説明

口腔内カメラと、そのホワイトバランス制御方法

【課題】本発明は、口腔内カメラに関するもので、ホワイトバランスを合わせることを目的とするものである。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために本発明は、照明部23の照度を制御する照明制御部24と、撮像部10bからの被写体情報の明るさ検出手段と、を有し、ホワイトバランス制御部25は、照明制御部24が、照明部23からの被写体の照度を変化させた時の、前記明るさ検出手段が検出する被写体情報の明るさの変化量から、ホワイトバランスを設定する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内カメラと、そのホワイトバランス制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の口腔内カメラの構成は、以下のような構成となっていた。
【0003】
すなわち、本体ケースと、この本体ケースの前方側に装着した口腔内挿入部と、この口腔内挿入部の前方側開口に配置した、光学的に被写体をとらえる撮像窓と、この撮像窓に光学的に連結したレンズ部と、このレンズ部からの光学的な被写体情報を取り込む撮像部と、この撮像部に対して、被写体のホワイトバランスを設定するホワイトバランス制御部と、前記被写体を照明する照明部と、を備え、前記ホワイトバランス制御部は、被写体のホワイトバランスを、照明があたった状態において、この照明の色温度に対して所定のホワイトバランス値になるように予め決定されたホワイトバランスの値を固定的に設定するものとなっていた。
【0004】
このような従来技術の中で、照明部のLEDが、ON状態かOFF状態かに応じて、予め設定された2つのホワイトバランスモードを切り替えながら設定するものもあった(例えば下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6002424号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例における課題は、被写体のホワイトバランスが合わせられないことであった。
【0007】
すなわち、従来の口腔内カメラにおいては、照明が被写体に対して、所定の照度以上に照らされた状態において、例えば、口腔内の被写体を撮影する場合において、ホワイトバランスが所定の値をとるように設定されていたので、例えば、照明の照度が被写体に対して所定の値以下となってしまう口腔外の状態においては、設定したい所望のホワイトバランスに被写体を合わすことができなかった。
【0008】
そこで本発明は、被写体のホワイトバランスを合わせることを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、この目的を達成するために本発明は、本体ケースと、この本体ケースの前方側に装着した口腔内挿入部と、この口腔内挿入部の前方側開口に配置した、光学的に被写体をとらえる撮像窓と、この撮像窓に光学的に連結したレンズ部と、このレンズ部からの光学的な被写体情報を取り込む撮像部と、この撮像部に対して、被写体のホワイトバランスを設定するホワイトバランス制御部と、前記被写体を照明する照明部と、を備え、前記照明部の照度を制御する照明制御部と、前記撮像部からの被写体情報の明るさ検出手段と、を設けるとともに、前記ホワイトバランス制御部は、前記照明制御部が、前記照明部からの被写体の照度を変化させた時の、前記明るさ検出手段が検出する被写体情報の明るさの変化量から、ホワイトバランスを設定する構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明は、本体ケースと、この本体ケースの前方側に装着した口腔内挿入部と、この口腔内挿入部の前方側開口に配置した、光学的に被写体をとらえる撮像窓と、この撮像窓に光学的に連結したレンズ部と、このレンズ部からの光学的な被写体情報を取り込む撮像部と、この撮像部に対して、被写体のホワイトバランスを設定するホワイトバランス制御部と、前記被写体を照明する照明部と、を備え、前記照明部の照度を制御する照明制御部と、前記撮像部からの被写体情報の明るさ検出手段と、を設けるとともに、前記ホワイトバランス制御部は、前記照明制御部が、前記照明部からの被写体の照度を変化させた時の、前記明るさ検出手段が検出する被写体情報の明るさの変化量から、ホワイトバランスを設定する構成としたものであるので、被写体のホワイトバランスを合わせることができる。
【0011】
すなわち、本発明においては、前記ホワイトバランス制御部は、前記照明制御部が、前記照明部からの被写体の照度を変化させた時の、前記明るさ検出手段が検出する被写体情報の明るさの変化量の大きさを判定し、この変化量の大きさによって、照明部の照度が被写体に対する影響度合いを推定することが可能となり、この照明の影響度合いに応じたホワイトバランスの設定が可能となるので、被写体のホワイトバランスを合わせることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の斜視図
【図2】その断面図
【図3】その分解斜視図
【図4】その鏡筒部分の断面図
【図5】その口腔内挿入部の下面図
【図6】その機能ブロック図
【図7】その制御フローチャート
【図8】その制御フローチャート
【図9】その制御タイミング図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
【0014】
図1において、1は、ほぼ円筒状の本体ケースで、この本体ケース1の後端側には電源および信号用のコード2が接続されている。
また、この本体ケース1の前方側には、口腔内挿入部3が装着され、この口腔内挿入部3内には、図2、図3で示す鏡筒4が設けられている。
この鏡筒4は、図3、図4に示すように、前方側開口4aから後方側開口4bに向けて、その開口径が段階的に大きくなる構成とし、この鏡筒4内にはレンズ群で構成されたレンズ部が構成されており、図4で示すごとく、レンズ部として、4群のレンズG1からG4が配置されている。
【0015】
具体的には、鏡筒4の後方側開口4bから、まず、1群目のレンズ群G1を入れ、図4のごとく、鏡筒4の前方側開口4a部分まで押し込み、この部分でレンズ群G1の外周を鏡筒4の内面に当接させ、この状態で位置決めを行う。
【0016】
続いて、鏡筒4の後方側開口4bから、スペーサ筒5をレンズ群G1まで押し込み、この状態で位置決めを行う。
【0017】
次に、鏡筒4の後方側開口4bから、2群目、3群目のレンズ群G2、G3を入れ、図4のごとく、スペーサ筒5まで押し込み、この状態で位置決めを行う。
【0018】
次に、鏡筒4の後方側開口4bから、スペーサ筒6をレンズ群G3まで押し込み、この状態で位置決めを行う。
【0019】
次に、鏡筒4の後方側開口4bから、4群目のレンズ群G4を入れ、図4のごとく、スペーサ筒6まで押し込み、この状態で位置決めを行う。
【0020】
次に、鏡筒4の後方側開口4bから、スペーサ筒7をレンズ群G4まで押し込み、この状態で位置決めを行う。
【0021】
さて、前記鏡筒4の前方側開口4aに、光学的に対応する前記口腔内挿入部3の下面部分には撮像窓3aを設けており、この撮像窓3aと鏡筒4の前方側開口4aの間には、プリズム8が設けられている。
【0022】
また、撮像窓3aは、図5に示すごとく、四角形をしており、対向する前後辺には、それぞれ二つの照明素子9が配置されている。一方、前記鏡筒4の後方側開口4bには、図3で示すフォーカスユニット10が光学的に連結されている。
【0023】
以上の構成において、口腔内の画像を取得する場合は、図1に示す口腔内挿入部3を口腔内に挿入し、その状態で、照明素子9により撮像部位の照明を行う。この時、撮像窓3aから得られる映像は、プリズム8、レンズ群G1、G2、G3、G4および、鏡筒4外に設けた図4に示す5群目、6群目のレンズ群G5、G6を介して、撮像部10bへと送られ、その後、コード2を介して、モニタに映し出される。
【0024】
そして、このモニタを見ながら希望する撮像部位を見つけ出したときには、図1に示す撮像ボタン11を押せば、その時の画像は静止画としてモニタ内のメモリに記録される。
【0025】
さて、この状態において、本実施形態においては、照明素子9を撮像窓3aに配置したので、つまり、撮像部分の近傍に照明素子9を配置したので、この照明素子9からの照明を大きくしなくても、十分にクリアな画像を取得することができる。
【0026】
したがって、この撮像部分の温度を異常に高めることはない。
【0027】
また、本実施形態においては、この撮像窓3a部分の近傍に鏡筒4の前方側開口4aが配置するとともに、この鏡筒4は、金属により構成している。
このため、この撮像窓3a部分の熱は鏡筒4の前方側開口4aから後方側開口4bへと効果的に伝熱させることができ、この結果としても、撮像窓3a部分の温度上昇を抑制することができる。
【0028】
つまり、この撮影時において、撮像窓3a部分が口腔内の皮膚や歯に当接しても異常な高温を感じさせることはなく、快適な撮影作業が実行できることとなる。
【0029】
また、鏡筒4を金属で形成すれば、その加工精度を高めることができるので、レンズ群G1からG4までを、この鏡筒4内の所定場所に適切に配置することができる。
【0030】
さらに、このような、レンズ群G1からG4までの適切配置を行うために、スペーサ筒5、6、7も加工精度が出しやすい金属製としている。ただし、これらのスペーサ筒5、6、7は、少なくとも、その内面側には黒色系被膜を設けることで、光の不要な反射を防止するようにしている。
【0031】
次に、フォーカス制御の構成について説明をする。
【0032】
図面としては、再び図1に戻って説明する。
【0033】
図1の本体ケース1の前方部分(図1の左部分)は、口腔内に挿入するために本体ケース1の後方部分に比べて小径の円筒形状をしている。この本体ケース1の前方部分を口腔内挿入部3としている。
【0034】
図2に示すごとく、この本体ケース1の前方部分である口腔内挿入部3内は、撮像窓3aと、プリズム8と、鏡筒4内に設けられたレンズ群G1、G2、G3、G4によって構成されており、撮像窓3aから得られる映像が、プリズム8を経て、鏡筒4内に設けられたレンズ群G1、G2、G3、G4を通過するように配置されている。
【0035】
次に、本体ケース1の後方部分には、レンズ群G1、G2、G3、G4に光学的に接続されたフォーカスユニット10が配置されている。このフォーカスユニット10の構成を更に詳細に説明すると、図3に示すごとく、フォーカスユニット10は、その前方側より、フォーカスレンズ部10aと、その後方に配置された撮像部10bにより構成されている。
【0036】
まず、フォーカスレンズ部10aは、フォーカスレンズカバー保持具13と、フォーカスレンズ前カバー14と、レンズ群G5、G6と、このレンズ群G5、G6を駆動するための駆動モーター15、その可動部16と第1のガイドポール17と、第2のガイドポール18と、フォーカスレンズ後ろカバー19と、で構成されている。
【0037】
これらフォーカスレンズ部10aの構成要素の作用を説明すると、鏡筒4内に設けられたレンズ群G1、G2、G3、G4を通過した映像は、レンズ群G5、G6に送られるが、これら5群目、6群目のレンズ群G5、G6は、2枚で1組の接合レンズとなっており、この接合レンズとしての働きは、映像の色収差を補正するものであるが、本実施の形態においては、被写体との距離に対して、焦点距離を自動調整できるように光軸方向に可動なフォーカスレンズとしての構成となっている。
【0038】
このフォーカスレンズとしての動作について説明すると、レンズ群G5、G6よりなる接合レンズは、可動部16によって保持されており、この可動部16には、第1のガイドポール17と第2のガイドポール18が摺動自在に挿入されている。
駆動モーター15の回転運動は、リードスクリュー15aによって、可動部16の内方のギア(図示していないが)に係合しており、駆動モーター15の回転方向に応じて、可動部16は、光軸方向に前後に可動することとなる。
また、第1のガイドポール17と第2のガイドポール18は、明るさを調節する絞り20とともに、フォーカスレンズ前カバー14とフォーカスレンズ後ろカバー19の間に挟持、固定されている。
さらに、連結されたフォーカスレンズ前カバー14、フォーカスレンズ後ろカバー19は、フォーカスレンズカバー保持具13によって本体ケース1と、鏡筒4に固定されている。
【0039】
また、レンズ群G5、G6を通過した映像は、さらに後方の撮像素子12に送られることとなる。
【0040】
このような構成において、口腔内カメラ本体内に設けられた制御部(図6の22)は、撮像素子12より得られた電気的な映像の被写体に対する焦点距離が合うように、駆動モーター15を制御しながら、レンズ群G5、G6を光軸方向に対して位置決めを行って、焦点距離の自動調整を行うことが可能となるので、口腔内カメラにおいて、被写体である歯の撮像部位と撮像窓3aとの被写体距離を自由に調整することが可能になり、利便性が高くなるのである。
【0041】
通常固定焦点レンズで最至近(接写)から無限大まで光学性能を維持することは、接写によって焦点位置の変動が大きく、光学性能の変動が大きいために難しいとされていて、特に広角ではない標準画角のレンズ系では尚更である。
【0042】
本実施の形態では、35mm換算焦点距離が40mm程度の標準画角のレンズ系であるにも関わらず、オートフォーカス機能を導入することが可能となったが、この理由は、口腔内挿入部3の後方のフォーカスユニット10内にフォーカスレンズ部10aを置いて、最至近時に物体側へレンズ群を前方繰出しする構成とすることによって、像面特性を改善し、物体距離が0mmから無限大までオートフォーカスが可能なオートフォーカス機能を実現している。
【0043】
さらには、上記の構成においては、口腔内カメラ前方側部分に、小径の鏡筒4を設け、鏡筒4内に固定レンズ群を配置し、この鏡筒4の後方側にオートフォーカス部を設けた配置になるので、口腔内カメラの口腔内挿入部3を小径に設計可能になるので、口腔内カメラの小型化が可能になる。
【0044】
以上の説明で本実施形態における、基本的な構成及び作用が理解されたところで、以下、本実施形態における特徴点について説明をする。
【0045】
上述したように、本実施形態における照明素子9は、撮影時に十分な照度を得るために、撮像窓3aの近傍に配置しているので、例えば、被写体として口腔内の歯を近接撮影する場合においては、撮像窓3aから撮像部10bに取り込まれる口腔内の歯の撮像情報は、照明素子9の光の影響を大きく受けることになる。
【0046】
このような場合においては、撮像部10bで設定するホワイトバランスは、照明素子9の光に対して、所望の色温度になるような設定が適切なホワイトバランスの設定に必要となってくる。
【0047】
しかしながら、撮像部位が、口腔内ではなく、口腔外から前歯、もしくは、顔全体を写す場合などは、照明素子9の光に比べて、周辺光である、部屋の照明、もしくは、歯科医で用いられる所定の照明器具である、ハロゲン照明、キセノン照明などからの光の影響を撮像映像が受けるようになり、その結果、照明素子9の光を基準としたホワイトバランスの設定では、撮像部位の映像を所望の色あいで見ることができなくなってしまう。
【0048】
特に、歯の映像においては、白さを正確に観察したい場合が多いので、歯科用の口腔内カメラにおいては、撮影環境に応じた、適切なホワイトバランスを設定することが重要となっている。
【0049】
このような課題において、照明光に応じた、ホワイトバランスの制御方法、および、その口腔内カメラについて、以下、その構成と特徴点について説明する。
【0050】
図6に、本実施形態における口腔内カメラの機能ブロック図を示す。
【0051】
本体ケース1の前方側に装着した口腔内挿入部3の前方側には、光学的に被写体をとらえる撮像窓3aがあり、この撮像窓3aから取り込まれた光学的な被写体情報は、撮像窓3aに光学的に連結したレンズ部21に取り込まれる。このレンズ部21は、撮像窓3aから取り込まれた被写体情報に対して、集光、結像、絞り、フォーカス等の光学的な変換を行う6つのレンズ群G1、G2、G3、G4、G5、G6によって構成されている。
【0052】
このレンズ部21において光学的に変換された被写体情報は、撮像部10bに取り込まれ、撮像部10b内に配置された撮像素子12で電気的な映像信号に変換される。この撮像部10bからの映像信号に対して、制御部22は、被写体のフォーカスが合うようにフォーカスユニット10内のフォーカスレンズ部10aを駆動し、位置を制御する。
この、制御部22は、被写体距離検出手段として、このフォーカスレンズ部10a位置を検出することで、撮像窓3aから被写体までの被写体距離の検出を行う。
【0053】
また、制御部22は、レンズ部21内に配置された絞り20を調整して、レンズ部の光学的な明るさを調整している。
【0054】
さらには、制御部22は、レンズ部21から撮像部10bに入ってくる光学的な映像信号の入力時間を調整することで、シャッタースピードの調整を行うことが可能となる。
【0055】
このように制御部22では、被写体情報の明るさ検出手段として、レンズ部21に配置された絞り20に対する絞り値と、このシャッタースピードと、ISO感度との関係から、被写体情報の明るさとしてEV値を算出することが可能となる。この被写体情報の明るさ検出手段としては、EV値を用いても良いが、撮像部10bからの映像信号の明るさを直接解析し、その明るさ情報を判定に用いる方法もある。
【0056】
次に、照明素子9より構成される照明部23では、被写体に照明を与え、照明制御部24は、照明部23の明るさを調整することができる構成となっている。
【0057】
以上の構成において、ホワイトバランス制御部25では、撮像部10bに取り込まれた電気的な映像信号の色あいを合わせる制御を行うのであるが、この具体的な制御については、図7、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0058】
図7におけるホワイトバランスの制御方法においては、S1のステップで、EV値を取り込む。このときのEV値は、照明部23の照明が、ほぼ100%の明るさになっている状態である。
【0059】
次に、S2のステップにおいて、ホワイトバランス制御部25は、照明部23の照明状態を、照明制御部24によって、ほぼ70%の状態に設定する。次に、この状態で、EV値を取得するのであるが、新たなEV値を取得できるように、照明状態を安定する時間として、10フィールド分の時間をS3ステップにおいて取る。この後、S4ステップでEV値を取得し、S5ステップにおいてEV値の変化量を判定する。この変化量が所定の値以下であれば、照明の影響が少ないと判断し、S6ステップにおいて、ホワイトバランスモードを口腔外モードに切り替えて、S7ステップで照明部23の照度を、照明制御部24が100%になるように設定する。
【0060】
以上のホワイトバランスの制御方法を実施することで、照明制御部24が、照明部23からの被写体の照度を変化させた時の、制御部22が検出する被写体のEV値の変化量の大きさを判定し、この変化量の大きさによって、照明部23の照度が被写体に対する影響度合いを推定することが可能となり、この照明の影響度合いに応じたホワイトバランスの設定が可能となるので、照明の状態に適合した被写体のホワイトバランスを合わせることができる。
【0061】
次に被写体距離をさらに用いたホワイトバランス制御方法のフローチャートを図8に示す。
【0062】
図8に示すホワイトバランスの制御フローでは、上述したような被写体のEV値の変化量からホワイトバランスの設定を判断するだけでなく、撮像窓3aと被写体との距離も判定情報としている。
【0063】
まず、S01では、この被写体との距離が60cm以上離れているかどうかを判定し、この判定結果が真、すなわち、被写体が遠方に位置している場合は、照明の影響を受けにくいと判断して、S02のステップで、EV値を取り込む。このときのEV値は、照明部23の照明が、ほぼ100%の明るさになっている状態である。
【0064】
次に、S03のステップにおいて、この照明部23の照明状態を、照明制御部24によって、ほぼ70%の状態に設定する。次に、この状態で、EV値を取得するのであるが、新たなEV値を取得できるように、照明状態を安定する時間として、10フィールド分の時間をS04ステップにおいて取る。この後、S05ステップでEV値を取得し、S06ステップにおいてEV値の変化量を判定する。この変化量が所定の値以下であれば、照明の影響が少ないと判断し、S07ステップにおいて、ホワイトバランスモードを口腔外モードに切り替えて、S08ステップで照明部23の照度を、照明制御部24が100%になるように設定する。
【0065】
このようなホワイトバランスの制御方法を実施することで、被写体のEV値だけではなく、さらに、撮像窓3aから被写体までの被写体距離が所定の距離以上であるかどうかを判定に加えるので、照明部23の照度が被写体に対する影響度合いの推定が、さらに確実に行われるので、より確実にホワイトバランスを合わせることができることとなる。
【0066】
さらに、ホワイトバランスを口腔外モードの設定としては、照明部23が被写体を照らす割合を段階的に設定し、この段階的な照度の割合それぞれに対して、所定のホワイトバランス値となるように、それぞれの照度の割合に対応した複数のホワイトバランスの値を設定しても良い。
【0067】
さらには、ホワイトバランスの設定をする口腔外モードの設定としては、歯科医で所定の照明器具として用いられるハロゲン照明(色温度:3900K)、キセノン照明(色温度:4500K)の特定の色温度の照明に対応したホワイトバランスの設定にしても良い。
【0068】
このような、ホワイトバランスの設定にすることで、より撮影環境に適合したホワイトバランスの設定が可能となる。
具体的には、本実施の形態で用いられる装置に配置された照明素子9の色温度が、ほぼ4000Kとなっているので、色温度にしてほぼ500K前後の補正が可能となるのである。
【0069】
図9に本実施の形態におけるホワイトバランス制御のタイミングを示す。
【0070】
実線で表されるのは被写体の信号からの被写体EV値27である。ホワイトバランスの設定を行う判定としては、照明の照度を100%から70%程度に下げた場合の、被写体EV値のΔEV28の大きさを判定して行うが、この照度を100%から70%へ変更するタイミングが、あまり速くなりすぎると、被写体EV値27が正確に計測できないために、この照度の変更には、安定待ち時間として約0.2秒程度の時間で変化させている。このような時間で制御を行うことで、使用者は、表示される映像に違和感なく適切なホワイトバランスでの映像を、ほぼリアルタイムに観察することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
以上のように本発明は、本体ケースと、この本体ケースの前方側に装着した口腔内挿入部と、この口腔内挿入部の前方側開口に配置した、光学的に被写体をとらえる撮像窓と、この撮像窓に光学的に連結したレンズ部と、このレンズ部からの光学的な被写体情報を取り込む撮像部と、この撮像部に対して、被写体のホワイトバランスを設定するホワイトバランス制御部と、前記被写体を照明する照明部と、を備え、前記照明部の照度を制御する照明制御部と、前記撮像部からの被写体情報の明るさ検出手段と、を設けるとともに、前記ホワイトバランス制御部は、前記照明制御部が、前記照明部からの被写体の照度を変化させた時の、前記明るさ検出手段が検出する被写体情報の明るさの変化量から、ホワイトバランスを設定する構成としたものであるので、被写体のホワイトバランスを合わせることができる。
【0072】
すなわち、本発明においては、前記ホワイトバランス制御部は、前記照明制御部が、前記照明部からの被写体の照度を変化させた時の、前記明るさ検出手段が検出する被写体情報の明るさの変化量の大きさを判定し、この変化量の大きさによって、照明部の照度が被写体に対する影響度合いを推定することが可能となり、この照明の影響度合いに応じたホワイトバランスの設定が可能となるので、被写体のホワイトバランスを合わせることができるのである。
【0073】
したがって、口腔内カメラとして、広く活用が期待されるものである。
【符号の説明】
【0074】
1 本体ケース
2 コード
3 口腔内挿入部
3a 撮像窓
4 鏡筒
4a 前方側開口
4b 後方側開口
5 スペーサ筒
6 スペーサ筒
7 スペーサ筒
8 プリズム
9 照明素子
10 フォーカスユニット
10a フォーカスレンズ部
10b 撮像部
11 撮像ボタン
12 撮像素子
13 フォーカスレンズカバー保持具
14 フォーカスレンズ前カバー
15 駆動モーター
16 可動部
17 第1のガイドポール
18 第2のガイドポール
19 フォーカスレンズ後ろカバー
20 絞り
21 レンズ部
22 制御部
23 照明部
24 照明制御部
25 ホワイトバランス制御部
27 被写体EV値
28 ΔEV
G1 レンズ群
G2 レンズ群
G3 レンズ群
G4 レンズ群
G5 レンズ群
G6 レンズ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体ケースと、この本体ケースの前方側に装着した口腔内挿入部と、
この口腔内挿入部の前方側開口に配置した、光学的に被写体をとらえる撮像窓と、
この撮像窓に光学的に連結したレンズ部と、
このレンズ部からの光学的な被写体情報を取り込む撮像部と、
この撮像部に対して、被写体のホワイトバランスを設定するホワイトバランス制御部と、
前記被写体を照明する照明部と、を備え、
前記照明部の照度を制御する照明制御部と、
前記撮像部からの被写体情報の明るさ検出手段と、を設けるとともに、
前記ホワイトバランス制御部は、前記照明制御部が、前記照明部からの被写体の照度を変化させた時の、前記明るさ検出手段が検出する被写体情報の明るさの変化量から、ホワイトバランスを設定する構成とした口腔内カメラ。
【請求項2】
前記レンズ部の絞りと、前記撮像部のシャッタースピードと、を制御する制御部を有し、
前記被写体情報の明るさ検出手段は、前記制御部が制御する前記レンズ部の絞りと、前記撮像部のシャッタースピードより被写体情報の明るさを検出する構成とした請求項1に記載の口腔内カメラ。
【請求項3】
前記撮像窓から被写体までの被写体距離を計測する手段を有し、
前記ホワイトバランス制御部は、前記照明制御部が、前記照明部からの被写体の照度を変化させた時の、前記明るさ検出手段が検出する被写体情報の明るさの変化量と、前記被写体距離計測部からの被写体距離と、から、ホワイトバランスを設定する構成とした請求項1または2に記載の口腔内カメラ。
【請求項4】
前記ホワイトバランス制御部が行うホワイトバランスの設定は、前記照明部が被写体を所定の照度で照明した場合のホワイトバランスが、所定のホワイトバランス値となるように設定した請求項1から3のいずれか一つに記載の口腔内カメラ。
【請求項5】
前記ホワイトバランス制御部が行うホワイトバランスの設定は、ハロゲン光源で構成された照明が被写体を所定の照度で照明した場合のホワイトバランスが、所定のホワイトバランス値となるように設定した請求項1から4のいずれか一つに記載の口腔内カメラ。
【請求項6】
前記ホワイトバランス制御部が行うホワイトバランスの設定は、キセノン光源で構成された照明が被写体を所定の照度で照明した場合のホワイトバランスが、所定のホワイトバランス値となるように設定した請求項1から5のいずれか一つに記載の口腔内カメラ。
【請求項7】
前記明るさ検出手段が検出する被写体情報の明るさは、EV値である請求項1から6のいずれか一つに記載の口腔内カメラ。
【請求項8】
口腔内カメラ内の撮像部で被写体情報のホワイトバランスを制御する方法であって、
被写体を所定の照度で照らす第1の工程と、
撮像部に前記被写体情報を取り込む第2の工程と、
撮像部に取り込まれた被写体情報の明るさを検出する第3の工程と、
照度を、第1の工程での照度よりも所定の値低下させた照度で照らす第4の工程と、
撮像部に取り込まれた被写体情報の明るさを検出する第5の工程と、
第3の工程での被写体情報の明るさと、第5の工程での被写体情報の明るさの変化量からホワイトバランスを設定する第6の工程と、を備えたホワイトバランスの制御方法。
【請求項9】
前記第1の工程の前工程として、撮像窓から被写体までの被写体距離が所定の距離以上の場合に、前記第1の工程に移行するとした工程を加えた請求項8に記載のホワイトバランスの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−143131(P2011−143131A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7716(P2010−7716)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】