説明

半導体装置

【課題】小型化及び利得等の高周波性能の向上を図ることができる半導体装置として、実用的な高周波増幅器を実現する。
【解決手段】トランジスタ101の入力端に配線層103がコプレーナ線路で接続されており、配線層103には、開放端を有する配線層104が二つの方向に分岐されて終端され、配線層103上の位置から、高周波信号が入出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波帯及びミリ波帯において用いられる半導体装置に関し、特に高周波増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波帯及びミリ波帯において用いられる増幅器は、使用周波数帯における基本トランジスタの入出力インピーダンスを基にトランジスタの入出力に整合回路を設けて、50Ω整合となるように構成される。
【0003】
通常、トランジスタ及びその整合回路を含めた受動回路は、半導体基板を含めた誘電体基板の上に一体化して形成され、マイクロ波モノリシック集積回路(Microwave Monolithic IC:MMIC)と呼ばれる。
【0004】
MMICは、トランジスタの形成後、受動回路を形成する工程を経て作製され、作成の完了後、MMICとしての直流及び高周波特性を把握できることになる。特性不良の場合には再度、作製工程を行う必要があり、時間及びその他費用の浪費によるコストが高くなる。そのため、MMICの作製工程の途中の段階において高周波特性を把握しておき、MMICの仕様、例えば、所望の使用周波数帯及び利得等を満たすMMICを作製することが求められる。
【0005】
MMICは、携帯電話等の通信機器への実装搭載を前提としてパッケージングされる。一般には、作製工程の後、MMICチップの表面にはパッドが形成されており、該パッドとパッケージのリードとがボンディング用ワイヤを用いて電気的に接続される。ワイヤの代りにバンプを介してフリップチップ実装が行われることもある。パッケージの形態として、樹脂モールドパッケージ及びセラミックパッケージがある。
【0006】
MMICの作製工程の途中の段階において高周波特性を把握する手法は、非特許文献1及び特許文献1に提示されている。
【0007】
非特許文献1は、トランジスタの入出力に接続されるコプレーナ線路の実効的な長さを高周波プローブの接触位置により変えることにより、トランジスタに対する入出力インピーダンスを可変にできることを提示している。
【0008】
図8は、特許文献1の図3を示している。2本のコプレーナ線路の長さを2つのプローブを用いてそれぞれの接触位置を調整することにより、整合回路のインピーダンスの位置を変化させている。このように開放端スタブ及び短絡端スタブの長さを独立に変化させるために、2次元的にインピーダンスを調整することができる。
【非特許文献1】Bruce C. Schmukler,「Coplanar On-Wafer Matching Structures Tunable by RF-probe Position」IEEE MTT-S Digest, p.1481, 1994
【特許文献1】特開平10−209721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の半導体装置では、MMICの作製工程の途中の段階において高周波特性を把握することができるが、セットに搭載して使用できるパッケージングが可能な形態となっておらず、実用的な半導体装置としての高周波増幅器ではない。さらに、開放端スタブ及び短絡端スタブの長さを独立に変化させる構成であるために、2次元的な面積利用効率が上がらず、小型化の妨げとなるという問題がある。
【0010】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、その目的は、半導体装置として小型化が可能であり、利得等の高周波性能を向上可能で且つ実用的な高周波増幅器を得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明に係る半導体装置は、下記に示す特徴を備える。
【0012】
本発明に係る第1の半導体装置は、トランジスタの入力端に第一のコプレーナ線路が接続され、第一のコプレーナ線路には、開放端又は短絡端を有するコプレーナ線路を分岐されて終端されており、トランジスタの入力端への高周波信号は、第一のコプレーナ線路上への電気的接続手段を適用して入力されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る第1の半導体装置によると、小型化及び利得等の高周波性能の向上を図ることができ、実用的な高周波増幅器を得ることができる。
【0014】
本発明に係る第2の半導体装置は、トランジスタの出力端に第一のコプレーナ線路が接続され、第一のコプレーナ線路には、開放端又は短絡端を有するコプレーナ線路が分岐されて終端されており、トランジスタの出力端からの高周波信号は、第一のコプレーナ線路上への電気的接続手段を適用して出力されていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る第2の半導体装置によると、小型化及び利得等の高周波性能の向上を図ることができ、実用的な高周波増幅器を得ることができる。
【0016】
本発明の第1の半導体装置及び第2の半導体装置において、第一のコプレーナ線路上への電気的接続手段は、第一のコプレーナ線路上に形成される誘電体層を介したスルーホール又はバンプであることが好ましい。
【0017】
このようにすると、半導体装置として、小型化及び利得等の高周波性能の向上を図ることができ、実用的な高周波増幅器を得ることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る半導体装置によると、小型化及び利得等の高周波性能の向上を図ることができ、実用的な高周波増幅器を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る半導体装置について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1(a)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の平面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す破線A−A’における断面図である。
【0021】
図1(a)及び(b)に示すように、トランジスタ101はシリコン基板の半導体基板102上に形成された窒化ガリウム(GaN)系のヘテロ接合トランジスタであり、単位フィンガー長75μmのフィンガーが6本からなり総ゲート幅450μmである。
【0022】
トランジスタ101の入力端に配線層103がコプレーナ線路で接続されており、配線層103には、開放端を有する配線層104が二つの方向に分岐されて終端されている。配線層103及び配線層104は蒸着金属又は金メッキ等により形成される。配線層104が形成されたマイクロ波モノシリック集積回路(MMIC)作製工程の途中において、高周波プローブ(グランド(Ground)−信号(Signal)−グランド(Ground)型:GSG型)を配線層103とその両隣の接地面105とに接触させてSパラメータ測定を行い、入力インピーダンスを求めることにより、システムインピーダンス50Ωにできる限り近い位置を決定する。
【0023】
図2(a)は半導体装置の平面図であり、上記高周波プローブのグランド、信号の針先の配線層104及び接地面105への接触位置(プロービング位置(1)130、プロービング位置(2)131及びプロービング位置(3)132の三つの位置)を示している。図2(b)のグラフは、スミスチャートであり、トランジスタの入力反射係数(S11)について、三つのプロービングの位置及び、トランジスタ133に配線層104及び接地面105が追加作製されていない状態(トランジスタ133)でのインピーダンスの26.5GHz〜40GHzにおける周波数依存性を示している。ここではスミスチャートの中心をインピーダンス50Ωで定義する。(1)、(2)及び(3)は上記プロービング位置に相当するデータであり、(4)はトランジスタ133のデータを示す。マーカー(○)は26.5GHzでの位置である。(4)に対して、(1)では、インピーダンスが外側にずれてしまいスミスチャートの中心の50Ωから離れてしまうのに対して、(2)、(3)の順番にスミスチャートの中心の50Ωに近づいていることがわかる。(3)がプリマッチング回路パターンとして有効である。これが、プリマッチング回路パターン、すなわちプリマッチングインピーダンス変成部106のパターンが果たす役割である。トランジスタの出力反射係数(S22)に対しても同様の機能を有するプリマッチング回路パターンを構成し、同様の効果が得られる。ミリ波等の周波数帯において用いられるトランジスタの入出力のインピーダンスは50Ωに比べて低い。50Ω整合するためには、インピーダンス変成度が大きい整合回路を接続する必要があり、これによる高周波損失が大きくなる。トランジスタの入出力端子にできるだけ近い位置で上記のようにプリマッチングしておくことは、整合回路よる高周波損失を低減できる効果がある。インピーダンス変成度が大きいということは、変成前の基準となるインピーダンスと変成後のインピーダンスとの比率が1に比べて大きい又は小さい場合を意味する。
【0024】
上記のプリマッチングの段階で50Ωからずれているインピーダンスは、以下の作製工程を経ることにより補正され、最終的に50Ω整合されることになる。
【0025】
配線層103の上で決定された位置に、スルーホール107が窒化シリコン、酸化シリコン又はベンゾシクロブテン(BCB)等の誘電体層108を介して形成されている。配線層103、スルーホール107及び誘電体層108は多層で形成されていてもよい。
【0026】
誘電体層108の上には、インピーダンス補正するための受動回路用配線層109が形成される。さらに、受動回路用配線層109の上に誘電体層110が形成され、誘電体層110を介して形成されたスルーホール111の上に入力信号用パッド112が形成されている。入力信号用パッド112の上には、バンプ113が高さ20ミクロン程度で金メッキにより形成されている。
【0027】
誘電体層110の上には、接地面114が形成されており、接地面114の上にはバンプ113が高さ20ミクロン程度で金メッキにより形成されている。
【0028】
上記の入力部と同様の処理工程は、トランジスタの出力部にも適用され、入力信号用パッド112の代わりに出力信号用パッド118が形成されている。
【0029】
図3(a)は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の平面図であり、図3(b)は、図3(a)に示す破線B−B’における断面図である。
【0030】
図3(a)及び(b)に示すように、接地面105の上には、誘電体層108が形成され、誘電体層108を介して形成されたスルーホール115の上に接地面116が形成されている。スルーホール115は、配線層103の上で決定された位置の他に形成されていてもよい。接地強化面において効果がある。
【0031】
さらに、接地面116の上には、誘電体層110が形成され、誘電体層110を介して形成されたスルーホール117の上に接地面114が形成されている。接地面114の上にはバンプ113が高さ20ミクロン程度で金メッキにより形成されている。
【0032】
配線層104の上には、スルーホール107を介して、受動回路用配線層109が接続されている。上記では、配線層104は開放端としているが、このように上層の配線層と接続されて、整合回路のインピーダンス調整として利用することもできる。
【0033】
上記では、トランジスタ101はシリコン基板上に形成されているが、サファイア又は炭化シリコン(SiC)等の基板上であってもよい。
【0034】
このような半導体チップ119は、バンプ113を介して、樹脂モールドパッケージ又はセラミックパッケージに実装されたり、セットの実装基板へフリップチップボンディングされて実用化される。
【0035】
このような構成により、小型化及び利得等の高周波性能の向上を図ることができ、実用的な高周波増幅器を得ることができる。
【0036】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置について、図面を参照しながら説明する。
【0037】
図4(a)は、本発明の第2の実施形態に半導体装置の平面図であり、図4(b)は、図4(a)に示す破線A−A’における断面図である。図5(a)は、本発明の第2の実施形態に半導体装置の平面図であり、図5(b)は、図5(a)に示す破線B−B’における断面図である。図4及び図5において、図1及び図3と同じ符号は同一部分を指している。
【0038】
図4(a)及び(b)に示すように、配線層103の上で決定された位置に、バンプ120が高さ20ミクロン程度で金メッキにより形成され、誘電体層108でバンプ120の周囲が覆われている。バンプ120の上には、インピーダンス補正をするための受動回路用配線層109が形成されている。このような半導体チップ121は、以下のような実装用の基板上に実装される。
【0039】
実装用の誘電体基板122の半導体チップ121が実装される面には受動回路用配線層109の位置に合わせてスルーホール123が形成され、導体層が設けられている。誘電体基板122の上の半導体チップ121が実装される面と反対面には、スルーホール123の上に入力信号用パッド124が形成されている。
【0040】
上記の入力部と同様の処理工程は、トランジスタの出力部にも適用され、入力信号用パッド124の代わりに出力信号用パッド125が形成されている。
【0041】
配線層104の上には、バンプ134を介して、受動回路用配線層109を接続することにより、整合回路のインピーダンス調整として利用することもできる(図中に記されていない)。さらに受動回路用配線層109の位置に合わせてスルーホール123が形成され、導体層が設けられており、誘電体基板122の上の半導体チップ121が実装される面と反対面には、スルーホール123の上に入力信号用パッド124が形成される構成をとることもできる。配線層104は開放端としているが、このように上層の配線層と接続することにより、整合回路のインピーダンス調整として利用することもできる。
【0042】
図5(a)及び(b)に示すように、接地面126の上には、バンプ120が高さ20ミクロン程度で金メッキにより形成され、誘電体層108によりバンプ120の周囲が覆われている。バンプ120は配線層103の上で決定された位置の他に形成されていてもよい。接地強化面において効果がある。
【0043】
誘電体層108及びバンプ120の上には、接地面127が形成されている。実装用の誘電体基板122の半導体チップ121が実装される面には接地面127の位置に合わせてスルーホール123が形成され、導体層が設けられている。誘電体基板122の上の半導体チップ121が実装される面と反対面には、スルーホール123の上に接地面128が形成されている。
【0044】
誘電体層108及びバンプ120の上に形成された受動回路用配線層109に相当するパターンは、誘電体基板122の上に形成され、インピーダンス整合のために用いてもよい。配線層104の上には、バンプ120を介して、受動回路用配線層109が接続されている。上記では、配線層104は開放端としているが、このように上層の配線層と接続されて、整合回路のインピーダンス調整として利用することもできる。このような半導体チップ121は、セットの実装基板へ搭載可能な形態として実用化できる。
【0045】
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る半導体装置について、図面を参照しながら説明する。
【0046】
図6(a)は、本発明の第3の実施形態における半導体装置の平面図であり、図6(b)は、図6(a)に示す破線A−A’における断面図を示している。基本的な構成は図1及び図3と同じであり、配線層104の一方の開放端側にキャパシタ129を形成し、キャパシタ129の一方の端子を接地面105に接続することにより、短絡端として機能することができる。その他の構成に関しては、上記第1の実施形態及び第2の実施形態の内容を適用することにより本発明の効果を得ることができる。
【0047】
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置について、図面を参照しながら説明する。
【0048】
図7(a)は、本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の平面図であり、図7(b)は、図7(a)に示す破線A−A’における断面図を示している。基本的な構成は図4及び図5と同じであり、配線層104の一方の開放端側にキャパシタ129を形成し、キャパシタ129の一方の端子を接地面105に接続することにより、短絡端として機能することができる。その他の構成に関しては、上記第1の実施形態及び第2の実施形態の内容を適用することにより本発明の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、小型化及び高い高周波性能を有する高周波増幅器として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の平面図である。(b)は(a)に示す破線A−A’における断面図である。
【図2】(a)は半導体装置の平面図である。(b)はトランジスタの入力反射係数(S11)の周波数依存性を示すスミスチャートである。
【図3】(a)は本発明の第1の実施形態に係る半導体装置の平面図である。(b)は(a)に示す破線B−B’における断面図である。
【図4】(a)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の平面図である。(b)は(a)に示す破線A−A’における断面図である。
【図5】(a)は本発明の第2の実施形態に係る半導体装置の平面図である。(b)は(a)に示す破線B−B’における断面図である。
【図6】(a)は本発明の第3の実施形態に係る半導体装置の平面図である。(b)は(a)に示す破線A−A’における断面図である。
【図7】(a)は本発明の第4の実施形態に係る半導体装置の平面図である。(b)は(a)に示す破線A−A’における断面図である。
【図8】従来の半導体装置の平面図である。
【符号の説明】
【0051】
101 トランジスタ
102 半導体基板
103 配線層
104 配線層
105 接地面
106 プリマッチングインピーダンス変成部
107 スルーホール
108 誘電体層
109 受動回路用配線層
110 誘電体層
111 スルーホール
112 入力信号用パッド
113 バンプ
114 接地面
115 スルーホール
116 接地面
117 スルーホール
118 出力信号用パッド
119 半導体チップ
120 バンプ
121 半導体チップ
122 誘電体基板
123 スルーホール
124 入力信号用パッド
125 出力信号用パッド
126 接地面
127 接地面
128 接地面
129 キャパシタ
130 プロービング位置(1)
131 プロービング位置(2)
132 プロービング位置(3)
133 トランジスタ
134 バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタの入力端に第一のコプレーナ線路が接続され、
前記第一のコプレーナ線路には、開放端又は短絡端を有するコプレーナ線路が分岐されて終端されており、
前記トランジスタの入力端への高周波信号は、前記第一のコプレーナ線路上への電気的接続手段を適用して入力されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
トランジスタの出力端に第一のコプレーナ線路が接続され、
前記第一のコプレーナ線路には、開放端又は短絡端を有するコプレーナ線路が分岐されて終端されており、
前記トランジスタの出力端からの高周波信号は、前記第一のコプレーナ線路上への電気的接続手段を適用して出力されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
前記第一のコプレーナ線路上への電気的接続手段は、前記第一のコプレーナ線路上に形成される誘電体層を介したスルーホール又はバンプであることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−219653(P2010−219653A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61383(P2009−61383)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】