半導体装置
【課題】熱収縮による応力を低減することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】多層基板2と、多層基板2に配置された半導体チップ1と、多層基板2と半導体チップ1を接続する複数の金属バンプ4と、半導体チップ1及び多層基板2の間に設けられ、封止樹脂3によって形成された封止樹脂層10とを備え、封止樹脂層10には、複数の柱状の空洞5が形成され、複数の空洞5の体積は、封止樹脂層10の体積の半分以上である、半導体装置である。
【解決手段】多層基板2と、多層基板2に配置された半導体チップ1と、多層基板2と半導体チップ1を接続する複数の金属バンプ4と、半導体チップ1及び多層基板2の間に設けられ、封止樹脂3によって形成された封止樹脂層10とを備え、封止樹脂層10には、複数の柱状の空洞5が形成され、複数の空洞5の体積は、封止樹脂層10の体積の半分以上である、半導体装置である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルビデオカメラ等の分野では、小型、軽量、及び高性能化を実現するための要素技術として、高密度実装が有用となっている。このような高密度装を実現するため,シングルチップのCPS(Chip Scale Package)では不十分な場合があり、MCP(Multi Chip Package)やSiP(System in Package)といったパッケージ採用が広く用いられている。
【0003】
これらのMCPやSiPといった半導体チップ複合型のパッケージで使われるインターポーザ、マザーボードなどの回路基板では,回路基板上で半導体チップ間の接続が必要となる。この回路基板としては、配線密度が高いビルドアップ基板が採用されている。そして、これらの回路基板への半導体チップの実装方法としては,フリップチップ実装が主流となりつつある。
【0004】
上記のような構造をもつ半導体パッケージにおいては,フリップチップ接合部である金属バンプの信頼性を確保するため,通常半導体素子および回路基板の隙間に樹脂組成物(封止樹脂)が充填される。封止樹脂には一般的に熱硬化性の樹脂が用いられる。
【0005】
液体状あるいは半固体の樹脂を、半導体チップと回路基板の間に挿入し、150〜250℃まで加熱させて硬化させた後、冷却させる製造方法が主流となっている。
【0006】
ところが、封止樹脂は、シリコン等によって形成される半導体チップよりも線膨張係数の大きな物質であるため、封止樹脂の硬化温度から常温まで冷却する段階で、半導体チップよりも大きな熱収縮が封止樹脂に発生する。この封止樹脂の熱収縮は半導体チップに発生する応力の原因となる。
【0007】
このような応力を緩和するため、封止樹脂を封入する際に、適切な物性を持つ材料を選択することで温度変化による熱応力を緩和する方法が考案されている。たとえば特許文献1には、封止樹脂のガラス転移温度を適切に設計することで、バンプや回路層に発生する応力を緩和する半導体装置が開示されている。
【0008】
尚、半導体チップの底面付近には、一般的に、多数の半導体素子が敷き詰められており、上記応力が発生する場合には、その応力の影響で半導体素子の電気特性が封止樹脂挿入前にくらべて変化するという問題も発生していた。この電気特性の変化とは、より具体的には、半導体素子にある一定電圧を加えたときの電流の大きさが変化することをさす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−534303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1の従来技術では、バンプや回路層における応力緩和が試みられているが、半導体チップに発生する応力緩和は不十分であり、半導体チップの機能の信頼性に影響を及ぼす可能性がある。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、封止樹脂層に空洞を設けることで、その体積を減少させることにより収縮力を低減させ、熱収縮によって半導体チップに発生する応力を低減することが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、第1の本発明は、
回路基板と、
前記回路基板に配置された半導体チップと、
前記回路基板と前記半導体チップを接続する複数の金属バンプと、
前記半導体チップ及び前記回路基板の間に設けられ、封止樹脂によって形成された封止樹脂層とを備え、
前記封止樹脂層には、複数の柱状の空洞が形成されており、
前記複数の空洞の体積は、前記封止樹脂層の体積の半分以上である、半導体装置である。
【0013】
第2の本発明は、
前記封止樹脂は、少なくとも前記金属バンプの周囲に形成されており、
隣り合う前記金属バンプの周囲に形成されている前記封止樹脂は繋がっている、第1の本発明の半導体装置である。
【0014】
第3の本発明は、
前記空洞は円柱形状であり、
複数の前記金属バンプは、各前記空洞の軸を中心として4角形状に配置されている、第1の本発明の半導体装置である。
【0015】
第4の本発明は、
前記複数の金属バンプは、前記空洞を4つの前記金属バンプで囲むように配置されており、
前記空洞の断面形状は、前記4つの金属バンプのそれぞれの外周に沿う4つの円弧と、前記4つの円弧を繋ぐ4つの線分で囲まれた形状である、第1の本発明の半導体装置である。
【0016】
第5の本発明は、
前記複数の柱状の空洞は、大きさの異なる2種類の円柱形状の空洞を有し、
複数の前記金属バンプは、4角形状に配置されており、
一方の種類の前記空洞は、その軸が前記4角形状の中心になるように配置されており、
他方の種類の前記空洞は、その軸が隣り合う前記金属バンプの中心を結ぶ線上に配置されるように形成されている、第1の本発明の半導体装置である。
【0017】
第6の本発明は、
前記金属バンプと前記空洞の間には、少なくとも前記金属バンプの半径の半分以上の幅の前記封止樹脂が形成されている、第1〜5のいずれかの本発明の半導体装置である。
【0018】
第7の本発明は、
隣り合う前記金属バンプの中心間の距離a、前記空洞の半径r、及び前記金属バンプの半径bが、以下の(数1)の関係を満たす、第3の本発明の半導体装置である。
【0019】
(数1) 0.4a≦r≦0.7a―1.5b
第8の本発明は、
前記円弧の中心は、前記金属バンプの中心と一致し、
前記金属バンプの半径b、及び前記円弧の半径Rが、以下の(数2)の関係を満たし、
前記空洞の断面形状の向かい合う線分は互いに平行であって、その距離Lと、隣り合う前記金属バンプの中心間の距離a、及び前記金属バンプの半径bが、以下の(数3)の関係を満たす、第4の本発明の半導体装置である。
【0020】
(数2) R≧1.5b
(数3)0.7a≦L≦a―b
第9の本発明は、
前記一方の種類の円柱形状の空洞の半径r、隣り合う前記金属バンプの中心間の距離a、及び前記金属バンプの半径bは、以下の(数4)の関係を満たし、
前記他方の種類の円柱形状の空洞の半径sは、以下の(数5)の関係を満たしている、第5の本発明の半導体装置である。
【0021】
(数4) 0.3a≦r≦0.7a―1.5b
(数5) 0.1a≦s≦0.5a―0.5b―r
【発明の効果】
【0022】
本発明は、熱収縮による応力を低減することが可能な半導体装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる実施の形態1における半導体装置の側断面構成図
【図2】本発明にかかる実施の形態1における半導体装置の実装方法を説明するための図
【図3】図1のAA´間における封止樹脂層の断面構成図
【図4】本発明の実施の形態1における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【図5】図4のBB´間の断面構成図
【図6】本発明にかかる実施の形態1における半導体装置においてb=0.15aである場合の封止樹脂層の要部を拡大した平断面構成図
【図7】本発明にかかる実施の形態2における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【図8】図7のCC´間断面構成図
【図9】本発明にかかる実施の形態3における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【図10】図9のDD´間断面構成図
【図11】本発明にかかる実施例1における半導体チップの底面を表す図
【図12】本発明にかかる実施例1及び比較例1における半導体チップ底面の応力変化のグラフを示す図
【図13】本発明にかかる実施の形態1の変形例における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【図14】本発明にかかる実施の形態2の変形例における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【図15】本発明にかかる実施の形態3の変形例における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【図16】本発明にかかる実施の形態1の変形例における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【図17】本発明にかかる実施の形態2の変形例における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0025】
(実施の形態1)
以下に、本発明にかかる実施の形態1における半導体装置について説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態1の半導体装置の断面構成図である。
【0027】
本実施の形態1の半導体装置では、トランジスタなどの半導体素子をもつ半導体チップ1が、本発明の回路基板の一例である多層基板2上にフリップチップ接合方式により接続されている。また半導体チップ1と多層基板2の間には樹脂組成物である封止樹脂3が封入されており、半導体チップ1と多層基板2の間に封止樹脂層10が形成されている。
【0028】
ここで本実施の形態1における半導体装置では、多層基板2上に半導体チップ1を実装する際にフリップチップ実装を行っているため、半導体チップ1の表面と多層基板2との電気的な接続は、ワイヤボンディングのようなワイヤではなく、アレイ状に並んだ突起状の端子である金属バンプ4によって行われている。
【0029】
また、フリップチップ実装は、ワイヤボンディングにくらべて実装面積を小さくできるため、高密度実装が可能になる利点があり、配線が短いために電気的特性がよいという特徴もある。よって、本実施の形態の半導体パッケージは小型、薄型に対する要求の強い携帯機器の回路や、電気特性が重視される高周波回路などに向いている。
【0030】
尚、本実施の形態1では、半導体チップは、厚み0.5〜1(mm)程度、縦もしくは横の長さが5〜10(mm)程度のサイズのものが扱われる。半導体チップ1の材質はシリコンであり、その底面付近にはトランジスタなどの半導体素子が20〜100(nm)ピッチで敷き詰められている。
【0031】
又、多層基板2としては、コア層となる板状の材料の両面に配線が1〜3層程度積層されたビルドアップ基板が用いられる。コア層の材料としてはガラスエポキシ樹脂が用いられる。コア層の材料の厚みは200〜800(μm)程度とし、多層基板2の全体の厚さは300〜1200(μm)程度とする。また多層基板2は、縦もしくは横の長さが15〜40(mm)程度のサイズのものが使用される。
【0032】
上記金属バンプ4としては、Sn、Ag、Cuを6:1:2の割合で含む合金の半田材料が用いられる。
【0033】
次に、本実施の形態1の半導体装置における封止樹脂3について説明する。
【0034】
封止樹脂3は、フリップチップ接合部が外力よって破壊されたり腐食したりすることを防ぐために用いられる。封止樹脂3にはNCF(NonConductive Film)とよばれる熱硬化性の樹脂が適用される。NCFとは、半導体チップ1と多層基板2とを金属接合する前に多層基板2上に塗布される非導電性のフィルム状の封止材である。
【0035】
図2は、本実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明するための図である。図2に示すように、封止樹脂3としてシート状のNCFが多層基板2の表面上に配置される。そして、NCFの粘度が小さくなる温度において金属バンプ4が装着された半導体チップ1がNCFの層に突き刺され、金属バンプ4が多層基板2の電極部に接着され、リフロー工程において熱を加えることでフリップチップ実装と封止樹脂層10の硬化が同時に行われる。
【0036】
図3は、図1の上方から視たAA´間における封止樹脂層10の断面構成図であり、封止樹脂層10の空洞構造を示す。図3に示すように、本実施の形態における封止樹脂層10では、複数の金属バンプ4が正方格子状に配置されている。そして、正方形の頂点に配置された4つの金属バンプ4間のそれぞれの中央に、柱状の空洞5が設けられている。この空洞5は、熱膨張によって半導体チップ1全体に発生する応力を低下させること目的としている。
【0037】
図4は、図3の部分拡大図であり、1つの空洞5とその周囲に配置されている4つの金属バンプ4の構成を示す図である。又、図5は、図4のBB´間の断面構成図である。
【0038】
図4、5に示すように、空洞5は円柱形状であり、空洞5の円柱の中心軸5a(円の中心)は、4つの金属バンプ4によって形成される正方形状の対角線の交点に位置する。又、封止樹脂3の体積をできるだけ小さくするため、円柱状の空洞5は図5に示すように封止樹脂層10の上面から下面まで貫通するものが望ましい。
【0039】
尚、このような空洞5は、次のように形成することが出来る。予め、シート状のNCF(封止樹脂3)にパンチを用いた型抜きによって空洞が形成される。空洞が形成されたNCFが、多層基板2上に配置される。その後、フリップチップ実装と封止樹脂3の硬化が行われ、空洞5が形成された封止樹脂層10を形成することが出来る。
【0040】
また、隣り合う金属バンプ4の中心間の距離a、金属バンプ4の半径b、及び円柱の円の半径rは、次の(数1)を満たしていることが望ましい。
【0041】
0.4a≦r≦0.7a―1.5b・・・(数1)
上式について説明する。封止樹脂3の熱収縮によって半導体チップ1の底面全体に発生する応力は、封止樹脂の体積に応じて発生すると考えられる。すなわち、封止樹脂の熱収縮により発生する応力は、その体積に比例すると考えられる。ここで、半導体チップ1の底面近傍に設けられている半導体素子の電気的特性変動を半減するためには、封止樹脂層10における封止樹脂3の体積が、空洞なしの場合に対して半分以下にすることが望ましい。
【0042】
よって、半導体素子の電気特性変動を半減させるとした場合、円柱状の空洞5の半径は、封止樹脂の体積を半減させる円柱の半径r´(=0.39894a)に近い値をとって
0.4a≦r
とすることが望ましい。このr´の値は次のように導かれる。図4の4つの金属バンプ4の中心点4aで囲まれた正方形領域の面積はa2である。金属バンプ4の体積を無視すると、円柱状の空洞5の円の面積がこの半分の値になるときに封止樹脂3の体積は半減すると考えられる。
【0043】
よって、πr´2=(a2)/2 となるのでr´=0.39894aとなる。
【0044】
また、金属バンプ4の信頼性を十分に確保するため、金属バンプ4を覆う封止樹脂3の幅δは金属バンプ4の半径の半分である0.5b程度確保することが望ましい。ここで、空洞5の中心(軸5a)から金属バンプ4の中心までの距離はおよそ0.7aであるから、円柱状の空洞5の半径rは金属バンプ4を覆う封止樹脂3の幅が0.5b以上となるように
r≦0.7a―1.5b
とすることが望ましい。
【0045】
これら0.4a≦rと、r≦0.7a―1.5bとから上記(数1)が導かれる。
【0046】
このように、本実施の形態の半導体装置では、封止樹脂層10に空洞5をもつ構造となるため、封止樹脂3の体積は空洞なしの場合に比べて減少する。封止樹脂3の体積を減少させると、その収縮力は低下するので,半導体チップ1に発生する圧縮応力が低減される。そのため、半導体チップ1の底面付近に半導体素子が敷き詰められているような半導体装置等であっても、その電気特性の変動を緩和することができる。尚、電気特性の変化とは、より具体的には、半導体素子にある一定電圧を加えたときに電流の大きさが変化することをさす。
【0047】
又、上記(数1)を満たすような空洞5を形成することによって、封止樹脂層10における封止樹脂3の体積を半分以上減少させ、半導体チップ1にかかる応力を半減させることが可能となる。
【0048】
なお、本実施の形態及び以下の実施の形態では、空洞を円柱として円の半径rを定義しているが、本発明の柱状の一例として空洞が富士山のような形状(円錐台形状)や太鼓形状であってもよい。その場合、これら円錐台や太鼓形状の半径rは、同体積の円柱に置き換え、その円柱の半径として定義される。
【0049】
(実施の形態2)
次に、本発明にかかる実施の形態2における半導体装置について説明する。
【0050】
本実施の形態2の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置と空洞の構成が異なっている。そのため、本相違点を中心に説明する。
【0051】
図6はb=0.2aとなる場合に、実施の形態1と同様に、4つの金属バンプ4の中央に円柱状の空洞5を設けた封止樹脂層10の状態を示す平面構成図である。このように、b=0.2aとなる場合には、金属バンプ4の半径bが、隣り合う金属バンプ4の中心間の距離aに対して大きくなるため、金属バンプ4を覆う封止樹脂3の幅δを0.5b以上とるためには
0.4a≧r
のように、空洞の半径rを小さくしなければならない。
【0052】
このように、封止樹脂層10における封止樹脂3の体積を半減するような空洞の半径を確保することできないため、半導体チップ1に発生する応力を半分にまで減少させる場合には、対応出来ない可能性がある。
【0053】
そこで、bが比較的大きい場合に封止樹脂の体積を減少させるための工夫として、本実施の形態2の構成が用いられる。
【0054】
図7は、本実施の形態2の半導体装置の封止樹脂層の平断面の要部拡大構成図である。図8は、図7のCC´間の断面構成図である。尚、図7は、図1を用いて説明すると、上方から視た封止樹脂層のAA´間の断面構成図に相当する。
【0055】
図7、8に示すように、本実施の形態2の空洞6は、正方形状に配置された4つの金属バンプ4の間に配置されており、4つの金属バンプ4の外周に沿うような円弧61と、線分62で囲まれた形状を断面形状とする柱状に形成されている。この各線分62は、対向する線分62が互いに平行であり、それぞれの線分62は、隣り合う金属バンプ4の中心を結んだ線分と平行に設けられている。
【0056】
円弧61の中心は、それぞれの金属バンプ4の中心4aに一致している。又、金属バンプ4を覆う封止樹脂3に、金属バンプ4の半径の半分である0.5b以上の幅を持たせるために、円弧61の半径Rは
R≧1.5b・・・(数2)
とすることが望ましい。
【0057】
そして二つの金属バンプ4のそれぞれの周囲に形成されている封止樹脂3の間を繋ぐ領域Vにおける封止樹脂3の幅tは、封止樹脂層10全体の強度を保つために
t≧ b
となることが望ましく、それを実現するためには向かい合う線分間の距離Lを
L ≦ a− b
とすることが必要である。
【0058】
また、封止樹脂3の体積を半減させる距離L’(=0.7071a)に近い値をとって
L ≧ 0.7a
とすることが望ましい。
【0059】
すなわち、0.7a ≦ L ≦ a−b・・・(数3)となることが望ましい。
【0060】
以上のように、本実施の形態2の半導体装置では、バンプを封止樹脂で覆いつつ、効率的に封止樹脂の体積を減少させることができる。
【0061】
又、上記(数2)及び(数3)を満たすことによって、実施の形態1と比較して、bが0.2a以上の場合であっても、封止樹脂層10における封止樹脂3の体積を半減させ、半導体チップ1にかかる応力を半減させることが可能となる。
【0062】
尚、本実施の形態2では、対向する線分62は平行に配置されているが、平行に配置されていなくても良い。
【0063】
(実施の形態3)
次に、本発明にかかる実施の形態3における半導体装置について説明する。
【0064】
本実施の形態3の半導体装置は、実施の形態2と空洞の形状が異なっている。そのため、本相違点を中心に説明する。
【0065】
図9は、本実施の形態3の半導体装置の封止樹脂層の平断面の要部拡大構成図である。図10は、図9のDD´間の断面構成図である。尚、図9は、図1を用いて説明すると、上方から視た封止樹脂層のAA´間の断面構成図に相当する。図9に示すように、本実施の形態3では、大きさの異なる2種類の空洞が設けられており、1方の種類の空洞7は、円柱状であり、4つの金属バンプ4の中央に設けられている。この空洞7の円の中心軸7aは、4つの金属バンプ4の中心によって形成される正方形状の対角線の交点に位置する。また、他方の種類の空洞8は、円柱状であり、その中心軸8aが、隣り合う金属バンプ4の中心間を結ぶ線分上に設けられている。
【0066】
上記空洞7の円の半径rは、
r ≧ 0.3a
とすることが望ましい。rは0.4a以上で封止樹脂を半減させるが、別の空洞があるため、本実施の形態では0.3a以上でよい。
【0067】
又、金属バンプ4を覆う封止樹脂3の幅δを0.5b以上とることを考え、
r ≦ 0.7a−1.5bとすることが望ましい。
【0068】
すなわち、
0.3a≦ r ≦0.7a−1.5b・・・(数4)
を満たすことが望ましい。
【0069】
更に、隣り合う金属バンプ4の中心間の線分上の中央に中心軸8aを持つ円柱状の空洞8の半径sは、封止樹脂の体積を少なくするために、
s ≧ 0.1a
とすることが望ましい。s≧0.1aとなる空洞8を1個設けることで封止樹脂の体積を1.5%以上減少させることができる。
【0070】
また中央の空洞7と線分上の空洞8は、封止樹脂層10全体の強度を保つためにある程度の距離を保つことが望ましい。中央の空洞7と線分上の空洞8の間の封止樹脂の幅αが0.5b以上となるようにするために
s ≦ 0.5a−0.5b−r
となることが望ましい。
【0071】
すなわち、
0.1a≦ s≦ 0.5a−0.5b−r・・・(数5)
を満たすことが望ましい。
【0072】
又、金属バンプ4の外周から空洞8までの封止樹脂3の幅δ´については、0.5b以上である方が望ましい。
【0073】
本実施の形態3では、中央の空洞7以外にも円柱状の空洞8を複数設けることによって封止樹脂3の体積を減少させることができる。
【0074】
また、上述した実施の形態2においては、封止樹脂材料やリフローの温度条件などによっては、空洞6の構造をフリップチップ実装後も維持できない可能性も考えられる。すなわち、封止樹脂3の材料であるシートを加熱する際に、封止樹脂3の粘度が低下し、表面張力の作用によって実施の形態2の形状が変形してしまう場合が考えられる。
【0075】
しかしながら、本実施の形態3では、空洞7、8が角をもたない円柱の形状であるため、リフロー時の表面張力による変形を抑制できる。
【0076】
又、上記(数4)及び(数5)を満たすことによって、実施の形態1と比較して、bが0.2a以上の場合であっても、封止樹脂層10における封止樹脂3の体積を半減させ、半導体チップ1にかかる応力を半減させることが可能となる。
【0077】
尚、本実施の形態3では、空洞8は、隣り合う金属バンプ4の間に1つ設けられているが、複数個設けられていても良い。
【0078】
(実施例)
本実施例では、上記実施の形態2の構成における効果を検証した。
【0079】
封止樹脂3を挿入することによって発生する応力の変化を、封止樹脂層10に空洞6を設けない場合(比較例1)と、実施の形態2のように空洞6を設けた場合(実施例1)について、数値シミュレーションにより比較を行った。
【0080】
尚、数値計算においては有限要素法を用いた熱応力解析を実施しており、製造工程におけるリフロー温度220(℃)から常温25(℃)までの冷却過程における熱収縮力をシミュレートしている。又、金属バンプ4のピッチ距離はa=180(μm) 金属バンプ4の半径はb=45(μm) 、空洞6における円弧の半径はR=70(μm)、 空洞6における向かい合う辺の距離をL=126(μm)としている。また、半導体チップの厚みは785(μm)、多層基板の厚みは1092 (μm)、半導体チップと多層基板の間隔は65(μm)としている。
【0081】
図11は、半導体チップ1の底面を描いた図である。半導体チップ1の対角線の交点Oを原点とし、その交点Oから半導体チップの対角方向に向かってX軸をとった。図12は、このX軸上における半導体チップ1の面内方向の応力変化をグラフ化したものである。
【0082】
グラフ1のx=0付近の応力変化は、比較例1で−28(MPa)なのに対して、実施例1では−14 (MPa)となっているので、実施例1の圧縮応力の変化は比較例1と比較して緩和されていることがわかる。また、実施例1における、対角線上の全体的な応力変化も、比較例1と比べると緩和されている。
【0083】
これらのことから、実施の形態2において空洞6を設けることにより、半導体チップ1の底面に発生する応力変化を緩和することができると考えられる。半導体チップ1の底面付近に配置されている半導体素子の電気特性変動がチップ底面の応力変化に比例すると考えられるため、空洞を設けることによって、その電気特性変動が緩和される。
【0084】
尚、上記実施の形態1〜3では、複数の金属バンプ4は、本発明の四角形状の一例として正方形の頂点に配置されているが、正方形に限られるものではなく、例えば、直方体形、平行四辺形、菱形、台形等でも良い。
【0085】
複数の金属バンプ4が平行四辺形の各頂点に配置されている場合に、上記実施の形態1〜3と同様に空洞を形成した時の封止樹脂層の構成について図13〜図15を用いて説明する。
【0086】
図13は、複数の金属バンプ4が平行四辺形の各頂点に配置されている場合に、実施の形態1の空洞5に対応する空洞5´を形成した封止樹脂層10の平断面の構成を示す図である。金属バンプ4の中心4aを結ぶ平行四辺形の領域20において、この平行四辺形の対角線の交点に、中心軸5´aが配置されるように、円柱形状の空洞5´が形成されている。この空洞5の半径rは、空洞5´の断面形状である円の面積が、平行四辺形の領域20の面積の2分の1以上になるように形成されている。又、金属バンプ4の外形から空洞5までの封止樹脂3の幅δは、金属バンプ4の半径の半分である0.5b以上になるように形成されている。
【0087】
図14は、複数の金属バンプ4が平行四辺形状の各頂点に配置されている場合に、実施の形態2の空洞6に対応する空洞6´を封止樹脂層10に設けた状態を示す平断面構成図である。実施の形態2と同様に、空洞6´は金属バンプ4の外周に沿う円弧61´と線分62´に囲まれた断面形状を有する柱形状であり、空洞6´の断面積は、平行四辺形の領域20の面積の2分の1以上になり、tはb以上になり、Rは1.5b以上になるよう形成されている。
【0088】
図15は、複数の金属バンプ4が平行四辺形状の各頂点に配置されている場合に、実施の形態3の空洞7、8に対応する空洞7´、8´を封止樹脂層10に設けた状態を示す平断面構成図である。金属バンプ4の中心4aを結ぶ平行四辺形の領域20において、この平行四辺形の対角線の交点に、中心軸7´aが配置されるように、円柱形状の空洞7´が形成されている。又、隣り合う金属バンプ4の間には円柱形状の空洞8´が形成されており、その空洞8´の中心軸8´aは、隣り合う金属バンプ4の中心4aを結ぶ線分上に配置されている。ここで、領域20で囲まれた中に存在する空洞7´及び4つの空洞8´の各部分の合計の面積が、領域20の面積の2分の1以上になり、金属バンプ4から空洞7´までの間に形成されている封止樹脂3の幅δは0.5b以上になり、空洞7´と空洞8´の間αが0.5b以上になるように空洞7´、8´が形成されている。
【0089】
又、金属バンプ4が、四角形の頂点に配置されているとみなさず、三角形の頂点に配置されているとみなして、空洞を形成してもよい。図16は、正三角形の各頂点に金属バンプ4が配置されている状態の封止樹脂層に円柱形状の空洞11を形成した状態を示す平断面構成図である。図16に示す空洞11は、その中心軸11aが、正三角形の外心と一致するように形成されている。そして、空洞11の半径rは、空洞11の断面積が正三角形状の領域21の面積の2分の1以上になるように設定されている。また、隣り合う空洞11の間に設けられている封止樹脂3の幅βは、金属バンプ4の半径の半分である0.5b以上になっている。尚、正三角形に限らなくてもよい。
【0090】
尚、上述したように、実施の形態1〜3及び図13〜16の空洞は、半導体チップ1にかかる応力を半減するために、封止樹脂層10における封止樹脂3の体積が半分以下になるように形成されていたが、封止樹脂3の体積が封止樹脂層10の半分以下でなくてもよい。この場合、応力を半分以下に減少させることは出来ないものの、空洞がない場合と比較すると、応力を減少させることが出来る。例えば、実施の形態1において、空洞5の半径rが0.4aよりも小さくても良い。また、実施の形態2において線分62の長さが0であってもよい。図17は、線分62が0の時の空洞9の形状を示す構成図である。図17に示すように、空洞9は、4つの金属バンプ4の外周に沿った円弧91によって囲まれた断面を有し、柱状に形成されている。また、実施の形態3において、線分上の空洞8のみが設けられていて、中央の空洞7が設けられていなくても良い。
【0091】
また、上記実施の形態1〜3では、金属バンプ4の外形から空洞5、6、7までの封止樹脂3の幅δは、金属バンプ4の半径の半分である0.5b以上となるように構成されているが、0.5bよりも小さくてもよく、少なくとも金属バンプ4の周囲が、封止樹脂3によって覆われてさえいればよい。この場合、少なくともフリップチップ接合部を腐食等から保護でき、熱収縮による応力も低減出来る。例えば、実施の形態1において、空洞5の半径rを0.7a―1.5bよりも大きくしても良い。また、実施の形態2において、円弧61の半径Rを1.5bよりも小さくしてもよい。更に、実施の形態3において、空洞7の半径rを0.7a―1.5bよりも大きくしても良い。
【0092】
これらのように、少なくとも金属バンプ4の周囲を封止樹脂3によって覆うように構成すれば、フリップチップ接合部を腐食等から保護出来るが、封止樹脂層10の強度の観点からは、少なくとも隣り合う金属バンプ4の周囲に形成されている封止樹脂3同士が繋がっている方が好ましい。この繋がっている部分は、例えば、図7では、隣り合う空洞6の線分62によって挟まれている部分のことであり(図7中、V参照)、図8では、空洞7と空洞8の間の部分のことである(図9中、W参照)。
【0093】
又、本発明の回路基板の一例は、上記実施の形態では多層基板2に相当するが、多層基板でなくてもよい。
【0094】
上述したような構造をもつ半導体パッケージは、半導体チップへかかる応力が少なく、電気特性も優れているため、小型化が求められる携帯電話やデジタルビデオカメラにおける集積回路への適用に最適である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の半導体装置は、熱収縮による応力を低減することが出来るという効果を有し、携帯電話やデジタルビデオカメラにおける集積回路等として有用である。
【符号の説明】
【0096】
1 半導体チップ
2 多層基板
3 封止樹脂
4 金属バンプ
5 空洞
6 空洞
7 空洞
8 空洞
9 空洞
10 封止樹脂層
61 円弧
62 線分
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルビデオカメラ等の分野では、小型、軽量、及び高性能化を実現するための要素技術として、高密度実装が有用となっている。このような高密度装を実現するため,シングルチップのCPS(Chip Scale Package)では不十分な場合があり、MCP(Multi Chip Package)やSiP(System in Package)といったパッケージ採用が広く用いられている。
【0003】
これらのMCPやSiPといった半導体チップ複合型のパッケージで使われるインターポーザ、マザーボードなどの回路基板では,回路基板上で半導体チップ間の接続が必要となる。この回路基板としては、配線密度が高いビルドアップ基板が採用されている。そして、これらの回路基板への半導体チップの実装方法としては,フリップチップ実装が主流となりつつある。
【0004】
上記のような構造をもつ半導体パッケージにおいては,フリップチップ接合部である金属バンプの信頼性を確保するため,通常半導体素子および回路基板の隙間に樹脂組成物(封止樹脂)が充填される。封止樹脂には一般的に熱硬化性の樹脂が用いられる。
【0005】
液体状あるいは半固体の樹脂を、半導体チップと回路基板の間に挿入し、150〜250℃まで加熱させて硬化させた後、冷却させる製造方法が主流となっている。
【0006】
ところが、封止樹脂は、シリコン等によって形成される半導体チップよりも線膨張係数の大きな物質であるため、封止樹脂の硬化温度から常温まで冷却する段階で、半導体チップよりも大きな熱収縮が封止樹脂に発生する。この封止樹脂の熱収縮は半導体チップに発生する応力の原因となる。
【0007】
このような応力を緩和するため、封止樹脂を封入する際に、適切な物性を持つ材料を選択することで温度変化による熱応力を緩和する方法が考案されている。たとえば特許文献1には、封止樹脂のガラス転移温度を適切に設計することで、バンプや回路層に発生する応力を緩和する半導体装置が開示されている。
【0008】
尚、半導体チップの底面付近には、一般的に、多数の半導体素子が敷き詰められており、上記応力が発生する場合には、その応力の影響で半導体素子の電気特性が封止樹脂挿入前にくらべて変化するという問題も発生していた。この電気特性の変化とは、より具体的には、半導体素子にある一定電圧を加えたときの電流の大きさが変化することをさす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−534303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1の従来技術では、バンプや回路層における応力緩和が試みられているが、半導体チップに発生する応力緩和は不十分であり、半導体チップの機能の信頼性に影響を及ぼす可能性がある。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、封止樹脂層に空洞を設けることで、その体積を減少させることにより収縮力を低減させ、熱収縮によって半導体チップに発生する応力を低減することが可能な半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、第1の本発明は、
回路基板と、
前記回路基板に配置された半導体チップと、
前記回路基板と前記半導体チップを接続する複数の金属バンプと、
前記半導体チップ及び前記回路基板の間に設けられ、封止樹脂によって形成された封止樹脂層とを備え、
前記封止樹脂層には、複数の柱状の空洞が形成されており、
前記複数の空洞の体積は、前記封止樹脂層の体積の半分以上である、半導体装置である。
【0013】
第2の本発明は、
前記封止樹脂は、少なくとも前記金属バンプの周囲に形成されており、
隣り合う前記金属バンプの周囲に形成されている前記封止樹脂は繋がっている、第1の本発明の半導体装置である。
【0014】
第3の本発明は、
前記空洞は円柱形状であり、
複数の前記金属バンプは、各前記空洞の軸を中心として4角形状に配置されている、第1の本発明の半導体装置である。
【0015】
第4の本発明は、
前記複数の金属バンプは、前記空洞を4つの前記金属バンプで囲むように配置されており、
前記空洞の断面形状は、前記4つの金属バンプのそれぞれの外周に沿う4つの円弧と、前記4つの円弧を繋ぐ4つの線分で囲まれた形状である、第1の本発明の半導体装置である。
【0016】
第5の本発明は、
前記複数の柱状の空洞は、大きさの異なる2種類の円柱形状の空洞を有し、
複数の前記金属バンプは、4角形状に配置されており、
一方の種類の前記空洞は、その軸が前記4角形状の中心になるように配置されており、
他方の種類の前記空洞は、その軸が隣り合う前記金属バンプの中心を結ぶ線上に配置されるように形成されている、第1の本発明の半導体装置である。
【0017】
第6の本発明は、
前記金属バンプと前記空洞の間には、少なくとも前記金属バンプの半径の半分以上の幅の前記封止樹脂が形成されている、第1〜5のいずれかの本発明の半導体装置である。
【0018】
第7の本発明は、
隣り合う前記金属バンプの中心間の距離a、前記空洞の半径r、及び前記金属バンプの半径bが、以下の(数1)の関係を満たす、第3の本発明の半導体装置である。
【0019】
(数1) 0.4a≦r≦0.7a―1.5b
第8の本発明は、
前記円弧の中心は、前記金属バンプの中心と一致し、
前記金属バンプの半径b、及び前記円弧の半径Rが、以下の(数2)の関係を満たし、
前記空洞の断面形状の向かい合う線分は互いに平行であって、その距離Lと、隣り合う前記金属バンプの中心間の距離a、及び前記金属バンプの半径bが、以下の(数3)の関係を満たす、第4の本発明の半導体装置である。
【0020】
(数2) R≧1.5b
(数3)0.7a≦L≦a―b
第9の本発明は、
前記一方の種類の円柱形状の空洞の半径r、隣り合う前記金属バンプの中心間の距離a、及び前記金属バンプの半径bは、以下の(数4)の関係を満たし、
前記他方の種類の円柱形状の空洞の半径sは、以下の(数5)の関係を満たしている、第5の本発明の半導体装置である。
【0021】
(数4) 0.3a≦r≦0.7a―1.5b
(数5) 0.1a≦s≦0.5a―0.5b―r
【発明の効果】
【0022】
本発明は、熱収縮による応力を低減することが可能な半導体装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明にかかる実施の形態1における半導体装置の側断面構成図
【図2】本発明にかかる実施の形態1における半導体装置の実装方法を説明するための図
【図3】図1のAA´間における封止樹脂層の断面構成図
【図4】本発明の実施の形態1における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【図5】図4のBB´間の断面構成図
【図6】本発明にかかる実施の形態1における半導体装置においてb=0.15aである場合の封止樹脂層の要部を拡大した平断面構成図
【図7】本発明にかかる実施の形態2における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【図8】図7のCC´間断面構成図
【図9】本発明にかかる実施の形態3における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【図10】図9のDD´間断面構成図
【図11】本発明にかかる実施例1における半導体チップの底面を表す図
【図12】本発明にかかる実施例1及び比較例1における半導体チップ底面の応力変化のグラフを示す図
【図13】本発明にかかる実施の形態1の変形例における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【図14】本発明にかかる実施の形態2の変形例における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【図15】本発明にかかる実施の形態3の変形例における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【図16】本発明にかかる実施の形態1の変形例における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【図17】本発明にかかる実施の形態2の変形例における封止樹脂層の平断面の構成を示す要部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について図を参照しながら説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0025】
(実施の形態1)
以下に、本発明にかかる実施の形態1における半導体装置について説明する。
【0026】
図1は、本実施の形態1の半導体装置の断面構成図である。
【0027】
本実施の形態1の半導体装置では、トランジスタなどの半導体素子をもつ半導体チップ1が、本発明の回路基板の一例である多層基板2上にフリップチップ接合方式により接続されている。また半導体チップ1と多層基板2の間には樹脂組成物である封止樹脂3が封入されており、半導体チップ1と多層基板2の間に封止樹脂層10が形成されている。
【0028】
ここで本実施の形態1における半導体装置では、多層基板2上に半導体チップ1を実装する際にフリップチップ実装を行っているため、半導体チップ1の表面と多層基板2との電気的な接続は、ワイヤボンディングのようなワイヤではなく、アレイ状に並んだ突起状の端子である金属バンプ4によって行われている。
【0029】
また、フリップチップ実装は、ワイヤボンディングにくらべて実装面積を小さくできるため、高密度実装が可能になる利点があり、配線が短いために電気的特性がよいという特徴もある。よって、本実施の形態の半導体パッケージは小型、薄型に対する要求の強い携帯機器の回路や、電気特性が重視される高周波回路などに向いている。
【0030】
尚、本実施の形態1では、半導体チップは、厚み0.5〜1(mm)程度、縦もしくは横の長さが5〜10(mm)程度のサイズのものが扱われる。半導体チップ1の材質はシリコンであり、その底面付近にはトランジスタなどの半導体素子が20〜100(nm)ピッチで敷き詰められている。
【0031】
又、多層基板2としては、コア層となる板状の材料の両面に配線が1〜3層程度積層されたビルドアップ基板が用いられる。コア層の材料としてはガラスエポキシ樹脂が用いられる。コア層の材料の厚みは200〜800(μm)程度とし、多層基板2の全体の厚さは300〜1200(μm)程度とする。また多層基板2は、縦もしくは横の長さが15〜40(mm)程度のサイズのものが使用される。
【0032】
上記金属バンプ4としては、Sn、Ag、Cuを6:1:2の割合で含む合金の半田材料が用いられる。
【0033】
次に、本実施の形態1の半導体装置における封止樹脂3について説明する。
【0034】
封止樹脂3は、フリップチップ接合部が外力よって破壊されたり腐食したりすることを防ぐために用いられる。封止樹脂3にはNCF(NonConductive Film)とよばれる熱硬化性の樹脂が適用される。NCFとは、半導体チップ1と多層基板2とを金属接合する前に多層基板2上に塗布される非導電性のフィルム状の封止材である。
【0035】
図2は、本実施の形態1の半導体装置の製造方法を説明するための図である。図2に示すように、封止樹脂3としてシート状のNCFが多層基板2の表面上に配置される。そして、NCFの粘度が小さくなる温度において金属バンプ4が装着された半導体チップ1がNCFの層に突き刺され、金属バンプ4が多層基板2の電極部に接着され、リフロー工程において熱を加えることでフリップチップ実装と封止樹脂層10の硬化が同時に行われる。
【0036】
図3は、図1の上方から視たAA´間における封止樹脂層10の断面構成図であり、封止樹脂層10の空洞構造を示す。図3に示すように、本実施の形態における封止樹脂層10では、複数の金属バンプ4が正方格子状に配置されている。そして、正方形の頂点に配置された4つの金属バンプ4間のそれぞれの中央に、柱状の空洞5が設けられている。この空洞5は、熱膨張によって半導体チップ1全体に発生する応力を低下させること目的としている。
【0037】
図4は、図3の部分拡大図であり、1つの空洞5とその周囲に配置されている4つの金属バンプ4の構成を示す図である。又、図5は、図4のBB´間の断面構成図である。
【0038】
図4、5に示すように、空洞5は円柱形状であり、空洞5の円柱の中心軸5a(円の中心)は、4つの金属バンプ4によって形成される正方形状の対角線の交点に位置する。又、封止樹脂3の体積をできるだけ小さくするため、円柱状の空洞5は図5に示すように封止樹脂層10の上面から下面まで貫通するものが望ましい。
【0039】
尚、このような空洞5は、次のように形成することが出来る。予め、シート状のNCF(封止樹脂3)にパンチを用いた型抜きによって空洞が形成される。空洞が形成されたNCFが、多層基板2上に配置される。その後、フリップチップ実装と封止樹脂3の硬化が行われ、空洞5が形成された封止樹脂層10を形成することが出来る。
【0040】
また、隣り合う金属バンプ4の中心間の距離a、金属バンプ4の半径b、及び円柱の円の半径rは、次の(数1)を満たしていることが望ましい。
【0041】
0.4a≦r≦0.7a―1.5b・・・(数1)
上式について説明する。封止樹脂3の熱収縮によって半導体チップ1の底面全体に発生する応力は、封止樹脂の体積に応じて発生すると考えられる。すなわち、封止樹脂の熱収縮により発生する応力は、その体積に比例すると考えられる。ここで、半導体チップ1の底面近傍に設けられている半導体素子の電気的特性変動を半減するためには、封止樹脂層10における封止樹脂3の体積が、空洞なしの場合に対して半分以下にすることが望ましい。
【0042】
よって、半導体素子の電気特性変動を半減させるとした場合、円柱状の空洞5の半径は、封止樹脂の体積を半減させる円柱の半径r´(=0.39894a)に近い値をとって
0.4a≦r
とすることが望ましい。このr´の値は次のように導かれる。図4の4つの金属バンプ4の中心点4aで囲まれた正方形領域の面積はa2である。金属バンプ4の体積を無視すると、円柱状の空洞5の円の面積がこの半分の値になるときに封止樹脂3の体積は半減すると考えられる。
【0043】
よって、πr´2=(a2)/2 となるのでr´=0.39894aとなる。
【0044】
また、金属バンプ4の信頼性を十分に確保するため、金属バンプ4を覆う封止樹脂3の幅δは金属バンプ4の半径の半分である0.5b程度確保することが望ましい。ここで、空洞5の中心(軸5a)から金属バンプ4の中心までの距離はおよそ0.7aであるから、円柱状の空洞5の半径rは金属バンプ4を覆う封止樹脂3の幅が0.5b以上となるように
r≦0.7a―1.5b
とすることが望ましい。
【0045】
これら0.4a≦rと、r≦0.7a―1.5bとから上記(数1)が導かれる。
【0046】
このように、本実施の形態の半導体装置では、封止樹脂層10に空洞5をもつ構造となるため、封止樹脂3の体積は空洞なしの場合に比べて減少する。封止樹脂3の体積を減少させると、その収縮力は低下するので,半導体チップ1に発生する圧縮応力が低減される。そのため、半導体チップ1の底面付近に半導体素子が敷き詰められているような半導体装置等であっても、その電気特性の変動を緩和することができる。尚、電気特性の変化とは、より具体的には、半導体素子にある一定電圧を加えたときに電流の大きさが変化することをさす。
【0047】
又、上記(数1)を満たすような空洞5を形成することによって、封止樹脂層10における封止樹脂3の体積を半分以上減少させ、半導体チップ1にかかる応力を半減させることが可能となる。
【0048】
なお、本実施の形態及び以下の実施の形態では、空洞を円柱として円の半径rを定義しているが、本発明の柱状の一例として空洞が富士山のような形状(円錐台形状)や太鼓形状であってもよい。その場合、これら円錐台や太鼓形状の半径rは、同体積の円柱に置き換え、その円柱の半径として定義される。
【0049】
(実施の形態2)
次に、本発明にかかる実施の形態2における半導体装置について説明する。
【0050】
本実施の形態2の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置と空洞の構成が異なっている。そのため、本相違点を中心に説明する。
【0051】
図6はb=0.2aとなる場合に、実施の形態1と同様に、4つの金属バンプ4の中央に円柱状の空洞5を設けた封止樹脂層10の状態を示す平面構成図である。このように、b=0.2aとなる場合には、金属バンプ4の半径bが、隣り合う金属バンプ4の中心間の距離aに対して大きくなるため、金属バンプ4を覆う封止樹脂3の幅δを0.5b以上とるためには
0.4a≧r
のように、空洞の半径rを小さくしなければならない。
【0052】
このように、封止樹脂層10における封止樹脂3の体積を半減するような空洞の半径を確保することできないため、半導体チップ1に発生する応力を半分にまで減少させる場合には、対応出来ない可能性がある。
【0053】
そこで、bが比較的大きい場合に封止樹脂の体積を減少させるための工夫として、本実施の形態2の構成が用いられる。
【0054】
図7は、本実施の形態2の半導体装置の封止樹脂層の平断面の要部拡大構成図である。図8は、図7のCC´間の断面構成図である。尚、図7は、図1を用いて説明すると、上方から視た封止樹脂層のAA´間の断面構成図に相当する。
【0055】
図7、8に示すように、本実施の形態2の空洞6は、正方形状に配置された4つの金属バンプ4の間に配置されており、4つの金属バンプ4の外周に沿うような円弧61と、線分62で囲まれた形状を断面形状とする柱状に形成されている。この各線分62は、対向する線分62が互いに平行であり、それぞれの線分62は、隣り合う金属バンプ4の中心を結んだ線分と平行に設けられている。
【0056】
円弧61の中心は、それぞれの金属バンプ4の中心4aに一致している。又、金属バンプ4を覆う封止樹脂3に、金属バンプ4の半径の半分である0.5b以上の幅を持たせるために、円弧61の半径Rは
R≧1.5b・・・(数2)
とすることが望ましい。
【0057】
そして二つの金属バンプ4のそれぞれの周囲に形成されている封止樹脂3の間を繋ぐ領域Vにおける封止樹脂3の幅tは、封止樹脂層10全体の強度を保つために
t≧ b
となることが望ましく、それを実現するためには向かい合う線分間の距離Lを
L ≦ a− b
とすることが必要である。
【0058】
また、封止樹脂3の体積を半減させる距離L’(=0.7071a)に近い値をとって
L ≧ 0.7a
とすることが望ましい。
【0059】
すなわち、0.7a ≦ L ≦ a−b・・・(数3)となることが望ましい。
【0060】
以上のように、本実施の形態2の半導体装置では、バンプを封止樹脂で覆いつつ、効率的に封止樹脂の体積を減少させることができる。
【0061】
又、上記(数2)及び(数3)を満たすことによって、実施の形態1と比較して、bが0.2a以上の場合であっても、封止樹脂層10における封止樹脂3の体積を半減させ、半導体チップ1にかかる応力を半減させることが可能となる。
【0062】
尚、本実施の形態2では、対向する線分62は平行に配置されているが、平行に配置されていなくても良い。
【0063】
(実施の形態3)
次に、本発明にかかる実施の形態3における半導体装置について説明する。
【0064】
本実施の形態3の半導体装置は、実施の形態2と空洞の形状が異なっている。そのため、本相違点を中心に説明する。
【0065】
図9は、本実施の形態3の半導体装置の封止樹脂層の平断面の要部拡大構成図である。図10は、図9のDD´間の断面構成図である。尚、図9は、図1を用いて説明すると、上方から視た封止樹脂層のAA´間の断面構成図に相当する。図9に示すように、本実施の形態3では、大きさの異なる2種類の空洞が設けられており、1方の種類の空洞7は、円柱状であり、4つの金属バンプ4の中央に設けられている。この空洞7の円の中心軸7aは、4つの金属バンプ4の中心によって形成される正方形状の対角線の交点に位置する。また、他方の種類の空洞8は、円柱状であり、その中心軸8aが、隣り合う金属バンプ4の中心間を結ぶ線分上に設けられている。
【0066】
上記空洞7の円の半径rは、
r ≧ 0.3a
とすることが望ましい。rは0.4a以上で封止樹脂を半減させるが、別の空洞があるため、本実施の形態では0.3a以上でよい。
【0067】
又、金属バンプ4を覆う封止樹脂3の幅δを0.5b以上とることを考え、
r ≦ 0.7a−1.5bとすることが望ましい。
【0068】
すなわち、
0.3a≦ r ≦0.7a−1.5b・・・(数4)
を満たすことが望ましい。
【0069】
更に、隣り合う金属バンプ4の中心間の線分上の中央に中心軸8aを持つ円柱状の空洞8の半径sは、封止樹脂の体積を少なくするために、
s ≧ 0.1a
とすることが望ましい。s≧0.1aとなる空洞8を1個設けることで封止樹脂の体積を1.5%以上減少させることができる。
【0070】
また中央の空洞7と線分上の空洞8は、封止樹脂層10全体の強度を保つためにある程度の距離を保つことが望ましい。中央の空洞7と線分上の空洞8の間の封止樹脂の幅αが0.5b以上となるようにするために
s ≦ 0.5a−0.5b−r
となることが望ましい。
【0071】
すなわち、
0.1a≦ s≦ 0.5a−0.5b−r・・・(数5)
を満たすことが望ましい。
【0072】
又、金属バンプ4の外周から空洞8までの封止樹脂3の幅δ´については、0.5b以上である方が望ましい。
【0073】
本実施の形態3では、中央の空洞7以外にも円柱状の空洞8を複数設けることによって封止樹脂3の体積を減少させることができる。
【0074】
また、上述した実施の形態2においては、封止樹脂材料やリフローの温度条件などによっては、空洞6の構造をフリップチップ実装後も維持できない可能性も考えられる。すなわち、封止樹脂3の材料であるシートを加熱する際に、封止樹脂3の粘度が低下し、表面張力の作用によって実施の形態2の形状が変形してしまう場合が考えられる。
【0075】
しかしながら、本実施の形態3では、空洞7、8が角をもたない円柱の形状であるため、リフロー時の表面張力による変形を抑制できる。
【0076】
又、上記(数4)及び(数5)を満たすことによって、実施の形態1と比較して、bが0.2a以上の場合であっても、封止樹脂層10における封止樹脂3の体積を半減させ、半導体チップ1にかかる応力を半減させることが可能となる。
【0077】
尚、本実施の形態3では、空洞8は、隣り合う金属バンプ4の間に1つ設けられているが、複数個設けられていても良い。
【0078】
(実施例)
本実施例では、上記実施の形態2の構成における効果を検証した。
【0079】
封止樹脂3を挿入することによって発生する応力の変化を、封止樹脂層10に空洞6を設けない場合(比較例1)と、実施の形態2のように空洞6を設けた場合(実施例1)について、数値シミュレーションにより比較を行った。
【0080】
尚、数値計算においては有限要素法を用いた熱応力解析を実施しており、製造工程におけるリフロー温度220(℃)から常温25(℃)までの冷却過程における熱収縮力をシミュレートしている。又、金属バンプ4のピッチ距離はa=180(μm) 金属バンプ4の半径はb=45(μm) 、空洞6における円弧の半径はR=70(μm)、 空洞6における向かい合う辺の距離をL=126(μm)としている。また、半導体チップの厚みは785(μm)、多層基板の厚みは1092 (μm)、半導体チップと多層基板の間隔は65(μm)としている。
【0081】
図11は、半導体チップ1の底面を描いた図である。半導体チップ1の対角線の交点Oを原点とし、その交点Oから半導体チップの対角方向に向かってX軸をとった。図12は、このX軸上における半導体チップ1の面内方向の応力変化をグラフ化したものである。
【0082】
グラフ1のx=0付近の応力変化は、比較例1で−28(MPa)なのに対して、実施例1では−14 (MPa)となっているので、実施例1の圧縮応力の変化は比較例1と比較して緩和されていることがわかる。また、実施例1における、対角線上の全体的な応力変化も、比較例1と比べると緩和されている。
【0083】
これらのことから、実施の形態2において空洞6を設けることにより、半導体チップ1の底面に発生する応力変化を緩和することができると考えられる。半導体チップ1の底面付近に配置されている半導体素子の電気特性変動がチップ底面の応力変化に比例すると考えられるため、空洞を設けることによって、その電気特性変動が緩和される。
【0084】
尚、上記実施の形態1〜3では、複数の金属バンプ4は、本発明の四角形状の一例として正方形の頂点に配置されているが、正方形に限られるものではなく、例えば、直方体形、平行四辺形、菱形、台形等でも良い。
【0085】
複数の金属バンプ4が平行四辺形の各頂点に配置されている場合に、上記実施の形態1〜3と同様に空洞を形成した時の封止樹脂層の構成について図13〜図15を用いて説明する。
【0086】
図13は、複数の金属バンプ4が平行四辺形の各頂点に配置されている場合に、実施の形態1の空洞5に対応する空洞5´を形成した封止樹脂層10の平断面の構成を示す図である。金属バンプ4の中心4aを結ぶ平行四辺形の領域20において、この平行四辺形の対角線の交点に、中心軸5´aが配置されるように、円柱形状の空洞5´が形成されている。この空洞5の半径rは、空洞5´の断面形状である円の面積が、平行四辺形の領域20の面積の2分の1以上になるように形成されている。又、金属バンプ4の外形から空洞5までの封止樹脂3の幅δは、金属バンプ4の半径の半分である0.5b以上になるように形成されている。
【0087】
図14は、複数の金属バンプ4が平行四辺形状の各頂点に配置されている場合に、実施の形態2の空洞6に対応する空洞6´を封止樹脂層10に設けた状態を示す平断面構成図である。実施の形態2と同様に、空洞6´は金属バンプ4の外周に沿う円弧61´と線分62´に囲まれた断面形状を有する柱形状であり、空洞6´の断面積は、平行四辺形の領域20の面積の2分の1以上になり、tはb以上になり、Rは1.5b以上になるよう形成されている。
【0088】
図15は、複数の金属バンプ4が平行四辺形状の各頂点に配置されている場合に、実施の形態3の空洞7、8に対応する空洞7´、8´を封止樹脂層10に設けた状態を示す平断面構成図である。金属バンプ4の中心4aを結ぶ平行四辺形の領域20において、この平行四辺形の対角線の交点に、中心軸7´aが配置されるように、円柱形状の空洞7´が形成されている。又、隣り合う金属バンプ4の間には円柱形状の空洞8´が形成されており、その空洞8´の中心軸8´aは、隣り合う金属バンプ4の中心4aを結ぶ線分上に配置されている。ここで、領域20で囲まれた中に存在する空洞7´及び4つの空洞8´の各部分の合計の面積が、領域20の面積の2分の1以上になり、金属バンプ4から空洞7´までの間に形成されている封止樹脂3の幅δは0.5b以上になり、空洞7´と空洞8´の間αが0.5b以上になるように空洞7´、8´が形成されている。
【0089】
又、金属バンプ4が、四角形の頂点に配置されているとみなさず、三角形の頂点に配置されているとみなして、空洞を形成してもよい。図16は、正三角形の各頂点に金属バンプ4が配置されている状態の封止樹脂層に円柱形状の空洞11を形成した状態を示す平断面構成図である。図16に示す空洞11は、その中心軸11aが、正三角形の外心と一致するように形成されている。そして、空洞11の半径rは、空洞11の断面積が正三角形状の領域21の面積の2分の1以上になるように設定されている。また、隣り合う空洞11の間に設けられている封止樹脂3の幅βは、金属バンプ4の半径の半分である0.5b以上になっている。尚、正三角形に限らなくてもよい。
【0090】
尚、上述したように、実施の形態1〜3及び図13〜16の空洞は、半導体チップ1にかかる応力を半減するために、封止樹脂層10における封止樹脂3の体積が半分以下になるように形成されていたが、封止樹脂3の体積が封止樹脂層10の半分以下でなくてもよい。この場合、応力を半分以下に減少させることは出来ないものの、空洞がない場合と比較すると、応力を減少させることが出来る。例えば、実施の形態1において、空洞5の半径rが0.4aよりも小さくても良い。また、実施の形態2において線分62の長さが0であってもよい。図17は、線分62が0の時の空洞9の形状を示す構成図である。図17に示すように、空洞9は、4つの金属バンプ4の外周に沿った円弧91によって囲まれた断面を有し、柱状に形成されている。また、実施の形態3において、線分上の空洞8のみが設けられていて、中央の空洞7が設けられていなくても良い。
【0091】
また、上記実施の形態1〜3では、金属バンプ4の外形から空洞5、6、7までの封止樹脂3の幅δは、金属バンプ4の半径の半分である0.5b以上となるように構成されているが、0.5bよりも小さくてもよく、少なくとも金属バンプ4の周囲が、封止樹脂3によって覆われてさえいればよい。この場合、少なくともフリップチップ接合部を腐食等から保護でき、熱収縮による応力も低減出来る。例えば、実施の形態1において、空洞5の半径rを0.7a―1.5bよりも大きくしても良い。また、実施の形態2において、円弧61の半径Rを1.5bよりも小さくしてもよい。更に、実施の形態3において、空洞7の半径rを0.7a―1.5bよりも大きくしても良い。
【0092】
これらのように、少なくとも金属バンプ4の周囲を封止樹脂3によって覆うように構成すれば、フリップチップ接合部を腐食等から保護出来るが、封止樹脂層10の強度の観点からは、少なくとも隣り合う金属バンプ4の周囲に形成されている封止樹脂3同士が繋がっている方が好ましい。この繋がっている部分は、例えば、図7では、隣り合う空洞6の線分62によって挟まれている部分のことであり(図7中、V参照)、図8では、空洞7と空洞8の間の部分のことである(図9中、W参照)。
【0093】
又、本発明の回路基板の一例は、上記実施の形態では多層基板2に相当するが、多層基板でなくてもよい。
【0094】
上述したような構造をもつ半導体パッケージは、半導体チップへかかる応力が少なく、電気特性も優れているため、小型化が求められる携帯電話やデジタルビデオカメラにおける集積回路への適用に最適である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の半導体装置は、熱収縮による応力を低減することが出来るという効果を有し、携帯電話やデジタルビデオカメラにおける集積回路等として有用である。
【符号の説明】
【0096】
1 半導体チップ
2 多層基板
3 封止樹脂
4 金属バンプ
5 空洞
6 空洞
7 空洞
8 空洞
9 空洞
10 封止樹脂層
61 円弧
62 線分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板と、
前記回路基板に配置された半導体チップと、
前記回路基板と前記半導体チップを接続する複数の金属バンプと、
前記半導体チップ及び前記回路基板の間に設けられ、封止樹脂によって形成された封止樹脂層とを備え、
前記封止樹脂層には、複数の柱状の空洞が形成されており、
前記複数の空洞の体積は、前記封止樹脂層の体積の半分以上である、半導体装置。
【請求項2】
前記封止樹脂は、少なくとも前記金属バンプの周囲に形成されており、
隣り合う前記金属バンプの周囲に形成されている前記封止樹脂は繋がっている、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記空洞は円柱形状であり、
複数の前記金属バンプは、各前記空洞の軸を中心として4角形状に配置されている、請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の金属バンプは、前記空洞を4つの前記金属バンプで囲むように配置されており、
前記空洞の断面形状は、前記4つの金属バンプのそれぞれの外周に沿う4つの円弧と、前記4つの円弧を繋ぐ4つの線分で囲まれた形状である、請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記複数の柱状の空洞は、大きさの異なる2種類の円柱形状の空洞を有し、
複数の前記金属バンプは、4角形状に配置されており、
一方の種類の前記空洞は、その軸が前記4角形状の中心になるように配置されており、
他方の種類の前記空洞は、その軸が隣り合う前記金属バンプの中心を結ぶ線上に配置されている、請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記金属バンプと前記空洞の間には、少なくとも前記金属バンプの半径の半分以上の幅の前記封止樹脂が形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
隣り合う前記金属バンプの中心間の距離a、前記空洞の半径r、及び前記金属バンプの半径bが、以下の(数1)の関係を満たす、請求項3記載の半導体装置。
(数1) 0.4a≦r≦0.7a―1.5b
【請求項8】
前記円弧の中心は、前記金属バンプの中心と一致し、
前記金属バンプの半径b、及び前記円弧の半径Rが、以下の(数2)の関係を満たし、
前記空洞の断面形状の向かい合う線分は互いに平行であって、その距離Lと、隣り合う前記金属バンプの中心間の距離a、及び前記金属バンプの半径bが、以下の(数3)の関係を満たす、請求項4記載の半導体装置。
(数2) R≧1.5b
(数3)0.7a≦L≦a―b
【請求項9】
前記一方の種類の円柱形状の空洞の半径r、隣り合う前記金属バンプの中心間の距離a、及び前記金属バンプの半径bは、以下の(数4)の関係を満たし、
前記他方の種類の円柱形状の空洞の半径sは、以下の(数5)の関係を満たしている、請求項5記載の半導体装置。
(数4) 0.3a≦r≦0.7a―1.5b
(数5) 0.1a≦s≦0.5a―0.5b―r
【請求項1】
回路基板と、
前記回路基板に配置された半導体チップと、
前記回路基板と前記半導体チップを接続する複数の金属バンプと、
前記半導体チップ及び前記回路基板の間に設けられ、封止樹脂によって形成された封止樹脂層とを備え、
前記封止樹脂層には、複数の柱状の空洞が形成されており、
前記複数の空洞の体積は、前記封止樹脂層の体積の半分以上である、半導体装置。
【請求項2】
前記封止樹脂は、少なくとも前記金属バンプの周囲に形成されており、
隣り合う前記金属バンプの周囲に形成されている前記封止樹脂は繋がっている、請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記空洞は円柱形状であり、
複数の前記金属バンプは、各前記空洞の軸を中心として4角形状に配置されている、請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複数の金属バンプは、前記空洞を4つの前記金属バンプで囲むように配置されており、
前記空洞の断面形状は、前記4つの金属バンプのそれぞれの外周に沿う4つの円弧と、前記4つの円弧を繋ぐ4つの線分で囲まれた形状である、請求項1記載の半導体装置。
【請求項5】
前記複数の柱状の空洞は、大きさの異なる2種類の円柱形状の空洞を有し、
複数の前記金属バンプは、4角形状に配置されており、
一方の種類の前記空洞は、その軸が前記4角形状の中心になるように配置されており、
他方の種類の前記空洞は、その軸が隣り合う前記金属バンプの中心を結ぶ線上に配置されている、請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記金属バンプと前記空洞の間には、少なくとも前記金属バンプの半径の半分以上の幅の前記封止樹脂が形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
隣り合う前記金属バンプの中心間の距離a、前記空洞の半径r、及び前記金属バンプの半径bが、以下の(数1)の関係を満たす、請求項3記載の半導体装置。
(数1) 0.4a≦r≦0.7a―1.5b
【請求項8】
前記円弧の中心は、前記金属バンプの中心と一致し、
前記金属バンプの半径b、及び前記円弧の半径Rが、以下の(数2)の関係を満たし、
前記空洞の断面形状の向かい合う線分は互いに平行であって、その距離Lと、隣り合う前記金属バンプの中心間の距離a、及び前記金属バンプの半径bが、以下の(数3)の関係を満たす、請求項4記載の半導体装置。
(数2) R≧1.5b
(数3)0.7a≦L≦a―b
【請求項9】
前記一方の種類の円柱形状の空洞の半径r、隣り合う前記金属バンプの中心間の距離a、及び前記金属バンプの半径bは、以下の(数4)の関係を満たし、
前記他方の種類の円柱形状の空洞の半径sは、以下の(数5)の関係を満たしている、請求項5記載の半導体装置。
(数4) 0.3a≦r≦0.7a―1.5b
(数5) 0.1a≦s≦0.5a―0.5b―r
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−114349(P2012−114349A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263786(P2010−263786)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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