説明

半導体装置

【課題】有機化合物を含む層を有する素子が設けられたフレキシブルな記憶装置及び半導
体装置を歩留まり高く作製する。また、信頼性の高いフレキシブルな記憶装置及び半導体
装置を歩留まり高く作製する。
【解決手段】剥離層を有する基板上に素子層及び素子層を封止する絶縁層を有する積層体
を形成し、剥離層から積層体を剥離してフレキシブルな記憶装置及び半導体装置を作製す
る方法であって、素子層において第1の電極層及び第2の電極層からなる一対の電極間に
有機化合物を含む層を有する記憶素子を含み、少なくとも一方の電極層はスズを含む合金
層で形成する。また、第1の電極層及び第2の電極層からなる一対の電極間に有機化合物
を含む層を有する記憶素子を含み、少なくとも一方の電極層はスズを含む合金層で形成さ
れるフレキシブルな記憶装置及び半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を含む層を有する素子を備えた可撓性を有する記憶装置及び半導
体装置並びにその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は低コストで作製することが要求されており、近年、制御回路や記憶回路等
に有機化合物を含む層を用いたトランジスタ、記憶素子、太陽電池等の素子の開発が盛ん
に行われている(例えば特許文献1)。
【0003】
このような有機化合物を含む層を用いたトランジスタ、記憶素子、太陽電池等の素子を
有する半導体装置を利用したアプリケーションは様々なものが期待されており、小型、軽
量化を追及し、非可撓性な基板、代表的にはガラス基板やシリコンウエハーの代わりにフ
レキシブルなプラスチックフィルムを用いることが試みられている。
【0004】
プラスチックフィルムの耐熱性は低いため、プロセスの最高温度を低くせざるを得ない
。このため、プラスチックフィルムに半導体素子を形成して半導体装置を作製する方法と
して、メタルマスクを用いた蒸着法やスパッタリング法が用いられている。
【0005】
また、プラスチックフィルムは耐熱性が低いため、結果的にガラス基板上に形成する時
ほど良好な電気特性のトランジスタを形成できないのが現状である。
【0006】
そこで、ガラス基板上にフォトリソグラフィー工程を用いて形成した微細な素子を基板
から剥離し、他の基材、例えばプラスチックフィルムなどに貼り付ける技術が提案されて
いる(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−148080号公報
【特許文献2】特開2003−174153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、メタルマスクを用いた蒸着法やスパッタリング法を用いて記憶装置また
は半導体装置を作製する場合、メタルマスクのアライメントの位置合わせ工程が必要であ
る。このため、アライメントの位置あわせの不具合から製品の歩留まりが低下するという
問題がある。
【0009】
また、メタルマスクを用いた蒸着法やスパッタリング法を用いて記憶装置または半導体
装置を作製する場合、アライメントのずれを考慮して素子設計を行う。このため、微細な
構造のトランジスタ、記憶素子、太陽電池等を作製することが困難であり、記憶装置また
は半導体装置の小型化、軽量化、高性能化が困難である。
【0010】
さらに、特許文献2に示されるような剥離工程を用いて、有機化合物を含む層を有する
素子を剥離する場合、具体的には図18に示すように基板1101上に剥離層1102を
形成し、剥離層1102上に下地膜として機能する絶縁層1103を形成し、下地膜とし
て機能する絶縁層1103上に第1の電極層1104を形成し、第1の電極層1104上
に有機化合物を含む層1105を形成し、有機化合物を含む層1105上に第2の電極層
1106を形成して、有機化合物を含む層1105を有する素子1151、及び素子11
51を有する層1157を剥離する場合、有機化合物を含む層1105と第2の電極層1
106の間で剥れるという問題がある。
【0011】
この結果、プラスチックフィルム上に有機化合物を含む層を有する素子が設けられた記
憶装置及び半導体装置を歩留まり高く作製することが困難である。
【0012】
また、有機化合物を含む層を有する記憶素子を有する記憶装置及び半導体装置は、使用
される環境により記憶素子にダメージを受けやすくなり、その結果、半導体装置の記憶機
能、具体的には書込み特性、読み出し特性、記憶保持特性等の信頼性の低下を招く恐れが
ある。
【0013】
上記問題を鑑み、本発明は、有機化合物を含む層を有する素子が設けられたフレキシブ
ルな記憶装置及び半導体装置を歩留まり高く作製することを課題とする。また、記憶装置
及び半導体装置において、フレキシブルであり、且つ記憶機能の信頼性の高い記憶装置及
び半導体装置及びその作製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一は、剥離層を有する基板上に素子層及び素子層を封止する絶縁層を有する積
層体を形成し、剥離層から積層体を剥離してフレキシブルな記憶装置及び半導体装置を作
製する方法であって、素子層において第1の電極層及び第2の電極層からなる一対の電極
間に有機化合物を含む層を有する記憶素子を含み、少なくとも一方の電極層はスズを含む
合金層で形成することを特徴とする。
【0015】
なお、剥離層から積層体を剥離した後、可撓性基板に貼り付けてフレキシブルな記憶装置
及び半導体装置を作製してもよい。
【0016】
また、本発明の一は、第1の電極層及び第2の電極層からなる一対の電極間に有機化合
物を含む層を有する記憶素子を含み、少なくとも一方の電極層はスズを含む合金層で形成
されるフレキシブルな記憶装置及び半導体装置であることを特徴とする。
【0017】
なお、可撓性基板上に上記記憶素子を含む素子層が設けられていてもよい。
【0018】
また、第1の電極層または第2の電極層は、スズを含む合金層で形成されることが好ま
しい。また、第1の電極層または第2の電極層は、1atoms%以上のスズを含む合金
であることが好ましい。さらには、1atoms%以上10atoms%以下、更には1
atoms%以上7atoms%以下、更には1atoms%以上6atoms%以下、
更には1atoms%以上5atoms%以下、更には1atoms%以上4atoms
%以下のスズを含む合金層であることが好ましい。
【0019】
本発明において、スズを含む合金層の代表例は、スズの結晶転移を防止する金属元素を
含む合金である。代表的には、スズ及び銀の合金、スズ及びビスマスの合金、スズ及びア
ンチモンの合金、スズ及び銅の合金、スズ及び金の合金、スズ及び亜鉛の合金、スズ及び
インジウムの合金等がある。
【0020】
また、素子層には、MOSトランジスタ、薄膜トランジスタ、有機半導体トランジスタ
等のトランジスタ、容量素子、抵抗素子、アンテナのいずれか一つ以上を含んでいてもよ
い。
【0021】
また、本発明の記憶装置及び半導体装置は情報を記憶する機能を有する。また、本発明
の記憶装置及び半導体装置は、無線信号により命令やデータの送受信を行うと共に、当該
無線信号の送受信による情報や命令による処理結果を記憶する機能を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明において、第1の電極層及び第2の電極層からなる一対の電極間に有機化合物を
含む層を有する記憶素子を有する記憶装置及び半導体装置において、少なくとも一方の電
極層はスズを含む合金層で形成される。スズは凝集エネルギーが比較的小さいため、スズ
を含む電極は有機化合物を含む層から剥れにくい。また、スズを含む合金層で少なくとも
一方の電極層を形成することにより、スズ結晶の結晶構造の変態による縮み、粗化を低減
することが可能である。また、スズを含む合金で少なくとも一方の電極層を形成すること
により、スズの結晶成長を阻害することができるため、膜厚分布変化を抑制することがで
きる。このため、記憶素子の記憶保持特性の経年変化を抑制することが可能であり、記憶
機能の信頼性の高い記憶装置及び半導体装置を歩留まり高く作製することができる。また
、極めて薄く、フレキシブルで、且つ記憶能力の信頼性の高い記憶装置及び半導体装置を
歩留まり高く作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の記憶装置の作製工程を示した断面図である。
【図2】本発明の記憶装置の作製工程を示した断面図である。
【図3】本発明に適用可能な記憶素子の構造を示した断面図である。
【図4】本発明の記憶装置の構成を示した図である。
【図5】本発明の記憶装置の構成を示した断面図である。
【図6】本発明の記憶装置の構成を示した図である。
【図7】本発明の半導体装置の構成を示した断面図である。
【図8】本発明の半導体装置の構成を示した図である。
【図9】本発明の半導体装置の作製工程を示した断面図である。
【図10】本発明の半導体装置の作製工程を示した断面図である。
【図11】本発明の半導体装置の作製工程を示した断面図である。
【図12】本発明の半導体装置の作製工程を示した断面図である。
【図13】本発明の半導体装置の作製工程を示した断面図である。
【図14】本発明の半導体装置の作製工程を示した斜視図及び断面図である。
【図15】本発明の半導体装置の作製工程を示した斜視図及び断面図である。
【図16】本発明の半導体装置の応用例を示した図である。
【図17】本発明の半導体装置の応用例を示した図である。
【図18】従来の半導体装置を示した断面図である。
【図19】本発明の半導体装置の測定結果を示した図である。
【図20】本発明の半導体装置の測定結果を示した図である。
【図21】本発明の半導体装置の測定結果及び試料の断面を示した図である。
【図22】本発明の半導体装置の測定結果を示した図である。
【図23】本発明の半導体装置の測定結果を示した図である。
【図24】本発明の半導体装置の測定結果を示した図である。
【図25】本発明の記憶素子の断面を観察した観察像である。
【図26】本発明の半導体装置の作製工程を示した断面図である。
【図27】本発明の半導体装置の作製工程を示した断面図である。
【図28】本発明の半導体装置の作製工程を示した断面図である。
【図29】本発明の半導体装置の作製工程を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。但し、本発明は以下の説明に限定
されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更
し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下に示す実施の形
態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成に
おいて、同じものを指す符号は異なる図面間で共通して用いる。
【0025】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の記憶装置の主要な構成及びその作製方法について示す。代
表的には、第1の電極層及び第2の電極層からなる一対の電極間に有機化合物を含む層を
有する記憶素子が設けられたメモリセルがマトリクス状に配列されたメモリセルアレイを
有する記憶装置の作製方法について、図1、2、及び4を用いて説明する。また、記憶素
子の構造について、図3を用いて説明する。
【0026】
図4(A)に示すように、記憶装置127はメモリセルアレイ132及びメモリセルア
レイを駆動する駆動回路を有する。メモリセルアレイ132には、メモリセル21がマト
リクス状に設けられている。メモリセル21は、記憶素子107を有する(図1(A)参
照。)。記憶素子107は、基板100上に、第1の方向に延びた第1の電極層103と
、第1の電極層103上に形成された有機化合物を含む層105と、第1の方向と交差す
る第2の方向に延びた第2の電極層106とを有する。また、第2の電極層106を覆う
ように、保護膜として機能する絶縁層を設けてもよい。
【0027】
以下に、第1の電極層及び第2の電極層からなる一対の電極間に有機化合物を含む層を
有する記憶素子、及び当該記憶素子を有する素子層を、歩留まり高く剥離する方法を示す

【0028】
図1(A)に示すように、基板100上に剥離層101を形成し、剥離層101上に下
地膜として機能する絶縁層102を形成する。次に、絶縁層102上に第1の電極層10
3を形成し、第1の電極層103及び下地膜として機能する絶縁層102上に、絶縁層(
または隔壁)104を形成する。なお、絶縁層(または隔壁)104は第1の電極層10
3を露出するように開口部が形成される。絶縁層(または隔壁)104及び第1の電極層
上に有機化合物を含む層105を形成する。次に、有機化合物を含む層105、絶縁層(
または隔壁)104、及び下地膜として機能する絶縁層102上に第2の電極層106を
形成する。
【0029】
第1の電極層103、有機化合物を含む層105、及び第2の電極層106により、記
憶素子107を構成する。また、ここでは、下地膜として機能する絶縁層102から第2
の電極層106までの積層物を素子層110という。
【0030】
基板100としては、ガラス基板、石英基板、金属基板やステンレス基板の一表面に絶
縁層を形成したもの、本工程の処理温度に耐えうる耐熱性があるプラスチック基板等を用
いる。上記に挙げた基板100には、大きさや形状に制約がないため、例えば、基板10
0として、1辺が1メートル以上であって、矩形状のものを用いれば、生産性を格段に向
上させることができる。この利点は、円形のシリコン基板を用いる場合と比較すると、大
きな優位点である。
【0031】
剥離層101は、スパッタリング法やプラズマCVD法、塗布法、印刷法等により、タ
ングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ニオブ(
Nb)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、亜鉛(Zn)、
ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イ
リジウム(Ir)、及び珪素(Si)の中から選択された元素、又は元素を主成分とする
合金、又は元素を主成分とする化合物からなる層を、単層又は複数の層を積層させて形成
する。珪素を剥離層として用いる場合には、珪素を含む層の結晶構造は、非晶質、微結晶
、多結晶のいずれの場合でもよい。ここでは、なお、塗布法は、溶液を被処理物上に吐出
させて成膜する方法であり、例えばスピンコーティング法や液滴吐出法を含む。また、液
滴吐出法とは微粒子を含む組成物の液滴を微細な孔から吐出して所定の形状のパターンを
形成する方法である。
【0032】
剥離層101が単層構造の場合、好ましくは、タングステン、モリブデン、又はタング
ステンとモリブデンの混合物を含む層を形成する。又は、タングステンの酸化物若しくは
酸化窒化物を含む層、モリブデンの酸化物若しくは酸化窒化物を含む層、又はタングステ
ンとモリブデンの混合物の酸化物若しくは酸化窒化物を含む層を形成する。なお、タング
ステンとモリブデンの混合物とは、例えば、タングステンとモリブデンの合金に相当する

【0033】
剥離層101が積層構造の場合、好ましくは、1層目として金属層を形成し、2層目と
して金属酸化物層、又は窒化酸化物層を形成する。代表的には、1層目として金属層タン
グステン、モリブデン、又はタングステンとモリブデンの混合物を含む層を形成し、2層
目として、タングステン、モリブデン、又はタングステンとモリブデンの混合物の酸化物
、又はタングステン、モリブデン、又はタングステンとモリブデンの混合物の窒化酸化物
を含む層を形成する。
【0034】
剥離層101として、1層目として金属層、2層目として金属酸化物層の積層構造を形
成する場合、金属層としてタングステンを含む層を形成し、その上層に酸化物で形成され
る絶縁層を形成することで、タングステンを含む層と絶縁層との界面に、金属酸化物層と
してタングステンの酸化物を含む層が形成されることを活用してもよい。さらには、金属
層の表面を、熱酸化処理、酸素プラズマ処理、オゾン水等の酸化力の強い溶液での処理等
を行って金属酸化物層を形成してもよい。
【0035】
さらには、剥離層101として、1層目として金属層、2層目として金属窒化物層、又は
金属酸化窒化物層を形成してもよい。代表的には、1層目としてタングステン、モリブデ
ン、又はタングステンとモリブデンの混合物を含む層を形成した後、2層目としてとして
、タングステン、モリブデン、又はタングステンとモリブデンの混合物の窒化物、タング
ステン、モリブデン、又はタングステンとモリブデンの混合物の酸化窒化物を含む層を形
成すればよい。
【0036】
タングステンの酸化物は、WOxで表される。xは2以上3以下の範囲内にあり、xが
2の場合(WO)、xが2.5の場合(W)、xが2.75の場合(W11
)、xが3の場合(WO)などがある。
【0037】
また、上記の工程によると、基板100に接するように剥離層101を形成しているが
、本発明はこの工程に制約されない。基板100に接するように下地となる絶縁層を形成
し、その絶縁層に接するように剥離層101を設けてもよい。
【0038】
下地膜として機能する絶縁層102は、スパッタリング法やプラズマCVD法、塗布法
、印刷法等により、無機化合物を用いて単層又は多層で形成する。無機化合物の代表例と
しては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等がある。なお、下地膜とし
て機能する絶縁層102に、窒化珪素、窒化酸化珪素、酸化窒化珪素等を用いることによ
り、外部から後に形成される素子層へ水分や、酸素等の気体が侵入することを防止するこ
とができる。
【0039】
さらには、下地膜として機能する絶縁層102を積層構造としても良い。例えば、無機
化合物を用いて積層してもよく、代表的には、酸化珪素、窒化酸化珪素、及び酸化窒化珪
素を積層して形成しても良い。
【0040】
第1の電極層103は、スパッタリング法やプラズマCVD法、塗布法、印刷法、電解
メッキ法、無電解メッキ法、蒸着法等を用い、導電性の高い金属、合金、化合物等からな
る単層または多層構造を用いて形成することができる。
【0041】
第1の電極層103としては、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す)、または珪
素を含有したインジウム錫酸化物、2〜20atomic%の酸化亜鉛を含む酸化インジ
ウム等が挙げられる。また、チタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(N
i)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバル
ト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化
チタン、窒化タングステン、窒化モリブデン)等を用いることも可能である。
【0042】
また、第1の電極層103としては、リチウム(Li)やセシウム(Cs)等のアルカ
リ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等
のアルカリ土類金属、アルミニウム(Al)およびこれらのいずれかを含む合金(マグネ
シウム−銀合金、アルミニウム−リチウム合金)、ユーロピウム(Eu)、イッテルビウ
ム(Yb)等の希土類金属およびこれらいずれかを含む合金等が挙げられる。
【0043】
また、第1の電極層103として、スズ合金で形成することができる。スズ合金の代表
例としては、スズ及び銀の合金、スズ及びビスマスの合金、スズ及びアンチモンの合金、
スズ及び銅の合金、スズ及び金の合金、スズ及び亜鉛の合金、スズ及びインジウムの合金
等がある。さらには、銀、ビスマス、アンチモン、銅、金、亜鉛、及びインジウムから選
ばれる1種類以上の元素及びスズとの合金を用いて第1の電極層103を形成してもよい
。なお、第1の電極層103は、1atoms%以上のスズを含む合金であることが好ま
しい。さらには、1atoms%以上10atoms%以下、更には1atoms%以上
7atoms%以下、更には1atoms%以上6atoms%以下、更には1atom
s%以上5atoms%以下、更には1atoms%以上4atoms%以下のスズを含
む合金層であることが好ましい。
【0044】
有機化合物を含む層105は、蒸着法、電子ビーム蒸着法、塗布法等を用いて形成する
ことができる。
【0045】
ここでは、50〜200nmのチタン層をスパッタリング法により成膜した後、フォト
リソグラフィー法により所望の形状にエッチングして第1の電極層103を形成する。次
に、蒸着法によりNPBで形成される有機化合物を含む層を形成する。
【0046】
第2の電極層106は、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、印刷法、塗布法等を用い
て形成することができる。第2の電極層106は、スズ合金で形成することができる。ス
ズ合金の代表例としては、スズ及び銀の合金、スズ及びビスマスの合金、スズ及びアンチ
モンの合金、スズ及び銅の合金、スズ及び金の合金、スズ及び亜鉛の合金、スズ及びイン
ジウムの合金等がある。さらには、銀、ビスマス、アンチモン、銅、金、亜鉛、及びイン
ジウムから選ばれる1種類以上の元素及びスズとの合金を用いて第2の電極層106を形
成してもよい。なお、第2の電極層は、1atoms%以上のスズを含む合金であること
が好ましい。さらには、1atoms%以上10atoms%以下、更には1atoms
%以上7atoms%以下、更には1atoms%以上6atoms%以下、更には1a
toms%以上5atoms%以下、更には1atoms%以上4atoms%以下のス
ズを含む合金層であることが好ましい。
【0047】
また、第2の電極層106を積層構造とすることもできる。代表的には、第1の層とし
てスズ合金層を形成した後、第2の層としてチタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)
、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(
Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、
マグネシウム(Mg)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン、窒化タングステ
ン、窒化モリブデン)等の金属層を形成してもよい。第2の層を形成することで、記憶素
子にデータを書き込むときに高電流の通電が生じた場合、第1の層であるスズ合金層が剥
れることを防止することができる。
【0048】
第1の電極層103または第2の電極層106としてスズを含む合金層で形成すること
により、スズ結晶の結晶構造の変態による縮み、粗化を低減することが可能である。また
、スズ単体で蒸着するとスズの結晶成長により、第1の電極層103または第2の電極層
において局所的に膜厚分布に変化が生じ、第1の電極層及び第2の電極層の間隔が離れる
領域が生じる。しかしながら、スズを含む合金層で第1の電極層103または第2の電極
層106を形成することで、第1の電極層103または第2の電極層106における局所
的な膜厚分布のムラの発生を抑制することができる。また、蒸着法によりスズ単体で形成
した第1の電極層103または第2の電極層106は膜質が悪くなってしまう。しかしな
がら、蒸着法によりスズを含む合金層で第1の電極層103または第2の電極層106を
形成することで、平坦な膜が得られる。このため、データ変動を回避することが可能であ
り、記憶機能の信頼性を高めることができる。
【0049】
ここでは、蒸着法によりスズ及び銀を同時に蒸着して、スズ及び銀合金で第2の電極層
106を形成する。
【0050】
ここで、記憶素子107のより具体的な構造について図3を用いて以下に示す。
【0051】
図3(A)に示すように、第1の電極層103及び第2の電極層106に印加された電圧
により、結晶状態や導電性、形状が変化するような有機化合物を含む層105を形成する
ことで、記憶素子107が形成される。第1の電極層103及び第2の電極層106に印
加された電圧により、有機化合物を含む層105の結晶状態や導電性、形状が変化するこ
とで、記憶素子の電気抵抗が変化する。当該変化を用いて、0または1のデータを記録す
ることができる。
【0052】
ここでは、有機化合物を含む層105は有機化合物層300で形成される。なお、有機
化合物層300は、単層の有機化合物層または複数の有機化合物層で形成することができ
る。
【0053】
有機化合物を含む層105の厚さは、第1の電極層103及び第2の電極層106への
電圧印加により記憶素子の電気抵抗が変化する厚さが好ましい。有機化合物を含む層10
5の代表的な膜厚は、1nmから100nm、好ましくは10nmから60nm、更に好
ましくは5〜30nmである。
【0054】
有機化合物層300は、正孔輸送性を有する有機化合物又は電子輸送性を有する有機化合
物を用いて形成することができる。
【0055】
正孔輸送性の有機化合物としては、例えば、フタロシアニン(略称:HPc)、銅フタ
ロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)の他、4,
4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDA
TA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ
]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、1,3,5−トリス[N,N−ジ(m−
トリル)アミノ]ベンゼン(略称:m−MTDAB)、N,N’−ジフェニル−N,N’
−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(略称:T
PD)、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略
称:NPB)、4,4’−ビス{N−[4−ジ(m−トリル)アミノ]フェニル−N−フ
ェニルアミノ}ビフェニル(略称:DNTPD)、4,4’−ビス[N−(4−ビフェニ
リル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BBPB)、4,4’,4’’−トリ
(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)などが挙げられるが、これ
らに限定されることはない。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔
移動度を有する物質である。
【0056】
電子輸送性を有する有機化合物としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(
略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Al
mq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:Be
Bq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニ
ウム(略称:BAlq)等キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等か
らなる材料を用いることができる。また、この他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル
)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシ
フェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、
チアゾール系配位子を有する金属錯体などの材料も用いることができる。さらに、金属錯
体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,
3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチ
ルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7
)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)
−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)
−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール
(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロ
イン(略称:BCP)等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm
/Vs以上の電子移動度を有する物質である。
【0057】
なお、上記範囲外の移動度を有する物質であっても良く、例えば2,3−ビス(4−ジフ
ェニルアミノフェニル)キノキサリン(略称:TPAQn)、9−[4−(N−カルバゾ
リル)]フェニル−10−フェニルアントラセン(以下、CzPAと記す。)等を用いて
形成してもよい。
【0058】
また、有機化合物層300は上記に示す有機化合物を複数混合して形成してもよい。ま
た、上記に示す有機化合物を積層して形成してもよい。
【0059】
また、有機化合物層300は、正孔輸送性もしくは電子輸送性を有する有機化合物に絶
縁物が混合されていても良い。なお、絶縁物は、均一に分散されている必要はない。絶縁
物を混合することにより、有機化合物層300のモルフォロジーを向上することができる
。よって、部分的な膜の結晶化等を抑制することができるため、さらに記憶素子毎の挙動
のばらつきを抑制することができる。
【0060】
また、図3(B)に示すように、有機化合物を含む層105として、有機化合物層30
0及びバッファ層301で形成してもよい。バッファ層301は、熱的及び化学的に安定
な無機化合物または有機化合物で形成する。代表的には、無機絶縁物、無機半導体、また
は有機絶縁物で形成する。
【0061】
バッファ層301が無機絶縁物または有機絶縁物の場合は、トンネル効果により第1の
電極層または第2の電極層から有機化合物層へ、正孔又は電子の電荷を注入する層である
。バッファ層301は、所定の電圧において、トンネル効果により有機化合物層300へ
電荷を注入することが可能な厚さで形成する。バッファ層301の代表的な厚さは、0.
1nm以上4nm以下、好ましくは0.1nm以上2nm以下の絶縁層である。バッファ
層301の膜厚は、0.1nm以上4nm以下と極めて薄いため、バッファ層301にお
いてトンネル効果が生じ、有機化合物層300への電荷注入性が高まる。このため、バッ
ファ層301は、厚さが4nmより厚くなると、バッファ層301におけるトンネル効果
が生じにくくなるので、有機化合物層300への電荷注入が困難となり、記憶素子の書き
込み時の印加電圧が上昇する。
【0062】
バッファ層301を形成する無機絶縁物の代表例としては、酸化リチウム、酸化ナトリウ
ム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウ
ム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化セシウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニ
ウム、酸化フランシウム、酸化タンタル、酸化テクネチウム、酸化マンガン、酸化鉄、酸
化コバルト、酸化パラジウム、酸化銀、アルミナ、酸化ガリウム、酸化ビスマス等に代表
される絶縁性を有する酸化物が挙げられる。
【0063】
また、バッファ層301を形成する無機絶縁物の代表例としては、フッ化リチウム、フッ
化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、フッ化ベリリウム、フッ化マグネシウ
ム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化アルミニウム、
フッ化銀、フッ化マンガン等に代表される絶縁性を有するフッ化物、塩化リチウム、塩化
ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化ベリリウム、塩化カルシウム、塩化バリ
ウム、塩化アルミニウム、塩化スズ、塩化銀、塩化亜鉛、塩化チタン、塩化ストロンチウ
ム、塩化鉄、塩化パラジウム、塩化アンチモン、塩化ストロンチウム、塩化タリウム、塩
化銅、塩化マンガン、塩化ルテニウム等に代表される絶縁性を有する塩化物、臭化カルシ
ウム、臭化セシウム、臭化銀、臭化バリウム、臭化リチウム等に代表される絶縁性を有す
る臭化物、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化タリウム、ヨウ
化銀、ヨウ化チタン、ヨウ化カルシウム、ヨウ化珪素、ヨウ化セシウム等に代表される絶
縁性を有するヨウ化物が挙げられる。
【0064】
また、バッファ層301を形成する無機絶縁物の代表例としては、炭酸リチウム、炭酸カ
ルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸マンガン、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸鉄
、炭酸コバルト、炭酸ニッケル、炭酸銅、炭酸銀、炭酸亜鉛等に代表される絶縁性を有す
る炭酸塩、硫化リチウム、硫化カルシウム、硫化ナトリウム、硫化マグネシウム、硫化ス
トロンチウム、硫化バリウム、硫化チタン、硫化ジルコニウム、硫化マンガン、硫化鉄、
硫化コバルト、硫化ニッケル、硫化銅、硫化銀、硫化亜鉛、硫化アルミニウム、硫化イン
ジウム、硫化スズ、硫化アンチモン、硫化ビスマス等に代表される絶縁性を有する硫酸塩
、硝酸リチウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸マグネシウム、硝酸カルシウム、
硝酸ストロンチウム、硝酸バリウム、硝酸チタン、硝酸ジルコニウム、硝酸マンガン、硝
酸鉄、硝酸コバルト、硝酸ニッケル、硝酸銅、硝酸銀、硝酸亜鉛、硝酸アルミニウム、硝
酸インジウム、硝酸スズ等に代表される絶縁性を有する硝酸塩、窒化アルミニウム、窒化
珪素等に代表される絶縁性を有する窒化物が挙げられる。
【0065】
なお、バッファ層301を無機絶縁物で形成する場合、バッファ層301の膜厚は、0.
1nm以上4nm以下が好ましい。絶縁層の膜厚が4nm以上になると、書き込み時の印
加電圧が上昇する。
【0066】
バッファ層301を形成する有機絶縁物の代表例としては、ポリイミド、アクリル樹脂、
ポリアミド、ベンゾシクロブテン樹脂、ポリエステル、ノボラック樹脂、メラミン樹脂、
フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂
等に代表される有機樹脂が挙げられる。
【0067】
また、バッファ層301は無機絶縁物、有機絶縁物、半導体で形成された層を単層で設け
てもよいし、異なる無機絶縁物、有機絶縁物、半導体で形成された層を積層させて複数層
としても良い。例えば、無機絶縁物層及び半導体層の積層、無機絶縁物層及び有機絶縁物
層の積層、有機絶縁物層及び半導体層の積層等を適宜用いることができる。
【0068】
バッファ層301を形成する無機半導体の代表例としては、シリコン、ゲルマニウム、
酸化モリブデン、酸化スズ、酸化ビスマス、酸化バナジウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化
クロム、酸化銅、酸化マンガンシリコン、酸化ニッケル、酸化亜鉛、シリコンゲルマニウ
ム、ヒ化ガリウム、窒化ガリウム、酸化インジウム、リン化インジウム、窒化インジウム
、硫化カドミウム、テルル化カドミウム、チタン酸ストロンチウムなどの半導体を用いる
ことができる。なお、バッファ層301は必ずしも一種の半導体から構成される必要はな
く、複数の半導体材料が混合されていても良い。
【0069】
なお、バッファ層301を無機半導体で形成する場合、バッファ層301の膜厚は、0
.1nm以上であれば特に限定されず、例えば10nm以下の薄い膜厚でも良いし、それ
以上であっても良い。
【0070】
バッファ層301の形成方法としては、蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、
CVD法等を用いることができる。また、スピンコート法、ゾル−ゲル法、印刷法または
液滴吐出法等を用いることができる。
【0071】
また、図3(C)に示すように、有機化合物を含む層105として、有機化合物層30
0及び凹凸を有する連続的なバッファ層302を用いて形成してもよい。但し、バッファ
層の凸部における厚さは0.1nm以上10nm以下、好ましくは2nm以上8nm以下
、凹部における厚さは、0.1nm以上4nm未満、好ましくは1nm以上2nm未満で
あることが好ましい。
【0072】
また、図3(D)に示すように、有機化合物を含む層105として、有機化合物層30
0及び分散された非連続な絶縁層303を用いて形成してもよい。非連続な絶縁層303
は、島状、縞状、網目状等の形状を有してもよい。
【0073】
更には、バッファ層301〜303の代わりに、絶縁性粒子を設けてもよい。このとき
の絶縁性粒子は、粒径は0.1nm以上4nm以下、さらには1nm以上4nm以下であ
ることが好ましい。
【0074】
なお、図3(B)〜(D)では、第1の電極層103及び有機化合物層300の間にバッ
ファ層301〜303を設けたが、第2の電極層106及び有機化合物層300の間にバ
ッファ層301〜303を設けてもよい。
【0075】
さらには、図3(E)に示すように、第1の電極層103及び有機化合物層300の間
と、有機化合物層300及び第2の電極層106の間に、上記バッファ層301〜303
または絶縁性粒子を設けてもよい。
【0076】
第1の電極層103及び有機化合物層300の間、または有機化合物層300及び第2
の電極層106の間に、厚さが4nm以下、好ましくは2nm以下の無機絶縁物または有
機絶縁物で形成されるバッファ層を設けることにより、当該絶縁層にトンネル電流が流れ
るため、記憶素子の書き込み時の印加電圧及び電流値のばらつきを低減することが可能で
ある。また、第1の電極層103及び有機化合物層300の間、または有機化合物層30
0及び第2の電極層106の間に、厚さが4nm以下、好ましくは2nm以下の無機絶縁
物または有機絶縁物で形成されるバッファ層を設けることにより、トンネル効果による電
荷注入性が上昇し、有機化合物層300の膜厚を厚くすることが可能であり、初期状態で
のショートを防止することが可能である。この結果、記憶装置及び半導体装置の信頼性を
向上させることが可能である。
【0077】
また、上記構成とは異なる構成として、第1の電極層103及び有機化合物を含む層10
5の間、もしくは第2の電極層106と有機化合物を含む層105の間に、整流作用を有
する素子を設けてもよい(図3(F))。整流作用を有する素子とは、代表的には、ショ
ットキーダイオード、PN接合を有するダイオード、PIN接合を有するダイオード、あ
るいはゲート電極とドレイン電極を接続したトランジスタ等がある。もちろん、他の構成
のダイオードでも構わない。ここでは、第1の電極層103と有機化合物を含む層105
の間に、半導体層304、305を含むPN接合ダイオード306を設けた場合を示す。
半導体層304、305のうち、一方はN型半導体であり、他方はP型半導体である。こ
のように整流作用を有する素子を設けることにより、メモリセルの選択性を向上し、読み
出しや書き込みを向上させることができる。
【0078】
次に、図1(B)に示すように、第2の電極層106上に封止層111を形成する。次
に、封止層111表面に粘着部材112を貼りあわせる。
【0079】
封止層111は、塗布法を用いて組成物を塗布し、乾燥加熱して形成することが好まし
い。このような封止層111としては、後の剥離工程での保護層として設けるため、表面
の凹凸の少ない絶縁層であることが好ましい。このような絶縁層は、塗布法により形成す
ることができる。また、CVD法やスパッタリング法等により薄膜を形成した後、CMP
法により表面を研磨して封止層111を形成してもよい。また、CVD法やスパッタリン
グ法等により薄膜を形成した後レジスト層を形成し、レジスト層及び薄膜をエッチングし
て封止層111を形成してもよい。
【0080】
塗布法を用いて形成された封止層111は、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹
脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリア
セタール、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリアミド(ナイロン)、フラン樹脂、ジアリ
ルフタレート樹脂等の有機化合物、シリカガラスに代表されるシロキサンポリマー系材料
を出発材料として形成された珪素、酸素、水素からなる化合物のうちSi−O−Si結合
を含む無機シロキサンポリマー、又はアルキルシロキサンポリマー、アルキルシルセスキ
オキサンポリマー、水素化シルセスキオキサンポリマー、水素化アルキルシルセスキオキ
サンポリマーに代表される珪素に結合される水素がメチルやフェニルのような有機基によ
って置換された有機シロキサンポリマーで形成される。また、上記のCVD法やスパッタ
リング法等により形成される薄膜としては、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素、窒
化珪素等がある。
【0081】
ここでは、封止層111は、塗布法により組成物を塗布し、焼成してエポキシ樹脂を形
成する。
【0082】
粘着部材112としては、光可塑型粘着フィルム、熱可塑型粘着フィルム等を用いるこ
とができる。なお、粘着部材112として、フィルムの代わりに、粘着性を有するテープ
、シート、基板、ローラ等を適宜用いることができる。また、粘着部材112として、光
可塑型粘着フィルム、熱可塑型粘着フィルム等を用いた後、ローラで巻きとることができ
る。さらには、粘着部材112の代わりに、静電気力や吸着力により封止層111の表面
に付着する部材を着設してもよい。ここでは、粘着部材112として、光可塑型粘着フィ
ルムを用いる。
【0083】
なお、第1の絶縁層102、第1の電極層103、絶縁層104、有機化合物を含む層1
05、第2の電極層106、封止層111のいずれかを形成した後、剥離層101の金属
酸化物層を脆弱化させるための加熱処理を行ってもよい。または、隔壁として機能する絶
縁層104若しくは封止層111を形成する際の加熱と共に、剥離層101の金属酸化物
層を脆弱化させてもよい。
【0084】
次に、図1(C)に示すように、剥離層101及び下地膜として機能する絶縁層102
の間を剥離する。ここでは、剥離層101に形成される金属酸化物層において、剥離層を
有する基板100及び素子層110を物理的手段により剥離する。物理的手段とは、力学
的手段または機械的手段を指し、何らかの力学的エネルギー(機械的エネルギー)を変化
させる手段を指している。物理的手段は、代表的には機械的な力を加えること(例えば人
間の手や把持具による剥離や、ローラを回転させる分離処理)である。
【0085】
なお、本実施の形態においては、基板と素子層との間に、金属層及び金属酸化物層を有す
る剥離層を形成し、当該金属酸化物層を加熱処理により脆弱化して、当該素子層を物理的
に剥離する方法を用いたがこれに限られない。(1)基板と素子層との間に、剥離層とし
て水素を含む非晶質珪素層を設け、レーザ光の照射により非晶質珪素層に含まれる水素ガ
スを放出させて基板を剥離する方法、(2)基板と素子層との間に金属層及び金属酸化物
層を有する剥離層を形成し、当該金属酸化物層を結晶化により脆弱化し、剥離層を溶液に
よりエッチングで除去する方法、(3)素子層及び封止層111が形成された基板100
のみを機械的に削除する、又は溶液やNF、BrF、ClF等のフッ化ハロゲンガ
スにより基板100をエッチングで除去する方法、(4)基板と素子層との間に剥離層と
して金属層及び金属酸化物層を設け、当該金属酸化物層を結晶化により脆弱化し、金属層
の一部を溶液やNF、BrF、ClF等のフッ化ハロゲンガスによりエッチングで
除去した後、脆弱化された金属酸化物層において物理的に剥離する方法等を適宜用いるこ
とが出来る。
【0086】
ここでは、第2の電極層106は、スズを含む合金で形成されており、弾性を有するため
変形しやすい。このため、剥離層101及び下地膜として機能する絶縁層102の間を剥
離する際に、素子層110及び封止層111に力が加わり、素子層110及び封止層11
1が曲げられることがあっても、第2の電極層106で当該力を吸収するため、有機化合
物を含む層105及び第2の電極層106で剥れずに、剥離層101及び下地膜として機
能する絶縁層102の間で剥れる。
【0087】
次に、図1(D)に示すように、粘着部材112を封止層111から剥す。この結果、
薄型で信頼性の高い記憶装置113を作製することができる。
【0088】
また、図1(C)の後、図2(A)に示すように、下地膜として機能する絶縁層102
に可撓性基板120を接着材122を用いて貼りあわせてもよい。
【0089】
可撓性基板120としては、可撓性を有する基板を用いることが好ましく、薄くて軽い
ものが好ましい。代表的には、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエ
チレンナフタレート)、PES(ポリエーテルスルホン)、ポリプロピレン、ポリプロピ
レンサルファイド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイ
ド、ポリフェニレンオキサイド、ポリサルフォン、ポリフタールアミド等のプラスチック
基板、繊維質な材料からなる紙、セラミックシート等を用いることができる。当該基板を
用いる場合、封止層111と可撓性基板120との間に接着材122を設けて、封止層1
11及び可撓性基板120を貼りあわせる。
【0090】
また、可撓性基板120として、繊維質な材料からなる紙または基材フィルム(ポリエ
ステル、ポリアミド、無機蒸着フィルム等)と接着性有機樹脂フィルム(アクリル系有機
樹脂、エポキシ系有機樹脂等)との積層フィルムなどを用いることもできる。当該基板を
用いる場合、可撓性基板120及び絶縁層102を熱圧着し、接着性有機樹脂フィルムを
可塑化させた後、硬化させることで、積層フィルムに絶縁層102を固着させることがで
きる。この場合は、絶縁層102及び可撓性基板120の間に接着材122を別途設ける
必要は無い。
【0091】
この後、図2(B)に示すように、封止層111から粘着部材112を剥すことにより
、記憶装置128を形成することができる。
【0092】
この後、図2(C)に示すように、封止層111に接着材123を用いて可撓性基板1
25を貼り付けて、記憶装置126を形成することができる。
【0093】
図2(B)に示す記憶装置128のように素子層110または封止層111の一方の面
に可撓性基板を有することで、記憶装置の機械的強度を高めることが可能である。また、
図2(C)に示す記憶装置126のように素子層110及び封止層111の周囲を可撓性
基板で封止することにより、機械的強度及び外部環境に対する耐性を高めることが可能で
ある。
【0094】
以上の工程により、歩留まり高く記憶素子を有するフレキシブルな記憶装置を作製する
ことができる。
【0095】
次に、上記で示す記憶装置のデータの書き込み動作及び読み出し動作について図4を用
いて示す。
【0096】
図4(A)に示すように、メモリセル21は、ワード線Wy(1≦y≦n)に接続され
る第1の電極層と、ビット線Bx(1≦x≦m)に接続される第2の電極層と、有機化合
物を含む層とを有する。有機化合物を含む層は、第1の電極層と第2の電極層の間に設け
られる。
【0097】
メモリセルにデータの書き込みを行う際の動作について説明する。データの書き込みは、
電気的作用によりデータの書き込みを行う場合について説明する。なお、書き込みはメモ
リセルの電気特性を変化させることで行うが、メモリセルの初期状態(電気的作用を加え
ていない状態)をデータ「0」、電気特性を変化させた状態を「1」とする。
【0098】
メモリセル21にデータ「1」を書き込む場合、まず、デコーダ133、134およびセ
レクタ135によってメモリセル21を選択する。具体的には、デコーダ134によって
、メモリセル21に接続されるワード線W3に所定の電圧V2を印加する。また、デコー
ダ133とセレクタ135によって、メモリセル21に接続されるビット線B3を読み出
し/書き込み回路136に接続する。そして、読み出し/書き込み回路136からビット
線B3へ書き込み電圧V1を出力する。こうして、当該メモリセル21を構成する第1の
電極層と第2の電極層の間には電圧Vw=V1−V2を印加する。電位Vwを適切に選ぶ
ことで、当該導電層間に設けられた有機化合物を含む層の特性を物理的もしくは電気的に
変化させ、データ「1」の書き込みを行う。具体的には、読み出し動作電圧において、デ
ータ「1」の状態の第1の電極層と第2の電極層の間の電気抵抗が、データ「0」の状態
と比して、大幅に小さくなるように変化させるとよく、電圧Vwは5〜15V、あるいは
−5〜−15Vとすればよい。例えば、(V1、V2)=(0V、5〜15V)、あるい
は(3〜5V、−12〜−2V)などとすることができる。
【0099】
なお、非選択のワード線および非選択のビット線には、接続されるメモリセルにデータ「
1」が書き込まれないよう制御する。例えば、非選択のワード線および非選択のビット線
を浮遊状態とすればよい。メモリセル中のメモリ素子には、ダイオード特性など、選択性
を確保できる特性を有する必要がある。
【0100】
一方、メモリセル21にデータ「0」を書き込む場合は、メモリセル21には電気的作用
を加えなければよい。回路動作上は、例えば、「1」を書き込む場合と同様に、デコーダ
133、134およびセレクタ135によってメモリセル21を選択するが、読み出し/
書き込み回路136からビット線B3への出力電位を、選択されたワード線W3の電位あ
るいは非選択ワード線の電位と同程度とし、メモリセル21を構成する第1の電極層と第
2の電極層の間に、メモリセル21の電気特性を変化させない程度の電圧(例えば−5〜
5V)を印加すればよい。
【0101】
次に、メモリセルからデータの読み出しを行う際の動作について説明する(図4(B)、
(C)参照)。データの読み出しは、メモリセルの電気特性が、データ「0」を有するメ
モリセルとデータ「1」を有するメモリセルとで異なることを利用して行う。例えば、デ
ータ「0」を有するメモリセルを構成する第1の電極層と第2の電極層の間の実効的な電
気抵抗(以下、単にメモリセルの電気抵抗と呼ぶ)が、読み出し電圧においてR0、デー
タ「1」を有するメモリセルの電気抵抗を、読み出し電圧においてR1とし、電気抵抗の
差を利用して読み出す方法を説明する。なお、R1<<R0とする。読み出し/書き込み
回路は、読み出し部分の構成として、例えば、図4(B)に示す抵抗素子146と差動増
幅器147を用いた回路136を考えることができる。抵抗素子146は抵抗値Rrを有
し、R1<Rr<R0であるとする。抵抗素子146の代わりにトランジスタ148を用
いても良いし、差動増幅器の代わりにクロックドインバータ149を用いることも可能で
ある(図4(C))。クロックドインバータ149には、読み出しを行うときにHi、行
わないときにLowとなる信号又は反転信号が入力される。勿論、回路構成は図4(B)
及び(C)に限定されない。
【0102】
メモリセル21からデータの読み出しを行う場合、まず、デコーダ133、134および
セレクタ135によってメモリセル21を選択する。具体的には、デコーダ134によっ
て、メモリセル21に接続されるワード線W3に所定の電圧Vyを印加する。また、デコ
ーダ133とセレクタ135によって、メモリセル21に接続されるビット線B3を読み
出し/書き込み回路136の端子Pに接続する。その結果、端子Pの電位Vpは、抵抗素
子146(抵抗値Rr)とメモリセル21(抵抗値R0もしくはR1)による抵抗分割に
よって決定される値となる。従って、メモリセル21がデータ「0」を有する場合には、
Vp0=Vy+(V0−Vy)×R0/(R0+Rr)となる。また、メモリセル21が
データ「1」を有する場合には、Vp1=Vy+(V0−Vy)×R1/(R1+Rr)
となる。その結果、図4(B)では、VrefをVp0とVp1の間となるように選択す
ることで、図4(C)では、クロックドインバータの変化点をVp0とVp1の間となる
ように選択することで、出力電位Voutとして、データ「0」/「1」に応じて、Lo
/Hi(もしくはHi/Lo)が出力され、読み出しを行うことができる。
【0103】
例えば、差動増幅器をVdd=3Vで動作させ、Vy=0V、V0=3V、Vref=1
.5Vとする。仮に、R0/Rr=Rr/R1=9とすると、メモリセルのデータが「0
」の場合、Vp0=2.7VとなりVoutはHighが出力され、メモリセルのデータ
が「1」の場合、Vp1=0.3VとなりVoutはLowが出力される。こうして、メ
モリセルの読み出しを行うことができる。
【0104】
上記の方法によると、有機化合物を含む層105の電気抵抗は、抵抗値の相違と抵抗分割
を利用して、電圧値で読み取っている。勿論、読み出し方法は、この方法に限定されない
。例えば、電気抵抗の差を利用する以外に、電流値の差を利用して読み出しても構わない
。また、メモリセルの電気特性が、データ「0」と「1」とで、しきい値電圧が異なるダ
イオード特性を有する場合には、しきい値電圧の差を利用して読み出しても構わない。
【0105】
以上に示すように、本実施の形態により、記憶機能の信頼性の高いフレキシブルな記憶
装置を歩留まり高く作製することができる。
【0106】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で示した剥離方法を用いて形成した記憶装置の他の
形態について説明する。代表的には、メモリセルにスイッチング素子及び記憶素子を有す
るメモリセルアレイを有する記憶装置の主要な構成について、図5及び図6を用いて説明
する。図5は本実施の形態の記憶装置の断面図を示し、図6は本実施の形態の記憶装置の
構造を示す。
【0107】
図6(A)に示すように、本実施の形態の記憶装置221はメモリセルアレイ222及
びメモリセルアレイ222を駆動する駆動回路を有する。メモリセルアレイ222は、複
数のメモリセル220がマトリクス状に設けられている。また、図6(A)及び図5に示
すように、記憶装置221は、下地膜として機能する絶縁層150上に、駆動回路を構成
するトランジスタ、ここではデコーダ224を構成するトランジスタ152、スイッチン
グ素子として機能するトランジスタ151、及び当該トランジスタ151に接続された記
憶素子107が形成される。記憶素子107は、絶縁層205上に形成される第1の電極
層103、有機化合物を含む層105、及び第2の電極層106を有する。なお、有機化
合物を含む層105は、第1の電極層103、及び第1の電極層103の一部を覆う隔壁
として機能する絶縁層104上に形成される。また、トランジスタ151として、薄膜ト
ランジスタを用いている。また、第2の電極層106を覆って保護層として機能する絶縁
層を有してもよい。
【0108】
また、下地膜として機能する絶縁層150から第2の電極層106の積層体を覆うよう
に封止層111が形成される。ここでは、封止層111に覆われる積層体を素子層201
と示す。
【0109】
また、素子層201及び封止層111は可撓性基板120、125で封止されている。
なお、可撓性基板120は接着材122で封止層111に貼り付けられており、可撓性基
板125は接着材123で封止層111に貼り付けられている。
【0110】
基板上に形成された素子層201の剥離方法、並びに素子層及び封止層111への可撓
性基板の貼り付け方法に関しては、上記実施の形態を適宜適用することができる。
【0111】
トランジスタ151、152は、Siウエハーを用いたMOSトランジスタ、SOI基
板を用いたMOSトランジスタ、薄膜トランジスタ、有機半導体トランジスタ等を適宜用
いることができる。ここでは、トランジスタ151、152として薄膜トランジスタを用
いて示す。なお、ここでは、薄膜トランジスタとしてトップゲート型の薄膜トランジスタ
を示しているがこれに限定される物ではない。ボトムゲート型の薄膜トランジスタを適用
することが可能である。
【0112】
記憶素子107は、絶縁層205上に形成される。このように、絶縁層205を設けて記
憶素子107を形成することによって第1の電極層103を自由にレイアウトすることが
できる。つまり、トランジスタ151の上方に記憶素子107を形成することが可能とな
る。その結果、記憶装置をより高集積化することが可能となる。
【0113】
絶縁層205は、上記実施の形態で示した絶縁層104と同様の材料および形成方法を
適宜用いて形成することができる。
【0114】
素子層201及び封止層111に貼り付ける可撓性を有する基板としては、実施の形態
1の可撓性基板120で示した可撓性基板、熱可塑性樹脂を有するフィルム、繊維質な材
料からなる紙、セラミックシート等を用いることで、記憶装置の小型、薄型、軽量化を図
ることが可能である。
【0115】
次に、本実施の形態で示す記憶装置のデータの書き込み動作及び読み出し動作について
図6を用いて示す。
【0116】
メモリセル220は、ワード線Wy(1≦y≦n)と、ビット線Bx(1≦x≦m)と
、トランジスタ151と、記憶素子107とを有する。記憶素子107は、一対の導電層
の間に、有機化合物を含む層が挟まれた構造を有する。トランジスタ151のゲート電極
はワード線と接続され、ソース電極もしくはドレイン電極のいずれか一方はビット線と接
続され、残る一方は記憶素子が有する第1の電極層と接続される。記憶素子107の残る
第2の電極層は接続端子と接続される。また、接続端子は共通電極(電位Vcom)と接
続される。
【0117】
次に、メモリセルアレイ222にデータの書き込みを行うときの動作について説明する

【0118】
ここでは、3行3列目のメモリセル220に電気的作用によりデータを書き込む場合につ
いて説明する。なお、書き込みはメモリセルの電気特性を変化させることで行うが、メモ
リセルの初期状態(電気的作用を加えていない状態)をデータ「0」、電気特性を変化さ
せた状態を「1」とする。
【0119】
メモリセル220にデータ「1」を書き込む場合、まず、デコーダ223、224および
セレクタ225によってメモリセル220を選択する。具体的には、デコーダ224によ
って、メモリセル220に接続されるワード線W3に所定の電圧V22を印加する。また
、デコーダ223とセレクタ225によって、メモリセル220に接続されるビット線B
3を読み出し/書き込み回路226に接続する。そして、読み出し/書き込み回路226
からビット線B3へ書き込み電圧V21を出力する。
【0120】
こうして、メモリセルを構成するトランジスタ151をオン状態とし、記憶素子107に
、ビット線を電気的に接続し、おおむねVw=Vcom−V21の電圧を印加する。なお
、記憶素子107の第2の電極層は電位Vcomの共通電極に接続されている。電位Vw
を適切に選ぶことで、当該導電層間に設けられた有機化合物を含む層105を物理的もし
くは電気的変化させ、データ「1」の書き込みを行う。具体的には、読み出し動作時にお
いて、データ「1」の状態の第1の電極層と第2の電極層の間の電気抵抗が、データ「0
」の状態と比して、大幅に小さくなるように変化させるとよく、単に短絡(ショート)さ
せてもよい。なお、電位は、(V21、V22、Vcom)=(5〜15V、5〜15V
、0V)、あるいは(−12〜0V、−12〜0V、3〜5V)の範囲から適宜選べば良
い。電圧Vwは5〜15V、あるいは−5〜−15Vとすればよい。
【0121】
なお、非選択のワード線および非選択のビット線には、接続されるメモリセルにデータ「
1」が書き込まれないよう制御する。具体的には、非選択のワード線に接続されるメモリ
セルのトランジスタをオフ状態とする電位(例えば0V)を印加し、非選択のビット線は
浮遊状態とするか、Vcomと同程度の電位を印加するとよい。
【0122】
一方、メモリセル220にデータ「0」を書き込む場合は、メモリセル220には電気的
作用を加えなければよい。回路動作上は、例えば、「1」を書き込む場合と同様に、デコ
ーダ223、224およびセレクタ225によってメモリセル220を選択するが、読み
出し/書き込み回路226からビット線B3への出力電位をVcomと同程度とするか、
ビット線B3を浮遊状態とする。その結果、記憶素子107には、小さい電圧(例えば−
5〜5V)が印加されるか、電圧が印加されないため、電気特性が変化せず、データ「0
」書き込みが実現される。
【0123】
次に、電気的作用により、データの読み出しを行う際の動作について説明する。データの
読み出しは、記憶素子107の電気特性が、データ「0」を有するメモリセルとデータ「
1」を有するメモリセルとで異なることを利用して行う。例えば、データ「0」を有する
メモリセルを構成する記憶素子の電気抵抗が読み出し動作時においてR0、データ「1」
を有するメモリセルを構成する記憶素子の電気抵抗が読み出し動作時においてR1とし、
電気抵抗の差を利用して読み出す方法を説明する。なお、R1<<R0とする。読み出し
/書き込み回路は、読み出し部分の構成として、例えば、図6(B)に示す抵抗素子24
6と差動増幅器247を用いた回路226を考えることができる。抵抗素子246は抵抗
値Rrを有し、R1<Rr<R0であるとする。抵抗素子246の代わりに、トランジス
タ250を用いても良いし、差動増幅器の代わりにクロックドインバータ251を用いる
ことも可能である(図6(C))。勿論、回路構成は図6(B)及び(C)に限定されな
い。
【0124】
3列3行目メモリセル220からデータの読み出しを行う場合、まず、デコーダ223、
224およびセレクタ225によってメモリセル220を選択する。具体的には、デコー
ダ224によって、メモリセル220に接続されるワード線W3に所定の電圧V24を印
加し、トランジスタ151をオン状態にする。また、デコーダ223とセレクタ225に
よって、メモリセル220に接続されるビット線B3を読み出し/書き込み回路226の
端子Pに接続する。その結果、端子Pの電位Vpは、VcomとV0が抵抗素子246(
抵抗値Rr)と記憶素子107(抵抗値R0もしくはR1)による抵抗分割によって決定
される値となる。従って、メモリセル220がデータ「0」を有する場合には、Vp0=
Vcom+(V0−Vcom)×R0/(R0+Rr)となる。また、メモリセル220
がデータ「1」を有する場合には、Vp1=Vcom+(V0−Vcom)×R1/(R
1+Rr)となる。その結果、図6(B)では、VrefをVp0とVp1の間となるよ
うに選択することで、図6(C)では、クロックドインバータの変化点をVp0とVp1
の間となるように選択することで、出力電位Voutが、データ「0」/「1」に応じて
、Lo/Hi(もしくはHi/Lo)が出力され、読み出しを行うことができる。
【0125】
例えば、差動増幅器をVdd=3Vで動作させ、Vcom=0V、V0=3V、Vref
=1.5Vとする。仮に、R0/Rr=Rr/R1=9とし、トランジスタ151のオン
抵抗を無視できるとすると、メモリセルのデータが「0」の場合、Vp0=2.7Vとな
りVoutはHighが出力され、メモリセルのデータが「1」の場合、Vp1=0.3
VとなりVoutはLowが出力される。こうして、メモリセルの読み出しを行うことが
できる。
【0126】
上記の方法によると、記憶素子107の抵抗値の相違と抵抗分割を利用して、電圧値で読
み取っている。勿論、読み出し方法は、この方法に限定されない。例えば、電気抵抗の差
を利用する以外に、電流値の差を利用して読み出しても構わない。また、メモリセルの電
気特性が、データ「0」と「1」とで、しきい値電圧が異なるダイオード特性を有する場
合には、しきい値電圧の差を利用して読み出しても構わない。
【0127】
以上に示すように、本実施の形態により、記憶機能の信頼性の高いフレキシブルな記憶
装置を歩留まり高く作製することができる。
【0128】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で示した剥離方法を用いて形成した半導体装置の一
形態について以下に説明する。代表的には、無線信号により命令やデータの送受信を行う
ことのできる半導体装置の主要な構成について、図7及び図8を用いて説明する。図7は
本実施の形態の半導体装置の断面図を示し、図8は本実施の形態の半導体装置の構造を示
す。
【0129】
図8は、無線信号により命令やデータの送受信を行うことのできる半導体装置の一構成
例を示すブロック図である。このような半導体装置は、アンテナ312、高周波回路部3
13、電源回路部315、ロジック回路部317を要素として含んでいる。アンテナ31
2は、リーダライタとも呼ばれる通信装置と信号の送受信を行う。信号を送る搬送波の周
波帯は、長波帯の30〜135kHz、短波帯の6.78MHz、13.56MHz、2
7.125MHz、40.68MHz、5.0MHz、マイクロ波帯の2.45GHz、
5.8GHz、24.125GHz等が適用される。アンテナ312は通信周波数帯に応
じてコイル型やモノポール若しくはダイポール型の形態となる。
【0130】
アンテナ312が受信した搬送波は、検波容量部314を介して電源回路部315と、ロ
ジック回路部317に分流する。電源回路部315では整流回路部320によって半波整
流され、それが保持容量部322に充電される。定電圧回路部324は受信した搬送波の
電力に対してある一定以上の電力が供給されても、一定電圧を出力してこの半導体装置に
あるロジック回路部317等の動作に必要な電力を供給する。
【0131】
高周波回路部313における復調回路部318は、搬送波を復調してロジック回路部31
7の動作に必要なクロック信号を生成し、さらにそれを補正する機能を有するPLL回路
部328と、コード認識及び判定回路部326に信号を出力する。例えば、復調回路部3
18は、振幅変調(ASK)の受信信号から、振幅の変動を”0”又は”1”の受信デー
タとして検出する。復調回路部318は、例えばローパスフィルターを含んで構成されて
いる。また、変調回路部316は送信データを振幅変調(ASK)の送信信号として送信
する。
【0132】
コード認識及び判定回路部326は、命令コードを認識し判定する。コード認識及び判定
回路部326が認識及び判定する命令コードは、フレーム終了信号(EOF、end o
f frame)、フレーム開始信号(SOF、start of frame)、フラ
グ、コマンドコード、マスク長(mask length)、マスク値(mask va
lue)等である。また、コード認識及び判定回路部326は、送信エラーを識別する巡
回冗長検査(CRC、cyclic redundancy check)機能も含む。
コード認識及び判定回路部326からの結果は、メモリコントローラ部330に出力され
る。メモリコントローラ部330は、判定結果に基づいて、メモリ部332の読み出しを
制御する。メモリ部332から読み出されたデータは、符号化回路部334にて符号化さ
れ、変調回路部316によって変調を行い、応答信号が生成する。
【0133】
メモリ部332の構成としては、上記実施の形態1で示すような記憶素子を有するメモリ
セルや、上記実施の形態2で示すようなスイッチング素子に接続される記憶素子を有する
メモリセルを適宜用いることができる。また、上記実施の形態で示すようなメモリセルの
他に固定データのみを記憶するマスクROM(Read Only Memory)、S
RAM(Static Random Access Memory)などの任意読み出
し書き込み可能メモリ、電荷蓄積浮遊電極を有する不揮発性メモリなどを適用することが
できる。
【0134】
このように、図8で示す半導体装置は、リーダライタとも呼ばれる通信装置からの命令を
受信して、メモリ部332にデータを書き込み、若しくはメモリ部332からデータを読
み出す機能を有している。
【0135】
次に、本実施の形態の半導体装置の断面構造について、図7を用いて説明する。
【0136】
ここで、半導体装置の一部として、メモリコントローラ部330、メモリ部332、ア
ンテナ312、及び検波容量部314の断面図を示す(図7参照)。代表的には、下地膜
として機能する絶縁層321上に、メモリコントローラ部330を構成するトランジスタ
152、メモリ部332を構成するトランジスタ151及び当該トランジスタ151に接
続された記憶素子107、検波容量部314の容量素子331及びトランジスタ333、
アンテナ312を示す。なお、ここでは図示しないが、アンテナ312及びトランジスタ
333は電気的に接続している。
【0137】
記憶素子107は、絶縁層205上に形成される第1の電極層103、有機化合物を含
む層105、及び第2の電極層106を有する。第2の電極層106は、上記実施の形態
で示すようにスズ合金層で形成される。なお、有機化合物を含む層105は、第1の電極
層103、及び第1の電極層103の一部を覆う隔壁として機能する絶縁層104上に形
成される。また、スイッチング素子として機能するトランジスタ151は、薄膜トランジ
スタを用いて形成する。また、第2の電極層106を及びアンテナ312を覆って保護層
として機能する絶縁層を有してもよい。なお、下地膜として機能する絶縁層150からア
ンテナ312までの積層体を素子層341と示す。
【0138】
また、素子層341を覆うように封止層111が形成される。
【0139】
また、素子層341及び封止層111が可撓性基板120、125で封止されている。
なお、可撓性基板120は接着材122で素子層341及び封止層111に貼り付けられ
ており、可撓性基板125は接着材123で封止層111に貼り付けられている。
【0140】
基板上に形成された素子層341の剥離方法、及び素子層への可撓性基板の貼り付け方
法に関しては、上記実施の形態を適宜適用することができる。
【0141】
以上に示すように、本実施の形態により、記憶機能の信頼性が高く、無線で情報を送受
信することが可能なフレキシブルな半導体装置を歩留まり高く作製することができる。
【実施例1】
【0142】
本実施例では、無線信号により命令やデータの送受信を行うことのできる半導体装置にお
いて、スイッチング素子に接続される記憶素子がマトリクス状に配置されたメモリセルア
レイを有する半導体装置の作製方法について、図9〜図15を用いて以下に説明する。
【0143】
基板501上に剥離層502を形成する。基板501としてはガラス基板を用いる。ま
た、剥離層502としては、金属層及び金属酸化物層の積層構造とする。金属層としては
、スパッタリング法により得られる30nm〜200nmのタングステン層、窒化タング
ステン層、またはモリブデン層を用いる。
【0144】
次に、金属酸化物層としては、金属層の表面を酸化させて金属酸化物層を形成する。金属
酸化物層の形成方法は、純水やオゾン水を用いて表面を酸化して形成してもよいし、酸素
プラズマで酸化して形成してもよい。また、酸素を含む雰囲気で加熱を行って金属酸化物
層を形成してもよい。また、後の絶縁層の形成工程で形成してもよい。この場合、絶縁層
として酸化珪素層や酸化窒化珪素層をプラズマCVD法で形成する際に、剥離層502表
面が酸化されて金属酸化物層が形成される。
【0145】
次に、金属酸化物層上に第1の絶縁層503を形成する。第1の絶縁層503としては、
酸化珪素層、窒化珪素層または酸化窒化珪素層等の絶縁層を用いる。代表的な一例は第1
の絶縁層503として2層構造から成り、PCVD法によりSiH、NH、及びN
Oを反応ガスとして成膜される窒化酸化珪素層を50〜100nm、SiH、及びN
Oを反応ガスとして成膜される酸化窒化珪素層を100〜150nmの厚さに積層形成す
る構造が採用される。また、第1の絶縁層503の一層として膜厚10nm以下の窒化珪
素層、或いは酸化窒化珪素層を用いることが好ましい。また、窒化酸化珪素層と、酸化窒
化珪素層と、窒化珪素層とを順次積層した3層構造を用いてもよい。ここでは下地絶縁膜
として第1の絶縁層503を形成した例を示したが、特に必要でなければ設ける必要はな
い。
【0146】
次に、第1の絶縁層503上に半導体層を形成する。半導体層は、非晶質構造を有する半
導体層を公知の手段(スパッタリング法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等)に
より成膜する。次に、公知の結晶化処理(レーザ結晶化法、熱結晶化法、またはニッケル
などの触媒を用いた熱結晶化法等)を行って得られた結晶質半導体層上に第1のフォトマ
スクを用いてレジストマスクを形成した後、所望の形状にエッチングして、半導体層を形
成する。なお、プラズマCVD法を用いれば、第1の絶縁層と、非晶質構造を有する半導
体層とを大気に触れることなく連続的に積層することができる。この半導体層の厚さは2
5〜80nm(好ましくは30〜70nm)の厚さで形成する。結晶質半導体層の材料に
限定はないが、好ましくはシリコンまたはシリコンゲルマニウム(SiGe)合金などで
形成すると良い。
【0147】
また、非晶質構造を有する半導体層の結晶化処理として連続発振のレーザを用いてもよく
、非晶質半導体層の結晶化に際し、大粒径に結晶を得るためには、連続発振が可能な固体
レーザを用い、基本波の第2高調波〜第4高調波を適用するのが好ましい。代表的には、
Nd:YVOレーザー(基本波1064nm)の第2高調波(532nm)や第3高調
波(355nm)を適用すればよい。連続発振のレーザを用いる場合には、出力10Wの
連続発振のYVOレーザから射出されたレーザ光を非線形光学素子により高調波に変換
する。また、共振器の中にYVO結晶と非線形光学素子を入れて、高調波を射出する方
法もある。そして、好ましくは光学系により照射面にて矩形状または楕円形状のレーザ光
に成形して、被処理体に照射する。このときのエネルギー密度は0.01〜100MW/
cm程度(好ましくは0.1〜10MW/cm)が必要である。そして、10〜20
00cm/s程度の速度でレーザ光に対して相対的に半導体層を移動させて照射すればよ
い。
【0148】
また、非晶質構造を有する半導体層の結晶化処理としてSLS方式(Sequentia
l Lateral Solidification method)を用いてもよい。
SLS法は、パルス発振のエキシマレーザー光を、スリット状のマスクを介して、試料に
照射するものである。1ショット毎に、試料とレーザ光の相対位置をスーパーラテラル成
長による結晶長さ程度ずらして結晶化を行うことで、人工的に制御したスーパーラテラル
成長による結晶を連続的に形成させる方法である。
次に、必要があれば薄膜トランジスタのしきい値を制御するために、微量な不純物元素
(ボロンまたはリン)のドーピングを半導体層に対して行う。ここでは、ジボラン(B
)を質量分離しないでプラズマ励起したイオンドープ法を用いる。
【0149】
次に、後に容量素子の容量電極となる半導体層に第2フォトマスクを用いてレジストマ
スクを形成し、不純物元素を導入することにより低濃度不純物領域を形成する。不純物元
素としては、n型を付与する不純物元素又はp型を付与する不純物元素を用いることがで
きる。n型を示す不純物元素としては、リン(P)やヒ素(As)等を用いることができ
る。ここでは、半導体層にリン(P)を1×1015〜1×1019/cmの濃度で含
まれるように導入することによりn型を示す不純物領域を形成する。
【0150】
次に、フッ酸を含むエッチャントで半導体層表面の酸化層を除去すると同時に半導体層
の表面を洗浄する。
【0151】
次に、半導体層を覆う第2の絶縁層を形成する。第2の絶縁層はプラズマCVD法また
はスパッタリング法を用い、厚さを1〜200nmとする。好ましくは10nm〜50n
mと薄くしてシリコンを含む絶縁層の単層または積層構造で形成した後にマイクロ波によ
るプラズマを用いた表面窒化処理を行う。第2の絶縁層は、後に形成される薄膜トランジ
スタのゲート絶縁層として機能する。
【0152】
次に、第2の絶縁層上にゲート電極504〜507、容量電極508を形成する。スパ
ッタリング法を行って得られた膜厚100nm〜500nmの導電層上に第3のフォトマ
スクを用いてレジストマスクを形成した後、所望の形状にエッチングして、ゲート電極5
04〜507、及び容量電極508を形成する。
【0153】
ゲート電極504〜507及び容量電極508の材料としては、シリコンとシリサイド反
応する材料であればよく、Ti、W、Ni、Cr、Mo、Ta、Co、Zr、V、Pd、
Hf、Pt、Feから選ばれた元素、または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化
合物材料の単層、またはこれらの積層で形成してもよい。ただし、薄膜トランジスタのゲ
ート電極としては高融点金属が好ましく、WまたはMoを用いる。ゲート電極504〜5
07及び容量電極508を積層とする場合には、上層となる材料層が上述した材料であれ
ば、下層となる材料層は、リン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン層として
もよい。また、上層に上記材料を用い、下層に上記材料の窒化物を用いて形成してもよい
。このとき下層を金属窒化物とすることで、上層の金属が、ゲート絶縁層やその下層の半
導体層に拡散することを防ぐことができる。
【0154】
次に、pチャネル型薄膜トランジスタとする領域の半導体層を覆うように第4のフォトマ
スクを用いてレジストマスクを形成し、nチャネル型薄膜トランジスタとする領域の半導
体層にゲート電極505〜507をマスクとして不純物元素を導入することにより低濃度
不純物領域を形成する。ここでは、nチャネル型薄膜トランジスタとする領域の半導体層
にリン(P)を1×1015〜1×1019/cmの濃度で含まれるように導入するこ
とによりn型を示す不純物領域を形成する。
【0155】
次に、レジストマスクを除去して、nチャネル型薄膜トランジスタとする半導体層を覆う
ように第5のフォトマスクを用いてレジストマスクを形成し、pチャネル型薄膜トランジ
スタとする領域の半導体層にゲート電極504をマスクとして不純物元素を導入すること
によりp型を示す不純物領域を形成する。p型を示す不純物元素としては、ボロン(B)
やアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)等を用いることができる。ここでは、pチャ
ネル型薄膜トランジスタとする領域の半導体層にボロン(B)を1×1019〜1×10
20/cmの濃度で含まれるように導入することによって、p型を示す不純物領域を形
成することができる。その結果、pチャネル型薄膜トランジスタとする領域の半導体層に
、ソース領域又はドレイン領域514、515、及びチャネル形成領域516が形成され
る。
【0156】
次に、ゲート電極504〜507及び容量電極508の両側面にサイドウォール510を
形成する。サイドウォール510の作製方法としては、まず、第2の絶縁層、ゲート電極
504〜507、及び容量電極508を覆うように、プラズマCVD法やスパッタリング
法等により、珪素の酸化物又は珪素の窒化物の無機材料を含む層や、有機樹脂等の有機材
料を含む層を単層又は積層して第3の絶縁層を形成する。次に、第3の絶縁層を、垂直方
向を主体とした異方性エッチングにより選択的にエッチングすることによって、ゲート電
極504〜507、容量電極508の側面に接する絶縁層(サイドウォール510)を形
成する。なお、サイドウォール510の形成と同時に、第2の絶縁層の一部をエッチング
して除去する。第2の絶縁層の一部が除去されることによって、残存するゲート絶縁層5
12は、ゲート電極504〜507、容量電極508、及びサイドウォール510の下方
に形成される。
【0157】
次に、pチャネル型薄膜トランジスタとする半導体層を覆うように第6のフォトマスクを
用いてレジストマスクを形成し、nチャネル型薄膜トランジスタとする領域の半導体層に
ゲート電極505〜507、容量電極508、及びサイドウォール510をマスクとして
不純物元素を導入することにより高濃度不純物領域を形成する。不純物元素の導入後にレ
ジストマスクは除去する。ここでは、nチャネル型薄膜トランジスタとする領域の半導体
層にリン(P)を1×1019〜1×1020/cmの濃度で含まれるように導入する
ことによって、n型を示す高濃度不純物領域を形成することができる。その結果、nチャ
ネル型薄膜トランジスタとする領域の半導体層に、ソース領域又はドレイン領域517、
518、LDD領域519、520、チャネル形成領域521が形成される。サイドウォ
ール510の下方にLDD領域519、520が形成される。また、容量素子の容量電極
となる半導体層に低濃度不純物領域511及び高濃度不純物領域513が形成される。
【0158】
nチャネル型薄膜トランジスタに含まれる半導体層にLDD領域を形成し、pチャネル型
薄膜トランジスタに含まれる半導体層にLDD領域を設けない構造を示したが、もちろん
これに限られず、nチャネル型薄膜トランジスタ及びpチャネル型薄膜トランジスタの両
方の半導体層にLDD領域を形成してもよい。
【0159】
次に、スパッタリング法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等を用いて、水素を含
む第4の絶縁層522を成膜した後、半導体層に添加された不純物元素の活性化処理およ
び水素化処理を行う。不純物元素の活性化処理および水素化処理は、炉での熱処理(30
0〜550℃で1〜12時間の熱処理)または、ランプ光源を用いたラピッドサーマルア
ニール法(RTA法)を用いる。水素を含む第4の絶縁層522は、PCVD法により得
られる窒化酸化珪素層を用いる。ここでは、水素を含む第4の絶縁層522の膜厚は、5
0nm〜200nmとする。加えて、結晶化を助長する金属元素、代表的にはニッケルを
用いて半導体層を結晶化させている場合、活性化と同時にチャネル形成領域におけるニッ
ケルの低減を行うゲッタリングをも行うことができる。なお、水素を含む第4の絶縁層5
22は、層間絶縁層の1層目である。
【0160】
次に、スパッタリング法、LPCVD法、またはプラズマCVD法等を用いて層間絶縁層
の2層目となる第5の絶縁層523及び3層目となる第6の絶縁層524を形成する。第
5の絶縁層523及び第6の絶縁層524としては、酸化珪素層、窒化珪素層または酸化
窒化珪素層などの絶縁層の単層または積層を用いる。ここでは第5の絶縁層523の膜厚
は50〜200nm、第6の絶縁層524の膜厚は300nm〜800nmとする。
【0161】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図9(A)に相当する。
【0162】
次に、第9のフォトマスクを用いてレジストマスクを形成し、選択的に第4の絶縁層52
2、第5の絶縁層523、及び第6の絶縁層524をエッチングして、半導体層に達する
コンタクトホール、ゲート電極に達するコンタクトホールをそれぞれ形成する。そして、
エッチング後にレジストマスクを除去する。
【0163】
次に、フッ酸を含むエッチャントで露呈している半導体層表面の酸化層を除去すると同時
に露呈している半導体層の表面を洗浄する。
【0164】
次に、スパッタリング法を用いて導電層を形成する。この導電層は、Ti、W、Ni、C
r、Mo、Ta、Co、Zr、V、Pd、Hf、Pt、Fe、Al、Cuから選ばれた元
素、または前記元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料の単層、またはこれらの
積層で形成する。
【0165】
次に、第10のフォトマスクを用いてレジストマスクを形成し、選択的に導電層をエッチ
ングして、ソース電極またはドレイン電極525〜532、ゲート引出配線535〜53
8、容量素子の容量配線533、534、539、記憶素子の第2の電極層の引出配線5
41、導電層542を形成する。なお、ここでは図示しないが、導電層542は、アンテ
ナ及び電源部の薄膜トランジスタと電気的に接続している。導電層のエッチング後にレジ
ストマスクを除去する。
【0166】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図9(B)に相当する。本実施例では10枚
のフォトマスクを用いて、同一基板上にロジック回路部の薄膜トランジスタと、メモリ部
の薄膜トランジスタと、アンテナ及び電源部の薄膜トランジスタ及び容量素子とを形成す
ることができる。
【0167】
次に、ロジック回路部601の薄膜トランジスタと、メモリ部602の薄膜トランジスタ
と、電源部603の薄膜トランジスタ及び容量素子を覆う第7の絶縁層540を形成する
。第7の絶縁層540は、酸化珪素を含む絶縁層または有機樹脂層を用いる。無線チップ
の信頼性を向上させる上では酸化珪素を含む絶縁層を用いることが好ましい。また、後に
形成するアンテナをスクリーン印刷法で形成する場合には平坦面を有していることが望ま
しいため、塗布法を用いる有機樹脂層を用いることが好ましい。第7の絶縁層540は、
実施者が適宜、選択すればよい。また、本実施例では後に形成するアンテナが駆動回路及
びメモリ部と重なる例を示しているため、第7の絶縁層540は、アンテナとの絶縁を図
る層間絶縁層として機能している。輪状(例えば、ループアンテナ)又はらせん状のアン
テナとする場合には、アンテナの両端のうち一方を下層の配線で引き回すため、第7の絶
縁層540を設けることが好ましい。ただし、マイクロ波方式を適用し、線状(例えば、
ダイポールアンテナ)、平坦な形状(例えば、パッチアンテナ)等のアンテナとする場合
には、後に形成するアンテナが駆動回路及びメモリ部と重ならないように配置できるため
、第7の絶縁層540は特に設けなくともよい。
【0168】
次に、第11のフォトマスクを用いてレジストマスクを形成し、選択的に第7の絶縁層5
40をエッチングして、引出配線541に達する開口と、導電層542に達する開口を形
成する。そして、エッチング後にレジストマスクを除去する。
【0169】
次に、第7の絶縁層540上に金属層を形成する。金属層としては、Ti、Ni、Auか
ら選ばれる単層またはそれらの積層を用いる。次に、第12のフォトマスクを用いてレジ
ストマスクを形成し、選択的に金属層をエッチングして、記憶素子の第1の電極層543
、引出配線541に接続する導電層544、及びアンテナの下地膜545を形成する。な
お、ここでの第1の電極層543、導電層544、及び下地膜545は、レジストマスク
を用いることなく、メタルマスクを用いたスパッタリング法で選択的に形成することもで
きる。アンテナの下地膜545を設けることで、アンテナとの接触面積を広く確保するこ
とができる。また、回路設計のレイアウトによっては、特に導電層544及び引出配線5
41を形成しなくともよい。
【0170】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図9(C)に相当する。
【0171】
次に、第1の電極層543、導電層544、アンテナの下地膜545、及び第7の絶縁
層540を覆うように、第8の絶縁層548を形成する。第8の絶縁層としては、第7の
絶縁層540と同様の材料を用いて形成することができる。ここでは、0.8〜1.5μ
mの感光性ポリイミドを塗布し第13のフォトマスクを用いて感光性ポリイミドを露光及
び現像した後、200〜350℃で加熱して、第8の絶縁層548を形成する。
【0172】
次に、下地膜545上にアンテナ546を形成する。アンテナ546はスパッタリング
法を用いてAlまたはAgなど金属層を形成した後、フォトマスクを用いてエッチングす
る方法、或いはスクリーン印刷法を用いることができる。フォトマスク数を削減すること
を優先するのであれば、スクリーン印刷法を用いてアンテナを形成すればよい。ここでは
、銀ペーストを用いて印刷したのち、200〜350℃で焼成して、厚さ5〜20μmの
アンテナ546を形成する。
【0173】
次に、第1の電極層543及び第8の絶縁層548の一部に有機化合物を含む層549
を形成する。有機化合物を含む層549は、蒸着法、塗布法、液滴吐出法、印刷法等を適
宜用いることができる。ここでは、厚さ1〜4nmのフッ化カルシウム層を蒸着法により
蒸着した後、厚さ5〜20nmのCzPAを蒸着して有機化合物を含む層549を形成す
る。
【0174】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図10(A)に相当する。
【0175】
次に、有機化合物を含む層549、導電層544、及び第8の絶縁層548の一部に記
憶素子の第2の電極層550を形成する。第2の電極層550は導電層544にも接続す
る。第2の電極層550は、蒸着法、スパッタリング法、塗布法、液滴吐出法、印刷法等
を適宜用いることができる。ここでは、厚さ50〜200nmのスズ及び銀の合金層を蒸
着法により蒸着して第2の電極層550を形成する。
【0176】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図10(B)に相当する。本実施例では、同
一基板上にロジック回路部601の薄膜トランジスタと、メモリ部602の薄膜トランジ
スタ及び記憶素子600と、電源部603の薄膜トランジスタ及びアンテナとを形成する
ことができる。
【0177】
また、本実施例では、フォトマスクを用いてレジストマスクを形成した例を示したが、特
に当該技術に限定されず、フォトマスクを用いることなくレジスト材料を液滴吐出法で選
択的に形成してレジストマスクを形成してもよい。
【0178】
次に、第8の絶縁層548、第2の電極層550、アンテナ546を覆うように第9の
絶縁層551を形成する。第9の絶縁層551としては、表面の凹凸差を低減することが
好ましいため、有機樹脂を用いて形成することが好ましい。ここでは、エポキシ樹脂を印
刷法により印刷し、160度30分で焼成して厚さ10〜30μmの第9の絶縁層551
を形成する。なお、第1の絶縁層から第2の電極層までの積層体を素子層554と示す。
また、第9の絶縁層551は素子層554を封止する封止層として機能する。
【0179】
次に、後の剥離工程を容易に行うために、レーザ光を照射して、溝を形成する(図示し
ない。)
【0180】
次に、第9の絶縁層551上に支持部材552を設ける。ここでは、支持部材552と
して粘着層553を有するフィルムを第9の絶縁層551に貼り付ける。
【0181】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図11(A)に相当し、半導体装置の斜視
図が図14(A)に相当する。また、図14(A)のA−Bの断面図が図14(B)に相
当する。
【0182】
次に、基板501から素子層及び封止層を剥離する。具体的には、剥離層502におい
て、基板501と、素子層554及び絶縁層551を物理的手段により剥離する。物理的
手段とは、力学的手段または機械的手段を指し、何らかの力学的エネルギー(機械的エネ
ルギー)を変化させる手段を指している。物理的手段は、代表的には機械的な力を加える
こと(例えば人間の手や把持具による剥離や、ローラを回転させる分離処理)である。こ
こでは、粘着性を有するローラ561を支持部材552表面に貼り付け、ローラ561を
回転させることで、基板501から、素子層554及び絶縁層551、具体的には金属酸
化物層内、第1の絶縁層503と剥離層502の界面、又は剥離層502内で剥離が生じ
、比較的小さな力で素子層554及び絶縁層551を基板501から引き剥がすことがで
きる。
【0183】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図11(B)に相当し、半導体装置の斜視図
が図14(C)に相当する。また、図14(C)のA−Bの断面図が図14(D)に相当
する。
【0184】
次に、剥離層からはがれた素子層554及び絶縁層551に第1の可撓性基板を接着さ
せる。ここでは、接着剤563を用いて素子層554及び絶縁層551表面に第1の可撓
性基板562を貼り付ける。
【0185】
第1の可撓性基板562としては、実施の形態1で示す可撓性基板120を適宜用いる
ことができる。また、紙、プリプレグ、セラミックシートなどを用いることができる。接
着剤563としては、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤等の光硬
化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。
【0186】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図12(A)に相当し、半導体装置の斜視図
が図14(E)に相当する。また、図14(E)のA−Bの断面図が図14(F)に相当
する。
【0187】
次に、図14(G)及び(H)に示すように、第1の可撓性基板562が上側、支持部
材552が下側になるようにひっくり返し、第1の可撓性基板562、素子層554、及
び絶縁層551を切断手段564により切断し、個々の薄膜集積回路に分断する。切断手
段564としては、レーザカット法、ダイシング法、スクライビング法等を適宜用いるこ
とができる。ここでは、支持部材552を分断せず、第1の可撓性基板562、絶縁層5
51、及び素子層554を分断するようにカッターを用いて切断する。
【0188】
この結果、図15(A)及び(B)に示すように、素子層及び封止樹脂に溝571が形
成される。分断された素子層を薄膜集積回路572と示し、分断された封止樹脂を樹脂層
575と示し、薄膜集積回路572、樹脂層575、及び分断された第1の可撓性基板5
73を積層体586と示す。
【0189】
ここまでの工程を経た積層体586のA−Bの断面図が図12(B)に相当する。
【0190】
次に、図15(C)に示すように、支持部材552上に設けられる積層体586をピッ
クアップ装置でピックアップし、第2の可撓性基板583上に貼り付ける。なお、第2の
可撓性基板583は供給ロール581から繰り出される。また、積層体586が貼り付け
られた第2の可撓性基板583は回収ロール582に回収される。また、第2の可撓性基
板583の表面には接着層584があり、当該接着層により第2の可撓性基板583に積
層体586を貼り付けることができる。
【0191】
第2の可撓性基板583としては、プラスチック、紙、プリプレグ、セラミックシート
などを用いることができる。接着層としては、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、紫外
線硬化型接着剤等の光硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いること
ができる。
【0192】
また、紙の形成途中に積層体を配置して、1枚の紙の内部に積層体を設けることもでき
る。また、図15(C)のC−Dの断面図が図15(D)に相当する。
【0193】
次に、15(E)に示すように、第2の可撓性基板583で積層体586が設けられる
面に接着剤594を用いて第3の可撓性基板593を貼り付ける。具体的には、積層体5
86が設けられる第2の可撓性基板583が供給用ロール591から繰り出される。また
、第3の可撓性基板593が供給用ロール592から繰り出させる。第2の可撓性基板及
び第3の可撓性基板は一対のローラ595、596の圧力や回転速度により封止すること
ができる。即ち、第2の可撓性基板583及び第3の可撓性基板593で積層体586を
封止すると共に第2の可撓性基板583及び第3の可撓性基板593を接着することがで
きる。
【0194】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図13に相当し、半導体装置の斜視図が図1
6(E)に相当する。また、図15(E)のC−Dの断面図を図15(F)示す。
【0195】
この後、第2の可撓性基板583及び第3の可撓性基板593が接する領域で切断手段を
用いて切断するとで、フレキシブルな半導体装置を作製することができる。
【実施例2】
【0196】
本実施例では、第2の電極層としてスズ及びビスマスの合金層を用いた記憶素子を有す
る半導体装置について、以下に示す。
【0197】
本実施例では、基板上に記憶素子を有する半導体装置を作製し、半導体装置に測定装置
を直接接続し、記憶素子に電圧を印加してデータの書き込みを行ったときの、書き込み電
圧に対する書込み率について、図19を用いて説明する。なお、ここでは、記憶素子に電
圧を印加してショートさせることでデータの書き込みを行った。
【0198】
記憶素子は、基板上に、第1の電極層、有機化合物を含む層、第2の電極層の順に積層
した素子であり、基板はガラス基板、第1の電極層は厚さ100nmのチタン層、有機化
合物を含む層として厚さ1nmの酸化スズ層及び厚さ10nmのCzPA、第2の電極層
は厚さ200nmのスズ及びビスマスの合金層を用いて形成した。
【0199】
なお、第1の導電層をスパッタリング法により形成した後、フォトリソグラフィー工程
により第1の導電層上にレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて第1の導
電層を選択的にエッチングして第1の電極層を形成した。また、有機化合物を含む層を蒸
着法により形成した。また、第2の電極層は、モル比がスズ:ビスマス=1:1.1の分
量をタンタルボートに入れ、加熱しスズ及びビスマスが混合した融液を形成した後、当該
融液を蒸着した。記憶素子は、上面形状が正方形であり、且つ一辺の長さが10μmの記
憶素子を試料1と示す。また、当該構造を有し、上面形状が正方形であり、且つ一辺の長
さが5μmの記憶素子を試料2と示す。
【0200】
試料1の記憶素子に電圧を印加して書き込みを行ったときの書き込み率を図19(A)に
示し、試料2の記憶素子の書き込み率を図19(B)に示す。図19(A)及び(B)は
、横軸が電圧値、縦軸が書き込み率である。また、書き込み時間を10m秒とした。試料
1の記憶素子は9Vより高い電圧で書込みが開始され、11Vで書込み成功率が100%
に達した。また、試料2は8Vより高い電圧で書込みが開始され、11Vで書込み成功率
が95%に達した。
【0201】
次に、第2の電極層としてスズ及びビスマスの合金を蒸着して形成した記憶素子の書き
込み率について、図20を用いて示す。
【0202】
図20における書込み率は、以下の記憶素子を有する半導体装置の書込み電圧に対する
書込み率を示す。記憶素子は、基板上に、第1の電極層、有機化合物を含む層、第2の電
極層の順に積層した素子であり、基板はガラス基板、第1の電極層は厚さ100nmのチ
タン層、有機化合物を含む層として厚さ2nmのフッ化カルシウム層、厚さ10nmのC
zPA、及び厚さ2nmのフッ化カルシウム層、第2の電極層は厚さ300nmのスズ及
びビスマスの合金層を用いて形成した。
【0203】
なお、図20に示す記憶素子はそれぞれ、第1の導電層をスパッタリング法により形成
した後、フォトリソグラフィー工程により第1の導電層上にレジストマスクを形成し、当
該レジストマスクを用いて第1の導電層を選択的にエッチングして第1の電極層を形成し
た。また、有機化合物を含む層を蒸着法により形成した。また、第2の電極層は、モル比
がスズ:ビスマス=43:57のスズ及びビスマスの合金をタンタルボートに入れ、蒸着
した。上面形状が正方形であり且つ一辺の長さが10μmの記憶素子の書込み率を直線で
示し、同形状で一辺の長さが5μmの記憶素子の書込み率を破線で示す。
【0204】
図20は、横軸が電圧値、縦軸が書き込み率である。また、書き込み時間を10m秒とし
た。
【0205】
また、図20から、上面形状の一辺の長さが10μm及び5μmの記憶素子それぞれを有
する半導体装置において、8Vより高い電圧で書込みが開始され、10Vで書込み成功率
が100%に達したことがわかる。
【0206】
以上のことから、第2の電極層にスズ及びビスマスの合金を用いることで、高い割合で
書込みを行うことが可能である。また、有機化合物を含む層を、一対のフッ化カルシウム
層で挟まれた有機化合物層で形成することで、書込み電圧のばらつきを低減することがで
きる。
【実施例3】
【0207】
本実施例では、第2の電極層としてスズ及び銀の合金層を用いた記憶素子を有する半導
体装置について、以下に示す。
【0208】
実施例1と同様に形成した半導体装置(但し、アンテナ546は、スパッタリング法に
より厚さ5μmのアルミニウム層を形成した。)において、記憶素子の構造が異なる試料
を3種類作製した。
【0209】
図21(C)に示すように、試料3としては、第1の電極層701としてスパッタリン
グ法により形成した厚さ100nmのチタン層、第2の電極層702として蒸着法により
形成した厚さ200nmのスズ及び銀の合金層、有機化合物を含む層として蒸着法により
形成した厚さ1nmのSnO層703及び蒸着法により形成した厚さ10nmのCzP
A層704を用いた。
【0210】
試料4としては、第1の電極層701としてスパッタリング法により形成した厚さ10
0nmのチタン層、第2の電極層702として蒸着法により形成した厚さ200nmのス
ズ及び銀の合金層、有機化合物を含む層として蒸着法により形成した厚さ1nmのフッ化
カルシウム層705及び蒸着法により形成した厚さ10nmのCzPA層704を用いた

【0211】
試料5としては、第1の電極層701としてスパッタリング法により形成した厚さ10
0nmのチタン層、第2の電極層702として蒸着法により形成した厚さ200nmのス
ズ及び銀の合金層、有機化合物を含む層として蒸着法により形成した厚さ1nmのフッ化
カルシウム層705、蒸着法により形成した厚さ10nmのCzPA層704、及び厚さ
1nmのフッ化カルシウム層706を用いた。
【0212】
なお、試料3乃至試料5において、第2の電極層702は、タンタルボートにモル比が
スズ:銀=1:0.27の分量を入れ、加熱しスズ及び銀が混合した融液を形成した後、
当該融液を蒸着した。
【0213】
試料3乃至試料5を用いて図11(B)に示すような剥離工程を行った。試料3の素子
やその他形成された半導体素子を破壊することなく剥離できた剥離成功率は92〜100
%であった。また、試料4の剥離成功率は76%であった。また、試料5の剥離成功率は
96%であった。即ち、第2の電極層としてスズ及び銀の合金層を用いることで、歩留ま
り高く剥離を行うことができる。更には、歩留まり高く可撓性を有する半導体装置を作製
することができる。
【0214】
次に、実施例1と同様にして形成した図10(B)に示す半導体装置(但し、剥離層5
02及びアンテナ546は形成していない。)に直接測定装置を接続して行った書込み率
を、図21に示す。ここでの半導体装置は、剥離工程を経ずガラス基板上に形成された記
憶素子を有する半導体装置である。
【0215】
図21(A)には、記憶素子の上面形状が正方形であり、且つ一辺の長さが10μmの試
料3乃至試料5の書込み率を示し、図21(B)には、記憶素子の上面形状が正方形であ
り、且つ一辺の長さが5μmの試料3乃至試料5の書込み率を示す。
【0216】
また、それぞれのグラフにおいて、まる印は試料3、四角印は試料4、三角印は試料5
の書込み率を示す。
【0217】
図21(A)より、それぞれの試料において7Vより高い印加電圧で書込みが始まり、
11Vの印加電圧により100%の書込みが可能であった。また、図21(B)より、7
Vより高い印加電圧で書込みが始まり、12Vの印加電圧により100%の書込みが可能
であった。
【0218】
次に、実施例1と同様に形成した図13に示すような半導体装置の記憶素子にリーダラ
イタを用いて無線で書込みを行ったときの書き込み成功率について、図22に示す。ここ
での半導体装置は、剥離工程を経て可撓性基板に貼り付けられた半導体装置である。また
、半導体装置の動作可能な電圧範囲(1.6〜6.7V)内で、記憶素子に書き込みを行
った。
【0219】
図22(A)には、図21(C)に示す試料4の構造の記憶素子を有する半導体装置の
書込み率を示し、図22(B)には、図21(C)に示す試料5の構造の記憶素子を有す
る半導体装置の書込み率を示す。
【0220】
図22(A)より、99.2%の割合で1回のリーダライタからの書込み命令により記憶
素子にデータを書き込むことが可能であることが分かる。また、図22(B)より93.
9%の割合で1回のリーダライタからの書込み命令により記憶素子にデータを書き込むこ
とが可能であることが分かる。即ち、良好な書き込み率を有する半導体装置を作製するこ
とができたことが分かる。
【0221】
次に、実施例1と同様に形成した図13に示すような半導体装置を一定の条件で保存し
た後、記憶素子にリーダライタを用いて無線で書込みを行った時の書込率について、図2
3に示す。ここでの半導体装置は、剥離工程を経て可撓性基板に貼り付けられた半導体装
置である。また、半導体装置の動作可能な電圧範囲(1.6〜6.7V)内で、記憶素子
に書き込みを行った。
【0222】
ここでは、図21に示す試料3〜試料5それぞれにおいて、高温保存(+85℃)、高
温高湿(+85℃、湿度85%)を一定時間行った後、記憶素子にリーダライタを用いて
無線で書込みを行った。また、保存時間はそれぞれ84時間、240時間、500度時間
とした。
【0223】
図23(A)〜(C)は高温保存(+85℃)した半導体装置の書込み割合を示し、図
23(D)〜(F)は高温高湿(+85℃、湿度85%)した半導体装置の書込み割合を
示す。また、図23(A)及び(D)は、図21(C)に示す試料3の測定結果を示し、
図23(B)及び(E)は、図21(C)に示す試料4の測定結果を示し、図23(C)
及び(F)は、図21(C)に示す試料5の測定結果を示す。
【0224】
図23(B)及び(E)から、有機化合物を含む層として1nmのフッ化カルシウム層
及び10nmのCzPA層で形成し、第2の電極層を20nmのスズ及び銀の合金で形成
した記憶素子を有する半導体装置は、高温、高温高湿状態で長時間(それぞれ84時間、
240時間、500時間)保存した後も、1度の書込み命令で情報を書き込むことができ
る。
【0225】
図23(C)及び(F)から、有機化合物を含む層として1nmのフッ化カルシウム層
、10nmのCzPA層、及び1nmのフッ化カルシウム層で形成し、第2の電極層を2
0nmのスズ及び銀の合金で形成した記憶素子を有する半導体装置は、高温、高温高湿状
態で長時間(それぞれ84時間、240時間、500時間)保存した後も、1度の書込み
命令で情報を書き込むことができる。
【0226】
以上のことから、第2の電極層としてスズ及び銀の合金層を用いることで、高温保存、
及び高温高湿保存における半導体装置のデータが変動する割合が低減したことがわかる。
即ち、記憶素子の一方の電極にスズ及び銀の合金層を用いることで、記憶機能の信頼性を
高めることができる。
【0227】
次に、第2の電極層としてスズ及び銀合金を蒸着して形成した記憶素子の書き込み率に
ついて、図24を用いて示す。
【0228】
図24(A)における書込み率は、以下の記憶素子を有する半導体装置の測定結果を示
す。記憶素子は、図21(C)の試料4に示す素子であり、基板はガラス基板、第1の電
極層は厚さ100nmのチタン層、有機化合物を含む層として厚さ2nmのフッ化カルシ
ウム層及び厚さ10nmのCzPA、第2の電極層は厚さ200nmのスズ及び銀の合金
層を用いて形成した。
【0229】
図24(B)における書込み率は、以下の記憶素子を有する半導体装置の書込み電圧に
対する書込み率を示す。記憶素子は、図21(C)の試料5に示す素子であり、基板はガ
ラス基板、第1の電極層は厚さ100nmのチタン層、有機化合物を含む層として厚さ2
nmのフッ化カルシウム層、厚さ10nmのCzPA、及び厚さ2nmのフッ化カルシウ
ム層、第2の電極層は厚さ200nmのスズ及び銀の合金層を用いて形成した。
【0230】
なお、図24(A)及び(B)に示す記憶素子はそれぞれ、第1の導電層をスパッタリ
ング法により形成した後、フォトリソグラフィー工程により第1の導電層上にレジストマ
スクを形成し、当該レジストマスクを用いて第1の導電層を選択的にエッチングして第1
の電極層を形成した。また、有機化合物を含む層を蒸着法により形成した。また、第2の
電極層は、モル比がスズ:銀=1:0.035のスズ及び銀の合金をタンタルボートに入
れ、蒸着した。上面形状が正方形であり、且つ一辺の長さが10μmの記憶素子の書込み
率を直線で示し、同形状で一辺の長さが5μmの書込み率を破線で示す。
【0231】
図24(A)及び(B)は、横軸が電圧値、縦軸が書き込み率である。また、書き込み時
間を10m秒とした。
【0232】
図24(A)から、上面形状の一辺の長さが5μm及び10μmの記憶素子それぞれを有
する半導体装置において、6Vより高い電圧で書込みが開始され、9Vで書込み成功率が
100%に達したことがわかる。
【0233】
また、図24(B)から、上面形状の一辺の長さが5μm及び10μmの記憶素子それぞ
れを有する半導体装置において、7Vより高い電圧で書込みが開始され、10Vで書込み
成功率が100%に達したことがわかる。
【実施例4】
【0234】
本実施例では、第2の電極層としてスズ及び銀の合金層を用いた記憶素子を有する半導
体装置において、第2の電極層におけるスズの割合と第2の電極層の凹凸、及び剥離成功
率について、以下に示す。
【0235】
実施例1と同様に図10(A)まで形成した半導体装置(但し、アンテナ546は形成
しない。)において、記憶素子の第2の電極層の組成の異なる試料を5種類(試料6〜試
料10)作製した。このときの、第2の電極層に含まれるスズの元素率を表1に示す。な
お、このときのスズの元素率は、走査透過型電子顕微鏡(STEM:Scanning
Transmission Electron Microscope)及びエネルギー
分散型X線マイクロ分析(EDX:Electron Dispersion X ra
y Spectroscopy)の元素分析により測定した。
【0236】
【表1】

【0237】
試料10においては、スズの元素率が100atoms%の領域と、30〜40atom
s%のスズを含むスズ及び銀の合金の領域との2種類の領域が形成された。
【0238】
なお、本実施例における記憶素子の構造は、第1の電極層として厚さ100nmのチタン
層を形成し、有機化合物を含む層として厚さ1nmのCaF層、厚さ10nmのCzP
A、及び厚さ1nmのCaF層、第2の電極層は厚さ200nmのスズ及び銀の合金層
を用いて形成した。
【0239】
なお、第1の導電層をスパッタリング法により形成した後、フォトリソグラフィー工程に
より第1の導電層上にレジストマスクを形成し、当該レジストマスクを用いて第1の導電
層を選択的にエッチングして第1の電極層を形成した。また、有機化合物を含む層を蒸着
法により形成した。また、第2の電極層は、一定の割合のスズ及び銀を溶融した合金を蒸
着法により形成した。各試料における第2の電極層の蒸着源におけるスズ及び銀の合金の
重量濃度率を表2に示す。
【0240】
【表2】

【0241】
また、試料6乃至試料10の記憶素子の断面を走査透過型電子顕微鏡で観察した観察像(
Zコントラスト像)を図25に示す。図25(A)は試料6、図25(B)は試料7、図
25(C)は試料8、図25(D)は試料9、図25(E)は試料10の記憶素子周辺の
断面図である。
【0242】
図25から分かるように、試料6及び試料10は第2の電極層の凹凸差が大きく、膜厚分
布の均一性が低い。一方、試料7乃至試料9は第2の電極層層の凹凸差が小さく、膜厚分
布の均一性が高い。即ち、スズ及び銀の合金において、スズの濃度を10atoms%以
下、さらには6.1atoms%以下(但し、0atoms%を除く)とすることで、ス
ズ結晶の結晶構造の変態による第2の電極層の縮み、粗化等を低減することが可能であり
、第1の電極層及び第2の電極層の間隔のばらつきを低減することが可能であり、書込み
ばらつきを低減することができる。
【0243】
次に、第2の電極層におけるスズの割合と剥離成功率について、以下に示す。ここでは、
第2の電極層のスズの割合が0atom%の記憶素子を有する試料を試料11とし、第2
の電極層のスズの割合が21.1atoms%の記憶素子を有する試料を試料12とし、
第2の電極層のスズの割合が4.3atoms%の記憶素子を有する試料を試料13とし
、第2の電極層のスズの割合が100atoms%または30〜40atoms%の記憶
素子を有する試料を試料14とする。
【0244】
はじめに、試料12及び試料13における半導体装置の作製工程について、図9〜図13
を用いて示す。
【0245】
基板501上に絶縁膜(図示しない。)を形成し、絶縁膜上に剥離層502を形成する
。ここでは、基板501としては一辺が126.6mmの正方形のガラス基板(EAGL
E−2000(コーニング社製)を用いた。絶縁膜としては、シランガス、一酸化二窒素
を用いたプラズマCVD法により、厚さ100nmの酸化窒化珪素膜を形成した。剥離層
502としては、タングステンターゲットをアルゴンガスでスパッタリングして厚さ30
nmのタングステン層を形成した。
【0246】
次に、剥離層上に第1の絶縁層503を形成する。第1の絶縁層503としては、シリコ
ンターゲットを酸素及びアルゴンでスパッタリングして、厚さ200nmの酸化珪素層を
形成し、SiH、NH、及びNOを用いたプラズマCVD法により厚さ50nmの
窒化酸化珪素層を形成し、SiH、及びNOを用いたプラズマCVD法により厚さ1
00nmの酸化窒化珪素層を形成した。なお、スパッタリング法で厚さ200nmの酸化
珪素層を形成する際に、タングステン層表面が酸素プラズマ処理され、タングステン層の
表面に数nmの酸化タングステン層が形成される。
【0247】
次に、第1の絶縁層503上に半導体層を形成する。ここでは、半導体層として、シラン
ガスを用いたプラズマCVD法により非晶質珪素層を形成した後、500℃1時間及び5
50℃4時間の加熱により非晶質珪素層に含まれる水素を除去した。次に、フッ酸で非晶
質珪素層表面の酸化膜を除去した後、Nd:YVOレーザの第2高調波(532nm)
の連続発振のレーザビームを非晶質珪素層に照射して結晶性珪素層を形成した。
【0248】
次に、薄膜トランジスタのしきい値を制御するために、結晶性珪素層に微量な不純物元
素(ボロンまたはリン)のドーピングを行う。ここでは、2.5%のジボラン(B
)を質量分離しないでプラズマ励起したイオンドープ法を用い、1×1017/cm
7×1017/cmのボロンを結晶性珪素層にドーピングした。
【0249】
次に、結晶性珪素層上にレジストを塗布した後、フォトマスクを用いて露光した後現像
を行って、レジストマスクを形成し、結晶性珪素層を選択的にエッチングして、分離され
た結晶性珪素層を形成する。ここでは、結晶性珪素層の表面の酸化膜を除去し、フッ酸及
び過酸化水素の溶液を用いて結晶性珪素層表面に酸化膜を形成した後、レジストを塗布し
、フォトマスクを用いてレジストを露光した後現像して、レジストマスクを形成した。次
に、レジストマスクを用いて結晶性珪素層をSF及びOを用いてドライエッチングし
て、分離された結晶性珪素層を形成した。この後、レジストマスクを除去した。
【0250】
次に、分離された結晶性珪素層上にゲート絶縁膜として機能する第2の絶縁層を形成する
。ここでは、第2の絶縁層として、SiH、及びNOを用いたプラズマCVD法によ
り厚さ20nmの酸化窒化珪素層を形成した。
【0251】
次に、フォトマスクを用いてレジストマスクを形成し、容量素子の容量電極となる結晶性
珪素層に不純物元素(ボロンまたはリン)を導入することにより低濃度不純物領域511
を形成する。ここでは、結晶性珪素層にリン(P)が1×1015〜1×1019/cm
の濃度で含まれるように、5%のフォスフィンをイオンドープすることにより、n型を
示す低濃度不純物領域511を形成した。この後、レジストマスクを除去した。
【0252】
次に、第2の絶縁層上にゲート電極504〜507、容量電極508を形成する。ここ
では、窒化タンタルをターゲットとしスパッタリングガスにアルゴンを用いてスパッタリ
ングを行い、厚さ30nmの窒化タンタル層を形成した後、タングステンをターゲットと
しアルゴンを用いてスパッタリングを行い、厚さ370nmのタングステン層を形成した
。次に、タングステン層の表面にレジストを塗布したのち、フォトマスクを用いて露光し
た後現像を行って、レジストマスクを形成した。次に、当該レジストマスクを用いてタン
グステン層及び窒化タンタル層を、Cl、SF、及びOを用いてドライエッチング
してゲート電極504〜507、容量電極508を形成した。この後、レジストマスクを
除去した。
【0253】
次に、pチャネル型薄膜トランジスタとする領域の半導体層を覆うようにフォトマスクを
用いてレジストマスクを形成し、nチャネル型薄膜トランジスタとする領域の半導体層に
ゲート電極505〜507をマスクとして不純物元素を導入することにより低濃度不純物
領域を形成する。ここでは、nチャネル型薄膜トランジスタとする領域の半導体層にリン
(P)を1×1015〜1×1019/cmの濃度で含まれるように5%のフォスフィ
ンをイオンドープすることによりn型を示す不純物領域を形成する。この後、レジストマ
スクを除去した。
【0254】
次に、nチャネル型薄膜トランジスタとする半導体層を覆うようにフォトマスクを用いて
レジストマスクを形成し、pチャネル型薄膜トランジスタとする領域の半導体層にゲート
電極504をマスクとして不純物元素を導入することによりp型を示すソース領域及びド
レイン領域514、515を形成する。ここでは、pチャネル型薄膜トランジスタとする
領域の半導体層にボロン(B)を1×1019〜1×1020/cmの濃度で含まれる
ように15%のジボランをイオンドープすることによって、p型を示すソース領域及びド
レイン領域514、515を形成することができる。また、チャネル形成領域516が形
成される。この後、レジストマスクを除去した。
【0255】
次に、ゲート電極504〜507及び容量電極508の両側面にサイドウォール510を
形成する。ここでは、SiH、及びNOを用いたプラズマCVD法により厚さ100
nmの酸化窒化珪素層を形成した後、LPCVD法により厚さ200nmの酸化珪素層を
形成した。次に、酸化珪素層上にレジストを塗布した後、基板の裏面に形成された酸化珪
素層をウエットエッチングした。次に、酸化珪素層上のレジストを除去した後、酸化珪素
層及び酸化窒化珪素層をCHF及びOを用いてドライエッチングしてサイドウォール
510を形成する。なお、サイドウォール510の形成と同時に、第2の絶縁層の一部を
エッチングして除去する。第2の絶縁層の一部が除去されることによって、残存するゲー
ト絶縁層512は、ゲート電極504〜507、容量電極508、及びサイドウォール5
10の下方に形成される。
【0256】
次に、pチャネル型薄膜トランジスタとする半導体層を覆うようにフォトマスクを用いて
レジストマスクを形成し、nチャネル型薄膜トランジスタとする領域の半導体層にゲート
電極505〜507、容量電極508、及びサイドウォール510をマスクとして不純物
元素を導入することにより高濃度不純物領域を形成する。ここでは、nチャネル型薄膜ト
ランジスタとする領域の結晶性珪素層にリンを1×1019〜1×1020/cmの濃
度で含まれるように5%のフォスフィンをイオンドープすることによって、n型を示す高
濃度不純物領域を形成することができる。具体的には、nチャネル型薄膜トランジスタと
する領域の半導体層に、ソース領域又はドレイン領域517、518、LDD領域519
、520、チャネル形成領域521が形成される。サイドウォール510の下方にLDD
領域519、520が形成される。また、容量素子の容量電極となる半導体層に低濃度不
純物領域511及び高濃度不純物領域513が形成される。この後、レジストマスクを除
去した。
【0257】
次に、水素を含む第4の絶縁層522を成膜した後、半導体層に添加された不純物元素の
活性化処理を行う。ここでは、SiH、及びNOを用いたプラズマCVD法により厚
さ50nmの酸化窒化珪素層を形成した後、窒素雰囲気で550℃で4時間加熱して不純
物元素の活性化処理をした。
【0258】
次に、層間絶縁層の2層目となる第5の絶縁層523及び3層目となる第6の絶縁層52
4を形成する。ここでは、第5の絶縁層523として、SiH、NH、及びNOを
用いたプラズマCVD法により厚さ100nmの窒化酸化珪素層を形成した後、第6の絶
縁層524として、SiH、及びNOを用いたプラズマCVD法により厚さ600n
mの酸化窒化珪素層を形成した。
【0259】
次に、結晶性珪素層の水素化処理を行う。ここでは、窒素雰囲気で410℃1時間の加熱
を行った。
【0260】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図9(A)に相当する。
【0261】
次に、第6の絶縁層524上にレジストを塗布した後、フォトマスクを用いてレジストを
露光し現像してレジストマスクを形成し、選択的に第4の絶縁層522、第5の絶縁層5
23、及び第6の絶縁層524をエッチングして、半導体層に達するコンタクトホール、
ゲート電極に達するコンタクトホールをそれぞれ形成する。ここでは、CHF及びH
を用いたドライエッチングにより第4の絶縁層522、第5の絶縁層523、及び第6の
絶縁層524をエッチングした。次に、エッチング後にレジストマスクを除去した。
【0262】
次に、フッ酸を含むエッチャントで露呈している半導体層表面の酸化層を除去すると同時
に露呈している半導体層の表面を洗浄する。
【0263】
次に、スパッタリング法を用いて導電層を形成する。ここでは、ターゲットにチタンを用
いたスパッタリング法により厚さ60nmのチタン層を形成し、ターゲットに窒化チタン
を用いたスパッタリング法により厚さ40nmの窒化チタン層を形成し、ターゲットにア
ルミニウムを用いたスパッタリング法により厚さ500nmのアルミニウム層を形成し、
ターゲットにチタンを用いて厚さ100nmのチタン層を形成した。
【0264】
次に、レジストを塗布した後、フォトマスクを用いてレジストを露光した後現像してレジ
ストマスクを形成し、選択的に導電層をエッチングして、ソース電極またはドレイン電極
525〜532、ゲート引出配線535〜538、容量素子の容量配線533、534、
539、記憶素子の第2の電極層の引出配線541、導電層542を形成する。この後に
レジストマスクを除去する。
【0265】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図9(B)に相当する。同一基板上にロジッ
ク回路部601の薄膜トランジスタと、メモリ部602の薄膜トランジスタと、電源部6
03の薄膜トランジスタ及び容量素子とを形成することができる。
【0266】
次に、第6の絶縁層524、ソース電極またはドレイン電極525〜532、ゲート引出
配線535〜538、容量素子の容量配線533、534、539、記憶素子の第2の電
極層の引出配線541、及び導電層542を覆う第7の絶縁層540を形成する。ここで
は、第7の絶縁層540として、感光性ポリイミドを塗布した後、フォトマスクを用いて
感光性ポリイミドを露光した後現像し、300℃で1時間加熱して感光性ポリイミドを焼
成して、引出配線541に達する開口と、導電層542に達する開口を有する厚さ150
0nmの第7の絶縁層540を形成した。
【0267】
次に、第7の絶縁層540上に記憶素子の第1の電極層543、引出配線541に接続す
る導電層544、及びアンテナの下地膜545を形成する。ここでは、チタンをターゲッ
トとして厚さ100nmのチタン層を形成した後、チタン層上にレジストを塗布し、レジ
ストをフォトマスクで露光した後現像してレジストマスクを形成する。次に、レジストマ
スクを用いてチタン層を、BCl及びClを用いてドライエッチングして、記憶素子
の第1の電極層543、引出配線541に接続する導電層544、及びアンテナの下地膜
545を形成した。この後、レジストマスクを除去した。
【0268】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図9(C)に相当する。
【0269】
次に、第1の電極層543、導電層544、アンテナの下地膜545、及び第7の絶縁
層540を覆うように、第8の絶縁層548を形成する。ここでは、第8の絶縁層として
は、感光性ポリイミドを塗布しフォトマスクを用いて感光性ポリイミドを露光及び現像し
た後、250℃で1時間加熱して、厚さ800nmの第8の絶縁層548を形成した。
【0270】
次に、下地膜545上にアンテナ546を形成する。ここでは、スクリーン印刷法によ
り銀ペーストを下地膜545上に印刷した後、200℃で30分加熱してアンテナ546
を形成した。
【0271】
次に、第1の電極層543及び第8の絶縁層548の一部に有機化合物を含む層549
を形成する。ここでは、厚さ1nmのフッ化カルシウム層を蒸着し、厚さ10nmのCz
PAを蒸着し、厚さ1nmのフッ化カルシウム層を蒸着して有機化合物を含む層549を
形成した。
【0272】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図10(A)に相当する。
【0273】
次に、有機化合物を含む層549、導電層544、及び第8の絶縁層548の一部に記
憶素子の第2の電極層550を蒸着法により形成する。第2の電極層550は導電層54
4にも接続する。ここでは、試料12としては、21.1atoms%のスズを有するス
ズ及び銀の合金を厚さ200nm形成した。また、試料13としては、割合が4.3at
oms%のスズを有するスズ及び銀の合金を厚さ200nm形成した。
【0274】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図10(B)に相当する。本実施例では、同
一基板上にロジック回路部601の薄膜トランジスタと、メモリ部602の薄膜トランジ
スタ及び記憶素子600と、電源部603の薄膜トランジスタ及びアンテナとを形成する
ことができる。
【0275】
次に、第8の絶縁層548、第2の電極層550、アンテナ546を覆うように第9の
絶縁層551を形成する。ここでは、組成物を印刷法により印刷し、160℃30分で焼
成して、第9の絶縁層551として厚さ10〜30μmのエポキシ樹脂を形成した。なお
、第1の絶縁層から第2の電極層までの積層体を素子層554と示す。また、第9の絶縁
層551は素子層554を封止する封止層として機能する。
【0276】
次に、後の剥離工程を容易に行うために、レーザ光を剥離層に照射して、溝を形成した

【0277】
次に、第9の絶縁層551上に支持部材552を設ける。ここでは、支持部材552と
して熱剥離性フィルムを第9の絶縁層551に貼り付けた。
【0278】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図11(A)に相当する。
【0279】
次に、基板501から素子層554及び第9の絶縁層551を剥離する。具体的には、
剥離層502において、基板501と、素子層554及び絶縁層551を物理的手段によ
り剥離する。ここでは、粘着性を有するローラ561を支持部材552表面に設け、ロー
ラ561を回転させることで、素子層554及び絶縁層551を基板501から引き剥が
すことができた。
【0280】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図11(B)に相当する。
【0281】
次に、剥離層から剥れた素子層554及び絶縁層551に第1の可撓性基板562を接
着させる。ここでは、素子層554及び絶縁層551表面に第1の可撓性基板として熱可
塑性接着層を含むラミネートフィルムを設け、135℃に加熱されたローラを押しつけて
、ラミネートフィルムを素子層554及び絶縁層551の表面に固着した。
【0282】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図12(A)に相当する。この後、支持部材
552に熱を加えて、支持部材552を第9の絶縁層551から剥した。
【0283】
次に、絶縁層551に第2の可撓性基板583を接着させる。ここでは、絶縁層551
表面に第2の可撓性基板583として熱可塑性接着層を含むラミネートフィルムを設け、
135℃に加熱されたローラを押しつけて、ラミネートフィルムを絶縁層551の表面に
固着した。
【0284】
この後、第1の可撓性基板、素子層、及び第2の可撓性基板583が重畳する部分に選
択的にUVレーザ光を照射して分断することで、半導体装置を作製することができた。
【0285】
次に、試料11及び試料14の作製工程について、図9、図26乃至図29を用いて説明
する。
【0286】
試料12及び試料13と同様に、図9(A)〜(C)の工程を経て、第7の絶縁層540
上に記憶素子の第1の電極層543、引出配線541に接続する導電層544、及び接続
端子の下地膜545を形成する。
【0287】
次に、図26(A)に示すように、第1の電極層543、導電層544、及び第7の絶
縁層540を覆うように、第8の絶縁層548を形成する。
【0288】
次に、下地膜545上に導電層621を形成する。ここでは、スクリーン印刷法により
銀ペーストを下地膜545上に印刷した後、200℃で30分加熱して導電層621を形
成した。
【0289】
次に、第1の電極層543及び第8の絶縁層548の一部に有機化合物を含む層549
を形成する。ここでは、厚さ1nmのフッ化カルシウム層を蒸着し、厚さ10nmのCz
PAを蒸着し、厚さ1nmのフッ化カルシウム層を蒸着して有機化合物を含む層549を
形成した。
【0290】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図26(A)に相当する。
【0291】
次に、有機化合物を含む層549、導電層544、及び第8の絶縁層548の一部に記
憶素子の第2の電極層550を蒸着法により形成する。第2の電極層550は導電層54
4にも接続する。ここでは、試料11としては、スズを含まず、銀単体を用いて厚さ20
0nm形成した。また、試料14としては、割合が100atoms%のスズ単体及び3
0〜40atoms%のスズを有するスズ及び銀の合金を有する第2の電極層を厚さ20
0nm形成した。
【0292】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図26(B)に相当する。本実施例では、同
一基板上にロジック回路部601の薄膜トランジスタと、メモリ部602の薄膜トランジ
スタ及び記憶素子600と、電源部603の薄膜トランジスタとを形成することができる

【0293】
次に、第8の絶縁層548及び第2の電極層550、並びに導電層621の一部を覆う
ように第10の絶縁層622を形成する。ここでは、第10の絶縁層622として、組成
物を印刷法により印刷し、160℃30分で焼成して、厚さ10〜30μmのエポキシ樹
脂を形成した。なお、第1の絶縁層から接続端子までの積層体を素子層620と示す。ま
た、第10の絶縁層622は素子層620を封止する封止層として機能する。
【0294】
次に、後の剥離工程を容易に行うために、レーザ光を剥離層に照射して、溝を形成した
(図示しない。)。
【0295】
次に、第10の絶縁層622上に支持部材624を設ける。ここでは、支持部材624
として熱剥離フィルムを接着剤623を用いて第10の絶縁層622に貼り付けた。
【0296】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図27(A)に相当する。
【0297】
次に、基板501から素子層620及び第10の絶縁層622を剥離する。具体的には
、剥離層502において、基板501と、素子層620及び第10の絶縁層622を物理
的手段により剥離する。ここでは、粘着性を有するローラを支持部材624表面に設け、
ローラを回転させることで、素子層620及び第10の絶縁層622を基板501から引
き剥がすことができた。
【0298】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図27(B)に相当する。
【0299】
次に、剥離層502から剥れた素子層620及び第10の絶縁層622に第1の可撓性
基板562を接着させる。ここでは、素子層620表面に第1の可撓性基板562として
熱可塑性接着層を含むラミネートフィルムを設け、135℃に加熱されたローラを押しつ
けて、ラミネートフィルムを素子層620の表面に固着した。
【0300】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図28(A)に相当する。この後、支持部材
624に熱を加えて、支持部材624を第10の絶縁層622及び導電層621から剥し
た。
【0301】
次に、第1の可撓性基板562をダイシングフレームのUVシートに貼り付ける(図示
しない。)。UVシートは粘着性を有するため、UVシート上に第1の可撓性基板562
が固定される。次に、UVシートに紫外光を照射して、UVシートの粘着性を低減させる

【0302】
次に、導電層621上に接続端子625を形成する。接続端子625を形成することで
、後にアンテナとの位置合わせ及び接着を容易に行うことが可能である。ここでは、スク
リーン印刷法により銀ペーストを導電層621上に印刷した後、120℃で20分加熱し
て接続端子625を形成した。
【0303】
次に、接続端子625にレーザビームを照射して、接続端子625、導電層621、及び
導電層542の間の密着性を高め、電気抵抗を低減させる。
【0304】
ここまでの工程を経た半導体装置の断面図が図28(B)に相当する。
【0305】
次に、接続端子及び第10の絶縁層622上に異方性導電接着剤を印刷したのち、焼成す
る。ここでは、120℃で5分焼成した。
【0306】
次に、素子層620を分断する。ここでは、素子層620及び第1の可撓性基板562に
レーザビームを照射して、素子層620を複数に分断する。なお、ここでは、レーザカッ
ト法を用いて素子層の一部を複数に分断したが、この方法の代わりにダイシング法、スク
ライビング法等を適宜用いることができる。この結果、分断された素子層を薄膜集積回路
630と示す。
【0307】
次に、UVシートから薄膜集積回路630を剥がす。
【0308】
次に、アンテナ632を有する第2の可撓性基板631と、薄膜集積回路630とを異
方性導電接着剤633を用いて貼りあわせる。
【0309】
ここでは、アンテナ632と薄膜集積回路630とが、異方性導電接着剤633中の導
電性粒子634によって接続される。
【0310】
以上の工程により、図29に示すように、非接触でデータの伝送が可能な半導体装置を
作製することができる。
【0311】
ここでは、一枚の基板上に複数個の半導体装置が配置されている。基板一枚あたりの剥
離成功率について、表3に示す。
【0312】
【表3】

【0313】
記憶素子の第2の電極層が微量のスズを含まず銀単体(試料11)の場合、正常に剥離す
ることが困難であった。また、記憶素子の第2の電極層がスズ単体、または21atom
s%以上の場合(試料12、及び試料14)、正常に剥離することが困難であった。しか
しながら、微量のスズを含み膜厚分布の均一性の高いスズ及び銀の合金、ここでは4.3
atoms%のスズを含むスズ及び銀の合金で記憶素子の第2の電極層を形成することで
、正常に剥離された。記憶素子の第2の電極層として、微量のスズ、代表的には10at
oms%以下、さらには6.1atoms%以下(但し0atoms%を除く)のスズを
含むスズ及び銀の合金で記憶素子の第2の電極層を形成することで、高い割合で正常に剥
離が行われたことがわかる。
【実施例5】
【0314】
本発明の非接触でデータの送受信が可能な半導体装置は、例えば、紙幣、硬貨、有価証
券類、証書類、無記名債券類、包装用容器類、書籍類、記録媒体、身の回り品、乗物類、
食品類、衣類、保健用品類、生活用品類、薬品類及び電子機器等に設けて使用することが
できる。これらの例に関して図16及び図17を用いて説明する。
【0315】
図16(A)は、本発明に係る半導体装置9010を内蔵したラベルの完成品の状態の
一例である。ラベル台紙(セパレート紙)9118上に、半導体装置9010を内蔵した
ラベル9020が形成されている。ラベル9020は、ボックス9119内に収納されて
いる。また、ラベル上には、その商品や役務に関する情報(商品名、ブランド、商標、商
標権者、販売者、製造者等)が記されており、一方、半導体装置9010には、その商品
(または商品の種類)固有のIDナンバーが付されており、偽造や、商標権、特許権等の
知的財産権侵害、不正競争等の不法行為を容易に把握することができる。また、半導体装
置9010内には、商品の容器やラベルに明記しきれない多大な情報、例えば、商品の産
地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格、生産方法、使用方法、生産
時期、使用時期、賞味期限、取扱説明、商品に関する知的財産情報等を入力しておくこと
ができ、取引者や消費者は、簡易なリーダによって、それらの情報にアクセスすることが
できる。また、生産者側からは容易に書換え、消去等も可能であるが、取引者、消費者側
からは書換え、消去等ができない仕組みになっている。
【0316】
図16(B)は、半導体装置を内蔵したタグ9120を示している。半導体装置を内蔵
したタグを商品に備え付けることにより、商品管理が容易になる。例えば、商品が盗難さ
れた場合に、商品の経路を辿ることによって、その犯人を迅速に把握することができる。
このように、半導体装置を内蔵したタグを備えることにより、所謂トレーサビリティ(t
raceablity;複雑化した製造、流通の各段階で問題が生じた場合に、経路を遡
ることによって、その原因を迅速に把握できる態勢を整えること。)に優れた商品を流通
させることができる。
【0317】
図16(C)は、本発明に係る半導体装置を内蔵したIDカード9141の完成品の状
態の一例である。上記IDカードとしては、キャッシュカード、クレジットカード、プリ
ペイドカード、電子乗車券、電子マネー、テレフォンカード、会員カード等のあらゆるカ
ード類が含まれる。
【0318】
図16(D)は、本発明に係る半導体装置9010を内蔵した無記名債券9122の完
成品の状態の一例である。上記無記名債券類には、切手、切符、チケット、入場券、商品
券、図書券、文具券、ビール券、おこめ券、各種ギフト券、各種サービス券等が含まれる
が、勿論これらに限定されるものではない。また、無記名債権に限らず小切手、証券、約
束手形等の有価証券類、運転免許証、住民票等の証書類等に設けることもできる。
【0319】
図16(E)は、半導体装置9110を内蔵した商品を包装するための包装用フィルム
類9127を示している。包装用フィルム類9127は、例えば、下層フィルム上に、半
導体装置9010を任意にばらまき、上層フィルムで覆うことによって作製することがで
きる。包装用フィルム類9127は、ボックス9129に収納されており、所望の量だけ
カッター9128で切り離して利用することができる。なお、包装用フィルム類9127
としての素材は特に制限されない。例えば、薄膜樹脂、アルミ箔、紙等を用いることがで
きる。
【0320】
図17(A)、(B)は、本発明に係る半導体装置9010を内蔵したラベル9020
を貼付した書籍9123、ペットボトル9124を示している。なお、もちろんこれらに
限定されず、お弁当等の包装紙等の包装用容器類、DVDソフト、ビデオテープ等の記録
媒体、自転車等の車両、船舶等の乗物類、鞄、眼鏡等の身の回り品、食料品、飲料等の食
品類、衣服、履物等の衣類、医療器具、健康器具等の保健用品類、家具、照明器具等の生
活用品類、医薬品、農薬等の薬品類、液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置(
テレビ受像機、薄型テレビ受像機)、携帯電話等の電子機器等様々な物品に設けることが
できる。本発明に用いられる半導体装置は非常に薄いため、上記書籍等の物品にラベルを
搭載しても、機能、デザイン性を損ねることがない。更に、本発明の半導体装置の場合、
アンテナ及びチップを一体形成でき、曲面を有する商品に直接半導体装置を転写すること
が容易になる。
【0321】
図17(C)は、果物類9131の生鮮食品に、直接ラベル9020を貼り付けた状態
を示している。また、なお、ラベルを商品に貼り付けた場合、剥がされる可能性があるが
、包装用フィルム類によって商品をくるむと、包装用フィルム類を剥がすのは困難である
ため、防犯対策上多少のメリットがある。
【0322】
紙幣、硬貨、有価証券類、証書類、無記名債券類等に本発明の半導体装置を設けること
により、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、書籍類、記録媒体等、身の
回り品、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等に本発明の半導体装置を設けることによ
り、検品システムやレンタル店のシステムなどの効率化を図ることができる。乗物類、保
健用品類、薬品類等に本発明の半導体装置を設けることにより、偽造や盗難の防止、薬品
類ならば、薬の服用の間違いを防止することができる。
【0323】
以上のように、本発明の半導体装置は物品あればどのようなものにでも設けて使用する
ことができる。本発明の半導体装置は、より薄く湾曲しやすいため、物品に貼り付けた際
に違和感なく用いることができる。なお、本実施の形態は、他の実施の形態、実施例と自
由に組み合わせて行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極層と、
前記第1の電極層上の有機化合物を含む層と、
前記有機化合物を含む層上の第2の電極層と、
前記第2の電極層は、銀と、1atoms%以上10atoms%以下のスズを含み、
前記第1の電極層、前記有機化合物を含む層、及び前記第2の電極層は、第1の可撓性基板上に位置することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
第1の電極層と、
前記第1の電極層上の有機化合物を含む層と、
前記有機化合物を含む層上の第2の電極層と、
前記第2の電極層は、銀と、1atoms%以上10atoms%以下のスズを含み、
前記合金層はスズと銀の合金層であり、
前記第1の電極層、前記有機化合物を含む層、及び前記第2の電極層は、第1の可撓性基板と第2の可撓性基板とに挟まれて位置することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1の電極層は、1atoms%以上10atoms%以下のスズを含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記第2の電極層は、銀とスズとの合金層を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記第1の電極層はトランジスタと電気的に接続することを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−102204(P2013−102204A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−9850(P2013−9850)
【出願日】平成25年1月23日(2013.1.23)
【分割の表示】特願2007−307170(P2007−307170)の分割
【原出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】