説明

反応性モノマー、反応性モノマーの製造方法、耐熱性ポリマー、耐熱性有機膜形成用塗布液および耐熱性有機膜の製造方法

【課題】アダマンタン骨格を有する反応性モノマーから得られ、安定的に優れた耐熱性を示す耐熱性有機膜の製造方法および該製造方法に用いられる材料を提供する。
【解決手段】下記式(1)で示される構造を有し、純度が98%以上である反応性モノマー、及び該反応性モノマーを加熱重合または金属錯体の存在下に重合させて得られる耐熱性ポリマー、並びに、該反応性モノマーおよび/または耐熱性ポリマーを含有する耐熱性有機膜形成用塗布液を基板に塗布し、200℃以上の熱処理を行う耐熱性有機膜の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応性モノマー、反応性モノマーの製造方法、耐熱性ポリマー、耐熱性有機膜形成用塗布液および耐熱性有機膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに用いられる層間絶縁膜は、微細化に基づく配線遅延を抑制する方法として、絶縁膜材料の寄生容量を低減できる低誘電率化が検討されている。そのための分子分極を低減させる手法として有機膜が注目されており、近年、低分極、高耐熱性を両立する分子骨格としてアダマンタン骨格を有する反応性モノマーから得られる有機膜が検討されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、特許文献1記載の方法で得られる有機膜は、耐熱性の点においては未だ十分ではなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2003−292878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、アダマンタン骨格を有する反応性モノマーから得られ、安定的に優れた耐熱性を示す耐熱性有機膜の製造方法および該製造方法に用いられる材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式(1)で示される構造を有し、純度が98%以上である反応性モノマー、および、式(6)で示される構造を有し、純度が98%以上である反応性モノマーにかかるものである。また本発明は、式(4)で示され、純度が98%以上の化合物と、式(12)、式(13)または式(14)で表される化合物とを園頭カップリング反応させ、その際に式(12)もしくは式(13)で表される化合物を用いた場合には該園頭カップリング反応の後に加水分解を行う反応性モノマーの製造方法、ならびに、式(4)で示され、純度が98%以上の化合物にかかるものであり、式(9)で示され、純度が98%以上の化合物と、式(12)、式(13)または式(14’)で表される化合物とを、園頭カップリング反応させ、その際に式(12)もしくは式(13)で表される化合物を用いた場合には該園頭カップリング反応の後に加水分解を行う反応性モノマーの製造方法、ならびに、式(9)で示され、純度が98%以上の化合物にかかるものである。さらに本発明は、前記いずれかの反応性モノマーを加熱重合させて得られる耐熱性ポリマー、ならびに、前記いずれかの反応性モノマーをチタン、ジルコニウム、タングステン、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケルおよびパラジウムよりなる群から選ばれる金属を中心金属とした金属錯体の存在下に重合させて得られる耐熱性ポリマーにかかるものであり、そして、前記いずれかの反応性モノマーおよび/または前記いずれかの耐熱性ポリマーを含有する耐熱性有機膜形成用塗布液にかかるものであり、該耐熱性有機膜形成用塗布液を基板に塗布し、200℃以上の熱処理を行う耐熱性有機膜の製造方法にかかるものである。

(式中、二つのAr1はそれぞれ独立に芳香環を1個または2個有する基を表し、二つのxはそれぞれ独立に2または3を表し、複数のR1はそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表す。)

(式中、三つのAr3はそれぞれ独立に芳香環を1個または2個有する基を表し、三つのyはそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、複数のR2はそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表す。)

(式中、二つのAr1はそれぞれ独立に芳香環を1個または2個有する基を表し、二つのxはそれぞれ独立に2または3を表し、複数のQ1はそれぞれ独立に臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)

(式中、三つのT1はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。)

(式中、二つのT2はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。)

(式中、R1は水素原子または炭化水素基を表す。)

(式中、三つのAr3はそれぞれ独立に芳香環を1個または2個有する基を表し、三つのyはそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、複数のQ3は臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)

(式中、R2は水素原子または炭化水素基を表す。)
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アダマンタン骨格を有する反応性モノマーから得られ、安定的に優れた耐熱性を示す耐熱性有機膜の製造方法および該製造方法に用いられる材料が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
式(1)における二つのAr1はそれぞれ独立に芳香環を1個または2個有する基を表し、具体的にはベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、ビフェニル、ターフェニルや、ジフェニルエーテルから誘導される基等が挙げられ、芳香環に2または3個のアルキニル基が置換されている。Ar1として好ましくはベンゼンから誘導される基である。Ar1がベンゼンから誘導される基である場合には、原料が入手しやすいのはいうまでもなく、製造の各工程において異性化反応が生じにくく、結果として目的化合物を高収率で得ることが可能であり、精製が簡便なプロセスで行うことができる。
【0008】
式(1)における二つのxは、それぞれ独立に2または3を表し、ともに2であることが好ましい。
【0009】
式(1)で示される化合物を例示すると、
(Ar1がベンゼンから誘導される基である場合の具体例)

【0010】

【0011】
(Ar1がビフェニルから誘導される基である場合の具体例)

【0012】

【0013】

【0014】

【0015】

【0016】
(Ar1がジフェニルエーテルから誘導される基である場合の具体例)

【0017】

【0018】

【0019】

【0020】
(Ar1がナフタレンから誘導される基である場合の具体例)

等が挙げられ、これら具体的に例示した化合物よりなる群から選ばれる化合物が好ましい。
【0021】
複数のR1はそれぞれ独立に、水素原子または炭化水素基を表す。該炭化水素基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基または炭素数6〜20のアリール基が好ましく、具体的に例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、2−メチル−1−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、2−メチル−1−ヘプテニル基、3−メチル−1−ヘプテニル基、エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、2−メチル−1−プロピニル基、1−ヘプチニル基、2−ヘプチニル基、2−メチル−1−ブチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、3−ヘキシニル基、2−メチル−1−ヘプチニル基、3−メチル−1−ヘプチニル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、4−フェノキシフェニル基等が挙げられる。耐熱性を高める上では、R1として水素原子またはフェニル基が望ましく、後述の製造上においても式(14)で示される化合物としてアセチレン、フェニルアセチレン、式(12)で示される化合物としてトリメチルシリルアセチレン、式(13)で示される化合物として2−メチル−3−ブチン−2−オール等、工業的に入手しやすい原料を選択することができる。
【0022】
本発明において更に好ましくは、式(1)におけるAr1がベンゼンから誘導される基であり、R1基が水素原子であり、xが2である化合物であり、特に好ましくは式(5)で示される化合物の群から選ばれる化合物である。

【0023】
式(1)で示される構造を有する本発明の反応性モノマーの純度は、下記の紫外吸光度を検出源とした高速液体クロマトグラフィーにより得られる面積百分率で求める。
【0024】
本発明における高速液体クロマトグラフィーによる純度分析条件は下記の通りである。
装置:(株)島津製作所製 LC−6A 液体クロマトグラフィーシステムまたはこれと同等の装置
カラム:ジーエルサイエンス社製 Inertsil C8−3(4.6mmφ×15cm、平均粒径5μm)またはこれと同等のカラム
移動相:A(超純水)、B(テトラヒドロフラン) 総流量 0.5 mL/分
グラジェントプログラム:
0〜5分 A/B=50/50(v/v)
5〜30分 A/B=50/50から0/100(v/v)へ リニアグラジェント
30〜35分 A/B=0/100(v/v)
カラム温度:40℃
検出:254nmを測定波長とする吸光度
この方法ではRT(リテンションタイム)10分〜30分にアダマンタン誘導体に基づくピークが得られ、その面積百分率の値で純度を決定する。
なお、本発明においては、式(1)で示される構造に該当しない化合物を不純物として、前記純度を求める。
【0025】
式(1)で示される構造を有する化合物は、通常の合成手法によれば純度として97%以下程度のものが得られる。これをそのまま用いても有機膜を得ることはできるが、本発明における反応性モノマーはその純度が98%以上である。
かかる高純度の式(1)で示される構造を有する化合物は、粗生成物を精製して得てもよいが、現状では理由は定かではないけれども精製効率がよくないという難点があるところ、前駆体の段階で精製しておくと容易に高純度の式(1)で示される構造を有する反応性モノマーが得られ、好適である。
【0026】
本発明の反応性モノマーの製造方法として好ましくは、式(4)で示され、純度が98%以上の化合物と、式(12)、式(13)または式(14)で表される化合物とを園頭カップリング反応させ、その際に式(12)もしくは式(13)で表される化合物を用いた場合には該園頭カップリング反応の後に加水分解を行う反応性モノマーの製造方法である。

(式中、二つのAr1はそれぞれ独立に芳香環を1個または2個有する基を表し、二つのxはそれぞれ独立に2または3を表し、複数のQ1はそれぞれ独立に臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)

(式中、三つのT1はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。)

(式中、二つのT2はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。)

(式中、R1は水素原子または炭化水素基を表す。)
【0027】
式(4)におけるAr1およびxは式(1)におけるそれらと同様である。式(4)における複数のQ1はそれぞれ独立に臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。式(4)で示される化合物の具体例は、
(Ar1がベンゼンから誘導される基である場合の具体例)

【0028】

【0029】

【0030】

【0031】

【0032】
(Ar1がビフェニルから誘導される基である場合の具体例)

【0033】

【0034】
(Ar1がジフェニルエーテルから誘導される基である場合の具体例)

【0035】

【0036】
(Ar1がナフタレンから誘導される基である場合の具体例)

【0037】

【0038】

等が挙げられ、これら具体的に例示した化合物よりなる群から選ばれる化合物が好ましい。
【0039】
式(4)で示される化合物は、後述の製造方法により製造される。そして式(4)で示される化合物の精製法としては、再結晶法、再沈殿法、固液抽出法等の溶媒に対する溶解度差を利用する方法、シリカゲル、アルミナ、活性白土、活性炭、セルロースビーズ、ポリスチレンビーズ、イオン交換樹脂、セルロースイオン交換体等の固定相を用いた吸着クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、液々分配を利用した向流分配クロマトグラフィー、液々遠心クロマトグラフィーを用いることができる。これらの中で工業的生産方法としては、再結晶法、再沈殿法または固液抽出法が好ましく、更に好ましくは固液抽出法である。溶媒に対する溶解度差を利用するに際しては、目的物も不純物も溶解しやすい溶媒としてハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等)が挙げられ、目的物も不純物も溶解しにくい溶媒として水、低級アルコール類(メタノール、エタノール等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等)が挙げられ、そして目的物をも若干溶解するが不純物をより溶解しやすい溶媒として芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エーテル系溶剤類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン等)が挙げられ、具体的には、芳香族炭化水素類またはエーテル系溶剤類を用いて固液抽出する方法が好ましく使用される。該固液抽出に際しては、目的に応じて適度な温度を選択すればよい。
理由は定かではないが、式(4)で示される化合物は式(1)で示される化合物に比して比較的精製が容易であり、式(4)で示され、純度が98%以上の化合物は、式(1)で示される構造を有し、純度が98%以上である本発明の反応性モノマーを得るための原料として有用である。
なお、式(4)で示される化合物の純度分析条件は前記式(1)で示される構造を有する反応性モノマーにおけるそれと同じであり、また、式(4)で示される化合物の純度は式(4)に該当しない化合物を不純物として求める。
【0040】
式(12)におけるT1は、炭素数1〜3のアルキル基を表し、特に好ましくはメチル基である。
式(13)におけるT2は、炭素数1〜3のアルキル基を表し、特に好ましくはメチル基である。
式(14)におけるR1は式(1)におけるそれと同様である。
【0041】
園頭カップリング反応は通常、触媒として、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリトルイルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリトルイルホスフィン)パラジウム等のパラジウム錯体を用い、脱酸剤としてトリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ピリジン等の3級アミンの存在下で実施される。20〜150℃、好ましくは50〜100℃の温度条件、反応時間としては、0.1〜50時間、好ましくは、1〜30時間で行うことができる。反応溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類等から1種あるいは2種以上を混合して用いることもできるし、前記脱酸剤である3級アミンを反応溶媒として使用してもよい。また、助触媒として塩化銅、臭化銅、ヨウ化銅等の銅化合物、トリフェニルホスフィン、トリトルイルホスフィン、トリブチルホスフィン等のリン化合物を添加することもできる。
式(12)、式(13)または式(14)で表される化合物は、式(4)におけるQ1の数に対して1〜5当量、好ましくは1〜3当量を使用する。使用量が少ないと、Q1の中でアルキニル基に転化できない基が残存した化合物が不純物として生成し、精製効率が悪くなる。使用量が多いと、未反応物を除去するのに操作が煩雑となるため、好ましくない。
【0042】
式(12)もしくは式(13)で示される化合物を用いた場合は、園頭カップリング反応の終了後に加水分解を行い、−Si(T13基、−C(T22(OH)基を脱離させてエチニル基に転化することができる。該加水分解の方法としては、一般にアルカリ触媒を用いて行うことが可能であり、該アルカリ触媒として例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウム−t−ブトキシド等が挙げられ、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムが好ましい。該触媒量は、−Si(T13基または−C(T22(OH)基に対して、0.001〜10当量、好ましくは、0.01〜1当量であり、溶媒の存在下または不在下、−20〜100℃、好ましくは0〜50℃、の温度条件、反応時間としては、0.1〜50時間、好ましくは、1〜30時間で行うことができる。反応溶媒としてはヘキサン、ヘプタン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、水等から1種あるいは2種以上を混合して用いることができるが、特に、アルコール類または水等、プロトン性極性溶媒を共存させることが好ましい。
【0043】
式(4)で示される化合物は、式(2)で示される化合物と式(3)で示される化合物を縮合させ、更にQ2が水酸基である場合はトリフルオロメタンスルホン酸クロリド、トリフルオロメタンスルホン酸ブロミドまたはトリフルオロスルホン酸無水物と反応させる製造方法により製造される。

(式中、二つのG1はそれぞれ独立に臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)

(式中、Ar2は芳香環を1個または2個有する基を表し、xは2または3を表し、複数のQ2はそれぞれ独立に臭素原子、ヨウ素原子、水酸基またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)
【0044】
式(2)で示される化合物としては、例えば、1,3−ジブロモアダマンタン、1,3−ジヨードアダマンタン、1,3−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)アダマンタン、1−ブロモ−3−ヨードアダマンタン、1−ブロモ−3−トリフルオロメチルスルホニルオキシアダマンタン、1−ヨード−3−トリフルオロメタンスルホニルオキシアダマンタン等が挙げられ、1,3−ジブロモアダマンタンまたは1,3−ビス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)アダマンタンが好ましい。
【0045】
式(4)で示される化合物の製造に際しては、式(3)で示される化合物がフェノール化合物の場合はそれと式(2)で示される化合物とを直接縮合せしめた後、フェノール性水酸基をトリフルオロメタンスルホニルオキシ基に転換する方法を採用できる。Q2がトリフルオロメタンスルホニルオキシ基である式(3)で示される化合物を用いる場合はそれと式(2)で示される化合物とを直接縮合せしめればよい。また式(3)で示される化合物が芳香族ハロゲン化物である場合は、フリーデルクラフト反応を用いて式(2)で示される化合物を縮合せしめる方法を用いることにより式(4)で示される化合物に転換できる。
【0046】
2が水酸基である場合の式(3)で示される化合物(即ちフェノール化合物)としては、レゾルシン、カテコール、ピロガロール、2−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、2−ヨードフェノール、3−ヨードフェノール、2,6−ジブロモフェノール、2,3−ジブロモフェノール、2,5−ジブロモフェノール、2,6−ジヨードフェノール、2,3−ジヨードフェノール、2,5−ジヨードフェノール、2−ブロモ−6−フェニルフェノール、3−ブロモ−2−フェニルフェノール、2−ブロモ−5−フェニルフェノール、2,3−ジブロモ−6−フェニルフェノール、2,5−ジブロモ−6−フェニルフェノール、2,6−ジブロモ−5−フェニルフェノール、4’,3−ジブロモビフェニル−2−オール、4’,6−ジブロモビフェニル−2−オール、4’4−ジブロモビフェニル−3−オール、2−ブロモ−6−フェノキシフェノール、3−ブロモ−2−フェノキシフェノール、2−ブロモ−5−フェノキシフェノール、2,3−ジブロモ−6−フェノキシフェノール、2,5−ジブロモ−6−フェノキシフェノール、2,6−ジブロモ−5−フェノキシフェノール等が挙げられる。
2がトリフルオロメタンスルホニルオキシ基である式(3)で示される化合物としては、これらフェノール化合物の水酸基をトリフルオロメタンスルホニルオキシ基に変更した化合物が挙げられる。
【0047】
これらのフェノール化合物やQ2がトリフルオロメタンスルホニルオキシ基である式(3)で示される化合物と式(2)で示される化合物との縮合は、溶媒の存在下または不在下、0〜150℃、好ましくは20〜120℃、更に好ましくは50〜100℃の温度条件、反応時間としては、0.1〜50時間、好ましくは、1〜30時間で行うことができる。反応溶媒としては、基質、反応剤が共に溶解する溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類等から1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。かかる縮合反応は、無触媒でも可能であるが、酸触媒を用いて反応を加速させることも可能である。酸触媒としては硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、ヒドロキシ酢酸、クロロ酢酸、トリクロロ酢酸、フマル酸、マレイン酸等が用いられる。
【0048】
フェノール化合物と式(2)で示される化合物とを縮合せしめた場合には、その後、フェノール性水酸基をトリフルオロメチルスルホニルオキシ基に変換する。変換法としては、反応剤として、トリフルオロメタンスルホニルクロリド、トリフルオロメタンスルホニルブロミドまたはトリフルオロメタンスルホン酸無水物を用い、溶媒の存在下または不在下、−20〜100℃、好ましくは−10〜50℃の温度条件、反応時間としては、0.1〜50時間、好ましくは、1〜30時間で行うことができる。反応溶媒としては、基質、反応剤が共に溶解し、反応剤と反応しない溶媒を使用する。これらの溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類から1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。該反応は、更にアミン、特に3級アミンを脱酸剤として用いることが好ましく、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、またはピリジンが好ましく用いられる。
【0049】
式(3)で示される化合物が芳香族ハロゲン化物である場合の具体例としては、例えば、1,2−ジブロモベンゼン、1,3−ジブロモベンゼン、1,4−ジブロモベンゼン、1,2−ジヨードベンゼン、1,3−ジヨードベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1,2,3−トリブロモベンゼン、1,2,5−トリブロモベンゼン、1,2,3−トリヨードベンゼン、1,2,5−トリヨードベンゼン、1,2−ジブロモ−6−フェニルベンゼン、1,3−ジブロモ−2−フェニルベンゼン、1,2−ジブロモ−5−フェニルベンゼン、1,4−ジブロモ−2−フェニルベンゼン、2,4’−ジブロモビフェニル、等が挙げられる。これらの芳香族ハロゲン化物と式(2)で示される化合物との縮合は、一般的なフリーデルクラフト反応条件で行われる。すなわち、溶媒の存在下または不在下、−20〜100℃、好ましくは0〜50℃の温度条件、反応時間としては、0.1〜50時間、好ましくは、1〜30時間で行うことができる。反応溶媒としては、式(2)で示される化合物との反応性が低く、反応触媒が失活しない溶媒から選択される。ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン等の炭化水素類、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジブロモエタン等のハロゲン化炭化水素類、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン等の含ニトロ基溶媒から1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。反応触媒としては濃硫酸、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、トリフルオロボロン錯体、塩化鉄、塩化チタン、塩化スズ、塩化亜鉛等が用いられ、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、または塩化鉄が好ましく用いられる。
【0050】
本発明の反応性モノマーはまた、式(6)で示される構造を有し、純度が98%以上である反応性モノマーである。

(式中、三つのAr3はそれぞれ独立に芳香環を1個または2個有する基を表し、三つのyはそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、複数のR2はそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表す。)
【0051】
式(6)におけるAr3として、具体的にはベンゼンから誘導される基、ナフタレンから誘導される基、フェナントレンから誘導される基、ビフェニルから誘導される基、ターフェニルから誘導される基や、ジフェニルエーテルから誘導される基等が挙げられ、芳香環に1〜3個のアルキニル基が置換されている。Ar3として好ましくはベンゼンから誘導される基である。式(6)における三つのyは、それぞれ独立に1〜3の整数を表し、1または2であることが好ましい。
【0052】
式(6)で示される化合物を例示すると、
(Ar3がベンゼンから誘導される基である場合の具体例)

【0053】

【0054】
(Ar3がビフェニルから誘導される基である場合の具体例)

【0055】

【0056】
(Ar3がジフェニルエーテルから誘導される基である場合の具体例)

【0057】


【0058】
(Ar3がナフタレンから誘導される基である場合の具体例)


等が挙げられ、これら具体的に例示した化合物よりなる群から選ばれる化合物が好ましい。
【0059】
複数のR2はそれぞれ独立に、水素原子または炭化水素基を表す。該炭化水素基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基または炭素数6〜20のアリール基が好ましく、具体的に例示すると、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘプチル基、ヘキシル基、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、1−ヘプテニル基、2−ヘプテニル基、2−メチル−1−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、2−メチル−1−ヘプテニル基、3−メチル−1−ヘプテニル基、エチニル基、1−プロピニル基、プロパルギル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、2−メチル−1−プロピニル基、1−ヘプチニル基、2−ヘプチニル基、2−メチル−1−ブチニル基、1−ヘキシニル基、2−ヘキシニル基、3−ヘキシニル基、2−メチル−1−ヘプチニル基、3−メチル−1−ヘプチニル基、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、4−フェノキシフェニル基等が挙げられる。耐熱性を高める上では、R2として水素原子またはフェニル基が望ましく、後述の製造上においても式(14’)で示される化合物としてアセチレン、フェニルアセチレン、式(12)で示される化合物としてトリメチルシリルアセチレン、式(13)で示される化合物として2−メチル−3−ブチン−2−オール等、工業的に入手しやすい原料を選択することができる。
【0060】
本発明において更に好ましくは、式(6)におけるAr3がベンゼンから誘導される基であり、R2が水素原子であり、yが1または2である化合物であり、特に好ましくは式(10)で示される化合物の群から選ばれる化合物である。

【0061】
式(6)で示される構造を有する本発明の反応性モノマーの純度は、式(1)で示される構造を有する本発明の反応性モノマーについて既に述べたと同じ方法で求める。
【0062】
式(6)で示される構造を有する化合物は、通常の合成手法によれば純度として97%以下程度のものが得られる。これをそのまま用いても有機膜を得ることはできるが、本発明における反応性モノマーはその純度が98%以上である。
かかる高純度の式(6)で示される構造を有する化合物は、粗生成物を精製して得ればよく、その方法としては、再結晶法、再沈殿法、固液抽出法等の溶媒に対する溶解度差を利用する方法、シリカゲル、アルミナ、活性白土、活性炭、セルロースビーズ、ポリスチレンビーズ、イオン交換樹脂、セルロースイオン交換体等の固定相を用いた吸着クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、液々分配を利用した向流分配クロマトグラフィー、液々遠心クロマトグラフィーを用いることができる。溶媒に対する溶解度差を利用するに際しては、目的物も不純物も溶解しやすい溶媒としてハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等)が挙げられ、目的物も不純物も溶解しにくい溶媒として水、低級アルコール類(メタノール、エタノール等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等)が挙げられ、そして目的物をも若干溶解するが不純物をより溶解しやすい溶媒として芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エーテル系溶剤類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン等)が挙げられ、具体的には、芳香族炭化水素類またはエーテル系溶剤類を用いて固液抽出する方法が好ましく使用される。該固液抽出に際しては、目的に応じて適度な温度を選択すればよい。
【0063】
本発明の式(6)にかかる反応性モノマーの製造方法としては、式(9)で示され、純度が98%以上の化合物と、式(12)、式(13)または式(14’)で表される化合物とを、園頭カップリング反応させ、その際に式(12)もしくは式(13)で表される化合物を用いた場合には該園頭カップリング反応の後に加水分解を行う反応性モノマーの製造方法も好適である。

(式中、三つのAr3はそれぞれ独立に芳香環を1個または2個有する基を表し、三つのyはそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、複数のQ3は臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)

(式中、T1は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)

(式中、表し、T2は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)

(式中、R2は水素原子または炭化水素基を表す。)
【0064】
式(9)におけるAr3およびyは式(6)におけるそれらと同様である。式(9)における複数のQ3はそれぞれ独立に臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。式(9)で示される化合物を具体的に例示すると、
(Ar3がベンゼンから誘導される基である場合の具体例)

【0065】

【0066】

【0067】
(Ar3がビフェニルから誘導される基である場合の具体例)

【0068】

【0069】

【0070】
(Ar3がジフェニルエーテルから誘導される基である場合の具体例)

【0071】

【0072】
(Ar3がナフタレンから誘導される基である場合の具体例)

等が挙げられ、これら具体的に例示した化合物よりなる群から選ばれる化合物が好ましい。
【0073】
式(9)で示される化合物は、後述の製造方法により製造される。そして式(9)で示される化合物の精製法としては、再結晶法、最沈殿法、固液抽出法等の溶媒に対する溶解度差を利用する方法、シリカゲル、アルミナ、活性白土、活性炭、セルロースビーズ、ポリスチレンビーズ、イオン交換樹脂、セルロースイオン交換体等の固定相を用いた吸着クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、フラッシュクロマトグラフィー、液々分配を利用した向流分配クロマトグラフィー、液々遠心クロマトグラフィーを用いることができる。これらの中で工業的生産方法としては、再結晶法、再沈殿法または固液抽出法が好ましく、更に好ましくは固液抽出法である。溶媒に対する溶解度差を利用するに際しては、目的物も不純物も溶解しやすい溶媒としてハロゲン化炭化水素類(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等)が挙げられ、目的物も不純物も溶解しにくい溶媒として水、低級アルコール類(メタノール、エタノール等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等)が挙げられ、そして目的物をも若干溶解するが不純物をより溶解しやすい溶媒として芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、エーテル系溶剤類(ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン等)が挙げられ、具体的には、芳香族炭化水素類またはエーテル系溶剤類を用いて固液抽出する方法が好ましく使用される。該固液抽出に際しては、目的に応じて適度な温度を選択すればよい。
式(9)で示され、純度が98%以上の化合物は、式(6)で示される構造を有し、純度が98%以上である本発明の反応性モノマーを得るための原料として有用である。
なお、式(9)で示される化合物の純度分析条件は前記式(6)で示される構造を有する反応性モノマーにおけるそれと同じであり、また、式(9)で示される化合物の純度は式(9)に該当しない化合物を不純物として求める。
【0074】
式(12)もしくは式(13)で示される化合物については、既に説明したとおりである。
式(14’)におけるR2は式(6)におけるそれと同様である。
【0075】
式(9)で示され、純度が98%以上の化合物と、式(12)、式(13)または式(14’)で表される化合物との園頭カップリング反応およびその後の加水分解は、式(4)で示され、純度が98%以上の化合物と、式(12)、式(13)または式(14)で表される化合物との園頭カップリング反応およびその後の加水分解と同様にして実施される。
【0076】
式(9)で示される化合物は、式(7)で示される化合物と式(8)で示される化合物を縮合させ、更にQ3が水酸基である場合はトリフルオロメタンスルホン酸クロリド、トリフルオロメタンスルホン酸ブロミドまたはトリフルオロスルホン酸無水物と反応させる製造方法により製造される。

(式中、二つのG1はそれぞれ独立に臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、G2は水素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)

(式中、Ar4は芳香環を1個または2個有する基を表し、yは1〜3の整数を表し、Q4は臭素原子、ヨウ素原子、水酸基またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表し、Q4が複数存在する場合はそれらは互いに同じでも異なっていてもよい。)
【0077】
式(7)で示される化合物としては、例えば、式(2)で示される化合物として例示した化合物に加えて、1,3,5−トリブロモアダマンタン、1,3,5−トリヨードアダマンタンまたは1,3,5−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)アダマンタン等が挙げられ、特に、G2が臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基である3官能アダマンタン誘導体が好ましく、工業的に入手しやすい1,3,5−トリブロモアダマンタンが特に好ましい。
【0078】
4が水酸基である場合の式(8)で示される化合物(即ちフェノール化合物)としては、式(3)で示される化合物におけるフェノール化合物として例示した化合物のほかに、yが1となる化合物、すなわち、フェノール、ナフトール、4−ヒドロキシ−1−フェニルベンゼン、3−ヒドロキシ−1−フェニルベンゼン、4−ヒドロキシジフェニルエーテル、3−ヒドロキシジフェニルエーテル、ナフトール等が挙げられる。Q4がトリフルオロメタンスルホニル基である式(8)で示される化合物としては、これらフェノール化合物の水酸基をトリフルオロメタンスルホニル基に変更した化合物が挙げられる。式(8)で示される化合物が芳香族ハロゲン化物である場合の具体例についても、式(3)で示される化合物における芳香族ハロゲン化物として例示した化合物のほかに、yが1となる化合物として、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、4−ブロモビフェニル、3−ブロモビフェニル、4−ブロモジフェニルエーテル、3−ブロモジフェニルエーテル、1−ブロモナフタレン、2−ブロモナフタレンが例示できる。
式(7)で示される化合物と式(8)で示される化合物とから式(9)で示される化合物を製造する実際は、式(2)で示される化合物と式(3)で示される化合物とから式(4)で示される化合物を製造する際とほぼ同様にして実施される。但し、式(7)で示される化合物におけるG2が水素原子である場合は、主に、式(8)で示される化合物として芳香族ハロゲン化物を用いて、反応条件は前記式(4)の製造方法について説明したフリーデルクラフト反応の反応温度をより高温(通常0〜100℃、好ましくは30〜80℃)にする。
【0079】
本発明においては、耐熱性有機膜形成用塗布液の調製に際して、式(1)または式(6)で示される構造を有し、純度が98%以上である本発明の反応性モノマーをそのまま用いてもよいが、重合させることによってある程度高分子量化した耐熱性ポリマーに添加してから用いてもよい。かかる耐熱性ポリマーとして好ましくは、本発明の前記反応性モノマーを加熱することによって得られる耐熱性ポリマーである。加熱処理は通常、50〜250℃、好ましくは100℃〜200℃の温度条件、反応時間としては、0.1〜50時間、好ましくは、1〜30時間で行うことができる。反応溶媒は存在下、不存在下どちらでもよいが、反応溶媒を使用する場合は基質である式(1)または式(6)で示されるモノマーが溶解する溶媒であれば、特に限定されない。例えば、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、液体アンモニア等から1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0080】
また、かかる耐熱性ポリマーとして好ましくは、本発明の前記反応性モノマーを金属錯体の存在下に重合させて得られる耐熱性ポリマーである。金属錯体としては、チタン、ジルコニウム、タングステン、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケルおよびパラジウムよりなる群から選ばれる金属を中心金属とした金属錯体であり、配位子としては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、過塩素酸イオン、シアンイオン、一酸化炭素、トリフェニルホスフィン、トリトルイルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィン)ジフェニル、シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、アセチルアセトン、ジベンジリデンアセトン、およびベンゾニトリルよりなる群から選ばれる配位子を通常複数有する。
【0081】
このときの反応条件としては、通常−80〜150℃、好ましくは0〜120℃、更に好ましくは20〜100℃の温度条件、反応時間としては、通常0.1〜50時間、好ましくは、1〜30時間で行うことができる。反応溶媒としては、基質である本発明の反応性モノマーが溶解する溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、液体アンモニア等から1種あるいは2種以上を混合して用いることができる。
また、本発明の反応性モノマーの中で、R1またはR2が水素原子である場合は、金属リチウム、金属ナトリウム、金属カリウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、リチウムジアセトアミド等を助触媒として用いることも好適にされる。金属錯体の仕込量は該反応性モノマーに対して0.001〜1モル当量、好ましくは0.01〜0.5モル当量であり、助触媒を使用する場合は該反応性モノマーに対して0.001〜1モル当量、好ましくは0.01〜0.5モル当量を用いる。
【0082】
この重合方法は、以下の文献を参考にして実施すればよい。
K.Baum et al. Macromolecules, 24 , p5261, (1991).
佐藤、浦等 2003年日本化学会秋季総会予稿集 4 B8−27.
玉尾 皓平編 「有機金属反応剤ハンドブック」 p125, 化学同人,(2003).
Ziqiang Lei et al. J.Molecule.Catalyst A Chemical, 184, p139, (2002).
【0083】
前記金属錯体は、錯体骨格がより安定であることが好ましく、配位状態を安定化するために配位子が、トリフェニルホスフィン、トリトルイルホスフィン、シクロペンタジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン、ベンゾニトリルおよびアセチルアセトンよりなる群から選ばれることが好ましい。錯体状態が不安定であると、所望の分子量を得るための重合段階で触媒が分解・不活性化し、重合速度が極端に低下するばかりでなく、重合触媒量を多量に仕込む必要があるため、後工程で触媒を製品から除去する負荷が増加する。
【0084】
特に好ましい金属錯体として、例えば、エヌ・イー・ケムキャット(株)、米STREM Chemicals Inc.等の試薬メーカーから容易に入手できるシクロペンタジエニルコバルトジカルボニル、ビスシクロペンタジエニルコバルト、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリトルイルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、テトラキス(トリトルイルホスフィン)パラジウム、ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウム、カルボニル(ジヒドリド)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロ(シクロオクタジエン)ルテニウム、ジクロロ(シクロオクタジエニル)ルテニウム、ジクロロトリカルボニルルテニウムダイマー、クロロ(オクタジエン)ロジウムダイマー、およびクロロジカルボニルロジウムダイマーを好適な例として挙げることができる。これらは1種で用いても良いし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0085】
本法で得られた耐熱ポリマーは、耐光性、耐酸・アルカリ性等の環境耐性を向上させたり、絶縁材料として使用する場合は、絶縁性を確保するために、金属錯体として混入した金属または金属イオンを1ppm以下に低下させることが好ましい。金属または金属イオンの除去法は公知の方法を用いることができ、例えば、ポリマーを最沈殿法等で固液分離した後、ポリマーケーキを大量の水で水洗する方法、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、n−ブタノール等の水に不溶な溶剤に溶解させた後、キレート剤あるいは酸を添加した水溶液で抽出する方法、シリカゲル、アルミナ、活性炭、イオン交換樹脂、セライト等の金属吸着剤を用いて、吸着除去する方法等を単独あるいは組み合わせて用いることにより、金属または金属イオンを1ppm以下まで低減することができる。
【0086】
本発明の耐熱性ポリマーの分子量は、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量で1,000〜100,000が好ましく、更に好ましくは2000〜50,000である。該分子量が小さいと、反応が制御しづらく、かつ再沈殿法等、当該分野で一般に用いられる精製法の適用が困難となる。一方、該分子量が大きくなると反応溶液の粘度が著しく高くなり、添加した金属錯体を除去することが困難となる。更に、重合過程で先に仕込んだ反応性モノマーが残存する場合があるが、重合で得られた耐熱性ポリマー、残存した反応性モノマー共に該モノマーの純度が98%以上であれば、本願目的である高耐熱性を示すため、ポリマーとモノマーの分離は行っても、行わなくてもよい。
【0087】
本発明の耐熱性有機膜形成用塗布液は、前記の本発明の反応性モノマーおよび/または耐熱性ポリマーを含有する耐熱性有機膜形成用塗布液である。
該塗布液を形成する溶剤としては、前記反応性モノマーおよび/または耐熱性ポリマーが可溶な溶剤であれば、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール、2−エトキシメタノール、3−メトキシプロパノール等のアルコール系溶剤、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル系溶剤、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、アニソール、フェネトール、ベラトロール、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン等のハロゲン系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド,N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤などが挙げられ、これは単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
反応性モノマーおよび耐熱性ポリマー全量の濃度は通常1〜40重量%、好ましくは5〜20重量%であり、濃度が低すぎると、耐熱性有機膜の膜厚を十分厚くできず、濃すぎると、塗布液の粘度が上がりすぎ、取扱いが困難となる。
【0088】
更に、本発明の耐熱性有機膜形成用塗布液は、その耐熱性を損なわない範囲で、添加剤を混合することも可能である。該添加剤としては、例えば、ビニホール、ネオセルボン、エクセラー(商標、永和化成工業(株))、ファインブロー(商標、日東化工(株))、セルマイク(商標、三協化成(株))または特開2001−181577号公報や特開2004−109612号公報に熱蒸散性化合物あるいは熱分解性樹脂として記載されているアダマンタン誘導体、ノルボルネン誘導体、ヒドロキシナフタレン誘導体、ポリスチレン誘導体、ポリアクリレート誘導体、ポリアルキレングリコール誘導体等の発泡剤、エマール、デモール、エマルゲン、レオドール、アセタミン(商標、花王(株))、ネオゲン、ノイゲン、アモーゲン(商標、第一工業製薬(株))、ニューポール(商標、三洋化成工業(株))、サーフロン(商標、旭硝子(株))、フロラード(商標、住友スリーエム(株))、SH8400、SH8700(商標、東レ・ダウコーニング(株))等の界面活性剤、エレガン、ブレンマー、エピオール(商標、日本油脂(株))等の樹脂改質剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤あるいはシリカゾル、マイカ、タルク、ベントナイト、アルミナ等のフィラーを挙げることができる。
【0089】
本発明の耐熱性有機膜の製造方法は、前記有機膜形成用塗布液を基板に塗布し、200℃以上の熱処理を行う耐熱性有機膜の製造方法である。本発明の耐熱性有機膜形成用塗布液を基板に塗布した後、好ましくは200℃以上450℃以下、より好ましくは250℃以上400℃以下の温度条件下、通常1分から5時間、好ましくは15分から2時間、更に好ましくは30分から1時間の処理時間で熱処理を行い、硬化膜を形成する。温度条件、処理時間は、使用する反応性モノマー、耐熱性ポリマーによって最適な条件を設定することができる。基板としては、例えば、ガラス、石英、金属、セラミック、シリコン、GaAs、SiO2、SiN、SiCなどの基板が挙げられる。塗布の方法としては、例えば、スピンコーティング、ローラーコーティング、ディップコーティング、スプレー法などが挙げられる。加熱方法としては、例えば、オーブン、ホットプレート、ファーネスなどを使用する方法、RTP(ランプ加熱ヒーター)等によるキセノンランプを使用した光照射加熱などが挙げられる。また、紫外線照射、電子線照射等の電磁波照射を用いてもよい。
【0090】
加熱処理、電磁波照射処理は、酸素濃度1%未満の雰囲気で行うことが好ましく、酸素濃度100ppm未満の雰囲気で行うことがより好ましい。
酸素濃度1%未満の雰囲気としては、例えば、減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気、または真空下などを挙げることができる。
減圧雰囲気は、1〜20Pa程度であることが好ましい。
不活性ガスとしては、例えば、ヘリウム、窒素、アルゴン等が挙げられる。
【0091】
該耐熱性有機膜は、耐薬品性、機械的強度に優れていることから、半導体などの電子材料用の絶縁膜として好適に使用される。
【実施例】
【0092】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0093】
[製造例1]
500mL4つ口フラスコに1,3−ジブロモアダマンタン40g(0.27mol)、臭化アルミニウム40g(0.16mol)及びm−ジブロモベンゼン200mLを仕込み、氷浴で10℃以下に冷却しながら、6時間攪拌した。次いで、濃塩酸10gを溶解させた氷水150gにこれを添加し、攪拌後、水相を除去した。更に有機相を2回水洗し、得られた有機層にトルエン80mLを添加し、還流脱水を行って、トルエン中の水分を除去した。70℃まで冷却し、析出している結晶を熱時ろ過し、得られたケーキをメタノール50mLで2回洗浄した後、減圧乾燥させた。得られた結晶の高速液体クロマトグラフィーによる純度は98.7%であった。
この結晶10.9gを200mL4つ口フラスコに仕込み、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム100mg、トリフェニルホスフィン227mg、よう化銅(I)80mg及びトリエチルアミン110mLを加え、70〜80℃まで昇温した。トリメチルシリルアセチレン10.6gを約1時間かけて滴下し、同温度で6時間反応させた。冷却後、溶媒を留去し、残渣にジエチルエーテル100mLを加え、不溶塩をろ過した。ろ液を1N塩酸、飽和食塩水および超純水で順次洗浄し、エーテル相を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤をろ別し、エーテルを留去し、残渣をカラム(固定相;シリカゲル60、展開液;ヘキサン/塩化メチレン)で精製した。主生成物25.7gをメタノール70mLとテトラヒドロフラン70mLとの混合溶媒に溶解させ、炭酸カリウム0.3gを加え、室温で4時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、残渣に塩化メチレン100mL、1N塩酸50mLを加え、攪拌後、塩酸相を除去した。塩化メチレン相を超純水50mLで3回洗浄し、塩化メチレン相から溶媒を留去・減圧乾燥し、ビス(ジエチニルフェニル)アダマンタンを得た。これをモノマーAとする。高速液体クロマトグラフィーによる純度は99.1%であった。
【0094】
[製造例2]
特開2003−292878号公報実施例3記載の方法に準じた製造例を記す。200mL4つ口フラスコに1,3−ジブロモアダマンタン5.0g(17mmol)、臭化アルミニウム2.3g(9mmol)及びm−ジブロモベンゼン100mLを仕込み、60℃で10時間攪拌した。冷却後、濃塩酸10gを溶解させた氷水150gにこれを添加し、攪拌後、水相を除去した。過剰ジブロモベンゼンを減圧蒸留で除去した後、残さに塩化メチレン100mLを添加・溶解させ、水及び食塩水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤をろ別後、エバポレータで塩化メチレンを濃縮し、メタノール100mLを加えて攪拌した。析出した結晶をろ別し、減圧乾燥させた。得られた1,3−ビス(3,5−ジブロモフェニル)アダマンタンの純度は高速液体クロマトグラフィーの結果、94.5%であった。
この結晶6.0gを200mL4つ口フラスコに仕込み、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム200mg、トリフェニルホスフィン400mg、よう化銅(I)180mg及びトリエチルアミン100mLを加え、70〜80℃まで昇温した。トリメチルシリルアセチレン6.7gを1時間かけて滴下し、同温度で4時間反応させた。冷却後、溶媒を留去し、残渣にジエチルエーテル200mLを加え、不溶塩をろ過した。ろ液を1N塩酸、飽和食塩水および超純水で順次洗浄し、エーテル相を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤をろ別し、エーテルを留去し、残渣をカラム(固定相;シリカゲル60、展開液;ヘキサン/塩化メチレン)で精製した。主生成物5.9gをメタノール150mLとテトラヒドロフラン100mLとの混合溶媒に溶解させ、炭酸カリウム0.5gを加え、室温で4時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、残渣に塩化メチレン200mL、1N塩酸100mLを加え、攪拌後、塩酸相を除去した。塩化メチレン相を超純水100mLで3回洗浄し、塩化メチレン相から溶媒を留去・減圧乾燥し、ビス(ジエチニルフェニル)アダマンタン3.2gを得た。高速液体クロマトグラフィーによる純度は92.4%であった。これをモノマーBとする。
【0095】
[製造例3]
1000mL4つ口フラスコに1,3−ジブロモアダマンタン30.0g(102mmol)、ブロモベンゼン160.2g(1.02mol)及びジクロロメタン570gを仕込み、氷水で5℃まで冷却した。ここに、無水塩化鉄(III)0.83g(5.1mmol)を加え、12時間かけて室温まで昇温しながら攪拌を続けた。
次いで、反応温度を50℃まで昇温し、2時間反応させた後、冷却した。反応液を1N塩酸300gに添加し、攪拌後、水層を除去した。有機層を1N塩酸100gで1回洗浄し、さらにイオン交換水100gで4回洗浄した。ジクロロメタンと過剰ブロモベンゼンを減圧蒸留で除去した後、残さにメタノール300gを加え、攪拌した。沈殿したオイル状物を取り出し、テトラヒドロフラン30gを加えて溶解させ、メタノール300g中に滴下した。沈殿したオイル状物を取り出して減圧乾燥し、オイル状物を38.5g得た。
このオイル状物37.4gを1000mL4つ口フラスコに仕込み、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム4.36g、よう化銅(I)1.44g及びトリエチルアミン374gを加え、オイル状物を溶解させた。ここに、トリメチルシリルアセチレン41.2gを1時間かけて滴下し、80℃まで昇温した。同温度で8時間反応させ、さらに室温まで冷却後、16時間攪拌を続けた。不溶物を濾別し、トルエン150gで洗浄した。濾液と洗液を混合して濃縮し、残さをカラム(固定相;シリカゲル60、展開液;ヘキサン/トルエン)で精製した。主生成物7.80gをメタノール78gとテトラヒドロフラン234gとの混合溶媒に溶解させ、炭酸カリウム1.65gを加え、室温で10時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、残さにトルエン80g、1N塩酸30gを加え、攪拌後、水層を除去した。さらに1N塩酸20gを加え、攪拌後、水層を除去した。有機層をイオン交換水30mLで3回洗浄し、さらに、1%蓚酸水30gで2回、イオン交換水30mLで4回洗浄し、トルエンを減圧溜去下し、1,3,5−トリス(3−エチニルフェニル)アダマンタンを得た。高速液体クロマトグラフィーによる純度は96.4%であった。これをモノマーCとする。
【0096】
[製造例4]
製造例3で得られた1,3,5−トリス(3−エチニルフェニル)アダマンタンを再度、カラム(固定相;シリカゲル60、展開液;ヘキサン/塩化メチレン)で精製した。高速液体クロマトグラフィーによる純度は98.5%であった。これをモノマーDとする。
【0097】
[製造例5]
製造例1で得られた反応性モノマーA 5.0g、シクロペンタジエンコバルトジカルボニル 0.23gおよびトルエン50gを混合、溶解させ、還流温度下、20時間反応させた。冷却後、トルエン20gで希釈し、セライト515をプレコートしたガラスフィルターで吸引ろ過した。ろ液に1規定塩酸50mLを投入・攪拌後、塩酸相を排出した。更に、水洗を行い、触媒から混入するコバルトを除去した。トルエン相をロータリーエバポレータで減圧濃縮した後、メタノール100gを加え、析出物をろ過し、減圧乾燥させた。これをポリマーEとする。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は11000であった。
【0098】
[製造例6]
シクロペンタジエンコバルトジカルボニルの仕込量を0.5gに変えた以外は製造例5と同等の処理を行い、ポリマーFを得た。GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量は16000であった。
【0099】
[製造例7]
窒素置換したフラスコに、テトラヒドロフラン284重量部、α−メチルスチレン72重量部を仕込んだ。攪拌下、n−ブチルリチウム溶液54重量部をフラスコに滴下した。次いでフラスコを−60℃まで冷却し、30分間攪拌した。次いで1,1−ジフェニルエチレンの20%テトラヒドロフラン溶液165重量部をフラスコに滴下し、30分間攪拌した。最後にメタノール6重量部を仕込み反応を停止させた。室温まで昇温し、得られた樹脂溶液を4000重量部のメタノールに滴下し、樹脂を沈殿させ、ろ過して取り出した。末端をジフェニルエチレンで修飾した重量平均分子量1300のポリα−メチルスチレンが得られた。これをポリマーGとする。
【0100】
[塗布液の調製]
製造例1〜4で得られたモノマーA〜D、製造例5〜6で得られたポリマーE、Fおよび製造例7で得られたポリマーG、溶剤としてアニソールを用い、表1のように配合、溶解させた。この溶液を、0.1μmPTFEフィルターで公知の方法により濾過し、塗布液1〜8を調製した。
【0101】
[実施例1〜5、比較例1〜3]
調製された塗布液1〜6それぞれを、4インチシリコンウェハー上に約1ml滴下した。その後、このウェハーを500rpmで3秒間スピンさせてから、2000rpmの速度で15秒間スピンさせた。コーティングしたウェハーを150℃で1分間ベークし、次いで、そのウェハーを炉内で、窒素雰囲気中、400℃に30分間保持することにより硬化させ、有機膜を形成させた。得られた有機膜の比誘電率は、水銀プローブ法で、動作周波数1MHzのC―V測定(エス・エス・エム社製、SSM495型)を用い測定した。更に、一旦形成せしめた有機膜を前記炉に再度投入し、400℃に5時間保持後、取り出し、形成せしめた有機膜の重量、膜厚を測定し、この熱履歴での耐熱性を下式の重量減少および膜収縮で評価した。結果を表2に示した。
(重量減少)={(400℃/30分後の膜重量)−(400℃/5時間後の膜重量)}÷(400℃/30分後の膜重量)
(膜収縮)={(400℃/30分後の膜厚)−(400℃/5時間後の膜厚)}÷(400℃/30分後の膜厚)
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

特に、半導体用絶縁材料においては、1つの指標として400℃、5時間の熱履歴で膜厚収縮および重量減少の双方で2%以下(400℃膜収縮 0.4%/hr以下)が求められているところ、本発明の実施態様である実施例1〜5においてはいずれも満足することができた。一方で、上記比較例1〜3においては、重量減少は満足することができていても、膜収縮は不満足な結果となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で示される構造を有し、純度が98%以上である反応性モノマー。

(式中、二つのAr1はそれぞれ独立に芳香環を1個または2個有する基を表し、二つのxはそれぞれ独立に2または3を表し、複数のR1はそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表す。)
【請求項2】
式(5)で示される化合物の群から選ばれる請求項1記載の反応性モノマー。

【請求項3】
式(6)で示される構造を有し、純度が98%以上である反応性モノマー。

(式中、三つのAr3はそれぞれ独立に芳香環を1個または2個有する基を表し、三つのyはそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、複数のR2はそれぞれ独立に水素原子または炭化水素基を表す。)
【請求項4】
式(10)で示される化合物の群から選ばれる請求項3記載の反応性モノマー。

【請求項5】
式(4)で示され、純度が98%以上の化合物と、式(12)、式(13)または式(14)で表される化合物とを園頭カップリング反応させ、その際に式(12)もしくは式(13)で表される化合物を用いた場合には該園頭カップリング反応の後に加水分解を行う反応性モノマーの製造方法。

(式中、二つのAr1はそれぞれ独立に芳香環を1個または2個有する基を表し、二つのxはそれぞれ独立に2または3を表し、複数のQ1はそれぞれ独立に臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)

(式中、三つのT1はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。)

(式中、二つのT2はそれぞれ独立に炭素数1〜3のアルキル基を表す。)

(式中、R1は水素原子または炭化水素基を表す。)
【請求項6】
式(4)で示され、純度が98%以上の化合物。

(式中、二つのAr1はそれぞれ独立に芳香環を1個または2個有する基を表し、二つのxはそれぞれ独立に2または3を表し、複数のQ1はそれぞれ独立に臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)
【請求項7】
式(9)で示され、純度が98%以上の化合物と、式(12)、式(13)または式(14’)で表される化合物とを、園頭カップリング反応させ、その際に式(12)もしくは式(13)で表される化合物を用いた場合には該園頭カップリング反応の後に加水分解を行う反応性モノマーの製造方法。

(式中、三つのAr3はそれぞれ独立に芳香環を1個または2個有する基を表し、三つのyはそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、複数のQ3は臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)

(式中、T1は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)

(式中、T2は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)

(式中、R2は水素原子または炭化水素基を表す。)
【請求項8】
式(9)で示され、純度が98%以上の化合物。

(式中、三つのAr3はそれぞれ独立に芳香環を1個または2個有する基を表し、三つのyはそれぞれ独立に1〜3の整数を表し、複数のQ3は臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基を表す。)
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載の反応性モノマーを加熱重合させて得られる耐熱性ポリマー。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載の反応性モノマーをチタン、ジルコニウム、タングステン、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケルおよびパラジウムよりなる群から選ばれる金属を中心金属とした金属錯体の存在下に重合させて得られる耐熱性ポリマー。
【請求項11】
GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜100,000である請求項9または10記載の耐熱性ポリマー。
【請求項12】
請求項1〜4のいずれかに記載の反応性モノマーおよび/または請求項9〜11のいずれかに記載の耐熱性ポリマーを含有する耐熱性有機膜形成用塗布液。
【請求項13】
請求項12記載の耐熱性有機膜形成用塗布液を基板に塗布し、200℃以上の熱処理を行う耐熱性有機膜の製造方法。

【公開番号】特開2006−225293(P2006−225293A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38856(P2005−38856)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】