説明

半導体装置の製造方法

【課題】切削又は研削加工を用いつつ、低コストで金属電極を形成することができる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板12の主面12aに下地電極14を形成する工程と、下地電極を覆う保護膜16を形成するとともに、該保護膜に下地電極を露出させる開口部16aを形成する工程と、保護膜及び開口部から臨む下地電極の表面を覆うように第1金属膜22を形成する工程と、第1金属膜が形成された半導体基板を、裏面12bを搭載面として吸着ステージ30に吸着固定した状態で、吸着ステージと平行に設定された基準面上P1に位置する保護膜の部分及び第1金属膜の部分を、切削により除去して、第1金属膜をパターニングする工程と、パターニング工程後、裏面から半導体基板を研削し、半導体基板の厚さを所定厚さまで薄くする工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下地電極上に形成された外部接続用の金属電極を有する半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板に構成される素子として、半導体基板の厚さ方向に電流が流れる縦型素子、換言すれば、電流の流れる一対の電極が半導体基板の主面と該主面の裏面に分けて配置された両面電極素子、を備える半導体装置が知られている。このような半導体装置では、半導体基板を裏面から研削し、所定の厚さまで薄くすることで、縦型素子の低オン抵抗化を図るのが一般的である。
【0003】
一方、特許文献1に記載のように、パターニングにホトリソグラフィー工程を用いずに、外部接続用の金属電極を形成する技術が示されている。特許文献1では、半導体基板の主面上に下地電極を形成し、下地電極の上に保護膜を形成し、保護膜に開口部を形成するとともに、開口部から臨む下地電極の表面上に、金属電極を形成してなる半導体装置において、切削又は研削加工により、保護膜上の金属膜の部分を、保護膜の一部とともに除去することで、金属電極を形成している。
【0004】
ところが、半導体基板の裏面研削後に、切削又は研削加工を用いて金属電極を形成すると、以下の問題が生じる。この問題を、図7及び図8を用いて説明する。なお、図7及び図8では、後述の[発明を実施するための形態]中で示す構成要素と同一乃至関連する要素について、同一の符号を付与している。
【0005】
先ず図7(a)に示すように、半導体基板12の主面12a上に、例えばアルミニウム系材料を用いて下地電極14を形成する。次いで、下地電極14を覆うように主面12a全面に、例えばポリイミドからなる保護膜16を形成するとともに、保護膜16における金属電極の形成位置に開口部16aを形成する。これにより、下地電極14が開口部16aの底をなす。
【0006】
このように下地電極14及び保護膜16を形成した後、半導体基板12を裏面12bから研削する裏面研削を行う。裏面研削は、半導体基板12の主面12a側に、保護テープ32を貼り付けた状態で行う。保護テープ32は、平板状のベース樹脂層32aと該ベース樹脂層32aの一面に設けられた糊層32bを有する。この裏面研削では、砥石38により半導体基板12を削るときの圧力で、半導体基板12の主面12a側の凹凸のうち、凹部が保護テープ32の糊層32bに食い込み、主面凹凸が半導体基板12の裏面12bに転写される。具体的には、半導体基板12の主面12a側が平坦となるように、保護膜16の上面16bに対して凹んだ位置にある、例えば開口部16a内に位置する下地電極14の部分が、図7(c)に示すように、糊層32bに食い込む。したがって、裏面研削後において、半導体基板12の厚さは場所によって異なり、図7(d)に示すように、保護テープ32を剥がした状態で、主面12a側において、半導体基板12の主面12aからの高さが高い部分ほど、半導体基板12の厚さが薄く、高さの低い部分ほど、厚さが厚くなる。なお、図7(c)に示す符号P2は、研削の基準面である。
【0007】
そして、裏面研削後に、金属電極18を形成する。先ず図8(a)に示すように、開口部16aから臨む下地電極14及び保護膜16を覆うように、半導体基板12の主面12a上に金属膜40を形成する。次いで、開口部16a内に金属電極18が形成されるように、金属膜40を切削又は研削加工によりパターニングする。このパターニングでは、保護膜16上の金属膜40の部分を、保護膜16の一部(上部)とともに除去する。このとき、図8(b)に示すように、裏面12bを搭載面として半導体基板12を吸着ステージ30に吸着固定すると、裏面12bが吸着ステージ30に沿って平坦となる反面、裏面12bの凹凸が主面12a側に転写される。このため、金属膜40をパターニングするための基準面P1を、保護膜16上の金属膜40の部分を除去しつつ開口部16a内に金属膜40を残すように設定するのが困難である。換言すれば、切削又は研削の切り込み量の余裕がなくなる。なお、図8(c)では、バイト28を用い、基準面P1にて切削加工する例を示している。開口部16a内において、その殆どで下地電極14が露出し、下地電極14の周囲に、金属膜40をパターニングしてなる金属電極18が僅かに存在している。
【0008】
これに対し、特許文献2では、裏面研削工程で、半導体基板主面の凹凸が裏面に転写されるのを抑制するため、半導体基板の主面上に、フォトレジスト、ポリイミド、若しくはシリコンゴムからなる層間膜を形成し、該層間膜上に保護テープを形成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−186304号公報
【特許文献2】特開平5−109679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に記載の方法を用いると、半導体基板の主面凹凸の転写を防ぐために、例えばフォトレジストを形成し、裏面研削工程後にフォトレジストを除去しなければならない。このように、半導体装置として不要な部材を半導体基板上に形成するとともに、後に除去しなければならず、コストが増大してしまう。
【0011】
本発明は上記問題点に鑑み、切削又は研削加工を用いつつ、低コストで金属電極を形成することができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の半導体装置の製造方法は、
半導体基板の主面に、該半導体基板に構成された素子と電気的に接続される下地電極を形成する下地電極形成工程と、
下地電極を覆う保護膜を形成するとともに、該保護膜に下地電極を露出させる開口部を形成する保護膜形成工程と、
保護膜及び開口部から臨む下地電極の表面を覆うように第1金属膜を形成する第1金属膜形成工程と、
第1金属膜が形成された半導体基板を、主面と反対の裏面を搭載面として、吸着ステージに吸着固定した状態で、吸着ステージと平行に設定された基準面上に位置する保護膜の部分及び第1金属膜の部分を、切削又は研削により除去して、第1金属膜をパターニングするパターニング工程と、
パターニング工程後、裏面から半導体基板を研削し、半導体基板の厚さを所定厚さまで薄くする裏面研削工程と、を備え、
下地電極に接触して配置される外部接続用の金属電極を形成する工程として、少なくとも第1金属膜形成工程及びパターニング工程を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明では、第1金属膜を形成した後、裏面研削により半導体基板を薄くする前に、切削又は研削加工により、第1金属膜のパターニングを実施する。このように、半導体基板が厚い状態で、切削又は研削加工による第1金属膜のパターニングを実施するため、従来に較べて切削又は研削の切り込み量に余裕がある。換言すれば、切削又は研削の基準面と開口部に位置する下地電極の表面との間に所定の隙間がある。したがって、切削又は研削を用いて、第1金属膜、ひいては金属電極を精度よく形成することができる。
【0014】
また、従来のように、フォトレジストなどの層間膜を必要としないため、製造コストを低減することができる。
【0015】
請求項2に記載のように、
金属電極を形成する工程として、第1金属膜を構成する金属よりもはんだに対する濡れ性が良好な貴金属からなる第2金属膜を、開口部から臨む下地電極の表面を覆う第1金属膜の部分に形成する第2金属膜形成工程を含み、
裏面研削工程では、厚さを薄くした半導体基板の裏面に、貴金属による半導体基板の汚染を抑制するための裏面バリア層を含んで裏面電極を形成し、
第2金属膜形成工程は、裏面研削工程後に、開口部内に位置する第1金属膜に対応して開口部を有するマスクを用いたスパッタにより行うと良い。
【0016】
これによれば、金属電極が第1金属膜のみからなる構成に較べて、金属電極とはんだとの濡れ性を向上し、はんだ接続信頼性を向上することができる。
【0017】
その反面、第2金属膜を構成するAuなどの貴金属は、第1金属膜を構成する金属(合金含む)よりも半導体基板への拡散が早い。したがって、第1金属膜上に第2金属膜を積層して金属電極を形成する構成において、第2金属膜の形成後に裏面研削を実施すると、第2金属膜により半導体基板が汚染され、素子の特性に影響を及ぼすこととなる。これに対し、本発明では、裏面研削工程において、半導体基板の厚さを薄くした後に、裏面バリア層を含む裏面電極を形成し、裏面研削工程後に、第2金属膜をマスクスパッタにより形成する。このように、第1金属膜の形成及びパターニングは、半導体基板が厚い状態で行い、汚染の虞のある第2金属膜の形成は、半導体基板を薄くして裏面バリア層(裏面電極)を形成した後に行うと、切り込み量に余裕をもたせつつ、Auなどの貴金属が素子に悪影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0018】
請求項3に記載のように、
第1金属膜が、その表面に、不動態を形成できる金属又は該金属を含む合金からなる金属層を有する場合には、
パターニング工程後であって裏面研削工程の前に、第1金属膜の表面に、不動態膜として不動態を形成できる金属の酸化膜を形成する不動態膜形成工程を備え、
第2金属膜形成工程では、不動態膜を除去し、その後に第2金属膜を第1金属膜上に成膜することが好ましい。
【0019】
第1金属膜の表面に、該金属膜を構成する金属の水酸化物膜が形成されると、大気下(酸素の存在下)において水酸化物膜が成長し、これにより第1金属膜の厚さが薄くなる。このため、放熱性の低下など、金属電極が所望の特性を果たせなくなる。このような水酸化物膜は、高温多湿環境で形成される。そこで、本発明では、パターニング工程後から第2金属膜を形成するまでの間、すなわち裏面研削工程において、第1金属膜の表面に水酸化物膜が形成されるのを防ぐべく、裏面研削工程の前に、不動態膜である酸化膜を形成する。酸化膜は、水酸化物膜のように成長することはない。したがって、金属電極に要求される特性を確保することができる。また、第2金属膜形成工程では、先ず不動態膜を除去し、その後、第2金属膜を第1金属膜上に成膜するため、第1金属膜上に第2金属膜を積層してなる金属電極を形成することができる。
【0020】
請求項4に記載のように、
第1金属膜は、その表面に、金属層としてNi又はNi合金層を有し、Ni又はNi合金層の単層構造、又は、Ni又はNi合金層と下地電極との間に表面バリア層を有する2層構造をなす構成を採用することができる。
【0021】
なお、本発明の第1金属膜によれば、不動態膜であるNiOを形成することができる。
【0022】
また、請求項5に記載のように、
金属電極を形成する工程として、はんだからなる第2金属膜を、開口部から臨む下地電極の表面を覆う第1金属膜の部分に形成する第2金属膜形成工程を含み、
第2金属膜形成工程は、裏面研削工程後に、開口部内に位置する第1金属膜に対応して開口部を有するマスクを用いたスパッタにより行っても良い。
【0023】
これによれば、第1金属膜上に第2金属膜を積層してなる金属電極のうちの第2金属膜、すなわち金属電極の一部を用いて、半導体装置を他の部材と接合することができる。
【0024】
請求項6に記載のように、
第1金属膜が、その表面に、不動態を形成できる金属又は該金属を含む合金からなる金属層を有する場合には、
パターニング工程後であって裏面研削工程の前に、第1金属膜の表面に、不動態膜として不動態を形成できる金属の酸化膜を形成する不動態膜形成工程を備えることが好ましい。
【0025】
本発明の作用効果は、請求項3に記載の発明の作用効果と同じであるので、その記載を省略する。なお、本発明では、リフロー時に、加圧しつつ加熱することで、第2金属膜を構成するはんだを溶融させるとともに半導体装置を他部材と接合する。このとき、第2金属膜を構成するはんだが、不動態である酸化膜を突き破り、第1金属膜に拡散する。したがって、酸化膜を除去しなくとも良い。
【0026】
請求項7に記載の発明の作用効果は、請求項4に記載の発明の作用効果と同じであるため、その記載を省略する。
【0027】
また、請求項8に記載のように、
金属電極は、ボンディングワイヤが接続される電極であり、
第1金属膜は、その表面に、不動態を形成できる金属又は該金属を含む合金からなる金属層を有する場合には、
パターニング工程後であって裏面研削工程の前に、第1金属膜の表面に、不動態膜として不動態を形成できる金属の酸化膜を形成する不動態膜形成工程を備えることが好ましい。
【0028】
本発明の作用効果は、請求項3に記載の発明の作用効果と同じであるので、その記載を省略する。なお、本発明では、ボンディングワイヤを金属電極に接続する際に、ボンディングワイヤが、不動態である酸化膜を突き破り、第1金属膜に到達する。したがって、酸化膜を除去しなくとも良い。
【0029】
請求項9に記載の発明の作用効果は、請求項4に記載の発明の作用効果と同じであるため、その記載を省略する。
【0030】
請求項10に記載のように、
裏面研削工程後、半導体基板をチップ単位にダイシングするダイシング工程を備えても良い。
【0031】
このように、上記した半導体基板は、ウエハ状態の半導体基板でも良い。なお、半導体基板としては、ウエハ状態に限定される、ダイシング後のチップ状態の半導体基板を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る製造方法により形成された半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】半導体装置を形成する工程のうち、(a)は下地電極及び保護膜形成工程、(b)は第1金属膜形成工程、(c)はパターニング工程を示す断面図である。
【図3】半導体装置を形成する工程のうち、(a)は不動態膜形成工程、(b)は裏面研削工程、(c)は裏面電極形成工程、(d)第2金属膜としての貴金属膜の形成工程を示す断面図である。
【図4】パターニング工程を示す断面図であり、(a)本実施形態のように半導体基板が厚い状態、(b)は比較例としての半導体基板が薄い状態を示す。
【図5】第2実施形態に係る製造方法により形成された半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【図6】第3実施形態に係る製造方法により形成された半導体装置の概略構成を示す断面図である。
【図7】半導体装置を形成する従来の工程のうち、(a)は下地電極及び保護膜形成工程、(b)〜(d)は裏面研削工程を示す断面図である。(b)は保護テープを張り付けた状態(研削前)、(c)は砥石による裏面研削中の状態、(d)は裏面研削が終了し、保護テープを剥がした状態を示している。
【図8】半導体装置を形成する従来の工程のうち、(a)は金属膜形成工程、(b),(c)はパターニング工程を示す断面図である。(b)は吸着ステージに半導体基板を吸着させた状態、(c)はバイトにより切削した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、以下に示す各図において、共通乃至関連する要素には同一の符号を付与するものとする。また、半導体基板の厚さ方向を単に厚さ方向と示し、該厚さ方向に垂直な方向を単に垂直方向と示す。
【0034】
(第1実施形態)
図1に示すように、半導体装置10は、シリコン等からなり、素子が構成された半導体基板12と、素子の電極であり、半導体基板12の主面12aに形成された下地電極14と、絶縁材料からなり、主面12aと下地電極14の一部とを覆う保護膜16と、保護膜16に形成された開口部16aを介して下地電極14と接続された金属電極18と、半導体基板12の主面12aと反対の裏面12bに形成された裏面電極20を備える。
【0035】
半導体基板12に構成される素子(半導体素子)としては、特に限定されるものではない。本実施形態では、単結晶シリコンからなる厚さ50μm〜200μm程度の半導体基板12に対し、厚み方向に電流が流れる縦型トランジスタ素子としてのIGBTが構成されている。なお、縦型トランジスタ素子としては、IGBT以外にも、縦型のMOSFETがある。これらゲートを有する縦型トランジスタ素子は、例えば負荷を駆動するためのインバータを構成するパワーデバイスとして用いられる。また、このような半導体基板12を備える半導体装置10は、所謂パワーカードなどに用いられる。
【0036】
下地電極14は、半導体基板12に構成された素子と電気的に接続される電極のうち、素子と直接的に接続される部分である。本実施形態では、シリコンからなる半導体基板12に対し、純Alや、Al−Si,Al−Si−CuなどのAl合金といったAl系材料を用い、5μm程度の厚さを有して形成されている。また、半導体基板12に構成されたIGBTのエミッタやゲートと接続されている。なお、図1に示す下地電極14は全てエミッタと接続されたものである。以下においても、エミッタと接続されたもののみを例示する。
【0037】
保護膜16は、半導体基板12に形成された素子や配線を保護するためのものであり、ポリイミド等の有機樹脂膜、及び、SiNやSiOなどの無機膜のいずれかを用いて形成されている。なお、単層構造、多層構造のいずれを採用することもできる。この保護膜16には、下地電極14を露出させる開口部16aが形成されている。保護膜16は、下地電極14の周縁部を全周にわたって被覆しており、保護膜16の上面16bに対して、開口部16aから臨む下地電極14の上面14aが引っ込むように段差が形成されている。本実施形態では、保護膜16として、厚さ10μm〜20μm程度のポリイミド系樹脂を採用している。
【0038】
金属電極18は、素子と電気的に接続される電極のうち、はんだやボンディングワイヤなどの部材により、他の部材と接続される部分である。本実施形態では、金属電極18が、垂直方向において開口部16a内のみに形成されており、開口部16a内に位置する下地電極14の上面14aと、開口部16aを構成する保護膜16の側壁とを覆って形成されている。また、金属電極18が、下地電極14側から、第1金属膜22、第2金属膜としての貴金属膜24、の順に積層して形成されている。
【0039】
第1金属膜22としては、下地電極14及び貴金属膜24(第2金属膜)のそれぞれと良好な接合を形成できる構成を採用することができる。本実施形態では、下地電極14側から、Ti層、Ni層の順に積層して第1金属膜22を採用している.この第1金属膜22は、0.5μm〜5μm程度の厚さを有している。
【0040】
Ti層は、下地電極14を構成するAlと、第1金属膜22を構成するNi膜との両方と、良好な接合を形成する。このTi層は、はんだ接合する際に、はんだ中の例えばSnが下地電極14を構成するアルミニウムへ拡散するのをブロックする表面バリア層としての機能も果たす。なお、表面バリア層として、Ti層に代えて、Cr、Vなど周知のバリアメタルからなる層を採用することができる。ただし、Ti層を用いると、Tiが下地電極14表面の酸化膜(Alの酸化膜)を還元し、自らを酸化することによって良好な界面が形成されるため、上記酸化膜の除去工程を不要とすることができる。
【0041】
一方、Ni層は、純Ni、又は、Ni合金(例えばNiV)からなる。このNiは、周知のごとく、その表面に不動態である酸化膜(NiO)を形成することが金属である。このNi層も、Ti層同様、はんだ接合する際に、はんだ中の例えばSnが下地電極14を構成するアルミニウムへ拡散するのをブロックする機能を果たす。本実施形態では、Ni層が純Niからなる。
【0042】
第2金属膜としての貴金属膜24は、金属電極18のはんだ濡れ性を向上するための膜であり、第1金属膜22、より詳しくは第1金属膜22を構成する上層(Ni層)よりも、はんだの濡れ性が良好な膜である。この貴金属膜24を形成する材料としては、Au、Ag、Pt、Pdなどがある。本実施形態では、貴金属膜24がAuからなり、0.05μm〜0.2μm程度の厚さを有している。このように、金属電極18は、Ti/Ni/Auの多層膜構造となっている。
【0043】
裏面電極20は、半導体基板12に構成された素子と電気的に接続される電極である。本実施形態では、半導体基板12に構成されたIGBTのコレクタと接続されたコレクタ電極となっている。また、半導体基板12の裏面12b側から、Al/Ti/Ni/Auの順に積層された多層膜構造となっている。すなわち、主面12a側に形成された下地電極14と金属電極18を合わせた構造となっている。
【0044】
なお、図1に示す半導体装置10において、半導体基板12は、ウエハをダイシングしてなるチップ状態となっており、垂直方向において保護膜16よりも外側の外周部分が、半導体基板12の主面12a上に、下地電極14及び保護膜16の位置しないスクライブ領域(スクライブライン)となっている。このスクライブ領域には、第1金属膜22の残渣22cが形成されており、この残渣22cの表面には、不動態膜26が形成されている。なお、残渣22cは、主面12a側からTi/Niの多層膜構造をなしており、不動態膜26はNiの酸化膜(NiO)である。これら残渣22c及び不動態膜26は、保護膜16により、下地電極14及び金属電極18と分離されている。
【0045】
次に、半導体装置10の製造方法のうち、特に金属電極18の形成方法について説明する。
【0046】
まず、図示しない素子が構成された半導体基板12を準備する。本実施形態では、ウエハ状態の半導体基板12に対し、その主面12a表層に、IGBTの主面12a側の部分(エミッタ、ゲートなど)を形成しておく。
【0047】
次いで、例えばスパッタ法により、図2(a)に示すように、半導体基板12の主面12a全面にAl−Si膜を成膜し、このAl−Si膜をホトリソグラフィー法によりパターニングして下地電極14を形成する。
【0048】
下地電極14の形成後、例えばスピンコート法により、下地電極14を覆うように、半導体基板12の主面12a全面にポリイミド系樹脂からなる厚さ10μmの保護膜16を形成する。そして、ホトリソグラフィー法により、下地電極14の一部を露出させるべく、保護膜16の所定部位に開口部16aを形成する。このように、保護膜16として樹脂系材料を用いることにより、厚さがある下地電極14を適切に覆うことができる。また、開口部16aが形成された状態で、厚さ方向において、保護膜16の上面16bのほうが、開口部16aから臨む下地電極14の上面14aよりも、高い位置(主面12aから離れた位置)となり、保護膜16の内側の側面と下地電極14の上面14aとで凹部(段差)が形成される。
【0049】
開口部16aを有する保護膜16の形成後、例えばスパッタ法により、図2(b)に示すように、半導体基板12の主面12a全面に、下地電極14及び保護膜16を覆って第1金属膜22を形成する。本実施形態では、Ti膜、Ni膜の順に積層して、多層構造の第1金属膜22を形成する。このように、金属電極18を形成する第1金属膜22及び貴金属膜24のうち、先に第1金属膜22のみを形成する。
【0050】
第1金属膜22の形成後、図2(c)に示すように、吸着ステージ30の吸着面30aに、裏面12bを搭載面として半導体基板12を吸着固定する。そして、吸着ステージ30の吸着面30aと平行に設定された切削面P1(基準面に相当)に沿って、バイト28により切削加工を行う。この切削加工では、切削面P1上に位置する保護膜16の部分及び第1金属膜22の部分を除去し、第1金属膜22をパターニングする。より詳しくは、開口部16a内に金属電極18を形成すべく、開口部16a内において下地電極14上に第1金属膜22を残し、保護膜16の上面16b上に位置する第1金属膜22を除去するため、切削面P1を、切削前の保護膜16の上面16bと下地電極14の上面14aとの間に設定する。本実施形態では、図2(c)に示すように、第1金属膜22のうち、開口部16a内に位置して下地電極14の上面14aと略平行とされた上面22aよりも高い位置に切削面P1を設定する。このため、切削後の第1金属膜22は、保護膜16の切削後の上面16bと略面一な上面22bの部分を有し、上面22bに対して上面22aが凹んだ形状をなす。
【0051】
なお、吸着ステージ30には、真空ポンプなどの図示しない吸着装置を用いて生じる吸着力を、半導体基板12に作用させる吸着孔30bが形成されており、吸着面30aには、図示しない複数のピンが、所定ピッチで剣山状に形成されている。また、バイト28としては、ダイヤモンドやcBN(cubic Boron Nitride:立方晶窒化ホウ素)からなるものを採用する。本実施形態では、バイト28と半導体基板12との相対速度は20m/s、切削加工のピッチは70μmに設定した。また、バイト28の第1金属膜22に対する高さ精度は0.1μm以下とした。
【0052】
切削加工による第1金属膜22のパターニング後、後述する裏面研削の前に、第1金属膜22の表面に、不動態膜26を形成する。この不動態膜26は、第1金属膜22の表層に位置する、不動態膜を形成できる金属(合金を含む)の酸化膜であり、第1金属膜22を構成する表層の金属が残るように、その一部を用いて薄膜形成される。本実施形態では、不動態膜26として、厚さ数nm程度のNiの酸化膜(NiO)を形成する。
【0053】
不動態膜26の形成後、半導体基板12を裏面12bから研削し、半導体基板12の厚さを所定厚さまで薄くする。このように、本実施形態では、第1金属膜22の切削加工を行った後に、図示しない砥石(図7(b)参照)を用いて半導体基板12の裏面研削を行う。この裏面研削は、上記(図7(b)参照)のごとく、図3(b)に示すように、半導体基板12の主面12a側に、保護テープ32を貼り付けた状態で行う。保護テープ32は、平板状のベース樹脂層32aと該ベース樹脂層32aの一面に設けられた糊層32bを有し、糊層32bが半導体基板12の主面12aに密着される。この裏面研削により、半導体基板12を、例えば725μmの厚さから90μmの厚さとなるまで薄くする。このように、半導体基板12を薄くすることで、例えば半導体基板12に構成された素子のオン抵抗を低減することができる。
【0054】
そして、裏面研削後、スパッタ法などにより、図3(c)に示すように、厚さを薄くした半導体基板12の裏面12bに、裏面電極20を形成する。この裏面電極20は、後述する貴金属膜24の形成において、半導体基板12の汚染を抑制するための裏面バリア層を含む。本実施形態では、半導体基板12の裏面12b側から、Al/Ti/Ni/Auの順に積層して、多層膜構造の裏面電極20を形成する。この裏面電極20のうち、主としてTi層が、半導体基板12に貴金属が拡散するのをブロックする裏面バリア層として機能する。なお、本実施形態に示すように、半導体基板12を構成するシリコンへの拡散が、第1金属膜22を構成する金属よりも早い貴金属膜24を形成する場合、上記した裏面研削工程及び裏面電極形成工程が、特許請求の範囲に記載の裏面研削工程に相当する。
【0055】
裏面電極20の形成後、開口部16aから臨む下地電極14の上面14aを覆う第1金属膜22の部分に、貴金属膜24(第2金属膜)を形成する。貴金属膜24(第2金属膜)の形成は、開口部16a内に位置する第1金属膜22に対応して開口部34aを有するマスク34を用いたスパッタ、所謂マスクスパッタにより行う。また、開口部16a内に位置する第1金属膜22の表面に形成された不動態膜26を除去してから、マスクスパッタを行う。この不動態膜26の除去は、例えばArを用いたプラズマエッチングにより行う。
【0056】
マスクスパッタに用いるマスク34としては、SUS430、SUS304、コバール、42アロイ、インバー等からなるメタルマスク、又は、石英、有機樹脂、金属酸化物などからなる絶縁性マスクを採用することができる。そして、図示しない金属ターゲットと、半導体基板12との間に、図3(d)に示すようにマスク34を配置し、スパッタ法により、貴金属膜24としてのAu膜を成膜する。なお、マスク34は、第1金属膜22などが形成された半導体基板12に接触させても良いし、半導体基板12と離間して設けても良い。これにより、垂直方向において、開口部16a内に第1金属膜22と接して貴金属膜24が形成され、第1金属膜22と貴金属膜24が積層してなる金属電極18が形成される。以上でウエハ状態の半導体装置10を得ることができる。そして、図示しないダイシング工程を経ることで、図1に示すチップ状態の半導体装置10を得ることができる。
【0057】
次に、上記した半導体装置10の製造方法(金属電極18の形成方法)について、特徴部分の効果を説明する。
【0058】
本実施形態では、金属電極18を構成する第1金属膜22を形成した後、裏面研削により半導体基板12を薄くする前に、切削加工により、第1金属膜22のパターニングを実施する。このように、半導体基板12が厚い状態で、切削加工による第1金属膜22のパターニングを実施するため、図7及び図8に示した従来構成のように、切削加工の前に、半導体基板12の裏面12bに凹凸があり、半導体基板12の厚さが面内でばらついている場合に較べて、切削の切り込み量に余裕がある。換言すれば、切削の基準面P1と開口部16a内に位置する下地電極14の上面14aとの間に所定の隙間がある。したがって、切削を用いて、精度よく第1金属膜22、ひいては金属電極18を形成することができる。具体的には、開口部16a内に位置する下地電極14を、第1金属膜22で被覆しつつ、保護膜16の上面16b上に位置する第1金属膜22を除去することができる。
【0059】
なお、半導体基板12の厚さが薄い状態、すなわち裏面研削後に、切削加工により、第1金属膜22のパターニングを実施すると、半導体基板12の厚さが薄く、その剛性が低いため、図4(b)に示すように、吸着ステージ30の吸着面30aに、剣山状に設けられたピン30c間において、半導体基板12が撓んでしまう。これにより、第1金属膜22のパターニングの精度が低下する。一方、図4(a)に示すように、半導体基板12の厚さが厚い状態、すなわち本実施形態に示すように、裏面研削前に第1金属膜22のパターニングを実施すると、ピン30cのピッチが同じであっても、ピン30c間において半導体基板12の撓みが生じるのを抑制することができる。この点においても、本実施形態によれば、精度よく第1金属膜22、ひいては金属電極18を形成することができる。
【0060】
また、本実施形態では、従来のように、フォトレジストなどの層間膜を必要としないため、製造コストを低減することもできる。
【0061】
また、本実施形態では、第1金属膜22と貴金属膜24とにより、金属電極18を構成している。Auなどの貴金属は、第1金属膜22を構成する表層のNiよりもはんだに対する濡れ性に優れるため、金属電極18とはんだとの濡れ性を向上し、はんだ接続信頼性を向上することができる。
【0062】
その反面、Auなどの貴金属は、第1金属膜22を構成する金属(Niなど)よりも半導体基板12への拡散が早い。したがって、第1金属膜22上に貴金属膜24を積層して金属電極18を形成する構成において、貴金属膜24の形成後に裏面研削を実施すると、貴金属により半導体基板12が裏面12b側から汚染され、素子の特性に影響を及ぼすこととなる。これに対し、本実施形態では、裏面研削により、半導体基板12の厚さを薄くした後に、裏面バリア層を含む裏面電極20を形成し、その後、貴金属膜24をマスクスパッタにより形成する。このように、第1金属膜22の形成及びパターニングは、半導体基板12が厚い状態で行い、汚染の虞のある貴金属膜24の形成は、半導体基板12を薄くして裏面バリア層(裏面電極20)を形成した後に行うため、切り込み量に余裕をもたせつつ、Auなどの貴金属が素子に悪影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態では、第1金属膜22として、その表層に、不動態を形成できる金属(Ni)層を形成する。このように、第1金属膜22の表面に、不動態を形成できる金属層を有する場合、金属層の表面に該金属層を構成する金属の水酸化物膜(例えば水酸化ニッケル)が形成されると、大気下(酸素の存在下)において水酸化物膜が成長し、これにより第1金属膜22の厚さが薄くなる。このため、放熱性の低下など、金属電極18が所望の特性を果たせなくなる。このような水酸化物膜は、高温多湿環境で形成される。
【0064】
これに対し、本実施形態では、第1金属膜22のパターニング後、貴金属膜24が形成されるまでの間、すなわち裏面研削及び裏面電極20の形成において、第1金属膜22の表面に水酸化物膜が形成されるのを防ぐべく、裏面研削工程の前(例えば第1金属膜22のパターニングの直後)に、不動態膜である酸化膜(NiO)を形成する。この酸化膜は、水酸化物膜のように成長することはない。したがって、金属電極18に要求される特性を確保することができる。また、貴金属膜24を形成する際には、上記したように先ず不動態膜を除去し、その後、貴金属膜24を第1金属膜22上に成膜するため、第1金属膜22上に貴金属膜24を積層してなる金属電極18を形成することができる
(変形例)
上記した製造方法を、ウエハ状態の半導体基板12のみでなく、チップ状態の半導体基板12に適用しても良い。
【0065】
第1金属膜22を、表面バリア層を有さないNi層のみの単層構造としても良い。
【0066】
第1金属膜22を、不動態膜26の形成されない金属(合金含む)を用いて形成しても良い。
【0067】
切削加工に代えて、研削加工により、第1金属膜22をパターニングしても良い。その場合、研削の砥石として、ダイヤモンド又はcBNからなる砥石を採用すると良い。
【0068】
(第2実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した半導体装置10及び半導体装置10の製造方法と共通する部分についての説明は割愛する。第1実施形態では、第2金属膜として貴金属膜24の例を示した。また、貴金属膜24を形成する際に、開口部16aにおける第1金属膜22上の不動態膜26を除去してから、貴金属膜24を形成する例を示した。
【0069】
これに対し、本実施形態では、図5に示すように、第2金属膜として、はんだ膜36を形成する点を第1の特徴とする。また、はんだ膜36を形成する前に、開口部16aにおける第1金属膜22上の不動態膜26を除去しない点を第2の特徴とする。すなわち、半導体装置10は、開口部16aにおける第1金属膜22とはんだ膜36の間に、不動態膜26を有している。
【0070】
はんだ膜36も、貴金属膜24同様、少なくとも裏面研削工程後に形成する。また、貴金属膜24同様、マスクスパッタにより形成することができる。本実施形態では、第1実施形態同様、裏面電極20の形成後に、開口部16aにおける第1金属膜22上の不動態膜26を除去せず、不動態膜26を覆うように、第2金属膜であるはんだ膜36を形成する。また、はんだ膜36は、リフロー時に溶融して、不動態膜26を破壊できる金属、例えばSnやSn合金からなる。
【0071】
本実施形態によれば、第1金属膜22上に、第2金属膜としてはんだ膜36を形成するため、金属電極18がはんだを有する。したがって、金属電極18の一部を用いて、半導体装置10を他の部材と接合することができる。
【0072】
また、リフロー時に、加圧しつつ加熱することで、はんだ膜36が不動態膜26を突き破り、第1金属膜22に拡散する。これにより、はんだ膜36と第1金属膜22が電気的に接続される。したがって、本実施形態では、リフロー前の半導体装置10の状態で、開口部16aにおける第1金属膜22とはんだ膜36の間に、不動態膜26を有していても良い。この形態を採用すると、不動態膜26の除去工程を不要とできるので、製造工程を簡素化することができる。なお、第1実施形態同様、不動態膜26を除去してからはんだ膜36を形成しても良い。
【0073】
(第3実施形態)
本実施形態において、上記実施形態に示した半導体装置10及び半導体装置10の製造方法と共通する部分についての説明は割愛する。上記実施形態では、金属電極18が第2金属膜(貴金属膜24、はんだ膜36)を有する例を示した。
【0074】
これに対し、本実施形態では、図6に示すように、金属電極18が、第1金属膜22のみを有し、第2金属膜を有さない点を第1の特徴とする。この場合、第2金属膜の形成工程を不要とすることができる。
【0075】
また、図6に示す構成では、上記実施形態同様、第1金属膜22の表層に、不動態を形成できる金属(例えばNi)からなる金属層を有しており、第1金属膜22上に不動態膜26を形成している。この不動態膜26は、第1実施形態同様、第1金属膜22のパターニング後、裏面研削の前に形成する。
【0076】
このように、半導体装置10は、開口部16aにおいて、金属電極18を構成する第1金属膜22上に不動態膜26を有している。しかしながら、図示しないボンディングワイヤを金属電極18に接続する際に、ボンディングワイヤが、不動態膜26を突き破り、第1金属膜22(金属電極18)に到達する。したがって、不動態膜26を除去しなくとも、外部と電気的に接続することができる。
【0077】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0078】
本実施形態では、半導体基板12に素子としてIGBTが構成される例を示した。しかしながら、縦型のパワーMOSFETを採用しても良い。さらには、半導体基板12を裏面研削するものであれば、LDMOSトランジスタ素子やバイポーラトランジスタ素子などの横型の素子を採用しても良い。
【符号の説明】
【0079】
10・・・半導体装置
12・・・半導体基板
12a・・・主面
12b・・・裏面
14・・・下地電極
14a・・・上面
16・・・保護膜
16a・・・開口部
18・・・金属電極
20・・・裏面電極
22・・・第1金属膜
24・・・貴金属膜(第2金属膜)
26・・・不動態膜
28・・・バイト
30・・・吸着ステージ
32・・・保護テープ
34・・・マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主面に、該半導体基板に構成された素子と電気的に接続される下地電極を形成する下地電極形成工程と、
前記下地電極を覆う保護膜を形成するとともに、該保護膜に前記下地電極を露出させる開口部を形成する保護膜形成工程と、
前記保護膜及び前記開口部から臨む下地電極の表面を覆うように第1金属膜を形成する第1金属膜形成工程と、
前記第1金属膜が形成された半導体基板を、前記主面と反対の裏面を搭載面として、吸着ステージに吸着固定した状態で、前記吸着ステージと平行に設定された基準面上に位置する前記保護膜の部分及び前記第1金属膜の部分を、切削又は研削により除去して、前記第1金属膜をパターニングするパターニング工程と、
前記パターニング工程後、前記裏面から半導体基板を研削し、前記半導体基板の厚さを所定厚さまで薄くする裏面研削工程と、を備え、
前記下地電極に接触して配置される外部接続用の金属電極を形成する工程として、少なくとも前記第1金属膜形成工程及び前記パターニング工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記金属電極を形成する工程として、前記第1金属膜を構成する金属よりもはんだに対する濡れ性が良好な貴金属からなる第2金属膜を、前記開口部から臨む下地電極の表面を覆う第1金属膜の部分に形成する第2金属膜形成工程を含み、
前記裏面研削工程では、厚さを薄くした前記半導体基板の裏面に、前記貴金属による前記半導体基板の汚染を抑制するための裏面バリア層を含んで裏面電極を形成し、
前記第2金属膜形成工程は、前記裏面研削工程後に、前記開口部から臨む下地電極の表面を覆う第1金属膜の部分に対応して開口部を有するマスクを用いたスパッタにより行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1金属膜は、その表面に、不動態を形成できる金属又は該金属を含む合金からなる金属層を有し、
前記パターニング工程後であって前記裏面研削工程の前に、前記第1金属膜の表面に、不動態膜として前記不動態を形成できる金属の酸化膜を形成する不動態膜形成工程を備え、
前記第2金属膜形成工程では、前記不動態膜を除去し、その後に前記第2金属膜を前記第1金属膜上に成膜することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1金属膜は、その表面に、前記金属層としてNi又はNi合金層を有し、Ni又はNi合金層の単層構造、又は、Ni又はNi合金層と前記下地電極との間に表面バリア層を有する2層構造をなすことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記金属電極を形成する工程として、はんだからなる第2金属膜を、前記開口部から臨む下地電極の表面を覆う第1金属膜の部分に形成する第2金属膜形成工程を含み、
前記第2金属膜形成工程は、前記裏面研削工程後に、前記開口部内に位置する第1金属膜に対応して開口部を有するマスクを用いたスパッタにより行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1金属膜は、その表面に、不動態を形成できる金属又は該金属を含む合金からなる金属層を有し、
前記パターニング工程後であって前記裏面研削工程の前に、前記第1金属膜の表面に、不動態膜として前記不動態を形成できる金属の酸化膜を形成する不動態膜形成工程を備えることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1金属膜は、その表面に、前記金属層としてNi又はNi合金層を有し、Ni又はNi合金層の単層構造、又は、Ni又はNi合金層と前記下地電極との間に表面バリア層を有する2層構造をなすことを特徴とする請求項3に記載の半導体装置の金属電極形成方法。
【請求項8】
前記金属電極は、ボンディングワイヤが接続される電極であり、
前記第1金属膜は、その表面に、不動態を形成できる金属又は該金属を含む合金からなる金属層を有し、
前記パターニング工程後であって前記裏面研削工程の前に、前記第1金属膜の表面に、不動態膜として前記不動態を形成できる金属の酸化膜を形成する不動態膜形成工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1金属膜は、その表面に、前記金属層としてNi又はNi合金層を有し、Ni又はNi合金層の単層構造、又は、Ni又はNi合金層と前記下地電極との間に表面バリア層を有する2層構造をなすことを特徴とする請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記裏面研削工程後、前記半導体基板をチップ単位にダイシングするダイシング工程を備えることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−65737(P2013−65737A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203963(P2011−203963)
【出願日】平成23年9月19日(2011.9.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】