説明

半導体装置

【課題】半導体装置に損傷を与えることなく、単体の抵抗素子自体の抵抗値を精度良く微調整する。
【解決手段】P型の半導体基板10上にN型の半導体層11が形成されている。半導体層11の表面には薄い第2の絶縁膜13が形成され、第1の絶縁膜12及び第2の絶縁膜13上にフローティングポリシリコン層14が形成されている。フローティングポリシリコン層14は第3の絶縁膜15に覆われている。第3の絶縁膜15によって覆われたフローティングポリシリコン層14上にはポリシリコン抵抗層16が形成されている。そして、半導体層11とポリシリコン抵抗層16との間に電圧を印加することにより、第2の絶縁膜13を通してフローティングポリシリコン層14の中に電子が注入され、ポリシリコン抵抗層16の中に正孔蓄積層16Aが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に、特に抵抗値を調整できる抵抗素子を備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の端子間の抵抗値を調整するためにトリミングが行われていた。特許文献1には、集積回路において、端子間に2つの抵抗を接続し、1つの抵抗にトリミング素子を並列に接続して、トリミング素子の状態を変化させることにより、端子間の抵抗値を調整するようにした抵抗トリミング回路が開示されている。この場合、トリミング素子が短絡した状態では、端子間の抵抗値は、トリミング素子が接続されていない方の抵抗の抵抗値となる。一方、トリミング素子の両端に過電圧を印加することにより、トリミング素子を溶断し、短絡状態から開放状態に変化させると、端子間の抵抗値は、2つの抵抗の抵抗値の和になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−283714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の抵抗トリミング回路においては、端子間の抵抗値は、個々の抵抗の抵抗値の分だけしか変化させることができないこと、さらに一度抵抗を溶断すると、再度接続することができないことより、抵抗値の微調整は困難であった。また、トリミング素子に対する過電圧印加により発生する熱により、集積回路の絶縁膜等にクラック等の損傷が生じるおそれがあった。上述の抵抗トリミング回路では過電圧印加によりトリミング素子を溶断しているが、レーザー照射によりトリミング素子を溶断する場合にも同様の問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成された第2導電型の半導体層と、前記半導体基板の表面に形成された第1の絶縁膜と、前記半導体層の表面に形成され、前記第1の絶縁膜より薄い第2の絶縁膜と、前記第1及び前記第2の絶縁膜上に形成され、電気的にフローティング状態のフローティング半導体層と、前記フローティング半導体層を覆う第3の絶縁膜と、前記第3の絶縁膜によって覆われた前記フローティング半導体層上に形成された半導体抵抗層と、を備え、前記半導体層と前記半導体抵抗層との間に電圧を印加することにより、前記第2の絶縁膜を通して前記フローティング半導体層の中に電子を注入し、前記半導体抵抗層の中に正孔が蓄積されてなる正孔蓄積層を形成するように構成されたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の半導体装置は、第1導電型の半導体基板と、前記半導体基板の表面に形成された第2の導電型の半導体層と、前記半導体層の表面に形成された第1導電型の半導体抵抗層と、前記半導体抵抗層の表面から前記半導体層の中に到達するように形成されたトレンチと、前記トレンチの底面及び側壁を覆う絶縁膜と、前記トレンチの側壁上に前記絶縁膜を介して形成されたフローティング半導体層と、を備え、前記半導体層と前記半導体抵抗層との間に電圧を印加することにより、前記絶縁膜を通して前記フローティング半導体層の中に電子を注入し、前記半導体抵抗層の中に正孔が蓄積されてなる正孔蓄積層を形成するように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、従来の抵抗トリミング回路とは異なり、単体の抵抗素子自体の抵抗値を電気的に調整可能にしたものであり、半導体装置の絶縁膜等に損傷を与えることなく、その抵抗値を精度良く微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態による半導体装置を示す断面図及び平面図である。
【図2】図1の断面図の部分拡大図である。
【図3】図1の半導体装置を説明する等価回路図である。
【図4】本発明の第2の実施形態による半導体装置を示す断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態による半導体装置におけるポリシリコン抵抗層のシート抵抗の調整特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態による半導体装置について、図面を参照して説明する。図1(A)は、この半導体装置の断面図であり、図1(B)は、その平面図である。図1(A)は、図1(B)におけるA−A線に沿った断面図になっている。
【0010】
図示のように、P型の単結晶からなる半導体基板10の表面にN型の半導体層11が形成されている。この半導体基板10の表面に第1の絶縁膜12が形成されている。第1の絶縁膜12は、LOCOS絶縁膜など膜厚の厚い絶縁膜により形成されることが好ましい。N型の半導体層11の表面には、第1の絶縁膜12の端部と接触した第2の絶縁膜13が形成されている。
【0011】
これらの第1の絶縁膜12及び第2の絶縁膜13上に、ポリシリコンからなる電気的にフローティング状態のフローティングポリシリコン層14が形成されている。このフローティングポリシリコン層14を覆って、第3の絶縁膜15が形成されている。そして、第3の絶縁膜15によって覆われたフローティングポリシリコン層14上にポリシリコン抵抗層16が形成されている。ポリシリコン抵抗層16は、ポリシリコンにボロン等のP型の不純物が添加されてなるP型の半導体抵抗層である。
【0012】
さらに、フローティングポリシリコン層14に隣接して、N型の半導体層11の表面の一部に、N+型のコンタクト層11Aが形成されている。このコンタクト層11Aとポリシリコン抵抗層16は、それぞれ、端子T1と端子T2を介して、電圧印加手段50に接続されている。電圧印加手段50は、電子注入モードと、電子引き抜きモードの各モードに応じて、N型の半導体層11とポリシリコン抵抗層16との間に電圧を印加するものである。この電圧印加手段50は、半導体装置の一部として形成されても良いし、半導体装置の外部に設けられても良い。したがって、半導体装置を封止する前、封止した後のどちらでも抵抗値を調整することが可能である。
【0013】
また、図1(B)の平面図に示すように、フローティングポリシリコン層14、ポリシリコン抵抗層16はストライプ状に形成されている。電圧印加手段50と接続されるポリシリコン抵抗層16の端子T2は、例えばポリシリコン抵抗層16の長手方向の両端部に形成されている。これらの端子T2,T2は、ポリシリコン抵抗層16の端子としても用いられる。フローティングポリシリコン層14、ポリシリコン抵抗層16のパターンは、ストライプ状ではなく、ジグザグ状等の他のパターンで形成されてもよい。
【0014】
以下に、ポリシリコン抵抗層16の抵抗値を調整する方法について図2の部分拡大図を参照して説明する。
【0015】
まず、電子注入モードについて説明する。この場合、半導体基板10を接地し、電圧印加手段50により、ポリシリコン抵抗層16にN型の半導体層11より高い電圧を印加する。例えば、N型の半導体層11に0V、ポリシリコン抵抗層16に12Vを印加する。この場合、N型の半導体層11に負電圧を印加し、ポリシリコン抵抗層16に正電圧を印加しても良い。
【0016】
すると、N型の半導体層11からフローティングポリシリコン層14に、第2の絶縁膜13を通してファウラー・ノルドハイム・トンネル電流以下、FNトンネル電流というが流れ、フローティングポリシリコン層14に電子が注入される。FNトンネル電流を効率的に流すために、第2の絶縁膜13の膜厚は約9nmであることが好ましい。
【0017】
フローティングポリシリコン層14に電子が注入されると、ポリシリコン抵抗層16の第2の絶縁膜13に近い部分に、ポリシリコン抵抗層16中の正孔が、フローティングポリシリコン層14中の電子によって誘引されて蓄積されることにより、ポリシリコン抵抗層16の他の部分より正孔の濃度が高い正孔蓄積層16Aが形成される。
【0018】
この場合、フローティングポリシリコン層14は電気的に浮遊状態になっているので、フローティングポリシリコン層14の中に注入された電子は、その中に保持されることになる。したがって、フローティングポリシリコン層14の中に注入された電子が保持されている限り、正孔蓄積層16Aも消滅することなく維持される。
【0019】
P型のポリシリコン抵抗層16に正孔蓄積層16Aが形成されると、正孔蓄積層16Aが形成された部分の抵抗値が低下し、ポリシリコン抵抗層16の抵抗値は全体としても低下することになる。即ち、ポリシリコン抵抗層16の抵抗値を調整することができるが、この時の抵抗値の変化の大きさは、電圧印加手段50による印加電圧とその印加時間によって微調整することができる。この場合、定性的には印加電圧が大きいほど、印加時間が長いほど、正孔蓄積層16Aの正孔濃度は高くなるので、正孔濃度が飽和しない限り、ポリシリコン抵抗層16の抵抗値は大きく低下することになる。
【0020】
そのため、本実施形態の半導体装置によれば、従来例の抵抗トリミング回路と比べて、格段にポリシリコン抵抗層16の抵抗値を精度良く微調整することができる。また、従来例の抵抗トリミング回路のようにトリミング素子を溶断する必要がないため、半導体装置に損傷を与えることがないという利点を有している。
【0021】
また、ポリシリコン抵抗層16は、抵抗として用いられる際に高電圧が印加されると、その電圧依存性によって、その抵抗値が上昇する場合がある。この場合においても、本実施形態の半導体装置によれば、ポリシリコン抵抗層16の抵抗値の変動をキャンセルすることができる。
【0022】
ポリシリコン抵抗層16の抵抗値の調整は、電圧印加手段50による電圧印加を複数回繰り返すことにより行われてもよい。この場合、電圧印加手段50によるにより電圧印加を行う毎に、端子T2,T2に接続された抵抗測定器を用いてポリシリコン抵抗層16の抵抗値を測定し、その測定された抵抗値が目標値となるまで電圧印加を繰り返す。
【0023】
次に、電子引き抜きモードについて説明する。電子引き抜きモードは、電子注入を過度に行った結果、ポリシリコン抵抗層16の抵抗値が目標値より低下した場合に、その抵抗値を目標値に近づけるために行われる。この場合、電子注入モードとは逆に、フローティングポリシリコン層16中の電子を半導体層11に引き抜くことで、フローティングポリシリコン層16中の電子濃度を下げ、正孔蓄積層16Aの正孔濃度を下げるものである。
【0024】
この場合、電圧印加手段50により、N型の半導体層11にポリシリコン抵抗層16より高い電圧を印加する。すると、フローティングポリシリコン層14から半導体層11に、第2の絶縁膜13を通してFNトンネル電流が流れ、フローティングポリシリコン層14中の電子がN型の半導体層11に引き抜かれる。
【0025】
フローティングポリシリコン層14から電子が引き抜かれると、電子注入モードとは逆に、ポリシリコン抵抗層16の正孔蓄積層16A中の正孔濃度が低下するので、ポリシリコン抵抗層16の抵抗値は増加する。この場合、ポリシリコン抵抗層16の抵抗値の調整を効率的に行うために、電子注入モードと電子引き抜きモードを組み合わせて行っても良い。
【0026】
なお、本実施形態において、ポリシリコン抵抗層16は、ポリシリコンにN型の不純物が添加されてなる抵抗層として形成されてもよい。この場合、フローティングポリシリコン層14に電子を注入した時、ポリシリコン抵抗層16の中には、正孔蓄積層16Aの代わりに、空乏層又はP型の反転層が形成されることにより、ポリシリコン抵抗層16の抵抗値を変化させることができる。
【0027】
上述した電子注入と電子引き抜きを効率的に行うためには、電圧印加手段50による電圧印加の時に、第2の絶縁膜13に印加される電圧V1を第3の絶縁膜15に印加される電圧V2よりも大きくして、FNトンネル電流を流しやすくすることが好ましい。そのために、N型の半導体層11、第2の絶縁膜13、第1の絶縁膜12及びフローティングポリシリコン層14で形成され、容量値C1を有する第1の容量61と、フローティングポリシリコン層14、第3の絶縁膜15及びポリシリコン抵抗層16で形成され、容量値C2を有する第2の容量62において、C2>C1という関係を満たすことが必要である。(図3を参照)
【0028】
なぜならば、第1の容量61の一対の容量端子の間に印加される電圧をV1とし、第2の容量62の一対の容量端子の間に印加される電圧をV2とすると、C1・V1=C2・V2であるから、V1>V2とするためには、不等式C2>C1が成り立つことが必要だからである。
【0029】
この場合、第1の容量61の一対の容量端子は、N型の半導体層11とフローティングポリシリコン層14である。N型の半導体層11とフローティングポリシリコン層14で挟まれた第2の絶縁膜13及び第1の絶縁膜12が、第1の容量絶縁膜になる。第2の容量62の一対の容量端子は、フローティングポリシリコン層14とポリシリコン抵抗層16である。フローティングポリシリコン層14とポリシリコン抵抗層16で挟まれた第3の絶縁膜15が、第2の容量絶縁膜になる。
【0030】
ところで、C1とC2は近似的に以下の数式で表わすことができる。
C1=εS1/t1 ・・・(1)
C2=εS2/t2 ・・・(2)
【0031】
ここで、S1は第2の絶縁膜13を介してN型の半導体層11とフローティングポリシリコン層14が重畳する面積であり、S2は第3の絶縁膜15を介してフローティングポリシリコン層14とポリシリコン抵抗層16が重畳する面積である。t1は第2の絶縁膜13の膜厚であり、t2は第3の絶縁膜15の膜厚であり、εは第2の絶縁膜13及び第3の絶縁膜15の誘電率である。
【0032】
ただし、第1の絶縁膜12の膜厚は、t1、t2に比べて十分大きいとして無視している。また、第1の絶縁膜12の膜厚を考慮に入れた場合でも、不等式C2>C1が成り立つ上で、第1の絶縁膜12の膜厚は、t1、t2に比べて大きいことが好ましい。例えば、t1=9nm、t2=180nm、第1の絶縁膜12の膜厚は200nmである。
【0033】
不等式C2>C1に、数式(1)、(2)を代入すると、
S2/t2>S1/t1 ・・・・(3)
という不等式が導かれる。
【0034】
したがって、S2>S1、t2<t1、であることが、不等式(3)が満たされる上で好ましいことになる。そこで、S2>S1という関係について検討すると、ポリシリコン抵抗層16と第3の絶縁膜15はS2をできるだけ大きくするために、フローティングポリシリコン層14の上面の全面を被覆して形成されることが好ましいことになる。
【0035】
また、t2<t1という関係について検討すると、実際の半導体製造プロセスにおいては、この関係を満たすことは難しい。例えば同じ条件の熱酸化により第2の絶縁膜13と第3の絶縁膜15を形成する場合、フローティングポリシリコン層14上の第3の絶縁膜15の成長速度は、単結晶の半導体基板10上の第2の絶縁膜13の成長速度より大きいからである。そこで、この点を考慮して、t1≦t2という条件に設定する場合には、不等式(3)が満たされるように、S1、S2を設定することが好ましい。
【0036】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態による半導体装置について、図面を参照して説明する。図4(A)は、この半導体装置の断面図であり、図4(B)は、その平面図である。図4(A)は、図4(B)におけるB−B線に沿った断面図になっている。
【0037】
P型の半導体基板10上にN型の半導体層11が形成され、半導体層11の表面に、例えば0.4μmの膜厚を有したP−型の抵抗層20が形成されている。この抵抗層20の表面からN型の半導体層11の中に到達し、半導体基板10にまで到達しない深さ、例えば1μmの深さを有したトレンチ21が形成されている。つまり、トレンチ21の底部はN型の半導体層11に接している。
【0038】
トレンチ21の底部及び側壁は絶縁膜22によって覆われている。そして、トレンチ21の側壁上に、絶縁膜22を介して抵抗層20と対向するようにフローティングポリシリコン層23が形成されている。フローティングポリシリコン層23には、その両端部に形成された端子T3,T3を介して電圧印加手段60が接続されている。これらの端子T3,T3は、抵抗層20の端子としても用いられる。
【0039】
図4(B)に示すように、抵抗層20は、2つのトレンチ21,21に挟まれた領域に、ストライプ状のパターンで形成される。抵抗層20のパターンは、ストライプ状ではなく、ジグザグ状等の他のパターンでもよい。
【0040】
以下に、抵抗層20の抵抗値を調整する方法について説明する。この場合、半導体基板10は接地されているとする。電圧印加手段60により、端子T3を介して抵抗層20に負電圧を印加する。すると、半導体層11から絶縁膜22を通ってフローティングポリシリコン層23にFNトンネル電流が流れ、フローティングポリシリコン層23に電子が注入される。FNトンネル電流を効率的に流すために、絶縁膜22の膜厚は、例えば9nmであることが好ましい。
【0041】
そして、フローティングポリシリコン層23中に電子が注入されると、第1の実施形態と同様に、抵抗層20の絶縁膜22に近い部分には、抵抗層20中の正孔がフローティングポリシリコン層23中の電子によって誘引されて蓄積されることにより、正孔濃度の高い正孔蓄積層20Aが形成される。この場合、フローティングポリシリコン層23は電気的に浮遊状態になっているので、フローティングポリシリコン層23の中に注入された電子は、その中に保持されることになる。したがって、フローティングポリシリコン層23の中に注入された電子が保持されている限り、正孔蓄積層20Aも消滅することなく維持される。
【0042】
抵抗層20の中に正孔蓄積層20Aが形成されると、正孔蓄積層20Aが形成された部分の抵抗値が低下し、抵抗層20Aの抵抗値は全体としても低下することになる。即ち、抵抗層20Aの抵抗値を調整することができる。この時の抵抗値の変化の大きさは、電圧印加手段60による印加電圧とその印加時間によって微調整することができる。この場合、定性的には印加電圧が大きいほど、印加時間が長いほど、正孔蓄積層20Aの正孔濃度は高くなるので、正孔濃度が飽和しない限り、ポリシリコン抵抗層20の抵抗値は大きく低下することになる。
【0043】
図5は、本発明者の測定結果に基づく、抵抗層20のシート抵抗値Rsと印加電圧(負電圧Vh)との関係を示す図である。横軸は単位時間印加される負電圧Vh[V]を示し、その縦軸は抵抗層20のシート抵抗値Rsの変動比(%)を示している。このように、本実施形態によれば、抵抗層20の抵抗値を精度良く微調整することができる。
【0044】
なお、第1の実施形態と同様に、上述の電子注入とは逆に、フローティングポリシリコン層23中の電子を半導体層11に引き抜くことで、フローティングポリシリコン層23中の電子濃度を下げ、正孔蓄積層20Aの正孔濃度を下げることができる。これにより、抵抗層20の抵抗値が増加するように調整することができる。この場合、電圧印加手段60により、端子T3を介して抵抗層20に正電圧を印加する。
【0045】
また、本実施形態は、第1の実施形態と同様に、従来例の抵抗トリミング回路のようにトリミング素子を溶断する必要がないため、半導体装置に損傷を与えることがないという利点を有している。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で変更が可能なことは言うまでもない。例えば、第1の実施形態において、半導体層11及びコンタクト層21はN型であるとしたが、本発明は、これらがP型である場合についても適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
10 半導体基板
11 半導体層 12 第1の絶縁膜
13 第2の絶縁膜 14 フローティングポリシリコン層
15 第3の絶縁膜 16 ポリシリコン抵抗層
16A,20A 正孔蓄積層 20 抵抗層
21 トレンチ 22 絶縁膜
23 フローティングポリシリコン層 50,60 電圧印加手段
T1,T2,T3 端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の表面に形成された第2導電型の半導体層と、
前記半導体基板の表面に形成された第1の絶縁膜と、
前記半導体層の表面に形成され、前記第1の絶縁膜より薄い第2の絶縁膜と、
前記第1及び前記第2の絶縁膜上に形成され、電気的にフローティング状態のフローティング半導体層と、
前記フローティング半導体層を覆う第3の絶縁膜と、
前記第3の絶縁膜によって覆われた前記フローティング半導体層上に形成された半導体抵抗層と、を備え、
前記半導体層と前記半導体抵抗層との間に電圧を印加することにより、前記第2の絶縁膜を通して前記フローティング半導体層の中に電子を注入し、前記半導体抵抗層の中に正孔が蓄積されてなる正孔蓄積層を形成するように構成されたことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体層、第1の絶縁膜、第2の絶縁膜及び前記フローティング半導体層で形成された第1の容量の容量値をC1とし、前記フローティング半導体層、第3の絶縁膜15及び半導体抵抗層で形成された第2の容量の容量値をC2とすると、
C2>C1という関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記フローティング半導体層が前記第2の絶縁膜を介して前記半導体層と重畳する第1の領域の面積は、前記半導体抵抗層が前記第3の絶縁膜を介して前記フローティング半導体層と重畳する第2の領域の面積よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記フローティング半導体層の上面の全体は、前記半導体抵抗層及び前記第3の絶縁膜によって被覆されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の半導体装置。
【請求項5】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板の表面に形成された第2の導電型の半導体層と、
前記半導体層の表面に形成された第1導電型の半導体抵抗層と、
前記半導体抵抗層の表面から前記半導体層の中に到達するように形成されたトレンチと、
前記トレンチの底部及び側壁を覆う絶縁膜と、
前記トレンチの側壁上に前記絶縁膜を介して前記半導体抵抗層と対向するように形成されたフローティング半導体層と、を備え、
前記半導体層と前記半導体抵抗層との間に電圧を印加することにより、前記絶縁膜を通して前記フローティング半導体層の中に電子を注入し、前記半導体抵抗層の中に正孔が蓄積されてなる正孔蓄積層を形成するように構成されたことを特徴とする半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−134404(P2012−134404A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286844(P2010−286844)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(311003743)オンセミコンダクター・トレーディング・リミテッド (166)
【Fターム(参考)】