説明

印刷装置のリカバリー機構及びリカバリー方法

【課題】ジャム発生時に、スイッチバック搬送されている用紙や、それ以外の用紙の状態に応じて適正なリカバリーを行い、ジャム検知後の復旧作業を容易にし、ユーザーの負担を軽減する。
【解決手段】用紙を供給する給紙経路からヘッドユニット110を経て、排紙経路へ至る通常経路と、通常経路に分岐接続され、通常経路から用紙が受け渡され、用紙を往復させて通常搬送路に戻すことにより用紙の表裏を反転させる反転経路と、用紙の搬送が停止された際に、搬送経路中で滞留している用紙の位置を検出する滞留検出部336と、滞留検出部336による検出結果に応じて、搬送経路の再駆動処理時における搬送経路の駆動順序、駆動方向及び駆動速度の制御を行うリカバリー判定部332とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する画像形成部を有する印刷装置に係り、特に、ジャム発生時などにおける緊急停止後の印刷装置のリカバリー機構及びリカバリー方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットをはじめとする印刷装置では、紙詰まりなどの搬送不良が発生した場合に、複数のセンサ手段を用いて、印刷装置内のどこで、どのように用紙が停止しているかを判別し、ユーザーに搬送不良の発生と状態を知らせる機能が備えられている。このような従来の印刷装置によれば、用紙の搬送不良が発生したことを検知したときに、印刷動作を即時停止させて、ユーザーに搬送不良が発生している箇所を知らせ、ユーザーはその情報に応じて、カバー類を開けて、印刷装置内部にそのまま残った用紙を取り除くことができる。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された技術では、用紙を印刷装置内部に送りこんだあとで、印字する前後に用紙の搬送方向を逆転して、印字された用紙を給紙側と同じ方向に排出する、一般的にスイッチバック搬送方式と呼ばれる搬送機構方式を採用した印刷装置において、用紙を搬送する搬送ローラの近傍に用紙検出手段を設け、用紙検出手段の情報から、用紙の搬送の異常の検出と、異常の状態の判別を行って、その情報に応じて、異なる処理動作を行う。
【0004】
そして、この特許文献1に開示された技術によれば、用紙のジャムが発生したことを検出した場合に、複数の検出手段の情報から、用紙のジャム状態を判別して、それに応じて、異なる処理動作でジャムを起こした用紙を簡単に取り除けるような状態にした後に印刷動作を停止して、ユーザーに告知し、また、用紙をプリンタ外に排出できる場合には、搬送機構を逆転させて自動でリカバリーを行い、印字動作をそのまま続ける。これにより、特許文献1に開示された技術によれば、用紙の搬送不良が発生したことを検出した場合、ユーザーに必要以上の負担をかけることなく、用紙処理とその後の動作復帰を行うことができる。
【特許文献1】特開2006−111366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、用紙の搬送方向を逆転して、印字された用紙を給紙側と同じ方向に排出するスイッチバック搬送方式では、スイッチバック搬送されている用紙が逆転前の状態にあるのか、或いは既に逆転され給紙側に排出されかかっているのか、又はスイッチバック搬送されている用紙以外の用紙の状態等、搬送経路内にある全用紙の状態を予測した上で適切なリカバリーを施さなければならない。
【0006】
詳述すると、スイッチバック搬送では、用紙両面に対する印字タイミングや、給紙、反転、排紙等の駆動制御などがスケジューリングされている。そして、搬送中に搬送ジャムが発生した場合、前後の用紙との衝突などの様々なトラブルを防ぐために緊急停止が行われるが、上述したスケジューリングや、用紙のサイズや種類、各搬送駆動の負荷の違いや駆動モータの特性によって、停止のパターンが変わり、予期せぬ状態で用紙が停止してしまうこともあり得る。特に、両面印刷時において、反転経路部に用紙が残ってしまったときには、反転駆動部が正転側、逆転側どちらに駆動すれば最適にリカバリー処理できるかが不明となってしまう。また、レジスト部に用紙が残っていた場合は、反転経路における用紙の状態を考慮したのみの処理では、用紙の衝突等が起こり、適切にリカバリーできないという問題がある。
【0007】
ところが、上述した特許文献1に記載の印刷装置では、ジャム発生時に印刷動作を停止させ、単に搬送機構を逆転させるのみであるため、スイッチバック搬送されている用紙や、それ以外の用紙の状態によっては、ジャムを適切に解消できない惧れがある。
【0008】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、反転経路で用紙を往復させて用紙の表裏を反転させるスイッチバック機構を備えた印刷装置において、ジャム発生時に、スイッチバック搬送されている用紙や、それ以外の用紙の状態に応じて適正なリカバリーを行い、ジャム検知後の復旧作業を容易にし、ユーザーの負担を軽減することができる印刷装置のリカバリー機構及びリカバリー方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する画像形成部を有する印刷装置であって、搬送経路の一部を構成し、用紙を供給する給紙経路から画像形成部を経て、排紙経路へ至る通常搬送路と、搬送経路の一部を構成し、通常搬送路に分岐接続され、通常搬送路から用紙が受け渡され、用紙を往復させて通常搬送路に戻すことにより用紙の表裏を反転させる反転経路と、用紙の搬送が停止された際に、搬送経路中で滞留している用紙の位置を検出する滞留検出手段と、滞留検出手段による検出結果に応じて、搬送経路の再駆動処理時における搬送経路に係る各駆動部の駆動順序及び駆動方向の制御を行う再駆動制御部とを有する。
【0010】
このような本発明によれば、搬送経路中に反転経路部を設けて、両面画像を形成する印刷機において、用紙搬送中に循環経路内の搬送ジャムを検出して搬送制御を停止した場合であっても、反転経路部に残された用紙の状態に応じて、搬送経路に係る各駆動部の駆動順序及び駆動方向の制御を行い、搬送ジャム発生時のリカバリー方法を最適化することができる。
【0011】
上記発明において、反転経路は、用紙が往復される往復路と、通常搬送路から往復路に用紙を導入する導入路と、往復路において往復された用紙を通常搬送路に給紙する再給紙路とから構成され、往復路には、正転することにより導入路から往復路へ用紙を導入し、逆転することにより往復路から再給紙路へ用紙を導出する反転駆動部が備えられ、滞留検出手段には、往復路において停滞している用紙が反転駆動部に到達しているか否かを検出する反転経路センサが含まれ、再駆動制御部は、反転経路センサの検出結果に応じて、再駆動処理時における反転駆動部の正転又は逆転を切り替えることが好ましい。
【0012】
この場合には、反転経路部に残された用紙が、反転駆動部に到達しているか否かに応じて、再駆動処理時における反転駆動部の正転又は逆転を切り替えることにより、搬送ジャム発生時のリカバリー方法をより最適なものにできる。
【0013】
上記発明において、滞留検出手段には、導入路における用紙の有無を検出する導入路センサがさらに含まれ、再駆動制御部は、反転経路センサ及び導入路センサの検出結果に応じて、再駆動処理時における反転駆動部の正転又は逆転を切り替えることが好ましい。
【0014】
この場合には、反転経路部に残された用紙が、導入路に存在するか否かに応じて、再駆動処理時における反転駆動部の正転又は逆転を切り替えることにより、搬送ジャム発生時のリカバリー方法をより最適なものにできる。
【0015】
上記発明において、滞留検出手段には、再給紙路における用紙の有無を検出する再給紙路センサがさらに含まれ、再駆動制御部は、反転経路センサ及び再給紙路センサの検出結果に応じて、再駆動処理時における反転駆動部の正転又は逆転を切り替えることが好ましい。
【0016】
この場合には、反転経路部に残された用紙が、再給紙路に存在するか否かに応じて、再駆動処理時における反転駆動部の正転又は逆転を切り替えることにより、搬送ジャム発生時のリカバリー方法をより最適なものにできる。
【0017】
上記発明において、滞留検出手段には、導入路における用紙の有無を検出する導入路センサがさらに含まれ、滞留検出手段には、再給紙路における用紙の有無を検出する再給紙路センサがさらに含まれ、再駆動制御部は、反転経路センサがオンであって、且つ導入路センサ及び再給紙路センサがオフである場合に、再駆動処理時において反転駆動部を正転させるとともに、反転駆動部の始動タイミングを、他の経路部に係る駆動部の始動タイミングに先行させることが好ましい。
【0018】
この場合、反転経路に用紙が存在するときに、反転経路における始動を他の経路における始動よりも先行させて正転させるため、その用紙が正転駆動中に停止されたのか、逆転駆動中に停止されたのかに関わらず、適正に再駆動することができる。すなわち、反転動作では、正転駆動により導入路から反転経路へ受け渡され、逆転駆動により反転経路を往復して、再給紙路へ導出されるため、正転駆動では導入路及び再給紙路の両方から離脱する方向に用紙が移動することとなり、このような正転駆動を他の駆動系より先行させて始動させることによって、再駆動時に、他の駆動系との境界で用紙に負荷が生じるのを防止できる。
【0019】
上記発明において、給紙経路と搬送経路との合流点近傍において、用紙の送り出しを行うレジスト部をさらに有し、滞留検出手段には、レジスト部近傍における用紙の有無を検出するレジストセンサが含まれ、再駆動制御部は、反転経路センサ及びレジストセンサの検出結果に応じて、再駆動処理時における反転駆動部の始動タイミングと、レジスト部の始動タイミングとに時間差を設けることが好ましい。
【0020】
この場合には、反転経路部に残された用紙が、レジスト部近傍に存在するか否かに応じて、再駆動処理時における反転駆動部の始動タイミングと、レジスト部の始動タイミングとに時間差を設けることにより、合流点における用紙の衝突を防止し、搬送ジャム発生時のリカバリー方法をより最適なものにできる。
【0021】
上記発明において、搬送経路における画像形成部の上流側近傍で、搬送中の用紙の浮き上がりを検出する用紙浮センサをさらに備え、再駆動制御部は、用紙浮センサが、画像形成部上流側近傍における用紙の浮き上がりを検出した場合には、再駆動処理を停止させることが好ましい。
【0022】
この場合には、搬送経路上における画像形成部の上流側近傍で、搬送中の用紙が浮き上がっているか否かに応じて、リカバリー処理を制止することができ、リカバリー処理により用紙が画像形成部に衝突し、画像形成部が損傷するのを回避することができる。
【0023】
他の発明は、搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する画像形成部と、搬送経路の一部を構成し、用紙を供給する給紙経路から画像形成部を経て、排紙経路へ至る通常搬送路と、搬送経路の一部を構成し、通常搬送路に分岐接続され、通常搬送路から用紙が受け渡され、用紙を往復させて通常搬送路に戻すことにより用紙の表裏を反転させる反転経路とを有する印刷装置における印刷方法であって、用紙の搬送が停止された際に、搬送経路中で滞留している用紙の位置を検出する滞留検出ステップと、滞留検出ステップによる検出結果に応じて、搬送経路の再駆動処理時における搬送経路に係る各駆動部の駆動順序及び駆動方向の制御を行う再駆動制御ステップとを有する。
【0024】
このような発明によれば、搬送経路中に反転経路部を設けて、両面画像を形成する印刷機において、用紙搬送中に循環経路内の搬送ジャムを検出して搬送制御を停止した場合であっても、反転経路部に残された用紙の状態に応じて、搬送経路に係る各駆動部の駆動順序及び駆動方向の制御を行い、搬送ジャム発生時のリカバリー方法を最適化することができる。
【0025】
上記発明において、反転経路は、用紙が往復される往復路と、通常搬送路から往復路に用紙を導入する導入路と、往復路において往復された用紙を通常搬送路に給紙する再給紙路とから構成され、往復路には、正転することにより導入路から往復路へ用紙を導入し、逆転することにより往復路から再給紙路へ用紙を導出する反転駆動部が備えられ、滞留検出ステップでは、往復路において停滞している用紙が反転駆動部に到達しているか否かを、反転経路センサにより検出し、再駆動制御ステップでは、反転経路センサの検出結果に応じて、再駆動処理時における反転駆動部の正転又は逆転を切り替えることが好ましい。
【0026】
この場合には、反転経路部に残された用紙が、反転駆動部に到達しているか否かに応じて、再駆動処理時における反転駆動部の正転又は逆転を切り替えることにより、搬送ジャム発生時のリカバリー方法をより最適なものにできる。
【0027】
上記発明において、滞留検出ステップでは、導入路における用紙の有無を、導入路センサにより検出し、再駆動制御ステップでは、反転経路センサ及び導入路センサの検出結果に応じて、再駆動処理時における反転駆動部の正転又は逆転を切り替えることが好ましい。
【0028】
この場合には、反転経路部に残された用紙が、導入路に存在するか否かに応じて、再駆動処理時における反転駆動部の正転又は逆転を切り替えることにより、搬送ジャム発生時のリカバリー方法をより最適なものにできる。
【0029】
上記発明において、滞留検出ステップでは、再給紙路における用紙の有無を、再給紙路センサにより検出し、再駆動制御ステップでは、反転経路センサ及び再給紙路センサの検出結果に応じて、再駆動処理時における反転駆動部の正転又は逆転を切り替えることが好ましい。
【0030】
この場合には、反転経路部に残された用紙が、再給紙路に存在するか否かに応じて、再駆動処理時における反転駆動部の正転又は逆転を切り替えることにより、搬送ジャム発生時のリカバリー方法をより最適なものにできる。
【0031】
上記発明において、滞留検出ステップでは、導入路における用紙の有無を導入路センサにより検出するとともに、再給紙路における用紙の有無を給紙路センサにより検出するステップがさらに含まれ、再駆動制御ステップでは、反転経路センサがオンであって、且つ導入路センサ及び再給紙路センサがオフである場合に、再駆動処理時において反転駆動部を正転させるとともに、反転駆動部の始動タイミングを、他の経路部に係る駆動部の始動タイミングに先行させることが好ましい。
【0032】
この場合、反転経路に用紙が存在するときに、反転経路における始動を他の経路における始動よりも先行させて正転させるため、その用紙が正転駆動中に停止されたのか、逆転駆動中に停止されたのかに関わらず、再駆動時に、他の駆動系との境界で用紙に過度のテンションが生じるのを防止し、リカバリー動作を適正なものとすることができる。
【0033】
上記発明において、印刷装置は、給紙経路と搬送経路との合流点近傍において、用紙の送り出しを行うレジスト部をさらに有し、滞留検出ステップでは、レジスト部近傍における用紙の有無を、レジストセンサにより検出し、再駆動制御ステップでは、反転経路センサ及びレジストセンサの検出結果に応じて、再駆動処理時における反転駆動部の始動タイミングと、レジスト部の始動タイミングとに時間差を設けることが好ましい。
【0034】
この場合には、反転経路部に残された用紙が、レジスト部近傍に存在するか否かに応じて、再駆動処理時における反転駆動部の始動タイミングと、レジスト部の始動タイミングとに時間差を設けることにより、合流点における用紙の衝突を防止し、搬送ジャム発生時のリカバリー方法をより最適なものにできる。
【0035】
上記発明において、印刷装置は、搬送経路における画像形成部の上流側近傍で、搬送中の用紙の浮き上がりを検出する用紙浮センサをさらに備え、再駆動制御ステップでは、用紙浮センサが、画像形成部上流側近傍における用紙の浮き上がりを検出した場合に、再駆動処理を停止させることが好ましい。
【0036】
この場合には、搬送経路上における画像形成部の上流側近傍で、搬送中の用紙が浮き上がっているか否かに応じて、リカバリー処理を制止することができ、リカバリー処理により用紙が画像形成部に衝突し、画像形成部が損傷するのを回避することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、反転経路で用紙を往復させて用紙の表裏を反転させるスイッチバック機構を備えた印刷装置において、ジャム発生時に、スイッチバック搬送されている用紙や、それ以外の用紙の状態に応じ、リカバリー方法を切り替えて、ジャム検知後の復旧作業を容易にし、ユーザーの負担を軽減することができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(印刷装置の全体構成)
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る印刷装置100の印刷用紙搬送経路の概要を示す図である。
【0039】
先ず、図1に示すように印刷装置100は、搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する装置であり、印刷用紙の供給を行う給紙機構として、筐体側面の外部に露出したサイド給紙台120と、筐体内部に設けられた複数の給紙トレイ(130a、130b、130c、130d)とを備えている。また、印刷済の印刷用紙を排出する排紙機構として排紙口140を備えている。
【0040】
本実施形態では、印刷装置100は、用紙幅方向に伸び、多数のノズルが形成されたインクヘッドを複数備え、それぞれのインクヘッドから黒又はカラーインクを吐出してライン単位で印刷を行い、搬送ベルト上の記録用紙上に複数の画像を互いに重なり合うように形成するインクジェット方式のラインカラープリンタとする。
【0041】
サイド給紙台120、給紙トレイ130のいずれかの給紙機構から給紙された印刷用紙は、ローラ等の駆動機構によって筐体内の給紙系搬送路FRに沿って搬送され、印刷用紙の先頭部分の基準位置であるレジスト部Rに導かれる。レジスト部Rのさらに搬送方向側には、複数の印字ヘッドを備えたヘッドユニット110が設けられている。印刷用紙は、ヘッドユニット110の対向面に設けられた搬送ベルト160によって印刷条件により定められる速度で搬送されながら、各印字ヘッドから吐出されたインクによりライン単位で画像形成される。
【0042】
印刷済の印刷用紙は、さらに、ローラ等の駆動機構によって筐体内を搬送される。印刷用紙の片側の面のみに印刷を行う片面印刷の場合は、そのまま排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に印刷面を下にして積載されていく。排紙台150は、筐体から突出したトレイ形状をしており、ある程度の厚みを有している。排紙台150は傾斜しており、傾斜の下位置に形成された壁により、排紙口140から排紙された印刷用紙が自然に整えられて重なっていくようになっている。
【0043】
印刷用紙の両面に印刷を行う両面印刷の場合は、表面(最初に印刷される面を「表面」、次に印刷される面を「裏面」とする)印刷終了時には排紙口140に導かれずに、さらに筐体内を搬送される。このため、印刷装置100は、裏面印刷用に搬送路を切り替えるための切替機構170を備えている。切替機構170によって排出されなかった印刷用紙は、反転経路SRに引き込まれる。
【0044】
この反転経路SRにおいて、通常経路CRから用紙が受け渡され、用紙を往復させて通常経路CRに戻すことにより用紙の表裏を反転させる、所謂スイッチバックを行う。そして、ローラ等の駆動機構によって、切替機構172を経由して再度レジスト部Rに給紙され、表面と同様の手順によって裏面の印刷が行われる。その後、裏面の印刷が行われ、両面に画像が形成された印刷用紙は、排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に積載されていく。
【0045】
なお、本実施形態では、両面印刷時におけるスイッチバックを、排紙台150内に設けられた空間を利用して行うようにしている。排紙台150内に設けられた空間は、スイッチバック時に印刷用紙が外部から取り出せないように覆われた構成となっている。これにより、利用者が誤って反転動作中の印刷用紙を引き抜いてしまうことを防ぐことができる。また、排紙台150は、本来印刷装置100に備えられているものであり、排紙台150内の空間を利用してスイッチバックを行うことにより、印刷装置100内に、別途スイッチバック用の空間を設ける必要がなくなる。したがって、筐体のサイズが増大してしまうことを防ぐことができる。さらには、排紙口と反転経路とを共用しないため、スイッチバック処理と他の用紙の排紙とを並行して行うことができる。
【0046】
印刷装置100では、給紙された印刷用紙の先頭部分の基準位置となるレジスト部Rには、両面印刷時に片面印刷済の印刷用紙も再給紙されてくる。このため、レジスト部Rの直前部分には、新規に給紙される印刷用紙の搬送経路と、裏面印刷の用紙が循環して搬送されてくる再給紙経路とが合流する合流地点が存在する。そして、レジスト部Rは、給紙系搬送路FRと通常経路CRとの合流点近傍において、用紙の送り出しを行う。
【0047】
なお、本実施形態では、上記合流地点を基準に、給紙機構側の経路を給紙系搬送路FRとし、それ以外の経路を搬送経路とする。この搬送経路は環状をなし、通常経路CRと反転経路SRとが含まれる。図2は、給紙系搬送路FRと通常経路CRと反転経路SRとを模式的に示した図である。簡単のため、駆動部を構成するローラの個数は適宜省略している。
【0048】
給紙系搬送路FRには、サイド給紙台120からの給紙を行うためのサイド給紙駆動部220、給紙トレイ130(130a、130b、130c、130d)からの給紙を行うためのトレイ1駆動部230a、トレイ2駆動部230b…が備えられている。これらによって、レジスト部Rに用紙を送り出す給紙手段が構成されている。
【0049】
さらに、上述した給紙系搬送路FRにおけるいずれの駆動部(トレイ1駆動部230a、トレイ2駆動部230b…)も複数のローラ等で構成された駆動機構を備え、給紙台又は給紙トレイに積載された印刷用紙を1枚ずつ取り込んで、レジスト部R方向に搬送する。各駆動部は独立に駆動することが可能であり、給紙を行う給紙機構に応じて必要な駆動部の動作が行われる。
【0050】
また、給紙系搬送路FRには、搬送センサが複数個配置され、給紙系搬送路FRにおける搬送ジャムを検出できるようになっている。すなわち、各搬送センサは、印刷用紙の有無又は印刷用紙の先端を検出するセンサであり、例えば、搬送経路上に複数の搬送センサを適当な間隔で並べ、給紙側に設けられた搬送センサが印刷用紙を検出してから所定時間内に搬送方向側の搬送センサが印刷用紙を検出しない場合に、搬送ジャムが発生したと判断することができる。
【0051】
これら搬送センサのうち、用紙の送り出しを行うレジスト部R手前のレジストセンサは、搬送中の用紙サイズを計測し、例えば、用紙の通過速度及び通過時間に基づいて、通過中の用紙のサイズを測定したり、サイド給紙駆動部220、トレイ1駆動部230a等を駆動させてから所定時間内に搬送センサが印刷用紙を検出しない場合に、搬送ジャム(給紙エラー)が発生したと判断することができる。
【0052】
通常経路CRは、循環搬送路の一部を構成し、用紙を供給する給紙系搬送路FRからヘッドユニット110を経て、排紙口140へ至る経路であり、この通常経路CR上において用紙上面に画像が形成される。この通常経路CRには、レジスト部Rに印刷用紙を導くレジスト駆動部240、ヘッドユニット110の対向面に設けられた搬送ベルト160を無端移動させるために駆動するベルト駆動部250、搬送方向側に順に配置される第1上面搬送駆動部260及び第2上面搬送駆動部265、排紙口140に印刷済の用紙を導く上面排出駆動部270、裏面印刷用に印刷用紙を反転経路SRに引き込む駆動手段が備えられている。いずれの駆動部も1又は複数のローラ等で構成された駆動機構を備え、搬送経路に沿って印刷用紙を1枚ずつ搬送する。各駆動部は独立に駆動することが可能であり、印刷用紙の搬送状況に応じて必要な駆動部の動作が行われる。
【0053】
さらに、通常経路CRにも搬送センサが複数個配置され、通常経路CRにおける搬送ジャムを検出できるようになっている。さらに、レジスト部Rにおいても適切に印刷用紙が搬送されていることを確認できるようになっている。通常経路CRでは、駆動部対応に搬送センサが設けられており、通常経路CRのどの駆動部で搬送ジャムが発生したかを特定することができるようになっている。
【0054】
反転経路SRは、通常経路CRに分岐接続され、通常経路CRから用紙が受け渡され、用紙を往復(スイッチバック)させて通常経路CRに戻すことにより用紙の表裏を反転させる反転経路及び搬送機構であり、この反転経路SRには、用紙を反転させて合流地点に導く反転駆動部281が備えられている。そして、反転経路SRでは、通常経路CRと異なる速度で搬送が可能であり、通常経路CRから用紙を引き継ぐ際に、加速・減速させたり、スイッチバックの際の停止時間を延長したり短縮したりすることができる。
【0055】
さらに、本実施形態において反転経路SRは、図4及び図5に示すように、用紙が往復される往復路SR2と、通常経路CRから往復路SR2に用紙を導入する導入路SR1と、往復路SR2において往復された用紙を通常経路CRに給紙する再給紙路SR3とから構成されている。往復路SR2には、正転することにより導入路SR1から往復路SR2へ用紙を導入し、逆転することにより往復路SR2から再給紙路SR3へ用紙を導出する反転駆動部281としての駆動ローラーが備えられ、再駆動(リカバリー)処理時には、反転駆動部281の正転又は逆転が切り替えられて、用紙の搬送不良を解消する。一方、再給紙路SR3には、再給紙のために用紙を送り出すための再給紙駆動部282として駆動ローラーが備えられている。
【0056】
そして、本実施形態においては、ある印刷用紙を給紙した後、その印刷用紙に印刷が施され排紙されるのを待って次の印刷用紙を給紙するのではなく、スケジューリングにより、先行する印刷用紙が排紙される前に、後続の印刷用紙を給紙して、所定の間隔で連続的に印刷することができるようになっている。
【0057】
詳述すると、本装置における両面印刷では、図6に示すように、用紙は、ヘッドユニット110において印刷された後(同図(a))、通常経路CRを循環し、反転経路SRを経由して表裏が反転され、再度、ヘッドユニット110に戻り(同図(b))、裏面が印刷された後、排出される(同図(c))。このような両面印刷において、反転経路SRを経由して表裏が反転された用紙(図中での例示では、用紙(1'))は、同図(b)に示すように、表面を印刷する用紙(図中での例示では、用紙(3)と(4))の間に挿入される。
【0058】
したがって、両面印刷時の通常のスケジューリングでは、表面の用紙を給紙する際に、反転経路SRから戻ってきた用紙が挿入される位置を確保するように、予めスペースを確保しておく。これにより、本装置では、表面の印刷と裏面の印刷とを並行させることができ、片面印刷時に対して1/2の生産性を確保することができる。
【0059】
前記搬送ベルト160は、ヘッドユニット110に対向する面の前端及び後端に配設された駆動ローラ161及び従動ローラ162に掛け渡されており、図1中時計回り方向に回転移動する。また、搬送ベルト160の上面には、そのベルト移動方向に沿って、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の4つのインクヘッドが並べて配置され、複数の画像を互いに重なり合うようにしてカラー画像を形成するヘッドユニット110が対向配置されている。
【0060】
さらに、図1に示すように、印刷装置100には、演算処理部330が備えられている。この演算処理部330は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成された演算モジュールであり、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築し、構築された各機能モジュールによって、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザー操作に対する種々の処理を行う。また、この演算処理部330には、操作パネル330aが接続されており、この操作パネル330aを通じて、ユーザーによる指示や設定操作を受け付けることができる。
【0061】
(演算処理部の構成)
そして、本実施形態におけるリカバリー処理は、演算処理部330によって、ヘッドユニット110及び各駆動モータ、各切替機構等の搬送路駆動手段の動作を制御することにより行われる。図3は、演算処理部330におけるリカバリー処理に係る機能モジュールを示すブロック図である。
【0062】
図3に示すように、演算処理部330は、主として、画像処理部331と、リカバリー判定部332と、画像データ受信部333と、駆動制御部334と、スケジューリング部335とが含まれている。
【0063】
画像データ受信部333は、ジョブデータを受信する通信インターフェースであり、受信したジョブデータに含まれる画像データを画像処理部331及びスケジューリング部335に受け渡すモジュールである。
【0064】
画像処理部331は、画像処理に特化したディジタル信号処理を行う演算処理装置であり、印刷に必要な画像データの変換等を行い、印刷を実行するモジュールである。この画像処理部331は、画像形成制御部331aと、色変換回路331bとを有している。
【0065】
画像形成制御部331aは、各色のインクヘッドの駆動や、搬送経路の駆動手段の動作を制御し、画像形成処理全体を制御するモジュールであり、スケジューリング部335のスケジューリングに従ったタイミング及び印字速度で画像形成を行う。色変換回路331bは、RGB印刷画像をCMYK印刷画像に変換する回路であり、各色についての印刷画像に基づいて、画像形成制御部331aに印刷を実行させる。
【0066】
一方、リカバリー判定部332は、滞留検出部336による検出結果に応じて、リカバリー方法を判定し、この判定に従って、駆動制御部334に対して、搬送経路の再駆動処理時における搬送経路に係る各駆動部の駆動順序、駆動方向及び駆動速度の制御をさせる再駆動制御部としての機能を果たすモジュールである。
【0067】
滞留検出部336は、ジャムの発生などにより用紙の搬送が停止された際に、搬送経路中で滞留している用紙の位置を検出するモジュールであり、複数のセンサ群により構成されている。具体的にこの滞留検出部336には、往復路SR2において停滞している用紙が反転駆動部281に到達しているか否かを検出する反転経路センサ336aと、上面搬送出口近傍の導入路SR1における用紙の有無を検出する導入路センサ336bと、再給紙路SR3における用紙の有無を検出する再給紙路センサ336cと、レジスト部R近傍における用紙の有無を検出するレジストセンサ336dと、ヘッドユニット110の上流側近傍で、搬送中の用紙の浮き上がりを検出する用紙浮センサ336eとから構成されている。
【0068】
そして、リカバリー判定部332には、下表に示すように、各センサ336a〜eによる検出結果(ON又はOFF)の組み合わせと、実行すべきリカバリー動作とを関連づけて記憶するテーブルデータ332aが接続されており、各センサ336a〜eの検出結果の組み合わせについてテーブルデータ332aを照合し、実行すべきリカバリー動作を判定する。
【表1】


表1に基づく判定処理の具体例としては、先ず、レジストセンサ336dの検出結果に応じて、レジスト動作を先行させてレジスト部におけるリカバリを行い、レジスト動作が終了次第、反転経路のリカバリに移行する。このように、レジストセンサ336dによる検出結果によりレジスト動作を先行させることによって、反転経路SRにおける反転駆動部281の始動タイミングと、レジスト部Rの始動タイミングとに時間差を設けている。
【0069】
次いで、反転経路センサ336aの検出結果に基づいて、往復路SR2において停滞している用紙が反転駆動部281に到達しているか否かを検出し、当該反転経路におけるリカバリーが必要であるか否かの判断を行う。反転経路センサ336aがONであるときには、導入路センサ336b又は再給紙路センサ336cのいずれがONであるかに応じて、リカバリー動作を変更する。
【0070】
すなわち、図5(a)に示すように、反転経路センサ336aがONで、且つ導入路センサ336bもONである場合には、用紙終端が導入路SR1側にあると判断し、そのまま反転駆動部281を正転駆動させて、用紙をスイッチバック停止ポイントまで前進させ、用紙が停止ポイントに到達した後、反転駆動部281を逆転駆動させ、再給紙路SR3に向けて導出する。一方、図5(b)に示すように、反転経路センサ336aがONで、且つ再給紙路センサ336cもONである場合には、用紙終端が再給紙路SR3側にあると判断し、反転駆動部281の正転駆動をスキップし、逆転駆動のみを行い、直ちに再給紙動作を行う。
【0071】
他方、反転経路センサ336aがOFFである場合であっても、図5(c)に示すように、導入路センサ336bがONである場合には、反転経路の駆動部を一旦正転駆動させて、反転駆動部281へ受け渡し、用紙を導入路SR1から通過させる。次いで、用紙が、スイッチバック停止ポイントに到達した後、反転駆動部281を逆転させ、リカバリー処理を完了させる。
【0072】
なお、本実施形態では、上述した表1による判断に先行させて、用紙浮センサ336eの検出結果に基づき、他のリカバリー処理を続行するか否かについて判断する。すなわち、図5(d)に示すように、用紙浮きセンサがONであれば、それ以上用紙を進行させるとヘッドユニット110を破損させる惧れが生じるため、それ以降のリカバリー動作を実行せずに、緊急停止をしたままユーザーの手作業によりジャムに係る用紙の排除を行う。
【0073】
また、リカバリー判定部332には、スケジューリング部335が接続されており、スケジューリング部335から当該ジョブに係るスケジューリングを受け取り、当該ジョブに両面印刷が含まれているか否かを判断し、両面印刷が含まれている場合には、反転経路SRにおいてジャムが発生する可能性があるとして、上記テーブルデータの照合を実行する。両面印刷が含まれていない場合には、反転経路SRにおけるジャムは発生し得ないことから、例えば、反転経路センサや再給紙路センサの検出結果を無視するなどして、レジスト部Rにおけるジャム解消を優先させて判定する。
【0074】
さらに、リカバリー判定部332には、操作信号取得部337が接続されており、この操作信号取得部337は、操作パネル330aからユーザーによる操作信号を受信し、ユーザー操作に基づいたリカバリーモードを設定するモジュールであり、受信した操作信号を解析し、ユーザー操作に応じたモード選択条件をリカバリー判定部332に出力する。リカバリー判定部332は、この操作信号取得部337における設定操作によって選択されたモードの種類に応じて、必要な駆動制御部334に対し動作指示を送出する。
【0075】
スケジューリング部335は、上述したように、表面に印刷を行う用紙、及び反転経路を経て表裏が反転された用紙の給紙、画像形成及び搬送に関する速度、順序及びタイミングを決定するモジュールである。また、このスケジューリング部335は、用紙の給紙、画像形成及び搬送に関する速度、順序及びタイミングを調整し、用紙の間隔を補正する機能も備えている。
【0076】
駆動制御部334は、平常時においては、スケジューリング部335によるスケジューリングに従って搬送経路に係る各駆動部の動作制御を行うモジュールであり、ジャム等の搬送不良が発生した場合には、搬送経路の緊急停止及びリカバリー時の再駆動処理を実行する。具体的に駆動制御部334は、緊急停止後において、リカバリー判定部332による判定結果、及びスケジューリング部335のスケジューリングに応じて、通常経路CR、給紙系搬送路FR、及び反転経路SRにおける搬送動作を制御する。特に、この駆動制御部334は、再駆動制御時における、反転駆動部281の正転又は逆転の他、ウエイト量や、反転後の搬送速度、反転動作時の加速度等を制御することができる。
【0077】
また、本実施形態の駆動制御部334は、ジャム検出部336fによるジャム検出に応じて搬送経路の駆動を緊急停止させる緊急停止部334aと、リカバリー判定部332による判定結果に基づいて、搬送経路の再駆動処理時における搬送経路に係る各駆動部の駆動順序、駆動方向及び駆動速度の制御を行う再駆動制御部334bとを備えている。
【0078】
なお、上記ジャム検出部336fは、装置内に設けられた各種センサの集合であり、各センサからの検出信号により、ジャムの発生箇所を特定可能となっており、緊急停止部334aは、この特定されたジャムの発生箇所に応じて、緊急停止の方法を切り替える機能を備えている。例えば、用紙浮センサ336eからの検出信号であるときには、ヘッドユニット110の破損防止を最優先とし、全ての搬送動作を停止させる。また、両面印刷による反転経路SR中でのジャムであるときに、スケジューリング部335のスケジュールにおいて、現在の印刷より後発の用紙が片面印刷であるなど、反転経路SRでのジャムの影響が通常経路CRでの搬送に影響がない場合には、通常経路CRにおける印刷・搬送を続行する機能も備えている。
【0079】
(リカバリー処理)
以上の構成を有する印刷装置の動作させることによって、以下のようなリカバリー方法を実施することができる。図7は、本実施形態に係る印刷装置のリカバリー処理時における動作を示すフローチャート図である。ここでは、両面印刷処理が実行されているものとする。
【0080】
先ず、ジョブデータの受信等により画像データが画像データ受信部333により取得され、画像処理部331により画像データの展開や色変換回路331bによる色変換が行われるとともに、ジョブの内容に応じて搬送スケジューリングが行われ、スケジューリングに従って、給紙及び画像形成処理が開始される。
【0081】
そして、搬送経路中においてジャムが発生し、ジャム検出部336fにより検出されたものとする(S101)。このジャムの検出に応じて緊急停止部334aにより搬送動作が緊急停止される(S102)。
【0082】
次いで、リカバリー処理が実行される。先ず、用紙浮センサ336eの検出結果に基づき、これ以降のリカバリー処理を続行するか否かについて判断する(S103)。すなわち、図5(d)に示すように、用紙浮きセンサがONであれば、緊急停止をしたままユーザーの手作業によりジャムに係る用紙の排除を行う(ステップS103における“ON”)。反対に用紙浮きセンサがOFFであれば(ステップS103における“OFF”)、レジストセンサ336dに応じた判断を行う(S104)。
【0083】
ステップS104において、レジストセンサ336dがONであるとき(ステップS104における“ON”)、レジスト動作を先行させてレジスト部におけるリカバリを行い(S105)、レジスト動作が終了次第(S105における“Y”)、ステップS107以降の反転経路のリカバリに移行する。このように、レジストセンサによる検出結果によりレジスト動作を先行させることによって、反転経路SRにおける反転駆動部の始動タイミングと、レジスト部Rの始動タイミングとに時間差を設けることができる。一方、レジストセンサ336dがOFFであるときには(ステップS104における“OFF”)、レジスト部のリカバリ(ステップS105及びS106)をスキップして、ステップS107以降の反転経路のリカバリに移行する。
【0084】
反転経路SRのリカバリでは、先ず、反転経路センサ336aの検出結果に基づいて、当該反転経路におけるリカバリーが必要であるか否かの判断を行う(S107)。反転経路センサ336aがONであるときには(ステップS107における“ON”)、次いで、導入路センサ336b又は再給紙路センサ336cのいずれがONであるかに応じて、リカバリー動作を変更する(S108及びS109)。
【0085】
すなわち、図5(a)に示すように、反転経路センサ336aがONであり、且つ導入路センサ336bのみがONである場合(ステップS108における“ON”)、反転経路の反転駆動部281を一旦正転駆動させ(S110)、用紙が導入路SR1を通過し、さらにスイッチバック停止ポイントに到達し、反転経路センサがOFFになった後(S111)、反転駆動部281を逆転させ(S112)、リカバリー処理を完了し、再給紙動作を開始する(S113)。
【0086】
一方、図5(b)に示すように、反転経路センサ336aがONであり、且つ再給紙路センサ336cのみがONである場合には(ステップS108における“OFF”、S109における“ON”)、反転駆動部281の正転駆動をスキップし、逆転駆動のみを行い(S112)、引き続き再給紙動作を行う(S113)。
【0087】
他方、反転経路センサ336aがONであり、且つ導入路センサ336b及び再給紙路センサ336cの両方がOFFある場合(ステップS108及びS109における“OFF”)、再駆動処理時において反転駆動部281を一旦正転駆動させるとともに(S110)、反転駆動部281の始動タイミングを、他の経路部に係る駆動部の始動タイミングに先行させる。具体的には、反転駆動部281を一旦正転駆動させて、用紙を導入路SR1を通過させ、さらにスイッチバック停止ポイントに到達し、反転経路センサがOFFになった後(S111)、反転駆動部281を逆転させ(S112)、リカバリー処理を完了し、再給紙動作など、他の駆動部を始動させる(S113)。
【0088】
また、反転経路センサ336aがOFFである場合(ステップS107における“OFF”)であっても、図5(c)に示すように、導入路センサ336bがONである場合には(ステップS114における“ON”)、反転経路の駆動部を一旦正転駆動させて(S110)、反転駆動部281へ受け渡し、用紙を導入路SR1から通過させる。次いで、用紙が、スイッチバック停止ポイントに到達し、反転経路センサがOFFになった後(S111)、反転駆動部281を逆転させ(S112)、引き続き再給紙動作を行う(S113)。反対に、導入路センサ336bがOFFである場合には(ステップS114における“OFF”)、再給紙路センサ336cに応じて、反転経路の逆転駆動を行うか否かを切り換える(S115)。
【0089】
詳述すると、反転経路センサ336a及び導入路センサ336bのいずれもOFFであって、再給紙路センサ336cがONであるときには(S115における“ON”)、反転経路SR中の用紙は、往復路を通過して既に再給紙路に移行した後であるため、再給紙動作から開始する(S113)。一方、反転経路センサ336a、導入路センサ336b、及び再給紙路センサ336cのいずれもがOFFであるときには(S115における“OFF”)、反転経路SR中、及び反転経路SRに隣接する導入路及び再給紙路には、用紙が存在しない可能性もあるが、用紙が反転経路センサ336aより反転部の奥側に存在している可能性もあることから、このときには、一旦、反転経路SRの逆転駆動から始動し(S112)、次いで、再給紙動作を開始する(S113)。
【0090】
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、スケジューリング部335を用いて、反転経路SRを経由して表裏が反転された用紙を、表面を印刷する用紙の間に挿入し、表面の印刷と裏面の印刷とを並行させるようにスケジューリングすることにより、両面印刷時の生産性を向上させるとともに、両面印刷時におけるジャムが発生した際に、搬送制御を停止した場合であっても、反転経路部に残された用紙の状態に応じて、搬送経路に係る各駆動部の駆動順序、駆動方向及び駆動速度の制御を行い、リカバリー方法を最適化することができる。
【0091】
特に、反転経路SRにおける往復路SR2において停滞している用紙が反転駆動部281に到達しているか否かを検出し、さらに導入路SR1及び再給紙路SR3に用紙が存在するか否かに応じて、再駆動処理時における反転駆動部281の正転又は逆転を切り替えることにより、搬送ジャム発生時のリカバリー方法をより最適なものにできる。
【0092】
また、本実施形態では、反転経路センサ336a及びレジストセンサ336dの検出結果に応じて、再駆動処理時における反転駆動部の始動タイミングと、レジスト部の始動タイミングとに時間差を設けることにより、合流点における用紙の衝突を防止することができる。例えば、上記実施形態で説明したように、反転経路センサ336aがONであって、且つ導入路センサ336b及び再給紙路センサ336cがOFFである場合に、再駆動処理時において反転駆動部281を正転させるとともに、反転駆動部281の始動タイミングを、他の経路部に係る駆動部281の始動タイミングに先行させるため、用紙が正転駆動中に停止されたのか、逆転駆動中に停止されたのかに関わらず、適正にリカバリーすることができる。すなわち、反転動作では、正転駆動により導入路SR1から反転経路SRへ受け渡され、逆転駆動により往復路SR2を往復して、再給紙路SR3へ導出されるため、正転駆動によって用紙を、導入路SR1及び再給紙路SR3の両方から離脱する方向に退避させることができ、このような反転駆動部281の正転駆動を他の駆動系より先行させて始動させることによって、再駆動時に、他の駆動系との境界で用紙に負荷が生じるのを防止できる。
【0093】
さらに、本実施形態では、用紙浮センサが、画像形成部上流側近傍における用紙の浮き上がりを検出した場合に、再駆動処理を停止させるため、リカバリー処理により用紙が画像形成部に衝突し、画像形成部が損傷するのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施形態に係る印刷装置の概略構成を示す図である。
【図2】実施形態に係る印刷装置の搬送路を模式的に示した図である。
【図3】実施形態に係る印刷装置における演算処理部のリカバリー処理にかかる機能モジュールを示すブロック図である。
【図4】実施形態に係る印刷装置の反転経路におけるリカバリー処理の説明図である。
【図5】実施形態に係る印刷装置の各経路におけるリカバリー処理の説明図である。
【図6】実施形態に係る印刷装置におけるスケジューリングの基本的な概要を示す説明図である。
【図7】実施形態に係る印刷装置のリカバリー処理に関する動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0095】
CR…通常経路
FR…給紙系搬送路
R…レジスト部
SR…反転経路
SR1…導入路
SR2…往復路
SR3…再給紙路
100…印刷装置
110…ヘッドユニット
120…サイド給紙台
130…給紙トレイ
140…排紙口
150…排紙台
160…搬送ベルト
161…駆動ローラ
162…従動ローラ
170,172…切替機構
220…サイド給紙駆動部
230a,b…トレイ駆動部
240…レジスト駆動部
250…ベルト駆動部
260…第1上面搬送駆動部
265…第2上面搬送駆動部
270…上面排出駆動部
281…反転駆動部
282…再給紙駆動部
330…演算処理部
330a…操作パネル
331…画像処理部
331a…画像形成制御部
331b…色変換回路
332…リカバリー判定部
332a…テーブルデータ
333…画像データ受信部
334…駆動制御部
334a…緊急停止部
334b…再駆動制御部
335…スケジューリング部
336…滞留検出部
336a…反転経路センサ
336b…導入路センサ
336c…再給紙路センサ
336d…レジストセンサ
336e…用紙浮センサ
336f…ジャム検出部
337…操作信号取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する画像形成部を有する印刷装置のリカバリー機構であって、
前記搬送経路の一部を構成し、前記用紙を供給する給紙経路から前記画像形成部を経て、排紙経路へ至る通常搬送路と、
前記搬送経路の一部を構成し、前記通常搬送路に分岐接続され、該通常搬送路から前記用紙が受け渡され、該用紙を往復させて該通常搬送路に戻すことにより該用紙の表裏を反転させる反転経路と、
前記用紙の搬送が停止された際に、該搬送経路中で滞留している前記用紙の位置を検出する滞留検出手段と、
前記滞留検出手段による検出結果に応じて、前記搬送経路の再駆動処理時における該搬送経路に係る各駆動部の駆動順序及び駆動方向の制御を行う再駆動制御部と
を有することを特徴とする印刷装置のリカバリー機構。
【請求項2】
前記反転経路は、
用紙が往復される往復路と、
前記通常搬送路から前記往復路に用紙を導入する導入路と、
前記往復路において往復された用紙を前記通常搬送路に給紙する再給紙路と
から構成され、
前記往復路には、正転することにより前記導入路から該往復路へ用紙を導入し、逆転することにより該往復路から前記再給紙路へ用紙を導出する反転駆動部が備えられ、
前記滞留検出手段には、前記往復路において停滞している用紙が前記反転駆動部に到達しているか否かを検出する反転経路センサが含まれ、
前記再駆動制御部は、前記反転経路センサの検出結果に応じて、前記再駆動処理時における前記反転駆動部の正転又は逆転を切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置のリカバリー機構。
【請求項3】
前記滞留検出手段には、前記導入路における用紙の有無を検出する導入路センサがさらに含まれ、
前記再駆動制御部は、前記反転経路センサ及び前記導入路センサの検出結果に応じて、前記再駆動処理時における前記反転駆動部の正転又は逆転を切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置のリカバリー機構。
【請求項4】
前記滞留検出手段には、前記再給紙路における用紙の有無を検出する再給紙路センサがさらに含まれ、
前記再駆動制御部は、前記反転経路センサ及び前記再給紙路センサの検出結果に応じて、前記再駆動処理時における前記反転駆動部の正転又は逆転を切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置のリカバリー機構。
【請求項5】
前記滞留検出手段には、前記導入路における用紙の有無を検出する導入路センサがさらに含まれ、
前記滞留検出手段には、前記再給紙路における用紙の有無を検出する再給紙路センサがさらに含まれ、
前記再駆動制御部は、前記反転経路センサがオンであって、且つ前記導入路センサ及び前記再給紙路センサがオフである場合に、前記再駆動処理時において前記反転駆動部を正転させるとともに、該反転駆動部の始動タイミングを、他の経路部に係る駆動部の始動タイミングに先行させる
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置のリカバリー機構。
【請求項6】
前記給紙経路と前記搬送経路との合流点近傍において、前記用紙の送り出しを行うレジスト部をさらに有し、
前記滞留検出手段には、前記レジスト部近傍における用紙の有無を検出するレジストセンサが含まれ、
前記再駆動制御部は、前記反転経路センサ及び前記レジストセンサの検出結果に応じて、前記再駆動処理時における前記反転駆動部の始動タイミングと、該レジスト部の始動タイミングとに時間差を設ける
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置のリカバリー機構。
【請求項7】
前記搬送経路における前記画像形成部の上流側近傍で、搬送中の用紙の浮き上がりを検出する用紙浮センサをさらに備え、
前記再駆動制御部は、前記用紙浮センサが、前記画像形成部上流側近傍における用紙の浮き上がりを検出した場合には、前記再駆動処理を停止させる
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置のリカバリー機構。
【請求項8】
搬送経路上を搬送される用紙表面に画像を形成する画像形成部と、
前記搬送経路の一部を構成し、前記用紙を供給する給紙経路から前記画像形成部を経て、排紙経路へ至る通常搬送路と、
前記搬送経路の一部を構成し、前記通常搬送路に分岐接続され、該通常搬送路から前記用紙が受け渡され、該用紙を往復させて該通常搬送路に戻すことにより該用紙の表裏を反転させる反転経路と
を有する印刷装置のリカバリー方法であって、
前記用紙の搬送が停止された際に、該搬送経路中で滞留している前記用紙の位置を検出する滞留検出ステップと、
前記滞留検出ステップによる検出結果に応じて、前記搬送経路の再駆動処理時における該搬送経路に係る各駆動部の駆動順序及び駆動方向の制御を行う再駆動制御ステップと
を有することを特徴とする印刷装置のリカバリー方法。
【請求項9】
前記反転経路は、
用紙が往復される往復路と、
前記通常搬送路から前記往復路に用紙を導入する導入路と、
前記往復路において往復された用紙を前記通常搬送路に給紙する再給紙路と
から構成され、
前記往復路には、正転することにより前記導入路から該往復路へ用紙を導入し、逆転することにより該往復路から前記再給紙路へ用紙を導出する反転駆動部が備えられ、
前記滞留検出ステップでは、前記往復路において停滞している用紙が前記反転駆動部に到達しているか否かを、反転経路センサにより検出し、
前記再駆動制御ステップでは、前記反転経路センサの検出結果に応じて、前記再駆動処理時における前記反転駆動部の正転又は逆転を切り替える
ことを特徴とする請求項8に記載の印刷装置のリカバリー方法。
【請求項10】
前記滞留検出ステップでは、前記導入路における用紙の有無を、導入路センサにより検出し、
前記再駆動制御ステップでは、前記反転経路センサ及び前記導入路センサの検出結果に応じて、前記再駆動処理時における前記反転駆動部の正転又は逆転を切り替える
ことを特徴とする請求項9に記載の印刷装置のリカバリー方法。
【請求項11】
前記滞留検出ステップでは、前記再給紙路における用紙の有無を、再給紙路センサにより検出し、
前記再駆動制御ステップでは、前記反転経路センサ及び前記再給紙路センサの検出結果に応じて、前記再駆動処理時における前記反転駆動部の正転又は逆転を切り替える
ことを特徴とする請求項9に記載の印刷装置のリカバリー方法。
【請求項12】
前記滞留検出ステップでは、前記導入路における用紙の有無を導入路センサにより検出するとともに、前記再給紙路における用紙の有無を給紙路センサにより検出するステップがさらに含まれ、
前記再駆動制御ステップでは、前記反転経路センサがオンであって、且つ前記導入路センサ及び前記再給紙路センサがオフである場合に、前記再駆動処理時において前記反転駆動部を正転させるとともに、該反転駆動部の始動タイミングを、他の経路部に係る駆動部の始動タイミングに先行させる
ことを特徴とする請求項9に記載の印刷装置のリカバリー方法。
【請求項13】
前記印刷装置は、前記給紙経路と前記搬送経路との合流点近傍において、前記用紙の送り出しを行うレジスト部をさらに有し、
前記滞留検出ステップでは、前記レジスト部近傍における用紙の有無を、レジストセンサにより検出し、
前記再駆動制御ステップでは、前記反転経路センサ及び前記レジストセンサの検出結果に応じて、前記再駆動処理時における前記反転駆動部の始動タイミングと、該レジスト部の始動タイミングとに時間差を設ける
ことを特徴とする請求項9に記載の印刷装置のリカバリー方法。
【請求項14】
前記印刷装置は、前記搬送経路における前記画像形成部の上流側近傍で、搬送中の用紙の浮き上がりを検出する用紙浮センサをさらに備え、
前記再駆動制御ステップでは、前記用紙浮センサが、前記画像形成部上流側近傍における用紙の浮き上がりを検出した場合に、前記再駆動処理を停止させる
ことを特徴とする請求項8に記載の印刷装置のリカバリー方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−292640(P2009−292640A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150848(P2008−150848)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】