説明

半導体装置

【課題】ボンディングメタル層の材料によるショットキ界面の劣化を抑制または防止して、デバイス特性を改善する。
【解決手段】ショットキダイオードは、半導体基板10と、この半導体基板10にショットキ接触するショットキ金属層15と、ショットキ金属層15上に形成されたボンディングメタル層16とを含む。ショットキ金属層15は、金属窒化物層32bを含む金属窒化物含有多結晶金属層32からなるバリア層と、これに積層された金属層31とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体基板にショットキ接触するショットキ金属層を有するショットキダイオードやショットキFET(電界効果型トランジスタ)などの半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体基板の表面にNiやTiからなるショットキ金属層を形成し、このショットキ金属層上にAl等のボンディングメタル層を形成した構成のショットキダイオードが知られている。ボンディングメタル層の形成後には、シンター(たとえば、400℃、10分間の熱処理)が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−261295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ショットキ金属層は、一般に、アルゴンを用いたスパッタリングによって半導体基板上にショットキ金属を堆積させて形成される。
しかし、金属層をスパッタリングによって成膜すると、大抵の場合、その金属層は、繊維状粒または柱状粒のような柱状に成長した柱状金属結晶からなる多結晶構造を有することになる。そのため、シンター時に、ショットキ金属層上に形成されたボンディングメタル層の材料が、ショットキ金属層を構成する結晶粒界に沿って半導体基板表面にまで拡散して到達し、ショットキ界面(ショットキ金属層と半導体基板との界面)を劣化させるという問題があった。これにより、ショットキダイオード等のショットキデバイスの特性の劣化につながっていた。
【0005】
そこで、この発明の目的は、ボンディングメタル層の材料によるショットキ界面の劣化を抑制または防止して、デバイス特性を改善することができる半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、半導体基板(10)と、この半導体基板にショットキ接触するショットキ金属層(15)と、このショットキ金属層に積層されたボンディングメタル層(16)とを含み、前記ショットキ金属層は、金属層(31)と、金属窒化物層(32b)または金属酸化物層を含むバリア層(32)とを積層した積層構造を有していることを特徴とする半導体装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0007】
この構成によれば、ショットキ金属層は、半導体基板との間にショットキ界面を形成する。そして、ショットキ金属層は、金属窒化物層または金属酸化物層を含むバリア層を有しており、このバリア層によって、ボンディングメタル層の材料の拡散が抑制または防止される。すなわち、ボンディングメタル層の材料がショットキ界面にまで拡散することを抑制または防止できる。よって、ショットキ界面の劣化を抑制または防止して、デバイス特性を改善することができる。
【0008】
バリア層は、ボンディングメタル層とショットキ界面との間のいずれかの位置に配置されていればよく、金属層上にバリア層を積層した構造、およびバリア層上に金属層を積層した構造のいずれであってもよい。
請求項2記載の発明は、前記金属窒化物層は、Mo、W、Ti、Hf、Zr、Cr、Ni、Fe、NbおよびTaからなる金属群から選択した1つ以上の金属M(合金を含む)の窒化物Mx1y1(x1>0,y1>0)を含む層であり、前記金属酸化物層は、前記金属群から選択した1つ以上の金属M(合金を含む)の酸化物Mx2y2(x2>0,y2>0)を含む層であることを特徴とする。
【0009】
この構成により、半導体基板との間に良好なショットキ界面を形成するとともに、良好な導電性を有するショットキ金属層とすることができる。
また、前記金属窒化物層または金属酸化物層は、シンター処理時の温度(たとえば400℃)よりも高い(より好ましくは、ボンディングメタル層の構成金属が半導体基板に拡散し始める温度よりも高い)融点を有する高融点金属の窒化物または酸化物からなることが好ましい。ボンディングメタル層がAlで構成される場合に、前記金属群の構成金属は、このような条件を満たす高融点金属である。
【0010】
前記金属層の構成金属もまた、前記のような高融点金属で構成されることが好ましい。
請求項3に記載されているように、前記金属窒化物層は前記金属層の構成金属の窒化物を含む層であってもよく、また、前記金属酸化物層は前記金属層の構成金属の酸化物を含む層であってもよい。
ただし、金属窒化物層は前記金属層の構成金属以外の金属の窒化物を含む層であってもよく、また、前記金属酸化物層は前記金属層の構成金属以外の金属の酸化物を含む層であっても差し支えない。
【0011】
請求項4記載の発明は、前記バリア層は、金属結晶粒で構成された多結晶金属層(32a)と、この多結晶金属層の表面および粒界に形成され、前記多結晶金属層の構成金属の窒化物からなる前記金属窒化物層(32b)とを含む金属窒化物含有多結晶金属層、または金属結晶粒で構成された多結晶金属層と、この多結晶金属層の表面および粒界に形成され、前記多結晶金属層の構成金属の酸化物からなる前記金属酸化物層とを含む金属酸化物含有多結晶金属層を含むことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、多結晶金属層の表面に当該金属の窒化物または酸化物が形成されており、また、当該多結晶金属層を形成する金属結晶粒界が当該金属の窒化物または酸化物で埋められている。これにより、バリア層は緻密な膜構造を有するので、ボンディングメタル層がショットキ界面にまで拡散して到達することを抑制または防止できる。
バリア層は、金属窒化物含有多結晶金属層と金属酸化物含有多結晶金属層との両方を含んでいてもよいし、金属窒化物および金属酸化物の両方が表面および粒界に形成された多結晶金属層を含む構成とすることもできる。
【0013】
前記多結晶金属層を構成する金属は、Mo、W、Ti、Hf、Zr、Cr、Ni、Fe、NbおよびTaからなる群から選択した1つ以上の金属(単体または合金)であってもよい。
請求項5記載の発明は、前記多結晶金属層は、柱状成長した金属結晶粒で構成されていることを特徴とする。
【0014】
たとえば、スパッタリングによって半導体基板上に金属層を堆積させると、この金属層は、柱状の結晶粒で構成された多結晶金属層となる。このような場合に、その表面および粒界に当該金属の窒化物層または酸化物層を形成しておくことにより、緻密な膜構造のバリア層を形成することができ、ボンディングメタル層の材料がショットキ界面にまで拡散して到達することを効果的に抑制または防止できる。
【0015】
前記半導体装置は、半導体基板(10)の表面に接触するショットキ金属層(15)を形成する工程と、このショットキ金属層上にボンディングメタル層(16)を堆積する工程とを含み、前記ショットキ金属層を形成する工程は、金属層(31)と、金属窒化物層(32b)または金属酸化物層を含むバリア層とを積層した積層構造膜を形成する工程を含む製造方法によって作製されてもよい。
【0016】
この方法により、ボンディングメタル層の材料の拡散が、ショットキ金属層に含まれる金属窒化物層または金属酸化物層によって抑制または防止されるので、ショットキ界面の劣化を抑制し、デバイス特性を改善できる。
前記バリア層を形成する工程は、多結晶構造を有する多結晶金属層(32a)を前記半導体基板上に堆積する工程と、前記多結晶金属層の表面および粒界に前記多結晶金属層の構成金属の窒化物または酸化物の層を形成することにより、前記多結晶金属層と、前記金属窒化物層(32b)または金属酸化物層とを含む金属窒化物含有多結晶金属層(32)または金属酸化物含有多結晶金属層を形成する工程とを含んでもよい。
【0017】
この方法では、たとえばスパッタリングによって半導体基板上に多結晶構造の金属層が形成され、その表面が当該金属の窒化物層または酸化物層で覆われ、かつ、結晶粒界は当該金属の窒化物層または酸化物層で埋められる。これにより、緻密なバリア層を形成することができるから、多結晶金属層を形成する金属結晶粒界に沿ってボンディングメタル層の材料がショットキ界面にまで到達することを抑制または防止でき、デバイス特性を改善できる。
【0018】
前記多結晶金属層を堆積する工程、および前記金属窒化物含有多結晶金属層または金属酸化物含有多結晶金属層を形成する工程は、窒素または酸素を含む雰囲気中におけるスパッタリングによって、多結晶金属層を前記半導体基板上に堆積させると同時に当該多結晶金属層を構成する金属結晶粒の表面および粒界に当該金属の窒化物または酸化物の層を成長させる工程によって並行して行われることが好ましい。
この方法では、窒素または酸素を含む雰囲気中でのスパッタリングによって多結晶金属層を形成することによって、多結晶金属層の堆積と並行して、金属結晶の表面および粒界に前記のような金属窒化物層または金属酸化物層を形成することができる。これにより、半導体基板上にショットキ金属層を形成する基本工程に若干の改良を施すことにより、金属窒化物層または金属酸化物層を含むショットキ金属層を形成することができ、コストの増加を最小限に抑制しつつ、デバイス特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施形態に係る半導体装置であるショットキダイオードの構成を説明するための図解的な断面図である。
【図2】前記ショットキダイオードのショットキ金属層の詳しい構成を説明するための図解図である。
【図3】前記ショットキダイオードの製造工程を順に示す図解図である。
【図4】ショットキダイオードに逆方向電圧を印加した場合における逆方向漏れ電流の特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る半導体装置であるショットキダイオードの構成を説明するための図解的な断面図である。ショットキダイオード1は、たとえばCu(銅)からなるフレーム2にカソード側がダイボンディングされるとともにアノード側が同じくCuなどからなるフレーム3にボンディングワイヤ(たとえばAl(アルミニウム)からなるもの)4を介して接続され、これら全体の構成が、図示しない封止樹脂によって封止されて用いられる。
【0021】
ショットキダイオード1は、たとえばN+型のSiC(炭化シリコン)基板11上にN-型SiCエピタキシャル層12を成長させて構成したSiC半導体基板10を備えている。このSiC半導体基板10の表面(SiCエピタキシャル層12の表面)に、ショットキ金属層15が接触しており、このショットキ金属層15上にボンディングメタル層16が積層されている。このボンディングメタル層16にボンディングワイヤ4が接合されている。
【0022】
ショットキ金属層15の接触領域外のSiCエピタキシャル層12の表面は、酸化膜(たとえばSiO2膜(酸化シリコン膜))17によって被覆されている。SiCエピタキシャル層12の表面において、ショットキ金属層15の縁部に対応する領域には、P型不純物を導入して形成したガードリング18が形成されている。このガードリング18によって取り囲まれた領域において、SiCエピタキシャル層12とショットキ金属層15との接触界面は、ショットキ界面14を形成している。ガードリング18は、ショットキダイオード1に逆バイアスが印加されたときの空乏層の延びを制御し、耐圧の向上に寄与する。
【0023】
一方、SiC半導体基板10の裏面(SiC基板11の裏面)には、SiC基板11にオーミック接触するオーミック金属層19が被着形成されている。さらに、このオーミック金属層19の表面には、裏メタル層20が被着形成されている。
オーミック金属層19は、たとえばNi(ニッケル)層で構成され、熱処理によってその界面がSiC基板11の材料とともに合金化されている。この場合に、裏メタル層20は、たとえばオーミック金属層19側から順に、Ti(チタン)層21、Ni層22およびAg(銀)層23を積層した積層金属膜からなっていてもよい。Ag層23は、ショットキダイオード1をフレーム2上に半田5を用いてダイボンディングするときの密着性を改善するための金属層である。Ni層22は、Ag層23と半田5とが共晶するときのバリア層として機能する。Ti層21は、接着層であって、合金化されたオーミック金属層19とNi層22との接着を担っている。
【0024】
ショットキ金属層15は、この実施形態では、たとえば、Mo(モリブデン)金属とMo金属の窒化物(Moxy。ただし、x>0,y>0)とを含み、SiCエピタキシャル層12にショットキ接触して、ショットキ界面14を形成するとともに、良好な導電性を有する。ボンディングメタル層16は、ボンディングワイヤ4とショットキ金属層15との接合を担う層であり、たとえばAlによって構成されている。
【0025】
図2は、ショットキ金属層15の詳しい構成を説明するための図解図である。ショットキ金属層15は、この実施形態では、たとえばMo金属からなる金属層31(たとえば、層厚3000Å)と、この金属層31に積層したバリア層としての金属窒化物含有多結晶金属層32(たとえば、層厚3000Å)との積層構造膜で構成されている。金属窒化物含有多結晶金属層32は、金属層31の構成金属の窒化物層32bを含むものである。この実施形態では、金属層31が、SiCエピタキシャル層12に接していて、この金属層31に対してSiCエピタキシャル層12とは反対側に金属窒化物含有多結晶金属層32が配置されている。ただし、金属層31および金属窒化物含有多結晶金属層32の積層順序は逆であってもよく、金属窒化物含有多結晶金属層32をSiCエピタキシャル層12に接するように配置し、金属層31をボンディングメタル層16側に配置して、これらを積層してもよい。
【0026】
金属層31は、たとえば、スパッタリングによってSiC半導体基板10上に堆積させられて形成される。このとき、金属層31の構成金属は、SiC半導体基板10の表面に対してほぼ直交する方向またはほぼ平行な方向に沿う柱状の結晶粒として成長する。そのため、金属層31は、いわば多結晶構造を有することになる。
金属窒化物含有多結晶金属層32は、たとえば、金属層31の形成に引き続き、この金属層31の構成金属と同じ金属(たとえばMo金属)のスパッタリングを窒素を含む雰囲気中で実行することによって形成される。このとき、やはり柱状の金属結晶粒が成長するが、この金属結晶粒の表面に当該金属の窒化物層32bが形成されていく。その結果、金属窒化物含有多結晶金属層32は、多結晶金属層32aと、この多結晶金属層32aの表面を覆うとともにその粒界を埋め込む金属窒化物層32bとを含む緻密な膜を形成することになる。
【0027】
ショットキ金属層15上にボンディングメタル層16(たとえば、層厚4μm)が積層され、その後にシンター(熱処理)が行われるとき、緻密な膜として形成された金属窒化物含有多結晶金属層32は、ボンディングメタル層16の構成材料(たとえばAl)が、SiC半導体基板10の表面のショットキ界面14へと拡散して到達することを防ぐバリア層として機能することになる。こうして、ショットキ界面14の劣化が防がれるので、ショットキダイオード1は、ほぼ設計通りの良好な特性を有することができる。
【0028】
図3 (a)〜(h)は、ショットキダイオード1の製造工程を順に示す図解図である。SiC半導体基板10の表面を熱酸化して犠牲酸化膜(図示せず)を形成し、さらに、ガードリング18の形状に対応した開口を有するレジスト40が形成される。そして、このレジスト40をマスクとして、ガードリング18の領域にP型の不純物イオン(ホウ素イオン)が注入される(図3(a))。
【0029】
次に、犠牲酸化膜を除去し、その後、たとえばプラズマCVD(化学的気相成長法)によって、表面保護膜としての酸化膜17が形成される(図3(b))。
次いで、たとえばスパッタリングによってNiからなるオーミック金属層19がSiC半導体基板10の裏面に堆積させられ、次いで、熱処理(たとえば1000℃、2分)を施すことにより、オーミック金属層19が合金化されて、ニッケルシリサイドとなる(図3(c))。
【0030】
この状態から、酸化膜17にコンタクトホール17aが形成される。このコンタクトホール17aは、ガードリング18によって囲まれた領域においてSiCエピタキシャル層12の表面を露出させる(図3(d))。
次に、たとえばMo金属をターゲットとして用いたスパッタリングによって、ショットキ金属層15が、コンタクトホール17aを含む領域に堆積させられる(図3(e))。このショットキ金属層15の形成工程では、SiC半導体基板10を配置した処理チャンバ内の雰囲気は、当初はAr(アルゴン)ガス100%の雰囲気とされるが、所定時間経過後に当該処理チャンバにN2(窒素)ガスが導入されてArガスおよびN2ガスの混合ガス雰囲気(たとえば、Arガス50%、N2ガス50%)とされる。これによって、図2に示すような金属層31および金属窒化物含有多結晶金属層32の積層構造を有するショットキ金属層15が形成されることになる。
【0031】
その後は、窒素ガスの導入を停止し、処理チャンバ内をArガス雰囲気(Arガス100%)としたうえで、スパッタリングのターゲットをMo金属からAl金属に変更することにより、ショットキ金属層15に積層されるボンディングメタル層16が形成されることになる(図3(f))。すなわち、連続スパッタリングにより、ショットキ金属層15およびボンディングメタル層16が同一処理チャンバ内で形成される。
【0032】
その後は、SiC半導体基板10を処理チャンバから取り出し、モリブデンエッチング液(硝酸および燐酸の混合液)によって、ショットキ金属層15およびボンディングメタル層16が一括してパターニングされる。この状態が、図3(g)に示されている。
その後は、SiC半導体基板10を処理チャンバ内に配置し、ターゲットをTi、NiおよびAgに順に切り換えながら連続スパッタリングを行うことで、SiC半導体基板10の裏面側のオーミック金属層19上にTi層21、Ni層22およびAg層23の積層構造膜からなる裏メタル層20が形成される。この状態が、図3(h)に示されている。
【0033】
その後は、でき上がったショットキダイオード1に対してシンター処理(たとえば400℃、10秒の熱処理)が施される。これにより、裏メタル層20を構成する各層間の密着性が向上され、さらに、多結晶構造の金属層31の金属結晶粒同士の密着性が向上される。それとともに、半田5によりフレーム2上にダイボンディングする際にショットキダイオード1が受ける熱による不具合を未然に防止することができる。
【0034】
このシンター処理時において、ショットキ金属層15を構成している金属窒化物含有多結晶金属層32は、Alからなるボンディングメタル層16の拡散を防ぎ、その構成金属がショットキ界面14に到達することを防ぐ。
以上のように、この実施形態によれば、ショットキ金属層15には金属窒化物含有多結晶金属層32が備えられており、この金属窒化物含有多結晶金属層32の働きによって、ボンディングメタル層16の構成金属がショットキ界面14に到達することを抑制または防止することができる。その結果、ショットキ界面の劣化を効果的に抑制または防止でき、ショットキダイオード1のデバイス特性を従来のデバイス特性に比較して著しく改善することができる。
【0035】
図4(a)および(b)は、ショットキダイオードに逆方向電圧を印加した場合における逆方向漏れ電流の特性を示す図であり、素子温度を25℃、50℃、75℃、100℃、125℃および150℃としたときのそれぞれの測定結果が示されている。図4(a)は、ショットキ金属層を金属層(Mo層)のみで構成した従来技術に係るショットキダイオードの特性を示し、図4(b)は、ショットキ金属層15を金属層31(Mo層)および金属窒化物含有多結晶金属層32(Moxy層)で構成した上記の実施形態のショットキダイオード1の特性を示している。
【0036】
図4(a)および(b)の比較により、この実施形態に係るショットキダイオード1により、逆方向漏れ電流が著しく低減され、逆方向耐圧の向上が達成されていることが理解される。それとともに、この実施形態の構成を採用することによって、逆方向漏れ電流の温度依存性がほぼ解消されており、高温環境下でも使用に堪える良好な特性を実現できることが理解される。
【0037】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明はさらに他の形態で実施することもできる。たとえば、ショットキ金属層15を、バリア層によって金属層(窒化物または酸化物を実質的に含まない層)をサンドイッチした3層構造としてもよく、また、逆に、バリア層を金属層(同じく、窒化物または酸化物を実質的に含まない層)によってサンドイッチした3層構造としてもよい。
【0038】
また、上記の実施形態では、Mo金属を用いてショットキ金属層15を形成する例について説明したが、ショットキ金属層15に適用可能な金属としては、Mo、W(タングステン)、Ti、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Cr(クロム)、Ni、Fe(鉄)、Nb(ニオブ)およびTa(タンタル)から選択した1種、またはこれらの2種以上を含む合金を例示することができる。いずれの金属の場合も、スパッタリングによってSiC半導体基板上に堆積させると、SiC半導体基板上に多結晶構造の金属層が成長することになる。そして、ショットキ金属層15を、それらの金属の窒化物層を含む構成とすることにより、ボンディングメタル層16の構成材料によるショットキ界面14の劣化を抑制または防止できる。
【0039】
また、バリア層は、金属層31の構成金属の窒化物を含む構成とする必要はなく、金属層31の構成金属以外の金属の窒化物層を含むバリア層を適用することも可能である。
また、上記の実施形態では、スパッタリングによって金属層を形成する際の雰囲気にN2ガスを導入するようにしているが、他にもNH3ガス(アンモニアガス)を導入することによっても、同様な金属窒化物含有多結晶金属層を形成することができる。また、たとえば、金属層をスパッタリングによって形成した後に、この金属層が形成されたSiC半導体基板10をアンモニア雰囲気中に置くとともに、併せて熱処理(たとえば600〜800℃)を行うことによって、多結晶構造の金属層の表面および粒界に当該金属の窒化物層を形成することにより、金属窒化物含有多結晶金属層を形成してもよい。
【0040】
また、上記の実施形態では、バリア層が金属窒化物層を含む構成としているが、金属窒化物層の代わりに、または金属窒化物層と共に金属酸化物層を含むバリア金属層を金属層31に積層形成するようにしてもよい。具体的には、スパッタリングによってショットキ金属層を形成するときに、処理チャンバ内にN2ガスの代わりにO2(酸素)ガスを導入したり、N2ガスとともにO2ガスを導入したりすればよい。この場合でも、多結晶金属層の表面および粒界に多結晶金属層の構成金属の窒化物層および/または酸化物層を形成することができ、ボンディングメタル層16の構成材料がショットキ界面14上に到達することを抑制または防止することができる。
【0041】
さらにまた、上記の実施形態ではショットキダイオードを例にとったが、他にも、ショットキFETなどのように、ショットキ金属層を有する装置にこの発明を同様に適用することができる。また、半導体基板は、SiCに限らず、Si(シリコン)や化合物半導体などの他の半導体材料の基板であってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 ショットキダイオード
2 フレーム
3 フレーム
4 ボンディングワイヤ
5 半田
10 SiC半導体基板
11 SiC基板
12 SiCエピタキシャル層
14 ショットキ界面
15 ショットキ金属層
16 ボンディングメタル層
17 酸化膜
17a コンタクトホール
18 ガードリング
19 オーミック金属層
20 裏メタル層
21 Ti層
22 Ni層
23 Ag層
31 金属層
32 金属窒化物含有多結晶金属層
32a 多結晶金属層
32b 金属窒化物層
40 レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
この半導体基板にショットキ接触するショットキ金属層と、
このショットキ金属層に積層されたボンディングメタル層とを含み、
前記ショットキ金属層は、金属層と、金属窒化物層または金属酸化物層を含むバリア層とを積層した積層構造を有していることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記金属窒化物層は、Mo、W、Ti、Hf、Zr、Cr、Ni、Fe、NbおよびTaからなる金属群から選択した1つ以上の金属の窒化物を含む層であり、前記金属酸化物層は、前記金属群から選択した1つ以上の金属の酸化物を含む層であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記金属窒化物層は前記金属層の構成金属の窒化物を含む層であり、前記金属酸化物層は前記金属層の構成金属の酸化物を含む層であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記バリア層は、
金属結晶粒で構成された多結晶金属層と、この多結晶金属層の表面および粒界に形成され、前記多結晶金属層の構成金属の窒化物からなる前記金属窒化物層とを含む金属窒化物含有多結晶金属層、または
金属結晶粒で構成された多結晶金属層と、この多結晶金属層の表面および粒界に形成され、前記多結晶金属層の構成金属の酸化物からなる前記金属酸化物層とを含む金属酸化物含有多結晶金属層
を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記多結晶金属層は、柱状成長した金属結晶粒で構成されていることを特徴とする請求項4記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−146753(P2011−146753A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103810(P2011−103810)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【分割の表示】特願2005−51687(P2005−51687)の分割
【原出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】