説明

半導体集積回路

【課題】フラクショナル−N PLL回路のサイクルトゥサイクルジッターを低減すること。
【解決手段】フラクショナル−N PLL回路は、位相周波数比較器PFD、チャージポンプ回路Ch_Pmp、ループフィルタLp_Flt、電圧制御発振器VCO、フラクショナル分周器DIV、ΣΔ変調器ΣΔModを含む。基準クロック信号RCLKと出力帰還信号VCLKとの位相差の検出動作に基づくループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTの電圧生成動作が時間差を有する複数の動作により実行されるように位相周波数比較器とチャージポンプ回路との一方が構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分周比が整数だけでなく分数(小数)を含むフラクショナルPLL(Phase Locked Loop)回路を具備する半導体集積回路に関し、特に、サイクルトウサイクルジッターを低減するのに有益な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
分周比が整数のみの一般的なPLL回路ではロックド・ループの周波数解像度は基準周波数fREFとなるので、精密な周波数解像度は小さな基準周波数fREFを必要とし、従って小さなループ周波数帯域となる。狭ループ周波数帯域は長いスイッチング時間となるので望ましくなく、PLL回路の電圧制御発振器(VCO)の位相雑音の抑圧が不十分でPLL回路外部からの雑音の影響を受けやすい。
【0003】
下記の非特許文献1によれば、フラクショナルシンセサイザは基準周波数fREFよりも精密な周波数解像度を持つために開発され、フラクショナル−N分周器では分周比は周期的に整数Nから整数N+1に変更され、結果的に平均分周比はNよりも(N+1)分周のデューティー比分増加する。累積加算器(アキュムレータ)からのオーバーフローは、瞬時の分周比を変調するために使用される。
【0004】
このようにフラクショナル−N PLL回路は、PLL回路の負帰還ループ中の分周器の分周比Nが整数だけでなく分数(小数)を含む有理数である。このフラクショナル−N分周によって、与えられたチャンネルスペーシングに対する広いループ帯域は高速・セットリングタイムを可能とし、電圧制御発振器に要求される位相ノイズ要求も低くなると下記の非特許文献2に記載されている。また、この非特許文献1には、1次ΔΣ変調器(ΣΔ変調器とも呼ばれる)の累積加算器(アキュムレータ)に関係した分周比がn/n+1の二重係数分周器(Dual Modulus Divider)が記載されている。累積加算器のオーバーフローの条件がn+1への分周へのシフトに使用されている。さらに、この非特許文献2には、フラクショナル−N分周に高次ΔΣ変調による高次ノイズシェービング技術によりフラクショナル−N周波数合成でのスプリアス出力周波数も低減すると報告されている。
【0005】
さらに、下記の非特許文献3には、ΣΔ変調器の出力により分周器の2つの分周比の間をトグルするフラクショナル−N PLL回路により、スプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG:Spread Spectrum Clock Generator)を構成することが記載されている。スプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)は、電子機器におけるEMI(Electromagnetic Interference)のような不要輻射を軽減するため、クロック信号を周波数変調して、クロックの基本波と高調波のピーク電力を低減するものである。トータルエネルギーは同一であるが、クロック信号の振幅と信号エッジの波形とを保ったままクロック信号が広い周波数帯域にわたり拡散される(spread)ので、ピークエネルギーを低減することができる。また、下記の非特許文献3には、ΣΔ変調器の出力の量子化ノイズを低減するため1次ΣΔ変調器を複数多段としたMASH(Multistage noise Shaping Technique)型のΣΔ変調器を用いることも報告されている。
【0006】
【非特許文献1】Brian Miller and Robert J. Conley ”A Multiple Modulator Fractional Divider”, IEEE TRANSACTIONS ON INSTRUMENTATION AND MEASUREMENT, VOL.40.NO.3.JUNE 1991.PP.578−583.
【非特許文献2】Tom A.D.Riley et al“Delta−Sigma Modulation in Fractional−N Frequency Synthesis”, IEEE JOUNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS, VOL.28.NO.5.MAY 1993.PP.553−559.
【非特許文献3】Wei−Ta Chen et al. “A Spread Spectrum Clock Generator for SATA−II”, 2005 IEEE International Symposium Circuits and Systems,23−26 May 2005, PP.2643−2646.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明に先立って、本発明者等は、フラクショナル−N PLL回路により構成されるスプレッドスペトクラムクロック発生器の開発に従事した。
【0008】
図1は、本発明に先立って本発明者等によって検討されたスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)および本発明のひとつの実施形態によるスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路を示す図である。
【0009】
同図に示すように、スプレッドスペクトラムクロックジェネレータ(SSCG)はPLLとモジュレータから構成される。PLLは、入力カウンタIn_COUNT、位相周波数比較器PFD、チャージポンプ回路Ch_Pmp、ループフィルタLp_Flt、電圧制御発振器VCO、ポストカウンタPst_COUNT、フラクショナル分周器DIVから構成されている。フラクショナル分周器DIVの平均分周比Nは、ΣΔ変調器ΣΔModのオーバーフロー出力信号により整数部Iと小数部分数値情報F/Gとの和の値に設定される。図示しない水晶発振器からの安定な周波数の基準クロックRef_CLKが入力カウンタIn_COUNTの入力に供給されることにより、入力カウンタIn_COUNTの出力より分周された基準クロック信号RCLKが位相周波数比較器PFDの一方の入力端子に供給される。位相周波数比較器PFDの他方の入力端子にはフラクショナル分周器DIVの出力信号VCLKが供給される。位相周波数比較器PFDからの出力信号であるチャージポンプ電圧のインクリメント信号INCとディクリメント信号DECとが、チャージポンプ回路Ch_Pmpに供給される。チャージポンプ回路Ch_Pmpの出力端子のチャージポンプ電圧が、ループフィルタLp_Fltに供給される。ループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTにより、電圧制御発振器VCOの発振出力信号の周波数・位相が制御される。電圧制御発振器VCOの発振出力信号はポストカウンタPst_COUNTの入力端子に供給されることにより、ポストカウンタPst_COUNTの出力端子よりPLL出力信号PLLOUTが得られるとともにフラクショナル分周器DIVの入力端子に供給される。フラクショナル分周器DIVの出力信号VCLKの周波数・位相が入力カウンタIn_COUNTの出力からの基準クロック信号RCLKの周波数・位相と一致するようにPLL回路による負帰還制御が行われる。小数であるフラクショナル分周器DIVの瞬時の分周比は、ΣΔ変調器ΣΔModのオーバーフロー出力信号により周期的に整数nから整数n+1に変更され、結果的に平均分周比N=I+F/G=整数部+小数部となる。このように、フラクショナル分周器DIVの瞬時の分周比が周期的に整数nから整数n+1に変更されるので、フラクショナル−N PLL回路では、フラクショナル分周器DIVの出力信号VCLKの周波数・位相が入力カウンタIn_COUNTの出力からの基準クロック信号RCLKの周波数・位相との不一致が頻繁に発生する。従って、フラクショナル−N PLL回路では、フラクショナル分周器DIVの出力信号VCLKの周波数・位相が入力カウンタIn_COUNTの出力からの基準クロック信号RCLKの周波数・位相と一致するような負帰還制御も頻繁に行われる。このように、分周比が整数のみの一般的なPLL回路と比較すると、分周比が周期的に変更されるフラクショナル−N PLL回路では、不一致の周波数・位相を一致するための負帰還制御が高い頻度で行われる。
【0010】
図7は、本発明に先立って本発明者等によって検討されたスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路において、フラクショナル分周器DIVの出力信号VCLKの周波数・位相が入力カウンタIn_COUNTの出力からの基準クロック信号RCLKの周波数・位相と一致するような負帰還制御の様子を示す図である。
【0011】
同図に示すように、入力カウンタIn_COUNTの出力からの基準クロック信号RCLKの位相よりもフラクショナル分周器DIVの出力信号VCLKの位相が位相差Pf_Diff遅れている。従って、電圧制御発振器VCOの発振出力信号の周波数・位相を制御するループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTを急速に増加させるために、位相周波数比較器PFDからチャージポンプ回路Ch_Pmpへ最初に大きなパルス幅のインクリメント信号INCに供給され、少し後に小さなパルス幅のディクリメント信号DECが供給される。その結果、ループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTは目標値よりも数倍程度大きなオーバーシュートを生じた後、定常的な目標値まで低下する。逆の場合として、基準クロック信号RCLKの位相よりも出力信号VCLKの位相が進んでいると、ループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTを急速に低下させるために、位相周波数比較器PFDからチャージポンプ回路Ch_Pmpへ最初に大きなパルス幅のディクリメント信号DECに供給され、少し後に小さなパルス幅のインクリメント信号INCが供給される。この場合には、ループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTは減少方向のオーバーシュートを生じた後、定常的な目標値まで増加する。いずれにせよ、この出力電圧VCNTのオーバーシュートは、PLL回路の高速応答のためには、不可欠である。
【0012】
しかし、この出力電圧VCNTのオーバーシュートは下記の点で問題を有することが、本発明者等の検討により明らかとされた。
【0013】
すなわち、オーバーシュートの時点では、電圧制御発振器VCOの発振出力信号の発振周波数は、目標値よりも数倍程度高い。従って、ポストカウンタPst_COUNTの出力端子よりPLL出力信号PLLOUTの周波数も、目標値よりも数倍程度高くなる。すると、PLL出力信号PLLOUTのパルス幅は、オーバーシュート直前のパルス幅τ0、オーバーシュート直後のパルス幅τ1、τ2…と変化する。このようなパルス幅の変化は、サイクルトゥサイクルジッターと呼ばれている。ポストカウンタPst_COUNTの出力端子よりPLL出力信号PLLOUTは、PC(パーソナルコンピュータ)等の電子機器システムでプロセッサとメモリ等の複数のデバイス間のデータ転送のためのシステムクロック信号として使用される。このシステムクロック信号のサイクルトゥサイクルジッターが大きいとデバイス間データ転送の余裕が少なくなり、データ転送エラー発生の確率が増加してしまう。従って、PC等の電子機器システムで高信頼性のデータ転送を達成するためには、スプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路のサイクルトゥサイクルジッターを低減する必要がある。
【0014】
本発明は、上記のような本発明者等による検討結果を基にしてなされたものである。従って、本発明の目的とするところは、フラクショナル−N PLL回路のサイクルトゥサイクルジッターを低減することにある。また、本発明のその他の目的とするところは、電子機器において高信頼性のデータ転送を可能とするスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を提供することにある。また、本発明の更に他の目的とするところは、フラクショナル−N PLL回路により構成された周波数シンセサイザから生成される出力信号の周波数の変位量を低減することにある。
【0015】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴とは、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
【0017】
すなわち、本発明のひとつの形態による半導体集積回路は、基準クロック信号(RCLK)が一方の入力端子に供給される位相周波数比較器(PFD)と、前記位相周波数比較器(PFD)の出力信号に応答するチャージポンプ回路(Ch_Pmp)と、前記チャージポンプ回路(Ch_Pmp)の出力信号に応答するループフィルタ(Lp_Flt)と、前記ループフィルタ(Lp_Flt)の出力電圧(VCNT)に応答する電圧制御発振器(VCO)と、前記電圧制御発振器(VCO)の出力信号に応答するフラクショナル分周器(DIV)と、前記フラクショナル分周器(DIV)の平均分周比が小数を含むように前記フラクショナル分周器(DIV)の分周比を1つの整数(n)から他の整数(n+1)に変更する制御ユニット(ΣΔMod)とを含み、前記フラクショナル分周器(DIV)の出力帰還信号(VCLK)に前記位相周波数比較器(PFD)の他方の入力端子が応答するフラクショナル−N PLL回路を具備する(図1参照)。
【0018】
本発明のひとつの形態による半導体集積回路は、特に、前記基準クロック信号(RCLK)の1つのパルスの位相と前記出力帰還信号(VCLK)の1つのパルスの位相との位相差検出動作に基づく前記ループフィルタ(Lp_Flt)の前記出力電圧(VCNT)の電圧生成動作が時間差を有する複数の生成動作により実行されるように前記位相周波数比較器(PFD)と前記チャージポンプ回路(Ch_Pmp)との少なくともいずれか一方が構成されている(図8、図10、図11、図12、図13、図14参照)。尚、前記ループフィルタ(Lp_Flt)の前記出力電圧(VCNT)の前記電圧生成動作を前記複数の生成動作に分割するに際して、前記複数の生成動作の各電圧生成動作での充電電流と放電電流との電流値は、電圧生成動作を分割する前の充電電流と放電電流の電流値を分割数で割り算した値に設定される。その結果、出力電圧(VCNT)の1回の電圧生成動作での充電と放電とのエネルギーは、分割する前の充電と放電とのエネルギー分割数で割り算した値に等しくなる。
【0019】
本発明の前記ひとつの形態の手段によれば、位相差検出動作に基づくループフィルタ(Lp_Flt)の出力電圧(VCNT)の電圧生成動作が時間差を有する複数の生成動作により分割されて実行される。また、この分割によって出力電圧(VCNT)の1回当りの電圧生成動作の充放電エネルギーは、分割する前の充放電エネルギーを分割数で割り算した値に低減される。その結果、前記ループフィルタ(Lp_Flt)の前記出力電圧(VCNT)のオーバーシュート量は分割数で割り算した値に低減される。この出力電圧(VCNT)のオーバーシュート量の低減により、フラクショナル−N PLL回路のサイクルトゥサイクルジッターを低減することが可能となる(図11参照)。
【0020】
本発明の具体的な形態による半導体集積回路では、前記位相周波数比較器(PFD)は第1の位相周波数比較器(PFD1)と第2の位相周波数比較器(PFD2)とを含み、前記チャージポンプ回路(Ch_Pmp)は第1のチャージポンプ回路(Ch_Pmp1)と第2のチャージポンプ回路(Ch_Pmp2)とを含む。前記第1の位相周波数比較器(PFD1)の出力信号(INC、DEC)は前記第1のチャージポンプ回路(Ch_Pmp1)の入力に供給され、前記第2の位相周波数比較器(PFD2)の出力信号(INC2、DEC2)は前記第2のチャージポンプ回路(Ch_Pmp2)の入力に供給される。半導体集積回路は、更に、前記基準クロック信号(RCLK)と前記出力帰還信号(VCLK)とが供給されることにより遅延基準クロック信号(RCLK_2)と遅延帰還信号(VCLK_2)とを生成する遅延回路(Dly 1)を含む。前記第1の位相周波数比較器(PFD1)の一方の入力端子と他方との入力端子とには、前記基準クロック信号(RCLK)と前記出力帰還信号(VCLK)とがそれぞれ供給される。前記第2の位相周波数比較器(PFD2)の一方の入力端子と他方との入力端子とには、前記遅延回路(Dly 1)から前記遅延基準クロック信号(RCLK_2)と前記遅延帰還信号(VCLK_2)とがそれぞれ供給される。前記第1のチャージポンプ回路(Ch_Pmp1)の第1の出力信号と前記第2のチャージポンプ回路(Ch_Pmp2)の第2の出力信号とは、前記ループフィルタ(Lp_Flt)に供給される(図8、図9、図10、図11参照)。
【0021】
本発明の他の具体的な形態による半導体集積回路では、前記チャージポンプ回路(Ch_Pmp)は第1のチャージポンプ回路(Ch_Pmp1)と第2のチャージポンプ回路(Ch_Pmp2)とを含む。半導体集積回路は、更に、前記位相周波数比較器(PFD)の位相比較出力信号(INC0、DECO)が供給されることにより遅延位相比較出力信号(INC1、DEC1)を生成する遅延回路(Delay1)を含む。前記第1のチャージポンプ回路(Ch_Pmp1)の入力には前記位相周波数比較器(PFD)の前記位相比較出力信号(INC0、DECO)が供給され、前記第2のチャージポンプ回路(Ch_Pmp2)の入力には前記遅延回路(Dly1)から前記遅延位相比較出力信号(INC1、DEC1)が供給される。前記第1のチャージポンプ回路(Ch_Pmp1)の第1の出力信号と前記第2のチャージポンプ回路(Ch_Pmp2)の第2の出力信号とは、前記ループフィルタ(Lp_Flt)に供給される(図12参照)。
【0022】
本発明の他の具体的な形態による半導体集積回路では、前記位相周波数比較器(PFD)は第1の位相周波数比較器(PFD1)と第2の位相周波数比較器(PFD2)とを含み、前記チャージポンプ回路(Ch_Pmp)は第1のチャージポンプ回路(Ch_Pmp1)と第2のチャージポンプ回路(Ch_Pmp2)とを含む。半導体集積回路は、更に前記基準クロック信号(RCLK)と前記出力帰還信号(VCLK)とが供給されることにより反転基準クロック信号(/RCLK)と反転負帰還信号(/VCLK)とを生成するインバータ(INV)を含む。前記第1の位相周波数比較器(PFD1)の一方の入力端子と他方との入力端子とには、前記基準クロック信号(RCLK)と前記出力帰還信号(VCLK)とがそれぞれ供給される。前記第2の位相周波数比較器(PFD2)の一方の入力端子と他方との入力端子とには、前記インバータ(INV)から前記反転基準クロック信号(/RCLK)と前記反転負帰還信号(/VCLK)とがそれぞれ供給される。前記第1のチャージポンプ回路(Ch_Pmp1)の第1の出力信号と前記第2のチャージポンプ回路(Ch_Pmp2)の第2の出力信号とは、前記ループフィルタ(Lp_Flt)に供給される(図13、図14参照)。
【0023】
本発明の具体的な形態による半導体集積回路では、前記制御ユニット(ΣΔMod)はΣΔ変調器(ΣΔMod)である(図4、5参照)。
【0024】
本発明の具体的な形態による半導体集積回路は、前記ΣΔ変調器(ΣΔMod)は1次ΣΔ変調器を複数多段としたMASH型である(図14参照)。
【0025】
本発明の具体的な形態による半導体集積回路は、前記MASH型の前記ΣΔ変調器(ΣΔMod)にはディジタル微分器(diff31)を介してディザー回路(dither)からの擬似ランダム雑音が供給される(図15参照)。
【0026】
本発明の具体的な形態による半導体集積回路では、前記ループフィルタ(Lp_Flt)は複数の抵抗(R1、R2)と複数の容量(C1、C2、C3)とを含む高次のループフィルタにより構成されている(図9参照)。
【0027】
本発明の具体的な形態によれば、高次のループフィルタ(Lp_Flt)はΣΔ変調器に起因するRF帯域の不所望なFM側帯波成分を抑圧することができる。
【0028】
本発明の他の具体的な形態による半導体集積回路では、前記フラクショナル−N PLL回路の前記電圧制御発振器(VCO)の出力信号の周波数の高低に応じて前記遅延回路(Dly 1)の遅延時間の小大が制御される(図18参照)。
【0029】
本発明の他の具体的な形態による半導体集積回路では、前記フラクショナル−N PLL回路の前記電圧制御発振器(VCO)の出力信号の周波数の高低に応じて前記遅延回路(Dly 1)の動作電流の大小が制御されることにより、前記遅延回路(Dly 1)の前記遅延時間の小大が制御されるものである(図18参照)。
【0030】
本発明の他の具体的な形態による半導体集積回路では、前記フラクショナル−N PLL回路はスプレッドスペクトラムクロック発生器(SSCG)を構成する(図1、図2、図3、図17参照)。
【0031】
本発明の具体的な形態によれば、スプレッドスペクトラムクロック発生器(SSCG)から生成され電子機器の複数のデバイス間データ転送に使用されるシステムクロック信号のサイクルトゥサイクルジッターを低減することができ、複数のデバイス間のデータ転送エラーレートを低減することができる。
【0032】
本発明の他の具体的な形態による半導体集積回路は、複数の内部デバイス(CPU、I/O Port…)を含む内部コア(Int_Core)を更に含み、前記内部コア(Int_Core)の前記複数の内部デバイス(CPU、I/O Port…)に前記スプレッドスペクトラムクロック発生器(SSCG)を構成する前記フラクショナル−N PLL回路の前記電圧制御発振器(VCO)の前記出力信号に基づく動作クロック信号(CLK_Main)が供給される(図17参照)。
【0033】
本発明の具体的な形態によれば、前記内部コア(Int_Core)の前記複数の内部デバイス(CPU、I/O Port…)の間の内部データ転送のエラーレートを低減することができる。
【0034】
本発明の他の具体的な形態による半導体集積回路では、前記内部コア(Int_Core)の前記複数の内部デバイス(CPU、I/O Port…)のひとつの内部デバイス(I/O Port)は半導体集積回路外部の外部デバイスと接続可能に適合化され、前記ひとつの内部デバイス(I/O Port)と前記外部デバイスとの間の外部データ転送が前記動作クロック信号(CLK_Main)により制御される(図17参照)。
【0035】
本発明の具体的な形態によれば、前記ひとつの内部デバイス(I/O Port)と前記外部デバイスとの間の外部データ転送のエラーレートを低減することができる。
【0036】
本発明の他の具体的な形態による半導体集積回路では、前記フラクショナル−N PLL回路は周波数シンセサイザを構成する。
【0037】
本発明の具体的な形態によれば、基準クロックに基づき周波数シンセサイザにより合成されるPLL出力信号の不所望な周波数変位を低減することができる。
【発明の効果】
【0038】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
【0039】
すなわち、本発明によれば、フラクショナル−N PLL回路のサイクルトゥサイクルジッターを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
≪SSCGを構成するフラクショナル−N PLL回路≫
図1は、本発明の1つの実施形態によるスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路を示す図である。
【0041】
同図に示すように、スプレッドスペクトラムクロックジェネレータ(SSCG)はPLLとモジュレータから構成される。PLLは、入力カウンタIn_COUNT、位相周波数比較器PFD、チャージポンプ回路Ch_Pmp、ループフィルタLp_Flt、電圧制御発振器VCO、ポストカウンタPst_COUNT、フラクショナル分周器DIVから構成されている。フラクショナル分周器DIVの平均分周比Nは、ΣΔ変調器ΣΔModのオーバーフロー出力信号により整数部Iと小数部分数値情報F/Gとの和の値に設定される。図示しない水晶発振器からの安定な周波数の基準クロックRef_CLKが入力カウンタIn_COUNTの入力に供給されることにより、入力カウンタIn_COUNTの出力より分周された基準クロック信号RCLKが位相周波数比較器PFDの一方の入力端子に供給される。位相周波数比較器PFDの他方の入力端子にはフラクショナル分周器DIVの出力信号VCLKが供給される。位相周波数比較器PFDからの出力信号であるチャージポンプ電圧のインクリメント信号INCとディクリメント信号DECとが、チャージポンプ回路Ch_Pmpに供給される。チャージポンプ回路Ch_Pmpの出力端子のチャージポンプ電圧が、ループフィルタLp_Fltに供給される。ループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTにより、電圧制御発振器VCOの発振出力信号の周波数・位相が制御される。電圧制御発振器VCOの発振出力信号はポストカウンタPst_COUNTの入力端子に供給されることにより、ポストカウンタPst_COUNTの出力端子よりPLL出力信号PLLOUTが得られるとともにフラクショナル分周器DIVの入力端子に供給される。フラクショナル分周器DIVの出力信号VCLKの周波数・位相が入力カウンタIn_COUNTの出力からの基準クロック信号RCLKの周波数・位相と一致するようにPLL回路による負帰還制御が行われる。小数であるフラクショナル分周器DIVの瞬時の分周比は、ΣΔ変調器ΣΔModのオーバーフロー出力信号により周期的に整数nから整数n+1に変更され、結果的に平均分周比N=I+F/G=整数部+小数部となる。
【0042】
図2は、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路から生成されるPLL出力信号PLLOUTの周波数fPLLOUTが時間とともにどのように変化するかを示す図である。
【0043】
同図に示すように、ΣΔ変調器ΣΔModにより周波数変調されたPLL出力信号PLLOUTの周波数fPLLOUTは、最大値fPLLOUT(max)と最小値fPLLOUT(mini)との間で直線的に変化する。最大値fPLLOUT(max)と最小値fPLLOUT(mini)との間の変化量は、例えば最大値fPLLOUT(max)の略0.5%〜5%となっている。
【0044】
図3は、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路から生成されるPLL出力信号PLLOUTの周波数スペクトラムを示す図である。
【0045】
図3の特性SSCGは、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路からシステムクロック信号として生成されるPLL出力信号PLLOUT広い周波数帯域にわたり拡散され(spread)、ピークエネルギーを低減することができることを示している。尚、図3の特性Non−SSCGは、極めて高いピークエネルギーを持つ一般的なクロック発生器の周波数特性を示している。
【0046】
図4は、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路のフラクショナル分周器DIVとΣΔ変調器ΣΔModとの動作をより詳細に説明する図である。
【0047】
同図に示すように、分周器DIVの分周比を制御する制御入力端子には加算器ADDが接続されている。加算器ADDには、分周比演算器DR_ALUの整数ユニットIntからの整数値情報IとΣΔ変調器ΣΔModからの分子情報F÷分母情報G=分数値情報F/Gとが供給されている。まず、分周比演算器DR_ALUの整数ユニットIntと分数ユニットFraとは、入力されたスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)のシステムクロック信号の周波数変調情報に基づいて、整数値情報Iと分子情報Fと分母情報Gとを計算する。分周比演算器DR_ALUの整数ユニットIntからの整数値情報Iは加算器ADDの一方の入力端子に供給され、分周比演算器DR_ALUの分数ユニットFraからの分子情報Fと分母情報GとはΣΔ変調器ΣΔModに供給され、ΣΔ変調器ΣΔModには動作クロック信号fREFが供給される。この動作クロック信号fREFとしては、図1の入力カウンタIn_COUNTの入力に供給される基準クロックRef_CLKを利用することができる。ΣΔ変調器ΣΔModは、分子情報Fと分母情報Gとから、分子情報F÷分母情報G、一例として403/1625の分数(フラクション)の情報を持つ分数値情報F/Gを生成して、加算器ADDの他方の入力端子に供給する。加算器ADDは整数値情報I(一例として、I=137)と分数値情報F/GとからI+F/G、一例として137+(403/1625)=137.248の出力情報を平均分周比Nとして分周器DIVに供給する。その結果、分周器DIVの平均分周比Nが137.248と整数と分数(小数)とを含む値に設定される。従って、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路では、入力カウンタIn_COUNTの出力より分周された基準クロック信号RCLKの周波数fRCLKとPLL出力信号PLLOUTの周波数fPLLOUTとの間でfRCLK=fPLLOUT/N(fPLLOUT=N×fRCLK)の関係が維持される。
【0048】
従って、図2に示すように、PLL出力信号PLLOUTの周波数fPLLOUTを最大値fPLLOUT(max)から最小値fPLLOUT(mini)に向かい減少させるためには、分数値情報F/Gを減少させて平均分周比Nを減少させることになる。また、PLL出力信号PLLOUTの周波数fPLLOUTを最小値fPLLOUT(mini)から最大値fPLLOUT(max)に向かい増加させるためには、分数値情報F/Gを増加させて平均分周比Nを増加させることになる。
【0049】
また、平均分周比Nについて詳しく述べると、分周比演算器DR_ALUの整数ユニットIntからの整数値情報I(I=137)と、ΣΔ変調器ΣΔModからの分数値情報F/Gに応じた頻度(403/1625)で発生するオーバーフロー・1ビット出力とに応答して分周器DIVの分周比nは、n(=I=137)からn+1(=I+1=138)に変更される。従って、分周器DIVの分周比がn(=I=137)となる頻度は1222/1625=75.2%で、分周器DIVの分周比がn+1(=I+1=138)となる頻度は403/1625=24.8%である。従って、平均分周比Nは、137×0.752+138×0.248=137.248となる。
【0050】
図5は、図4に示したΣΔ変調器ΣΔModの内部構成を示す図である。
【0051】
同図に示すように、分周比演算器DR_ALUの分数ユニットFraからの分子情報Fは第1加算器Sum1の一方の入力端子(A)に供給される一方、第1加算器Sum1の他方の入力端子には後に説明する第2加算器Sum2の出力信号(C)が供給される。第1加算器Sum1の出力信号は積分器Intgrtrとしての遅延回路に供給され、積分器Intgrtrの出力信号(B)は1ビット出力の量子化器qntzrの入力に供給される。積分器Intgrtrの出力信号(B)は、所定のゲイン1/Gを持つ帰還回路fbcの入力に供給される。このゲイン1/Gの逆数Gは、ΣΔ変調器ΣΔModは分周比を設定する分母情報G(一例として、G=1/1625)に対応する。従って、量子化器qntzrの1ビット出力信号(D)が“0”の非オーバーフロー状態では帰還回路fbcの出力はゼロとなり、量子化器qntzrの1ビット出力信号(D)が“1”のオーバーフロー状態では帰還回路fbcの出力は1625となる。従って、帰還回路fbcは、1ビットのD/A変換器として動作する。従って、量子化器qntzrの1ビット出力信号(D)が“1”のオーバーフロー状態が生じると、第2加算器Sum2では積分器Intgrtrの出力信号(B)の累積加算から帰還回路fbcの出力1625の減算が実行される。さらに、第2加算器Sum2の出力信号(C)は、第1加算器Sum1の他方の入力端子に供給される。また、非オーバーフロー状態・オーバーフロー状態を示す量子化器qntzrの1ビット出力信号(D)は、ΣΔ変調器ΣΔModの分数値情報F/Gとして図4の加算器ADDに供給される。
【0052】
図6は、図5に示したΣΔ変調器ΣΔModの動作を示す図である。
【0053】
同図に示すようにΣΔ変調器ΣΔModには、動作クロック信号fREFが供給される。また、図6の(A)に示すように、ΣΔ変調器ΣΔModの第1加算器Sum1の一方の入力端子に、分子情報Fが供給される。従って、動作クロック信号の1サイクルで、積分器Intgrtrの出力から1回の累積加算結果が得られる。図6の(B)に示すように、動作クロック信号の4サイクル目で、積分器Intgrtrの出力から4回目の累積加算結果が得られる。また、図6の(D)に示すように、動作クロック信号の4サイクル目では、量子化器qntzrの1ビット出力信号に“1”のオーバーフロー状態が現れる。すると、図6の(C)に示すように、第2加算器Sum2では積分器Intgrtrの出力の累積加算から帰還回路fbcの出力1625の減算が実行される。尚、量子化器qntzrは、入力信号が0〜1624の場合には”0”の非オーバーフロー状態の1ビット出力信号を出力する一方、入力信号が1625もしくはそれよりも大きな値の場合には“1”のオーバーフロー状態の1ビット出力信号を出力する。以上のような動作が動作クロック信号fREFに応答して繰り返され、ΣΔ変調器ΣΔModからの分数情報分数値情報F/G(403/1625)の頻度で“1”のオーバーフロー状態の1ビット出力信号が量子化器qntzrから生成される。
【0054】
図5に示した量子化器qntzrの出力信号(D)、すなわちΣΔ変調器ΣΔModの1ビット分数値情報F/Gは、図4の加算器ADDに供給され、この加算器ADDで分周比演算器DR_ALUの整数ユニットIntより供給される整数値情報Iと加算される。ΣΔ変調器ΣΔModの1ビット出力信号が“0”の非オーバーフロー状態ではフラクショナル−N PLL回路の分周器DIVの分周比nは整数値情報I(I=137)に設定され、ΣΔ変調器ΣΔModの1ビット出力信号が“1”のオーバーフロー状態ではフラクショナルシンサPLL回路の分周器DIVの分周比は(n+1)(=(I+1)=138)に設定されて、その結果、平均分周比Nは137.248となる。
【0055】
≪サイクルトゥサイクルジッターを低減するための位相比較器とチャージポンプ回路≫
図8は、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路のサイクルトゥサイクルジッターを低減するための位相比較器とチャージポンプ回路の1つの実施形態の構成を示す図である。
【0056】
同図に示すように、特に、基準クロック信号RCLKの1つのパルスの位相と出力帰還信号VCLKの1つのパルスの位相との位相差検出動作に基づくループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTの電圧生成動作が時間差を有する複数の生成動作により実行されるように位相周波数比較器PFDとチャージポンプ回路Ch_Pmpとの少なくともいずれか一方が構成されている。より具体的に説明すると、位相周波数比較器PFDは第1の位相周波数比較器PFD1と第2の位相周波数比較器PFD2と以下同様に第nの位相比較器PFDnとを含み、チャージポンプ回路Ch_Pmpは第1のチャージポンプ回路Ch_Pmp1と第2のチャージポンプ回路Ch_Pmp2と以下同様に第nのチャージポンプ回路Ch_Pmpnを含む。第1の位相周波数比較器PFD1の出力信号INC、DECは第1のチャージポンプ回路Ch_Pmp1の入力に供給され、第2の位相周波数比較器PFD2の出力信号INC_2、DEC_2は第2のチャージポンプ回路Ch_Pmp2の入力に供給され、以下同様に第nの位相周波数比較器PFDnの出力信号INC_n、DEC_nは第nのチャージポンプ回路Ch_Pmpnの入力に供給される。半導体集積回路は、更に、基準クロック信号RCLKと出力帰還信号VCLKとが供給されることにより遅延基準クロック信号RCLK_2と遅延帰還信号VCLK_2とを生成する遅延回路Dly 1を含む。半導体集積回路は、以下同様に、基準クロック信号RCLKと出力帰還信号VCLKとが供給されることにより第n遅延基準クロック信号RCLK_nと第n遅延帰還信号VCLK_nとを生成する遅延回路Dly nを含む。第1の位相周波数比較器PFD1の一方の入力端子と他方との入力端子とには、基準クロック信号RCLKと出力帰還信号VCLKとがそれぞれ供給される。第2の位相周波数比較器PFD2の一方の入力端子と他方との入力端子とには、遅延回路Dly 1から遅延基準クロック信号RCLK_2と遅延帰還信号VCLK_2とがそれぞれ供給される。以下同様に、第nの位相周波数比較器PFDnの一方の入力端子と他方との入力端子とには、遅延回路Dly nから他の遅延基準クロック信号RCLK_nと他の遅延帰還信号VCLK_nとがそれぞれ供給される。第1のチャージポンプ回路Ch_Pmp1の第1の出力信号と第2のチャージポンプ回路Ch_Pmp2の第2の出力信号と第nのチャージポンプ回路Ch_Pmpnの第nの出力信号とは、ループフィルタLp_Fltに供給される。このように、位相周波数比較器はn個に分割され、チャージポンプ回路もn個に分割されているが、n個のチャージポンプ回路Ch_Pmp1、Ch_Pmp2…Ch_PmpnのそれぞれのループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTを増加させるための充電電流Icp/nと出力電圧VCNTを減少させるための放電電流Icp/nとは、n個に分割する以前の場合の充電電流Icpと放電電流Icpのそれぞれの1/nの電流値に設定されている。
【0057】
図9は、図8のn個のチャージポンプ回路Ch_Pmp1、Ch_Pmp2…Ch_Pmpnのそれぞれの充電電流Icp/nと放電電流Icp/nとにより駆動されることにより、出力電圧VCNTを生成するループフィルタLp_Fltを示す図である。
【0058】
同図に示すように、ループフィルタLp_Fltは複数の抵抗R1、R2と複数の容量C1、C2、C3と含む高次のループフィルタにより構成されている。チャージポンプ回路Ch_Pmpの充電電流と放電電流とは、容量C1の一端、抵抗R1の一端、抵抗R2の一端を駆動する。抵抗R2の他端と容量C3の一端の接続ノードから、電圧制御発振器VCOの発振周波数を制御するための出力電圧VCNTが生成される。
【0059】
図1のΣΔ変調器ΣΔModは、分周器DIVとチャージポンプ回路Ch_Pmpとに電流スイッチングノイズを与える可能性があり、RF帯域の不所望なFM側帯波成分の発生させることがある。図9に示した3次のループフィルタLp_Fltは、図1のΣΔ変調器ΣΔModに起因するRF帯域の不所望なFM側帯波成分を抑圧することができる。
【0060】
図10は、図8に示したn−1分割された遅延回路Dly 1…Dly nとn分割された位相比較器PFD1、PFD2…PFDnとn分割されたチャージポンプ回路Ch_Pmp1、Ch_Pmp2…Ch_Pmpnとからなる位相比較器とチャージポンプ回路の各部の波形を示す図である。同図から、基準クロック信号RCLKの1つのパルスと出力帰還信号VCLKの1つのパルスとの位相差の1つの検出動作が時間軸でn回の位相検出動作に分割されていることが理解される。
【0061】
図11は、位相比較器とチャージポンプ回路のそれぞれの分割数n=2(2分割)の場合のループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTの波形を示す図である。同図から、基準クロック信号RCLKの1つのパルスの位相と出力帰還信号VCLKの1つのパルスの位相との位相差検出動作に基づくループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTの電圧生成動作が、時間差Dly_nを有する複数の生成動作に分割されて実行されることが理解される。また、分割後の出力電圧VCNTの1回の電圧生成動作の充放電エネルギーが分割前の電圧生成動作の充放電エネルギーよりも低減されているので、図7に示した非分割の場合と比較してループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTのオーバーシュート量とPLL出力信号PLLOUTのパルス幅変化(サイクルトゥサイクルジッター)とが略半分に低減されていることが理解される。
【0062】
≪その他の実施形態≫
図12は、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路のサイクルトゥサイクルジッターを低減するための位相比較器とチャージポンプ回路のその他の実施形態の構成を示す図である。
【0063】
同図に示すように、チャージポンプ回路Ch_Pmpは第1のチャージポンプ回路Ch_Pmp1と第2のチャージポンプ回路Ch_Pmp2と、…第nのチャージポンプ回路Ch_Pmpnを含む。半導体集積回路は、更に、位相周波数比較器PFDの位相比較出力信号INC0、DECOが供給されることにより遅延位相比較出力信号INC1、DEC1を生成する遅延回路Dly1を含む。以下同様に、半導体集積回路は、更に遅延回路Dly1の遅延位相比較出力信号INC1、DEC1が供給されることにより第n遅延位相比較出力信号INCn、DECnを生成する第n遅延回路Dlynを含む。第1のチャージポンプ回路Ch_Pmp1の入力には位相周波数比較器PFDの位相比較出力信号INC0、DECOが供給され、第2のチャージポンプ回路Ch_Pmp2の入力には遅延回路Delay1から遅延位相比較出力信号INC1、DEC1が供給される。以下同様に、第nのチャージポンプ回路Ch_Pmpnの入力には、第n遅延回路Dlynから第n遅延位相比較出力信号INCn、DECnが供給される。第1のチャージポンプ回路Ch_Pmp1の第1の出力信号と第2のチャージポンプ回路Ch_Pmp2の第2の出力信号、…第nのチャージポンプ回路Ch_Pmpnの第nの出力信号とは、図9に示した3次のループフィルタLp_Fltに供給される。図12の実施形態でも、ループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTを増加させるための充電電流Icp/nと出力電圧VCNTを減少させるための放電電流Icp/nは、分割前の充電電流Icpと放電電流Icpの1/nの電流値に設定されている。従って、分割後の出力電圧VCNTの1回の電圧生成動作の充放電エネルギーが分割前の電圧生成動作の充放電エネルギーよりも低減されているので、図8の実施形態と同様にループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTのオーバーシュート量とPLL出力信号PLLOUTのパルス幅変化(サイクルトゥサイクルジッター)とを低減することができる。
【0064】
図13は、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路のサイクルトゥサイクルジッターを低減するための位相比較器とチャージポンプ回路のその他の実施形態の構成を示す図である。
【0065】
同図に示すように、位相周波数比較器PFDは第1の位相周波数比較器PFD1と第2の位相周波数比較器PFD2とを含み、チャージポンプ回路Ch_Pmpは第1のチャージポンプ回路Ch_Pmp1と第2のチャージポンプ回路Ch_Pmp2とを含む。半導体集積回路は、更に基準クロック信号RCLKと出力帰還信号VCLKとが供給されることにより反転基準クロック信号/RCLKと反転負帰還信号/VCLKとを生成するインバータINVを含む。第1の位相周波数比較器PFD1の一方の入力端子と他方との入力端子とには、基準クロック信号RCLKと出力帰還信号VCLKとがそれぞれ供給される。第2の位相周波数比較器PFD2の一方の入力端子と他方との入力端子とには、インバータINVから反転基準クロック信号/RCLKと反転負帰還信号/VCLKとがそれぞれ供給される。第1のチャージポンプ回路Ch_Pmp1の第1の出力信号と第2のチャージポンプ回路Ch_Pmp2の第2の出力信号とは、図9に示した3次のループフィルタLp_Fltに供給される。
【0066】
図14は、図13に示したインバータINVと2分割された位相比較器PFD1、PFD2と2分割されたチャージポンプ回路Ch_Pmp1、Ch_Pmp2とからなる位相比較器とチャージポンプ回路の各部の波形を示す図である。同図から、基準クロック信号RCLKと出力帰還信号VCLKのローレベルからハイレベルへの立ち上がりの第1タイミングで位相比較器PFD1とチャージポンプ回路Ch_Pmp1とによりループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTの1回目の電圧生成が行われ、基準クロック信号RCLKと出力帰還信号VCLKのハイレベルからローレベルへの立ち下がりの第2タイミングで位相比較器PFD2とチャージポンプ回路Ch_Pmp2とによりループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTの2回目の電圧生成が行われることが理解できる。この図13の実施形態でも、ループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTを増加させるための充電電流Icp/2と出力電圧VCNTを減少させるための放電電流Icp/2は、分割前の充電電流Icpと放電電流Icpの1/2の電流値に設定されている。従って、分割後の出力電圧VCNTの1回の電圧生成動作の充放電エネルギーが分割前の電圧生成動作の充放電エネルギーの半分に低減されているので、図8と図12の実施形態と同様にループフィルタLp_Fltの出力電圧VCNTのオーバーシュート量とPLL出力信号PLLOUTのパルス幅変化(サイクルトゥサイクルジッター)とを低減することができる。
【0067】
≪MASH方式のΣΔ変調器とディザー≫
図15は、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路で使用されるMASH(Multistage noise Shaping Technique)により構成されたMASH方式のΣΔ変調器ΣΔModを示す図である。MASH方式のΣΔ変調器は、1次ΣΔ変調器を多段接続したもので、n次ΣΔ変調ノイズ・シェービング特性が得られるものである。
【0068】
同図に示すように、1段目のΣΔ変調器は、図2に示したΣΔ変調器ΣΔModと同様に加算器Sum11、積分器Intgrtr11としての遅延回路、1ビット出力の量子化器qntzr1、ゲイン1/Gを持つ帰還回路fbc1、加算器Sum12を含むとともに、量子化器qntzr1の出力は積分器Intgrtr12を介して出力分数値情報F/Gの加算器Sum13に伝達される。1段目のΣΔ変調器の加算器Sum12の出力は、2段目のΣΔ変調器へ伝達される。1段目のΣΔ変調器と同様に、2段目のΣΔ変調器は、加算器Sum21、積分器Intgrtr21としての遅延回路、1ビット出力の量子化器qntzr2、ゲイン1/Gを持つ帰還回路fbc2、加算器Sum22、積分器Intgrtr22、加算器Sum23を含むとともに、加算器Sum23の出力と加算器Sum13の入力との間に接続されたディジタル微分器dif11を含む。2段目のΣΔ変調器の加算器Sum22の出力は、3段目のΣΔ変調器へ伝達される。3段目のΣΔ変調器は、加算器Sum31、積分器Intgrtr31としての遅延回路、1ビット出力の量子化器qntzr3、ゲイン1/Gを持つ帰還回路fbc3、加算器Sum32を含み、量子化器qntzr3の出力はディジタル微分器dif21を介して加算器Sum23に伝達される。
【0069】
この図15に示したΣΔ変調器ΣΔModは、3次のΣΔ変調器であり、上記の非特許文献3で報告された高次のΣΔ変調器ΣΔModと原理的に同一のものであり、ノイズ・シェービング特性を改善することができる。この高次のΣΔ変調器ΣΔModは3次のΣΔ変調器に限定されるものではなく、3次から5次のΣΔ変調器を使用することができる。
【0070】
尚、図15に示すように、分子情報Fが供給される入力端子と1段目のΣΔ変調器の加算器Sum11の入力との間には、別の加算部Sum0が接続されている。加算部Sum0の一方の入力端子には分子情報Fが供給され、加算部Sum0の他方の入力端子にディザーditherの出力からの擬似ランダム雑音がディジタル微分器diff31とゲイン1に設定されたアンプ(1)を介して伝達される。
【0071】
図16は、図15のディザーditherの回路構成を示す図である。同図に示すように、ディザーditherは、5段の遅延回路D1〜D5と排他的OR回路EXOR1、3段の遅延回路D6〜D8と排他的OR回路EXOR2、4段の遅延回路D9〜D12と排他的OR回路EXOR3、2段の遅延回路D13、D14で構成されている。初段の遅延回路D1に初期値が入力されることにより、最終段の遅延回路D14の出力が初段の遅延回路D1の入力に帰還される。このディザーditherの出力は215−1通りの組み合わせを持つ”0”と”1”の1ビットのストリームの擬似ランダム雑音である。その結果、ディザーditherの出力に接続されたディジタル微分器diff31の出力は+1、0、−1のいずれかとなるが、+1は連続して出力されず、−1も連続して出力されない。図16に示した高次のΣΔ変調器ΣΔMod(例えば、3次のΣΔ変調器)では、ディザーditherとディジタル微分器diff31とが省略されると、分子情報Fに依存した高次のΣΔ変調器ΣΔModの回路の周期的な分周比変化によるスプリアス信号が発生する。このスプリアス信号を低減するため、図15の加算部Sum0の他方の入力端子に接続されたディザーditherからのディザー振幅を適切な値に設定する。その結果、擬似ランダム雑音によって高次のΣΔ変調器ΣΔModの回路の周期的な分周比変化によるノイズ(フラクショナルノイズ)を乱し、ディザーに際して周波数変換されるスプリアス信号を更に高域に周波数変換する。その結果、スプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路から生成されるシステムクロック信号の高域スプリアス信号成分のレベルを低減することができる。
【0072】
≪スプレッドスペトクラムクロック発生器を内蔵した半導体集積回路≫
図17は、図1に示した本発明の1つの実施形態によるスプレッドスペトクラムクロック発生器を内蔵した半導体集積回路を示す図である。
【0073】
同図において、メイン発振器Main_OSCが、図1に示した本発明の1つの実施形態によるスプレッドスペトクラムクロック発生器である。半導体集積回路の内部コアInt_Coreは、メイン発振器Main_OSCからの随時動作クロック信号CLK_Mainとサブクロック発振回路Sub_OSCからの低速随時動作クロック信号CLK_Sub_slctとが供給される第1内部コアとしての中央処理ユニットCPU、ランダムアクセスメモリRAM、不揮発性メモリとしてのリードオンリーメモリ・フラッシュメモリROM/Flash、周辺モジュールPer_Mod、入出力ポートI/O Portと、サブクロック発振回路Sub_OSCからの常時動作クロック信号CLK_Sub_alwsが供給される第2内部コアとしてのタイマーTimer、スタンバイ制御回路Stby_Cntとから構成されている。また、内部コアInt_Coreの第1内部コアとしての中央処理ユニットCPU、ランダムアクセスメモリRAM、不揮発性メモリとしてのリードオンリーメモリ・フラッシュメモリROM/Flash、周辺モジュールPer_Mod、入出力ポートI/O Portと第2内部コアとしてのタイマーTimer、スタンバイ制御回路Stby_Cntとは外部リセット信号Ext_Resetによりリセットされることができる。尚、サブクロック発振回路Sub_OSCの消費電力は、メイン発振器Main_OSCの消費電力よりも小さく設定されている。
【0074】
このようにメイン発振器Main_OSCが図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器で構成されることにより、例えば中央処理ユニットCPUとランダムアクセスメモリRAMとの間のチップ内部のデータ転送エラーレートが低減され、入出力ポートI/O Portを介しての中央処理ユニットCPUとHDD(ハードディスク装置)等の外部デバイスとの間のチップ外部のデータ転送エラーレートも低減されることができる。また、スプレッドスペトクラムクロック発生器の採用により、EMIのような不要輻射が軽減されて、内部コアInt_Coreの各種回路の雑音による誤動作も軽減され、半導体集積回路のチップ外部の他の電子機器への干渉も軽減されることができる。
【0075】
尚、図17に示したメイン発振器Main_OSCからの随時動作クロック信号CLK_Mainの周波数は制御信号Low_f、High_fにより変更されることができる。制御信号Low_f、High_fがローレベルの時には、低速(例えば、20MHz)の随時動作クロック信号CLK_Mainがメイン発振器Main_OSCから出力される。制御信号Low_f、High_fがハイレベルの時には、高速(例えば、200MHz)の随時動作クロック信号CLK_Mainがメイン発振器Main_OSCから出力される。低速クロックは半導体集積回路がバッテリー動作中で低消費電力が必要な際に使用され、高速クロックは半導体集積回路が商用電源で動作して高速データ処理能力が必要な際に使用されることができる。
【0076】
しかし、このようにメイン発振器Main_OSCの随時動作クロック信号CLK_Mainの周波数が10倍変化するにともなって、例えば図8の遅延回路Dly 1、DLy nのそれぞれの遅延時間を10倍変化する必要がある。
【0077】
図18は図8と図12の遅延回路Dly 1、DLy nに使用するための可変遅延回路を示す図である。
【0078】
同図に示すように、低速クロックとするためにメイン発振器Main_OSCの制御信号Low_f、High_fがローレベルとなると図18のスイッチSWがオフ状態となる。抵抗Rに流れる電流はカレントミラーの入力トランジスタPMOSQp0と出力トランジスタPMOSQp1でミラーされる。このミラーされた電流は、他のカレントミラーNMOSQn1、Qn2とQn3、Qn4とを介して遅延回路Dly 1、DLy nとしてのCMOSインバータのPMOSMp1のソースに供給される。また、ミラーされた電流と同一値の電流がNMOSQn5を介して、遅延回路Dly 1、DLy nとしてのCMOSインバータのNMOSMn1のソースに供給される。この時のCMOSインバータのPMOSMp1、NMOSMn1の動作電流は比較的低い値なので、遅延回路Dly 1、DLy nの遅延時間は大きい。
【0079】
一方、高速クロックとするためにメイン発振器Main_OSCの制御信号Low_f、High_fがハイレベルとなると図18のスイッチSWがオン状態となる。抵抗Rに流れる電流はカレントミラーの入力トランジスタPMOSQp0とスイッチSWによって並列接続された10個の出力トランジスタPMOSQp1〜PMOSQp10で大きなミラー比で電流増幅される。この大きなミラー比で電流増幅された電流は、他のカレントミラーNMOSQn1、Qn2とQn3、Qn4とを介して遅延回路Dly 1、DLy nとしてのCMOSインバータのPMOSMp1のソースに供給される。また、大きなミラー比で電流増幅された電流と同一値の電流がNMOSQn5を介して、遅延回路Dly 1、DLy nとしてのCMOSインバータのNMOSMn1のソースに供給される。この時のCMOSインバータのPMOSMp1、NMOSMn1の動作電流は高い値なので、遅延回路Dly 1、DLy nの遅延時間は小さい。このようにして、遅延回路Dly 1、DLy nのそれぞれの遅延時間を10倍変化させることが可能である。
【0080】
また、メイン発振器Main_OSCのクロック信号CLK_Mainの周波数の高低に対応させて、図8、図12、図13のチャージポンプ回路Ch_Pmp1、Ch_Pmp2…Ch_Pmpnの充電電流と放電電流との電流値を大小に制御することが推奨される。このようにして、遅延回路Dly 1、DLy nの遅延時間とチャージポンプ回路Ch_Pmp1、Ch_Pmp2…Ch_Pmpnの充電電流と放電電流との電流値とを制御することにより、チャージポンプ回路の出力電圧VCNTの複数回の電圧変化を適切に制御することが可能となる。
【0081】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0082】
例えば、フラクショナル分周器の分周比を制御する制御ユニットとしては、ΣΔ変調器以外にも変調プロファイルのデータを格納したレジスタを使用することもできる。
【0083】
例えば、本発明のフラクショナル−N PLL回路はスプレッドスペトクラムクロック発生器以外にも例えばフラクショナルシンセサイザにも使用できることは言うまでもない。フラクショナルシンセサイザは、冒頭で説明したように基準周波数よりも精密な周波数解像度を持つので、携帯電話機器や無線LANに使用されるRF ICの受信系回路と送信系回路とに使用されるキャリア信号を生成するために使用されている。このRF ICでのキャリア信号の生成にも、本発明のフラクショナル−N PLL回路が利用されることができる。
【0084】
また、本発明はシングルチップの半導体集積回路以外にも、SIP(System in Package)やMCM(Multi Chips Module)の内部のクロック発振器にも適用することができる。SIPやMCMのように1つのパッケージや1つのモジュールの内部にCPU、システムLSI、種々のメモリ等の複数の半導体デバイスを搭載する場合に、本発明のスプレッドスペトクラムクロック発生器を採用することによって、複数の半導体デバイスの間のデータ転送エラーレートを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、本発明に先立って本発明者等によって検討されたスプレッドスペトクラムクロック発生器および本発明のひとつの実施形態によるスプレッドスペトクラムクロック発生器を構成するフラクショナル−N PLL回路を示す図である。
【図2】図2は、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器を構成するフラクショナル−N PLL回路から生成されるPLL出力信号の周波数が時間とともにどのように変化するかを示す図である。
【図3】図3は、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器を構成するフラクショナル−N PLL回路から生成されるPLL出力信号PLLOUTの周波数スペクトラムを示す図である。
【図4】図4は、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器(SSCG)を構成するフラクショナル−N PLL回路のフラクショナル分周器DIVとΣΔ変調器ΣΔModとの動作をより詳細に説明する図である。
【図5】図5は、図4に示したΣΔ変調器ΣΔModの内部構成を示す図である。
【図6】図6は、図5に示したΣΔ変調器ΣΔModの動作を示す図である。
【図7】図7は、本発明に先立って本発明者等によって検討されたスプレッドスペトクラムクロック発生器を構成するフラクショナル−N PLL回路において、フラクショナル分周器の出力信号の周波数・位相が基準クロック信号の周波数・位相と一致するような負帰還制御の様子を示す図である。
【図8】図8は、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器を構成するフラクショナル−N PLL回路のサイクルトゥサイクルジッターを低減するための位相比較器とチャージポンプ回路の1つの実施形態の構成を示す図である。
【図9】図9は、図8のチャージポンプ回路により駆動されて、出力電圧を生成するループフィルタを示す図である。
【図10】図10は、図8に示した位相比較器とチャージポンプ回路の各部の波形を示す図である。
【図11】図11は、位相比較器とチャージポンプ回路の分割数nが2の場合のループフィルタの出力電圧の波形を示す図である。
【図12】図12は、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器を構成するフラクショナル−N PLL回路のサイクルトゥサイクルジッターを低減するための位相比較器とチャージポンプ回路のその他の実施形態の構成を示す図である。
【図13】図13は、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器を構成するフラクショナル−N PLL回路のサイクルトゥサイクルジッターを低減するための位相比較器とチャージポンプ回路のその他の実施形態の構成を示す図である。
【図14】図14は、図13に示したインバータと2分割された位相比較器と2分割されたチャージポンプ回路とからなる位相比較器とチャージポンプ回路の各部の波形を示す図である。
【図15】図15は、図1に示したスプレッドスペトクラムクロック発生器を構成するフラクショナル−N PLL回路で使用されるMASH方式のΣΔ変調器を示す図である。
【図16】図16は、図15のディザーの回路構成を示す図である。
【図17】図17は、図1に示した本発明の1つの実施形態によるスプレッドスペトクラムクロック発生器を内蔵した半導体集積回路を示す図である。
【図18】図18は図8と図12の遅延回路に使用するための可変遅延回路を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
RCLK 基準クロック信号
PFD 位相周波数比較器
位相周波数比較器 チャージポンプ回路
Lp_Flt ループフィルタ
VCNT 出力電圧
VCO 電圧制御発振器
DIV フラクショナル分周器
ΣΔMod 制御ユニット(ΣΔ変調器)
VCLK 出力帰還信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロック信号が一方の入力端子に供給される位相周波数比較器と、
前記位相周波数比較器の出力信号に応答するチャージポンプ回路と、
前記チャージポンプ回路の出力信号に応答するループフィルタと、
前記ループフィルタの出力電圧に応答する電圧制御発振器と、
前記電圧制御発振器の出力信号に応答するフラクショナル分周器と、
前記フラクショナル分周器の平均分周比が小数を含むように前記フラクショナル分周器の分周比を1つの整数から他の整数に変更する制御ユニットとを含み、
前記フラクショナル分周器の出力帰還信号に前記位相周波数比較器の他方の入力端子が応答するフラクショナル−N PLL回路を具備しており、
前記基準クロック信号の1つのパルスの位相と前記出力帰還信号の1つのパルスの位相との位相差検出動作に基づく前記ループフィルタの前記出力電圧の電圧生成動作が時間差を有する複数の生成動作により実行されるように前記位相周波数比較器と前記チャージポンプ回路との少なくともいずれか一方が構成されている半導体集積回路。
【請求項2】
前記位相周波数比較器は第1の位相周波数比較器と第2の位相周波数比較器とを含み、
前記チャージポンプ回路は第1のチャージポンプ回路と第2のチャージポンプ回路とを含み、
前記第1の位相周波数比較器の出力信号は前記第1のチャージポンプ回路の入力に供給され、前記第2の位相周波数比較器の出力信号は前記第2のチャージポンプ回路の入力に供給され、
前記基準クロック信号と前記出力帰還信号とが供給されることにより遅延基準クロック信号と遅延帰還信号とを生成する遅延回路を更に含み、
前記第1の位相周波数比較器の一方の入力端子と他方との入力端子とには前記基準クロック信号と前記出力帰還信号とがそれぞれ供給され、前記第2の位相周波数比較器の一方の入力端子と他方との入力端子とには前記遅延回路から前記遅延基準クロック信号と前記遅延帰還信号とがそれぞれ供給され、
前記第1のチャージポンプ回路の第1の出力信号と前記第2のチャージポンプ回路の第2の出力信号とは、前記ループフィルタに供給される請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項3】
前記チャージポンプ回路は第1のチャージポンプ回路と第2のチャージポンプ回路とを含み、
前記位相周波数比較器の位相比較出力信号が供給されることにより遅延位相比較出力信号を生成する遅延回路を更に含み、
前記第1のチャージポンプ回路の入力には前記位相周波数比較器の前記位相比較出力信号が供給され、前記第2のチャージポンプ回路の入力には前記遅延回路から前記遅延位相比較出力信号が供給され、
前記第1のチャージポンプ回路の第1の出力信号と前記第2のチャージポンプ回路の第2の出力信号とは、前記ループフィルタに供給される請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項4】
前記位相周波数比較器は第1の位相周波数比較器と第2の位相周波数比較器とを含み、前記チャージポンプ回路は第1のチャージポンプ回路と第2のチャージポンプ回路とを含み、
前記基準クロック信号と前記出力帰還信号とが供給されることにより反転基準クロック信号と反転負帰還信号とを生成するインバータを更に含み、
前記第1の位相周波数比較器の一方の入力端子と他方との入力端子とには前記基準クロック信号と前記出力帰還信号とがそれぞれ供給され、前記第2の位相周波数比較器の一方の入力端子と他方との入力端子とには前記インバータから前記反転基準クロック信号と前記反転負帰還信号とがそれぞれ供給され、
前記第1のチャージポンプ回路の第1の出力信号と前記第2のチャージポンプ回路の第2の出力信号とは、前記ループフィルタに供給される請求項1に記載の半導体集積回路。
【請求項5】
前記制御ユニットはΣΔ変調器である請求項1から請求項4までのいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項6】
前記ΣΔ変調器は1次ΣΔ変調器を複数多段としたMASH型である請求項5に記載の半導体集積回路。
【請求項7】
前記MASH型の前記ΣΔ変調器にはディジタル微分器を介してディザー回路からの擬似ランダム雑音が供給される請求項6に記載の半導体集積回路。
【請求項8】
前記ループフィルタは複数の抵抗と複数の容量とを含む高次のループフィルタにより構成されている請求項1から請求項4までのいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項9】
前記ループフィルタは複数の抵抗と複数の容量とを含む高次のループフィルタにより構成されている請求項5に記載の半導体集積回路。
【請求項10】
前記ループフィルタは複数の抵抗と複数の容量とを含む高次のループフィルタにより構成されている請求項6と請求項7とのいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項11】
前記フラクショナル−N PLL回路の前記電圧制御発振器の出力信号の周波数の高低に応じて前記遅延回路の遅延時間の小大が制御される請求項2または請求項3に記載の半導体集積回路。
【請求項12】
前記フラクショナル−N PLL回路の前記電圧制御発振器の出力信号の周波数の高低に応じて前記遅延回路の動作電流の大小が制御されることにより、前記遅延回路の前記遅延時間の小大が制御されるものである請求項11に記載の半導体集積回路。
【請求項13】
前記フラクショナル−N PLL回路はスプレッドスペクトラムクロック発生器を構成する請求項1から請求項4までのいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項14】
前記フラクショナル−N PLL回路はスプレッドスペクトラムクロック発生器を構成する請求項5に記載の半導体集積回路。
【請求項15】
前記フラクショナル−N PLL回路はスプレッドスペクトラムクロック発生器を構成する請求項6と請求項7とのいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項16】
前記フラクショナル−N PLL回路はスプレッドスペクトラムクロック発生器を構成する請求項11と請求項12とのいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項17】
複数の内部デバイスを含む内部コアを更に含み、前記内部コアの前記複数の内部デバイスに前記スプレッドスペクトラムクロック発生器を構成する前記フラクショナル−N PLL回路の前記電圧制御発振器の前記出力信号に基づく動作クロック信号が供給される請求項13に記載の半導体集積回路。
【請求項18】
複数の内部デバイスを含む内部コアを更に含み、前記内部コアの前記複数の内部デバイスに前記スプレッドスペクトラムクロック発生器を構成する前記フラクショナル−N PLL回路の前記電圧制御発振器の前記出力信号に基づく動作クロック信号が供給される請求項14に記載の半導体集積回路。
【請求項19】
複数の内部デバイスを含む内部コアを更に含み、前記内部コアの前記複数の内部デバイスに前記スプレッドスペクトラムクロック発生器を構成する前記フラクショナル−N PLL回路の前記電圧制御発振器の前記出力信号に基づく動作クロック信号が供給される請求項15に記載の半導体集積回路。
【請求項20】
複数の内部デバイスを含む内部コアを更に含み、前記内部コアの前記複数の内部デバイスに前記スプレッドスペクトラムクロック発生器を構成する前記フラクショナル−N PLL回路の前記電圧制御発振器の前記出力信号に基づく動作クロック信号が供給される請求項16に記載の半導体集積回路。
【請求項21】
前記内部コアの前記複数の内部デバイスのひとつの内部デバイスは半導体集積回路外部の外部デバイスと接続可能に適合化され、前記ひとつの内部デバイスと前記外部デバイスとの間の外部データ転送が前記動作クロック信号により制御される請求項17に記載の半導体集積回路。
【請求項22】
前記内部コアの前記複数の内部デバイスのひとつの内部デバイスは半導体集積回路外部の外部デバイスと接続可能に適合化され、前記ひとつの内部デバイスと前記外部デバイスとの間の外部データ転送が前記動作クロック信号により制御される請求項18に記載の半導体集積回路。
【請求項23】
前記内部コアの前記複数の内部デバイスのひとつの内部デバイスは半導体集積回路外部の外部デバイスと接続可能に適合化され、前記ひとつの内部デバイスと前記外部デバイスとの間の外部データ転送が前記動作クロック信号により制御される請求項19に記載の半導体集積回路。
【請求項24】
前記内部コアの前記複数の内部デバイスのひとつの内部デバイスは半導体集積回路外部の外部デバイスと接続可能に適合化され、前記ひとつの内部デバイスと前記外部デバイスとの間の外部データ転送が前記動作クロック信号により制御される請求項20に記載の半導体集積回路。
【請求項25】
前記フラクショナル−N PLL回路は周波数シンセサイザを構成する請求項1から請求項4までのいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項26】
前記フラクショナル−N PLL回路は周波数シンセサイザを構成する請求項5に記載の半導体集積回路。
【請求項27】
前記フラクショナル−N PLL回路は周波数シンセサイザを構成する請求項6と請求項7とのいずれかに記載の半導体集積回路。
【請求項28】
前記フラクショナル−N PLL回路は周波数シンセサイザを構成する請求項11と請求項12とのいずれかに記載の半導体集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−288375(P2007−288375A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111479(P2006−111479)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】