説明

半導体装置

【課題】オン抵抗の増加を抑制する半導体装置を提供する。
【解決手段】本発明の半導体装置は、第1導電型の半導体基板1と、第2導電型の延長ドレイン層2と、第1導電型のコレクタ層4と、コレクタ電極5と、第1導電型ベース層8と、複数の第2導電型エミッタ層9と、第1導電型コンタクト層10と、エミッタ電極11と、ゲート酸化膜12と、ゲート電極13とを備え、ベース層8はエミッタ電極11からコレクタ電極5に向かう方向に対して垂直方向に離散的に形成されており、コンタクト層10のコレクタ電極5側界面は、複数のエミッタ層9に隣接する領域ではゲート電極13のエミッタ層9側界面の直下まで形成されており、コンタクト層10のコレクタ電極5側界面は、エミッタ層9の直下においてはゲート電極13のエミッタ層9側界面よりもエミッタ電極11側に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、高耐圧横型絶縁ゲート型バイポーラトランジスタなどの半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置では、高耐圧かつ大電流を流すパワーデバイスが用いられる。このパワーデバイスとしては、絶縁ゲートに印加される電圧によってスイッチング動作を行う、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ(以下、MOSFET)や、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(以下、IGBT)が用いられる。
【0003】
以下に、IGBTのスイッチング動作について説明する。一般的に、IGBTをオン状態にするには、エミッタ電極とゲート電極の間に正のゲート電圧を印加してP型ベース層を反転させてチャネルを形成させる。このとき、エミッタ電極とコレクタ電極の間に正のコレクタ電圧を印加されるとN型エミッタ層からP型ベース層を介してN−型延長ドレイン層へと電子電流が流れる。このとき、P型コレクタ層、N−型延長ドレイン層、P型ベース層で構成されるPNPバイポーラトランジスタが動作し、P型コレクタ層からN−型延長ドレイン層を介してP型ベース層へとホールが注入される。このホールはP型コレクタ層と電気的に接続したコレクタ電極から供給される。P型ベース層に注入されるホールは、P型ベース層とN型エミッタ層と電気的に接続されたエミッタ電極へと流れる。以上の動作によりコレクタ電極からエミッタ電極へと流れる電流をコレクタ電流と呼ぶ。一方、IGBTをオフ状態にするには、エミッタ電極とゲート電極間のゲート電圧を零にすることにより、N型エミッタ層からP型ベース層を介してN−型延長ドレイン層へと流れる電子電流を遮断する。このとき、PNPバイポーラトランジスタも動作せず、コレクタ電流も流れない。
【0004】
次にIGBTにおけるラッチアップ現象について説明する。IGBTがオン状態のとき、P型コレクタ層、N−型延長ドレイン層、P型ベース層によるPNPバイポーラ動作により、ホールがP型コレクタ層からP型ベース層へと注入される。一方、IGBTではN−型延長ドレイン層、P型ベース層、N型エミッタ層による寄生NPNバイポーラトランジスタが形成されている。バイポーラ動作によりホールがN型エミッタ層の直下に形成されるP型ベース層へと注入されるとき、P型ベース層の抵抗とホール電流によって電圧降下が起こる。P型ベース層とN型エミッタ層の電位差が接合電圧以上となると、寄生バイポーラトランジスタがターンオンし、N型エミッタ層からP型ベース層を介してN−型延長ドレイン層へと電子電流が流れる。寄生バイポーラトランジスタがターンオンすると、ゲート電圧制御によるスイッチング動作が不可能となり、最悪の場合、パワーデバイスの破壊に至る。このようにホール電流がP型ベース層に注入されて寄生NPNバイポーラトランジスタがターンオンする現象をラッチアップと呼ぶ。また、ラッチアップが発生するときのコレクタ電流をラッチアップ電流と呼ぶ。
【0005】
ホール電流によるラッチアップは、PNPバイポーラ動作だけでなく、アバランシェ状態においても同様に発生する。IGBTなどのパワーデバイスをスイッチング電源に用いる場合、通常インダクタンス負荷が用いられる。IGBTのターンオフ時、IGBTのコレクタ電圧は数100Vに上昇する。このとき、コレクタ電圧が降伏電圧以上に上昇した場合、アバランシェ状態となり、N−型延長ドレイン層とP型ベース層の間に多量の電子とホールが発生する。アバランシェ状態で発生したホールはP型ベース領域に流れ込む。このとき上記で説明したメカニズムと同様にラッチアップが発生し、パワーデバイスの破壊に至る。このようなアバランシェ状態によるラッチアップは、IGBTだけでなくMOSFETにおいても同様に発生する。なぜなら、MOSFETにおいてもN−型延長ドレイン層、P型ベース層、N型ソース層で構成されるNPN寄生バイポーラトランジスタを有しているからである。アバランシェ状態ではP型ベース層とN型ソース層の電位差が接合電圧以上となり、IGBTと同様にラッチアップが発生する。このように、IGBTやMOSFETではラッチアップが発生する可能性があるため、その耐性を改善する必要がある。
【0006】
そこで従来の半導体装置として、ラッチアップ電流を増加させることを目的とする横型絶縁バイポーラトランジスタ(以下、L−IGBT)について説明する。図16(A)は従来例にかかる半導体装置の構造について説明する平面図である。また、図16(B)及び図16(C)は従来例にかかる半導体装置の構造について説明する断面図であり、具体的には、図16(A)のB−B´線及びC−C´上における断面図である。
【0007】
この従来例に示すL−IGBTでは、P型半導体基板101の表面に、N−型延長ドレイン層102が形成され、N−型延長ドレイン層102表面にN型バッファ層103が形成され、その表面にN型バッファ層に覆われるようにP型コレクタ層104が形成されている。コレクタ電極105は、P型コレクタ層104と電気的に接続されている。また、N−型延長ドレイン層102の表面には、フィールド絶縁膜106を介して、層間膜107が形成されている。
【0008】
一方、半導体基板101表面には、P型コレクタ層104とは離間してP型ベース層108が形成されている。P型ベース層108の表面には、複数の短冊型のN型エミッタ層109が離散的に形成されている。ここで、N型エミッタ層109は、N型エミッタ層からP型コレクタ層104に向かう方向とは垂直方向に離散的に形成されている。また、P型ベース層108表面には、N型エミッタ層109よりも深い領域までP+型コンタクト層110が形成されている。エミッタ電極111は、N型エミッタ層109とP+型コンタクト層110と電気的に接続されている。
【0009】
また、P型ベース層108表面にはゲート酸化膜112を介してゲート電極113が接続されている。
【0010】
ここで、従来例に示す半導体装置では、N型エミッタ層109の直下にはP型ベース108よりも低抵抗であるP+型コンタクト層110が形成されているため、N型エミッタ層109とP+型コンタクト層110の電位差の発生が抑制されることにより、ラッチアップ電流を増大することを図っている。
【特許文献1】特開2008−16731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されるような半導体装置に生じる以下の問題を指摘する。特許文献1に示すL−IGBTでは、N型エミッタ層109とP+型コンタクト層110のコレクタ側界面がともにゲート電極のエミッタ側界面の直下まで形成されている。このとき、ゲート電極直下のP型ベース層108においてチャネル形成が十分になされないため、N型エミッタ層109からゲート電極直下のP型ベース層108を介して流れる電子電流が低下するため、オン抵抗が増加してしまう。
【0012】
上記課題に鑑み本発明は、オン抵抗の増加を抑制する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明に係る第1の半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、上記半導体基板の表面に形成される第2導電型の延長ドレイン層と、上記延長ドレイン層表面に形成される第1導電型のコレクタ層と、上記コレクタ層とは離間して形成される第1導電型ベース層と、上記ベース層の表面に離散的に形成される短冊型の複数の第2導電型エミッタ層と、上記ベース層表面から上記エミッタ層よりも深い領域まで形成される低抵抗の第1導電型コンタクト層と、上記エミッタ層と上記コンタクト層とを電気的に接続するエミッタ電極と、上記ベース層の表面にゲート酸化膜を介して接続されるゲート電極とを備えており、上記エミッタ層は上記エミッタ電極から上記コレクタ電極に向かう方向に対して垂直な方向である第1の垂直方向に離散的に形成されており、上記コンタクト層のコレクタ電極側界面は、上記複数のエミッタ層に隣接する領域では上記ゲート電極のエミッタ電極側界面の直下まで形成されており、上記エミッタ層の直下においては、上記ゲート電極のエミッタ電極側界面よりもエミッタ電極側に界面を有している。
【0014】
本発明に係る第1の半導体装置によると、エミッタ層の直下にベース層よりも低抵抗であるコンタクト層が形成されているため、エミッタ層とコンタクト層の電位差の発生が抑制されることにより、ラッチアップ電流を増大させることができる。また、本発明に係る第1の半導体装置においては、アバランシェ耐量を増大させることができる。
【0015】
さらに、本発明に係る第1の半導体装置によると、コンタクト層のコレクタ電極側界面を、エミッタ層に隣接する領域ではゲート電極のエミッタ電極側界面の直下まで形成し、エミッタ層の直下においてはゲート電極のエミッタ電極側界面よりもエミッタ電極側に形成することにより、ゲート電極直下のベース領域においてチャネル形成が十分になされるため、エミッタ層からゲート電極直下のベース層を介して流れる電流を低下させない。すなわち、オン抵抗の増加を抑制することができる。
【0016】
また、本発明に係る第1の半導体装置において、上記コンタクト層のコレクタ電極側界面からゲート電極のエミッタ電極側界面までの距離をLNとした場合に、0.5μm<LN<1.5μmを満たすことが好ましい。
【0017】
このようにすると、オン抵抗の増加を抑制したままラッチアップ電流の低下も抑制することができる。
【0018】
また、本発明に係る第1の半導体装置において、上記エミッタ層の直下に存在する上記ベース層及び上記コンタクト層に関して、上記第1の垂直方向の抵抗をRPと表記した場合に、7Ω<RP<200Ωを満たすことが好ましい。
【0019】
このようにすると、オン抵抗の増加を抑制したままラッチアップ電流を増大させることができる。具体的には、ラッチアップ電流>100A/cm2を満たすことができる。
【0020】
また、本発明に係る第1の半導体装置において、上記エミッタ層の上記第1の垂直方向の長さをWNとした場合に、0.3μm<WN<2.0μmを満たすことが好ましい。
【0021】
このようにすると、オン抵抗の増加を抑制したまま7Ω<RP<200Ωを満たすことができる。
【0022】
また、本発明に係る第1の半導体装置において、上記延長ドレイン層の表層部に、上記ベース領域と電気的に接続された第1導電型の頂上半導体層を備えていることが望ましい。
【0023】
このようにすると、延長ドレイン層内に頂上半導体層がさらに形成されているので、IGBT動作におけるターンオフ時に頂上半導体層からも半導体基板に残留している過剰キャリアを効率よく引き抜くことができる。
【0024】
さらには、このようにすると、逆バイアス時に、延長ドレイン層内に空乏層が拡がりやすくなるため、高耐圧を維持しながら、延長ドレイン層に含まれる不純物濃度の高濃度化を図ることができるので、延長ドレイン層内での少数キャリアのライフタイムの短縮化を図ることができ、スイッチング速度を改善することができる。
【0025】
また、本発明に係る第1の半導体装置において、上記延長ドレイン層内部に、上記ベース領域と電気的に接続された第1導電型の埋め込み半導体層をさらに備えていることが望ましい。
【0026】
このようにすると、延長ドレイン層内に埋め込み半導体層が更に形成されているので、IGBT動作におけるターンオフ時に、埋め込み半導体層からも、半導体基板に残留している過剰キャリアを効率良く引き抜くことができる。
【0027】
さらには、このようにすると、逆バイアス時に、延長ドレイン層内に空乏層が拡がりやすくなるため、高耐圧を維持しながら、延長ドレイン層に含まれる不純物濃度の高濃度化を図ることができるので、延長ドレイン層内での少数キャリアのライフタイムの短縮化を図ることができ、スイッチング速度を改善することができる。
【0028】
上記の課題を解決するために、本発明に係る第2の半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、上記半導体基板の表面に形成される第2導電型の延長ドレイン層と、上記延長ドレイン層表面に形成される第1導電型のコレクタ層と、上記延長ドレイン層表面に形成される第2導電型のドレイン層と、上記コレクタ層及び上記ドレイン層と電気的に接続されるコレクタ/ドレイン電極と、上記コレクタ層及び上記ドレイン層とは離間して形成される第1導電型ベース層と、上記ベース層の表面に離散的に形成される短冊型の複数の第2導電型エミッタ/ソース層と、上記ベース層表面から上記エミッタ/ソース層よりも深い領域まで形成される低抵抗の第1導電型コンタクト層と、上記エミッタ/ソース層と上記コンタクト層とを電気的に接続するエミッタ/ソース電極と、上記ベース層の表面にゲート酸化膜を介して接続されるゲート電極とを備えており、上記エミッタ/ソース層は上記エミッタ/ソース電極から上記コレクタ/ドレイン電極に向かう方向に対して垂直な方向である第2の垂直方向に離散的に形成されており、上記コンタクト層のコレクタ/ドレイン電極側界面は、上記複数のエミッタ/ソース層に隣接する領域では上記ゲート電極のエミッタ/ソース電極側界面の直下まで形成されており、上記エミッタ/ソース層の直下においては、上記ゲート電極のエミッタ/ソース電極側界面よりもエミッタ/ソース電極側に界面を有している。
【0029】
本発明に係る第2の半導体装置によると、エミッタ/ソース層の直下にベース層よりも低抵抗であるコンタクト層が形成されているため、エミッタ/ソース層とコンタクト層の電位差の発生が抑制されることにより、ラッチアップ電流を増大させることができる。また、本発明に係る第2の半導体装置においては、アバランシェ耐量を増大させることができる。
【0030】
さらに、本発明に係る第2の半導体装置によると、コンタクト層のコレクタ/ドレイン電極側界面をエミッタ/ドレイン層に隣接する領域ではゲート電極のエミッタ/ソース電極側界面の直下まで形成し、エミッタ/ソース層の直下においてはゲート電極のエミッタ/ソース電極側界面よりもエミッタ/ソース電極側に形成することにより、ゲート電極直下のベース領域においてチャネル形成が十分になされるため、エミッタ/ソース層からゲート電極直下のベース層を介して流れる電流を低下させない。すなわち、オン抵抗の増加を抑制することができる。
【0031】
また、本発明に係る第2の半導体装置において、上記コンタクト層のコレクタ/ドレイン電極側界面からゲート電極のエミッタ/ソース電極側界面までの距離をLN´とした場合に、0.5μm<LN´<1.5μmを満たすことが好ましい。
【0032】
このようにすると、オン抵抗の増加を抑制したままラッチアップ電流の低下も抑制することができる。
【0033】
また、本発明に係る第2の半導体装置において、上記エミッタ/ソース層の直下に存在する上記ベース層及び上記コンタクト層に関して、上記第2の垂直方向の抵抗をRP´と表記した場合に、7Ω<RP´<200Ωを満たすことが好ましい。
【0034】
このようにすると、オン抵抗の増加を抑制したままラッチアップ電流を増大させることができる。具体的には、ラッチアップ電流>100A/cm2を満たすことができる。
【0035】
また、本発明に係る第2の半導体装置において、上記エミッタ/ソース層の上記第2の垂直方向の長さをWN´とした場合に、0.3μm<WN´<2.0μmを満たすことが好ましい。
【0036】
このようにすると、オン抵抗の増加を抑制したまま7Ω<RP´<200Ωを満たすことができる。
【0037】
また、本発明に係る第2の半導体装置において、上記延長ドレイン層の表層部に、上記ベース領域と電気的に接続された第1導電型の頂上半導体層を備えていることが望ましい。
【0038】
このようにすると、延長ドレイン層内に頂上半導体層がさらに形成されているので、IGBT動作におけるターンオフ時に頂上半導体層からも半導体基板に残留している過剰キャリアを効率よく引き抜くことができる。
【0039】
さらには、このようにすると、逆バイアス時に、延長ドレイン層内に空乏層が拡がりやすくなるため、高耐圧を維持しながら、延長ドレイン層に含まれる不純物濃度の高濃度化を図ることができるので、延長ドレイン層内での少数キャリアのライフタイムの短縮化を図ることができ、スイッチング速度を改善することができる。
【0040】
また、本発明に係る第2の半導体装置において、上記延長ドレイン層内部に、上記ベース領域と電気的に接続された第1導電型の埋め込み半導体層をさらに備えていることが望ましい。
【0041】
このようにすると、延長ドレイン層内に埋め込み半導体層が更に形成されているので、IGBT動作におけるターンオフ時に、埋め込み半導体層からも、半導体基板に残留している過剰キャリアを効率良く引き抜くことができる。
【0042】
さらには、このようにすると、逆バイアス時に、延長ドレイン層内に空乏層が拡がりやすくなるため、高耐圧を維持しながら、延長ドレイン層に含まれる不純物濃度の高濃度化を図ることができるので、延長ドレイン層内での少数キャリアのライフタイムの短縮化を図ることができ、スイッチング速度を改善することができる。
【0043】
上記の課題を解決するために、本発明に係る第3の半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、上記半導体基板の表面に形成される第2導電型の延長ドレイン層と、上記延長ドレイン層表面に形成される第2導電型のドレイン層と、上記ドレイン層とは離間して形成される第1導電型ベース層と、上記ベース層の表面に離散的に形成される短冊型の複数の第2導電型ソース層と、上記ベース層表面から上記ソース層よりも深い領域まで形成される低抵抗の第1導電型コンタクト層と、上記ソース層と上記コンタクト層とを電気的に接続するソース電極と、上記ベース層の表面にゲート酸化膜を介して接続されるゲート電極とを備えており、上記ソース層は上記ソース電極から上記ドレイン電極に向かう方向に対して垂直な方向である第3の垂直方向に離散的に形成されており、上記コンタクト層のドレイン電極側界面は、上記複数のソース層に隣接する領域では上記ゲート電極のソース電極側界面の直下まで形成されており、上記ソース層の直下においては、上記ゲート電極のソース電極側界面よりもソース電極側に界面を有している。
【0044】
本発明に係る第3の半導体装置によると、ソース層の直下にベース層よりも低抵抗であるコンタクト層が形成されているため、ソース層とコンタクト層の電位差の発生が抑制されることにより、ラッチアップ電流を増大させることができる。つまり、本発明に係る第3の半導体装置においては、アバランシェ耐量を増大させることができる。
【0045】
さらに、本発明に係る第3の半導体装置によると、コンタクト層のドレイン電極側界面をソース層に隣接する領域ではゲート電極のソース電極側界面の直下まで形成し、ソース層の直下においてはゲート電極のソース電極側界面よりもソース電極側に形成することにより、ゲート電極直下のベース領域においてチャネル形成が十分になされるため、ソース層からゲート電極直下のベース層を介して流れる電流を低下させない。すなわち、オン抵抗の増加を抑制することができる。
【0046】
また、本発明に係る第3の半導体装置において、上記コンタクト層のドレイン電極側界面からゲート電極のソース電極側界面までの距離をLN´´とした場合に、0.5μm<LN´´<1.5μmを満たすことが好ましい。
【0047】
このようにすると、オン抵抗の増加を抑制したままアバランシェ耐量の低下も抑制することができる。
【0048】
また、本発明に係る第3の半導体装置において、上記ソース層の直下に存在する上記ベース層及び上記コンタクト層に関して、上記第3の垂直方向の抵抗をRP´´と表記した場合に、7Ω<RP´´<200Ωを満たすことが好ましい。
【0049】
このようにすると、オン抵抗の増加を抑制したままラッチアップ電流を増大させることができる。具体的には、アバランシェ破壊時にソースに流れる電流>100A/cm2を満たすことができる。
【0050】
また、本発明に係る第3の半導体装置において、上記ソース層の上記第3の垂直方向の長さをWN´´とした場合に、0.3μm<WN´´<2.0μmを満たすことが好ましい。
【0051】
このようにすると、オン抵抗の増加を抑制したまま7Ω<RP´´<200Ωを満たすことができる。
【0052】
また、本発明に係る第3の半導体装置において、上記延長ドレイン層の表層部に、上記ベース領域と電気的に接続された第1導電型の頂上半導体層を備えていることが望ましい。
【0053】
このようにすると、逆バイアス時に、延長ドレイン層内に空乏層が拡がりやすくなるため、高耐圧を維持しながら、延長ドレイン層に含まれる不純物濃度の高濃度化を図ることができるので、延長ドレイン層の低抵抗化が実現できる。つまり、オン抵抗を小さくすることができる。
【0054】
また、本発明に係る第3の半導体装置において、上記延長ドレイン層内部に、上記ベース領域と電気的に接続された第1導電型の埋め込み半導体層をさらに備えていることが望ましい。
【0055】
このようにすると、逆バイアス時に、延長ドレイン層内に空乏層が拡がりやすくなるため、高耐圧を維持しながら、延長ドレイン層に含まれる不純物濃度の高濃度化を図ることができるので、延長ドレイン層の低抵抗化が実現できる。つまり、オン抵抗を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0056】
以上のように本発明によれば、コンタクト層のコレクタ電極側界面をエミッタ層に隣接する領域ではゲート電極のエミッタ電極側界面の直下まで形成し、エミッタ層の直下においてはゲート電極のエミッタ電極側界面よりもエミッタ電極側に形成することにより、新たなプロセスを導入することなくオン抵抗の増加を抑制することができる。
【0057】
さらにエミッタ層の直下に存在するベース層及びコンタクト層に関して、エミッタ電極からコレクタ電極5に向かう方向に対して垂直方向の抵抗をRPと表記した場合に7Ω<RP<200Ωを満たすことにより、新たなプロセスを導入することなくラッチアップ電流>100A/cm2を満たすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下に、本発明の半導体装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0059】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置について、図1を参照しながら説明する。図1(A)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造について示す平面図である。図1(B)及び図1(C)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の構造について示す断面図であり、それぞれ図1(A)におけるB−B´線及びC−C´線に沿った断面図を示している。なお、図1(A)においては、一部の構成要素の図示を省略している。
【0060】
図1(B)及び図1(C)に示すように、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置は、第1導電型の半導体基板1と、半導体基板の表面に形成される第2導電型の延長ドレイン層2と、延長ドレイン層2の表面に形成される第1導電型のコレクタ層4と、コレクタ層4と電気的に接続されるコレクタ電極5と、コレクタ層4とは離間して形成される第1導電型ベース層8と、ベース層8の表面に離散的に形成される短冊型の複数の第2導電型エミッタ層9と、ベース層8の表面からエミッタ層8よりも深い領域まで形成される第1導電型コンタクト層10と、エミッタ層9とコンタクト層10とを電気的に接続するエミッタ電極11と、ベース層8の表面にゲート酸化膜12を介して接続されるゲート電極13とを備える。
【0061】
エミッタ層8はエミッタ電極11からコレクタ電極5に向かう方向に対して垂直な方向である第1の垂直方向に離散的に形成されている。コンタクト層10のコレクタ電極5側沿面は、複数のエミッタ層9に隣接する領域ではゲート電極13のエミッタ層9側沿面の直下まで形成されている。コンタクト層10のコレクタ電極5側沿面は、エミッタ層9の直下においてはゲート電極13のエミッタ層9側沿面よりもエミッタ電極11側に形成されている。以下では、理解を容易にするため第1導電型がP型、第2導電型がN型であるものとして説明する。なお、第1導電型と第2の導電型とは、これに限らず逆の導電型であればよい。ここで、第1の垂直方向は、図中の矢線W1の方向であり、平面図において、つまり上面側又は下面側から見て、エミッタ電極11からコレクタ電極5に向かう方向に対して垂直な方向をいう。
【0062】
P−型半導体基板1(例えば濃度1×1014/cm3程度)の表面にN−型延長ドレイン層2(例えば濃度1×1016/cm3程度で深さ7μm程度)が形成されている。N−型延長ドレイン層2の表面には、P型コレクタ層4(例えば濃度1×1019/cm3程度)が形成されている。
【0063】
コレクタ電極5がP型コレクタ層4と電気的に接続されている。N−型延長ドレイン層2の表面には、フィールド絶縁膜6を介して層間膜7が形成されている。
【0064】
P−型半導体基板1の表面には、N−型延長ドレイン層2と離間してP型ベース層8(例えば濃度1×1017/cm3〜5×1017/cm3程度、深さ1.5μm程度)が形成されている。P型ベース層8の表面内には、短冊型のN+型エミッタ層9(例えば濃度1×1020/cm3程度、深さ0.5μm程度)が離散的に複数形成されている。
【0065】
また、P型ベース層8の表面からN+型エミッタ層9よりも深い領域まで、P+型コンタクト層10(例えば濃度1×1018/cm3程度、深さ1μm程度)が形成されている。N+型エミッタ層9とP+型コンタクト層10の構造については後述する。
【0066】
N+型エミッタ層9とP型ベース層8はエミッタ電極11を介して電気的に接続されている。また、P型ベース層8の表面に、ゲート酸化膜12を介してゲート電極13が形成されている。
【0067】
ここで、N+型エミッタ層9とP+型コンタクト層10の構造について説明する。N+型エミッタ層9は、エミッタ電極11からコレクタ電極5に向かう方向(以下、L1方向)とは第1の垂直方向に離散的に形成されている。N+型エミッタ層9と上記第1の垂直方向に隣接する領域におけるP+型コンタクト層10のコレクタ電極5側界面は、ゲート電極13のエミッタ電極11側界面の直下に至るまで形成されている。一方、N+型エミッタ層9の直下におけるP+型コンタクト層10のコレクタ電極5側界面は、ゲート電極13のエミッタ電極11側界面直下よりも上記L1方向に距離LNだけエミッタ電極11側に離れた位置に形成されている。
【0068】
ここで、N+型エミッタ層9の直下におけるP+型コンタクト層10のコレクタ電極5側界面が、ゲート電極13のエミッタ電極11側界面直下よりも上記L1方向に距離LNだけエミッタ電極11側に離れた位置に形成されている場合には、P+型エミッタ層9の直下におけるP+型コンタクト層10のコレクタ電極5側界面は、ゲート電極13のエミッタ電極11側界面直下まで形成されている場合と比較して、コレクタ電流が大きくなる。N+型エミッタ層9の直下におけるP+型コンタクト層10のコレクタ電極5側界面が、ゲート電極13のエミッタ電極11側界面直下よりも上記L1方向に距離LNだけエミッタ電極11側に離れた位置に形成されている場合には、N+型エミッタ層9の直下におけるP+型コンタクト層10のコレクタ電極5側界面は、ゲート電極13のエミッタ電極11側界面直下まで形成されている場合と比較して、N+型エミッタ層9からゲート酸化膜12の直下のP型ベース層8を介してN−型延長ドレイン層2へと流れる電子電流量が大きくなるためである。
【0069】
このようにN+型エミッタ層9直下におけるP+型コンタクト層10のコレクタ電極5側界面をゲート電極13のエミッタ電極11側界面直下よりも上記L1方向に距離LNだけエミッタ電極11側に離れた位置に形成する場合において、LNの長さは0.5μm<LN<1.5μmとすることが好ましい。図2は、本願発明者らが第1の実施形態に基づき、LNの異なる半導体装置を実際に試作し、LNの長さに対してコレクタ電流とラッチアップ電流の関係を示したものである。コレクタ電流は、ゲート−エミッタ間に10Vを印加、コレクタ−エミッタ間に6Vを印加し、IGBTがオンしている状態におけるコレクタ電流を表している。つまり、コレクタ電流が大きいほど、オン抵抗が小さいことを示している。ラッチアップ電流は、ゲート−エミッタ間に10Vを印加し、コレクタ−エミッタ間電圧を徐々に上昇させ、IGBTがラッチアップを起こすときのコレクタ電流を表している。図2に示すように、LN>0.9μmの領域ではコレクタ電流が78A/cm2であるのに対して、LN<0.9μmの領域ではコレクタ電流が減少していることがわかる。コレクタ電流の減少を10%以内にとどめる、つまりコレクタ電流>70A/cm2を満足するためには、LN>0.5μmを満足することが好ましい。また、LNを長くするとラッチアップ電流が徐々に減少している。ラッチアップ電流>80A/cm2を満足するためには、LN<1.5μmを満足することが好ましい。つまり、LNは0.5μm<LN<1.5μmを満足することにより、コレクタ電流の減少を10%以内にとどめ、ラッチアップ電流の減少も抑制することが可能となる。
【0070】
さらに、N+型エミッタ層9直下におけるP型ベース層8及びP+型コンタクト層10の上記第1の垂直方向の抵抗RPについて説明する。図3(D)は、図1(A)における点線Dで囲んだ領域を拡大した平面図である。また、図3(E)及び図3(F)は、図3(D)におけるE−E´線及びF−F´線に沿った断面図を示している。
【0071】
短冊状で上記第1の垂直方向の長さWNを持つN+型エミッタ層9の上記第1の垂直方向の中央面GとN+型エミッタ層9の上記第1の垂直方向の端面Hを考える。このとき、N+型エミッタ層9直下で中央面Gに存在するホールがN型エミッタ9直下の端面Hまで移動する場合、ホールは以下に示す3つの抵抗の影響を受ける。
【0072】
1. 中央面Gから上記第1の垂直方向に長さXだけ移動するときに受ける、P型ベース層8の抵抗Rb
2. 中央面Gから上記第1の垂直方向に長さXだけ移動するときに受ける、P+型コンタクト層10の抵抗Rc1
3. 中央面Gから上記第1の垂直方向にXだけ離れた地点から、端面Hまで移動するときに受ける、P+型コンタクト層10の抵抗Rc2
【0073】
これらの3つの抵抗の合成抵抗がRPであり、RPは以下の式で表される。
【0074】
RP=(1/Rb+1/Rc1)-1+Rc2
【0075】
このように、N+型エミッタ層9直下におけるP型ベース層8及びP+型コンタクト層10の上記第1の垂直方向の合成抵抗RPを考えた場合、RPは、7Ω<RP<200Ωであることが好ましい。図4は、本願発明者らがRPの異なる半導体装置を実際に試作し、RPの大きさに対してコレクタ電流とラッチアップ電流の関係を示したものである。コレクタ電流、ラッチアップ電流の定義は前述したものと同一である。図4に示すように、RP<200Ωとした場合には、ラッチアップ電流を100A/cm2以上にすることが可能となる。また、RPが小さくなると、ラッチアップ電流がさらに増大することが分かる。また、コレクタ電流の大きさは78A/cm2程度であり、オン抵抗の増大は見られない。現在のN+型エミッタ層9、P+型コンタクト層10の注入プロセスを考慮すると、RPの下限は7Ω程度である。このように、N+型エミッタ層9の直下に存在するP型ベース層8及びP+型コンタクト層10の合成抵抗RPを7Ω<RP<200Ωとすることで、オン抵抗を増大させることなくラッチアップ電流を100A/cm2以上にすることができる。
【0076】
このようにN+型エミッタ層9の直下に存在するP型ベース層8及びP+型コンタクト層10の合成抵抗RPを7Ω<RP<200Ωとする場合において、N+型エミッタ層9の上記第1の垂直方向の長さWNは、0.3μm<WN<2.0μmとすることが好ましい。このようにすると、N型エミッタ層、P+型コンタクト層の注入プロセスを変更することなく、合成抵抗RPを7Ω<RP<200Ωとすることができる。
【0077】
(変型例1)
以下に、第1の実施形態に係る半導体装置の第1の変型例に係る半導体装置について、図5を参照しながら説明する。図5(A)は、本発明の第1の変型例に係る半導体装置の構造について示す平面図である。図5(B)及び図5(C)は、本発明の第1の変型例に係る半導体装置の構造について示す断面図であり、それぞれ図5(A)におけるB−B´線及びC−C´線に沿った断面図を示している。なお、図5(A)においては、一部の構成要素の図示を省略している。第1の変型例に係る半導体装置について、第1の実施形態に係る半導体装置と異なる点について、具体的に説明する。
【0078】
第1の変型例に係る半導体装置は、図5(B)及び図5(C)に示すように、N−型延長ドレイン層2の表層部に、P型ベース領域8と電気的に同電位であるP型頂上半導体層14を備えていることを特徴としている。
【0079】
本変型例に係る半導体装置によると、このようにP型頂上半導体層14を備えることにより、IGBT動作におけるターンオフ時に、P型頂上半導体層14からもP型半導体基板1に残留しているホールを引き抜くことができるために、ターンオフの時間を早くすることができる。
【0080】
さらには、このようにすると、逆バイアス時に、N−型延長ドレイン層2内に空乏層が広がりやすくなるため、高耐圧を維持しながらN−型延長ドレイン層2に含まれる不純物濃度の高濃度化を図ることができるため、N−型延長ドレイン層2内での少数キャリアのライフタイムの短縮化が可能となり、スイッチング速度を改善することができる。
【0081】
(変型例2)
以下に、第1の実施形態に係る半導体装置の第2の変型例に係る半導体装置について、図6を参照しながら説明する。図6(A)は、本発明の第2の変型例に係る半導体装置の構造について示す平面図である。図6(B)及び図6(C)は、本発明の第2の変型例に係る半導体装置の構造について示す断面図であり、それぞれ図6(A)におけるB−B´線及びC−C´線に沿った断面図を示している。なお、図6(A)においては、一部の構成要素の図示を省略している。第2の変型例に係る半導体装置について、第1の実施形態に係る半導体装置と異なる点について、具体的に説明する。
【0082】
第2の変型例に係る半導体装置は、図6(B)及び図6(C)に示すように、N−型延長ドレイン層2の内部に、P型ベース層8と同電位であるP型の埋め込み半導体層15を備えていることを特徴としている。
【0083】
本変型例に係る半導体装置によると、このようにP型頂上半導体層14を備えることにより、IGBT動作におけるターンオフ時に、P型埋め込み半導体層15からもP型半導体基板1に残留しているホールを引き抜くことができるために、ターンオフの時間を早くすることができる。
【0084】
さらには、このようにすると、逆バイアス時に、N−型延長ドレイン層2内に空乏層が広がりやすくなるため、高耐圧を維持しながら延長ドレイン層2に含まれる不純物濃度の高濃度化を図ることができるため、N−型延長ドレイン層2内での少数キャリアのライフタイムの短縮化が可能となり、スイッチング速度を改善することができる。
【0085】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る半導体装置について、図7及び図8を参照しながら説明する。図7は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構造について示す平面図である。図8(A)は、図7における点線で囲んだ領域Aを拡大した平面図である。図8(B)及び図8(C)は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の構造について示す断面図であり、それぞれ図8(A)におけるB−B´線及びC−C´線に沿った断面図を示している。なお、図7及び図8(A)においては、一部の構成要素の図示を省略している。
【0086】
図8(B)及び図8(C)に示すように、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置は、第1導電型の半導体基板1と、半導体基板1の表面に形成される第2導電型の延長ドレイン層2と、延長ドレイン層2の表面に形成される第1導電型のコレクタ層4と、延長ドレイン層表面に形成される第2導電型のドレイン層16と、コレクタ層4及びドレイン層16と電気的に接続されるコレクタ/ドレイン電極5´と、コレクタ層4及びドレイン層16とは離間して形成される第1導電型ベース層8と、ベース層8の表面に離散的に形成される短冊型の複数の第2導電型エミッタ/ソース層9´と、ベース層8の表面からエミッタ/ソース層9´よりも深い領域まで形成される第1導電型コンタクト層10と、エミッタ/ソース層9´とコンタクト層10とを電気的に接続するエミッタ/ソース電極11´と、ベース層8の表面にゲート酸化膜12を介して接続されるゲート電極13を備える。
【0087】
エミッタ/ソース層9´はエミッタ/ソース電極11´からコレクタ/ドレイン電極5´に向かう方向に対して垂直な方向である第2の垂直方向に離散的に形成されている。ここで、第2の垂直方向は、図中の矢線W2の方向であり、平面図において、つまり上面側又は下面側から見て、エミッタ/ソース電極11´からコレクタ/ドレイン電極5´に向かう方向に対して垂直な方向をいう。
【0088】
コンタクト層10のコレクタ/ドレイン電極5´側界面は、複数のエミッタ/ソース層9´に隣接する領域ではゲート電極13のエミッタ/ソース電極11´側界面の直下まで形成されている。
【0089】
コンタクト層10のコレクタ/ドレイン電極5´側界面は、エミッタ/ソース層9´の直下においてはゲート電極13のエミッタ/ソース電極11´側界面よりもエミッタ/ソース電極11´側に形成されている。
【0090】
P−型半導体基板1(例えば濃度1×1014/cm3程度)の表面にN−型延長ドレイン層2(例えば濃度1×1016/cm3程度で深さ7μm程度)が形成されている。延長ドレイン層2の表面には、P型コレクタ層4(例えば濃度1×1019/cm3程度)が形成されている。さらに延長ドレイン層2の表面にはN+型ドレイン層16(例えば濃度1×1020/cm3程度、深さ0.5μm程度)が形成されている。
【0091】
コレクタ/ドレイン電極5´がP型コレクタ層4及びN+型ドレイン層16と電気的に接続されている。N−型延長ドレイン層2の表面には、フィールド絶縁膜6を介して層間膜7が形成されている。
【0092】
P−型半導体基板1の表面には、N−型延長ドレイン層2と離間してP型ベース層8(例えば濃度1×1017/cm3〜5×1017/cm3程度、深さ1.5μm程度)が形成されている。P型ベース層8の表面内には、短冊型のN+型エミッタ/ソース層9´(例えば濃度1×1020/cm3程度、深さ0.5μm程度)が離散的に複数形成されている。
【0093】
また、P型ベース層8の表面からN+型エミッタ/ソース層9´よりも深い領域まで、P+型コンタクト層10(例えば濃度1×1018/cm3程度、深さ1μm程度)が形成されている。N+型エミッタ/ソース層9´とP+型コンタクト層10の構造については後述する。
【0094】
N+型エミッタ/ソース層9´とP型ベース層8はエミッタ/ソース電極11´を介して電気的に接続されている。また、P型ベース層8の表面に、ゲート酸化膜12を介してゲート電極13が形成されている。
【0095】
ここで、N+型エミッタ/ソース層9´とP+型コンタクト層10の構造について説明する。N+型エミッタ/ソース層9´は、エミッタ/ソース電極11´からコレクタ/ドレイン電極5´に向かう方向(以下、L2方向)とは第2の垂直方向に離散的に形成されている。N+型エミッタ/ソース層9´と上記第2の垂直方向に隣接する領域におけるP+型コンタクト層10のコレクタ/ドレイン電極5´側界面は、ゲート電極13のエミッタ/ソース電極11´側界面の直下に至るまで形成されている。一方、N+型エミッタ/ソース層9´の直下におけるP+型コンタクト層10のコレクタ/ドレイン電極5´側界面は、ゲート電極13のエミッタ/ソース電極11´側界面直下よりも上記L2方向に距離LN´だけエミッタ/ソース電極11´側に離れた位置に形成されている。
【0096】
このように、N−型延長ドレイン層2の表面にP型コレクタ層4及びN+型ドレイン層16を形成することにより、半導体装置に流れるコレクタ電流が比較的小さいときにはMOSFET動作をさせることができるとともに、コレクタ電流が大きくなるとIGBT動作させることができるために、ひとつの素子でMOSFET及びIGBTの二種類を使い分けることができる。従って、待機時や軽負荷時にはMOSFET動作をさせるとともに重負荷時にはIGBT動作をさせることができ、それによって軽負荷から重負荷までの全域に亘って損失を低減することができる。
【0097】
ここで、N+型エミッタ/ソース層9´の直下におけるP+型コンタクト層10のコレクタ/ドレイン電極5´側界面が、ゲート電極13のエミッタ/ソース電極11´側界面直下よりも上記L2方向に距離LN´だけエミッタ/ソース電極11´側に離れた位置に形成されている場合には、P+型エミッタ層9の直下におけるP+型コンタクト層10のコレクタ/ドレイン電極5´側界面は、ゲート電極13のエミッタ/ソース電極11´側界面直下まで形成されている場合と比較して、コレクタ電流が大きくなる。N+型エミッタ/ソース層9´の直下におけるP+型コンタクト層10のコレクタ/ドレイン電極5´側界面が、ゲート電極13のエミッタ/ソース電極11´側界面直下よりも上記L2方向に距離LN´だけエミッタ/ソース電極11´側に離れた位置に形成されている場合には、N+型エミッタ/ソース層9´の直下におけるP+型コンタクト層10のコレクタ/ドレイン電極5´側界面は、ゲート電極13のエミッタ/ソース電極11´側界面直下まで形成されている場合と比較して、N+型エミッタ/ソース層9´からゲート酸化膜12の直下のP型ベース層8を介してN−型延長ドレイン層2へと流れる電子電流量が大きくなるためである。
【0098】
このようにN+型エミッタ/ソース層9´直下におけるP+型コンタクト層10のコレクタ/ドレイン電極5´側界面をゲート電極13のエミッタ/ソース電極11´側界面直下よりも上記L2方向に距離LN´だけエミッタ/ソース電極11´側に離れた位置に形成する場合において、第1の実施形態に係る半導体装置と同様、LN´の長さは0.5μm<LN´<1.5μmとすることが好ましい。0.5μm<LN´<1.5μmを満足することにより、コレクタ電流の減少を10%以内にとどめ、ラッチアップ電流の減少も抑制することが可能となる。
【0099】
さらに、N+型エミッタ/ソース層9´直下におけるP型ベース層8及びP+型コンタクト層10の上記第2の垂直方向の抵抗RPについて説明する。図9(D)は、図8(A)における点線Dで囲んだ領域を拡大した平面図である。また、図9(E)及び図9(F)は、図8(D)におけるE−E´線及びF−F´線に沿った断面図を示している。
【0100】
短冊状で上記第2の垂直方向の長さWN´を持つN+型エミッタ/ソース層9´の上記第2の垂直方向の中央面GとN+型エミッタ/ソース層9´の上記第2の垂直方向の端面Hを考える。このとき、N+型エミッタ/ソース層9´直下で中央面Gに存在するホールがN+型エミッタ/ソース層9´直下の端面Hまで移動する場合、ホールは以下に示す3つの抵抗の影響を受ける。
【0101】
1. 中央面Gから上記第2の垂直方向に長さX´だけ移動するときに受ける、P型ベース層8の抵抗Rb´
2. 中央面Gから上記第2の垂直方向に長さX´だけ移動するときに受ける、P+型コンタクト層の抵抗Rc1´
3. 中央面Gから上記第2の垂直方向にX´だけ離れた地点から、端面Hまで移動するときに受ける、P+型コンタクト層の抵抗Rc2´
【0102】
これらの3つの抵抗の合成抵抗がRP´であり、RP´は以下の式で表される。
【0103】
RP´=(1/Rb´+1/Rc1´)-1+Rc2´
【0104】
N+型エミッタ/ソース層9´直下におけるP型ベース層8及びP+型コンタクト層10の上記第2の垂直方向の合成抵抗RP´について、第1の実施形態に係る半導体装置と同様に7Ω<RP´<200Ωであることが好ましい。N+型エミッタ/ソース層9´の直下に存在するP型ベース層8及びP+型コンタクト層10の合成抵抗RP´を7Ω<RP´<200Ωとすることで、オン抵抗を増大することなくラッチアップ電流を100A/cm2以上にすることができる。
【0105】
このようにN+型エミッタ/ソース層9´の直下に存在するP型ベース層8及びP+型コンタクト層10の合成抵抗RPを7Ω<RP´<200Ωとする場合において、N+型エミッタ/ソース層9´の上記第2の垂直方向の長さWN´は、0.3μm<WN´<2.0μmとすることが好ましい。このようにすると、N型エミッタ層、P+型コンタクト層の注入プロセスを変更することなく、合成抵抗RP´を7Ω<RP´<200Ωとすることができる。
【0106】
(変型例1)
以下に、第2の実施形態に係る半導体装置の第1の変型例に係る半導体装置について、図10を参照しながら説明する。図10(A)は、本発明の第1の変型例に係る半導体装置の構造について示す平面図である。図10(B)及び(C)は、本発明の第1の変型例に係る半導体装置の構造について示す断面図であり、それぞれ図10(A)におけるB−B´線及びC−C´線に沿った断面図を示している。なお、図10(A)においては、一部の構成要素の図示を省略している。第1の変型例に係る半導体装置について、第2の実施形態に係る半導体装置と異なる点について、具体的に説明する。
【0107】
第1の変型例に係る半導体装置は、図10(B)及び図10(C)に示すように、N−型延長ドレイン層2の表層部に、P型ベース領域8と電気的に同電位であるP型頂上半導体層14を備えていることを特徴としている。
【0108】
本変型例に係る半導体装置によると、このようにP型頂上半導体層14を備えることにより、IGBT動作におけるターンオフ時に、P型頂上半導体層14からもP型半導体基板1に残留しているホールを引き抜くことができるために、ターンオフの時間を早くすることができる。
【0109】
さらには、このようにすると、逆バイアス時に、N−型延長ドレイン層2内に空乏層が広がりやすくなるため、高耐圧を維持しながら延長ドレイン層2に含まれる不純物濃度の高濃度化を図ることができるため、N−型延長ドレイン層2内での少数キャリアのライフタイムの短縮化が可能となり、スイッチング速度を改善することができる。
【0110】
(変型例2)
以下に、第2の実施形態に係る半導体装置の第2の変型例に係る半導体装置について、図11を参照しながら説明する。図11(A)は、本発明の第2の変型例に係る半導体装置の構造について示す平面図である。図11(B)及び図11(C)は、本発明の第2の変型例に係る半導体装置の構造について示す断面図であり、それぞれ図11(A)におけるB−B´線及びC−C´線に沿った断面図を示している。なお、図11(A)においては、一部の構成要素の図示を省略している。第1の変型例に係る半導体装置について、第1の実施形態に係る半導体装置と異なる点について、具体的に説明する。
【0111】
第2の変型例に係る半導体装置は、図11(B)及び図11(C)に示すように、N−型延長ドレイン層2の内部に、P型ベース層8と同電位であるP型埋め込み半導体層15を備えていることを特徴としている。
【0112】
本変型例に係る半導体装置によると、このようにP型埋め込み半導体層14を備えることにより、IGBT動作におけるターンオフ時に、P型埋め込み半導体層15からもP型半導体基板1に残留しているホールを引き抜くことができるために、ターンオフの時間を早くすることができる。
【0113】
さらには、このようにすると、逆バイアス時に、N型延長ドレイン層2内に空乏層が広がりやすくなるため、高耐圧を維持しながらN−型延長ドレイン層2に含まれる不純物濃度の高濃度化を図ることができるため、N−型延長ドレイン層2内での少数キャリアのライフタイムの短縮化が可能となり、スイッチング速度を改善することができる。
【0114】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る半導体装置について、図12を参照しながら説明する。図12(A)は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の構造について示す平面図である。図12(B)及び図12(C)は、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の構造について示す断面図であり、それぞれ図12(A)におけるB−B´線及びC−C´線に沿った断面図を示している。なお、図12(A)においては、一部の構成要素の図示を省略している。
【0115】
図12(B)及び図12(C)に示すように、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置は、第1導電型の半導体基板1と、半導体基板1の表面に形成される第2導電型の延長ドレイン層2と、延長ドレイン層2の表面に形成される第2導電型のドレイン層16と、ドレイン層16と電気的に接続されるドレイン電極5´´と、ドレイン層16とは離間して形成される第1導電型ベース層8と、ベース層8の表面に離散的に形成される短冊型の複数の第2導電型ソース層9´´と、ベース層8の表面からソース層9´´よりも深い領域まで形成される第1導電型コンタクト層10と、ソース層9´´とコンタクト層10とを電気的に接続するソース電極11´´と、ベース層8の表面にゲート酸化膜12を介して接続されるゲート電極13を備える。
【0116】
ソース9´´層はソース電極11´´からドレイン電極5´´に向かう方向に対して垂直な方向である第3の垂直方向に離散的に形成されている。ここで、第3の垂直方向は、図中の矢線W3の方向であり、平面図において、つまり上面側又は下面側から見て、ソース電極11´´からドレイン電極5´´に向かう方向に対して垂直な方向をいう。
【0117】
コンタクト層のドレイン電極5´´側界面は、複数のソース層9´´に隣接する領域ではゲート電極13のソース電極11´´側界面の直下まで形成されている。
【0118】
コンタクト層のドレイン電極5´´側界面は、ソース層9´´の直下においてはゲート電極13のソース電極11´´側界面よりもソース電極11´´側に形成されている。
【0119】
P−型半導体基板1(例えば濃度1×1014/cm3程度)の表面にN−型延長ドレイン層2(例えば濃度1×1016/cm3程度で深さ7μm程度)が形成されている。延長ドレイン層2の表面には、N+型ドレイン層16(例えば濃度1×1020/cm3程度、深さ0.5μm程度)が形成されている。
【0120】
ドレイン電極5´´がN型ドレイン層16と電気的に接続されている。N−型延長ドレイン層2の表面には、フィールド絶縁膜6を介して層間膜7が形成されている。
【0121】
P−型半導体基板1の表面には、N−型延長ドレイン層2と離間してP型ベース層8(例えば濃度1×1017/cm3〜5×1017/cm3程度、深さ1.5μm程度)が形成されている。P型ベース層8の表面内には、短冊型のN+型ソース層9´´(例えば濃度1×1020/cm3程度、深さ0.5μm程度)が離散的に複数形成されている。
【0122】
また、P型ベース層8の表面からN+型ソース層9´´よりも深い領域まで、P+型コンタクト層10(例えば濃度1×1018/cm3程度、深さ1μm程度)が形成されている。N+型ソース層9´´とP+型コンタクト層10の構造については後述する。
【0123】
N+型ソース層9´´とP型ベース層8はソース電極11´´を介して電気的に接続されている。また、P型ベース層8の表面に、ゲート酸化膜12を介してゲート電極13が形成されている。
【0124】
ここで、N+型ソース層9´´とP+型コンタクト層10の構造について説明する。N+型ソース層9´´は、ソース電極11´´からドレイン電極5´´に向かう方向(以下、L3方向)とは第3の垂直方向に離散的に形成されている。N+型ソース層9´´と上記第3の垂直方向に隣接する領域におけるP+型コンタクト層10のドレイン電極5´´側界面は、ゲート電極13のソース電極11´´側界面の直下に至るまで形成されている。一方、N+型ソース層9´´の直下におけるP+型コンタクト層10のドレイン電極5´´側界面は、ゲート電極13のソース電極11´´側界面直下よりも上記L3方向に距離LNだけソース電極11´´側に離れた位置に形成されている。
【0125】
ここで、N+型ソース層9´´の直下におけるP+型コンタクト層10のドレイン電極5´´側界面が、ゲート電極13のソース電極11´´側界面直下よりも上記L3方向に距離LN´´だけソース電極11´´側に離れた位置に形成されている場合には、P+型エミッタ層9の直下におけるP+型コンタクト層10のドレイン電極5´´側界面は、ゲート電極13のソース電極11´´側界面直下まで形成されている場合と比較して、ドレイン電流が大きくなる。N+型ソース層9´´の直下におけるP+型コンタクト層10のドレイン電極5´´側界面が、ゲート電極13のソース電極11´´側界面直下よりも上記L3方向に距離LN´´だけソース電極11´´側に離れた位置に形成されている場合には、N+型ソース層9´´の直下におけるP+型コンタクト層10のドレイン電極5´´側界面は、ゲート電極13のソース電極11´´側界面直下まで形成されている場合と比較して、N+型ソース層9´´からゲート酸化膜12の直下のP型ベース層8を介してN−型延長ドレイン層2へと流れる電子電流量が大きくなるためである。
【0126】
このようにN+型ソース層9´´直下におけるP+型コンタクト層10のドレイン電極5´´側界面をゲート電極13のソース電極11´´側界面直下よりも上記L3方向に距離LN´´だけソース電極11´´側に離れた位置に形成する場合において、第1の実施形態に係る半導体装置と同様、LN´´の長さは0.5μm<LN´´<1.5μmとすることが好ましい。
【0127】
さらに、N+型ソース層9´´直下におけるP型ベース層8及びP+型コンタクト層10の上記第3の垂直方向の抵抗RP´´について説明する。図13(D)は、図12(A)における点線Dで囲んだ領域を拡大した平面図である。また、図13(E)及び図13(F)は、図12(D)におけるE−E´線及びF−F´線に沿った断面図を示している。
【0128】
短冊状で上記第3の垂直方向の長さWN´´を持つN+型ソース層9´´の上記第3の垂直方向の中央面GとN+型ソース層9´´の上記第3の垂直方向の端面Hを考える。このとき、N+型ソース層9´´直下で中央面Gに存在するホールがN+型ソース層9´´直下の端面Hまで移動する場合、ホールは以下に示す3つの抵抗の影響を受ける。
【0129】
1. 中央面Gから上記第3の垂直方向に長さX´´だけ移動するときに受ける、P型ベース層8の抵抗Rb´´
2. 中央面Gから上記第3の垂直方向に長さX´´だけ移動するときに受ける、P+型コンタクト層10の抵抗Rc1´´
3. 中央面Gから上記第3の垂直方向にX´´だけ離れた地点から、端面Hまで移動するときに受ける、P+型コンタクト層10の抵抗Rc2´´
【0130】
これらの3つの抵抗の合成抵抗がRP´´であり、RP´´は以下の式で表される。
【0131】
RP´´=(1/Rb´´+1/Rc1´´)-1+Rc2´´
【0132】
N+型ソース層9´´直下におけるP型ベース層8及びP+型コンタクト層10の上記第3の垂直方向の合成抵抗RP´´について、第1の実施形態に係る半導体装置と同様に7Ω<RP´´<200Ωであることが好ましい。N+型ソース層9´´の直下に存在するP型ベース層8及びP+型コンタクト層10の合成抵抗RP´´を7Ω<RP´´<200Ωとすることで、オン抵抗を増大することなくラッチアップ電流を100A/cm2以上にすることができる。具体的には、アバランシェ破壊時にソースに流れる電流>100A/cm2以上にすることができる。
【0133】
このようにN+型ソース層9´´の直下に存在するP型ベース層8及びP+型コンタクト層10の合成抵抗RP´´を7Ω<RP´´<200Ωとする場合において、N+型ソース層9´´の上記第3の垂直方向の長さWN´´は、0.3μm<WN´´<2.0μmとすることが好ましい。このようにすると、N型エミッタ層、P+型コンタクト層の注入プロセスを変更することなく、合成抵抗RP´´を7Ω<RP´´<200Ωとすることができる。
【0134】
(変型例1)
以下に、第3の実施形態に係る半導体装置の第1の変型例に係る半導体装置について、図14を参照しながら説明する。図14(A)は、本発明の第1の変型例に係る半導体装置の構造について示す平面図である。図14(B)及び図14(C)は、本発明の第1の変型例に係る半導体装置の構造について示す断面図であり、それぞれ図14(A)におけるB−B´線及びC−C´線に沿った断面図を示している。なお、図14(A)においては、一部の構成要素の図示を省略している。第1の変型例に係る半導体装置について、第3の実施形態に係る半導体装置と異なる点について、具体的に説明する。
【0135】
第1の変型例に係る半導体装置は、図14(B)及び図14(C)に示すように、N−型延長ドレイン層2の表層部に、P型ベース領域8と電気的に同電位であるP型頂上半導体層14を備えていることを特徴としている。
【0136】
本変型例に係る半導体装置によると、このようにP型頂上半導体層14を備えることにより、逆バイアス時に、N−型延長ドレイン層2内に空乏層が広がりやすくなるため、高耐圧を維持しながらN−型延長ドレイン層2に含まれる不純物濃度の高濃度化を図ることができるため、オン電流を増加させることができる。
【0137】
(変型例2)
以下に、第3の実施形態に係る半導体装置の第2の変型例に係る半導体装置について、図15を参照しながら説明する。図15(A)は、本発明の第2の変型例に係る半導体装置の構造について示す平面図である。図15(B)及び図15(C)は、本発明の第2の変型例に係る半導体装置の構造について示す断面図であり、それぞれ図15(A)におけるB−B´線及びC−C´線に沿った断面図を示している。なお、図15(A)においては、一部の構成要素の図示を省略している。第1の変型例に係る半導体装置について、第1の実施形態に係る半導体装置と異なる点について、具体的に説明する。
【0138】
第2の変型例に係る半導体装置は、図15(B)及び図15(C)に示すように、N−型延長ドレイン層2の内部に、P型ベース層8と同電位であるP型の埋め込み半導体層15を備えていることを特徴としている。
【0139】
本変型例に係る半導体装置によると、このようにP型頂上半導体層14を備えることにより、逆バイアス時に、N−型延長ドレイン層2内に空乏層が広がりやすくなるため、高耐圧を維持しながらN−型延長ドレイン層2に含まれる不純物濃度の高濃度化を図ることができるため、オン電流を増加させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の半導体装置は、オン抵抗を増大させることなくラッチアップ電流を増加させることができるため、スイッチング電源装置に用いられる高耐圧横型絶縁ゲート型バイポーラトランジスタなどの半導体装置に有効である。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】(A)第1の実施形態に係る半導体装置の構造について示す平面図、(B)B−B´断面図、(C)C−C´断面図である。
【図2】LNの長さを変化させた場合のコレクタ電流とラッチアップ電流の関係を示すグラフを示す図である。
【図3】(D)図1(A)における点線Dで囲んだ領域を拡大した平面図、(E)E−E´線に沿った断面図、(F)F−F´線に沿った断面図である。
【図4】合成抵抗RPを変化させた場合のコレクタ電流とラッチアップ電流の関係を示す図である。
【図5】(A)第1の実施の形態における第1の変型例に係る半導体装置の構造について示す平面図、(B)B−B´線に沿った断面図、(C)C−C´線に沿った断面図である。
【図6】(A)第1の実施の形態における第2の変型例に係る半導体装置の構造について示す平面図、(B)B−B´線に沿った断面図、(C)C−C´線に沿った断面図である。
【図7】第2の実施形態に係る半導体装置の構造について示す平面図である。
【図8】(A)は、図7中の領域Aを拡大した平面図、(B)B−B´線に沿った断面図、(C)C−C´線に沿った断面図である。
【図9】(D)図8(A)における点線Dで囲んだ領域を拡大した平面図、(E)E−E´線に沿った断面図、(F)F−F´線に沿った断面図である。
【図10】(A)第2の実施の形態における第1の変型例に係る半導体装置の構造について示す平面図、(B)B−B´線に沿った断面図、(C)C−C´線に沿った断面図である。
【図11】(A)第2の実施の形態に第2の変型例に係る半導体装置の構造について示す平面図、(B)B−B´線に沿った断面図、(C)C−C´線に沿った断面図である。
【図12】(A)本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の構造について示す平面図、(B)B−B´線に沿った断面図、(C)C−C´線に沿った断面図である。
【図13】(D)図12(A)における点線Dで囲んだ領域を拡大した平面図、(E)E−E´線に沿った断面図、(F)F−F´線に沿った断面図である。
【図14】(A)は、本発明の第1の変型例に係る半導体装置の構造について示す平面図、(B)B−B´線に沿った断面図、(C)C−C´線に沿った断面図である。
【図15】(A)本発明の第2の変型例に係る半導体装置の構造について示す平面図、(B)B−B´線に沿った断面図、(C)C−C´線に沿った断面図である。
【図16】(A)は従来例にかかる半導体装置の構造について説明する平面図、(B)B−B´線に沿った断面図、(C)C−C´線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0142】
1 第1導電型半導体基板
2 第2導電型延長ドレイン層
4 第1導電型コレクタ層
5 コレクタ電極
5´ コレクタ/ドレイン電極
5´´ ドレイン電極
6 フィールド絶縁膜
7 層間膜
8 第1導電型ベース層
9 第2導電型エミッタ層
9´ 第2導電型エミッタ/ソース層
9´´ 第2導電型ソース層
10 第1導電型コンタクト層
11 エミッタ電極
11´ エミッタ/ソース電極
11´´ ソース電極
12 ゲート酸化膜
13 ゲート電極
14 第1導電型頂上半導体層
15 第1導電型埋め込み半導体層
16 第2導電型ドレイン層
100 従来の半導体装置
101 第1導電型半導体基板
102 第2導電型延長ドレイン層
103 第2導電型バッファ層
104 第1導電型コレクタ層
105 コレクタ電極
106 フィールド酸化膜
107 層間膜
108 第1導電型ベース層
109 第2導電型エミッタ層
110 第1導電型コンタクト層
111 エミッタ電極
112 ゲート酸化膜
113 ゲート電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
上記半導体基板の表面に形成される第2導電型の延長ドレイン層と、
上記延長ドレイン層表面に形成される第1導電型のコレクタ層と、上記コレクタ層と電気的に接続されるコレクタ電極と、
上記コレクタ層とは離間して形成される第1導電型ベース層と、上記ベース層の表面に離散的に形成される短冊型の複数の第2導電型エミッタ層と、
上記ベース層表面から上記エミッタ層よりも深い領域まで形成される第1導電型コンタクト層と、
上記エミッタ層と上記コンタクト層とを電気的に接続するエミッタ電極と、
上記ベース層の表面にゲート酸化膜を介して接続されるゲート電極とを備えており、
上記エミッタ層は上記エミッタ電極から上記コレクタ電極に向かう方向に対して垂直な方向である第1の垂直方向に離散的に形成されており、
上記コンタクト層のコレクタ電極側界面は、上記複数のエミッタ層に隣接する領域では上記ゲート電極のエミッタ電極側界面の直下まで形成されており、
上記コンタクト層のコレクタ電極側界面は、上記エミッタ層の直下においては上記ゲート電極のエミッタ電極側界面よりもエミッタ電極側に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に示す半導体装置において、上記エミッタ層直下に存在する上記コンタクト層のコレクタ電極側界面からゲート直下までの距離をLNと定義するときに、0.5μm<LN<1.5μmを満たすことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1に示す半導体装置において、上記エミッタ層の直下における上記ベース層及び上記コンタクト層で構成される上記第1の垂直方向の抵抗をRPと定義するときに、7Ω<RP<200Ωであることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1に示す半導体装置において、上記エミッタ層の上記第1の垂直方向の長さをWNとした場合に、0.3μm<WN<2.0μmを満たすことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に示す半導体装置において、上記延長ドレイン層表層部に、第1導電型の頂上半導体層を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に示す半導体装置において、上記延長ドレイン層内部に、第1導電型の埋め込み半導体層を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
第1導電型の半導体基板と、
上記半導体基板の表面に形成される第2導電型の延長ドレイン層と、
上記延長ドレイン層表面に形成される第1導電型のコレクタ層と、
上記延長ドレイン層表面に形成される第2導電型のドレイン層と、
上記コレクタ層及び上記ドレイン層と電気的に接続されるコレクタ/ドレイン電極と、
上記コレクタ層及び上記ドレイン層とは離間して形成される第1導電型ベース層と、
上記ベース層の表面に離散的に形成される短冊型の複数の第2導電型エミッタ/ソース層と、
上記ベース層表面から上記エミッタ/ソース層よりも深い領域まで形成される第1導電型コンタクト層と、
上記エミッタ/ソース層と上記コンタクト層とを電気的に接続するエミッタ/ソース電極と、
上記ベース層の表面にゲート酸化膜を介して接続されるゲート電極とを備えており、
上記エミッタ/ソース層は上記エミッタ/ソース電極から上記コレクタ/ドレイン電極に向かう方向に対して垂直な方向である第2の垂直方向に離散的に形成されており、
上記コンタクト層のコレクタ/ドレイン電極側界面は、上記複数のエミッタ/ソース層に隣接する領域では上記ゲート電極のエミッタ/ソース電極側界面の直下まで形成されており、
上記コンタクト層のコレクタ/ドレイン電極側界面は、上記エミッタ/ソース層の直下においては上記ゲート電極のエミッタ/ソース電極側界面よりもエミッタ/ソース電極側に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7に示す半導体装置において、上記エミッタ/ソース層直下に存在する上記コンタクト層のコレクタ/ドレイン電極側界面からゲート直下までの距離をLN´と定義するときに、0.5μm<LN´<1.5μmを満たすことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項7に示す半導体装置において、上記エミッタ/ソース層の直下における上記ベース層及び上記コンタクト層で構成される上記第2の垂直方向の抵抗をRP´定義するときに、7Ω<RP´<200Ωであることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項7に示す半導体装置において、上記エミッタ/ソース層の上記第2の垂直方向の長さをWN´とした場合に、0.3μm<WN´<2.0μmを満たすことを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項7から請求項10のいずれか1項に示す半導体装置において、上記延長ドレイン層表層部に、第1導電型の頂上半導体層を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項7から請求項10のいずれか1項に示す半導体装置において、上記延長ドレイン層内部に、第1導電型の埋め込み半導体層を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
第1導電型の半導体基板と、
上記半導体基板の表面に形成される第2導電型の延長ドレイン層と、
上記延長ドレイン層表面に形成される第2導電型のドレイン層と、
上記ドレイン層と電気的に接続されるドレイン電極と、
上記ドレイン層とは離間して形成される第1導電型ベース層と、
上記ベース層の表面に離散的に形成される短冊型の複数の第2導電型ソース層と、
上記ベース層表面から上記ソース層よりも深い領域まで形成される第1導電型コンタクト層と、
上記ソース層と上記コンタクト層とを電気的に接続するソース電極と、
上記ベース層の表面にゲート酸化膜を介して接続されるゲート電極とを備えており、
上記ソース層は上記ソース電極から上記ドレイン電極に向かう方向に対して垂直な方向である第3の垂直方向に離散的に形成されており、
上記コンタクト層のドレイン電極側界面は、上記複数のソース層に隣接する領域では上記ゲート電極のソース電極側界面の直下まで形成されており、
上記コンタクト層のドレイン電極側界面は、上記ソース層の直下においては上記ゲート電極のソース電極側界面よりもソース電極側に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
請求項13に示す半導体装置において、上記ソース層直下に存在する上記コンタクト層のドレイン電極側界面からゲート直下までの距離をLN´´と定義するときに、0.5μm<LN´´<1.5μmを満たすことを特徴とする半導体装置。
【請求項15】
請求項13に示す半導体装置において、上記ソース層の直下における上記ベース層及び上記コンタクト層で構成される上記第3の垂直方向の抵抗をRP´´と定義するときに、7Ω<RP´´<200Ωであることを特徴とする半導体装置。
【請求項16】
請求項13に示す半導体装置において、上記ソース層の上記第3の垂直方向の長さをWN´´とした場合に、0.3μm<WN´´<2.0μmを満たすことを特徴とする半導体装置。
【請求項17】
請求項13から請求項16のいずれか1項に示す半導体装置において、上記延長ドレイン層表層部に、第1導電型の頂上半導体層を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項18】
請求項13から請求項16のいずれか1項に示す半導体装置において、上記延長ドレイン層内部に、第1導電型の埋め込み半導体層を備えることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−192833(P2010−192833A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38162(P2009−38162)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】