説明

半導体製造装置及び記憶媒体

【課題】 半導体製造装置において、装置の異常を確実に検出すること。
【解決手段】 第1の監視対象とこの第1の監視対象の大きさに影響を与える第2の監視対象とについて、第2の監視対象の値を種々変えることにより得られた両者の値の組に基づいて、2軸座標系に両者の値の相関データを作成する。バッチ式の成膜処理装置の場合であれば、第1の監視対象及び第2の監視対象は夫々例えば累積膜厚及び圧力調整バルブの角度である。この相関データに基づいて2軸座標系に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成し、両者の値で決まる相関データの位置が異常領域に入っていれば異常と判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検出例えば熱処理装置の圧力調整用バルブあるいはヒータなどの異常を検出するための機能を備えた半導体製造装置及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路などの半導体装置を製造する半導体製造装置としては例えば半導体ウエハに成膜を行う熱処理装置、プラズマエッチング装置、レジスト塗布や現像を行う液処理装置などがあるが、最近のパターンの線幅の微細化、薄膜化に伴って、装置に発生したわずかな異常により歩留まりが大きく左右されるようになってきている。このため装置の異常を的確にかつ速やかに検出する必要がある。
【0003】
半導体製造装置の異常の例としてバッチ式の熱処理装置を例にとって以下に説明する。例えば縦型の減圧CVD(chemical vapor deposition)装置は、基板を保持具に棚状に保持して反応管内に搬入し、処理ガスを反応管内に供給しながら排気管を通じて真空排気を行い、反応管の周囲のヒータにより反応管内を均一加熱雰囲気とするものであるが、例えば反応管内の気密性が悪くなると反応管内に外気が入り込むこむことから予定とする圧力制御ができなくなるばかりか、基板に対する成膜処理に対して悪影響がでることから、速やかにその異常を検出してメンテナンスを行う必要がある。このように気密性が悪くなる要因の一つとしては例えば反応管内の蓋体に設けられたOリングと呼ばれる樹脂シール部材の劣化や蓋体を貫通する回転軸の軸部分のシール機構の不具合などが考えられる。
【0004】
一方、反応管内の圧力制御は、排気管に設けられた圧力調整バルブ例えばバタフライバルブの開度を調整することにより行われており、反応管内の気密性が悪くなると反応管内に外気が入り込む分だけ排気しなければならないことから圧力調整バルブの開度が大きくなってしまう。そこで圧力調整バルブの開度を監視し、その開度が閾値を越えたときに気密性が低下したと判断して異常を検出するようにしている。
【0005】
しかしながら基板に対する成膜を行うと排気管の内壁にも反応生成物が付着するため、排気管のコンダクタンスが小さくなり、同じ圧力を得るのに圧力調整バルブの開度が大きくなる。従って累積膜厚が大きくなってくると、コンピュータ側では、前記開度が閾値をこえるので装置の異常と判断してしまう。そこでこのような誤判断を避けるために開度の閾値を大きめに設定すると、今度は累積膜厚が小さいうちに異常が発生し、そのために前記開度が大きくなっても閾値を越えないため、異常を見落としてしまう。更に累積膜厚がかなり大きくなると、排気管のコンダクタンスが小さくなりすぎて所定の真空度まで引き切れなくなることからクリーニングを行うようにしており、前記開度が閾値を越えたときにクリーニングの報知をするようにしている。しかしこの場合においても、累積膜厚が小さいうちに異常が発生して前記開度が閾値を越えたときにもクリーニングの報知がなされるので、異常を見落とす結果になる。
【0006】
こうした異常検出の不具合は、他の部分においても起こりうる。例えば反応管の周囲に配置された加熱手段として抵抗発熱体からなるヒータが用いられるが、ヒータは予め定められた使用時間に基づいて交換するようにしていた。しかし予め定められた使用時間が到来する前にヒータに不良が発生した場合には、熱処理を行ったウエハが不良品になってしまい、例えば12インチサイズのウエハは極めて高価であることから、大きな損失を被ることになる。更にまたバッチ炉のヒータは、耐久性が大きくかつ汚染の少ない材料で構成されていること、及び基板サイズの大口径化に伴って大型化してきたことなどから、高価であり、一方ヒータの仕様で決められる耐久時間はある程度余裕を見て決められていることから、既述のように不良が発生しない場合には、実際には未だ使用できるにも拘わらず交換しており、結果として運転コストアップの一因になっている。
【0007】
このように半導体製造装置においては、装置の異常を検出するにあたって、異常を確実に検出することができないし、またいまだ装置が正常な状態であっても部品の交換やメンテナンスをしており、無駄があるという課題がある。
【0008】
半導体製造装置である縦型熱処理装置における異常監視に関しては、ヒータの寿命を予測した特許文献1があるが、電力値を長期に渡って監視してその値の変化の傾向に基づいて異常を判定しているため、装置の異常をリアルタイムあるいはほぼリアルタイムで検出することはできないし、またヒータの異常か他の異常かを判別することができない。
【0009】
【特許文献1】特開2002−352938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は装置の異常を確実に検出することができる半導体製造装置を提供することにある。本発明の他の目的は、半導体製造装置の異常を確実に検出することができるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、半導体装置を製造するために基板に対して処理を行うように構成され、監視対象の検出結果に基づいて装置の異常を検出する機能を備えた半導体製造装置において、
第1の監視対象と、この第1の監視対象の大きさに影響を与える第2の監視対象と、の値を夫々2軸(例えばX軸−Y軸)に割り当てて2軸(X−Y)座標系に作成され、正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを記憶する境界データ記憶部と、
第1の監視対象及び第2の監視対象を夫々監視する第1の監視手段及び第2の監視手段と、
これら第1の監視手段及び第2の監視手段により夫々得られた第1の監視対象の値と第2の監視対象の値とで決まる前記2軸座標系における位置が前記正常領域に含まれているか異常領域に含まれているかを判断する判断手段と、
この判断手段により前記位置が異常領域に含まれていると判断されたときに異常を知らせる異常報知手段と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
この発明のより具体的な態様としては、第1の監視対象の値と第2の監視対象の値との多数の対応する組に基づいて2軸座標系に第1の監視対象と第2の監視対象との相関データを作成する相関データ作成手段と、
この相関データ作成手段により作成された相関データに基づいて2軸座標系に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成する境界データ作成手段と、を備えた構成を挙げることができる。この構成の更に具体的な態様として、前記第1の監視対象の値と第2の監視対象の値とを記憶する装置データ記憶部を備え、
相関データ作成手段は、前記装置データ記憶部に記憶されているデータに基づいて前記相関データを作成する構成を挙げることができる。装置データ記憶部には、例えば第1の監視対象の値と第2の監視対象との値について、時系列データが記憶されており、この時系列データに基づいて相関データが作成される。
【0013】
更に本発明は、相関データを表示する表示手段を備えた構成とし、この場合表示手段は、相関データと境界データとを共通の2軸座標系に表示することが好ましい。境界データ作成手段は、近似式の種類を選択する手段と、選択された種類の近似式と前記相関データとに基づいて前記境界に対応する近似式の係数を求める手段と、を備えた構成とすることができる。
【0014】
半導体製造装置として、基板に成膜処理するための反応容器と、この反応容器に接続された排気路と、この排気路に設けられ、反応容器内の圧力を調整するための圧力調整バルブと、を備えた成膜装置である場合、例えば第1の監視対象は、設定された圧力値に対応する前記圧力調整バルブの開度であり、第2の監視対象は反応容器内で行われた成膜処理により成膜された薄膜の累積膜厚である。この種の半導体製造装置としては、例えば減圧CVD装置や常圧雰囲気で処理する成膜装置などが挙げられる。
【0015】
半導体製造装置として、基板に対して熱処理するための反応容器と、この反応容器内を加熱するために当該反応容器の周囲に設けられた抵抗発熱体からなるヒータと、このヒータの温度を検出する温度検出部と、を備えた熱処理装置である場合、例えば第1の監視対象は、前記温度検出部により検出された温度であり、第2の監視対象は前記ヒータへの供給電力である。
【0016】
半導体製造装置として、基板に対して成膜処理するための反応容器と、この反応容器内を加熱するために当該反応容器の周囲に設けられた抵抗発熱体からなるヒータと、この反応容器内の温度を検出する温度検出部と、を備え、少なくとも前記温度検出部の温度検出値に基づいてヒータの電力制御が行われる装置でアル場合、例えば第1の監視対象は、前記ヒータへの供給電力であり、第2の監視対象は反応容器内で行われた成膜処理により成膜された薄膜の累積膜厚である。
【0017】
また本発明は、保持具における基板の保持枚数であるバッチサイズを選択する選択手段を備え、選択されたバッチサイズに応じた基板の枚数を保持具に保持して反応容器内に搬入し、半導体装置を製造するために基板に対して成膜を行うように構成され、監視対象の検出結果に基づいて装置の異常を検出する機能を備えた半導体製造装置に適用する場合には、前記境界データは、バッチサイズ毎に定められ、判断手段は、第1の監視手段及び第2の監視手段により得られた第1の監視対象の値と第2の監視対象の値とで決まる前記2軸座標系における位置が、熱処理されているバッチサイズに対応する前記正常領域に含まれているか異常領域に含まれているかを判断する。また相関データ作成手段は、バッチサイズ毎に相関データは作成し、境界データ作成手段は、この相関データ作成手段により作成された相関データに基づいて2軸座標系にバッチサイズ毎に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成する。
【0018】
他の発明は、半導体装置を製造するために基板に対して処理を行うように構成された半導体製造装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
コンピュータプログラムは、第1の監視対象と、この第1の監視対象の大きさに影響を与える第2の監視対象と、の値を夫々2軸に割り当てて、2軸座標系に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成するステップと、
第1の監視手段及び第2の監視手段により得られた第1の監視対象の値と第2の監視対象の値とで決まる前記2軸座標系における位置が前記正常領域に含まれているか異常領域に含まれているかを判断するステップと、
前記位置が異常領域に含まれていると判断されたときに異常を知らせるステップと、を含むステップ群を実行するように作成されたことを特徴とする。
【0019】
前記コンピュータプログラムは、より具体的には、第2の監視対象の値を種々変えることにより取得した第1の監視対象の値と第2の監視対象の値との対応する組により2軸座標系に第1の監視対象と第2の監視対象との相関データを作成するステップと、
この相関データ相関データに基づいて2軸座標系に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成するステップと、を更に備えたことを特徴とする。
【0020】
更に他の発明は、選択されたバッチサイズに応じた基板の枚数を保持具に保持して反応容器内に搬入し、半導体装置を製造するために基板に対して熱処理を施す半導体製造装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
第1の監視対象と、この第1の監視対象の大きさに影響を与える第2の監視対象と、の値を夫々2軸に割り当てて、2軸座標系に正常領域と異常領域との境界をバッチサイズ毎に定めた境界データを作成するステップと、
第1の監視手段及び第2の監視手段により得られた第1の監視対象の値と第2の監視対象の値とで決まる前記2軸座標系における位置が、熱処理されているバッチサイズに対応する前記正常領域に含まれているか異常領域に含まれているかを判断するステップと、
前記位置が異常領域に含まれていると判断されたときに異常を知らせるステップと、を実行するように作成ことを特徴とする。
【0021】
前記コンピュータプログラムは、より具体的には、バッチサイズ毎に第2の監視対象の値を種々変えることにより取得した第1の監視対象の値と第2の監視対象の値との組により2軸座標系に第1の監視対象と第2の監視対象との相関データを作成するステップと、
この相関データ相関データに基づいて2軸座標系にバッチサイズ毎に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成するステップと、を更に備えたことを特徴とする。記憶媒体としては、フレキシブルディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク(いわゆるMO)、ハードディスク、MD、ブルーレイディスクなどを挙げることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1の監視対象と、この第1の監視対象の大きさに影響を与える第2の監視対象と、の値を夫々2軸に割り当てて2軸座標系により管理し、この座標系において正常領域と異常領域との境界を定めているので、第1の監視対象の値と第2の監視対象の値とに見合った異常領域を設定することができる。第1の監視対象の値だけを考慮して閾値を設定すると、片手落ちで正確な異常検出ができなかったが、このように2つの監視対象の値を考慮しているので、半導体製造装置の異常を確実に検出することができる。
【0023】
また第1の監視対象の値と第2の監視対象の値との種々の組により2軸座標系に相関データを作成する相関データ作成手段を設け、作成された相関データに基づいて境界データを作成するようにすれば、過去のデータの傾向に応じて適切な境界を作成することができ、より一層確実な異常検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
先ず本発明に係る半導体製造装置をバッチ式の熱処理装置である縦型減圧CVD装置(成膜装置)に適用した実施の形態について説明する。図1中1は例えば石英により縦型の円筒状に形成された反応容器である。この反応容器1の下端は、炉口として開口され、その開口部11の周縁部にはフランジ12が一体に形成されている。前記反応容器1の下方には、フランジ12の下面に当接して開口部11を気密に閉塞する、例えば石英製の蓋体13が図示しない昇降機構であるボートエレベータにより上下方向に開閉可能に設けられている。前記蓋体13の中央部には回転軸14が貫通して設けられ、その上端部には、基板保持具であるウエハボート2が搭載されている。従ってウエハボート2はボートエレベータにより、反応容器1内と、反応容器1の下方側に設けられた、ウエハWの搬出エリアであるローディングエリアとの間で昇降できることになる。
【0025】
このウエハボート2は、3本以上例えば4本の支柱21を備えており、複数枚例えば100枚の被処理基板であるウエハWを棚状に保持できるように、前記支柱21に溝(スロット)が形成されている。但し、100枚のウエハWの保持領域の内、上下両端部については複数枚のダミーウエハが保持され、その間の領域に被処理ウエハが保持されることになる。前記回転軸14の下部には、当該回転軸14を回転させる駆動部をなすモータMが設けられており、従ってウエハボート2はモータMにより回転することになる。また蓋体13の上には前記回転軸21を囲むように保温ユニット15が設けられている。
【0026】
前記反応容器1の下部のフランジ12には、反応容器1内のウエハWにガスを供給するためのガス供給部であるL字型のインジェクタ16が挿入して設けられている。インジェクタ16の基端側には、ガス供給路を介して成膜ガス供給源などが接続されている。
【0027】
また反応容器1の上方には、反応容器1内を排気するための排気ポート22が形成されており、この排気ポート22には真空排気路である排気管23の一端側が接続されているこの排気管23の他端側には真空排気手段をなす真空ポンプ24が接続されていると共に排気ポート22の近傍には反応容器1内の圧力を調整するための圧力調整部である圧力調整バルブ25が設けられている。圧力調整バルブ25は例えばバタフライバルブにより圧力を調整するように構成され、バルブ本体20の開度を調整するための駆動部26が設けられると共に、バルブ本体20の各度を検出する角度検出部27が設けられている。なおバタフライバルブの場合、開度と角度とは対応することから、以後の説明ではバルブの角度と言う表現で説明する。
【0028】
図中3は例えばコンピュータからなる制御部であり、この制御部3は、反応容器1内の圧力を検出するために例えば排気管23に設けた図示しない圧力検出部の圧力検出値が、予め設定された設定圧力になるように駆動部26に制御信号を送って前記圧力調整バルブ25の角度を制御する機能と、装置データの一つである、角度検出部27からの圧力調整バルブ25の角度の値を取り込んで記憶するなどの機能を備えている。
【0029】
反応容器1の周囲には、反応容器1内を加熱するための加熱手段である抵抗発熱体からなるヒータ17を備えた加熱炉18が設けられている。前記ヒータ17としては、通常の合金などからなる抵抗発熱体であってもよいし、あるいはコンタミネーションがなく昇降温特性が優れたカーボンワイヤー等を用いてもよい。ヒータ17は例えばウエハWの並列方向に複数(図の例では3個)に分割されていて、分割された各ヒータ17毎に電力制御部19により電力制御される。また反応容器1の外には例えば各ヒータ17の近傍には、熱電対などからなる温度検出部(外部温度検出部)10aが設けられると共に、反応容器1内における例えば保温ユニット15に温度検出部(内部温度検出部)10bが設けられる。これら温度検出部10a及び10bの温度検出値は制御部3に取り込まれ、ヒータ17の電力制御のための指令値の演算に用いられる。
【0030】
次に制御部3に関して図3を参照しながら詳述する。図3において半導体製造装置本体100とは、図1に示した成膜装置における制御部3以外の部分に相当する。即ち制御部3に対して検出信号やデータを送り、制御部3によりコントロールされる部位全体に相当する。30はバスであり、このバス30に通信部、記憶部、各プログラム格納部、CPUなどが接続されているが、図2では、これらを機能的に表現しブロック化して表している。通信部31は、半導体製造装置本体100との間で通信をおこなう部位であり、角度検出部27からの圧力調整バルブ25の角度、温度検出部10a、10bからの各温度検出値などの装置データが取り込まれると共に、圧力調整バルブ25の駆動部26、電力制御部19などに制御信号を送信する機能を有する。
【0031】
装置データ記憶部32は、通信部31から取り込まれた装置データ、例えばバルブ20の角度、内部温度、外部温度などを記憶すると共に、例えば制御指令値に基づいて演算されたヒータ17の供給電力なども記憶される。なおヒータ17の供給電力は、電力計からの電力検出値に基づいて求めるようにしてもよい。入力操作部33は、後述の相関データの作成や境界データの作成の指示を入力する部位であり、例えばキーボード及びマウスと、表示部34である例えば液晶画面またはCRT画面などのソフトスイッチとの組み合わせからなる。異常報知手段である異常報知部35は、装置の異常と判断されたときに異常をオペレータに知らせるための警告灯、警報音出力部、画面への異常発生表示などを行う部位などが相当する。
【0032】
累積膜厚管理部36は、例えば既に成膜処理が行われたウエハの目標膜厚の合計値を、それまでに行われた成膜処理の処理レシピ(図2では処理レシピは省略してある)に基づいて計算しておく部位である。目標膜厚の合計値である累積膜厚とは、この例では2つある。その一つは、新品の反応容器1の使用開始時点あるいは反応容器1内をクリーニングして壁面の付着物を除去した後に行われる成膜処理の各々の目標膜厚の合計値であり、その時点の反応容器1の壁面に付着している付着物の膜厚に対応する。他の一つは、新品の排気管23の使用開始時点あるいは排気管23内をクリーニングして壁面の付着物を除去した後に行われる成膜処理の各々の目標膜厚の合計値である。この合計値はその時点の排気管23の壁面に付着している付着物(反応生成物)の膜厚の数値自体とは等しくないが、概略的には対応関係(比例関係)にあるので、目標膜厚の合計値を排気管23の累積膜厚として評価することに問題はない。
【0033】
プログラム格納部4は、相関データ作成プログラム41、境界データ作成プログラム42、判断(異常検出)プログラム43を備えている。相関データとは、第1の監視対象と、この第1の監視対象の大きさに影響を与える第2の監視対象と、の値を夫々2軸に割り当てて2軸座標系に作成されたデータであり、第2の監視対象の値を種々変えて第1の監視対象の値と第2の監視対象の値との組を2軸座標系にプロットしたものである。互いに相関する、より詳しくは第1の監視対象の値に第2の監視対象の値が影響を与える関係にある第1の監視対象と第2の監視対象の組としては、例えば次の例を挙げることができる。
【0034】
第1の監視対象: 第2の監視対象
圧力調整バルブ25の角度 累積膜厚
外部温度検出値 ヒータ17の電力
ヒータ17の電力 累積膜厚

なお第1の監視対象及び第2の監視対象が夫々圧力調整バルブ25の角度及び累積膜厚である場合、第1の監視手段及び第2の監視手段は、夫々角度検出部27及び累積膜厚管理部36であり、第1の監視対象及び第2の監視対象が夫々外部温度検出値及びヒータ電力である場合、第1の監視手段は温度検出部30aに相当し、第2の監視手段は例えば図示しない電力計あるいは制御部3内の電力指令値に基づいて電力値を計算するプログラムなどに相当する。
第1の監視対象の値と第2の監視対象の値は、半導体製造装置本体100から通信部31を介して例えば1秒間隔で装置データ記憶部32に取り込まれ、このためウエハWに対して成膜処理を行っている間の監視対象の時々刻々のデータが記憶されると共に、各成膜処理毎の監視対象の評価値も作成できる。1回の成膜処理を「RUN」という言い方をすると、各RUNの評価値は、例えばプロセスを開始してから予め設定した時間帯、例えばプロセスを行っている間の監視対象の平均値、あるいは標準偏差などのデータとして取り扱うことができる。
【0035】
相関データ作成プログラム41は、例えば各RUNの評価値である第1の監視対象の値と第2の監視対象の値とに基づいて相関データを作成するものである。例えば第1の監視対象が累積膜厚であり、第2の監視対象が圧力調整バルブ25の角度であるとすると、各RUNにおける累積膜厚と圧力調整バルブ25の角度(例えばそのRUNにおける角度の平均値)との値の組を取り出して、X座標及びY座標に夫々累積膜厚及び角度をとった2軸座標系にプロットしていくことになる。例えば10回目のRUNであれば、9回目のRUNまでの累積膜厚と10回目のRUNにおけるバルブ角度との組ということになる。ここでいう10回目とは、排気管23が新品あるいはクリーニングした状態から始めた処理回数に相当する。このように相関データは、例えば装置データ記憶部32に記憶された例えば各RUNにおける第1の監視対象の値及び第2の監視対象の値の対応する組(各評価値の組)ついての時系列データに基づいて作成される。
【0036】
図3(a)は、このようにして作成した圧力調整バルブ25の角度と累積膜厚とを2軸、例えばX軸−Y軸に夫々割り当てて、これらの値の関係をX−Y座標系に示した相関データである。なお各データは同じ圧力設定値下における値であり、例えば同じ成膜処理の設定圧力下においてとったデータである。この相関データから分かるように累積膜厚が増えるにつれて圧力調整バルブ25の角度は大きくなっていくが、累積膜厚が大きい領域に入ると、累積膜厚の増加に対するバルブの角度の増加率が急激に大きくなっていることが伺える。このようにバルブの角度が累積膜厚に応じて大きくなるのは、既述したように排気管23に付着した付着物によりコンダクタンスが小さくなるため、同じ圧力を得ようとすると、バルブの角度をより大きくする必要があることに基づく。
【0037】
このような相関データを予め作成しておけば、圧力調整バルブ25の角度と累積膜厚との対応する組できまるプロットがこのデータ群から外れた場合には、実際にはこのデータ群よりも上方側に位置した場合には、異常であると判断できる。境界データ作成プログラム42は、境界データ作成手段に相当するものであり、図3(a)の相関データに基づいて正常領域と異常領域との間の境界を作成するためのプログラムである。この境界とは、例えば図3(b)に示すようにデータ群の上限ラインと下限ラインとを規定する2つの線図L1、L2であり、プロットがL1よりも上にあるか、L2よりも下にある場合には異常と判定される。またこの例では、累積膜厚が大きい領域において、線図L1、L2の上部同士を結んで水平な線を形成し、この線を越えると異常領域として取り扱っている。圧力調整バルブ25の角度が大きくなると、つまり排気管3を完全に塞いだ位置から90度回転する位置に近くなると、圧力制御を正確に行えなくなることから、クリーニングを行うようにしており、このクリーニングポイントも異常領域として取り扱っている。
境界の設定の手法について図4を参照しながら具体例を挙げると、例えば入力操作部を兼用する画面において、相関データを表示させ、オペレータがそのデータ群に相応しいと思われる近似式を選択し、境界データ作成プログラム42に組み込まれた演算ステップによりその近似式における係数を求めて境界(管理値)線が作成される。近似式としては、例えば1〜7次式、対数式、指数関数、楕円を挙げることができるが、これに限られるものではない。図3(b)は相関データと境界とを同時に表示したものであるが、相関データと境界データは境界データ記憶部を兼ねた処理データ記憶部5内に記憶される。なお記載の煩雑さを避けるために各データに符号は割り当てていない。なお上述の相関データは、相関データが適用される当該装置における過去の実績データであってもよいし、当該装置の同種の他の装置の実績データを利用してもよい。またこの例の相関データは、設定圧力毎に作成される。
【0038】
プログラム格納部4内に格納されている判断手段に相当する判断プログラム43は、装置データ記憶部32に取り込まれるバルブの角度と累積膜厚管理部36で管理される累積膜厚とに基づいて、それらの値の組が例えば図3(b)に示されている境界データと対応させて正常領域に入っているのか、異常領域に入っているのかの判断を行うプログラムである。またこの判断プログラム43は、異常であると判断したときには、異常報知部35に異常報知を行うように指示すると共に、異常データを処理データ記憶部5に記憶する。
【0039】
また相関データ作成プログラム41は、バルブの角度と累積膜厚との相関データだけでなく、装置データ記憶部32に記憶された過去のデータに基づいて、 温度検出部10aの温度検出値である外部温度検出値とヒータ17の電力値との相関データや累積膜厚とヒータ17の電力値との相関データを同様にして作成する。図5(a)は外部温度検出値とヒータ17の電力値との相関データを示しており、これらはヒータ17の供給電力を変えれば温度が変わる関係にあり、境界を決める近似式としては例えば楕円を選択することができる。。図5(b)はこの場合の相関データと境界とを示す図である。
【0040】
更にヒータ17の電力値と累積膜厚との間にも相関がある。ヒータ17の電力制御は温度検出部10bによる反応容器1内の内部温度検出値も考慮してコントロールされていることから、ヒータ17の発熱量と内部温度との対応関係は、反応容器1の内壁に付着する薄膜の膜厚により変わってくる。即ちヒータ17からの輻射熱は反応容器1の内壁に付着する薄膜に遮られるので、累積膜厚が大きくなると、反応容器1内を同じ温度に加熱しようとすると、発熱量を大きく(供給電力を大きく)しなければならない。以上の説明では、単にヒータ17という記載で済ませているが、実際には反応容器1内は温度制御されるべきゾーンが複数に分割されていて、各ゾーンに対応するヒータ17(図1の例では上段、中段、下段のヒータ)毎に相関データが作成される。
【0041】
ここで前記各プログラム41〜43は、記憶媒体、例えばフレキシブルディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク(いわゆるMO)などに格納され、制御部3であるコンピュータにインストールされ、プログラム格納部4に格納される。
【0042】
次に上述の実施の形態の作用について述べると、先ず半導体装置例えば半導体集積回路を製造するための基板であるウエハWを図示しない搬送アームにより所定枚数ウエハボート4に棚状に載置して、図示しないボートエレベータを上昇させることにより反応容器1内に搬入し、フランジ22の下端開口部を蓋体13により塞いだ後、例えば予め設定されたプロセス温度に安定させる。
【0043】
そして反応容器1内を圧力調整バルブ25を全開にしていわゆる引き切りとした後、インジェクタ16から処理ガスを反応容器内2に所定の流量で供給すると共に圧力調整バルブ25により予め定められた処理圧力になるようにその角度(開度)が調整される。より詳しく述べると、制御部3内は、処理をおこなうためのレシピ(図示せず)が格納されていて、そのレシピに書かれている設定圧力を読み出し、例えば排気管23に設けられている図示しない圧力検出部の圧力検出値と設定圧力とに基づいて、圧力調整バルブ25のアクチェータに相当する駆動部26にバルブ調整信号を送ってバルブ20の角度を調整する。
【0044】
また温度制御に関しては、制御部3は温度検出値10a及び10bから夫々温度検出値を取り込み、その温度検出値と前記レシピに書かれている設定温度とに基づいて、電力制御部19に制御信号である電力指令値を出力し、反応容器1の処理雰囲気が設定温度になるようにコントロールされる。こうして反応容器1内が予め設定された加熱雰囲気、減圧雰囲気に維持され、ウエハWに対して成膜処理が行われ、その後、反応容器1内をパージガスで置換した後、ウエハボート2が反応容器1から搬出されて一連のプロセスが終了する。
【0045】
一方、既述したように処理データ記憶部40には、図3〜図5に示すように相関データ及び境界データが記憶されており、判断プログラム41は、装置データ記憶部32に取り込まれる装置データと相関データの境界データとに基づいて装置の異常を判断する。例えば装置本体100側から装置データ記憶部32に取り込まれる圧力調整バルブ25の角度(角度検出部37からの角度検出値)の値、例えば刻々と取り込まれる角度の値の移動平均値を評価値である角度の検出値として取扱い、累積膜厚管理部36にて管理されている当該RUNの一つ前のRUNまでの累積膜厚値と角度の検出値との値で決まる図3(b)における座標位置を求め、この位置が正常領域から外れているか否か、つまり上側と下側の境界線L1、L2の間に含まれているか否かを判断する。この場合には、設定圧力毎に相関データが作成され、実施される成膜処理の設定圧力に対応する相関データに係る境界データが用いられることになる。
【0046】
そして異常領域に含まれていると判断したときには異常報知部35に指示を出して例えばアラームが発せられる。この場合、反応容器1内の気密が不十分であり、外気が反応容器1内に入り込んでいる可能性があるので、気密部分の点検を行うなどの処置がとられることになる。また2つの境界線L1、L2が立ち上がっている、累積膜厚が大きい領域では、バルブの角度が予め定めた閾値よりも大きくなったときにはクリーニングを行う時期にきていることを知らせるアラームが発せられる。これは、それ以降に成膜処理を実施すると、バルブの角度が90度に近くなって圧力制御が正確に実施できなくなるからである。
【0047】
更にまた、他の相関データに関しても境界に基づいて異常の有無の判断がなされる。例えば装置データ記憶部32に温度検出部10aから取り込まれた外部温度検出値とヒータ17の供給電力値とについても、移動平均などのデータ処理により評価値を求めてそれらを夫々外部温度検出値、供給電力値として取扱い、それらの値の組で決まる、図5(b)における座標位置を求め、その位置が境界線(この例では楕円)の中にあるのか外にあるのかを判断して、外にある場合には異常報知部35を介してアラームを発生させる。この場合には、ある発熱量を得るのに異常に高い電力を必要とすることから、ヒータ17の寿命が近いなどの原因が考えられる。この例の利点としては、種々の成膜処理を行う場合に、各設定温度がRUNによって異なっていても、ヒータ17に関する異常を検出できる点が挙げられる。
【0048】
そしてまた累積膜厚とヒータ17の供給電力値とについても、同様にして座標位置を求め、その位置正常領域にあるのか異常領域にあるのかを判断し、異常領域に有ると判断した場合にはアラームを発生させる。この場合には、設定温度毎に相関データが作成され、実施される成膜処理の設定温度に対応する相関データに係る境界データが用いられることになる。異常の原因としては、ヒータ17の寿命が近いなどの原因が考えられる。
【0049】
上述の実施の形態によれば、第1の監視対象と、この第1の監視対象の大きさに影響を与える第2の監視対象と、の各値を考慮しているので、つまり両者の値をプロットした相関データに基づいて境界を定め、その境界に基づいて正常、異常を判断しているので、半導体製造装置の異常を確実に検出することができる。例えば圧力調整バルブ25の角度と累積膜厚との相関データを利用することにより、反応容器1内のリークを確実に検出することができるし、また異常であるかクリーニングのタイミングであるかの区別ができるので、排気管23の内壁の付着物の膜厚が大きくなってクリーニングをしなければならない、そのタイミングの直前まで処理を行うことができ、メンテナンスサイクルを長くとることができ、装置のダウンタイムを抑えることができる。
【0050】
更にヒータ17の電力と累積膜厚あるいはヒータ17の温度との相関データを利用することにより、ヒータ17の不具合を確実に検出することができる。またヒータ17の使用寿命が近いことをあるいは使用寿命が到来していることを把握できることから、ヒータ17を一定時間使用したときに交換する手法に比べて、ヒータ17をいわば使い切ることができ、このためメンテナンスサイクルを長くとることができると共に、ヒータ17が高価であることから、運転コストを抑えることに寄与する。
【0051】
次に本発明の他の実施の形態に付いて説明する。この実施の形態では、図1の縦型減圧CVD装置が、バッチ処理を行う基板であるウエハWの枚数を選択できるようになっている。つまり保持具であるウエハボート21にウエハWを満載して処理する場合に限らず、最大搭載枚数よりも少ない枚数で処理できるようになっている。図6は、ウエハWの一括処理枚数とウエハボート21におけるウエハWの保持領域との関係の一例を模式的に示すものであり、この例では、3通りのバッチサイズ(一括処理枚数)を設定できるようになっている。バッチサイズが50枚の場合には、ウエハボート21の下段側から50枚が積み込まれ、バッチサイズが100枚の場合には、下段側から100枚が積み込まれ、ウエハWが保持されている領域の上方は空領域になっている。なおウエハボート21の上端部及び下端部側には、ダミーウエハが搭載されていてダミー領域を形成している。またバッチサイズが150枚の場合には、ウエハボート21にウエハWが満載された状態である。
【0052】
図7は、図1の縦型減圧CVD装置を用い、バッチサイズを種々変えて同一の処理条件で成膜処理を行って、成膜処理中の圧力調整バルブ25の角度(この例では成膜処理中の平均値としている)をプロットしたものであり、横軸にはRUN回数(日付が変わっていくので日時として記載してある)をとっている。即ち○月×日にバッチサイズ50枚について処理を行い、その後、バッチサイズ100枚について処理を行い、しかる後、バッチサイズ150枚について処理を行い、といった具合にバッチサイズを順次変えながら連続して処理を行い、各RUNにおける圧力調整バルブ25の角度を縦軸にとっている。このような処理を行うと、バッチサイズによってプロット群が変わってくる。図7では、バッチサイズが大きくなる程、バルブの角度は大きくなっている、つまりグラフが上側に位置している。
【0053】
そしてこの図7のデータに基づいて、横軸に累積膜厚をとり、縦軸にバルブの角度をとった特性図であり、各バッチサイズ毎にグラフ化したものである。ただし実際のデータでは、図3に示したように各バッチサイズにおけるプロット群には幅があるが、図7が煩雑化するため、データを絞って線図として表されるように略解して示している。このようにバッチサイズが異なると、累積膜厚とバルブの角度との相関が変わってくる。その理由としては、バッチサイズにより反応容器1内の空間容積が変わってくることなどを挙げることができる。従って正常領域と異常領域との境界もバッチサイズにより変わってくる。
【0054】
このような装置を取り扱う場合には、制御部3の構成は図9のように表される。この制御部3は、成膜処理を行うバッチサイズを選択するためのバッチサイズ選択部37を備えている。このバッチサイズ選択部37は、例えば表示画面に基づいて50枚、100枚、150枚の中からバッチサイズを選択できるように構成されており、バッチサイズが選択されると、制御部3は図示しない移載室内の搬送アームに指示を出して、そのバッチサイズ(保持枚数)に応じた枚数のウエハWをウエハボート2に移載する。
【0055】
また相関データ作成プログラム41は、例えば図7に示すデータに基づいてバッチサイズ毎に相関データを作成し、処理データ記憶部40に記憶するように構成されている。境界データ作成プログラム42は、バッチサイズ毎につまり図8に示したバッチサイズ毎の相関データに基づいて、正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成するように構成されている。図8の相関データは、便宜上ばらつきを絞って表示していることから、これらプロット群に基づいて作成される境界は線図として表され、従って図8には相関データと境界データとが同時に表示されている。相関データに基づいて境界データを作成する手法は、第1の実施の形態のように例えば図4の画面を利用し、近似式における係数を求めて境界(管理値)線を求めることができる。
【0056】
判断プログラム43は、選択されているバッチサイズに対応する境界データと、装置データ記憶部32に取り込まれるバルブの角度及び累積膜厚管理部36で管理される累積膜厚と、に基づいて、それらの値の組が、選択されているバッチサイズに対応する前記正常領域に含まれているか異常領域に含まれているかを判断し、異常であると判断したときには、異常報知部35に異常報知を行うように指示する。例えば、今実施されている成膜処理のバッチサイズが50枚であれば、図8(a)に示された線図よりも上にあるか否かを判断し、上に位置していれば異常と判断する。なお実際には線図に対して所定距離離れた領域に位置したときに異常と判断されるようにマージンを持たせてある。
【0057】
更にまたヒータ温度とヒータ電力とについても相関があり、そして累積膜厚とヒータ電力とについても相関があるが、これらの監視対象の値の組についても、バッチサイズによって相関関係が変わっており、各バッチサイズの相関データに基づいて作成された境界データと、選択されたバッチサイズにおける監視対象の組で決まる座標位置とに基づいて、監視対象の値の組が正常領域に含まれているか異常領域に含まれているかを判断されることとなる。即ち、第1の監視対象及び第2の監視対象が、外部温度検出値及びヒータ17の電力の組である場合、ヒータ17の電力及び累積膜厚である場合のいずれにおいても、バッチサイズ毎に相関データ及び境界データが作成され、バッチサイズに応じた境界データに基づいて異常が判断される点を除けば、第1の実施の形態と同様の異常判断処理が行われる。
【0058】
このような第2の実施の形態によれば、バッチサイズを設定できる装置において、正確な異常検知を行うことができ、また第1の実施の形態と同様にメンテナンスサイクルを長くとることができ、装置のダウンタイムを抑えることができる。
【0059】
以上の説明において、圧力調整バルブ25の角度と累積膜厚との相関データを利用して異常を判断する半導体製造装置としては、減圧CVD装置に限らず例えば常圧(わずかに大気圧よりも低い微減圧状態も含む)で成膜を行う装置などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の半導体製造装置を縦型熱処理装置である減圧CVD装置に適用した第1の実施の形態の構成と制御系とを示す構成図である。
【図2】第1の実施の形態に用いられる制御部を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態に用いられる圧力調整バルブの角度と累積膜厚との相関関係、及び正常領域と異常領域との境界を示す特性図である。
【図4】入力画面の一例を示す説明図である。
【図5】第1の実施の形態に用いられる温度検出値とヒータ電力との相関関係、及び正常領域と異常領域との境界を示す特性図である。
【図6】バッチサイズの種類を模式的に示す説明図である。
【図7】第2の実施の形態において取得される、バッチサイズを種々変えて処理回数と圧力調整バルブの角度との関係を示す特性図である。
【図8】バッチサイズ毎の圧力調整バルブの角度と累積膜厚との相関関係、及び正常領域と異常領域との境界を示す特性図である。
【図9】第2の実施の形態に用いられる制御部を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0061】
1 反応容器
10a 外部温度検出部
10b 内部温度検出部
17 ヒータ
19 電力制御部
2 ウエハボート
22 排気ポート
23 真空排気路をなす排気管
25 圧力調整バルブ
26 駆動部
27 角度検出部
3 制御部
32 装置データ記憶部
35 異常報知部
36 累積膜厚管理部
40 処理データ記憶部
41 相関データ作成プログラム
42 境界データ作成プログラム
43 判断プログラム












【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置を製造するために基板に対して処理を行うように構成され、監視対象の検出結果に基づいて装置の異常を検出する機能を備えた半導体製造装置において、
第1の監視対象と、この第1の監視対象の大きさに影響を与える第2の監視対象と、の値を夫々2軸に割り当てて2軸座標系に作成され、正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを記憶する境界データ記憶部と、
第1の監視対象及び第2の監視対象を夫々監視する第1の監視手段及び第2の監視手段と、
これら第1の監視手段及び第2の監視手段により夫々得られた第1の監視対象の値と第2の監視対象の値とで決まる前記2軸座標系における位置が前記正常領域に含まれているか異常領域に含まれているかを判断する判断手段と、
この判断手段により前記位置が異常領域に含まれていると判断されたときに異常を知らせる異常報知手段と、を備えたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項2】
第1の監視対象の値と第2の監視対象の値との多数の対応する組に基づいて2軸座標系に第1の監視対象と第2の監視対象との相関データを作成する相関データ作成手段と、
この相関データ作成手段により作成された相関データに基づいて2軸座標系に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成する境界データ作成手段と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記第1の監視対象の値と第2の監視対象の値とを記憶する装置データ記憶部を備え、
相関データ作成手段は、前記装置データ記憶部に記憶されているデータに基づいて前記相関データを作成することを特徴とする請求項2記載の半導体製造装置。
【請求項4】
相関データを表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項2または3記載の半導体製造装置。
【請求項5】
表示手段は、相関データと境界データとを共通の2軸座標系に表示するものであることを特徴とする請求項4記載の半導体製造装置。
【請求項6】
境界データ作成手段は、近似式の種類を選択する手段と、選択された種類の近似式と前記相関データとに基づいて前記境界に対応する近似式の係数を求める手段と、を備えたことを特徴とする請求項4または5記載の半導体製造装置。
【請求項7】
基板に成膜処理するための反応容器と、この反応容器に接続された排気路と、この排気路に設けられ、反応容器内の圧力を調整するための圧力調整バルブと、を備え、
第1の監視対象は、設定された圧力値に対応する前記圧力調整バルブの開度であり、第2の監視対象は反応容器内で行われた成膜処理により成膜された薄膜の累積膜厚であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項8】
基板に対して熱処理するための反応容器と、この反応容器内を加熱するために当該反応容器の周囲に設けられた抵抗発熱体からなるヒータと、このヒータの温度を検出する温度検出部と、を備え、
第1の監視対象は、前記温度検出部により検出された温度であり、第2の監視対象は前記ヒータへの供給電力であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項9】
基板に対して成膜処理するための反応容器と、この反応容器内を加熱するために当該反応容器の周囲に設けられた抵抗発熱体からなるヒータと、この反応容器内の温度を検出する温度検出部と、を備え、少なくとも前記温度検出部の温度検出値に基づいてヒータの電力制御が行われ、
第1の監視対象は、前記ヒータへの供給電力であり、第2の監視対象は反応容器内で行われた成膜処理により成膜された薄膜の累積膜厚であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項10】
保持具における基板の保持枚数であるバッチサイズを選択する選択手段を備え、選択されたバッチサイズに応じた基板の枚数を保持具に保持して反応容器内に搬入し、半導体装置を製造するために基板に対して成膜を行うように構成され、監視対象の検出結果に基づいて装置の異常を検出する機能を備えた半導体製造装置において、
第1の監視対象と、この第1の監視対象の大きさに影響を与える第2の監視対象と、の値を夫々2軸に割り当てて2軸座標系に作成され、正常領域と異常領域との境界をバッチサイズ毎に定めた境界データを記憶する境界データ記憶部と、
第1の監視対象及び第2の監視対象を夫々監視する第1の監視手段及び第2の監視手段と、
これら第1の監視手段及び第2の監視手段により得られた第1の監視対象の値と第2の監視対象の値とで決まる前記2軸座標系における位置が、熱処理されているバッチサイズに対応する前記正常領域に含まれているか異常領域に含まれているかを判断する判断手段と、
この判断手段により前記位置が異常領域に含まれていると判断されたときに異常を知らせる異常報知手段と、を備えたことを特徴とする半導体製造装置。
【請求項11】
第1の監視対象の値と第2の監視対象の値との多数の対応する組に基づいて2軸座標系に第1の監視対象と第2の監視対象との相関データをバッチサイズ毎に作成する相関データ作成手段と、
この相関データ作成手段により作成された相関データに基づいて2軸座標系にバッチサイズ毎に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成する境界データ作成手段と、を備えたことを特徴とする請求項10記載の半導体製造装置。
【請求項12】
各バッチサイズにおける前記第1の監視対象の値と第2の監視対象の値とを記憶する装置データ記憶部を備え、
相関データ作成手段は、前記装置データ記憶部に記憶されているデータに基づいてバッチサイズ毎に前記相関データを作成することを特徴とする請求項11記載の半導体製造装置。
【請求項13】
バッチサイズ毎に相関データを表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項11または12記載の半導体製造装置。
【請求項14】
表示手段は、バッチサイズ毎に相関データと境界データとを共通の2軸座標系に表示するものであることを特徴とする請求項13記載の半導体製造装置。
【請求項15】
境界データ作成手段は、近似式の種類を選択する手段と、選択された種類の近似式と前記相関データとに基づいて前記境界に対応する近似式の係数を求める手段と、を備えたことを特徴とする請求項13または14に記載の半導体製造装置。
【請求項16】
反応容器に接続された排気路と、この排気路に設けられ、反応容器内の圧力を調整するための圧力調整バルブと、を備え、
第1の監視対象は、設定された圧力値に対応する前記圧力調整バルブの開度であり、第2の監視対象は反応容器内で行われた成膜処理により成膜された薄膜の累積膜厚であることを特徴とする請求項10ないし15のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項17】
反応容器内を加熱するために当該反応容器の周囲に設けられた抵抗発熱体からなるヒータと、反応容器内の温度を検出する温度検出部と、を備え、
第1の監視対象は、前記温度検出部により検出された温度であり、第2の監視対象は前記ヒータへの供給電力であることを特徴とする請求項10ないし15のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項18】
反応容器内を加熱するために当該反応容器の周囲に設けられた抵抗発熱体からなるヒータと、反応容器内の温度を検出する温度検出部と、を備え、
第1の監視対象は、第2の監視対象は前記ヒータへの供給電力であり、第2の監視対象は反応容器内で行われた成膜処理により成膜された薄膜の累積膜厚であることを特徴とする請求項10ないし15のいずれか一つに記載の半導体製造装置。
【請求項19】
半導体装置を製造するために基板に対して処理を行うように構成された半導体製造装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
第1の監視対象と、この第1の監視対象の大きさに影響を与える第2の監視対象と、の値を夫々2軸に割り当てて、2軸座標系に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成するステップと、
第1の監視手段及び第2の監視手段により得られた第1の監視対象の値と第2の監視対象の値とで決まる前記2軸座標系における位置が前記正常領域に含まれているか異常領域に含まれているかを判断するステップと、
前記位置が異常領域に含まれていると判断されたときに異常を知らせるステップと、を含むステップ群を実行するように作成したコンピュータプログラムを格納したことを特徴とする記憶媒体。
【請求項20】
コンピュータプログラムは、第2の監視対象の値を種々変えることにより取得した第1の監視対象の値と第2の監視対象の値との対応する組の多数により2軸座標系に第1の監視対象と第2の監視対象との相関データを作成するステップと、この相関データに基づいて2軸座標系に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成するステップと、を更に備えたことを特徴とする請求項19記載の記憶媒体。
【請求項21】
選択されたバッチサイズに応じた基板の枚数を保持具に保持して反応容器内に搬入し、半導体装置を製造するために基板に対して熱処理を施す半導体製造装置に用いられるコンピュータプログラムを格納した記憶媒体であって、
第1の監視対象と、この第1の監視対象の大きさに影響を与える第2の監視対象と、の値を夫々2軸に割り当てて、2軸座標系に正常領域と異常領域との境界をバッチサイズ毎に定めた境界データを作成するステップと、
第1の監視手段及び第2の監視手段により得られた第1の監視対象の値と第2の監視対象の値とで決まる前記2軸座標系における位置が、熱処理されているバッチサイズに対応する前記正常領域に含まれているか異常領域に含まれているかを判断するステップと、
前記位置が異常領域に含まれていると判断されたときに異常を知らせるステップと、を含むステップ群を実行するように作成されたコンピュータプログラムを格納したことを特徴とする記憶媒体。
【請求項22】
バッチサイズ毎に第2の監視対象の値を種々変えることにより取得した第1の監視対象の値と第2の監視対象の値との対応する組により2軸座標系に第1の監視対象と第2の監視対象との相関データを作成するステップと、
この相関データ相関データに基づいて2軸座標系にバッチサイズ毎に正常領域と異常領域との境界を定めた境界データを作成するステップと、を更に備えたことを特徴とする請求項21記載のコンピュータプログラムを格納した記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−186280(P2006−186280A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−381364(P2004−381364)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】