説明

半導体集積回路における容量付加方法および半導体集積回路

【課題】 FIB加工により付加する容量の容量値を把握できるようにする。
【解決手段】 デバイス周辺部の空き領域に配置されたFIB加工テスト用のインバータ7の入力端子にプローブ用入力パッド4を接続すると共に出力端子にプローブ用出力パッド5を接続し、該プローブ用出力パッド5に接続されるようにFIB加工により所定の形状寸法のパターンの容量C1を形成し、インバータ7を動作可能状態に設定してから、プローブ用入力パッド4に第1のプローブを介して信号を入力すると共にプローブ用出力パッド5から第2のプローブを介して出力信号を得て、該出力信号の実際の応答遷移時間と予め得ておいたインバータ7の応答遷移時間と容量値の関係特性とから容量C1の容量値を得て、該得た容量値の容量C1の前記パターンに基づき所望の箇所に所望の容量値の容量を付加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容量の付加およびその容量の容量値の制御を行う半導体集積回路における容量付加方法およびそれを実現するための半導体集積回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来では、遅延調整等を目的としてFIB(集束イオンビーム)加工によって半導体集積回路に対して容量を付加する場合、当該容量を付加すべき配線ノードを当該半導体集積回路のデバイス表面まで下層メタルやビアによって単純に引き出しておいてから、その引き出したノードに対して長時間をかけて絶縁膜および導体金属を堆積していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記の手法では、容量の形成は問題なく行えるものの、その容量値を制御することが困難で、ロジック回路上の遅延調整やタイミング調整、あるいはアナログ回路上での位相補償による回路不具合改善に有効な定数を絞り込むことができなかった。つまり、配線ノードにどの程度の容量値の容量がFIB加工により付加されたかを、定量的に把握できなかった。
【0004】
本発明の目的は、FIB加工により付加する容量の容量値を把握できるようにした半導体集積回路における容量付加方法およびそれを実現するための半導体集積回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の容量付加方法は、デバイス周辺部の空き領域にFIB加工テスト用の論理ゲートを配置し、該論理ゲートの入力端子にプローブ用入力パッドを接続すると共に出力端子にプローブ用出力パッドを接続し、該プローブ用出力パッドに接続されるようにFIB加工により所定の形状寸法のパターンの容量を形成し、前記論理ゲートを動作可能状態に設定してから、前記プローブ用入力パッドに第1のプローブを介して信号を入力すると共に前記プローブ用出力パッドから第2のプローブを介して出力信号を得て、該出力信号の実際の応答遷移時間と予め得ておいた前記論理ゲートの応答遷移時間と容量値の関係特性とから前記容量の容量値を得、該得た容量値の容量の前記パターンに基づき所望の箇所に所望の容量値の容量を付加することを特徴とする。
【0006】
また、本発明の半導体集積回路は、デバイス周辺部の空き領域に配置されたFIB加工テスト用の論理ゲートと、該論理ゲートの入力端子に接続されたプローブ用入力パッドと、前記論理ゲートの出力端子に接続されたプローブ用出力パッドとを具備することを特徴とする。
【0007】
ここで、前記プローブ用入力パッドおよび前記プローブ用出力パッドは、プローブ針当て時の横滑り防止ストッパ形状をもつよう形成されていることが望ましい。
【0008】
また、前記プローブ用入力パッドと前記論理ゲートの入力端子との接続および前記プローブ用出力パッドと前記論理ゲートの出力端子との接続は、下層メタルおよびビアによって行われていることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、出力遷移特性が既知(シミュレーション上で計算可能、以下同じ)の論理ゲートを配置しその出力側にFIB加工によって付加容量を形成するので、その付加容量の容量値を知ることが可能となり、これによって容量値が明らかになった容量を所望の箇所に配置することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明では、出力遷移特性が既知のFIB加工テスト用の論理ゲートを、半導体集積回路のデバイス周辺部の空き領域に配置する。また、その論理ゲートの入力端子、出力端子はプロービングが容易となるように、デバイス上層部までビア(Stacked Via等)等で引き上げておく。そして、FIB加工で容量を形成して、その容量を論理ゲートによって駆動させ、その論理ゲートの出力遷移時間をモニタすることで、容量の値を定量的に計測する。これによって、FIB加工の条件出しが可能となるので、これを参考に所望の箇所に所望の容量値の容量をFIB加工により配置することが可能となる。以下、詳しく説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は半導体集積回路デバイスの上面の一部を示す図であって、1はリング形状のVDD電極配線(I/O上の電源ライン)、2はVDD電極配線1の外側に形成されたリング形状のGND電極配線(接地ライン)である。3はGND電極配線2の外側の空き領域に形成された入出力用パッド、4はプローブ用入力パッド、5はプローブ用出力パッド、6はインバータの高電位電源接続用電極であり、いずれも上層メタルによりデバイス上面に配置されている。プローブ用入力パッド4とプローブ用出力パッド5の形状は、プローブ針当て時の横滑り防止ストッパ用に適したコ形状となっているが、L字形状であってもよく、また針当て方向の自由度を上げるためにはX形状としてもよい。
【0012】
7はGND電極配線2の外側の空き領域に形成された論理ゲートとしてのCMOSインバータであって、共通のゲート電極71、PMOSFETのソース72、PMOSFETのドレイン73、NMOSFETのソース74、NMOSFETのドレイン75を備えている。そして、ゲート電極71は下層メタル81とビア91,92を介してプローブ入力用パッド4に接続されている。また、PMOSFETのソース72は下層メタル82とビア93,94によって高電位電源接続用電極6に接続されている。また、PMOSFETのドレイン73とNMOSFETのドレイン75は下層メタル83とビア95〜97を介してプローブ用出力パッド5に接続されている。また、NMOSFETのソース74は下層メタル84とビア98を介してGND電極配線2に接続されている。このように、インバータ7の各端子部分はビアや下層メタルによってVDD電極配線1やGND電極配線2と同じ上層に引き上げられている。
【0013】
以下にFIBによるテスト容量の付加について説明する。まず、上記したようにデバイス周辺の空き領域に、プローブ用入力パッド4、プローブ用出力パッド5、高電位電源接続用電極6、および論理ゲートとしてのインバータ7を予め配置しておく。このとき、インバータ7のNMOSFETのソース84も予め下層メタル84とビア98によってGND電極配線2と接続しておく。
【0014】
次に、FIB加工により、インバータ7の高電位電源接続用電極6とVDD電極配線1との間に電源電極101を形成する。このとき、GND電極配線2に対しては絶縁膜により絶縁をとる。
【0015】
また、FIB加工によりGND電極配線2の上面に図示しない絶縁膜を堆積し、さらにその上にFIB加工によりリード電極102を形成し、さらに容量電極103を形成して容量C1を形成する。また、容量電極104も同様にFIB加工により形成して容量C2を形成する。容量電極103,104は同じ形状大きさのパターンとする。
【0016】
図2は以上のFIB加工前とFIB加工後のインバータ部分の回路を示す図である。FIB加工前では、図2(a)に示すように、インバータ7の高電位電源接続用電極6はオープンになっているが、加工後では、図2(b)に示すように、電源電極101によりVDD電極配線1に接続され、プローブ用出力パッド5には容量電極103,104により容量C1,C2が付加される。
【0017】
以上のように容量C1を形成したときと、容量C1+C2を形成したときのそれぞれについて、プローブ用入力パッド4とプローブ用出力パッド5の双方に対してプローブの針当てを行うことにより、インバータ7に対して外部からパルス信号を入力させ、その出力波形の遷移時間(例えば、最大電圧の10%〜90%の立上り遷移時間)を観測する。図3には、容量がC1のみ場合の特性P1とC1+C2の場合の特性P2を示した。特性P1、P2の立上り遷移時間はそれぞれTr1、Tr2である。
【0018】
そこで、インバータ7について、予めシミュレーションによって出力波形の遷移時間Trと負荷として出力側に接続した容量の値との関係を求めておく。この特性は、例えば図4に示すようになる。この図4の特性は、
Tr=a×C+T0
を示す(但しT0は無負荷時の立上り遷移時間、aは一次式の傾きで、いずれも既知の値とする。)ので、上記観測により得られた遷移時間Trから、負荷容量Cの容量値を求めることができる。
【0019】
したがって、上記のように、C2=C1(容量負荷の面積比がC1:C1+C2=1:2)となるように容量C1,C2を作り込み、Tr2−Tr1を求めれば、図4の特性から1:a=C1:(Tr2−Tr1)の関係にあるので、
C1=(Tr2−Tr1)/a
により、C1の容量値を得ることができる。
【0020】
以上のようにして具体的な容量値が得られた付加容量C1,C2の電極103,104の形状や大きさおよび絶縁膜の厚さに基づき、当該半導体集積回路の所望の箇所にFIB加工により同様な容量を任意数並列接続する形で付加させれば、所望の容量値の容量を付加させることができる。
【0021】
なお、以上説明した実施例では、プローブ用出力パッド5の延長上の容量電極103,104とGND電極配線2の間に容量を形成する場合を例としたが、プローブ用出力パッド5の延長上の容量電極とVDD電極配線1との間に容量を形成することもでき、同様にその容量値を調整することが可能である。
【0022】
また、I/Oリングの最外周をVDD電極配線1に置き換えて、インバータ7の高電位電源接続用電極6をこの最外周のVDD電極配線1とメタル配線で接続しておいてもよい。この場合は、インバータ7の低電位電源接続用電極とGND電極配線2とを後からFIB加工により接続するが、その低電位電源接続用電極はNMOSFETのソース74からビアによって上層のメタル配線に高電位電源接続用電極6のように引き出しておく必要がある。
【0023】
また、論理ゲートとしては、インバータ7に限られることはなく、トランスミッションゲートでもよい。この場合は、予め入力側に信号を印加しておいてゲートにオン用のパルス信号を入力させればよい。また、多入力のアンドゲート、オアゲート、イクスクリューシブオアゲートあるいはそれらの反転ゲートを使用することもできる。これらの場合、その多入力端子の内の1つにパルス信号を印加し、残りの入力端子には該1つのパルス信号の印加時にゲートオンとなる信号を事前に与えておくようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の容量付加方法の説明のための半導体集積回路の説明図である。
【図2】インバータ部分の回路のFIB加工前と加工後の回路図である。
【図3】インバータの出力遷移特性図である。
【図4】立上り遷移時間と負荷容量の値との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0025】
1:VDD電極配線
2:GND電極配線
3:入出力パッド
4:プローブ用入力パッド
5:プローブ用出力パッド
6:高電位電源接続用電極
7:インバータ
71:ゲート電極、72:PMOSFETのソース、73:PMOSFETのドレイン、74:NMOSFETのソース、75:NMOSFETのドレイン
81〜84:下層メタル
91〜98:ビア
101:電源電極、102:リード電極、103,104:容量電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイス周辺部の空き領域にFIB加工テスト用の論理ゲートを配置し、該論理ゲートの入力端子にプローブ用入力パッドを接続すると共に出力端子にプローブ用出力パッドを接続し、該プローブ用出力パッドに接続されるようにFIB加工により所定の形状寸法のパターンの容量を形成し、前記論理ゲートを動作可能状態に設定してから、前記プローブ用入力パッドに第1のプローブを介して信号を入力すると共に前記プローブ用出力パッドから第2のプローブを介して出力信号を得て、該出力信号の実際の応答遷移時間と予め得ておいた前記論理ゲートの応答遷移時間と容量値の関係特性とから前記容量の容量値を得、該得た容量値の容量の前記パターンに基づき所望の箇所に所望の容量値の容量を付加することを特徴とする半導体集積回路における容量付加方法。
【請求項2】
デバイス周辺部の空き領域に配置されたFIB加工テスト用の論理ゲートと、該論理ゲートの入力端子に接続されたプローブ用入力パッドと、前記論理ゲートの出力端子に接続されたプローブ用出力パッドとを具備することを特徴とする半導体集積回路。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体集積回路において、
前記プローブ用入力パッドおよび前記プローブ用出力パッドは、プローブ針当て時の横滑り防止ストッパ形状をもつよう形成されていることを特徴とする半導体集積回路。
【請求項4】
請求項2に記載の半導体集積回路において、
前記プローブ用入力パッドと前記論理ゲートの入力端子との接続および前記プローブ用出力パッドと前記論理ゲートの出力端子との接続は、下層メタルおよびビアによって行われていることを特徴とする半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−313762(P2006−313762A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−134713(P2005−134713)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(501285133)川崎マイクロエレクトロニクス株式会社 (449)
【Fターム(参考)】