項24〜28のいずれか1項に記載のプラズマドーピング装置において、
前記第2のガス供給部は、前記酸素含有ガスを希釈ガスによって希釈して供給することを特徴とするプラズマドーピング装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図9】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−51221(P2013−51221A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297063(P2009−297063)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】