説明

半導体装置用パッケージとその製造方法、および半導体装置

【課題】ゲート下部の樹脂厚が薄く、樹脂形状やゲート位置に制限がある場合であっても、ゲート切断時においてゲート直下部のリードフレームからの樹脂の剥離によるリード裏面の露出を防止することを目的とする。
【解決手段】リードフレーム21のゲート樹脂残り部105の近傍表面のエリア26に、樹脂との密着性が向上するような表面処理39を施すことにより、樹脂形状やゲート位置に制限があり、かつ、ゲート直下部の樹脂厚203がゲート径206より薄い場合でも、リードフレーム21と樹脂との接合強度が向上するため、ゲート切断時に樹脂が剥離することを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リードフレームと樹脂とで構成される半導体装置用パッケージとその製造方法、およびリードフレームを樹脂封止して成る半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器はその小型化が進み、中でも特に携帯電話やノートPC(携帯型パーソナルコンピュータ)に代表される携帯機器の小型化がめざましく、それに伴って携帯機器に内蔵される液晶画面のバックライト等の電子部品にもその小型化または低背化がますます求められている。
【0003】
上述の機器が有する電子部品に用いられる半導体装置用パッケージは、リードフレームを樹脂で保持される構成が多く用いられる。また、半導体装置用パッケージを製造するには、樹脂成形金型内にリードフレームを配置し、樹脂充填口となるゲートから金型内に熱硬化性樹脂もしくは熱可塑性樹脂を注入するインサート成型を行い、射出成形やトランスファ成形にて生産される。また、個々のパッケージへの樹脂充填口となるゲートは、成形品の樹脂の厚みに対する影響が大きいため、ゲートの突出量の大小が半導体装置用パッケージの小型化または低背化を妨げる原因となっている。
【0004】
金型内へ樹脂を注入する方式として、製品キャビティを構成する上下金型どちらかに断面積の小さな貫通孔からなるゲートを配置するピンポイントゲート方式と、製品キャビティ端面の上下金型分割部にゲートを配置するサイドゲート方式とがある。
【0005】
サイドゲート方式では樹脂の厚みが薄くなる小型や低背型パッケージの成形においては、樹脂の流動経路が制限されるため樹脂の未充填を引き起こしてしまうといった問題があり、ピンポイントゲート方式を用いる以外に手段がないのが現状である。
【0006】
ピンポイントゲート方式においては、離型時にゲートが成形品から切断されるので、離型後にゲートを切断する手間が省け、効率よく生産することが可能であり、半導体装置用パッケージの多くがこの方式で生産される。
【0007】
以下、図9,図10を用いて従来の半導体装置用パッケージおよびその製造方法について説明する。
図9はピンポイントゲート方式で作成された従来の半導体装置用パッケージを示す断面図である。図10は従来の半導体装置用パッケージにおけるゲート直下部の樹脂の剥離を説明する図である。
【0008】
半導体装置用パッケージを生産する際には、リードフレームを成型金型に載置し、ゲートから成型金型に設けたキャビティ(図示せず)へ樹脂を注入し、樹脂成形体100として半導体装置用パッケージを形成する。光半導体装置用パッケージの場合、樹脂成型体100の第1面側にはリフレクターとなる開口部103が設けられ、開口部103の底部には、ダイパッド部とインナーリード部の一部分が露出している。樹脂成型体100の第1面と反対裏面側には、ゲート切断後に残存したゲート樹脂残り部105の突起を囲繞する窪み部104が設けられ、その表面からゲート樹脂残り部105が突出しないようにゲートを切断し光半導体装置用パッケージを形成している。
【0009】
上述のように、ピンポイントゲート方式は効率よく生産できる利点がある反面、ゲート樹脂残り部105の突起が残存するといった課題があり、さまざまな対策が考案され改善されている。
【0010】
近年では、パッケージを小型化、低背化が進み、樹脂成形体の高さを低くするために、図10に示す、樹脂成型体100の開口部側の厚み201の薄型化のみでなく、ゲート側の厚み202を薄くしたパッケージの要望が増加している。
【0011】
そのようなパッケージをピンポイントゲート方式にて生産をおこなう場合、樹脂成形体のゲート側の厚み202を薄くし、且つゲート樹脂残りをパッケージ表面から突出しないように窪み部の深さを確保するためには樹脂成形品のゲート下部の樹脂厚203を薄くする必要がある。ゲート下部の樹脂厚203が薄くなると、図10に示すように、ゲート切断時において、ゲート直下部の樹脂がゲートと共に剥離してしまい、ゲート直下部のリードフレーム表面が露出するといった新たな問題が発生する。
【0012】
上記のような問題に対し、ゲートを樹脂の厚みが薄い領域でなく、リードフレームに設けられた貫通穴からなる射出成型窓に載置または挿入し、樹脂の厚みが確保できる樹脂成型体の側壁に配置することでゲート切断時に発生するリードフレームと樹脂が剥離するのを防止する製造方法が考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2005−539386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、半導体装置用パッケージ形状やゲート位置に制限がある状況においては従来の出射成形窓を用いる樹脂成形方法を採用することができなかった。この場合、半導体装置用パッケージ形状やゲート位置を変えずにピンポイントゲート方式にてゲート直下の樹脂の厚みを充分に確保できない小型化または低背化された半導体装置用パッケージを成型せざるを得ず、ゲート切断時において、ゲート直下部の樹脂がゲート内の樹脂につながったままリードフレームから剥離し、図10に示すようにゲート直下部のリード表面が露出してしまうという問題点があった。
【0015】
上記の事象は、ゲート直下の樹脂の厚みがゲートの直径寸法以下となる場合に発生しやすく、この問題を解決するためにゲートの断面積を小さくすると、成形後のゲートの切断が容易になり樹脂の剥離は防ぐことができるが、成形時に樹脂を充填する圧力の損失等をまねき樹脂の充填性が悪くなり、特に樹脂の厚みが薄い部分を有するパッケージに対しては樹脂の未充填を引き起こし成形不良となるという問題点があった。
【0016】
本発明は、これら課題を解決するものであり、ゲート下部の樹脂厚が薄く、樹脂形状やゲート位置に制限がある場合であっても、ゲート切断時においてゲート直下部のリードフレームからの樹脂の剥離によるリード裏面の露出を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明の半導体装置用パッケージは、1または複数のリードを備えるリードフレームと、前記リードフレームを保持する樹脂部と、前記リードフレームの素子搭載領域およびボンディング領域を露出する前記樹脂部の開口部と、前記樹脂部に形成されるゲート樹脂残り部と、前記ゲート樹脂残り部の周囲に形成されて前記ゲート樹脂部の突出量より深さの深い窪み部と、前記ゲート樹脂残り部近傍の前記リードフレームに施された前記リードフレーム表層よりも前記樹脂部との密着性の高い表面処理部とを有することを特徴とする。
【0018】
また、前記樹脂部の前記窪み部における最小の樹脂厚が前記ゲート樹脂残り部の直径寸法以下であっても良い。
また、前記リードフレームが、リードフレーム素地と、リードフレーム素地表面に積層されて最外層がPd層である中間層と、前記中間層の表面に積層されて前記Pd層より前記樹脂部との密着力の低い最表層とで構成され、前記表面処理部が露出した前記Pd層であっても良い。
【0019】
また、前記リードフレームが、リードフレーム素地と、リードフレーム素地表面に積層される中間層と、前記中間層の表面に積層される最表層とで構成され、前記表面処理部が、前記中間層の一部または全部と前記最表層とを削除した領域に形成する酸化膜または水酸化膜であっても良い。
【0020】
また、前記リードフレームが、CuまたはCu合金のリードフレーム素地と、リードフレーム素地表面に積層される中間層と、前記中間層の表面に積層される最表層とで構成され、前記表面処理部が、露出する前記リードフレーム素地であっても良い。
【0021】
また、前記表面処理部が、前記リードフレーム表面に形成されて前記リードフレームの最表層よりも前記樹脂部との密着力の高い金属層あるいは酸化膜または水酸化膜であっても良い。
【0022】
また、本発明の半導体装置は、前記半導体装置用パッケージと、前記素子搭載領域に搭載される半導体素子と、前記半導体素子と前記ボンディング領域とを電気的に接続するワイヤと、前記開口部に充填される封止樹脂とを有することを特徴とする。
【0023】
また、前記半導体素子が光半導体素子であっても良い。
また、前記封止樹脂が、蛍光体含有樹脂と、前記蛍光体含有樹脂上に封止する透光性樹脂とからなっても良い。
【0024】
さらに、本発明の半導体装置は、ボンディング領域を備える1または複数のリードおよびダイパッドからなるリードフレームと、前記ダイパッドに搭載される半導体素子と、前記半導体素子と前記ボンディング領域とを電気的に接続するワイヤと、前記半導体素子および前記ワイヤを封止する樹脂部と、前記樹脂部に形成されるゲート樹脂残り部と、前記ゲート樹脂残り部の周囲に形成されて前記ゲート樹脂部の突出量より深さの深い窪み部と、前記ゲート樹脂残り部近傍の前記リードフレームに施された前記リードフレーム表層よりも前記樹脂部との密着性の高い表面処理部とを有することを特徴とする。
【0025】
また、本発明の半導体装置用パッケージの製造方法は、リードフレームを上金型と下金型の上下一対で構成される成形用の金型の間に配置する工程と、前記上下一対の金型を型締めして内部に形成されるキャビティに前記金型のゲートから溶融した樹脂をピンポイントゲート方式で注入する工程と、前記ゲートを切断して離型する工程とを有し、あらかじめ、前記金型内で前記ゲートの近傍に位置する領域の前記リードフレームの表層部分に前記リードフレーム表層より前記樹脂との密着力の高い表面処理部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、リードフレームのゲート樹脂残り部の近傍表面に、樹脂との密着性が向上するような表面処理を施すことにより、樹脂形状やゲート位置に制限があり、かつ、ゲート直下部の樹脂厚がゲート径より薄い場合でも、リードフレームと樹脂との接合強度が向上するため、ゲート切断時に樹脂が剥離することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の半導体装置用パッケージの構成を示す図
【図2】本発明の半導体装置の構成を例示する図
【図3】本発明の半導体装置用パッケージの樹脂成形に用いる成形金型の構成を例示する概略図断面
【図4】本発明の半導体装置の製造方法を示す断面図
【図5】実施の形態1におけるリードフレームの要部拡大断面図
【図6】実施の形態2におけるリードフレームの要部拡大断面図
【図7】実施の形態3におけるリードフレームの要部拡大断面図
【図8】実施の形態4におけるリードフレームの要部拡大断面図
【図9】ピンポイントゲート方式で作成された従来の半導体装置用パッケージを示す断面図
【図10】従来の半導体装置用パッケージにおけるゲート直下部の樹脂の剥離を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、図1,図2を用いて、本発明の半導体装置用パッケージおよび半導体装置について説明する。
図1は本発明の半導体装置用パッケージの構成を示す図であり、図1(a)は上面外略図,図1(b)は図1(a)のX−X’断面図,図1(c)はリード形状の構成例である。図2は本発明の半導体装置の構成を例示する図であり、図2(a)は樹脂を透視して示す上面外略図,図2(b)は図2(a)のX−X’断面図,図2(c)は図1に示す半導体装置用パッケージを用いた半導体装置の構成を例示する断面図である。
【0029】
図1に示す半導体装置用パッケージは光半導体装置に用いる光半導体装置用パッケージであり、2以上のリード30と、リード30を保持する樹脂部31とからなる。また、樹脂部31には、リード30の素子搭載領域32とワイヤボンディング領域33とを開口するリフレクター34が形成される。また、樹脂部31のリフレクター34形成面に対する裏面には窪み部35が形成され、窪み部35から突出しないゲート樹脂残り部36が窪み部35内に残存している。本発明の半導体装置用パッケージの特徴は、ゲート樹脂残り部36のゲート径37が窪み部35における樹脂厚38よりも大きく、かつ、ゲート樹脂残り部36近傍のリード30表面に、樹脂部31の樹脂との密着力が向上する表面処理39が施されていることである。ここで、図1においては、リード30が3本(図1(a))または2本(図1(c))の場合を例示しているが、リード30の形状および本数は任意である。
【0030】
図2は本発明の半導体装置を例示し、図2(a),図2(b)はリードフレーム40に搭載された半導体素子41を封止樹脂42により樹脂封止して形成された半導体装置を示す。このような半導体装置においても、半導体素子41の搭載面に対する裏面側の、ダイパッドあるいはリードの表面におけるゲート樹脂残り部36の近傍に表面処理39を施し、封止樹脂42に窪み部35が形成され、樹脂厚38よりゲート径37の大きいゲート樹脂残り部36が窪み部35から突出しないことを特徴とする。また、図2(c)は図1に示す光半導体装置用パッケージの素子搭載領域32に光半導体素子43を搭載し、リフレクター34内を透光性樹脂44で封止した光半導体装置である。
【0031】
図1,図2に示すように、リード30、またはリードおよびダイパッドで構成されるリードフレーム40のゲート樹脂残り部36近傍の表面に、樹脂部31の樹脂との密着力が向上する表面処理39を施すことにより、ゲート直下部の樹脂厚38がゲート径37より薄く、樹脂形状やゲート位置に制限がある場合でも、リードフレームと樹脂との接合強度が向上するため、ゲート切断時に樹脂が剥離することを抑制することができる。それにより、耐湿性、気密性、実装性に優れ、小型化、低背化により樹脂の厚みが薄型化された、側面発光型や、SMD型を主とした半導体装置用パッケージや半導体装置を提供することができる。
【0032】
次に、図3,図4を用いて本発明の半導体装置用パッケージおよび半導体装置の製造方法について説明する。以下、光半導体装置用パッケージおよび光半導体装置を例に説明する。
【0033】
図3は本発明の半導体装置用パッケージの樹脂成形に用いる成形金型の構成を例示する概略図断面であり、図3(a),図3(b)はそれぞれ互いに直交する方向における断面図である。図4は本発明の半導体装置の製造方法を示す断面図であり、図4(a)は半導体装置用パッケージを示す図、図4(b)は素子搭載工程、図4(c)は樹脂封止工程を示し、図4(d)は樹脂封止工程の別例を示す。
【0034】
まず、本発明の半導体装置用パッケージの製造方法を説明する。
図3に示すように、樹脂成形体100(図4参照)の形成領域となるキャビティ5を備える上金型1と下金型13とで、後述の製造方法で形成したリードフレーム21を型締めする。次に、上金型1に設けられたピンポイントゲート7から樹脂を注入し、リードフレーム21を保持する樹脂成形体100(図4参照)を成形する。次に、金型を離型することにより、ピンポイントゲート7内に残存するゲートを樹脂成形体100(図4参照)から切断し、図4(a)に例示する本発明の半導体装置用パッケージを製造する。
【0035】
このように、図4に示す本発明の半導体装置用パッケージは、リードフレーム21を覆う形で熱可塑性樹脂もしくは熱硬化性樹脂からなる樹脂成形体100が形成され、該樹脂成型体100の第1面側にはリフレクター34となる開口部103が設けられ、開口部103の底部には、半導体素子300を載置する第1のリード101の素子搭載領域32と該半導体素子300を電気的に接続するための第2のリード102の夫々の主面の一部分が露出している。
【0036】
そして、上述のように、前記樹脂成型体100の第1面と反対裏面側には、ゲートを切断したゲート樹脂残り部105が残存し、該ゲート樹脂残り部105の突起が表面から突出しないように窪み部104が設けられている。また、前記樹脂成型体100のゲート直下部の樹脂の厚み203はゲート径206より薄く成形されている。さらに、このゲート直下部の樹脂の厚み203を薄く形成しても、ゲート切断時にリードフレーム21から樹脂が剥離しないように、リードフレーム21のゲート直下部の樹脂と接する部分に接着強度を高めるための表面処理39を施したエリア26が形成されている。
【0037】
ここで、リードフレーム21の表面と樹脂との密着性は、親水性を備える−OH基を有する樹脂と、−O基を有するリードフレーム21表面層との間の水素結合によって確保されている。そのため、表面処理39により、樹脂と接するリードフレーム21表面層をより酸化し易い材質の層とすることが有用である。また、密着性は接着表面の状態によっても向上するため、リードフレーム21表面層の表面粗さを粗くすることも有用である。
【0038】
次に、上述のパッケージを用いた半導体装置の製造方法を説明する。
まず、図4(a)に示す半導体装置用パッケージの第1のリード101の素子搭載領域32に半導体素子300を載置し、半導体素子300と第2のリード102とをワイヤ301で電気的に接続する(図4(b))。そして、開口部103に封止樹脂302が充填され、半導体素子300を封止することにより半導体装置が形成される(図4(c))。
【0039】
この時、半導体素子300が発光素子の場合、半導体素子300(この場合は発光素子)を覆うように蛍光体含有樹脂303を封止した後、その上部に透光性樹脂304を設けることにより、光半導体装置を形成する(図4(d))。
【0040】
次に、各実施の形態として表面処理の具体的な構成について説明する。
《実施の形態1》
図5は実施の形態1におけるリードフレームの要部拡大断面図である。
【0041】
図5に示すように、リードフレーム51は、リードフレーム素地22に、素地金属の拡散を防止する中間層であるNi(ニッケル)層23,Pd(パラジウム)層24と、半導体素子や基板等との実装性を確保するためのAu(金)層25とが積層されて形成され、ゲート樹脂残り部が形成される領域近傍のエリア26において、Au層25が除去されてPd層24が露出する表面処理39が施される。
【0042】
具体的には、リードフレーム素地(厚さ約150μm)22は、熱伝導性や放熱性などを考慮して、一般的にCu(銅)またはCu合金で形成される。また、非銅系金属(例えばFeNi合金)を使用する場合は、その最外層にCuもしくはCu合金の層を形成することが好ましい。また、上記記載のリードフレーム素地22の全面に被覆したNi(ニッケル)層(厚さ約0.8μm)23を下地層として、Pd(パラジウム)層(厚さ約0.15μm)24が全面に形成され、その上からリードフレームの表面層としてAu(金)層(厚さ約0.008μm)25を形成してリードフレーム51が形成され、表面処理として、リードフレーム51のゲート直下部の樹脂と接する領域であるエリア26における最表層のAu層25を除去して第2層のパラジウム層24を外部へ露出させる。
【0043】
Pd層24を露出させた表面処理を施す方法として、他に、リードフレーム51にPd層24を形成した後、衆知の技術であるマスキング法を用いてエリア26にマスキングを施し、Auめっき処理を行った後、マスキングを除去する方法もある。エリア26以外の全面にPd層24を露出させる場合はこの方法が有効である。
【0044】
図3に示すように、上記の構成のリードフレームを下型13に位置決めして載置し、当該下型13に対して上型1を型締めした後、ゲート7を介して成形樹脂がキャビティ5内へ充填され成形樹脂の硬化後、成形機と連動してゲート切断され、金型より離型することによって半導体装置用パッケージが成形される。
【0045】
本発明はゲート直下部の樹脂と接するリードフレーム51のエリア26において最表層の少なくとも一部分をPd層24とすることにより、AuよりPdの方が樹脂と水素結合しやすいので、最外層がAu層25である場合に比べて成形樹脂との接合強さを強くすることができ、樹脂形状やゲート位置に制限がありピンポイントゲート方式で樹脂を成形した場合で、ゲート直下の樹脂厚をゲート径より薄くしたとしても、ゲート切断時におけるゲート直下のリードフレームからの樹脂の剥離の発生を防ぐことができる。
【0046】
ここで、Pd層24として、コスト高となる純度の高いPdを形成する代わりに、不純物の混入等により純度を落としたPd層もしくはPd合金層とすることもできる。さらに、Pd層にかわり、Cu等の素地金属の拡散を防止でき、成形樹脂に対する接合強さがAu層等のリードフレーム開口部最表層よりも高い金属層とすることもできる。
【0047】
なお、本発明のリードフレームは、リードフレーム素地22の材質により、素地金属の拡散を防止する1または複数層の中間層と、最表層に実装性の高い材質からなる層を形成し、本実施の形態ではエリア26において、最表層より樹脂との密着性の高い中間層を露出させることを特徴とし、その範囲において組成は任意である。例えば、実装性を確保するため最表層にAuやAgを用いられることが一般的であり、露出される中間層として用いられる材料としては、酸化力の強い材質が好ましく、Auを最表層に用いた場合はAl,Zn,Fe,Ni,Agを用いることができ、Ag,Auを最表層に用いた場合はAl,Zn,Fe,Niを用いることができる。なお、Al,Zn,Fe,Ni,Ag,Auはこの順で酸化しやすい傾向がある。
【0048】
以下の各実施の形態では、リードフレーム21の表面処理39(図1,図2参照)部分のみを説明し、他の共通する構成については説明を省略する。
《実施の形態2》
図6は実施の形態2におけるリードフレームの要部拡大断面図である。
【0049】
図6に示すように、実施の形態2のリードフレーム61は、リードフレーム素地22に、例えば、実施の形態1と同様に、下地層である例えばNi(ニッケル)層23,Pd(パラジウム)層24等の中間層と、最表層であるAu(金)層25等とが積層されて形成され、ゲート樹脂残り部が形成される領域近傍のエリア26において、Ni層23,Pd層24およびAu層25を形成せず、リードフレーム素地22を露出し、リードフレーム素地22上に表面処理としてリードフレーム61の構成材料より樹脂との密着性の高い酸化膜27を形成することが特徴である。
【0050】
具体的には、衆知の技術であるマスキング法を用いて、リードフレーム素地22上のエリア26の部分にマスキングした状態で、リードフレーム素地22上にNi層23,Pd層24およびAu層25を積層した後、マスキングを除去することで、エリア26においてリードフレーム素地22の素地面を露出し、その他の領域にNi層23,Pd層24およびAu層25を積層する。また、エリア26においてリードフレーム素地22の素地面を露出する方法は、他にも、各金属層を生成した後、金属剥離液等を用いてエリア26の金属層を除去する等の方法を用いることもできる。
【0051】
その後、上記で形成したエリア26に表面処理として酸化膜27(CuO)を生成する。酸化膜27は、黒化処理液中(例えば有機アルカリ溶液)で陽極酸化させることにより生成される。酸化膜27は羽毛状を成すため、樹脂成形の際に、溶融した成形樹脂が膜内に進入してアンカー効果により接合力を高くすることができる。これにより、ゲート直下部の樹脂厚がゲート径より薄く、樹脂形状やゲート位置に制限がある場合でも、リードフレームと樹脂との接合強度が向上するため、ゲート切断時に樹脂が剥離することを抑制することができる。
《実施の形態3》
図7は実施の形態3におけるリードフレームの要部拡大断面図である。
【0052】
実施の形態3におけるリードフレーム71は、実施の形態2と同様にエリア26においてNi層23,Pd層24等の中間層およびAu層25等の最表層を積層せずにリードフレーム素地22の素地面を露出させ、エリア26のリードフレーム素地22上に表面処理として水酸化銅膜28(Cu(OH))等のリードフレーム71の構成材料より樹脂との密着性の高い水酸化膜を形成する。水酸化銅膜28(Cu(OH))は、リードフレーム素地22のエリア26の部分を自己還元力に優れた酸化剤を添加した黒化処理液中に浸漬することにより形成される。水酸化銅被膜28の水酸化物は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂等の硬化時に生成する水酸基(−OH)と水素結合を行うことにより接合力を高くすることができる。そのため、ゲート直下部の樹脂厚がゲート径より薄く、樹脂形状やゲート位置に制限がある場合でも、リードフレームと樹脂との接合強度が向上するため、ゲート切断時に樹脂が剥離することを抑制することができる。
【0053】
実施の形態2または実施の形態3において、リードフレーム素地22を露出して酸化膜あるいは水酸化膜を形成したが、中間層の一部が残存した状態で酸化膜あるいは水酸化膜を形成しても良い。また、酸化膜あるいは水酸化膜を最表層と面一に形成しても良いが、酸化膜あるいは水酸化膜が最表層より窪んだ形状にしても良い。
《実施の形態4》
図8は実施の形態4におけるリードフレームの要部拡大断面図である。
【0054】
実施の形態4におけるリードフレーム81は、実施の形態2,実施の形態3と同様にエリア26においてNi層23,Pd層24およびAu層25等を積層せずにリードフレーム素地22の素地面を露出させ、実施の形態2,実施の形態3と異なり、エリア26に水酸化銅膜28や水酸化銅膜28を形成せず、表面処理としてリードフレーム素地22であるCuまたはCu合金を露出させることを特徴とする。エリア26においてリードフレーム素地22を露出して樹脂を直接接触するようにし、CuまたはCu合金の表面粗さがリードフレーム71の構成材料よりの表面粗さより粗いため、その表面粗さに起因するアンカー効果により樹脂成形体との接合力を向上させることができる。これにより、ゲート直下部の樹脂厚がゲート径より薄く、樹脂形状やゲート位置に制限がある場合でも、リードフレームと樹脂との接合強度が向上するため、ゲート切断時に樹脂が剥離することを抑制することができる。
【0055】
以上の実施の形態2,実施の形態3ではエリア26の部分のみに接合強度を高めるための表面処理を施しているが、素子搭載領域やボンディング領域等を除く全面に同様の処理を施してもよく、少なくともゲート直下部の樹脂と接する部分において高い接着強度が確保し、実装性が要求される素子搭載領域やボンディング領域等にのみ最表層が露出すればよい。
【0056】
以上、本発明の表面処理の実施の形態について説明したが、リードフレームのゲート直下部の樹脂と接する部分の接合強度を高めるという本発明の技術的思想の主旨に基づいているならば、これらに限定されることなく種々の変形が可能である。
【0057】
例えば、実施の形態1では、リードフレーム51のエリア26のAu層25を除去して第2層であるPd層24を利用したが、これに代えて、当該エリア26の最外層のAu層25上に別途Pd層等の最表層より樹脂との密着力の高い層を形成することにより接合強さを高くしてもよい。同様に、リードフレームの最外層のAu層25上のエリア26に相当する部分に酸化膜や水酸化膜を形成することも有効である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、ゲート直下部の樹脂厚がゲート径より薄い場合でも、リードフレームと樹脂との接合強度が向上するため、ゲート切断時に樹脂が剥離することを抑制することができ、リードフレームと樹脂とで構成される半導体装置用パッケージとその製造方法、およびリードフレームを樹脂封止して成る半導体装置等に有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 上金型
5 キャビティ
7 ピンポイントゲート
13 下金型
21 リードフレーム
22 リードフレーム素地
23 Ni層
24 Pd層
25 Au層
26 エリア
27 酸化膜
28 水酸化銅膜
30 リード
31 樹脂部
32 素子搭載領域
33 ワイヤボンディング領域
34 リフレクター
35 窪み部
36 ゲート樹脂残り部
37 ゲート径
38 樹脂厚
39 表面処理
40 リードフレーム
41 半導体素子
42 封止樹脂
43 光半導体素子
44 透光性樹脂
51 リードフレーム
61 リードフレーム
71 リードフレーム
81 リードフレーム
100 樹脂成型体
101 第1のリード
102 第2のリード
103 開口部
104 窪み部
105 ゲート樹脂残り部
201 厚み
202 厚み
203 樹脂厚
206 ゲート径
300 半導体素子
301 ワイヤ
302 封止樹脂
303 蛍光体含有樹脂
304 透光性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数のリードを備えるリードフレームと、
前記リードフレームを保持する樹脂部と、
前記リードフレームの素子搭載領域およびボンディング領域を露出する前記樹脂部の開口部と、
前記樹脂部に形成されるゲート樹脂残り部と、
前記ゲート樹脂残り部の周囲に形成されて前記ゲート樹脂部の突出量より深さの深い窪み部と、
前記ゲート樹脂残り部近傍の前記リードフレームに施された前記リードフレーム表層よりも前記樹脂部との密着性の高い表面処理部と
を有することを特徴とする半導体装置用パッケージ。
【請求項2】
前記樹脂部の前記窪み部における最小の樹脂厚が前記ゲート樹脂残り部の直径寸法以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置用パッケージ。
【請求項3】
前記リードフレームが、
リードフレーム素地と、
リードフレーム素地表面に積層されて最外層がPd層である中間層と、
前記中間層の表面に積層されて前記Pd層より前記樹脂部との密着力の低い最表層と
で構成され、
前記表面処理部が露出した前記Pd層であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置用パッケージ。
【請求項4】
前記リードフレームが、
リードフレーム素地と、
リードフレーム素地表面に積層される中間層と、
前記中間層の表面に積層される最表層と
で構成され、
前記表面処理部が、前記中間層の一部または全部と前記最表層とを削除した領域に形成する酸化膜または水酸化膜であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置用パッケージ。
【請求項5】
前記リードフレームが、
CuまたはCu合金のリードフレーム素地と、
リードフレーム素地表面に積層される中間層と、
前記中間層の表面に積層される最表層と
で構成され、
前記表面処理部が、露出する前記リードフレーム素地であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置用パッケージ。
【請求項6】
前記表面処理部が、前記リードフレーム表面に形成されて前記リードフレームの最表層よりも前記樹脂部との密着力の高い金属層あるいは酸化膜または水酸化膜であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の半導体装置用パッケージ。
【請求項7】
請求項1〜6記載の半導体装置用パッケージと、
前記素子搭載領域に搭載される半導体素子と、
前記半導体素子と前記ボンディング領域とを電気的に接続するワイヤと、
前記開口部に充填される封止樹脂と
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
前記半導体素子が光半導体素子であることを特徴とする請求項7記載の半導体装置。
【請求項9】
前記封止樹脂が、蛍光体含有樹脂と、前記蛍光体含有樹脂上に封止する透光性樹脂とからなることを特徴とする請求項8記載の半導体装置。
【請求項10】
ボンディング領域を備える1または複数のリードおよびダイパッドからなるリードフレームと、
前記ダイパッドに搭載される半導体素子と、
前記半導体素子と前記ボンディング領域とを電気的に接続するワイヤと、
前記半導体素子および前記ワイヤを封止する樹脂部と、
前記樹脂部に形成されるゲート樹脂残り部と、
前記ゲート樹脂残り部の周囲に形成されて前記ゲート樹脂部の突出量より深さの深い窪み部と、
前記ゲート樹脂残り部近傍の前記リードフレームに施された前記リードフレーム表層よりも前記樹脂部との密着性の高い表面処理部と
を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
前記樹脂部の前記窪み部における最小の樹脂厚が前記ゲート樹脂残り部の直径寸法以下であることを特徴とする請求項10記載の半導体装置。
【請求項12】
前記リードフレームが、
リードフレーム素地と、
リードフレーム素地表面に積層されて最外層がPd層である中間層と、
前記中間層の表面に積層されて前記Pd層より前記樹脂部との密着力の低い最表層と
で構成され、
前記表面処理部が露出した前記Pd層であることを特徴とする請求項10または請求項11のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項13】
前記リードフレームが、
リードフレーム素地と、
リードフレーム素地表面に積層される中間層と、
前記中間層の表面に積層される最表層と
で構成され、
前記表面処理部が、前記中間層の一部または全部と前記最表層とを削除した領域に形成する酸化膜または水酸化膜であることを特徴とする請求項10または請求項11のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項14】
前記リードフレームが、
CuまたはCu合金のリードフレーム素地と、
リードフレーム素地表面に積層される中間層と、
前記中間層の表面に積層される最表層と
で構成され、
前記表面処理部が、露出する前記リードフレーム素地であることを特徴とする請求項10または請求項11のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項15】
前記表面処理部が、前記リードフレーム表面に形成されて前記リードフレームの最表層よりも前記樹脂部との密着力の高い金属層あるいは酸化膜または水酸化膜であることを特徴とする請求項10または請求項11のいずれかに記載の半導体装置。

【請求項16】
リードフレームを上金型と下金型の上下一対で構成される成形用の金型の間に配置する工程と、
前記上下一対の金型を型締めして内部に形成されるキャビティに前記金型のゲートから溶融した樹脂をピンポイントゲート方式で注入する工程と、
前記ゲートを切断して離型する工程と
を有し、
あらかじめ、前記金型内で前記ゲートの近傍に位置する領域の前記リードフレームの表層部分に前記リードフレーム表層より前記樹脂との密着力の高い表面処理部を形成することを特徴とする半導体装置用パッケージの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−51296(P2013−51296A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188079(P2011−188079)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】