説明

印刷装置およびゲイン補正方法

【課題】特定の制御対象について、速度変動を抑えた安定した動作を実現することが困難であった。
【解決手段】制御対象を駆動するモーターと、当該制御対象の速度を検出し、当該検出した速度と当該制御対象の目標速度との差に基づいて当該モーターの駆動をPID制御する制御部とを備える印刷装置であって、上記制御部は、上記モーターを駆動させることにより特定の制御対象を動作させた所定期間における当該特定の制御対象の速度変動量を取得し、上記PID制御のための所定の定数を、当該速度変動量に基づいて求めた補正比率に応じて補正するゲイン演算部を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置およびゲイン補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンターにおいては、キャリッジやローラー等の制御対象を動作させるモーターを駆動制御する際に、PID制御(フィードバック制御)が行なわれている。すなわち、制御対象の現在の速度と目標速度との偏差を求め、当該速度偏差に比例ゲインを乗算した結果と、当該偏差に積分ゲインを乗算した結果の積算値と、当該偏差の変化量に微分ゲインを乗算した結果と、の加算結果に基づいて、モーターに供給する電圧をパルス幅変調(Pulse Width Modulation)するためのデューティー比を決定し、当該デューティー比に基づいてモーターを制御している(特許文献1参照。)。また、このようなPID制御として、駆動中のモーターの負荷を測定し、当該負荷の大きさに応じて上記各ゲインを補正する(負荷が大きい場合にゲインが大きくなるように補正する)構成も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006‐272763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、モーターの駆動により、プリンターが備える制御対象のうち特定の制御対象に、短期的に大きな外的負荷を伴う動作(特定動作)を実行させた場合、上記PID制御下であっても、制御対象の速度変動はある程度大きなものとなってしまう。また、このような特定動作を制御対象に実行させる際、上述したようなモーターの負荷に応じて上記各ゲインを補正する構成を採った場合にも問題が生じ得る。具体的には、プリンターにおいて、上記デューティー比の変化(モーターのトルク変化)に対する制御対象の速度の追従性が安定しない場合等に、上記モーターの負荷の大きさに応じて上記各ゲインを大きな値に補正すると、制御対象の速度変動の振幅が却って大きくなってしまい、上記特定動作を安定した速度で実現できないこともある。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、制御対象の速度変動を抑えた安定した動作を実現するための印刷装置およびゲイン補正方法を提供する。また本発明は、モーターのトルク変化に対する制御対象の速度の追従性が安定しない等といった状態であっても、結果的に制御対象の速度変動を抑えた安定した動作を実現可能とすることで、製品の製造や調整にかかるコストを低減することが可能な印刷装置およびゲイン補正方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様の一つは、制御対象を駆動するモーターと、当該制御対象の速度を検出し、当該検出した速度と当該制御対象の目標速度との差に基づいて当該モーターの駆動をPID制御する制御部とを備える印刷装置であって、上記制御部は、上記モーターを駆動させることにより特定の制御対象を動作させた所定期間における当該特定の制御対象の速度変動量を取得し、上記PID制御のための所定の定数を、当該速度変動量に基づいて求めた補正比率に応じて補正するゲイン演算部を備える構成としてある。
【0007】
本発明によれば、モーターの駆動により上記特定の制御対象を動作させた所定期間における当該特定の制御対象の速度変動量に基づく補正比率に応じて、PID制御のための定数(ゲイン)を補正する。そのため、以後、当該特定の制御対象について、速度変動を抑えた安定した動作を実現させることができる。また本発明によれば、モーターのトルク変化に対する当該特定の制御対象の速度追従性が安定しない等といった状況下でも、結果的に当該特定の制御対象の速度変動を抑えた安定した動作を実現することで、印刷装置の製造や調整にかかるコストを低減することができる。
【0008】
上記特定の制御対象とは、印刷装置が備える複数の制御対象の中の一つであり、その構造上、モーターの駆動により動作したときに、短期的あるいは突発的に所定程度の大きな負荷を伴うものを言う。このような特定の制御対象は、例えば、上記モーターの駆動によりインク吐出用の印字ヘッドのインク吐出面に対する接近動作および当該インク吐出面からの退避動作を実行可能なインクキャップである。そして、上記ゲイン演算部は、上記モーターを駆動させることにより当該インクキャップに上記退避動作をさせた期間における速度変動量を取得する。当該構成によれば、インクキャップに速度変動を抑えた安定した退避動作を実現させるための、PID制御のための定数(補正された定数)を得ることができる。
【0009】
上記ゲイン演算部は、上記特定の制御対象の動作について予め定められた目標速度と、当該特定の制御対象を動作させた期間における当該制御対象の速度の最大値または最小値と、の差を速度変動量として取得するとしてもよい。当該構成によれば、特定の制御対象の速度変動量を的確かつ容易に取得することができる。
【0010】
上記ゲイン演算部は、上記速度変動量が大きいほど補正比率を小さな値とする。当該構成によれば、モーターを駆動させることにより特定の制御対象を動作させた所定期間における上記速度変動量が大きいほど、PID制御のための上記定数を小さくすることができる。そのため、以後、特定の制御対象の速度の過剰な変動が抑制され、制御対象の速度変動の収束に資する。
【0011】
上記ゲイン演算部は、上記PID制御に用いられる比例要素に対する定数および上記PID制御に用いられる積分要素に対する定数を、上記補正比率に応じて補正するとしてもよい。当該構成によれば、特定の制御対象の速度変動を効果的に抑制することができる。
【0012】
上記ゲイン演算部は、上記印刷装置において所定の動作が実行される度に、上記速度変動量の取得および当該速度変動量に基づく上記補正比率による上記定数の補正を実行するとしてもよい。当該構成によれば、印刷装置において所定の動作が実行される度に上記定数が最新の値に更新されるため、常時、特定の制御対象について、速度変動を的確に抑えた安定した動作を実現させることができる。印刷装置において所定の動作が実行されたとは、例えば、印刷装置が所定枚数の印刷を実行した状況や、印刷装置の電源が投入されて印刷装置が起動した状況などを言う。
【0013】
印刷装置は、上記モーターから上記特定の制御対象へ動力を伝達するために、第一プーリーと、上記特定の制御対象と接続して当該特定の制御対象に動力を伝えるローラーと共に回転する第二プーリーと、第一プーリーと第二プーリーと上記モーターの軸に結合したギアとに架け渡されたタイミングベルトと、第二プーリーと上記モーターの軸に結合したギアとの間の所定位置においてタイミングベルトの面に向かう方向に付勢されてタイミングベルトの面に接することによりタイミングベルトのテンションを略一定に保つための可動テンションローラーと、可動テンションローラーの近傍に固定されることにより上記付勢方向に沿った可動テンションローラーの可動域を制限するブロック部材とを備えるとしてもよい。当該構成によれば、ブロック部材の取付け位置の精度に左右される上記可動域(可動テンションローラーとブロック部材との隙間)の有無や大きさ、当該隙間の存在により可動テンションローラーが動くことによるタイミングベルトのテンションの低下、等に起因して、モーターのトルク変化に対する特定の制御対象の速度追従性が安定しない(モーターのトルクが第二プーリー側に伝わりにくい)ことがある。この結果、上述した従来構成では、特定の制御対象の速度変動量が増大し得る。しかしながら本発明によれば、このようなブロック部材の取付け位置の精度不足やタイミングベルトのテンション低下等がある場合であっても、結果的に上記特定の制御対象の速度変動を抑えた安定した動作を実現することができる。そのため、ブロック部材の取付け位置の精度維持やタイミングベルトのテンション維持のために従来要していた部品調達や作業時間や人件費といった各種コストを削減できる。
【0014】
上記制御部は、上記ゲイン演算部による上記定数の補正の後、上記特定の制御対象を動作させる際に、補正済みの上記定数を用いて上記モーターの駆動をPID制御する。このように、上記特定の制御対象を動作させる際に、補正済みの上記定数を用いてモーターをPID制御することにより、当該特定の制御対象について速度変動を抑えた安定した動作を実現させることができる。
【0015】
本発明の技術的思想は、印刷装置以外によっても実現可能である。例えば、上述した印刷装置が実行する処理工程を有する方法(ゲイン補正方法)の発明や、上述した印刷装置が実行する機能を所定のハードウェア(印刷装置が内蔵するコンピューター等)に実行させるプログラムの発明をも把握可能である。なお、本発明の印刷装置は、単一の装置のみならず、複数の装置によって分散して存在可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】プリンターの構造を概略的に示す図である。
【図2】プリンターの機能構成を概略的に示す図である。
【図3】PF制御部の詳細等を示すブロック図である。
【図4】インクキャップやキャリッジ等の位置関係を示す斜視図である。
【図5】PFモーターとPFローラーとの接続箇所の構造を簡易的に示す図である。
【図6】隙間がある機体でインクキャップの下降動作をした際の速度変化等を示す図である。
【図7】隙間がある機体でインクキャップの下降動作をした際の速度変化等を示す他の図である。
【図8】ゲイン補正処理を示すフローチャートである。
【図9】補正比率を算出するための関数の一例を示す図である。
【図10】補正比率を算出するための関数の他の例を示す図である。
【図11】補正比率を算出するための関数の他の例を示す図である。
【図12】インクシステムの動作を伴う印刷処理を示すフローチャートである。
【図13】本実施形態の効果を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.プリンターの概略説明
図1は、本実施形態にかかるプリンター1の概略構造を例示する側面図である。プリンター1は印刷装置に該当する。また、プリンター1はゲイン補正方法の実行主体に該当する。プリンター1は、給紙トレー2を有する。給紙トレー2は、プリンター1の底部に略水平に配設される。給紙トレー2には印刷用紙(印刷媒体)を載置することができる。給紙トレー2を搬送経路上流位置として、印刷用紙は給紙トレー2から所定の搬送経路に供給され、搬送経路を搬送され、プリンター1の前面側に配設される図示外の排紙トレーへ排出される。給紙トレー2に載置された印刷用紙のうち最も上に載置された印刷用紙に対して、PU(ピックアップ)ローラー12がその外周を接するように備えられている。PUローラー12は、後述するPFモーター(搬送モーター)14と図示しないギア等によって結合されており、PFモーター14の駆動によりPUローラー12が印刷用紙に平行な回転軸を中心として回転駆動する。
【0018】
PUローラー12は、図1において時計回りに正回転し、外周にて接する印刷用紙を後方に送り出す。すると、印刷用紙はプリンター1の後方に向かって進行しつつ、印刷用紙の搬送経路下流側の端部(用紙先端)が搬送ガイド13に誘導される。搬送ガイド13は、略半円を描くように湾曲した搬送経路を一部に形成しており、PUローラー12によって給紙トレー2から送り出された印刷用紙は、搬送ガイド13に誘導されて搬送経路下流側(排紙トレー側)へ進行する。これにより、印刷用紙は、搬送ガイド13に沿って湾曲しつつ上方に供給される。搬送ガイド13の湾曲する経路の中央部には、中間ローラー19が備えられている。中間ローラー19は、その外周が搬送ガイド13の印刷用紙に外側から接しつつ、印刷用紙に平行な回転軸を中心として回転する。中間ローラー19は、PFモーター14と図示しないギア等によって結合されており、PFモーター14の駆動により能動的に回転駆動する。図1において中間ローラー19が正回転する方向は、反時計回りである。印刷用紙を挟んで中間ローラー19に対向するように中間従動ローラー19aが設けられている。
【0019】
中間ローラー19が回転駆動することにより、印刷用紙は、搬送ガイド13に沿ってさらに上方に搬送される。用紙先端は、搬送ガイド13の湾曲部分を抜けると、プリンター1の前方(搬送経路下流側)に向かって搬送ガイド13の略水平部分に沿って略水平に進行する。略水平にしばらく進行すると、用紙先端がPFローラー(搬送ローラー)17に到達する。PFローラー17は、その外周が印刷用紙に対して下側から接する。PFローラー17も、PFモーター14と図示しないギア等によって結合されており、PFモーター14の駆動により能動的に回転駆動する。図1においてPFローラー17が正回転する方向は、時計回りである。印刷用紙を挟んでPFローラー17に対向するようにPF従動ローラー17aが設けられている。用紙先端がPFローラー17に到達すると、印刷用紙はPFローラー17によって搬送される。印刷用紙が中間ローラー19およびPFローラー17の両方と接触している期間においては、PFモーター14の駆動によるPFローラー17と中間ローラー19の双方の回転駆動によって印刷用紙が搬送される。プリンター1においては、PFローラー17と中間ローラー19による印刷用紙の搬送速度が互いに同じとなるようにローラー径やギア比が設定されている。
【0020】
PFローラー17よりも搬送経路下流側にはプラテン22が設けられており、プラテン22が搬送される印刷用紙を下方から支持する。プラテン22に印刷用紙を挟んで上方から対向するようにキャリッジ21が備えられている。キャリッジ21は下方に印字ヘッド21aを備えており、印字ヘッド21aの下面に配列する多数のノズルからインクを吐出することが可能である。キャリッジ21は、図1の紙面に対して垂直な方向に移動(主走査)することが可能である。キャリッジ21は、主走査を行いながらインクを吐出することにより、プラテン22上の印刷用紙におけるノズルに対向する領域(印刷位置)に対して、主走査方向に沿ったラスタラインを描画することができる。主走査を行った後に、PFモーター14を駆動させ、印刷用紙を搬送することにより、印刷用紙における印字位置をずらす(副走査)ことができる。従って、印刷用紙における異なる位置にラスタラインを描画することができる。すなわち、上述した主走査と副走査を順次繰り返して実行することにより、印刷用紙上に印刷画像を形成することができる。主走査と副走査を繰り返し、印刷用紙に対する必要な印刷画像の形成が全て終了した後に、印刷用紙が搬送(排紙搬送)され排紙トレーに排出される。
【0021】
図2は、プリンター1の機能構成を示すブロック図である。プリンター1は、既に説明した以外の構成として、外部I/F(外部インターフェイス)30と、CPUとROMとRAMとからなるマイクロコンピューター31と、ASIC32と、モータードライバー15と、ロータリーエンコーダー33等を備えている。外部I/F30は外部のホストコンピューター60との仲介をなし、外部I/F30を介してホストコンピューター60から印刷データPDを取得する。印刷データPDは、ハーフトーン処理等が行われた印刷画像を構成するラスターデータと、プリンター1を制御するための制御データ等から構成されている。
【0022】
ロータリーエンコーダー33は、PFローラー17またはPFローラー17と結合されたいずれかのギアに備えられたスケール板と当該スケール板を挟んで配置された発光部と受光部とから構成され、受光部における受光状態に基づいてPFローラー17の回転速度に応じたパルス周期を有するパルス信号を生成する。
【0023】
ASIC32は、PF制御部32aと、キャリッジ制御部32bと、PU制御部32cとを備えている。PF制御部32aは、ロータリーエンコーダー33から出力されるパルス信号(パルス周期)に基づいて、現在のPFローラー17の回転速度(回転量に比例する値)を演算するとともに、この速度が、予め決められた速度プロファイルに沿ったものとなるように、微小な時間(制御ステップ。PID制御周期とも言う。)毎に、PFモーター14の駆動をPID制御(フィードバック制御)する。このようなフィードバック制御は、印刷処理のための印刷用紙の搬送にはもちろん、後述するような、インクシステム(インクキャップ40)を動作させる際にも実行される。
【0024】
上述したように、PFローラー17はPFモーター14の駆動により回転するものであるため、ロータリーエンコーダー33からの出力を監視することで、PF制御部32aはPFモーター14の駆動状況を間接的に把握することができる。
また、キャリッジ制御部32bはキャリッジ21や印字ヘッド21aを駆動制御するための処理を実行し、PU制御部32cはPUローラー12を駆動制御するための処理を実行する。
【0025】
図3は、主にPF制御部32aの詳細をブロック図により示している。PF制御部32aは、PFモーター14を駆動する制御機能を備えており、マイクロコンピューター31から、制御対象の目標位置が入力されると、入力値に応じてPFモーター14を制御する。PF制御部32aは、位置演算部6a、減算器6b,6e、目標速度演算部6c、速度演算部6d、比例要素6f、積分要素6g、微分要素6h、加算器6i、PWM回路6j、PID演算部6pid、ゲイン演算部7を備える。
【0026】
位置演算部6aは、ロータリーエンコーダー33から出力されるパルス信号の立ち上がりエッジ、立ち下がりエッジを検出し、検出されたエッジの個数を計数することにより、現在のPFローラー17の回転位置を演算する。減算器6bは、マイクロコンピューター31から送られてくる目標回転位置と、位置演算部6aによって求められた回転位置との回転位置偏差を演算する。
【0027】
目標速度演算部6cは、減算器6bの出力である回転位置偏差と上記速度プロファイルとに基づいてPFローラー17の目標回転速度(目標速度)を演算する。この演算は回転位置偏差にゲインKpを乗算することにより行われる。ゲインKpは回転位置偏差に応じて決定される。速度演算部6dは、ロータリーエンコーダー33から出力されるパルス信号のエッジを検出する時間間隔に基づいて現在のPFローラー17の回転速度を演算する。減算器6eは、目標回転速度と、速度演算部6dによって演算された回転速度との回転速度偏差を演算する。
【0028】
PID演算部6pidは、比例要素6f、積分要素6g、微分要素6hの各演算要素と、加算器6iを備える。PID演算部6pidは、各演算要素における随時更新される定数(ゲイン)によって特性が変更される適応型のPID演算を実行可能である。比例要素6fは、上記回転速度偏差に比例ゲインGpを乗算し、乗算結果を出力する。積分要素6gは、回転速度偏差に積分ゲインGiを乗じたものを積算し、積算結果を出力する。微分要素6hは、現在の回転速度偏差と、1つ前の回転速度偏差との差に微分ゲインGdを乗算し、乗算結果を出力する。
【0029】
比例要素6f、積分要素6g及び微分要素6hの出力は、加算器6iにおいて加算される。そして加算結果、即ちPFモーター14を駆動する制御量が、PWM回路6jに送られる。PWM回路6jは、加算器6iから出力された制御量に相当するデューティー比DRを決定し、モータードライバー15に出力する。モータードライバー15は、電源電圧としての直流電圧をデューティー比DR(パルスの周期に対するONの期間の比率)に応じてパルス幅変調することにより、パルスとしてのPWM信号を生成し、PFモーター14に出力する。PFモーター14は、DCモーターであり、モータードライバー15から出力されたPWM信号を駆動電源として駆動する。すなわち、PFモーター14は、PWM信号(PWM信号のデューティー比DR)に応じたトルクを生じさせる。PWM信号のデューティー比DRが大きければ大きいほど、PFモーター14に印加される電圧Vmおよび電流Imの平均的な値は大きくなり、PFモーター14のトルクも大きくなる。
【0030】
デューティー比DRは、DR=d/PWMcycleと表現することができる。PWMcycleは、例えば3000といった整数である。dは、デューティー(Duty)値であり、デューティー比DRにおける分子である。PWMcycle=3000とした場合、d=0〜3000の整数である。つまり本実施形態では、PF制御部32aは、上記デューティー比DRを、パルス周期の1/3000単位で調整して決定することができる。
【0031】
ゲイン演算部7は、後述するように、PID演算部6pidの各演算要素が演算に使用する定数を、検出された特定の制御対象の速度変動量に応じて補正することにより、各定数の最適化を行う(ゲイン補正処理)。
マイクロコンピューター31のCPUは、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、ASIC32に、後述の、ゲイン補正処理や、インクシステムの動作を伴う印刷処理を実現させる。
【0032】
2.インクシステムへの動力伝達構造の説明
プリンター1においては、上述したようにPFモーター14が駆動することによってPFローラー17、中間ローラー19等を回転させることが可能であるが、更にPFモーター14は、インクシステムを動作させることが可能である。インクシステムとは、プリンター1に備えられた機構であって、印字ヘッド21aのノズル口の乾燥防止や、ノズルのクリーニングや、キャリッジ21の固定等に用いられるシステムである。インクシステムは、インクキャップ40を含む。インクキャップ40は、特定の制御対象の一例に該当する。
【0033】
図4は、インクキャップ40やキャリッジ21等の位置関係を斜視図により簡易的に例示している。図4では、初期位置に配置されたキャリッジ21を示している。キャリッジ21の初期位置とは、キャリッジ21が上記主走査の方向に沿って往復移動可能な範囲の一端の位置である。キャリッジ21は、印刷を実行しない場合は、初期位置に停留される。インクキャップ40は、キャリッジ21の下方、つまり印字ヘッド21aの下面(インク吐出面)と対抗するように設けられている。インクキャップ40は、例えば略矩形の筺体40aや、筺体40aの内部に収容されたスポンジ40bや、不図示のキャリッジロック部材等を備え、初期位置に在るキャリッジ21の印字ヘッド21aのインク吐出面に対する接近動作(上昇動作)およびインク吐出面からの退避動作(下降動作)が可能である。つまり、インクキャップ40は、初期位置に在る(初期位置に戻ってきた)キャリッジ21に対して接近し、スポンジ40bでインク吐出面を塞いでノズル口の乾燥を防止するとともに、キャリッジロック部材をキャリッジ21の所定位置に係止させることによりキャリッジ21の移動を禁止する。一方、インクキャップ40は、初期位置に在るキャリッジ21から退避することにより、スポンジ40bをインク吐出面から離間させるとともにキャリッジロック部材によるキャリッジ21の固定を解除する。
【0034】
インクキャップ40の接近・退避(上昇・下降)動作は、PFモーター14の駆動によって実現される。プリンター1においては、PFローラー17は不図示のギアの輪列やレバー等の機構を介してインクキャップ40と接続されており、PFローラー17の回転がインクキャップ40に伝達される構成となっている。具体的には、PFローラー17がPFモーター14の駆動によって正回転したときに、インクキャップ40は接近動作を行い、PFローラー17が逆回転したときに、インクキャップ40は退避動作を行なう。ただしPFローラー17とインクキャップ40とは常に接続されている訳ではなく、プリンター1は、PFローラー17とインクキャップ40との接続・非接続を切替える輪列切替え部41を備えている。マイクロコンピューター31に制御されることにより、輪列切替え部41は、PFローラー17とインクキャップ40とが接続されている状態(PFローラー17の回転がインクキャップ40に伝達される状態)と、PFローラー17とインクキャップ40とが切断されている状態(PFローラー17の回転がインクキャップ40に伝達されない状態)とを切替えることができる。
【0035】
上述したようなインクキャップ40の動作にはある程度の負荷がかかる。特に、プリンター1の構造上、インクキャップ40の下降動作の過程におけるある地点で、非常に大きな外的負荷が発生する。これは、インクキャップ40の筺体40aは、その表面を、プリンター1内において筺体40aの周囲に配置されている周辺部品(図示せず)と接触させた状態で配設されており、下降動作のある途中地点で、当該接触により筺体40aと周辺部品との間に大きな摩擦が生じるからである。言い換えると、PFモーター14は、インクキャップ40に下降動作をさせるには、下降動作の途中で当該摩擦により突発的に生じる大きな外的負荷に打ち勝ってPFローラー17を回転させるトルクを発生させる必要がある。
【0036】
図5は、プリンター1における、PFモーター14とPFローラー17との接続箇所についての構造を簡易的に示している。プリンター1においては、PFモーター14の軸14aに結合したギア14bにタイミングベルト46が接している。また、プリンター1には、第一プーリー44と、PFローラー17と共に回転する第二プーリー45が配設されている。タイミングベルト46は、第一プーリー44と第二プーリー45とギア14bとに架け渡されている。従って、PFモーター14が生み出した動力は、タイミングベルト46、第一プーリー44、第二プーリー45を介してPFローラー17、インクキャップ40に伝達される。
【0037】
さらに、第一プーリー44とギア14bとの間の所定位置には、可動テンションローラー47が備えられている。可動テンションローラー47は、タイミングベルト46の面に接しタイミングベルト46の移動に応じて回転するローラー47aと、一端においてローラー47aを回転可能に支持する支持部47bと、を有する。支持部47bは、ローラー47aがタイミングベルト46の面に向かう方向にバネ47b1によって付勢されている。また支持部47bは、上記付勢方向と略直交する面47b3であってローラー47aが取り付けられている一端とは逆の端部の方向を向いた面47b3を持つ凹部47b2を形成している。さらに、プリンター1においては、凹部47b2に対応してブロック部材48がビス等で固定されている。ブロック部材48は、可動テンションローラー47の近傍に固定され、凹部47b2の面47b3に干渉することにより、上記付勢方向に沿った可動テンションローラー47の可動域を制限する(バネ47b1の縮みを制限する)。つまりブロック部材48の存在により、可動テンションローラー47がタイミングベルト46から離れる方向へ移動することが抑制され、この結果、理想的にはローラー47aがタイミングベルト46の面を押す力が略一定となり、タイミングベルト46のテンション(張力)が略一定に保たれる。
【0038】
プリンター1においては、タイミングベルト46のテンションを理想的な値で略安定させるためには、面47b3とブロック部材48とが間を空けずに接していることが理想的である。しかし、プリンター1を数千台、数万台と製造する工程においては、プリンター1の全ての機体について、面47b3とブロック部材48との隙間を0mmに調整することは製造管理上困難であり、ある機体については、面47b3とブロック部材48とに隙間g(図5参照)が生じてしまう。また、このような隙間gの大きさも、厳密には一台一台のプリンター1毎に異なる。また隙間gは、プリンター1が市場に出荷された当初は0mmであっても、ブロック部材48のビスの締め付け具合や品質、その他各部品の経時的変化に応じて徐々に拡大してしまうこともある。
【0039】
このような隙間gの存在は、可動テンションローラー47がタイミングベルト46から離れる方向へ移動することを許容するものであるため、タイミングベルト46のテンションを製品設計上理想とされているテンションよりも低下させる要因となる。そして、このようにタイミングベルト46のテンションが理想的な値よりも低下してしまうと、PFモーター14からPFローラー17側へトルクが正確に伝わらなくなり、追従性の優れたフィードバック制御が困難になるという弊害が生じる。
【0040】
上述したようにインクキャップ40の下降動作には大きな外的負荷が発生するが、当該下降動作をPFモーター14の駆動によって実現する場合、以下のような現象が起きる。
輪列切替え部41によってPFローラー17とインクキャップ40が接続された状態で、PF制御部32aがPFモーター14を逆回転させるフィードバック制御を開始すると、PFモーター14のトルクがタイミングベルト46を介してPFローラー17に伝わりPFローラー17が逆回転し、インクキャップ40が下降動作を開始する。しかしながら、下降中のある時点でインクキャップ40に多大な上記外的負荷が載ることで、下降動作の速度(PFローラー17の回転速度)が急激に低下し、これに応じてPF制御部32aがモータードライバー15に与えるデューティー比DRが急上昇し、PFモーター14のトルクも増大する。この増大したトルクはPFローラー17を回転させようとする。しかし、多大な外的負荷が載ることでPFローラー17が重たくなっている状況下では、かかるトルクは主に、第二プーリー45からローラー47aを経てギア14bにかけてのベルト部分を引っ張る力に費やされ、これにより、可動テンションローラー47のローラー47aが押下げられる。このとき、上述した隙間gが存在している場合には、可動テンションローラー47がタイミングベルト46から離れる方向へ移動してしまう。
【0041】
すると、図5において二点鎖線で示したようにタイミングベルト46の一部範囲が緩み、タイミングベルト46のテンションが低下し、PFモーター14のトルクがPFローラー17へ伝わりにくくなる。このように、PFローラー17に大きな負荷がかかり、これを契機として、上記隙間gの存在により可動テンションローラー47が動いてしまう(バネ47b1の付勢方向に沿って振動してしまう)状況下では、以降、タイミングベルト46のテンションが安定せず、結果、PFモーター14からPFローラー17へのトルクの伝わり方も安定しない。そのため、理想的なフィードバック制御が困難となり、上記下降動作について予め定められた速度プロファイルにおける目標速度での安定した下降動作が実現されなくなる。
【0042】
図6および図7では、可動テンションローラー47の面47b3とブロック部材48との間に隙間gが存在する機体(プリンター1)で、PFモーター14をフィードバック制御することによりインクキャップ40の下降動作を実行した際の様子を、グラフにより示している。図6,7の各グラフはいずれも、インクキャップ40の移動距離(0〜ZE)に対する、デューティー値dの変化(実線)およびPFローラー17の回転速度の変化(一点鎖線)を示している。距離0は、下降動作の出発位置であり、インクキャップ40が初期位置のキャリッジ21に最も接近した状態にあるときの位置を意味している。距離ZEは、下降動作の終着位置であり、インクキャップ40が初期位置のキャリッジ21から最も離れた状態にあるときの位置を意味している。また各グラフにおいては、インクキャップ40の下降動作における目標速度の変化を二点鎖線により示している。
【0043】
図6,7の違いは、背景技術で説明したようなモーターの負荷の大きさに応じてPID制御の各ゲインを補正するPID制御をした場合(図7)と、そのようなゲイン補正をせずに(固定のゲインを用いて)PID制御をした場合(図6)との違いである。図6に示すように固定のゲインを用いてPID制御をした場合、Zn地点(下降するインクキャップ40に大きな外的負荷がかかる地点)で突発的に速度が低下したことに反応して、デューティー比DR(デューティー値d)を急激に上昇させ、速度の安定化を図っている。しかしながら、上述した隙間gの存在に起因する(可動テンションローラー47の移動による)タイミングベルト46のテンション低下およびテンション不安定化のため、デューティー比DRの変化(PFモーター14のトルク変化)に対するPFローラー17の速度変化の追従性が低下している。
【0044】
そのため、例えば、PFモーター14の回転速度が上昇しているにもかかわらずロータリーエンコーダー33の出力にこの速度上昇が敏感に反映されず、反映された頃にはPFモーター14の回転速度が過剰に上昇しており、今度は急激にPFモーター14を減速させ、しかし当該減速がロータリーエンコーダー33の出力になかなか反映されないため減速し過ぎる…、というような制御サイクルに陥る。そして、時間(移動距離)が進むに連れてこのような制御遅れが顕著化し、速度変動量が大きくなる(速度変動が発振状態となる)。また、図7に示すように、PFモーター14の負荷の大きさに応じて各ゲインを補正してPID制御をした場合は、上記のような速度変動の振幅がより大きくなっている。つまり、タイミングベルト46のテンション低下等によりデューティー比DR変化へのPFローラー17の速度変化の追従性が低下している中で、PFモーター14の負荷の大きさに応じて各ゲインを大きくすると、上述したような制御遅れによる速度変動の発振がより顕著化してしまう。
【0045】
そこで本実施形態では、特定の制御対象(インクキャップ40)の下降動作における速度変動量に注目し、この速度変動量に応じて上記PID制御のための各ゲインを補正することにより、以降のインクキャップ40の動作の安定化を図っている。
【0046】
3.ゲイン補正処理
図8は、PF制御部32a(主にゲイン演算部7)が実行するゲイン補正処理をフローチャートにより示している。当該処理は、例えば、プリンター1が市場に流通する前(出荷前)のプリンター1の調整工程において実行される。
ステップS100では、ゲイン演算部7は、比例要素6f、積分要素6g、微分要素6hそれぞれのゲインの初期値を設定する。各ゲインの初期値として、フィードバック制御系の標準的な動作特性に基づく基準動作モデルから基準とされる各ゲインが予め求められており、プリンター1内部の所定の記憶領域に記憶されている。従って、ゲイン演算部7は、これら各ゲインの初期値を取得し、比例要素6f、積分要素6g、微分要素6hに対してそれぞれのゲインの初期値を設定する。以下では、比例要素6fのゲインの初期値を比例ゲインGp0、積分要素6gのゲインの初期値を積分ゲインGi0、微分要素6hのゲインの初期値を微分ゲインGd0、とそれぞれ表す。
【0047】
ステップS110では、PFモーター14を逆回転駆動することにより、インクキャップ40に下降動作を実行させ、下降動作中のインクキャップ40の速度を検出する。つまり、マイクロコンピューター31が輪列切替え部41を制御してPFローラー17とインクキャップ40とを接続した上で、PF制御部32aが、当該下降動作について予め定められた速度プロファイルの下、PFモーター14を逆回転させるフィードバック制御を実行する。このときのフィードバック制御における、PFモーター14の制御量(デューティー比DR)の算出には、上記ステップS100で設定した各ゲインの初期値が用いられる。ゲイン演算部7は、速度演算部6dが制御ステップ毎に演算するPFローラー17の回転速度を、インクキャップ40の下降動作の速度として入力する。このように入力される速度は、例えば、図6に一点鎖線で示したような変動態様を採り得る。
【0048】
ステップS120では、ゲイン演算部7は、上記ステップS110で入力したインクキャップ40の速度に基づいて、速度変動量ΔVを取得する。この場合、ゲイン演算部7は、インクキャップ40の下降動作の定速期間中における速度変動量ΔVを求める。図6の二点鎖線(目標速度)で示したように、当該下降動作における速度変化のグラフ形状は、理想的には、速度が上昇する加速期間と、速度が目標速度Vstdで略安定する定速期間と、速度が減少する減速期間とからなる。加速期間、定速期間、減速期間の区分は、上記ステップS110でインクキャップ40に下降動作を開始させた以降の制御ステップ数と、予め決められた制御ステップ数に対するしきい値(加速期間、定速期間、減速期間を区分するためのしきい値)とを比較することで実現可能である。あるいは、ゲイン演算部7は、位置演算部6aが演算するPFローラー17の回転位置に基づいて、定速期間であるか否かを判断してもよい。ゲイン演算部7は、このような定速期間中の速度の最大値Vmaxおよび最小値Vmin(図6参照)を取得するとともに、最大値Vmaxと目標速度Vstdとの差および、最小値Vminと目標速度Vstdとの差、を求め、これら2つの差のうち絶対値が大きいほうの差を、速度変動量ΔVとして取得する。
【0049】
ステップS130では、ゲイン演算部7は、所定の関数Fを読み出すとともに、関数Fに上記取得した速度変動量ΔVを入力することにより、速度変動量ΔVに基づく補正比率Xを算出する。つまり、ゲイン演算部7は、X=F(ΔV)の計算を実行する。補正比率とは、ゲインに乗算されてゲインを補正するための値である。関数Fは、速度変動量ΔVと補正比率Xとの理想的な対応関係を規定するものとして予め実験等により求められ、例えば、プリンター1内部の所定の記憶領域に記憶されている。
【0050】
図9は関数Fを例示している。図9においては、横軸を速度変動量ΔVとし、縦軸を補正比率Xとした2軸平面上に、一次関数としての関数Fを示している。本実施形態では、関数Fは、基本的に速度変動量ΔVが大きいほど補正比率Xを小さな値にして出力する特性を持つ。ただし、関数Fは図9に示したものに限られない。例えば、図10に示すように、関数Fは、速度変動量ΔVが所定のしきい値Th1,Th2,Th3…を超える毎に、階段状に出力値(補正比率X)を低下させる特性のものであってもよい。あるいは関数Fは、図11に示すように、指数関数を用いて、カーブを描いて徐々に補正比率Xを低下させる特性のものであってもよい。
【0051】
ステップS140では、ゲイン演算部7は、上記算出した補正比率Xが予め設定された許容範囲内にあるか否か判定する。この場合、補正比率Xが予め設定されている上限値Xmax以下かつ下限値Xmin以上であるか判定し、上限値Xmax以下かつ下限値Xmin以上である場合には、ステップS160に進む。一方、補正比率X<下限値Xmin、または、補正比率X>上限値Xmaxのいずれかに該当する場合には、ゲイン演算部7はステップS150に進む。ステップS150では、ゲイン演算部7は、補正比率X<下限値Xminである場合には、補正比率X=下限値Xminと決定し、補正比率X>上限値Xmaxである場合には、補正比率X=上限値Xmaxと決定する。
【0052】
ステップS140またはステップS150の後、ステップS160では、ゲイン演算部7は、その時点での補正比率Xに基づいて、比例ゲインGp0および積分ゲインGi0をそれぞれ補正する。この場合、ゲイン演算部7は、
Gp1=Gp0・X/K
Gi1=Gi0・X/K
の計算を実行する。そして、ゲイン演算部7は、当該計算により得られた補正後の比例ゲインGp1および積分ゲインGi1を、特定の制御対象の動作(インクキャップ40の下降動作)のためのゲインとして保存する。Kは、補正比率Xを正規化するための所定の係数である。例えば、関数Fから出力される補正比率Xが0〜255の整数である場合、K=64程度に設定される。この場合、(上限値Xmaxの設定にも依るが)比例ゲインGp0および積分ゲインGi0はそれぞれ最大4倍程度にまで補正され得ることとなる。また本実施形態では、上述したように下限値Xminを設け、下限値Xminを0より大きい所定の値とすることで、比例ゲインGp1および積分ゲインGi1が0にならないようにしている。
【0053】
以上により、ゲイン補正処理が完了する。ただし、プリンター1が市場に出荷された後も、プリンター1において所定の動作が実行されることを契機としてゲイン補正処理が実行される。例えば、ゲイン演算部7は、プリンター1で所定枚数分(例えば数千枚)の印刷が行なわれた度にゲイン補正処理を実行したり、ユーザーがプリンター1の電源を投入したタイミングでゲイン補正処理を実行したりする。プリンター1では、出荷後において、上述したような隙間gの変化(拡大)や、第一プーリー44の軸と第二プーリー45の軸との間隔の変化や、タイミングベルト46の変化などの様々な経時的変化により、タイミングベルト46のテンションが変り得るため、速度変動量ΔVも変化し得る。そのため、プリンター1では、ゲイン補正処理を定期的あるいは不定期に繰り返して各ゲインを更新することにより、上記特定の制御対象の動作のための各ゲインを最新の値に保つようにしている。
【0054】
4.インクシステムの動作を伴う印刷処理
図12は、プリンター1において実行される印刷処理を示したフローチャートである。当該フローチャートの開始時点では、キャリッジ21は初期位置に在り、かつインクキャップ40は、上昇動作後の状態すなわちインクキャップ40がキャリッジ21に最も接近した位置に在る状態となっている。ステップS300では、マイクロコンピューター31は、ホストコンピューター60から印刷指示を受け付けたか否か判定する。印刷指示とは、例えば、印刷データPDを伴う印刷コマンドであり、外部I/F30を介して受け付ける。印刷指示を受け付けた場合、マイクロコンピューター31が印刷データPDに基づく印刷処理をASIC32に指示し、ステップS310以降の処理が実行される。
【0055】
ステップ310では、PF制御部32aのゲイン演算部7は、インクキャップ40の下降動作のためのゲインとして保存してある最新の比例ゲインGp1、積分ゲインGi1をそれぞれ、比例要素6f、積分要素6gに設定する。微分要素6hに対しては微分ゲインGd0を設定する。
【0056】
ステップS320では、PF制御部32aは、PFモーター14を逆回転駆動することによりインクキャップ40に下降動作を実行させる。つまり、マイクロコンピューター31が輪列切替え部41を制御してPFローラー17とインクキャップ40とを接続した上で、PF制御部32aが、当該下降動作について予め定められた速度プロファイルの下、PFモーター14を逆回転させるフィードバック制御を実行する。むろん、このときのフィードバック制御におけるPFモーター14の制御量の算出には、上記ステップS310でPID演算部6pidの各演算要素に設定した各ゲインが用いられる。すなわち、上記速度変動量ΔVに基づいて求められた補正比率Xで補正されたゲインに基づいて決定されたデューティー比DRによりPFモーター14が制御されながら、インクキャップ40が下降する。
【0057】
インクキャップ40の下降動作完了後は、キャリッジロック部材によるキャリッジ21の固定が解除され、キャリッジ21の移動が可能となる。ステップS330では、ゲイン演算部7は、少なくとも比例要素6fおよび積分要素6gに設定してあるゲインを変更する。つまり、現時点ではインクキャップ40の下降動作のためのゲインである比例ゲインGp1および積分ゲインGi1が設定されているため、以後実行する印刷用紙の搬送等のためのPID制御に用いて好適な所定のゲインを各演算要素に設定する。また、マイクロコンピューター31は輪列切替え部41を制御してPFローラー17とインクキャップ40との接続を切る。この後、ASIC32は、給紙トレー2からの印刷用紙の搬送を開始して印刷用紙をプラテン22上の所定の印刷開始位置まで搬送し(ステップS340)、当該搬送された印刷用紙に対し、キャリッジ21の主走査による印刷データPDに基づくインク吐出と、副走査と、を繰り返すことにより印刷を実行し(ステップS350)、印刷データPDが表す画像の印刷が完了すると、排紙搬送を行なって印刷用紙を排出し(ステップS360)、印刷処理を終了させる。
【0058】
図13は、本実施形態で補正した各ゲインを用いてインクキャップ40の下降動作を実行した場合の計測結果(ゲイン補正有り)と、補正しなかった各ゲイン(初期値)を用いてインクキャップ40の下降動作を実行した場合の計測結果(ゲイン補正無し)との比較を、複数のケース1〜3について示している。ケース1〜3は、プリンター1における上記隙間gが互いに異なっており、ケース1は隙間g=0mm(隙間無し)、ケース2は隙間g=1mm、ケース3は隙間g=2mmである。上述したように、係数K=64としているため、補正比率X=64は、ゲイン補正無しを意味する。また、図13では、インクキャップ40の下降動作の定速期間中における目標速度Vstd=8.5ips(インチ/秒)としている。
【0059】
ケース1について見ると、ゲイン補正無しの場合は、インクキャップ40の下降動作の定速期間中に計測された速度変動量ΔV(=|最小値Vmin−目標速度Vstd|)は、1.0ipsである。そして、この速度変動量ΔV=1.0ipsを関数Fに入力する等して得られた補正比率Xは「80」であり、この補正比率X=80によって上記のように補正した各ゲインを用いてインクキャップ40を下降動作させた際の、定速期間中に計測された速度変動量ΔV(=|最小値Vmin−目標速度Vstd|)は、0.9ipsとなっている。つまりケース1では、ゲイン補正無しよりもゲイン補正有りの方が、インクキャップ40の下降動作中の速度変動量が0.1ips減っており、下降動作の安定性が増していると言える。
【0060】
ケース2については、ゲイン補正無しの場合は、インクキャップ40の下降動作の定速期間中に計測された速度変動量ΔV(=最大値Vmax−目標速度Vstd)は2.3ips、この速度変動量ΔV=2.3ipsに基づいて得られた補正比率Xは「48」、この補正比率X=48によって上記のように補正した各ゲインを用いてインクキャップ40を下降動作させた際に定速期間中に計測された速度変動量ΔV(=|最小値Vmin−目標速度Vstd|)は1.3ipsである。ケース2では、ゲイン補正無しよりもゲイン補正有りの方が、上記下降動作中の速度変動量が1.0ips減っており、下降動作の安定性が如実に増している。
【0061】
ケース3については、ゲイン補正無しの場合は、インクキャップ40の下降動作の定速期間中に計測された速度変動量ΔV(=最大値Vmax−目標速度Vstd)は3.1ips、この速度変動量ΔV=3.1ipsに基づいて得られた補正比率Xは「32」、この補正比率X=32によって上記のように補正した各ゲインを用いてインクキャップ40を下降動作させた際に定速期間中に計測された速度変動量ΔV(=|最小値Vmin−目標速度Vstd|)は2.3ipsである。ケース3では、ゲイン補正無しよりもゲイン補正有りの方が、上記下降動作中の速度変動量が0.8ips減っており、下降動作の安定性が如実に増している。
【0062】
5.変形例
本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能であり、以下のような各変形例も可能である。むろん、上記実施形態や各変形例を組み合わせた構成も、本発明の範囲となる。
上記ゲイン補正処理(図8)では、比例ゲインGp0、積分ゲインGi0に適用する補正比率Xは同じ値としたが、比例ゲインGp0に適用する補正比率Xpと積分ゲインGi0に適用する補正比率Xiとを別々に取得するとしてもよい。この場合、ゲイン演算部7は、上記ステップS130では、関数Fpおよび関数Fiを取得する。関数Fpは、速度変動量ΔVと比例ゲインGp0に対する補正比率Xpとの理想的な対応関係を規定するものとして予め実験等により求められた関数である。関数Fiは、速度変動量ΔVと比例ゲインGi0に対する補正比率Xiとの理想的な対応関係を規定するものとして予め実験等により求められた関数である。関数Fpおよび関数Fiは互いに異なる入出力特性を有しており、例えば、プリンター1内部の所定の記憶領域に記憶されている。
【0063】
ゲイン演算部7は、関数Fpに上記ステップS120で取得した速度変動量ΔVを入力してXp=Fp(ΔV)を算出し、関数Fiに上記ステップS120で取得した速度変動量ΔVを入力してXi=Fi(ΔV)を算出する。そして、上記ステップS160では、Gp1=Gp0・Xp/KおよびGi1=Gi0・Xi/K、の計算を実行する。かかる構成とすれば、速度変動を抑えるために最適な、比例ゲインGp0に対する補正比率および比例ゲインGi0に対する補正比率を、求めることができる。
【0064】
また上記ゲイン補正処理(図8)では、特定の制御対象の動作における定速期間中の速度変動量ΔVに基づいて補正比率を取得したが、加速期間中の速度変動量、減速期間中の速度変動量それぞれに基づいて、補正比率を取得するようにしてもよい。この場合、ゲイン演算部7は、インクキャップ40の下降動作の加速期間中に制御ステップ毎に速度演算部6dから入力する速度と、速度を入力した各時点での目標速度とを比較し、速度差が最大であるときの速度差を、加速期間の速度変動量ΔVaとする。またゲイン演算部7は、インクキャップ40の下降動作の減速期間中に制御ステップ毎に速度演算部6dから入力する速度と、速度を入力した各時点での目標速度とを比較し、速度差が最大であるときの速度差を、減速期間の速度変動量ΔVcとする。なお、定速期間の速度変動量ΔVは、便宜上、速度変動量ΔVbと表記する。
【0065】
そして、上記ステップS130では、速度変動量ΔVa,ΔVb,ΔVcをそれぞれ関数Fに入力することにより、加速期間の補正比率Xa=F(ΔVa)、定速期間の補正比率Xb=F(ΔVb)および減速期間の補正比率Xc=F(ΔVc)を算出する。そして、上記ステップS160では、Gp11=Gp0・Xa/K、Gi11=Gi0・Xa/K、Gp12=Gp0・Xb/K、Gi12=Gi0・Xb/K、Gp13=Gp0・Xc/K、Gi13=Gi0・Xc/K、の計算を実行する。Gp11,Gi11は、インクキャップ40の下降動作における加速期間のための比例ゲインおよび積分ゲインであり、Gp12,Gi12は、インクキャップ40の下降動作における定速期間のための比例ゲインおよび積分ゲインであり、Gp13,Gi13は、インクキャップ40の下降動作における減速期間のための比例ゲインおよび積分ゲインである。
【0066】
ゲイン演算部7は、各ゲインGp11,Gi11,Gp12,Gi12,Gp13,Gi13を得た場合、以降のインクキャップ40の下降動作時においては、加速期間、定速期間、減速期間の別毎に、そのときの期間に対応するゲインGp11,Gi11,Gp12,Gi12,Gp13,Gi13を比例要素6f、積分要素6gに設定する。この結果、インクキャップ40の下降動作における加速期間、定速期間、減速期間のすべてにおいて、各タイミングで理想とされている目標速度に対する変動が的確に抑制された動作が実現される。
さらにゲイン補正処理では、上述した比例ゲインGp0に適用する補正比率Xpおよび積分ゲインGi0に適用する補正比率Xiを、加速期間、定速期間、減速期間の別に応じて求めるとしてもよい。
【0067】
6.まとめ
このように本実施形態によれば、インクキャップ40の下降動作のように、プリンター1が備える特定の制御対象の短期的に大きな負荷がかかる動作について、速度変動量ΔVを取得し、速度変動量ΔVに基づいて、当該速度変動量ΔVが大きいほど小さな比率となる補正比率Xを算出し、補正比率Xにより、PFモーター14のPID制御のための所定のゲインを補正するとした。そして、以降PFモーター14の駆動により、上記特定の制御対象に上記大きな負荷がかかる動作をさせる際に、当該補正済みのゲインを用いてPFモーター14の駆動をPID制御するとした。そのため、上記特定の制御対象に、速度変動を抑えた安定した動作(目標速度からのぶれが少ない動作)を実現させることができる。またプリンター1では、ゲイン補正処理を定期的あるいは不定期に繰り返して各ゲインを更新する。そのため、経時的に変化するプリンター1の最新の状態(隙間gやタイミングベルト46のテンション等)が反映された最適な各ゲインを用いてPFモーター14の駆動をPID制御することができる。
【0068】
PFモーター14が生み出した動力をインクキャップ40に伝達する構成の一部に、上述したような第一プーリー44、第二プーリー45、タイミングベルト46、可動テンションローラー47、ブロック部材48等を有する構成において本実施形態は特に有用である。つまり、可動テンションローラー47の面47b3とブロック部材48との隙間gの存在や、インクキャップ40の下降動作時の多大な負荷等に起因して、可動テンションローラー47の移動、タイミングベルト46のテンション低下やテンション変動が生じ、その結果、フィードバック制御下で計測されるインクキャップ40の下降動作の速度に大きな速度変動が生じてしまう。このような速度変動が生じやすい状況下では、PFモーター14にかかる負荷の大きさに応じてゲインを大きくすると、却って速度変動の振幅を大きくしてしまう虞がある(図7参照)。本実施形態では、速度変動量ΔVが大きい場合には、敢えて上記PID制御のためのゲインを小さくしてフィードバック制御で決定されるデューティー比DRの上昇が抑制されるようにし、上記速度変動が生じやすい状況下において、できるだけ速度変動が生じないようにすることができる。
【0069】
図13から判るように、ケース1(隙間gが無いケース)においても本実施形態のゲイン補正による速度変動量ΔVの低減効果が生じているが、ケース2,3(隙間gがあるケース)において、ゲイン補正による速度変動量ΔVの低減効果がより顕著に生じている。つまり本実施形態によれば、隙間gが生じていたり、そのためにタイミングベルト46のテンションの低下、変動が生じ易かったりする機体(プリンター1)においても、結果的に、上記特定の制御対象の速度変動を抑えた安定した動作を実現することができる。従って、プリンター1の製造工程で、従来要求されていた上記隙間gを0mmに調整するための時間的コスト、人為的コスト、部品コスト等を削減することができる。また、タイミングベルト46のテンションをこれまで理想とされてきた値で維持するために必要であった、PFモーター14や当該モーターの電源電圧を、小型化、低下させることができ、プリンター1のコストダウンに資する。
【0070】
なお、上記特定の制御対象はインクキャップ40に限られない。つまり本実施形態のように、動作中の速度変動量を取得し、速度変動量に基づいて得られた補正比率でPID制御の各ゲインを補正する構成は、インクキャップ40の下降動作以外にも、短期的、突発的に大きな負荷が生じる様々な動作について適用することが可能である。
【0071】
上述した本実施形態の構成に、さらに速度変動量ΔVに基づくフィードフォワード制御を加えるとしてもよい。例えば、PF制御部32aは、上記速度変動量ΔVの大きさに応じてフィードフォワード制御量としてのデューティー値(FFd)を決定する。そして、以降、PFモーター14の駆動をPID演算部6pidから出力された制御量に基づき制御して、上記特定の制御対象に上記大きな負荷がかかる動作を実行させる過程で、当該動作区間(インクキャップ40の下降動作の出発位置〜終着位置)のうち、上記大きな負荷が発生する区間等の特定区間に限って、FFdを加えた制御量に基づいてPFモーター14を制御するとしてもよい。かかる構成を本実施形態に加えることで、上記特定の制御対象に、より一層速度変動を抑えた安定した動作を実現させることができる。
【符号の説明】
【0072】
1…プリンター、2…給紙トレー、6a…位置演算部、6b,6e…減算器、6c…目標速度演算部、6d…速度演算部、6f…比例要素、6g…積分要素、6h…微分要素、6i…加算器、6j…PWM回路、6pid…PID演算部、7…ゲイン演算部、12…PUローラー、13…搬送ガイド、14…PFモーター、14a…軸、14b…ギア、15…モータードライバー、17…PFローラー、17a…PF従動ローラー、19…中間ローラー、19a…中間従動ローラー、21…キャリッジ、21a…印字ヘッド、22…プラテン、30…外部I/F、31…マイクロコンピューター、32…ASIC、32a…PF制御部、32b…キャリッジ制御部、32c…PU制御部、33…ロータリーエンコーダー、40…インクキャップ、40a…筺体、40b…スポンジ、41…輪列切替え部、44…第一プーリー、45…第二プーリー、46…タイミングベルト、47…可動テンションローラー、47a…ローラー、47b…支持部、47b1…バネ、47b2…凹部、47b3…面、48…ブロック部材、60…ホストコンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象を駆動するモーターと、当該制御対象の速度を検出し、当該検出した速度と当該制御対象の目標速度との差に基づいて当該モーターの駆動をPID制御する制御部とを備える印刷装置であって、
上記制御部は、上記モーターを駆動させることにより特定の制御対象を動作させた所定期間における当該特定の制御対象の速度変動量を取得し、上記PID制御のための所定の定数を、当該速度変動量に基づいて求めた補正比率に応じて補正するゲイン演算部を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
上記特定の制御対象は、上記モーターの駆動によりインク吐出用の印字ヘッドのインク吐出面に対する接近動作および当該インク吐出面からの退避動作を実行可能なインクキャップであり、上記ゲイン演算部は、上記モーターを駆動させることにより当該インクキャップに上記退避動作をさせた期間における速度変動量を取得することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
上記ゲイン演算部は、上記特定の制御対象の動作について予め定められた目標速度と、当該特定の制御対象を動作させた期間における当該制御対象の速度の最大値または最小値と、の差を速度変動量として取得することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
上記ゲイン演算部は、上記速度変動量が大きいほど補正比率を小さな値とすることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
上記ゲイン演算部は、上記PID制御に用いられる比例要素に対する定数および上記PID制御に用いられる積分要素に対する定数を、上記補正比率に応じて補正することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
上記ゲイン演算部は、上記印刷装置において所定の動作が実行される度に、上記速度変動量の取得および当該速度変動量に基づく上記補正比率による上記定数の補正を実行することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
上記モーターから上記特定の制御対象へ動力を伝達するために、第一プーリーと、上記特定の制御対象と接続して当該特定の制御対象に動力を伝えるローラーと共に回転する第二プーリーと、第一プーリーと第二プーリーと上記モーターの軸に結合したギアとに架け渡されたタイミングベルトと、第二プーリーと上記モーターの軸に結合したギアとの間の所定位置においてタイミングベルトの面に向かう方向に付勢されてタイミングベルトの面に接することによりタイミングベルトのテンションを略一定に保つための可動テンションローラーと、可動テンションローラーの近傍に固定されることにより上記付勢方向に沿った可動テンションローラーの可動域を制限するブロック部材とを備えることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項8】
上記制御部は、上記ゲイン演算部による上記定数の補正の後、上記特定の制御対象を動作させる際に、補正済みの上記定数を用いて上記モーターの駆動をPID制御することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項9】
制御対象を駆動するモーターを備え、当該制御対象の速度を検出し、当該検出した速度と当該制御対象の目標速度との差に基づいて当該モーターの駆動をPID制御する印刷装置によって実行する、ゲイン補正方法であって、
上記モーターを駆動させることにより特定の制御対象を動作させた所定期間における当該特定の制御対象の速度変動量を取得し、上記PID制御のための所定の定数を、当該速度変動量に基づいて求めた補正比率に応じて補正するゲイン演算工程を備えることを特徴とするゲイン補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−102012(P2011−102012A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−258424(P2009−258424)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】