説明

半導体装置の製造方法

【課題】ウエハを薬液により洗浄する際、配管ラインの一部が帯電している状態でウエハ処理を開始した場合に、薬液がウエハに吐出され、配管内の帯電部分とウエハ間の電位差によって薬液が導線となって電流が流れ、ウエハにダメージが生じることにより歩留まりが発生するのを防ぐ。
【解決手段】薬液を半導体ウエハ1に吐出して洗浄する際、半導体ウエハ1に薬液を吐出する前にノズル11を半導体ウエハ1外に移動し、半導体ウエハ1外で数秒薬液を吐出してから、半導体ウエハ1上にノズル11を移動し薬液を吐出することで、帯電による半導体ウエハ1上のパターンの損傷を防ぎ、半導体装置の製造歩留まりを向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、特に、半導体ウエハの薬液洗浄工程を含む半導体装置の製造に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、単にウエハという)の洗浄方法として、例えばウエハを回転しながら薬液を吐出して洗浄を行い、さらに純水で洗浄した後に乾燥させる枚葉式洗浄装置方法がある。薬液としては、例えばSPM(Sulfuric acid and hydrogen peroxide mixture:硫酸と過酸化水素水の混合物)、APM(Ammonia and hydrogen peroxide mixture:アンモニア水と過酸化水素水と水の混合物)などが使用される。
【0003】
特開2007−234815号公報(特許文献1)には、リンス処理時に希塩酸を吐出してウエハの帯電を防止する基板処理技術が開示されている。
【0004】
特開2007−227628号公報(特許文献2)には、ウエハ裏面に導電性薬液を吐出してウエハの帯電を防止するウェット処理技術が開示されている。
【0005】
特開2007−214347号公報(特許文献3)には、ウエハ表面に蒸気を吐出してウエハの帯電を防止する電子デバイスの洗浄技術が開示されている。
【0006】
特開2007−134673号公報(特許文献4)には、ウエハ上に比抵抗の低い液体から順番に吐出しウエハの帯電によるダメージを防ぐ基板の処理技術が開示されている。
【0007】
特開2004−179276号公報(特許文献5)には、イオン化源によりウエハの帯電を防止するウェット処理技術が開示されている。
【0008】
特開2007−221026号公報(特許文献6)には、ウエハの外周部から薬液の処理を開始しウエハの帯電によるダメージを防ぐ基板の洗浄技術が開示されている。
【0009】
特開2006−269677号公報(特許文献7)には、洗浄装置内の薬液流通経路に炭素電極によりアースを設置し帯電を防止する基板の処理技術が開示されている。
【0010】
特開2007−317792号公報(特許文献8)には、ノズルの先に誘導電極を設置し、ウエハの帯電によるダメージを防ぐ基板の処理技術が開示されている。
【特許文献1】特開2007−234815号公報
【特許文献2】特開2007−227628号公報
【特許文献3】特開2007−214347号公報
【特許文献4】特開2007−134673号公報
【特許文献5】特開2004−179276号公報
【特許文献6】特開2007−221026号公報
【特許文献7】特開2006−269677号公報
【特許文献8】特開2007−317792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の方法でウエハを洗浄した場合、洗浄後のウエハ表面において、異常放電の痕跡が見られることがある。本発明の発明者らによる調査の結果、この異常放電は洗浄プロセスで発生していることが判明した。ウエハ表面の異常放電の痕跡は、SPMおよびAPMのどちらの薬液による洗浄においても発見され、調査の結果、異常放電は薬液流通経路の帯電が原因であることが判明した。特に、枚葉式洗浄装置によるSPMでの洗浄における異常放電は、ウエハのパターンの構造差により異常放電が発生しやすくなることがあることが報告されている。
【0012】
これは、ウエハを薬液により洗浄する際、配管ラインの一部が帯電している状態でウエハ処理を開始した場合に、循環ラインの先のバルブが開き、薬液がウエハに吐出され、配管内の帯電部分とウエハ間の電位差によって薬液が導線となって電流が流れ、ウエハにダメージが生じることが原因であり、それにより歩留まりが発生してしまう。
【0013】
従来の帯電対策の技術はウエハが帯電しているのが前提であり、特許文献1ないし特許文献6のように、ウエハの帯電を除去するための方法の発明がほとんどである。特許文献7、8についても実際の効果は不明である。
【0014】
薬液の流通経路の一部の部材が帯電している場合に、異常放電防止技術で効果があると思われるのは特許文献7、8のみであるが、評価の結果、特許文献7による効果はなかった。このため、薬液が帯電しているのではないと考えられる。また特許文献8のようにノズルの先に電極を設置する方法もあるが、純水を前提としており、実際に薬液の場合は、特にSPMは高温であるためこの方法は使えない。またノズル材質を導電性のものを使用しそれにアースを設置する方法も考えられるが、SPMは130℃以上と高温な酸であるため適した材料が見当たらなかった。
【0015】
以上のように、高温の強酸の場合、薬液流通経路の一部の部材が帯電している場合の有効な解決手段は、過去の文献にはない。
【0016】
本発明の目的は、ウエハを薬液により洗浄する際、帯電した電気が放電することによるウエハ上のパターンの損傷を防ぎ、半導体装置の製造歩留まりを向上させることができる技術を提供することにある。
【0017】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態の概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0019】
本発明の一実施の形態による半導体装置の製造方法は、
(a)主面に半導体素子の形成された半導体ウエハを枚葉式洗浄装置のチャンバー内に設置する工程、
(b)配管ラインに接続されたノズルを通じて薬液を前記半導体ウエハに吐出して前記半導体ウエハを洗浄する工程、
(c)前記(b)工程の後、前記半導体ウエハを水洗する工程、
(d)前記(c)工程の後、前記半導体ウエハを乾燥させる工程、
を含む半導体装置の製造方法であって、
前記(a)工程の後、前記(b)工程の前に、前記ノズルを前記半導体ウエハ外に移動させ、前記半導体ウエハ外で前記薬液を放出するものである。
【発明の効果】
【0020】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの一実施の形態によって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0021】
ウエハの洗浄工程において、薬液をウエハに吐出する場合、ウエハに薬液を吐出する前にノズルをウエハ外に移動し、ウエハ外で薬液を吐出してからウエハ上にノズルを移動して薬液を吐出することで、帯電によるウエハ上のパターンの損傷を防ぎ、半導体装置の製造歩留まりを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0023】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。
【0024】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、実施例等において構成要素等について、「Aからなる」、「Aよりなる」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。
【0025】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0026】
また、材料等について言及するときは、特にそうでない旨明記したとき、または、原理的または状況的にそうでないときを除き、特定した材料は主要な材料であって、副次的要素、添加物、付加要素等を排除するものではない。たとえば、シリコン部材は特に明示した場合等を除き、純粋なシリコンの場合だけでなく、添加不純物、シリコンを主要な要素とする2元、3元等の合金(たとえばSiGe)等を含むものとする。
【0027】
また、以下の実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
また、以下の実施の形態で用いる図面においては、平面図であっても図面を見易くするために部分的にハッチングを付す場合がある。
【0029】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態は、ウエハの洗浄方法に適用したものであり、その工程を図1、図2を用いて説明する。
【0030】
まず、図1に枚葉式洗浄装置の模式図を示す。枚葉式洗浄装置は主に処理チャンバー16、配管ライン12および循環ライン13で構成されている。処理チャンバー16内には、ウエハ1を設置する処理カップとノズル待機ポッド10があり、それらの上方には横方向に移動可能な、薬液を吐出するノズル11がある。また、回収ライン7を含む循環ライン13は、ポンプ2、フィルター3、ヒーター4、薬液タンク8を有している。
【0031】
ウエハ1を洗浄処理しない場合の動作としては、薬液は薬液タンク8からポンプ2、フィルター3、ヒーター4などを通り、流量計9の手前のバルブ6が閉じているため回収ライン7から薬液タンク8に戻って循環さる。これは、薬液の異物、温度管理を行なうためである。ウエハ1を処理する場合には、バルブ6が開き、流量計9およびノズル11を通って処理チャンバー16内のウエハ1上に薬液が吐出される。ウエハ1に吐出された薬液は処理カップ14に流れ、その後廃液として排水バッファータンク15から排水される。
【0032】
なお、薬液が酸、アルカリの場合、薬液の流通経路はほとんどにフッ素樹脂が使われているが、フッ素樹脂は特にマイナスに帯電しやすい部材である。薬液との摩擦により必ずどこかの部分がマイナスに帯電されている。どこが帯電しているかは配管ライン12内部、ポンプ2内部、フィルター3内部などのため測定することは難しい。
【0033】
ここで、この配管ライン12の一部などが帯電している状態でウエハ1の処理が開始されると、循環ライン13の先のバルブ6が開き薬液がウエハ1に吐出されるが、配管ライン12内の帯電部分とウエハ1間の電位差によって薬液が導線となり、電流が流れて異常放電が起こるため、ウエハ1にダメージが発生する。
【0034】
これに対し、ウエハ1に薬液を吐出する前にウエハ1外のノズル待機ポッド10の位置で数秒薬液を吐出すると、これにより配管ライン12の帯電部分がノズル待機ポッド10の位置で放電し、帯電が緩和される。この後すぐにウエハ1にノズル11を移動し、薬液を吐出しても、すでに帯電が緩和されているため、ウエハ1上では放電しない。このようにしてウエハ1への異常放電によるダメージを防止することができ、半導体装置の製造歩留まりが向上する。
【0035】
ノズル待機ポッド10の位置において、アース電極を設置したほうがいいと思われたが、評価ではアース電極を設置しなくても、ウエハ1上の異常放電が防止できた。これは、ノズル待機ポッド10の排水ラインが常に濡れており、アースされているものと推測される。
【0036】
本実施の形態の薬液吐出シーケンスとしては、ウエハ1外で薬液吐出(3秒)→ウエハ1上で薬液吐出(15秒)→吐出停止、待機(45秒)→水洗→乾燥、という順序で洗浄作業を進め、ウエハ1を洗浄する。ただし、ウエハ1上での薬液吐出と吐出停止とを数回繰り返してから水洗、乾燥を行う場合があるが、その場合はウエハ1上で薬液を吐出する前に毎回ウエハ1外で薬液吐出を行う。すなわち、薬液吐出を三回行うシーケンスとしては、ウエハ1外で薬液吐出(3秒)→ウエハ1上で薬液吐出(15秒)→吐出停止、待機(42秒)→ウエハ1外で薬液吐出(3秒)→ウエハ1上で薬液吐出(15秒)→吐出停止、待機(42秒)→ウエハ1外で薬液吐出(3秒)→ウエハ1上で薬液吐出(15秒)→吐出停止、待機(45秒)→水洗→乾燥、となる。
【0037】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0038】
例えば、ノズル20の部分に導電性材料21を使用して、その部分にアース22を設置する方法もある(図2)。従来の技術では薬液をウエハに吐出しようとしたときに、薬液が導線となって配管ラインの帯電部から電荷が流れるが、この方法では、フィルター23などに帯電した電荷がウエハ24に到達する前にアース22に電荷が流れるため、ウエハ24に異常放電が発生しない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の半導体装置の製造方法は、半導体ウエハまたはガラス基板等のあらゆる洗浄工程に幅広く利用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施の形態で使用する枚葉式ウエハ洗浄装置の模式図である。
【図2】ノズルに導電性材料を取り付けアースする場合の枚葉式洗浄装置の要部の模式図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ウエハ
2 ポンプ
3 フィルター
4 ヒーター
6 バルブ
7 回収ライン
8 薬液タンク
9 流量計
10 ノズル待機ポッド
11 ノズル
12 配管ライン
13 循環ライン
14 処理カップ
15 排水バッファータンク
16 処理チャンバー
20 ノズル
21 導電性材料
22 アース
23 フィルター
24 ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)主面に半導体素子の形成された半導体ウエハを枚葉式洗浄装置のチャンバー内に設置する工程、
(b)配管ラインに接続されたノズルを通じて薬液を前記半導体ウエハに吐出して前記半導体ウエハを洗浄する工程、
(c)前記(b)工程の後、前記半導体ウエハを水洗する工程、
(d)前記(c)工程の後、前記半導体ウエハを乾燥させる工程、
を含む半導体装置の製造方法であって、
前記(a)工程の後、前記(b)工程の前に、前記ノズルを前記半導体ウエハ外に移動させ、前記半導体ウエハ外で前記薬液を放出することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−87326(P2010−87326A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256015(P2008−256015)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】