説明

半導体装置

【課題】電極パッド直下の領域を有効領域とする半導体装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の半導体装置は、半導体層上に設けられた、シリサイド膜からなるエミッタ電極7と、エミッタ電極7上に形成された絶縁膜10と、絶縁膜10上に形成されたAlからなる電極パッド8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、JFET,SIT,MOSFET又はIGBT等のスイッチング半導体装置における電極形成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源や他の電気機器に用いられるスイッチング動作を行うスイッチング半導体装置には、JFET,SIT,MOSFET又はIGBT等が用いられる。こうしたスイッチング半導体装置において、セルを配置する有効面積は特性やコストを決める重要なパラメータであり、有効面積を大きくすることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−42817号公報
【特許文献2】特開2007−142138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、電極パッドの直下の領域は無効領域となっており(特許文献1参照)、特性向上やコスト低減を実施するためには、この電極パッド直下の無効領域を有効領域として活用する必要がある。
【0005】
また、パワーサイクル性や放熱性の向上を目的としたアセンブリ技術として、エミッタ電極のダイレクトリードボンディング(DLB、特許文献2参照)や圧接接合などが考えられるが、ゲート遅延低減を目的として、ゲート配線の引き回しによりエミッタ電極を分割する構造は、上記アセンブリ技術を適用する上で障害となっている。
【0006】
そこで、本発明は上述の問題点に鑑み、電極パッド直下の領域を有効領域とする半導体装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の半導体装置は、半導体層上に設けられた、シリサイド膜からなるエミッタ電極と、前記エミッタ電極上に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成されたAlからなる電極パッドとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半導体装置は、半導体層上に設けられた、シリサイド膜からなるエミッタ電極と、前記エミッタ電極上に形成された絶縁膜と、前記絶縁膜上に形成されたAlからなる電極パッドとを備えるので、電極パッド直下の領域を有効領域とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の前提技術となる半導体装置の構造図である。
【図2】実施の形態1の半導体装置を構成する各レイヤーを示す図である。
【図3】実施の形態1の半導体装置の断面図である。
【図4】実施の形態2の半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(前提技術)
図1は、本発明の前提技術に係る半導体装置であるIGBTチップの構成を示す図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A´断面図である。
【0011】
図1(a)において、IGBTチップの表面にはゲートパッド8とエミッタ電極4が形成されており、その周囲にはガードリング5aが形成されている。また、ゲート配線引き回し部12にはエミッタ電極4は形成されず、その結果エミッタ電極4はIGBTチップ上で6分割されている。
【0012】
図1(b)に示すIGBTチップでは、半導体層として、pコレクタ層1上にn+バッファ層2が形成され、n+バッファ層2上にはn−ドリフト層3が形成される。半導体層上には、絶縁膜10を挟んでゲートパッド8が形成される。ゲートパッド8の周囲はガードリング5aに囲まれており、ガードリング5aに沿ってゲート配線(図示せず)が引き回されている。
【0013】
ガードリング5aでゲートパッド8と隔てられた他方の側には、半導体層上にエミッタ電極4が形成され、その下方、半導体層の表面には、絶縁膜10を介してゲート電極11が形成されている。
【0014】
IGBTチップの外周にはガードリングが設けられている。ガードリングは、半導体層に設けられたp+型のガードリング5cと、IGBTチップの表面に設けられた半導体層又は絶縁膜からなるガードリング5aと、ガードリング5a中に設けられたAlからなるガードリング5bとで構成されている。
【0015】
図1(b)に示したように、前提技術に係るIGBTチップではゲートパッド8の直下にセルを配置することが出来ず、セルの有効面積がゲートパッド8の面積だけ小さくなってしまう。そこで、本発明のIGBTチップではゲートパッド8の直下にもセルを配置するための工夫を施した。
【0016】
(実施の形態1)
本実施の形態の半導体装置であるIGBTチップでは、低抵抗かつ強度のあるシリサイド膜(WSi2,TiSi2,CoSi2,NiSi2等)を用いてエミッタ電極を作成し、その上に絶縁膜を介して電極パッドの一例としてゲートパッドを形成する。そして、スルーホールにてゲートパッドとゲート配線とをコンタクトし、パッド直下の無効領域に有効セルを配置する。
【0017】
図2は、本実施の形態のIGBTチップを構成する各レイヤーを示す平面図である。図2(a)は下層レイヤー、図2(b)は下層レイヤーの上に形成する上層レイヤーの平面図であり、図2(c)は、下層レイヤーの上に上層レイヤーを形成した状態を示す平面図である。
【0018】
図2(a)では、IGBTチップの外周をガードリング5aが覆い、ガードリング5a内部の絶縁膜10上に、エミッタ電極を構成するシリサイド膜(サリサイド膜)7がライン上に複数形成されている。ゲートパッド8が設けられる領域では、シリサイド膜7を絶縁膜10で覆っている。図2(b)は、複数のシリサイド膜7上に共通に接続して形成されたエミッタパッドであるエミッタ共通電極4とゲートパッド8を示している。
【0019】
図3は、本実施の形態のIGBTチップの断面図である。図3(a)は図2(c)のB−B´断面図であってエミッタパッド4の直下領域の構成を示し、図3(b)は図2(c)のC−C´断面図であってゲートパッド8の直下領域の構成を示す。
【0020】
図3(a)に示すIGBTチップでは、半導体層として、pコレクタ層1上にn+バッファ層2が形成され、n+バッファ層2上にはn−ドリフト層3が形成される。これらの半導体層には、Siの他、SiC、GaN、ダイヤモンドなどのワイドバンドギャップ半導体も用いられる。n−ドリフト層3の表面にはポリシリコンからなるゲート電極11が形成され、p+分離層6によってゲート電極11が分割され、セルが分割されている。ゲート電極11上には、絶縁膜10を介してシリサイド膜でエミッタ電極7が形成され、複数のライン状に分割されたシリサイド膜よりなるエミッタ電極7の上にはAlからなるエミッタパッド(エミッタ共通電極)4が形成される。ガードリングの構成は図1で示した前提技術のIGBTチップと同様である。
【0021】
図3(b)は図2(c)のC−C´断面図であり、ゲートパッド8とその直下領域の断面図を示している。図3(b)において、半導体層の表面に、ポリシリコンからなるゲート電極11が複数形成され、ゲート電極11上には絶縁膜10を介して、シリサイドからなるエミッタ電極7が形成される。図示を省略しているが、ゲート電極11の側面にはエミッタ電極7に接するnエミッタ領域とpベース領域が設けられ、pベース領域がチャネル領域となってエミッタ電極7からpコレクタ層1までが導通する。そして、エミッタ電極7上には絶縁膜10を介してゲートパッド8が形成される。
【0022】
9はゲート配線上に形成されたシリサイド膜、あるいはゲート配線を示す。ゲート配線9はチップ外周のガードリング5a内側と、エミッタ電極7のラインの間(p+分離層6の上)に、エミッタ電極7と平行に形成され、これらのゲート配線9によってゲートパッド8とゲート電極11がコンタクトする。ゲート配線9を低抵抗なシリサイド膜を備えて形成することにより、ゲート遅延を抑制することが出来る。
【0023】
ガードリングの構成は図1で示した前提技術のIGBTチップと同様である。
【0024】
このように、電極パッド8の下にシリサイド膜を備えたエミッタ電極7を形成することによって、従来は無効領域であったパッド直下の領域にもセルを配置でき、有効面積が増加する。よって、特性向上やコスト低減が期待できる。
【0025】
また、エミッタ電極をエミッタパッド(エミッタ共通電極)4と分割されたシリサイド膜7の2層構造にすることによって、ゲート配線9をエミッタパッド4の下層に配置することが出来るので、エミッタパッド4をゲート配線9によって分割されることなく一体化することができる。そのため、ダイレクトリードボンディングや圧接接合が容易になり、アセンブリ不良を抑制できる。
【0026】
<変形例>
図4は、本実施の形態の変形例に係るIGBTチップの平面図である。本実施の形態のIGBTチップではゲートパッド8直下の領域を有効領域とするため、ゲートパッド8をチップ内に複数配置しても無効領域が増えない。そのため、図4に示すように、ゲートパッド8をチップ内に複数個配置することが可能になる。これにより、ゲート抵抗の調整が容易になり、ゲート発振対策が容易になる。また、ゲートパッドを複数個配置することによってゲート遅延が解消され、セルのON/OFFのバランスが良くなり、短絡耐量及びRBSOA耐量が向上する。
【0027】
なお、本実施の形態では、ゲートパッド8を用いて説明したが、ゲートパッド8の代わりにカレントセンスパッドや温度センスパッドであっても良い。このようなセンスパッドの下にシリサイドからなるエミッタ電極7を形成する場合は、センスパッドを任意の位置に配置することが出来るため、センスパッドによる測定精度が向上する。
【0028】
また、エミッタ電極7に用いるシリサイド膜には、Alより強度のあるものを用いる。これにより、ウェハテスト、チップテスト及びアセンブリ時にセルへのダメージを抑制することが出来る。
【0029】
<効果>
本発明の半導体装置は、半導体層上に設けられた、シリサイド膜を備えて構成されるエミッタ電極7と、エミッタ電極7のシリサイド膜上に形成された絶縁膜10と、絶縁膜10上に形成されたAlからなる電極パッド8と、を備えるので、電極パッド8の直下領域を有効領域とすることが出来る。
【0030】
また、電極パッド8は、ゲート電極、カレントセンス電極、温度センス電極のいずれかとして用いられるので、センス電極として用いる場合は、センス電極の直下領域は無効領域とならないために、チップ内の所望の位置に取り付けることができ、そのためセンス電極の測定精度を向上することが出来る。
【0031】
あるいは、電極パッド8はゲートパッドとして用いられ、かつ複数備えられるので、ゲート抵抗の調整が容易になり、ゲート発振対策が容易になる。また、ゲートパッド8を複数個配置することによってゲート遅延が解消され、セルのON/OFFのバランスが良くなり、短絡耐量及びRBSOA耐量が向上する。
【0032】
また、シリサイド膜は、Alよりも強度の高いシリサイド膜からなるので、ウェハテスト、チップテスト及びアセンブリ時にセルへのダメージを抑制することが出来る。
【0033】
さらに、シリサイド膜はサリサイド膜で形成されるので、このような構成によっても、電極パッド8の直下領域を有効領域とすることが出来る。
【0034】
また、エミッタ電極は、分割された複数のシリサイド膜7と、複数のシリサイド膜7上に共通に接続して形成されたエミッタ共通電極4とを備える。このように、エミッタ電極を2層構造にすることによって、ゲート配線9をエミッタパッド4の下層に配置することが出来るので、エミッタパッド4をゲート配線9によって分割されることなく一体化することができる。そのため、ダイレクトリードボンディングや圧接接合が容易になり、アセンブリ不良を抑制できる。
【0035】
また、ゲートパッド8とゲート電極11を電気的に接続するゲート配線9をシリサイド膜で覆うことにより、ゲート遅延を抑制することが出来る。
【0036】
また、半導体層は、Si,SiC,GaNのいずれかであるので、このような構成によっても、電極パッド8の直下領域を有効領域とすることが出来る。
【符号の説明】
【0037】
1 pコレクタ層、2 n+バッファ層、3 n−ドリフト層、4 エミッタパッド、5a、5b、5c ガードリング、6 p+分離層、7 サリサイド膜(エミッタ電極)、8 ゲートパッド、9 サリサイド膜(ゲート電極)、10 絶縁膜、11 ゲート電極、12 ゲート配線引き回し部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体層上に設けられた、シリサイド膜を備えて構成されるエミッタ電極と、
前記エミッタ電極の前記シリサイド膜上に形成された絶縁膜と、
前記絶縁膜上に形成されたAlからなる電極パッドと、を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記電極パッドは、ゲートパッド、カレントセンス電極パッド、温度センス電極パッドのいずれかとして用いられる、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記電極パッドは、ゲートパッドとして用いられ、かつ複数備えられる、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記シリサイド膜は、Alよりも強度の高いシリサイド膜からなる、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記シリサイド膜はサリサイド膜で形成される、請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記エミッタ電極は、
分割された複数の前記シリサイド膜と、
前記複数のシリサイド膜上に共通に接続して形成されたエミッタ共通電極とを備える、請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体層に形成された複数のゲート電極をさらに備え、
前記電極パッドは、ゲートパッドとして用いられ、
前記ゲートパッドと前記複数のゲート電極を電気的に接続するゲート配線をさらに備え、
前記ゲート配線はシリサイド膜を備えて形成されている、請求項2〜6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記半導体層は、Si,SiC,GaNのいずれかである、請求項1〜7のいずれかに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−94669(P2012−94669A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240369(P2010−240369)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】