説明

半導体装置及び半導体チップ

【課題】半導体チップを製造する際のダイシング精度の悪化を防止するとともに、流通後のTEGを用いた測定の実行を完全に防止する。
【解決方法】半導体装置は、複数の製品領域と、それら製品領域間に設けられたスクライブ領域とを備える。複数の製品領域のそれぞれは、プロービング用電極34、40とセンス電極36、38を少なくとも有するTEG30を有している。TEG30には、TEG内の他の部分と比較して電流許容量が低く設定されているセンス配線36a、38aが設けられている。半導体装置では、センス配線36a、38aに所定電流以下の電流が印加された状態でTEG30の特性を測定することができる。その一方、センス配線36a、38aに所定電流を越える電流を印加するとセンス配線36a、38aが破壊される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の製品領域と、それら製品領域間に設けられたスクライブ領域を備える半導体装置に関する。また、その半導体装置をスクライブ領域で切断することで製造される半導体チップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、複数の製品領域と、それら製品領域間に設けられたスクライブ領域とを備える半導体装置が開示されている。この半導体装置では、スクライブ領域にTEG(Test Element Group)が設けられている。TEGとは、製品領域に形成される製品パターンと同一材料及び同一の製造条件で製造されるテストパターンである。この半導体装置では、半導体装置を製造した後にTEGを用いての各種の測定を行うことで、製品パターンが正常に製造されたか否かを検査することができる。また、引用文献2には、テスト回路が製品領域に形成された集積回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−339549号公報
【特許文献2】特開2000−172573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置の中には、製品パターンの電極に厚い金属層を使用することがあり、この場合、TEGを構成する電極も厚膜化することがある。特許文献1のようにスクライブ領域にTEGが設けられている場合、半導体装置をスクライブ領域でダイシングして半導体チップを製造する際に、TEG上をダイシングブレードが通過する。TEGを構成する電極が厚膜化していると、TEG上をダイシングブレードが通過する際に、圧膜化した電極によってダイシングブレードが目詰まりしたり、半導体装置のチッピングやワレが生じたりして、半導体装置から半導体チップを精度よくダイシングすることができない。
【0005】
一方、特許文献2のように、TEGを製品領域に設ければ、TEGによってダイシング精度が悪化することはない。しかし、TEGを製品領域に形成すると、TEGが半導体チップとともに流通することとなり、半導体チップを取得した第3者がTEGを用いて測定を実行することができてしまう。例えば、競合他社によってTEGを用いた測定が実行された場合、TEGの内容や特性から半導体チップを製造したメーカーの生産能力や加工精度等の技術情報が競合他社に流出してしまう。
【0006】
特許文献2のテスト回路では、外部回路とTEGとを接続する制御回路が破壊容易に設けられ、出荷前にこの制御回路を破壊しておくことで、外部回路からTEGへのアクセスを困難にしている。しかし、この場合でも、TEG自体が破壊されずに半導体チップに存在し続けるため、TEGを用いた測定の実行を完全に防止することはできない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて創作された。本発明は、半導体チップを製造する際のダイシング精度の悪化を防止するとともに、流通後のTEGを用いた測定の実行を防止する技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書が開示する半導体装置は、複数の製品領域と、それら製品領域間に設けられたスクライブ領域とを備える半導体装置に関する。この半導体装置では、複数の製品領域のそれぞれはテスト用電極を有するTEGを有している。TEGには、TEG内の他の部分と比較して電気的耐性が低く設定されている特異部が少なくとも一箇所設けられている。この半導体装置では、特異部に所定電圧以下の電圧又は所定電流以下の電流が印加された状態でテスト用電極を用いてTEGの特性を測定することが可能となっている。その一方、テスト用電極を用いて特異部に所定電圧を超える電圧又は所定電流を超える電流を印加すると特異部が破壊される。
【0009】
この半導体装置は、製品領域内にTEGが設けられており、スクライブ領域にTEGが設けられていない。そのため、半導体装置をスクライブ領域でダイシングして半導体チップを製造する際に、TEG上をダイシングブレードが通過することがない。TEGを構成する電極が厚膜化している場合でも、ダイシング精度が悪化することが防止される。また、TEGには、特異部が設けられており、破壊しやすく形成されている。そのため、半導体チップを製造してTEGを用いた特性の測定を実行した後であって、半導体チップの出荷前に特異部を利用してTEGを容易に破壊することができる。このため、流通後のTEGを用いた測定の実行を防止することができる。
【0010】
本明細書が開示する1つの半導体装置では、TEGが、TEG本体と、一対の第1テスト用電極と、一対の第2テスト用電極と、第1テスト用電極とTEG本体を接続する一対の第1配線と、第2テスト用電極とTEG本体を接続する一対の第2配線と、をさらに有している。TEGの特性を測定する際は、一対の第1テスト用電極の間にTEG本体を介して電流を流すと共に、その電流がTEG本体を流れることにより生じる第2テスト用電極間の電圧を測定するようになっている。そして、特異部は、第2配線の少なくとも一方に設けられており、第2配線の電流許容量は、第1配線の電流許容量よりも少なく、かつ、TEG本体の電流許容量よりも少なくされている。
この半導体装置では、TEGの特性を測定する際は、TEG本体を介して第1テスト用電極間に電流が流れ、第2テスト用電極間の電圧が測定される。第2テスト用電極は電圧測定に用いられるため、第2配線に流れる電流を小さくすることができる。このため、第2配線に特異部が設けられていても、第2配線が破壊されることはない。その一方、TEG本体を介して第2テスト用電極間に特異部が設けられた配線の電流許容量よりも大きな電流を流すことで、特異部が設けられた配線を容易に破壊することができる。これによって、流通前のTEGを用いた測定を実行可能とすると共に、流通後のTEGを用いた測定の実行を防止することができる。
【0011】
本明細書が開示する他の半導体装置では、TEGが、第1テスト用電極と、第1テスト用電極に接する第1導電型の第1半導体領域と、第2テスト用電極と、第2テスト用電極に接する第1導電型の第2半導体領域と、第1半導体領域と第2半導体領域の間に設けられ、第1半導体領域と第2半導体領域とを分離する第2導電型の第3半導体領域と、第1半導体領域と第2半導体領域とを分離している範囲の第3半導体領域にゲート酸化膜を介して対向する第3テスト用電極と、をさらに有している。この半導体装置では、さらに、第3テスト用電極の少なくとも一部がゲート酸化膜を介して第1半導体領域にも対向している。そして、特異部は、第3テスト用電極が第1半導体領域に対向している範囲内のゲート酸化膜に設けられており、特異部の酸化膜の膜厚が周囲の酸化膜の膜厚に比べて薄く形成されている。
この半導体装置では、第1テスト用電極と第3テスト用電極の間に特異部の耐圧よりも小さな電圧を印加してTEGの特性を測定する。その一方、第1テスト用電極と第3テスト用電極の間に特異部の耐圧よりも大きな電圧を印加することでゲート酸化膜を破壊し、TEGの特性を測定できなくすることができる。
【0012】
本明細書は、上記の半導体装置から製造される新規で有用な半導体チップも開示する。すなわち、本明細書が開示する半導体チップは、複数の製品領域と、それら製品領域間に設けられたスクライブ領域とを備える半導体装置をスクライブ領域で切断することで製造される半導体チップに関する。この半導体チップはテスト用電極を有するTEGを有している。TEGには、TEG内の他の部分と比較して電気的耐性が低く設定されている特異部が少なくとも一箇所設けられている。この半導体チップでは、特異部に所定電圧以下の電圧又は所定電流以下の電流が印加された状態でテスト用電極を用いてTEGの特性を測定することが可能となっている。その一方、テスト用電極を用いて特異部に所定電圧を超える電圧又は所定電流を超える電流を印加すると特異部が破壊される。
【0013】
この半導体チップによれば、ダイシング精度が悪化することを防止すると共に、流通後のTEGを用いた測定の実行を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、半導体チップを製造する際のダイシング精度の悪化を防止するとともに、流通後のTEGを用いた測定の実行を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】半導体装置10を示す。
【図2】TEG30を示す。
【図3】TEG130を示す。
【図4】TEG130のIV−IV断面図を示す。
【図5】TEG130のV−V断面図を示す。
【実施例1】
【0016】
本実施例の半導体装置10を図1に示す。半導体装置10には、複数の製品領域12(つまり、切断される前の半導体チップ20)が設けられており、製品領域12の間及び周辺にスクライブ領域14が設けられている。半導体装置10から半導体チップ20を製造する際には、スクライブ領域14に沿ってダイシングブレードを移動させ、製品領域12毎に分離する。この分離した製品領域12が、半導体チップ20となる。
【0017】
製品領域12では、終端耐圧領域24が半導体チップ20の外周に沿って一巡している。終端耐圧領域24には、FLR25が形成されている。終端耐圧領域24及びFLR25を形成することで、製品領域12の耐圧が高められている。終端耐圧領域24の内側の有効領域26には、半導体装置が機能するのに必要な製品パターン(例えば、パワー半導体素子)が形成されている。終端耐圧領域24の外側の非有効領域22には、製品パターンと同一材料及び同一の製造条件で製造されるTEG30が形成されている。
【0018】
図2に実施例1のTEG30を拡大して示す。TEG30は、被測定物であるTEG本体32の抵抗値を、4探針法を用いて測定するテストパターンであり、TEG本体32と、プロービング用電極34、40(第1テスト用電極に相当)と、プロービング用配線34a、40a(第1配線に相当)と、センス電極36、38(第2テスト用電極に相当)と、センス配線36a、38a(第2配線に相当)を備えている。TEG本体32は一様の幅及び厚さに形成された導電層であり、ゲートポリシリコン等、製品パターンにおいてその抵抗値を厳密に管理する必要がある層と同一材料及び同一層として形成される。そのため、TEG本体32は、製品パターンの該当する層と同一の抵抗値を有しており、TEG本体32の抵抗値を測定することで、製品パターンの該当する層の抵抗値を測定することができる。また、プロービング用電極34、40、プロービング用配線34a、40a、センス電極36、38、センス配線36a、38aは、製品パターンの配線層と同一の層で形成される。そのため、半導体チップ20がパワー半導体等、高電圧用の半導体チップである場合において、製品パターンに使用される配線層の膜厚が厚膜化すると、プロービング用電極34、40等の膜厚も厚膜化する。しかしながら、実施例1の半導体装置10では、TEG30が製品領域12に形成されており、スクライブ領域14に形成されていない。そのため、半導体装置10をスクライブ領域14で切断して半導体チップ20を製造する際に、厚膜化したTEG30のプロービング用電極34、40等によって、ダイシングブレードが目詰まりしたり、製品領域12(半導体チップ20)のチッピングやワレが生じたりすることが抑制される。
【0019】
プロービング用電極34、40は、プロービング用配線34a、40aに接続されており、コンタクト34b、40bによってTEG本体32と接続されている。センス電極36、38は、センス配線36a、38aに接続されており、コンタクト36b、38bによってTEG本体32と接続されている。センス配線36a、38aの厚みとプロービング用配線34a、40aの厚みは同一であり、センス配線36a、38aの幅はプロービング用配線34a、40aの幅よりも細く形成されている。そのため、センス配線36a、38aの電流許容量は、プロービング用配線34a、40aの電流許容量よりも小さくなる。また、TEG本体32の材料と幅と厚みは、TEG本体32の電流許容量がセンス配線36a、38aの電流許容量より大きくなるように設定されている。したがって、センス配線36a、38aの電流許容量は、プロービング用配線34a、40aやTEG本体32の電流許容量よりも小さくされている。
【0020】
測定者がTEG30を用いてTEG本体32の抵抗値を測定する場合、測定装置(図示されていない)のプローブピンをプロービング用電極34、40に接続し、プロービング用電極34、40の間に一定の電流値I1を流す。これによって、TEG本体32に電流I1が流れ、センス電極36、38の間に電圧が発生する。次に、測定装置の別のプローブピンをセンス電極36、38に接続し、センス電極36、38間に発生する電位差V1を測定する。測定装置は、測定された電位差V1と電流値I1からTEG本体32の抵抗値R=V1/I1を算出する。測定者は、測定装置が算出した値が所定の範囲内に入っている場合に、TEG本体32が所定の規格内で製造されたことを確認する。
【0021】
なお、TEG本体32の抵抗値を測定する場合、図2に示す4探針法に代えて、2探針法よる測定も可能である。2探針法によるTEG本体32の抵抗値の測定では、例えばプロービング用電極34、40の間に一定の電流値I1を流すとともに、コンタクト34b、40bの間に発生する電位差V2を測定する。これによって、TEG本体32の抵抗値R’=V0/I1を得ることができる。2探針法による測定を用いると簡易にTEG本体32の抵抗を測定することができ、4端針法による測定を用いるとTEG本体32の抵抗値を正確に測定することができる。
【0022】
ここで、センス電極36、38は電圧を測定するために用いられ、センス電極36,38間に流れる電流が小さくてもセンス電極36,38間の電圧を測定することができる。このため、センス配線36a、38aの電流許容量が少なくても、センス配線36a,38aが破壊されないようにすることができる。すなわち、測定装置では、TEG本体32の抵抗値を測定する際にプロービング用電極34、40の間に印加する電位差V2が、センス配線36a、38aに流れる電流がセンス配線36a、38aの電流許容量を超えないような電位差に設定されている。そのため、測定装置がTEG本体32の抵抗値を測定する際に、センス配線36a、38aに流れる電流がセンス配線36a、38aの電流許容量を超え、センス配線36a、38aが破壊されることがない。
【0023】
その一方、TEG本体32の抵抗値を測定した後は、プロービング用電極34とセンス電極36の間、又は、プロービング用電極34とセンス電極38の間に、センス配線36a、38aに流れる電流がセンス配線36a、38aの電流許容量を超えるような電位差V3を印加する。これによって、センス配線36a又は38aに流れる電流がその電流許容量を超え、センス配線36a又は38aが破壊される。それと同時に、破壊されたセンス配線36a又は38aとコンタクト36b又は38bによって接続されているTEG本体32自体も破壊される。そのため、プロービング用電極34とセンス電極36又は38の間に電位差V3が印加された後は、TEG30を用いてTEG本体32の抵抗値を測定することができない。
【0024】
本実施例の半導体チップ20では、センス配線36a、38aの電流許容量が、TEG本体32の抵抗値の測定時に必要とされる電流値よりは大きく設定されているとともに、プロービング用配線34a、40aの電流許容量やTEG本体32の電流許容量よりも少なく設定されている。このため、TEG本体32の抵抗値の測定する際は、センス配線36a、38aは破壊されず、4探針法によってTEG本体32の抵抗値を正確に測定することができる。TEG本体32の抵抗値を測定した後は、センス配線36a、38aの電流許容量とプロービング用配線34a、40aの電流許容量の差を利用して、センス配線36a、38a、しいてはTEG本体32自体を容易に破壊することができる。これによって、TEG30が破壊されないまま出荷されることが防止され、流通後のTEG30を用いた測定の実行を防止することができる。
【実施例2】
【0025】
図3に実施例2の半導体チップのTEG130を拡大して示す。TEG130は、実施例1のTEG30と同様に、半導体チップの非有効領域に形成されている。TEG130は、MOS(Metal Oxide Semiconductor)であり、有効領域に26に形成された製品パターン(MOS)と同一構造を有している。そのため、TEG130を用いてオン抵抗等の特性を測定することで、製品パターン中に形成されたMOSの特性を測定することができる。また、製品パターンに使用される配線層の膜厚が厚膜化してTEG130の配線層の膜厚が厚膜化しても、TEG130が半導体チップ内(スクライブ領域外)に形成されているため、ダイシング精度が悪化することがない。
【0026】
次に、TEG130の構造を説明する。TEG130は、P型不純物を含んだ半導体基板140に形成されており、その表面にソース電極142(第1テスト用電極に相当)とドレイン電極144(第2テスト用電極に相当)とゲート電極146(第3テスト用電極に相当)が形成されている。TEG130のIV−IV断面を図4に示す。半導体基板140の表面には、フィールド酸化膜148が形成されており、フィールド酸化膜148が除去された領域150にTEG130が形成されている。領域150には、フィールド酸化膜148よりも薄いゲート酸化膜152が形成されており、フィールド酸化膜148とゲート酸化膜152の表面に絶縁膜154が形成されている。ソース電極142とドレイン電極144とゲート電極146は、絶縁膜154の表面に形成されている。
【0027】
半導体基板140の表面に臨む位置には、N型不純物を含んだソース拡散層162(第1半導体領域に相当)とドレイン拡散層164(第2半導体領域に相当)、及びP型不純物を含んだウェル層168が形成されている。半導体基板140の加工されないで残った領域によって、P型不純物を含んだドリフト領域174(第3半導体領域に相当)が形成されている。ソース拡散層162は、ゲート酸化膜152と絶縁膜154を貫通する貫通孔156aに充填されたコンタクト金属156によって、ソース電極142に接続している。ドレイン拡散層164は、ゲート酸化膜152と絶縁膜154を貫通する貫通孔158aに充填されたコンタクト金属158によって、ドレイン電極144に接続している。ウェル層168は、半導体基板140よりも高濃度のP型不純物が含んでおり、ソース拡散層162と同様にコンタクト金属156によってソース電極142に接続している。ソース電極142は、コンタクト金属156及びウェル層168を介して半導体基板140に接続されており、その電位がグランド電位に固定される。ドリフト領域174は、ソース拡散層162とドレイン拡散層164の間に存在し、ソース拡散層162とドレイン拡散層164を分離している。ソース拡散層162とドレイン拡散層164の間に位置する中間領域170上には、プレーナゲート電極166が形成されている。プレーナゲート電極166は、ゲート酸化膜152を介してドリフト領域174に対向している。図5に示すように、プレーナゲート電極166は、絶縁膜154を貫通する貫通孔160aに充填されたコンタクト金属160によってゲート電極146に接続されている。上記の構造によって、プレーナゲート電極166を備えたMOSが構成されている。
【0028】
TEG130のV−V断面を図5に示す。この範囲では、プレーナゲート電極166がソース拡散層162側にまで拡張して形成されており、プレーナゲート電極166がゲート酸化膜152を介してソース拡散層162に対向している。ソース拡散層162とプレーナゲート電極166が対向する範囲のゲート酸化膜152には、他の部位に比べて薄膜化された薄膜部172が形成されている。
【0029】
TEG130でMOSの特性を測定する場合には、測定装置(図示されていない)からソース電極142とドレイン電極144とゲート電極146にプロービングピンを接続し、ソース電極142をグランド電位に固定し、ドレイン電極144に正電位V4を印加する。この状態で、ゲート電極146に正電位V5を印加すると、中間領域170のドリフト領域174にチャネル(図示されていない)が形成され、このチャネルを介してソース電極142とドレイン電極144の間に電流が流れる。測定装置は、その電流値I2を計測し、計測された電流値I2と正電位V4と正電位V5からTEG130の特性を測定する。
【0030】
なお、TEG130の特性を測定する際には、ゲート電極146に印加される正電位V5が、ゲート酸化膜152に形成された薄膜部172の耐圧を超えない正電位に設定されている。そのため、測定装置がTEG130の特性を測定する際に、薄膜部172に印加される電圧が薄膜部172の耐圧を超え、ゲート酸化膜152が破壊されることはない。
【0031】
その一方、TEG130の特性を測定した後は、ゲート電極146に薄膜部172の耐圧を超える正電位V6を印加する。これによって、薄膜部172に印加される電圧が薄膜部172の耐圧を超え、薄膜部172が破壊されるとともに、破壊された薄膜部172を介してプレーナゲート電極166とソース拡散層162が導通する。そのため、ゲート電極146に正電位V6が印加された後は、TEG130がMOSとして機能することができず、TEG130を用いてその特性を測定することができない。
【0032】
本実施例の半導体チップでは、ゲート酸化膜152に形成される薄膜部172の耐圧を、TEG130の特性の測定に必要とされる電位よりは大きく設定されている一方で、薄膜部172以外のゲート酸化膜152の耐圧よりも小さく設定されている。TEG130の特性を測定する際には、ゲート酸化膜152がプレーナゲート電極166とソース拡散層162を絶縁し、TEG130の特性を測定することができる。TEG130の特性を測定した後には、薄膜部172の耐圧と薄膜部172以外のゲート酸化膜152の耐圧の差を利用して、TEG130自体を容易に破壊することができる。これによって、TEG130が破壊されないまま出荷されることが抑制され、流通後のTEG30を用いた測定の実行を防止することができる。
【0033】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、PN接合を含むTEGでは、そのPN接合の少なくとも一部にPN接合耐圧を低く設定した特異部を設けておいてもよい。TEGに所定電圧を超える電圧を印加することによって、過電圧によりアバランシェ降伏が起こり、TEGのPN接合を容易に破壊することができる。
【0034】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0035】
10 半導体装置
12 製品領域
14 スクライブ領域
20、120 半導体チップ
22 非有効領域
24 終端耐圧領域
25 FLR
26 有効領域
30、130 TEG
32 TEG本体
34、40 プロービング用電極
34a、40a プロービング用配線
34b、40b コンタクト
36、38 センス電極
36a、38a センス配線
36b、38b コンタクト
140 半導体基板
142 ソース電極
144 ドレイン電極
146 ゲート電極
152 ゲート酸化膜
154 絶縁膜
162 ソース拡散層
164 ドレイン拡散層
166 プレーナゲート電極
168 ウェル層
172 薄膜部
174 ドリフト領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製品領域と、それら製品領域間に設けられたスクライブ領域とを備える半導体装置であり、
複数の製品領域のそれぞれは、テスト用電極を有するTEGを有しており、
TEGには、TEG内の他の部分と比較して電気的耐性が低く設定されている特異部が少なくとも一箇所設けられており、
特異部に所定電圧以下の電圧又は所定電流以下の電流が印加された状態でテスト用電極を用いてTEGの特性を測定することが可能となっており、テスト用電極を用いて特異部に所定電圧を超える電圧又は所定電流を超える電流を印加すると特異部が破壊されることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
TEGは、
TEG本体と、
一対の第1テスト用電極と、
一対の第2テスト用電極と、
第1テスト用電極とTEG本体を接続する一対の第1配線と、
第2テスト用電極とTEG本体を接続する一対の第2配線と、をさらに有しており、
TEGの特性を測定する際は、一対の第1テスト用電極の間にTEG本体を介して電流を流すと共に、その電流がTEG本体を流れることにより生じる第2テスト用電極間の電圧を測定するようになっており、
前記特異部は、第2配線の少なくとも一方に設けられており、第2配線の電流許容量は、第1配線の電流許容量よりも少なく、かつ、TEG本体の電流許容量よりも少ないことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
TEGは、
第1テスト用電極と、
第1テスト用電極に接する第1導電型の第1半導体領域と、
第2テスト用電極と、
第2テスト用電極に接する第1導電型の第2半導体領域と、
第1半導体領域と第2半導体領域の間に設けられ、第1半導体領域と第2半導体領域とを分離する第2導電型の第3半導体領域と、
第1半導体領域と第2半導体領域とを分離している範囲の第3半導体領域にゲート酸化膜を介して対向する第3テスト用電極と、をさらに有しており、
第3テスト用電極の少なくとも一部がゲート酸化膜を介して第1半導体領域にも対向しており、
前記特異部は、第3テスト用電極が第1半導体領域に対向している範囲内のゲート酸化膜に設けられており、特異部の酸化膜の膜厚が周囲の酸化膜の膜厚に比べて薄いことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
複数の製品領域と、それら製品領域間に設けられたスクライブ領域とを備える半導体装置をスクライブ領域で切断することで製造される半導体チップであり、
半導体チップはテスト用電極を有するTEGを有しており、
TEGには、TEG内の他の部分と比較して電気的耐性が低く設定されている特異部が少なくとも一箇所設けられており、
特異部に所定電圧以下の電圧又は所定電流以下の電流が印加された状態でテスト用電極を用いてTEGの特性を測定することが可能となっており、テスト用電極を用いて特異部に所定電圧を超える電圧又は所定電流を超える電流を印加すると特異部が破壊されることを特徴とする半導体チップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−151270(P2011−151270A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12521(P2010−12521)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】