説明

印刷用スクリーン版及びその製造方法

【課題】印刷位置のズレを起し難い印刷用スクリーン版を提供すること。
【解決手段】版枠と、外側に向かって引っ張れた状態で、前記版枠に第1の外縁が固定された外紗と、外側に向かって引っ張れた状態で、前記外紗の内縁に第2の外縁が固定された内紗を具備し、硬化した第1の乳剤によって前記内紗の網目の一部が塞がれ、塞がれていない前記網目によって印刷予定の図形が形成された印刷エリアが、前記内紗の中央部に設けられ、前記第1の乳剤より硬く硬化した第2の乳剤によって前記網目が塞がれた、前記印刷エリアを囲む外周部が、前記第2の外縁と前記印刷エリアの間に設けられている印刷用スクリーン版。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用スクリーン版に関し、特に、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel:PDP)の製造に用いられる印刷用スクリーン版に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷は、低コストを特徴とする厚膜の形成技術である。このためスクリーン印刷は、各種の電子部品、例えばPDPや積層セラミックコンデンサ等の製造に利用されている(特許文献1)。特に、PDPの製造には、隔壁を備える基板(例えば、背面基板)に蛍光体を塗布するために、欠かせない技術になっている。
【0003】
図1は、PDPの背面基板2に蛍光体4を印刷する工程を説明する図である。図1には、スクリーン版10とスキジー14からなるスクリーン装置11の動作を真横から見た断面図が描かれている。
【0004】
以下スクリーン印刷装置及びその使用法を、図1を参照して説明する。
【0005】
まず、弾性のあるメッシュ状のスクリーン6を用意し、このスクリーンを軽金属製の丈夫な枠(版枠8)に固定してスクリーン版10を形成する。次に、形成したい厚膜に対応する領域を残して、スクリーン6の網目を乳剤(エマルジョン)で塞ぐ。
【0006】
次に、このスクリーン版10を、厚膜(ここでは、蛍光体4)を印刷したい基板(ここでは、PDPの背面基板2)の上に、僅かな間隔を開けて配置する。厚膜ペースト(ここでは、蛍光体ペースト12)をスクリーン6の一端に細長く土手状に延ばす。
【0007】
次に、スキジー14と呼ばれる例えばプラスチック製の細長いヘラで、この厚膜ペースト(蛍光体ペースト12)をスクリーン6に押し付けながら、スクリーン6の一端から他端に移動させる。この時、スクリーン6は基板(PDPの背面基板2)に接し、背面基板2の表面に設けられた放電セル内に蛍光体4が転写される。
【特許文献1】特開2006−335045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
PDPの放電セルは隔壁によって囲われた矩形の領域であり、PDPの背面基板2の表面に縦及び横方向に数百μm間隔で整然と配置されている。このため、蛍光体の印刷位置が僅かにズレただけでも、PDPは不良品になる。
【0009】
ところで、スクリーン6は、印刷時に、スキジー14によって背面基板2に押し付けられ僅かに変形する。スクリーン6が小さい場合には、この変形による印刷位置のズレは問題にならない。
【0010】
一方、PDPは年々大型化しており、これに合わせてスクリーン版も大型化しており、スクリーンの一辺は優に1mを超えるようになっている。このような大型のスクリーン版を使用すると、スクリーンが極僅か(例えば、0.1%)変形しただけでも、印刷位置は大きくズレてしまう(例えば、1mm)。このため、スクリーン印刷によって、蛍光体を放電セル内に正確に印刷することが難しくなってきている。
【0011】
このような印刷位置のズレ(スキジー押圧時に於けるスクリーン変形に起因する印刷位置のズレ)は、程度の差はあるが、PDP以外の電子部品等を製造する場合にも問題になる。
【0012】
そこで、本発明の目的は、印刷位置のズレを起し難い印刷用スクリーン版及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本印刷用スクリーン版は、版枠と、外側に向かって引っ張れた状態で、前記版枠に第1の外縁が固定された外紗と、外側に向かって引っ張れた状態で、前記外紗の内縁に第2の外縁が固定された内紗を具備し、硬化した第1の乳剤によって前記内紗の網目の一部が塞がれ、塞がれていない前記網目によって印刷予定の図形が形成された印刷エリアが、前記内紗の中央部に設けられ、前記第1の乳剤より硬く硬化した第2の乳剤によって前記網目が塞がれた、前記印刷エリアを囲む外周部が、前記第2の外縁と前記印刷エリアの間に設けられている。
【0014】
また、本印刷用スクリーン版の製造方法は、版枠と、外側に向かって引っ張れた状態で前記版枠に第1の外縁が固定された外紗と、外側に向かって引っ張れた状態で前記外紗の内縁に第2の外縁が固定された内紗を具備する部材を用意し、前記内紗の中央を含む印刷エリアに第1の乳剤を塗布し、前記印刷エリアと前記第2の外縁の間に第2の乳剤を塗布する第1の工程と、非硬化領域が印刷予定の図形になるように第1の乳剤に光を照射して硬化させ、同時に第2の乳剤全体に光を照射して硬化させる第2の工程と、前記非硬化領域に塗布された第1の乳剤を除去する第3工程を具備し、前記第2の乳剤として、硬化後の前記第1の乳剤より硬く硬化する乳剤を使用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に従う印刷用スクリーン版は、印刷エリアを囲む外周部が硬い乳剤によって固められて変形し難くなっているので、大型化しても印刷位置にズレが生じ難い。
【0016】
また、本発明に従う印刷用スクリーン版によれば、印刷エリアを囲む外周部が硬い乳剤によって固められので、大型化しても印刷位置のズレを生じさせ難い印刷用スクリーン版を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0018】
まず、本発明者が従来使用していた印刷用スクリーン版(以後、スクリーン版と呼ぶ)構成を、その製造方法に従って説明する。次に、スキジーの押し付けによってスクリーンが変形するメカニズムについて説明する。その後、本実施の形態に従うスクリーン版が、スクリーンの変形を抑制する原理について説明する。最後に、本実施の形態に従うスクリーン版の構成及び製造方法を説明する。
【0019】
(1)改良前のスクリーン版
改良前のスクリーン版の構成を、その製造方法に従って説明する。
【0020】
図2は、改良前のスクリーン版の製造手順を説明するフロー図である。図3乃至図6は、改良前のスクリーン版の製造手順を説明する平面図である。
【0021】
(i)ステップS1(外紗固定)
まず、合成繊維製(例えば、テフロン(登録商標)製)のメッシュを用意する。次に、このメッシュ(以後、外紗16と呼ぶ)を、軽金属製(例えば、アルミニウム製)で且つ四角形の枠(以後、版枠8と呼ぶ)に重ねる(図3(a)参照)。尚、「四角形」とは、4つの角が全て直角の四角形を意味するものとする。
【0022】
次に、外紗16を、外側に向かって引って緊張させる(図3(b)参照)。この状態で、外紗16を、例えばエポキシ系の接着剤17によって版枠8に固定する(図4(a)参照)。
【0023】
その後、版枠8から食み出した外紗を切り取る(図4(b)参照)。
【0024】
以上のようにして、本ステップでは、外側に向かって引っ張られた状態の外紗16を版枠8に固定する。
【0025】
(ii)ステップS2(内紗固定)
次に、外紗16より小さい四角形の金属製メッシュを用意する。このメッシュ(以後、内紗18と呼ぶ)は、版枠8の内縁で囲まれて領域(版枠の内側)より小さく裁断されている。
【0026】
次に、この内紗18を外紗16に重ね合わせる。この時、双方の中心が略一致するように、内紗18を外紗16に重ねる(図5(a)参照)。その後、内紗18の外縁20を、例えばエポキシ系の接着剤17によって外紗16に固定する(図5(b)参照)。
【0027】
以上のようにして、本ステップでは、版枠8の中央に内紗18を配置し、内紗18の外縁20を外紗16に固定する(尚、内紗18の外縁20は、図5(b)に示すように、一定の幅を有している。)。
【0028】
図7は、印刷パターン形成前の内紗18の構成を説明する平面図である。
【0029】
内紗18は、例えば、ステンレス製の縦糸24と横糸26が平織されて形成されている。そして、内紗18は、この縦糸24が内紗18の左右の辺に対して22.5°傾くように裁断されている。完成したスクリーン版を使用する場合、スキジーは、内紗18の左右の辺に平行に移動する。すなわち、縦糸24は、スキジー方向に対して22.5°傾いている。
【0030】
このようなバイアス角度(縦糸がスキジー方向に対して傾けられた角度)を設ける理由は、印刷予定の図形(以下、印刷パターンと呼ぶ)が微細化し、印刷パターンの幅が内紗18の網目のピッチと大差がなくなっても、印刷パターンが印刷位置に依らず均一に形成されるようにするためである。
【0031】
(iii)ステップS3(外紗切除)
次に、内紗の外縁(接着部)20で囲まれた外紗21を切除する(図5(c)参照)。
【0032】
内側の外紗21が切除されると、内紗18は、外紗16によって外側に引っ張られる。
【0033】
(iv)ステップS4(乳剤塗布)
次に、内紗に感光性の乳剤22を塗布する(図6(a)参照)。この乳剤は、例えば、光硬化性樹脂の一つであるポリウレタンアクリレートとアクリル酸エステルからなる混合液に、ポリビニルアルコール製のフィラーが添加されたものである。
【0034】
(v)ステップS5(露光)
次に、非硬化領域が印刷予定の図形(印刷パターン)になるように、乳剤22に光を照射する。すなわち、印刷パターンに合わせて乳剤22を露光する。
【0035】
(vi)ステップS6(現像)
次に、乳剤22を水によって現像し乾燥させる。その後、スクリーン版を純水によって洗浄して、非硬化領域の乳剤を洗い落とす(図6(b)参照)。
【0036】
本ステップでは、以上のような手順によって、非硬化領域に塗布された乳剤を除去する。
【0037】
以上説明したステップS1〜ステップS6によって、印刷パターン27が内紗18の中央に形成されたスクリーン版10が完成する。
【0038】
(2)スクリーン変形の原因
図8は、縦糸24に沿った内紗18の断面を説明する図である。平織りされたメッシュでは、横糸26は強く引っ張られた状態でメッシュに織り込まれるので略直線になる。一方、縦糸24は、図7に示すように、蛇行しながら横糸26の間を縫っている。従って、内紗18は、縦糸24の方向には伸び易く、横糸26の方向には殆ど伸びない。
【0039】
図7を参照して説明したように、縦糸24はスキジー方向(内紗18の左右)に対して22.5°傾いている。このため、スキジーからの荷重を受けて基板に押し付けられた内紗18は、複雑に変形する。
【0040】
図9は、スキジーの荷重を受けて変形した内紗18の状態を説明する平面図である。
【0041】
図9に示すように、スキジーから荷重を受けると、矩形(又は正方形)の内紗は、縦糸の方向25に伸びて平行四辺形に変形する。図9には、変形の様子がよく分かるように、変形前の内紗の輪郭29が破線で示され、変形後の内紗31が実線で示されている。
【0042】
説明のため、図9に記載された内紗の変形は誇張されている。従って、スクリーンが余り大きくない場合には、スクリーンの変形は問題にならない。しかし、スクリーンが大型化すると、印刷予定位置と実際に印刷される厚膜の位置がズレてしまう位置ズレの問題が顕著になる。
【0043】
例えば、PDPの背面基板には、放電セル対応の矩形の蛍光体層が、縦及び横方向に数百μmのピッチで1m以上に亘って印刷される。この場合、縦糸の伸度(単位長当たりの伸び)が極僅か(例えば0.1%)でも、実際の印刷位置は印刷予定位置から大きく(例えば、1mm)ズレてしまう。
【0044】
内紗の変形がスキジー方向のみであれば、その伸びを考慮して、スキジー方向に於ける印刷パターンの繰り返し周期(ピッチ)を小さくして印刷位置のズレを回避することも可能である。しかし、上述したように内紗は複雑に変形するので、このような微調整によって印刷パターンの位置ズレを回避することは容易ではない。
【0045】
内紗18の縦及び横方向の幅は、被印刷物(例えば、PDPの背面基板)より何割か大きく形成さえる。これは、スキジー14の移動に合わせて、被印刷物表面との接触箇所からスクリーン6が速やかに離れるようにするためである(すなわち、版離れが円滑に行われるようにするためである。)。このため、内紗18は、被印刷物より大きく形成される。このように内紗が被印刷物より大きく形成されることによって、位置ズレが一層助長される。
【0046】
(3)原 理
次に、本発明に従う印刷用スクリーン版が、位置ズレを抑制する原理を説明する。
【0047】
上述したように、乳剤は内紗に塗布され露光・現像処理によって硬化し、内紗18の網目を塞ぐ。従って、乳剤は、硬化してもスクリーン6の伸縮を妨げないように、伸縮自在に形成されている。
【0048】
しかし、本発明者が、一定の荷重に対するメッシュの伸度を引張試験によって比較したところ、乳剤によって網目が塞がれるとメッシュの伸度は小さくなることが判明した。しかも、その程度は、乳剤に添加するフィラーの量が増えると大きくなることも明らかになった。すなわち、フィラーの添加量が増えると、メッシュの伸度は小さくなる。
【0049】
これは、フィラーの添加量が増えると乳剤がより硬く硬化し、メッシュの伸縮を妨げるためと考えられる(「硬い」とは、力を加えた時の物体の変形の度合を表す用語であり、物質Aが物質Bより硬いとは、同じ外力を加えた時の変形が物質Aの方が小さいことをいう。「柔らかい」とは、その逆である。)。
【0050】
従って、印刷位置ズレを回避する対策としては、内紗18に塗布する乳剤を硬くすることが有効と考えられる。しかし、乳剤を硬くすることは、内紗18の伸縮性を損なわせ、スクリーンの版離れに支障が生じさせるので、採用することはできない。
【0051】
そこで、本発明者は、印刷パターが形成される内紗の中央部(以下、印刷エリアと呼ぶ)には、従前の通り伸縮性のある柔らかい乳剤を使用し、その外周部には硬い乳剤を使用して内紗の変形を抑制することを想到した(尚、硬化後の硬度が異なる2種類の乳剤を区別するため、より硬く硬化する乳剤を「硬い乳剤」と呼び、より柔らかく硬化する乳剤を「柔らかい乳剤」と呼ぶこととする。)。
【0052】
このようにすれば、スキジーの荷重を受けても外周では内紗の変形が抑制され、内紗全体としての変形が抑制されるので、印刷位置ズレが抑制される。また、印刷エリアには柔らかい乳剤が使用されるので、スクリーンの版離れに支障は生じない。
【0053】
(実施の形態)
次に、上記原理に基づくスクリーン版の構成及び製造方法を説明する。
【0054】
(1)構 成
図10は、実施の形態に従うスクリーン版30の構成を説明する平面図である。図11は、図10のA−A線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図である。また、図12は、印刷エリア38の一部を拡大した平面図の一例である。図13は、内紗の外周部44の一部を拡大した平面図である。
【0055】
図10及び図11に示すように、本実施の形態に従うスクリーン版30は、例えばアルミニウム製の版枠8と、外側に向かって引っ張れた状態で、上記版枠8に外縁32が固定された外紗16を具備している。
【0056】
また、本スクリーン版30は、外側に向かって引っ張れた状態で、上記外紗16の内縁34に外縁36が固定された内紗18を具備している。
【0057】
ここで、本スクリーン版30には、図12に示すように、硬化した乳剤40によって内紗18の網目41の一部が塞がれ、塞がれていない網目43によって印刷予定の図形(印刷パターン27)が形成された印刷エリア38が、上記内紗18の中央部に設けられている(図10及び図11参照)。
【0058】
そして、本スクリーン版30には、図13に示すように、印刷エリア38の乳剤40より硬く硬化した乳剤42によって網目41が塞がれた、印刷エリア38を囲む外周部44が、内紗18の外縁36と印刷エリア38の間に設けられている(図10及び図11参照)。ここで、外周部38の網目が連続して、乳剤42によって塞がれていることが好ましい。これは、網目が塞がれていない領域によって外周部44が印刷エリアを囲む複数の辺に分割されると、印刷エリアが変形しやすくなるためである。
【0059】
本スクリーン版30は、例えば、PDPの背面基板に蛍光体を印刷するために使用することができる。
【0060】
尚、図12は、PDPの背面基板に蛍光体を印刷するために使用されるスクリーン版の印刷エリアを、拡大して見た平面図である。図13は、当該スクリーン版の内紗外周部を拡大し見た平面図である。
【0061】
図12に示すように、印刷エリア38では、硬化した乳剤40によって縦糸24と横糸26の間に形成された網目41の一部が塞がれ、塞がれていない網目43によって印刷予定の蛍光体の形状(矩形)に対応した図形(印刷パターン)が形成されている。
【0062】
一方、図13に示すように、内紗18の外周部44では、印刷エリア38の乳剤40より硬い乳剤42によって網目41が全て塞がれている。
【0063】
(2)使用方法
本実施の形態に従うスクリーン版30の使用方法は、図1を参照して説明した従来のスクリーン版10の使用方法と略同じである(但し、スキジーを移動する領域は印刷エリア38に限られる。)。
【0064】
しかし、本スクリーン版30は、内紗18の外周部44に硬い乳剤が使用されているので、内紗18の変形が抑制され印刷位置ズレが起こり難い。
【0065】
一方、印刷エリアには柔らかい乳剤が使用されるので、スクリーンの版離れは良好である。
【0066】
図14は、本スクリーン版30を用いてPDPの背面基板に印刷した蛍光体4の状態を説明する平面図である。本スクリーン版30を用いると、図15に示すように、蛍光体4は、放電セル46の内側に位置ズレすることなく正確に印刷される。
【0067】
(3)製造方法
図15は、本実施の形態に従うクリーン版の製造手順を説明するフロー図である。図16は、本実施の形態に従うクリーン版の製造手順を説明する平面図である。
【0068】
(1)ステップS1(乳剤塗布)
まず、版枠8と、外側に向かって引っ張れた状態で上記版枠8に外縁が固定された外紗16と、外側に向かって引っ張れた状態で前記外紗の内縁に外縁が固定された内紗18を具備する部材48(以後、白紙スクリーン版と呼ぶ)を用意する(図5(c)参照)。
【0069】
白紙スクリーン版48は、例えば、図3〜図5を参照して説明した、改良前のスクリーン版を製造する手順の一部(ステップS1〜S3)によって形成することができる。
【0070】
次に、図16に示すように、内紗18の中央を含む印刷エリア40に第1の乳剤50を塗布し、上記印刷エリア40と内紗の外縁36の間に第2の乳剤52を塗布する。
【0071】
(2)ステップS2(露光)
次に、非硬化領域が印刷予定の図形になるように第1の乳剤50に光を照射して硬化させ、同時に第2の乳剤52の全体に光を照射して硬化させる。
【0072】
ここで、第1及び第2の乳剤は、光硬化性樹脂とフィラーの混合物である。そして、上記光硬化樹脂はポリウレタンアクリート製であり、フィラーはポリビニルアルコールである。更に、第1及び第2の乳剤には、アクリル酸エステルが混合されている。
【0073】
そして、第2の乳剤には、前記第1の乳剤よりフィラーが高濃度に添加されている。
【0074】
(3)ステップS3(現像)
次に、水で第1及び第2の乳剤を現像し、非硬化領域に塗布された第1の乳剤を除去する。
【0075】
本ステップによって、印刷エリア38には印刷パターン27が形成され、印刷エリア40の外周部の網目が連続的に硬い乳剤によって塞がれる(図16(b)参照)。
【0076】
本ステップは、図6(b)を参照して説明した改良前のスクリーン版製造手順のステップS6と同じである。
【0077】
ところで、上述したように、第2の乳剤には、前記第1の乳剤よりフィラーが高濃度に添加されている。このため、硬化後の第2の乳剤は、硬化後の前記第1の乳剤より硬くなる。すなわち、本実施の形態に従う製造方法では、第2の乳剤として、硬化後の第1の乳剤より硬く硬化する乳剤を使用する。
【0078】
以上の手順によって、図10〜図14を参照して説明したスクリーン版30が製造される。尚、印刷エリアと外周部に硬さの異なる乳剤を使用したので乳剤の現像・硬化の過程で内紗に皺が生じ等の問題が生じることも懸念されるが、そのような問題は一切生じなかった。
【0079】
ところで、硬い乳剤を用いる代わりに、内紗外周部に接着剤等を塗布し硬化させることも考えられる。しかし、この場合、接着剤の塗布・硬化等の工程が必要になり製造コストが高くなる。一方、本実施の形態によれば、外周部に塗布した乳剤の露光・現像等の工程は、印刷エリアに塗布した乳剤に係る工程と同時に実施することができるので、製造コストは殆ど上昇しない。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】PDPの背面基板に蛍光体を印刷する工程を説明する図である。
【図2】改良前のスクリーン版の製造手順を説明するフロー図である。
【図3】改良前のスクリーン版の製造手順を説明する工程平面図である(その1)。
【図4】改良前のスクリーン版の製造手順を説明する工程平面図である(その2)。
【図5】改良前のスクリーン版の製造手順を説明する工程平面図である(その3)。
【図6】改良前のスクリーン版の製造手順を説明する工程平面図である(その4)。
【図7】印刷パターン形成前の内紗の構成を説明する平面図である。
【図8】縦糸に沿った内紗の断面を説明する図である
【図9】スキジーの荷重を受けて変形した内紗の状態を説明する平面図である。
【図10】実施の形態に従うスクリーン版の構成を説明する平面図である。
【図11】図10のA−A線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図である。
【図12】実施の形態に従うスクリーン版の印刷エリアを拡大した平面図である。
【図13】実施の形態に従うスクリーン版の内紗の外周部を拡大した平面図である。
【図14】実施の形態に従うスクリーン版を用いて、PDPの背面基板に印刷した蛍光体の状態を説明する平面図である。
【図15】実施の形態に従うクリーン版の製造手順を説明するフロー図である。
【図16】実施の形態に従うクリーン版の製造手順を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0081】
2・・・PDPの背面基板 4・・・蛍光体
6・・・スクリーン 8・・・版枠
10・・・スクリーン版 11・・・スクリーン印刷装置
12・・・蛍光体ペースト 14・・・スキジー
16・・・外紗 17・・・接着剤
18・・・内紗 19・・・(版枠から食み出した)外紗
20・・・内紗の外縁(接着部)
21・・・(内紗の外縁で囲まれた)外紗
22・・・乳剤 24・・・縦糸 25・・・縦糸の方向
26・・・横糸 27・・・印刷パターン
28・・・外周部 29・・・(変形前の)内紗の輪郭
30・・・実施の形態に従うスクリーン版 31・・・変形後の内紗
32・・・(外紗の)外縁 34・・・(外紗の)内縁
36・・・(内紗の)外縁 38・・・印刷エリア
40・・・(印刷エリアの)乳剤
41・・・網目 43・・・(塞がれていない)網目
42・・・(外周部の)乳剤 44・・・外周部
46・・・放電セル 48・・・部材(白紙スクリーン版)
50・・・第1の乳剤 52・・・第2の乳剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
版枠と、
外側に向かって引っ張れた状態で、前記版枠に第1の外縁が固定された外紗と、
外側に向かって引っ張れた状態で、前記外紗の内縁に第2の外縁が固定された内紗を具備し、
硬化した第1の乳剤によって前記内紗の網目の一部が塞がれ、塞がれていない前記網目によって印刷予定の図形が形成された印刷エリアが、前記内紗の中央部に設けられ、
前記第1の乳剤より硬く硬化した第2の乳剤によって前記網目が塞がれた、前記印刷エリアを囲む外周部が、前記第2の外縁と前記印刷エリアの間に設けられている、
印刷用スクリーン版。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷用スクリーン版において、
前記印刷用スクリーン版が、プラズマディスプレイパネルの基板に蛍光体を印刷するために用いられる印刷用スクリーン版であることを、
特徴とする印刷用スクリーン版。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷用スクリーン版において、
前記第2の乳剤は、前記第1の乳剤よりフィラーが高濃度に添加されている、
ことを特徴とする印刷用スクリーン版。
【請求項4】
請求項3に記載の印刷用スクリーン版において、
前記第1及び第2の乳剤が光硬化性樹脂とフィラーからなることを、
特徴とする印刷用スクリーン版。
【請求項5】
請求項4に記載の印刷用スクリーン版において、
前記光硬化樹脂がポリウレタンアクリートからなり、
前記フィラーがポリビニルアルコールからなる、
ことを特徴とする印刷用スクリーン版。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の印刷用スクリーン版において、
前記外紗は、合成繊維が織られて形成されたメッシュであり、
前記内紗は、金属製のメッシュであることを、
特徴とする印刷用スクリーン版。
【請求項7】
版枠と、外側に向かって引っ張れた状態で前記版枠に第1の外縁が固定された外紗と、外側に向かって引っ張れた状態で前記外紗の内縁に第2の外縁が固定された内紗を具備する部材を用意し、前記内紗の中央を含む印刷エリアに第1の乳剤を塗布し、前記印刷エリアと前記第2の外縁の間に第2の乳剤を塗布する第1の工程と、
非硬化領域が印刷予定の図形になるように第1の乳剤に光を照射して硬化させ、同時に第2の乳剤全体に光を照射して硬化させる第2の工程と、
前記非硬化領域に塗布された第1の乳剤を除去する第3工程を具備し、
前記第2の乳剤として、硬化後の前記第1の乳剤より硬く硬化する乳剤を使用する、
印刷用スクリーン版の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の印刷用スクリーン版の製造方法において、
前記第2の乳剤は、前記第1の乳剤よりフィラーが高濃度に添加されている、
ことを特徴とする印刷用スクリーン版の製造方法。
【請求項9】
外側に向かって引っ張られた状態の外紗を版枠に固定する第1の工程と、
前記版枠の中央に内紗を配置し、外縁を前記外紗に固定する第2の工程と、
前記外縁で囲まれた前記外紗を切除する第3の工程と、
前記内紗の中央を含む印刷エリアに第1の乳剤を塗布し、前記印刷エリアと前記外縁の間に第2の乳剤を塗布する第4の工程と、
非硬化領域が印刷予定の図形になるように第1の乳剤に光を照射して硬化させ、同時に第2の乳剤に光を照射して硬化させる第5の工程と、
前記非硬化領域に塗布された第1の乳剤を除去する第6の工程を具備し、
硬化後の前記第2の乳剤が、硬化後の前記第1の乳剤より硬い、
印刷用スクリーン版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−42612(P2010−42612A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208532(P2008−208532)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(599132708)日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】