説明

単一ローブの作動解除ロッカーアーム

【課題】内燃エンジンの作動解除ロッカーアームを改良する。
【解決手段】少なくとも1つのリフトの無い安全ローブを有しているカムと共に使用する作動解除ロッカーアームが提供される。ロッカーアーム上の複数の安全ローブ接触面は、ロッカーアームの異常動作時に複数の安全ローブと接触するようにされている。ロッカーアームが作動解除されているとき、ラッシュアジャスタの過度の充填によってロッカーアームが回転しているカムに好ましくないほど近づくと、複数の安全ローブ接触面は複数の安全ローブと接触することができる。この接触によって、特定の異常動作時にロッカーアームの運動の範囲が限定され、作動解除状態と作動状態の間でのより効果的な移行が促進され、ロッカーアームとカムローブとの間の破壊的な接触が防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、内燃エンジンの作動解除ロッカーアームに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの内燃エンジンは、カムの回転運動をエンジン弁の開閉に適した直動運動に変換するためのロッカーアームを利用している。作動解除ロッカーアームは、ロッカーアームの選択的な作動と作動解除とを可能にする機構を組み込んでいる。作動解除状態では、ロッカーアームは作動喪失運動(lost motion movement)を呈することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この機構では、作動解除状態から作動状態へ戻るために、特定の位置または位置範囲にロッカーアームがあることが必要な場合がある。この特定の位置または位置範囲は、作動解除状態においてラッシュアジャスタが過度に充填された際などに、ラッシュアジャスタが拘束されずに動くことのできる位置であるが、一方で容易に到達できない位置である。
【0004】
本発明の目的は、内燃エンジン用の作動解除ロッカーアームを改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施態様において、少なくとも1つのリフトローブと少なくとも1つの実質的に円形の安全ローブとを有するカムと係合するロッカーアームが提供される。ロッカーアームが係合可能にされた少なくとも1つのリフトローブは、各々がリフトローブ基準円直径を有するリフトローブ基準円を備え、円形の安全ローブは、リフトローブ基準円と同心に配置され基準円直径より小さい直径を有している。ロッカーアームは、外側アームと、内側アームと、ピボット軸と、リフトローブ接触軸受と、軸受軸と、軸受軸のばねと、を有している。外側アームと内側アームは第1及び第2の側部アームを有している。第1及び第2の外側側部アームは、それらの中に、正常なエンジン動作中には安全ローブから離れるようにされた少なくとも1つの安全ローブ接触面を有している。第1及び第2の外側側部アームは、ピボット軸を受け入れるようにされた複数の外側ピボット軸開口も有している。内側アームは、第1の外側側部アームと第2の外側側部アームとの間に配置されている。第1及び第2の内側側部アームは、ピボット軸を受け入れるようにされた複数の内側ピボット軸開口も有している。第1及び第2の内側側部アームは、軸受軸を受け入れるようにされた複数の内側軸受軸開口を有している。ピボット軸は複数の内側ピボット軸開口と複数の外側ピボット軸開口の中に取り付けられ、軸受軸は内側アームの軸受軸開口に取り付けられている。1つ以上の軸受軸のばねが外側アームに固定されており、軸受軸の方に偏位して軸受軸と接触している。リフトローブ接触軸受は第1の内側側部アームと第2の内側側部アームとの間で軸受軸に取り付けられている。
【0006】
他の態様では、リフトローブと少なくとも1つの安全ローブとを有しているカムと係合するロッカーアームは、カムからロッカーアームに運動を伝達するカム接触部材と、少なくとも1つの偏位ばねと、を有している。ロッカーアームの外側アームは、ロッカーアームが異常動作をしている間だけ1つ以上の安全ローブに接触できるようにされた少なくとも1つの安全ローブ接触面を有している。内側アームは外側アームの第1の側部アームと第2の側部アームとの間に配置され、第1及び第2の内側側部アームを有している。カム接触部材は第1の内側側部アームと第2の内側側部アームとの間に配置されている。
【0007】
さらに他の態様では、リフトローブと第1及び第2の安全ローブとを有するカムと係合する作動解除ロッカーアームが提供される。ロッカーアームは、第1の端部と、第2の端部と、外側アームと、内側アームと、ピボット軸と、カムからロッカーアームへ運動を伝達するリフトローブ接触部材と、ロッカーアームを選択的に作動解除するラッチと、少なくとも1つの偏位ばねと、を有している。外側アームは第1及び第2の外側側部アームを有している。第1及び第2の外側側部アームは、ロッカーアームが異常動作をしている間だけ第1及び第2の安全ローブに接触するようにされた安全ローブ接触面を有している。外側側部アームの軸スロットはリフトローブ接触部材を受け入れるようにされており、また、内側アームの外側アームに対する作動喪失運動を許容するようにされている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内燃エンジン用の作動解除ロッカーアームを改良することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1及び第2の安全ローブ接触面120,122が組み込まれた例示的なロッカーアーム100の斜視図である。
【図2】第1及び第2の安全ローブ接触面120,122が組み込まれた例示的なロッカーアーム100の分解図である。
【図3】カム300、ラッシュアジャスタ340、及び弁棒350との関連で示す作動解除ロッカーアーム100の側面図である。
【図4】カム300、ラッシュアジャスタ340、及び弁棒350との関連で示す作動解除ロッカーアーム100の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面に図示されている要素同士の境界は、境界の例を示しているに過ぎないことが理解されるであろう。当業者は、1つの要素を複数の要素として構成できること、及び複数の要素を1つの要素として構成できることを理解するであろう。内部の特徴として示している要素を外部の特徴として実施することができ、その逆も可能である。
【0011】
さらに、以下の添付の図面と説明とにおいて、同じ部分はそれぞれ、図面及び明細書を通し、同じ参照番号で示されている。図面は一定の縮尺で描かれていない場合もあり、図示の便宜上、特定の部品の大きさが誇張されている。
【0012】
図面を説明する便宜上、以下の説明では特定の用語が使用されるが、それらは限定的な意味でない。以下の説明で使用される「上向き」、「下向き」、及び方向を示す他の用語は、それらの用語の通常の意味に理解され、図面を通常の状態で見たときの方向を指している。
【0013】
図1は、例示的な作動解除ロッカーアーム100の斜視図を示している。作動解除ロッカーアーム100は単に一例として示しており、本願の主題である作動解除ロッカーアーム100の構成が本願に含まれる図面に示された作動解除ロッカーアーム100の構成に限定されないことが理解されるであろう。
【0014】
図1と2に示すように、作動解除ロッカーアーム100は外側アーム102を有し、外側アーム102は、第1の外側側部アーム104と第2の外側側部アーム106とを有している。内側アーム108が第1の外側側部アーム104と第2の外側側部アーム106との間に配置されている。内側アーム108は第1の内側側部アーム110と第2の内側側部アーム112とを有している。内側アーム108及び外側アーム102は共に、ロッカーアーム100の第1の端部101の近傍に位置しているピボット軸114に取り付けられている。ピボット軸114は内側アーム108を外側アーム102に固定しており、同時に、作動解除ロッカーアーム100が作動解除状態にあるときにピボット軸114を中心に回転運動する回転自由度も実現している。外側アーム102と内側アーム108に取り付けられた独立したピボット軸114を備える図示の実施形態に加えて、ピボット軸114は外側アーム102または内側アーム108と一体であってもよい。
【0015】
ロッカーアーム100は、ローラー116を備えた軸受190を有している。ローラー116は、第1の内側側部アーム110と第2の内側側部アーム112との間で軸受軸118に取り付けられており、ロッカーアームの正常動作中は、回転するカム(不図示)からロッカーアーム100にエネルギーを伝達する役割を果たす。ローラー116を軸受軸118に取り付けることによって、軸受190が軸118を中心に回転することが可能となる。このことは、回転しているカムがローラー116と接触することによって発生する摩擦を減少させる役割を果たす。本明細書で説明するように、ローラー116は内側アーム108に回転可能に固定されており、一方、内側アーム108は特定の条件下で、ピボット軸114を中心に外側アーム102に対して回転することができる。図示の実施形態では、軸受軸118は内側アーム108の軸受軸開口260内で内側アーム108に取り付けられ、外側アーム102の軸受軸スロット126を通って延びている。軸受軸118を使用する場合、他の構成も可能であり、例えば、軸受軸118が軸受軸のスロット126を通って延びていないが、内側アーム108の軸受軸開口260に取り付けられている構成などが可能である。
【0016】
ロッカーアーム100が作動解除位置にあるとき、カムのリフト部分(図3の324)が軸受190のローラー116に接触し、それによってローラー116を下向きに押すと、内側アーム108は外側アーム102に対して下向きに回転運動する。軸スロット126は、軸受軸118が下向きに動くことを許容し、従って、内側アーム108と軸受190が下向きに動くことを許容する。カムが回転し続けるとカムのリフト部分が回転して軸受190のローラー116から離れ、軸受軸118が軸受軸のばね124によって上向きに偏位させられて軸受190が上向きに移動できるようになる。図示の軸受軸のばね124は、外側アーム102に位置するマウント150にばね保持具130によって固定されたねじりばねである。軸受軸のばね124はロッカーアーム100の第2の端部103の近傍に固定されており、軸受軸118に接触するばねアーム127を有している。軸受軸118とばねアーム127が下向きに動くと、軸受軸118はばねアーム127に沿って摺動する。ロッカーアーム100の第2の端部103の近傍に軸のばね124が固定され、ロッカーアームの第1の端部101の近傍にピボット軸114が配置され、軸受軸118がピボット軸114と軸のばね124との間にあるロッカーアーム100の構成によって、ロッカーアームの、第1の端部101の近傍の質量が減少する。
【0017】
図3と4に示すように、弁棒350もロッカーアーム100に、その第1の端部101の近傍で接触している。従って、ロッカーアーム100の第1の端部101での質量の減少によって弁機構(不図示)全体の質量が減少し、それによって、弁機構の速度を変更するのに必要な力が減少する。軸受軸118を偏位させるため、1つの連続ばねなどの、他のばね構成を使用してもよい。
【0018】
図1を引き続き参照すると、第1の外側側部アーム104と第2の外側側部アーム106はそれぞれ、外側アーム102の頂部に位置する第1の安全ローブ接触面120と第2の安全ローブ接触面122を有している。図3と4により詳細に示すように、正常動作時には、表面120,122はカムの安全ローブ310から離れている。表面120,122は、ロッカーアーム100の故障などロッカーアーム100の機能が異常な場合にだけ、安全ローブ310と接触するようにされている。以下でより十分に説明する特定の異常な条件下では、表面120,122は安全ローブ310と接触し、それによってロッカーアーム100が上向きに望ましくない量だけ動くことを防止する。安全ローブ接触面120,122と安全ローブとの間の接触を、頻繁な接触や定常的な接触ではなく、ロッカーアーム100の動作が異常な場合に限定することによって、摩擦パッドを配置したり、安全ローブ接触面120,122に耐久性のある摩耗表面を設置したりする必要がなくなり、それによってコスト効率が達成される。
【0019】
図2は、図1の作動解除ロッカーアーム100の分解図を示している。図2に示すように、組み立てられたときに、図1に示す軸受190は、軸受軸118に取り付け可能なニードル200と組み合わされた実質的に円柱状のローラー116を有するニードルローラ型の軸受である。例えば図3と4に示している構成においては、軸受190はカムの回転運動をロッカーアーム100に伝達する役割を果たし、一方、ロッカーアーム100は、運動を弁棒350に伝達する。図1と2に示すように、軸受軸118は内側アーム108の軸受軸開口260に取り付けることができる。このような構成では、外側アーム102の軸スロット126は軸受軸118を受け入れ、ロッカーアーム100が作動解除状態にあるときは、軸受軸118ひいては内側アーム108の作動喪失運動を生じさせる。「作動喪失」運動は、カムの回転運動を弁に伝達しないロッカーアーム100の運動であると考えることができる。図示の実施形態において、作動喪失はピボット軸114を中心とした内側アーム108の外側アーム102に対する回転運動として現れる。ノブ262が軸受軸118の端部から延びており、ばねアーム127が収まるスロット264を形成している。代替例では、中空の軸受軸118を、独立したばね取り付けピン(不図示)と共に使用することができる。ばね取り付けピンは、図2に示しているのと同様のやり方でばねアーム127が取り付けられるノブ262及びスロット264などの特徴を備えている。
【0020】
軸受190以外の他の構成も、カムからロッカーアーム100への運動の伝達を可能とする。例えば、図1において内側アーム108及びロッカーアーム100に対して軸受190が示されているのとほぼ同じ位置で、カムリフトローブ(図3の320)と相互作用する滑らかな非回転面(不図示)を内側アーム108に取り付け、または内側アーム108と一体に形成することができる。このような非回転面は、その非回転面上に形成された摩擦パッドを有していてもよい。他の例では、多数の同心ローラーを備える軸受などの代替の軸受を、軸受190の代わりに効果的に使用することができる。
【0021】
ロッカーアーム100を選択的に作動解除する機構が、図示の実施形態ではロッカーアーム100の第2の端部103の近傍にあり、図2には、ラッチ202、ラッチばね204、ばね保持具206、及びクリップ208を構成要素として示されている。ラッチ202は外側アーム102の内側に取り付けるようにされている。ラッチばね204はラッチ202の内側に配置され、ラッチばね保持具206とクリップ208によって定位置に固定されている。いったん設置されると、ラッチばね204はラッチ202をロッカーアーム100の第1の端部101に向けて偏位させ、ラッチ202、特に係合部分210を内側アーム108と係合させ、それによって内側アーム108が外側アーム102に対して動くことを防止する。ラッチ202が内側アームとこのように係合すると、ロッカーアーム100は作動状態になり、カムから弁棒に運動を伝達する。
【0022】
組み立てられたロッカーアーム100においては、ラッチ202は作動位置と作動解除位置との間を交互に移動する。ロッカーアーム100を作動解除するには、ラッチばね204の偏位力に対抗するのに十分な油圧を、例えば、ラッチ202の表面に油圧を作用させることができるようにされたポート212を通して、作用させることができる。油圧が作用すると、ラッチ202はロッカーアーム100の第2の端部103に向けて押され、それによってラッチ202が内側アーム108との係合から外れ、内側アーム108がピボット軸114を中心に回転できるようになる。作動状態と作動解除状態のいずれにおいても、方向規定クリップ214の直線部分250が、第1の表面218でラッチ202と係合している。方向規定クリップはクリップ開口216に取り付けられており、それによって直線部分250がロッカーアーム100に対して水平な方向に維持される。これによって平坦な表面218の向きが同様に水平方向に拘束され、それによってラッチ202が、内側アーム108と一貫して係合するための適切な方向に向けられる。
【0023】
図1と2を参照すると、エレファントフット140が第1の内側側部アーム110と第2の内側側部アーム112との間で、ピボット軸114に取り付けられている。ピボット軸114は、ロッカーアーム100の第1の端部101の近傍で内側ピボット軸開口220と外側ピボット軸開口230に取り付けられている。内側アーム108に形成されたリップ240によって、エレファントフット140がピボット軸114を中心に回転することが防止される。エレファントフット140は図4に示すように、弁棒350の端部と係合する。代替の実施形態において、エレファントフット140を取り除き、代わりに弁棒350の先端と相補形状の接触面をピボット軸114に配置してもよい。
【0024】
図3と4はそれぞれ、ロッカーアーム100の側面図と正面図を、カム300との関連で示している。カム300は、基準円322とリフト部分324を備えるリフトローブ320と、第1及び第2の安全ローブ接触面120,122の上方に位置している円形の安全ローブ310と、を有している。円形の安全ローブ310はリフトローブ320の基準円322と同心で、基準円322の直径よりも小さい直径を有している。2つの安全ローブ310の直径は同じである必要はなく、円形である必要はなく、基準円322の直径以上の直径を有していてよい。そのようなシナリオにおいて、第1及び第2の安全ローブ接触面120,122は、正常なエンジン動作時には安全ローブ310から離れ、例えば本明細書で説明する異常状態などの異常なエンジン状態では安全ローブ310に接触するように、適切に配置しなければならない。図3と4から明らかなように、第1及び第2の安全ローブ接触面120,122は、円形の安全ローブ310と組み合わせて使用されている場合、カムの回転運動をロッカーアームへ伝達しない。他の実施形態では、1つまたは3つ以上の安全ローブ接触面を備えるロッカーアーム100を、例えば1つまたは3つ以上の安全ローブ(不図示)を備えるカムと共に使用することができる。
【0025】
図3と4はリフトローブ320と接触しているローラー116を示している。ラッシュアジャスタ340が第2の端部103の近傍でロッカーアーム100と係合しており、バルブラッシュを軽減しながら、上向きの圧力をロッカーアーム100、特に外側のロッカーアーム102に作用させる。弁棒350は、ロッカーアーム100の第1の端部101の近傍でエレファントフット140と係合している。作動状態では、ロッカーアーム100は弁棒350を下向きに周期的に押し、その動きは対応している弁(不図示)を開く役割を果たす。
【0026】
ロッカーアーム100が作動状態または作動解除状態にあるときに生じ得る正常動作時には、隙間330は安全ローブ310を第1及び第2の安全ローブ接触面120,122から分離している。しかし、特定の異常動作時には、安全ローブ310が第1及び第2の安全ローブ接触面120,122に接触することがあり得る。そのような1つのシナリオでは、作動解除されているロッカーアーム100がラッシュアジャスタ340の過度の充填を受ける。過度の充填は過大な油圧、例えば毎秒高回転によって生じ得る動的な誤動作(mis-motion)の結果生じる非定常状態の発生、あるいはその他の原因で生じる。これによって、内部に加圧された油が充填され、ラッシュアジャスタ340の有効長が増加する。このようなシナリオは例えばエンジンの冷間始動時に生じることがあり、対策がとられないままにされると自然に解決するにはかなりの時間がかかることがあり、エンジンが永久的に損傷することもある。そのような状況では、ラッシュアジャスタ340が正常動作長に戻るまで、ラッチ202がロッカーアーム100を作動させることができないことがある。このシナリオでは、ラッシュアジャスタ340は上向きの圧力を外側アーム102に作用させ、外側アーム102をカム300に近づける。外側アーム102が引き続き上昇すると、安全ローブ接触面120,122は安全ローブ310に接触し、外側アーム102のさらなる上向きの運動が防止される。もし、このさらなる上向きの運動が防止されないと、ロッカーアーム100の第2の端部103の近傍の部分がカム300に好ましからぬ接触をする可能性がある。この図示された実施形態は、ロッカーアーム100が比較的早く正常動作状態に戻ることを可能とし、さらに、ロッカーアーム100を作動状態により早く戻し、従ってロッカーアーム100が作動状態に戻るのを待つ過度に長い回復時間を回避することができる。
【0027】
さらに他のシナリオでも、安全ローブ接触面120,122が安全ローブ310に接触する可能性はある。例えば、ローラー116若しくは軸受軸118の故障、またはリフトローブ320の故障によって、安全ローブ接触面120,122が安全ローブ310に接触することがあり得る。ただし、ロッカーアームのすべての異常な動作状況で安全ローブ310が第1及び第2の安全ローブ接触面120,122に接触するわけではない。
【0028】
本開示の目的のために、そして特に断りのない限り、「1つの」は「1つ以上」を意味する。用語「含む」または「含んでいる」は、明細書及び特許請求の範囲で使用される限り、請求項の連結部の用語として採用された場合の「有する」と同様に包含を意味することを意図している。さらに、用語「または」(例えば、AまたはB)が採用される限り、それは「AまたはBまたは両方」を意味することを意図している。出願人が「AまたはBのみであって両方ではない」ことを示すことを意図している場合は、用語「AまたはBのみであって両方ではない」が採用される。従って、本明細書の用語「または」は、包含的使用であって、排他的使用ではない。ブライアン A.ガーナー著、「近代法律語法辞典」、624(第2版、1995)を参照。また、用語「内で」または「内へ」が明細書または特許請求の範囲で使用される限り、それは「上で」または「上へ」をさらに含むことを意図している。さらに、用語「接続」が明細書または特許請求の範囲で使用される限り、それは「直接的に接続する」ことを意味するだけでなく、他の構成要素または多数の構成要素を通して接続するなどの、「間接的に接続する」ことを意味することも意図している。本明細書で使用する場合、「約」は当業者によって理解されるであろうし、使用される文脈に依存してある程度変わるであろう。この用語が当業者にとって明確でないように使用されている場合、この用語が使用されている所与の文脈において、「約」は特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味することになる。約XからYまでは、約Xから約Yまでを意味することを意図しており、XとYは指定された値である。
【0029】
本開示はさまざまな実施形態を示しており、これらの実施形態をある程度詳細に説明したが、出願人は、請求している発明の範囲をそのような詳細にまで制限し、あるいは多少なりともそのような詳細にまで限定することを意図していない。追加の利点と修正を当業者は容易に思いつくであろう。そのため、本発明は、そのより広い態様においては、図示し説明した特定の詳細や説明の例に限定されない。従って、出願人の請求している発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、そのような詳細から逸脱してもよい。さらに、前述の実施形態は例示であり、ただ一つの特徴や要素も、本願または以降の出願において請求される可能性のある全ての可能な組み合わせにとって必須ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのリフトローブと少なくとも1つの実質的に円形の安全ローブとを有するカムであって、前記少なくとも1つのリフトローブはリフトローブ基準円直径を有するリフトローブ基準円を備え、前記少なくとも1つの安全ローブは、前記基準円と同心に配置され前記基準円直径より小さい直径を有するカムと係合するロッカーアームであって、
外側アームと、内側アームと、ピボット軸と、前記リフトローブに接触する軸受と、軸受軸と、少なくとも1つの軸受軸のばねと、を有し、
前記外側アームは第1及び第2の外側側部アームを有し、前記第1及び第2の外側側部アームは、正常なエンジン動作中には前記少なくとも1つの安全ローブから離れているようにされた少なくとも1つの安全ローブ接触面と、前記ピボット軸を取り付けるようにされた複数の外側ピボット軸開口と、を有しており、
前記内側アームは前記第1の外側側部アームと前記第2の外側側部アームとの間に配置され、第1及び第2の内側側部アームを有し、前記第1及び第2の内側側部アームは、前記ピボット軸を取り付けるようにされた複数の内側ピボット軸開口と、前記軸受軸を取り付けるようにされた複数の内側軸受軸開口と、を有しており、
前記ピボット軸は、前記複数の内側ピボット軸開口及び前記複数の外側ピボット軸開口に配置されており、
前記軸受軸は前記内側アームの前記複数の軸受軸開口に取り付けられており、
前記少なくとも1つの軸受軸のばねは前記外側アームに固定され、前記軸受軸を偏位させるように前記軸受軸に接触しており、前記リフトローブに接触する軸受は、前記第1の内側側部アームと前記第2の内側側部アームとの間で前記軸受軸に取り付けられている、ロッカーアーム。
【請求項2】
前記内側アームを前記外側アームに対して選択的に固定し、それによって前記ピボット軸を中心とした前記内側アームの前記外側アームに対する作動喪失運動を選択的に許容するラッチを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ロッカーアームは第1の端部と第2の端部とをさらに有し、前記ピボット軸は前記第1の端部の近傍に取り付けられており、前記少なくとも1つの軸受軸のばねは前記第2の端部の近傍で前記外側アームに固定されており、前記軸受軸は前記ピボット軸と前記少なくとも1つの軸受軸のばねとの間に取り付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ロッカーアームを選択的に作動解除する手段をさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記ロッカーアームを選択的に作動解除できるようにされたラッチをさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの軸受軸のばねは前記外側アームに固定されているねじりばねであり、前記少なくとも1つの軸受軸のばねは、前記軸受軸の方に偏位して前記軸受軸と接触しているばねアームを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの軸受軸のばねは第1及び第2の軸受軸のばねを有しており、前記第1の軸受軸のばねは前記第1の外側側部アームに、前記第2の軸受軸のばねは前記第2の外側側部アームに固定されており、前記第1及び第2の軸受軸のばねは前記軸受軸の方に偏位して前記軸受軸と接触している、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
弁棒と係合可能にされたエレファントフットが、前記第1の内側側部アームと前記第2の内側側部アームとの間で前記ピボット軸に取り付けられている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
リフトローブと少なくとも1つの安全ローブとを有しているカムと係合するロッカーアームであって、
外側アームと、内側アームと、前記カムから前記ロッカーアームに運動を伝達することができるようにされたカム接触部材と、少なくとも1つの偏位ばねと、を有し、
前記外側アームは第1及び第2の外側側部アームを有し、前記第1及び第2の外側側部アームは、前記ロッカーアームが異常動作をしている間だけ前記少なくとも1つの安全ローブに接触できるようにされた少なくとも1つの安全ローブ接触面を有し、
前記内側アームは前記第1の外側側部アームと前記第2の外側側部アームとの間に配置され、第1及び第2の内側側部アームを有しており、
前記内側アームはピボット軸によって前記外側アームに固定されており、前記ピボット軸は、前記ピボット軸を中心とした前記内側アームの前記外側アームに対する回転運動を許容するようにされており、
前記カム接触部材は、前記第1の内側側部アームと前記第2の内側側部アームとの間に配置されており、
前記少なくとも1つの偏位ばねは前記外側アームに固定されており、前記少なくとも1つの偏位ばねは前記カム接触部材の方に偏位して前記カム接触部材と接触している、ロッカーアーム。
【請求項10】
前記内側アームを前記外側アームに対して選択的に固定し、それによって前記ピボット軸を中心とした前記内側アームの前記外側アームに対する作動喪失運動を選択的に許容するラッチをさらに有する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記ロッカーアームは第1の端部と第2の端部とをさらに有し、前記ピボット軸は前記第1の端部の近傍に配置されており、前記偏位ばねは前記第2の端部の近傍で前記外側アームに固定されており、前記カム接触部材は前記ピボット軸と前記偏位ばねとの間に配置されている、請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記ロッカーアームを選択的に作動解除できるようにされたラッチをさらに有する、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの偏位ばねは前記外側アームに固定された少なくとも1つのねじりばねを有し、前記少なくとも1つのねじりばねは、前記カム接触部材の方に偏位して前記カム接触部材と接触しているばねアームを有している、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの偏位ばねは第1及び第2の偏位ばねを有しており、前記第1の偏位ばねは前記第1の外側側部アームに固定されており、前記第2の偏位ばねは前記第2の外側側部アームに固定されており、前記第1及び第2の偏位ばねは前記カム接触部材の方に偏位して前記カム接触部材と接触している、請求項9に記載の装置。
【請求項15】
弁棒を受け入れ可能にされたエレファントフットが、前記第1の内側側部アームと前記第2の内側側部アームとの間で前記ピボット軸に取り付けられている、請求項9に記載の装置。
【請求項16】
前記カム接触部材は軸受軸に取り付けられた軸受を有する、請求項9に記載の装置。
【請求項17】
リフトローブと第1及び第2の安全ローブとを有するカムと係合する作動解除ロッカーアームであって、
第1の端部と、第2の端部と、外側アームと、内側アームと、ピボット軸と、前記カムの前記リフトローブから前記ロッカーアームへ運動を伝達できるようにされたリフトローブ接触部材と、前記ロッカーアームを選択的に作動解除できるようにされたラッチと、少なくとも1つの偏位ばねと、を有し、
前記外側アームは第1及び第2の外側側部アームを有しており、前記第1及び第2の外側側部アームは、前記ロッカーアームが異常動作をしている間だけ前記第1及び第2の安全ローブに接触するようにされた複数の安全ローブ接触面と、前記ピボット軸が取り付けられるようにされた複数の外側ピボット軸開口と、前記リフトローブ接触部材を受け入れるようにされ、前記リフトローブ接触部材の作動喪失運動を許容するようにされた複数の軸スロットと、を有しており、
前記内側アームは前記第1の外側側部アームと前記第2の外側側部アームとの間に配置され、第1及び第2の内側側部アームを有しており、前記第1及び第2の内側側部アームは、前記ピボット軸が取り付けられるようにされた複数の内側ピボット軸開口と、前記リフトローブ接触部材が取り付けられるようにされた複数の内側リフトローブ接触部材開口と、を有しており、
前記ピボット軸は前記ロッカーアームの前記第1の端部の近傍に取り付けられ、前記複数の内側ピボット軸開口及び前記複数の外側ピボット軸開口に配置されており、
前記ラッチは前記ロッカーアームの前記第2の端部の近傍に配置されており、
前記リフトローブ接触部材は、前記ピボット軸と前記ラッチとの間で、前記内側アームの前記複数のリフトローブ接触部材開口及び前記外側アームの前記複数の軸スロットに取り付けられており、
少なくとも1つの偏位ばねは前記外側アームに固定されており、前記リフトローブ接触部材の方に偏位して前記リフトローブ接触部材と接触している、作動解除ロッカーアーム。
【請求項18】
前記少なくとも1つの偏位ばねは、前記ロッカーアームの前記第2の端部の近傍で前記外側アームに固定されている、請求項17に記載の作動解除ロッカーアーム。
【請求項19】
前記リフトローブ接触部材は軸受軸に取り付けられた軸受を有する、請求項17に記載の作動解除ロッカーアーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−41928(P2012−41928A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−177523(P2011−177523)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(390033020)イートン コーポレーション (290)
【氏名又は名称原語表記】EATON CORPORATION
【Fターム(参考)】