説明

印刷用スクリーン版及びその製造方法

【課題】版枠の反りに起因する印刷位置のズレを抑制すること。
【解決手段】四角形の版枠と、外側に向かって引っ張られた状態で、前記版枠に第1の外縁が固定されている外紗と、外側に向かって引っ張られた状態で、前記外紗の内縁に第2の外縁が固定されている内紗と、前記外紗及び前記内紗に横たわった状態で両端が、前記版枠の上辺及び下辺に夫々固定されている第1及び第2の支柱と、前記外紗及び前記内紗に横たわった状態で両端が、前記版枠の左辺及び右辺に夫々固定されている第3及び第4の支柱を具備し、前記第1乃至第4の支柱が形成する井桁の底辺に前記内紗が固定され、前記井桁によって囲い込まれた領域に、硬化した乳剤によって塞がれていない、前記内紗の網目によって、印刷予定の図形が形成されていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用スクリーン版に関し、特に、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel;PDP)の製造に用いられる印刷用スクリーン版に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷は、低コストを特徴とする厚膜の形成技術である。このためスクリーン印刷は、各種の電子部品、例えばPDPや積層セラミックコンデンサ等の製造に利用されている(特許文献1)。特に、スクリーン印刷は、PDPの蛍光体形成には、欠かせない技術になっている。
【0003】
図1は、スクリーン印刷によって、PDPの隔壁を持つ基板(例えば背面基板)2に蛍光体4を印刷する工程を説明する図である。図1には、スクリーン版10とスキージ14からなるスクリーン印刷装置11の動作を真横から見た断面図が描かれている。
【0004】
背面基板2に蛍光体4を印刷するためには、まず、弾性のあるメッシュ状のスクリーン6を用意し、このスクリーンを軽金属製の丈夫な枠(版枠8)に固定する。次に、形成したい厚膜に対応する領域を残して、スクリーン6の網目を乳剤(エマルジョン)で塞ぐ。
【0005】
このようにして形成したスクリーン版10を、蛍光体4(厚膜)が印刷される背面基板2の上に、僅かな間隔を開けて配置する。次に、蛍光体ペースト12(厚膜ペースト)をスクリーン6の一端に細長く土手状に延ばす。
【0006】
次に、スキージ14と呼ばれる例えばプラスチック製の細長いヘラで、この蛍光体ペースト12をスクリーン6に押し付けながら、スクリーン6の一端から他端に移動させる。この時、スクリーン6は背面基板2に接し、背面基板2の表面に設けられた放電セル内に蛍光体4が転写される。
【特許文献1】特開2006−335045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PDPの放電セルは隔壁によって囲われた矩形の領域であり、PDPの背面基板2の表面に縦及び横方向に数百μm間隔で整然と配置されている。このため、蛍光体の印刷位置が僅かにズレただけでも、PDPは不良品になってしまう。
【0008】
ところで、スクリーン6は、外側に引っ張られた状態のまま、版枠8の底辺9に固定される。この時にスクリーン6に形成された引っ張り応力によって、版枠8の底辺は、内側に向かって引っ張られる。このため版枠8は、底辺9を内側にして反り返る。この状態で、スクリーン6の網目を乳剤(エマルジョン)で部分的に塞いで、塞がれていない網目によって印刷予定の厚膜の形状に対応した図形(以後、印刷パターンと呼ぶ)をスクリーン6に形成する。
【0009】
スクリーン印刷は、スクリーン印刷装置11にスクリーン版10が装着された後実施される。この時、版枠8は、クランプによってスクリーン印刷装置11に固定される。この時、反り返っていた版枠8は、平坦に矯正される。この版枠の平坦化に伴ってスクリーン6も変形し、厚膜の印刷位置にズレが生じる。
【0010】
スクリーン6が小さい場合には、この変形による印刷位置のズレは問題にならない。
【0011】
しかし、近年のPDPの大型化に合わせて、印刷用スクリーン版も大型化している。このため、PDPの製造に用いられる印刷用スクリーン版の一辺も、優に1mを超えるようになっている。このような大型のスクリーン版を使用すると、スクリーンが極僅か(例えば、0.1%)変形しただけでも、印刷位置は大きくズレてしまう(例えば、1mm)。この結果、スクリーン印刷によって、蛍光体を放電セル内に正確に印刷することが困難になってきている。
【0012】
このような印刷位置のズレは、程度の差はあるが、PDP以外の電子部品等を製造する場合にも問題になる。
【0013】
そこで、本発明の目的は、印刷用スクリーン版の反りに起因する印刷位置のズレを抑制した印刷用スクリーン版及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本印刷用スクリーン版は、 四角形の版枠と、外側に向かって引っ張られた状態で、前記版枠に第1の外縁が固定されている外紗と、外側に向かって引っ張られた状態で、前記外紗の内縁に第2の外縁が固定されている内紗と、前記外紗及び前記内紗に横たわった状態で両端が、前記版枠の上辺及び下辺に夫々固定されている第1及び第2の支柱と、前記外紗及び前記内紗に横たわった状態で両端が、前記版枠の左辺及び右辺に夫々固定されている第3及び第4の支柱を具備し、前記第1乃至第4の支柱が形成する井桁の底辺に前記内紗が固定され、前記井桁によって囲い込まれた領域に、硬化した乳剤によって塞がれていない、前記内紗の網目によって、印刷予定の図形が形成されている。
【0015】
また、本印刷用スクリーン版の製造方法は、四角形の版枠と、外側に向かって引っ張られた状態で、前記版枠の底辺に第1の外縁が固定されている外紗と、外側に向かって引っ張られた状態で、前記外紗の内縁に第2の外縁が固定されている内紗を具備する白紙のスクリー版を用意し、前記外紗と前記内紗に横たわらせた第1の支柱の両端を夫々前記版枠の上辺及び下辺に固定し、前記外紗と前記内紗に横たわらせた第2の支柱の両端を夫々前記上辺及び前記下辺に固定し、前記外紗と前記内紗に横たわらせた第3の支柱の両端を夫々前記版枠の左辺及び右辺に固定し、前記外紗と前記内紗に横たわらせた第4の支柱の両端を夫々前記左辺及び前記右辺に固定する第1の工程と、前記第1乃至第4の支柱によって形成さえる井桁の底辺に、前記内紗を固定する第2の工程と、前記井桁によって囲い込まれた領域に、硬化した乳剤によって塞がれていない、前記内紗の網目によって、印刷予定の図形を形成する第3の工程を具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に従う印刷用スクリーン版は、内紗が井桁の底辺に固定されているので、印刷用スクリーン版の反りに起因する印刷位置のズレが生じ難い。
【0017】
また、本発明に従う印刷用スクリーンの製造方法によれば、内紗を井桁の底辺に固定するので、印刷用スクリーン版の反りに起因する印刷位置のズレが生じ難い印刷用スクリーン版を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0019】
まず、本発明者が以前に使用していた印刷用スクリーン版(以後、単にスクリーン版と呼ぶ)の構成を、その製造方法に従って説明する。次に、スクリーン版の反りに起因する印刷位置ズレのメカニズムを説明する。その後、本実施の形態に従うスクリーン版の構成及びその製造方法を説明する。
【0020】
(1)改良前のスクリーン版
ここでは、本発明者が以前に使用していた改良前のスクリーン版の構成を、その製造方法に従って説明する。
【0021】
図2は、改良前のスクリーン版の製造手順を説明するフロー図である。図3乃至図6は、改良前のスクリーン版の製造手順を説明する平面図である。
【0022】
(i)ステップS1(外紗固定)
まず、合成繊維製(例えば、テフロン(登録商標)製)のメッシュを用意する。次に、このメッシュ(以後、外紗16と呼ぶ)を、軽金属製(例えば、アルミニウム製)で且つ四角形の枠(以後、版枠8と呼ぶ)に重ねる(図3(a)参照)。ここで、版枠8は、4枚の軽金属製(例えば、アルミニウム製)の板材64が夫々、両端で他の板材64に垂直に交わるように溶接して形成されている。
【0023】
次に、外紗16を、外側に向かって引っ張って緊張させる(図3(b)参照)。この状態のまま、外紗16を、例えばエポキシ系の接着剤17によって版枠8に固定する(図4(a)参照)。
【0024】
その後、版枠8から食み出した外紗19を切り取る(図4(b)参照)。
【0025】
以上のようにして、本ステップでは、外側に向かって引っ張られた状態の外紗16を版枠8に固定する。
【0026】
(ii)ステップS2(内紗固定)
次に、外紗16より小さい四角形の金属製(例えば、ステンレス製)のメッシュを用意する。このメッシュ(以後、内紗18と呼ぶ)は、版枠8の内縁で囲まれて領域(版枠8の内側)より小さく裁断されている。
【0027】
次に、この内紗18を外紗16に重ね合わせる。この時、双方の中心が略一致するように、内紗18を外紗16に重ねる(図5(a)参照)。その後、内紗18の外縁20を、例えばエポキシ系の接着剤17によって外紗16に固定する(図5(b)参照)。
【0028】
尚、内紗16は、縦糸が内紗の左右の辺(スキージング方向)に対して22.5°傾くように裁断されている。このようなバイアス角を設けるのは、印刷パターンが網目の幅と同程度まで小さくなっても、印刷される厚膜の形が均一になるようにするためである。
【0029】
以上のようにして、本ステップでは、版枠8の中央に内紗18を配置し、内紗18の外縁20を外紗16に固定する。
【0030】
(iii)ステップS3(外紗切除)
次に、内紗の外縁(接着部)20で囲まれた外紗21を切除する(図5(c)参照)。
【0031】
内側の外紗21が切除されると、内紗18は、外紗16によって外側に引っ張られら状態になる。
【0032】
(iv)ステップS4(乳剤塗布)
次に、内紗18に感光性の乳剤22を塗布する(図6(a)参照)。この乳剤は、例えば、光硬化性樹脂の一つであるポリウレタンアクリレートとアクリル酸エステルからなる混合液に、ポリビニルアルコール製のフィラーが添加されたものである。
【0033】
この時、外紗16には、目止め材23が塗布される。目止め材23は、印刷の際にスキージング等により内紗18から食み出したペースト(例えば、蛍光体ペースト)が外紗16に滲み出して、スクリーン印刷装置や基板を汚染することを防止するためのものである。
【0034】
(v)ステップS5(露光)
次に、非光照射領域が印刷予定の図形(印刷パターン)になるように、乳剤22に光を照射する。すなわち、印刷パターンに合わせて乳剤22を露光する。
【0035】
(vi)ステップS6(現像)
次に、乳剤22を水によって現像し乾燥させる。以上の手順によって光照射領域の乳剤が硬化する。その後、スクリーン版を純水によって洗浄して、非光照射領域の乳剤を洗い落とし印刷パターンを形成する。
【0036】
すなわち、本ステップでは、非硬化領域に塗布された乳剤を除去する。
【0037】
以上説明したステップS1〜ステップS6によって、印刷パターンが形成された印刷エリア37が内紗18の中央に形成される(図6(b)参照)。
【0038】
(2)印刷位置ズレの原因
図7は、改良前のスクリーン版10を真横から見た状態を説明する図である。
【0039】
図7に示すように、版枠8の底辺9には、スクリーン6が接着剤等によって固定されている。上述したように、スクリーン6の外周部すなわち外紗16は、外側に引っ張られた状態のまま版枠8の底辺に固定される。従って、外紗16は、外側に引っ張る外力が取り除かれても、版枠8によって引っ張られている。すなわち、外紗16は、外側に向かって版枠8によって引っ張られた状態で、版枠8に外縁が固定されている。
【0040】
このように外紗16は版枠8から常に引っ張り応力を受けているが、その反作用として、版枠8は内側に向かう力(反作用力24)を外紗16から受ける。この反作用力は、版枠8の底辺に作用する。このため版枠8は、図7のように、底辺9が内側になるように曲がる(すなわち、上側に反り返る。)。
【0041】
図8は、改良前のスクリーン版10がスクリーン印刷装置11に装着された状態を真横から見た図である(但し、スクリーン印刷装置11は、スクリーン版10に接する部分だけが図示されている。)。
【0042】
スクリーン版10は、クランプ26によって版枠8に押さえ付けられて装着される(図8参照)。この時、反り返っていた版枠8は、略平坦に矯正される。
【0043】
版枠8が変形すると版枠8から引っ張り応力を受けているスクリーン6、特に合成繊維製の外紗16が変形し、印刷パターンの形成位置が変化する。その結果、印刷パターンの印刷位置にズレが生じてしまう。ここで外紗16は、合成繊維製であるため金属製の内紗18より変形しやすい。
【0044】
このように、スクリーン印刷装置11にスクリーン版10を装着すると、版枠8が変形し、その結果、スクリーンが変形して印刷位置にズレが生じる。
【0045】
ここで、印刷位置のズレが、同一構造の他のスクリーン版でも再現するならば、予め他のスクリーン版を使って印刷位置のズレを測定し、内紗18に形成される印刷パターンの位置を調整して印刷位置のズレを回避することも可能である。
【0046】
しかし、印刷位置のズレは、同一構造のスクリーン版であっても異なっている。これは、スクリーン6を固定する版枠が、板材の溶接によって形成されていることが一因と考えられる。
【0047】
版枠8は、左右(又は、上下)の辺がクランプによって押さえ付けられて、スクリーン印刷装置11に装着される。この際、版枠8の四隅すなわち溶接箇所には大きな力が加わる。この溶接箇所の状態は、版枠毎に少しずつ異なっている。その結果、スクリーン印刷装置11に装着された時に生じる版枠8の変形は、スクリーン版毎に少しずつ異なっている。このため、印刷位置のズレが再現しないと考えられる。
【0048】
従って、印刷パターンの形成位置を調整して、印刷位置のズレを回避することは困難である。
【0049】
ところで、目止め材の代わりに、PET(polyethylene terephralate)製のフィルムを外紗に貼り付けられることがある。これは、外紗に目止め材を均一に塗布することが難しいために、外紗からのペースト滲み出しを完全に防止することができないためである。すなわち、外紗にPETフィルムを貼付して、ペーストの滲み出しを防止する。
【0050】
このように外紗にPETフィルムが貼付されたスクリーン版では、PETフィルムによって外紗が補強され、印刷位置のズレが抑制されるようにも思われる。しかし、PETフィルムを外紗に貼付すると、反ってスクリーンが複雑に変形してしまい、問題の解決には繋がらない。
【0051】
図9は、外紗18にPETフィルム28が貼付されたスクリーン版10の状態を説明する平面図である。このようなスクリーン版では、図9に示すように、4枚の矩形のPETフィルム28が内紗18を囲むように、外紗に貼付される。すなわち、外紗に貼付されるPETフィルムは、一体ではなく分割されている。
【0052】
従って、このようなスクリーン版をスクリーン印刷装置に装着すると、PETフィルム間の隙間で外紗が大きく変形する。その結果、印刷パターンの変形は、一方向への単なる拡大又は縮小ではなく複雑なものになる。このため、印刷位置ズレは解消されず、反って問題が複雑化する。また、PETフィルムを外紗に貼付することは、材料費及び工数の増加を招き製造コスト増加の原因となる。
【0053】
(実施の形態)
次に、上記位置ズレを解消したスクリーン版の構成及び製造方法を説明する。
【0054】
(1)構 成
図10は、本実施の形態に従うスクリーン版30の構成を説明する平面図である。図11(a)は、図10のA−A線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図である。また、図11(b)は図10のB−B線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図である。
【0055】
図10及び図11に示すように、本実施の形態に従うスクリーン版30は、軽金属製(例えば、アルミニウム製)の版枠8と、外側に向かって引っ張られた状態で、上記版枠8に外縁31が固定されている外紗16を具備している。
【0056】
また、本スクリーン版30は、外側に向かって引っ張られた状態で、上記外紗16の内縁33に外縁35が固定されている内紗18を具備している。
【0057】
ここで、版枠8は、軽金属性(例えば、アルミニウム製)の4枚の板材64で形成され、一の板材の両端が他の板材64の一端に夫々溶接されて形成されている。
【0058】
また、上記外紗16は合成繊維製(例えば、テフロン(登録商標)製)のメッシュ68であり、上記内紗18は、金属製(例えば、ステンレス製)のメッシュ68である。
【0059】
更に、本スクリーン版30は、上記外紗16及び上記内紗18に横たわった状態で両端が、上記版枠8の上辺32及び下辺34に夫々固定されている第1及び第2の支柱36,38を具備している。
【0060】
また、本スクリーン版30は、上記外紗16及び上記内紗18に横たわった状態で両端が、上記版枠8の左辺40及び右辺42に夫々固定された第3及び第4の支柱44,46を具備している。
【0061】
ここで各支柱36,38,44,46は、相互に交差して井桁48を形成している。各支柱36,38,44,46は、各支柱36,38,44,46に設けられた切り欠き部(図示せず)が交差部で嵌合して井桁48を形成している。
【0062】
そして、本スクリーン版30では、上記第1〜第4の支柱36,38,44,46が形成する井桁48の底辺50に、上記内紗18が固定されている(図11(a)及び(b)参照)。ここで、井桁48の底辺50と内紗18は、井桁48で囲われた領域52(図10に於いて破線で囲われた領域)の外周に沿って隙間なく接着されていることが好ましい。
【0063】
図12は、上記領域52の内側に形成された印刷エリア60(スキージングエリア)を拡大した平面図である。図12に示すように、上記領域52には、(硬化した)乳剤54によって塞がれていない(内紗の)網目56によって、印刷予定の図形58が形成されている。
【0064】
このように、本実施の形態に従うスクリーン版30では、印刷パターの形成された印刷エリア60(スキージングエリア)は、(合成繊維製のため)変形しやすい外紗16の伸縮の影響から(変形し難い)井桁48によって分離されている。従って、本スクリーン版によれば、スクリーン印刷装置にスクリーン版を装着したことに起因する印刷位置のズレを抑制することができる。
【0065】
更に、第1〜第4の支柱36,38,44,46が版枠8の筋交いとして機能して、版枠8がスクリーン印刷装置11に装着された時の変形を抑制する。この結果、スクリーン印刷装置にスクリーン版を装着したことに起因する印刷位置のズレが抑制される。
【0066】
また、井桁48が内紗18の外周部を固定しているので、スキージによって内紗18が押された時に内紗18に生じる変形が井桁48の内部に限定される。このため変形する内紗18の面積が小さくなり、その結果、印刷位置のズレが抑制される。従って、本実施の形態のスクリーン版30によれば、スキージングによる印刷位置のズレも抑制される。
【0067】
また、本スクリーン版30では、印刷エリア60が井桁48によって外紗16の影響から分離されているので、合成繊維製の外紗16が温度や湿度の影響を受けて変形しても、印刷エリア60が変形することはない。同様に、合成繊維製の外紗16がクリープ変形しても、印刷エリアは変形しない。従って、これらの変形に起因する印刷ズレも、本スクリーン版30によれば抑制することができる。
【0068】
また、上述したように、本スクリーン版30では、印刷エリア60が井桁48によって囲われ、更に井桁48によって囲われ領域52の外周に沿って井桁48の底辺50と内紗18が隙間なく接着されている。このため厚膜印刷用のペースが、内紗18から食み出して外紗16を汚染することはない。従って、改良前のスクリーン版とは違って、本実施の形態に従うスクリーン版30の関しては、外紗16に目止め材を塗布したり、外紗16にPETフィルムを貼付する必要はない。
【0069】
更には、大型のスクリーン印刷装置によって小さな基板に対してスクリーン印刷を高精度に実施することが必要になった場合には、基板の大きさに合わせて井桁で囲われた領域52を小さくすればよい。このようにすれば、スキージによる印刷位置ズレが小さくなるので、高精度の印刷(位置ズレの小さい印刷)が可能になる。
【0070】
尚、印刷パターン58は、スキージが移動する印刷エリア60(スキージングエリア)の外周から離れて形成されることが好ましい。すなわち、印刷パターン58は印刷エリア60の内側に形成し、印刷パターン群の外周と印刷エリア60の外周に、(内紗の)網目が全て塞がれた領域が設けられることが好ましい。
【0071】
(2)使用方法
本実施の形態に従うスクリーン版30の使用方法は、図1を参照して説明した従来のスクリーン版10の使用方法と略同じである(但し、スキージを移動する領域は、印刷エリア60に限られる。)。
【0072】
図13は、本実施の形態に従うスクリーン版30が、スクリーン印刷装置(図示せず)にクランプ26によって装着された状態を説明する平面図である。図13に示すように、本スクリーン版30は、左右の辺40,42が複数の箇所でクランプ26によってスクリーン印刷装置に固定される。その結果、図7及び図8を参照して説明したように、スクリーン版30の反りが矯正されて、スクリーン6、特に変形しやすい外紗16が変形する。
【0073】
しかし、本スクリーン版30では、内紗18が井桁48に固定されているので、版枠8が変形しても、印刷エリアは外紗16の変形の影響を殆どうけない。このため印刷エリアは、変形しない。故に、スクリーン印刷装置にスクリーン版を装着したことに起因する印刷位置ズレは、極僅かである。
【0074】
また、本スクリーン版30では、上述したように版枠8が井桁48によって補強されているので、クランプで固定されても版枠自体があまり変形しない。このため、スクリーン印刷装置にスクリーン版を装着したことに起因する印刷位置ズレが抑制される。
【0075】
同じく上述したように、内紗18の外周部が井桁48によって固定されているので、スキージングによる印刷位置のズレも抑制される。
【0076】
図14は、本スクリーン版30を用いてPDPの背面基板2に印刷した蛍光体4の状態を説明する平面図である。
【0077】
蛍光体4は、図12に示す印刷エリア60に矩形の印刷パターン58が上下左右に規則正しく配列された(PDPの背面基板に蛍光体を印刷するための)スクリーン版30によってPDPの背面基板2に印刷される。
【0078】
本スクリーン版30を用いると、図14に示すように、蛍光体4は、隔壁で囲われた放電セル62の内側に位置ズレすることなく正確に印刷される。
【0079】
(3)製造方法
図15は、本実施の形態に従うクリーン版の製造手順を説明するフロー図である。図16及び17は、本実施の形態に従うクリーン版の製造手順を説明する平面図である。
【0080】
(i)ステップS1(井桁の形成)
各辺が直角に交わるように形成された四角形の版枠8と、外側に向かって引っ張られた状態で版枠8に外縁が固定されている外紗16と、外側に向かって引っ張られた状態で、外紗16の内縁に外縁が固定されている内紗18を具備する白紙スクリーン版66を用意する(図5(a)〜(c)参照)。
【0081】
ここで、版枠8は、4枚の軽金属性製(例えば、アルミニウム製)の板材64で形成され、一の板材64の両端が他の板材64の一端に夫々溶接されて形成されている(図16(a)参照)。また、外紗16は合成繊維製(例えば、テフロン(登録商標)製)のメッシュであり、内紗18は、金属製(例えば、ステンレス製)のメッシュである。
【0082】
このような白紙スクリーン版66は、例えば、上記「(1)改良前のスクリーン版」で説明したステップS1〜ステップS3に従って形成することができる。
【0083】
次に、図16(a)に示すように、外紗16と内紗18に横たわらせた第1の支柱36の両端を夫々版枠8の上辺32及び下辺34に固定する。また、外紗16と内紗18に横たわらせた第2の支柱38の両端を夫々上辺32及び下辺34に固定する。また、外紗16と内紗18に横たわらせた第3の支柱44の両端を夫々版枠8の左辺40及び右辺42に固定する。また、外紗16と内紗18に横たわらせた第4の支柱46の両端を夫々左辺40及び右辺42に固定する。尚、第1〜第4の支柱36,38,44,46は、溶接又はボルトによって版枠8に固定する。
【0084】
以上の手順によって、各支柱36,38,44,46を交差させて井桁48を形成し、版枠8に固定する。ここで各支柱36,38,44,46には切り欠き部(図示せず)を設け、この切り欠き部を嵌合させることによって各支柱の交差部を形成する。
【0085】
本ステップにより、第1〜第4の支柱36,38,44,46によって井桁48が形成され、版枠8に固定される。
【0086】
(ii)ステップS2(内紗の井桁への固定)
次に、第1〜第4の支柱36,38,44,46によって形成さえる井桁48の底辺50に、内紗18を固定する(図11参照)。
【0087】
ここで井桁48の底辺50と内紗18は、エポキシ系の接着剤等によって、井桁48によって囲われた領域52に沿って隙間なく接着する。
【0088】
(iii)ステップS3(乳剤塗布)
次に、内紗18に感光性の乳剤22を塗布する(図16(b)参照)。この乳剤は、例えば、光硬化性樹脂の一つであるポリウレタンアクリレートとアクリル酸エステルからなる混合液に、ポリビニルアルコール製のフィラーが添加されたものである。
【0089】
(iv)ステップS4(露光)
次に、非光照射領域が印刷予定の図形(印刷パターン)になるように、乳剤22に光を照射する。すなわち、印刷パターンに合わせて乳剤22を露光する。
【0090】
(v)ステップS5(現像)
次に、乳剤22を水によって現像し乾燥させて、光照射領域の乳剤を硬化させる。その後、スクリーン版を純水によって洗浄して、非光照射領域の乳剤を洗い落とす。すると、印刷エリア60に印刷パターン58が現れる(図17参照)。印刷パターン58は、例えば、図12を参照して説明した、PDPの背面基板に蛍光体を印刷するためのものである。
【0091】
上記ステップS3〜S5によって、井桁48によって囲い込まれた領域52に、(硬化した)乳剤によって塞がれていない(内紗18の)網目56によって、印刷予定の図形を形成する。
【0092】
以上の手順によって、図10を参照して説明したスクリーン版(例えば、PDPの背面基板に蛍光体を印刷するために用いられる印刷用スクリーン版)が製造される。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】PDPの背面基板に蛍光体を印刷する工程を説明する図である。
【図2】改良前のスクリーン版の製造手順を説明するフロー図である。
【図3】改良前のスクリーン版の製造手順を説明する工程平面図である(その1)。
【図4】改良前のスクリーン版の製造手順を説明する工程平面図である(その2)。
【図5】改良前のスクリーン版の製造手順を説明する工程平面図である(その3)。
【図6】改良前のスクリーン版の製造手順を説明する工程平面図である(その4)。
【図7】改良前のスクリーン版を真横から見た状態を説明する図である。
【図8】改良前のスクリーン版がスクリーン印刷装置に固定された状態を真横から見た図である。
【図9】外紗にPETフィルムが貼付さえたスクリーン版の状態を説明する平面図である。
【図10】実施の形態に従うスクリーン版の構成を説明する平面図である。
【図11】図10のA−A線及びB−B線に於ける断面を矢印の方向から見た断面図である。
【図12】実施の形態に従うスクリーン版の印刷エリア(スキージングエリア)を拡大した平面図である。
【図13】実施の形態に従うスクリーン版が、スクリーン印刷装置(図示せず)にクランプによって装着された状態を説明する平面図である。
【図14】実施の形態に従うスクリーン版を用いて、PDPの背面基板に印刷した蛍光体の状態を説明する平面図である。
【図15】実施の形態に従うクリーン版の製造手順を説明するフロー図である。
【図16】実施の形態に従うクリーン版の製造手順を説明する平面図である(その1)。
【図17】実施の形態に従うクリーン版の製造手順を説明する平面図である(その2)。
【符号の説明】
【0094】
2・・・PDPの背面基板 4・・・蛍光体
6・・・スクリーン 8・・・版枠 9・・・版枠の底辺
10・・・スクリーン版 11・・・スクリーン印刷装置
12・・・蛍光体ペースト 14・・・スキージ
16・・・外紗 17・・・接着剤
18・・・内紗 19・・・(版枠から食み出した)外紗
20・・・内紗の外縁(接着部)
21・・・(内紗の外縁で囲まれた)外紗 22・・・乳剤
23・・・目止め材 24・・・反作用力
26・・・クランプ 28・・・PETフィルム
30・・・(実施の形態に従う)スクリーン版
31・・・外紗の外縁 32・・・上辺
33・・・外紗の内縁 35・・・内紗の外縁
34・・・下辺
36・・・第1の支柱 37・・・印刷エリア
38・・・第2の支柱
40・・・左辺 42・・・右辺
44・・・第3の支柱 46・・・第4の支柱
48・・・井桁 50・・・井桁の底辺
52・・・井桁に囲まれた領域 54・・・硬化した乳剤
56・・・網目 58・・・印刷パターン
60・・・印刷エリア 62・・・放電セル
64・・・板材 66・・・白紙スクリーン版
68・・・メッシュ 70・・・隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形の版枠と、
外側に向かって引っ張られた状態で、前記版枠に第1の外縁が固定されている外紗と、
外側に向かって引っ張られた状態で、前記外紗の内縁に第2の外縁が固定されている内紗と、
前記外紗及び前記内紗に横たわった状態で両端が、前記版枠の上辺及び下辺に夫々固定されている第1及び第2の支柱と、
前記外紗及び前記内紗に横たわった状態で両端が、前記版枠の左辺及び右辺に夫々固定されている第3及び第4の支柱を具備し、
前記第1乃至第4の支柱が形成する井桁の底辺に前記内紗が固定され、
前記井桁によって囲い込まれた領域に、硬化した乳剤によって塞がれていない、前記内紗の網目によって、印刷予定の図形が形成されている
印刷用スクリーン版。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷用スクリーン版において、
前記印刷用スクリーン版が、プラズマディスプレイパネルの基板に蛍光体を印刷するために用いられる印刷用スクリーン版であることを、
特徴とする印刷用スクリーン版。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の印刷用スクリーン版において、
前記版枠が、4枚の板材で形成され、一の前記板材の両端が他の前記板材の一端に夫々溶接されて形成されていることを、
特徴とする印刷用スクリーン版。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の印刷用スクリーン版において、
前記井桁の底辺と前記内紗が、前記領域の外周に沿って隙間なく接着されていることを、
特徴とする印刷用スクリーン版。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の印刷用スクリーン版において、
前記外紗は、合成繊維製のメッシュであり、
前記内紗は、金属製のメッシュであることを、
特徴とする印刷用スクリーン版。
【請求項6】
四角形の版枠と、外側に向かって引っ張られた状態で、前記版枠の底辺に第1の外縁が固定されている外紗と、外側に向かって引っ張られた状態で、前記外紗の内縁に第2の外縁が固定されている内紗を具備する白紙のスクリー版を用意し、
前記外紗と前記内紗に横たわらせた第1の支柱の両端を夫々前記版枠の上辺及び下辺に固定し、
前記外紗と前記内紗に横たわらせた第2の支柱の両端を夫々前記上辺及び前記下辺に固定し、
前記外紗と前記内紗に横たわらせた第3の支柱の両端を夫々前記版枠の左辺及び右辺に固定し、
前記外紗と前記内紗に横たわらせた第4の支柱の両端を夫々前記左辺及び前記右辺に固定する第1の工程と、
前記第1乃至第4の支柱によって形成さえる井桁の底辺に、前記内紗を固定する第2の工程と、
前記井桁によって囲い込まれた領域に、硬化した乳剤によって塞がれていない、前記内紗の網目によって、印刷予定の図形を形成する第3の工程を具備する、
印刷用スクリーン版の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−42613(P2010−42613A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208533(P2008−208533)
【出願日】平成20年8月13日(2008.8.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(599132708)日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】