説明

半導電性樹脂組成物

【課題】導電剤を樹脂と容易に均一に混合することができ、よって半導電性ロール等を製造した場合に製品の全面にわたり抵抗値が均一で安定化されたものとすることができる導電性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ガラス転移点が45℃以下の樹脂と、アニオンがビス(フルオロスルホニル)イミドであるイオン対であって、融点が20℃以下であるイオン対とを含有するものとする。イオン対としては、含窒素オニウムカチオン、含硫黄オニウムカチオン、及び含リンオニウムカチオンからなる群から選択されたカチオンを1種以上含むものを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導電性樹脂組成物に関し、導電剤として特定のイオン対を用い、半導電性弾性体を得るのに用いることができる半導電性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターなどのOA機器はロールの帯電、除電により画像が形成される。そのため、ロールには半導電性が求められる。しかし、一般にゴムやプラスチック類は絶縁性が高いため、半導電性を持たせるためにイオン性または電子導電性を持つ導電剤を樹脂に添加している。導電剤としては、導電性カーボンブラックが一般的であるが、近年ではホウ素錯体塩、リチウム塩なども使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には特定のホウ素錯体を含有するイオン導電剤を含む導電性樹脂組成物が開示されている。しかし、当該イオン導電剤は固体であることから樹脂との相溶性が十分ではなく、従って所望の導電性能が得られないという欠点を有する。
【0004】
一方、特許文献2にはイオン導電剤としてリチウム塩を使用した導電性弾性ローラが開示されている。しかし、リチウム塩は吸湿性を有するため取扱いが困難である点や、電気特性等が水分に影響されやすいという点で問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−127483号公報
【特許文献2】特開2008−122858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記以外にも、従来の導電性樹脂組成物で使用されている導電剤は、うまく分散しないと均一にならない、溶解しにくい、所望の導電性能を得るためには添加量が非常に多くなるなどの問題点があった。
【0007】
本発明は、これらの問題点に鑑みてなされたものであり、導電剤を樹脂と容易に均一に混合することができ、よって半導電性弾性ロール等の成型品を製造した場合に成型品の全面にわたり抵抗値が均一で安定化されたものとすることができる半導電性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の半導電性樹脂組成物は、上記の課題を解決するために、ガラス転移点が45℃以下の樹脂と、アニオンがビス(フルオロスルホニル)イミドであるイオン対であって、融点が20℃以下であるイオン対とを含有するものとする。
【0009】
上記本発明の半導電性樹脂組成物において、イオン対としては、含窒素オニウムカチオン、含硫黄オニウムカチオン、及び含リンオニウムカチオンからなる群から選択されたカチオンを1種以上含むものを用いることができる。
【0010】
上記イオン対は、下記一般式(A)〜(D)のいずれかにより表されるカチオンからなる群から選択されたで表されるカチオンを1種以上含むことが好ましい。
【化1】

【0011】
但し、式(A)中のRは、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、RおよびRは、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよく、同一でも異なっていてもよいが、窒素原子が2重結合を有する場合はRはなく;
式(B)中のRは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、R、RおよびRは、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、同一でも異なっていてもよく;
式(C)中のRは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、R、R10およびR11は、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、同一でも異なっていてもよく;
式(D)中のXは、窒素、硫黄、又はリン原子を表し、R12、R13、R14およびR15は、炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、同一でも異なっていてもよいが、Xが硫黄原子の場合はR12はない。
【0012】
上記イオン対は、1−オクチル−2−メチルピリジニウムイオン、1−オクチル−3−メチルピリジニウムイオン、1−オクチル−4−メチルピリジニウムイオン及び1−オクチルピリジニウムイオンからなる群から選択されたカチオンを1種以上含むことが特に好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の半導電性樹脂組成物は、導電剤が常温で液体であり、樹脂に容易に均一に混合することができるため、これを用いて全面に渡り抵抗値が均一で安定化された半導電性弾性ロール等の成型品が得られる。
【0014】
しかも導電剤の添加量による電気抵抗値のコントロールが容易であるので、所望の電気抵抗値を有する半導電性樹脂組成物が確実に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[イオン対]
本発明で導電剤として用いるイオン対は、アニオンとしてビス(フルオロスルホニル)イミド(以下、FSIと略記する場合もある)アニオンを含有するものである。
【0016】
FSI化合物の製造方法には多くの形態があり、特に限定されないが、スルファミン酸、クロロスルホン酸およびハロゲン化剤より得られるビス(クロロスルホニル)イミドアニオン化合物を窒素含有化合物(例えばトリメチルアミン)などの塩基触媒を使用してフッ素置換し、FSI化合物を得る方法が高収率であることから好ましい。また、この方法により得られるFSI化合物は高純度であり、生成物を導電剤として適用する場合にはたいへん優れている。
【0017】
また、本発明で用いるイオン対は、カチオンが、含窒素オニウムカチオン、含硫黄オニウムカチオン、または含リンオニウムカチオンの何れか1種以上であるイオン液体であることが好ましい。このイオン液体は、下記一般式(A)〜(D)のいずれかにより表されるカチオンを一種以上含むことがより好ましい。これらのカチオンを含むイオン液体を用いることにより、さらに導電性能の優れたものが得られる。
【化2】

【0018】
但し、式(A)中のRは、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、RおよびRは、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、同一でも異なっていてもよい。但し、窒素原子が2重結合を有する場合、Rはない。
【0019】
式(B)中のRは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、R、R、およびRは、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、同一でも異なっていてもよい。
【0020】
式(C)中のRは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、R、R10、およびR11は水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよい。
【0021】
式(D)中のXは、窒素、硫黄、又はリン原子を表し、R12、R13、R14、およびR15は、炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよく、同一でも異なっていてもよい。但し、Xが硫黄原子の場合、R12はない。
【0022】
これらのカチオンは、オクチル基、エチルヘキシル基、アリル基などで修飾することも考えられる。
【0023】
上記式(A)で表されるカチオンの例としては、ピリジニウムカチオン、オクチルピペリジニウムカチオン、アリルピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1−オクチル−2−メチルピリジニウムカチオン、1−オクチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−オクチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−オクチルピリジニウムカチオン、2−エチルヘキシルピリジニウムカチオン、1−エチルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−へキシルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、2−メチル−1−ピロリンカチオン、1−エチル−2−フェニルインドールカチオン、1,2−ジメチルインドールカチオン、1−エチルカルバゾールカチオンが挙げられる。
【0024】
式(B)で表されるカチオンの例としては、イミダゾリウムカチオン、オクチルイミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0025】
式(C)で表されるカチオンの例としては、ピラゾリウムカチオン、ビラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1−メチルピラゾリウムカチオン、3−メチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2−メチルピラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。
【0026】
式(D)で表されるカチオンの例としては、テトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、上記アルキル基の一部がアルケニル基やアルコキシル基、さらにはエポキシ基に置換されたものなどが挙げられる。
【0027】
具体例としては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、トリブチルスルホニウムカチオン、トリヘキシルスルホニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオン、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラヘキシルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、ベンザルコニウムカチオンなどが挙げられる。
【0028】
中でもトリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオンなどの非対称のテトラアルキルアンモニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオンなどのトリアルキルスルホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオンなどの非対称のテトラアルキルホスホニウムカチオンが好ましく用いられる。
【0029】
上記イオン対は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
なお、上記イオン液体などのイオン対は、市販のものを使用してもよいが、公知の方法により合成することも可能である。合成方法は、目的とするイオン対が得られれば特に限定されないが、例としてはハロゲン化物法、水酸化物法、酸エステル法、錯形成法、および中和法などが挙げられる。
【0031】
イオン対の配合量は、使用するベース樹脂とイオン液体の相溶性により変わるため一概には言えないが、一般的にはベース樹脂100重量部に対して、0.01〜40重量部が好ましく、0.03〜20重量部がより好ましく、0.05〜10重量部が最も好ましい。0.01重量部未満であると十分な導電性能が得られず、40重量部を超えると被着体への汚染が増加する傾向がある。
【0032】
[ベース樹脂]
ベース樹脂は、ガラス転移点が45℃以下であればよく、本発明の目的とする用途に従来から使用されているものが特に限定なく使用できる。ガラス転移点が45℃を超えると樹脂組成物から得られる硬化物が硬くなって弾性を示さなくなり、また所望の導電性も得られ難くなる。
【0033】
ベース樹脂の好ましい例としては、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートの1種または2種以上を主成分とするアクリル系ポリマーを含有するものを挙げることができる。
【0034】
また、1液タイプまたは2液タイプのウレタン樹脂、熱重合または放射線重合によって重合可能なアクリル樹脂やエポキシ樹脂なども挙げることができる。
【0035】
上記放射線としては、例えば、紫外線、レーザー線、α線、β線、γ線、x線、電子線などが挙げられる。なお、放射線として紫外線を用いる場合には光重合開始剤を添加する。光重合開始剤は、放射線反応性成分の種類に応じ、その重合反応の引金となり得る適当な波長の紫外線を照射することにより、ラジカルもしくはカチオンを生成する物質であればよい。
【0036】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、o−ベンゾイル安息香酸メチル−p−ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン等のベンゾイン類、ベンジルジメチルケタール、トリクロルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン類、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−4’−イソプロピル−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、p−クロルベンゾフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフニノン等のベンゾフェノン類、2−クロルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(エトキシ)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、ベンジル、ジベンゾスベロン、α−アシルオキシムエステルなどが挙げられる。
【0037】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩や、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体などの有機金属錯体類、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナートなどが挙げられる。上記光重合開始剤については、2種以上併用することも可能である。
【0038】
光重合開始剤は、アクリル系ポリマー100重量部に対し、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜7重量部の範囲で配合するのが好ましい。
【0039】
さらにアミン類などの光重合開始助剤を併用することも可能である。光重合開始助剤としては、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルなどが挙げられる。光重合開始助剤は、2種以上併用することも可能である。光重合開始助剤は、アクリル系ポリマー100重量部に対し、0.05〜10重量部、さらには0.1〜7重量部の範囲で配合するのが好ましい。
【0040】
[半導電性樹脂組成物の調製]
本発明の半導電性樹脂組成物は上記ベース樹脂にイオン対を所定量配合して常法により混合することにより得られる。
【0041】
本発明の半導電性樹脂組成物には、上記重合開始剤や重合開始助剤の他、希釈溶剤、滑剤、レベリング剤、フィラー等を必要に応じて添加することもできる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
1.ウレタンアクリレートの合成
<ウレタンアクリレートA>
イソホロンジイソシアネート(IPDI)444g(2モル)と3−メチル−1,5−ペンタンジオール・アジピン酸・テレフタル酸のポリエステルジオール(1モル)1000gを70〜80℃の条件下で残存イソシアネート濃度が所定量になるまで反応させ、その後、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)(2モル)232gとハイドロキノンモノメチルエーテル0.8gを添加し、70〜80℃で残存イソシアネート濃度が0.1重量%以下になるまで反応させた。
【0044】
<ウレタンアクリレートB〜G>
反応に供する各成分を表1に示す化合物に変更した以外は、各成分の配合割合及び反応条件等をウレタンアクリレートAの合成方法と同じにして、ウレタンアクリレートB〜Gを合成した。
【0045】
2.半導電性樹脂組成物の調製
上記により得られたウレタンアクリレートA〜Gに表1に示すイオン液体を同表に示す割合(重量部)でそれぞれ配合し、混合して、半導電性樹脂組成物を得た。
【0046】
【表1】

【0047】
3.半導電性樹脂組成物の評価
上記により得られた半導電性樹脂組成物を高圧水銀灯200mJ/cmの紫外線照射により膜厚約100μmのフィルム状に硬化させて、引張強度、伸び、弾性率、ガラス転移点、体積抵抗をそれぞれ以下の方法・条件により測定した。結果を表2に示す。
【0048】
<引張強度・伸び・弾性率>
株式会社オリエンテック製 TENSILONを用いて、温度20℃、引張速度50mm/minの条件下で、最大応力(引張強度)、破断時の伸度(伸び)を測定し、応力−伸度曲線の初期の傾きから引張弾性率を求めた。
【0049】
<ガラス転移点>
株式会社ユービーエム製 Rheogel−E4000を用いて、昇温速度2℃/min、周波数10Hzの条件下で、tanδの極大値より求めた。
【0050】
<体積抵抗測定条件>
株式会社アドバンテスト製 R8340A ULTRA HIGH RESISTANCE METERを用いて、温度20℃、湿度65%の条件下で測定した。
【0051】
【表2】

【0052】
表2に示された結果から、ガラス転移点が45℃を超える樹脂を用いた比較例1,2と比較して、実施例では所望の弾性、導電性が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の半導電性樹脂組成物は、複写機等の帯電ロール、現像ロール、転写ロール、定着ロール等の弾性を有する成型品の製造に好適に使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移点が45℃以下の樹脂と、アニオンがビス(フルオロスルホニル)イミドであるイオン対であって、融点が20℃以下であるイオン対とを含有することを特徴とする半導電性樹脂組成物。
【請求項2】
前記イオン対が、含窒素オニウムカチオン、含硫黄オニウムカチオン、及び含リンオニウムカチオンからなる群から選択されたカチオンを1種以上含むことを特徴とする、請求項1に記載の半導電性樹脂組成物。
【請求項3】
前記イオン対が、下記一般式(A)〜(D)のいずれかにより表されるカチオンからなる群から選択されたカチオンを1種以上含むことを特徴とする、請求項2に記載の半導電性樹脂組成物;
【化1】

但し、式(A)中のRは、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、RおよびRは、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでもよく、同一でも異なっていてもよいが、窒素原子が2重結合を有する場合はRはなく;
式(B)中のRは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、R、RおよびRは、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、同一でも異なっていてもよく;
式(C)中のRは、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、R、R10およびR11は、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、同一でも異なっていてもよく;
式(D)中のXは、窒素、硫黄、又はリン原子を表し、R12、R13、R14およびR15は、炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでいてもよく、同一でも異なっていてもよいが、Xが硫黄原子の場合はR12はない。
【請求項4】
前記イオン対が、1−オクチル−2−メチルピリジニウムイオン、1−オクチル−3−メチルピリジニウムイオン、1−オクチル−4−メチルピリジニウムイオン及び1−オクチルピリジニウムイオンからなる群から選択されたカチオンを1種以上含むことを特徴とする、請求項3に記載の半導電性樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−107134(P2012−107134A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257736(P2010−257736)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】