説明

可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機

【課題】可変ノズル機構を構成するドライブリングを揺動自在に支持するノズルマウントの重量軽減と製造コストの低減を図る。
【解決手段】可変ノズル機構のドライブリング3をノズルマウント5のガイド部5aにスラスト方向を保持して配設するために、ガイド部5aの端面に鍔部を備えたネイルピン20を設けると共に、ガイド部5aのスラスト方向幅をドライブリング3の幅より短く形成すると共に、ネイルピン20の鍔部とガイド部5aの端面との間に調整部材20cを介装してノズルマウント5の側面とネイルピン20の鍔部との間隔を調整するようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ターボ過給機に用いられ、複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機におけるドライブリングをノズルマウントに対し回動可能に保持する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関等に用いられる排気ターボ過給機に用いられ、複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機の一つとして、特開2010−19252号公報(特許文献1)の技術が提供されている。
【0003】
かかる技術においては、本願添付の図6(A)にタービンハウジング010を示し、図6(B)に(A)のP部の部分拡大図、図6(C)に(B)の部品分解図を示す。
可変ノズル機構0100は複数のガイドベーン(ノズルベーン)080が下方ベーンリング020と上方ベーンリング030との間に位置決めされる。ガイドベーン080は、タービン内に流れる排気量を制御するため回転可能に軸支されている。下方ベーンリング020と上方ベーンリング030との間の距離は、それらのあいだに位置決めされた段付スペーサ050によって維持される。上方及び、下方ベーンリング020,030はナット040及び、金属締結具042によってタービンハウジング010に取付けられている。
また、段付スペーサ050には、締結具042が通り抜けるために該段付スペーサ050の形成された中心貫通孔を有している。
【0004】
一方、特許4545068号(特許文献2)には、図7に示すように、可変容量型排気ターボ過給機について示され、ノズルマウント055のガイド部057の外周面上において、レバープレート(不図示、ドライブリング064の左側に配置)の側面と、ノズルマウント055の側面との間に、ドライブリング064を前記レバープレートおよびノズルマウント055との間に軸方向に並設した形態で配置し、前記ドライブリング064の外側面064aに当接可能にされて該ドライブリング064の軸方向移動つまりレバープレート側への抜出しを阻止するために鍔部を有した鋲(ネイルピン)066をノズルマウント055の側部に固定する構造が示されている。
なお、図7において、ノズルベーン068は、ノズルマウント055と環状の支持プレート070との間に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−19252号公報
【特許文献2】特許4545068号(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示の段付きスペーサ050は、締結具042が通り抜けるために中心貫通孔を有し、さらに、この段付きスペーサ050は、複数のガイドベーン(ノズルベーン)080が配設される下方ベーンリング020と上方ベーンリング030との間の距離を維持するものである。
このように、特許文献1には、段付きスペーサ050を位置決めとして用いる技術が示されているが、ノズルベーンの開度を変化させるためのドライブリングを、ノズルマウントのガイド部に嵌合してそのドライブリングのスラスト方向の位置決めとして用いる技術については開示されていない。
【0007】
また、特許文献2に開示されているドライブリング064の外側面064aに当接可能なネイルピン066による固定構造においては、ノズルマウント055のガイド部057は、ドライブリング064を載置するためその幅だけスペースを確保する必要があり、ノズルマウント055の軸方向幅が大きくならざるを得ず、ノズルマウント055の大型化、重量増大、さらにプレス成型による製造が困難となる問題があった。さらに、前記ノズルマウント055のガイド部057の幅寸法は、ドライブリング064の幅寸法と関係で高い精度で機械加工する必要があることから、加工工数の増大を招く問題もあった。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、ドライブリングをノズルマウントのガイド部にスラスト方向を保持して配設するため、ガイド部の端面にスラスト方向に沿って穿設された圧入孔にドライブリングの側面と対向する鍔部を備えたピンを圧入すると共に、該鍔部と前記端面との間にノズルマウントのスラスト方向の調整部材(スペース部材)を配設するようにして、ノズルマウントの重量軽減と製造コストの低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はかかる課題を解決するため、エンジンの排気ガスにより駆動される可変容量型排気ターボ過給機のタービンケーシングを含むケースに固定されたノズルマウントに回動可能に支持される複数のノズルベーンと、アクチュエータに連動され前記ノズルマウントの中央部に軸線方向に突出した環状のガイド部に嵌合するドライブリングと、一端側を前記ドライブリングに設けた溝部に連結ピン部を介して嵌合し、他端側を前記ノズルベーンに連結したレバープレートと、前記ドライブリングを前記ガイド部のスラスト方向に保持するため、前記ガイド部の端面に前記スラスト方向に沿って穿設された圧入孔に前記ドライブリングの側面と対向する鍔部を備えた圧入ピンと、 前記ガイド部のスラスト方向幅を前記ドライブリングの幅より短く形成すると共に、前記圧入ピンの鍔部と前記ガイド部の端面との間に配設される調整部材と、を備え、前記調整部材によって、前記ドライブリンクを挟持する前記ノズルマウントの側面と前記圧入ピンの鍔部との間隔が調整されることを特徴とする。
【0010】
かかる発明によれば、ノズルマウントのガイド部のスラスト方向厚さを小さくして、ガイド部とドライブリングのスラスト方向の振れを規制する鍔部との間にスラスト方向の調整部材を介装することにより、ドライブリングのスラスト方向に適正隙間量を形成することが可能になる。
従って、ガイド部のスラスト方向長さが調整部材の厚さ(ガイド部のスラスト方向)分短くできるので、重量が軽減できると共に、素材費用も軽減できる。
さらに、ノズルマウントのガイド部のスラスト方向厚さを短くすることで、ガイド部を含めたノズルマウントのスラスト方向厚さを薄くすることができ、製造においてプレス加工による製造が可能になるため、製造コストを低減できる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、前記調整部材は前記鍔部に一体的に形成された前記圧入ピンであるとよい。
このように、圧入ピンと一体に調整部材を形成することによって、調整部材の組み付け作業の容易化、さらに調整部材の製造の容易化が達成できる。
【0012】
また、本発明において好ましくは、調整部材は環状形状からなり、前記圧入ピンとは別部材で形成されとよい。
このような構成により、調整部材だけ別に形成できるため、調整部材の厚みを精度よく加工できる。
【発明の効果】
【0013】
ガイド部のスラスト方向幅を前記ドライブリングの幅より短く形成すると共に、前記圧入ピンの鍔部と前記ガイド部の端面との間に配設される調整部材と、を備え、前記調整部材によって、前記ドライブリンクを挟持する前記ノズルマウントの側面と前記圧入ピンの鍔部との間隔が調整されるように構成するので、ガイド部におけるドライブリングのスラスト方向の隙間量は調整部材によって、対応可能なり、ガイド部のスラスト方向長さを、エンドミル加工等によって精度よく製作するのに比べ、製造コストの低減が可能となる。
【0014】
また、ノズルマウントのスラスト方向長さが調整部材の厚さ(ガイド部のスラスト方向)分短くできるので、重量が軽減できると共に、素材費用も軽減できる。さらに、ノズルマウントのガイド部のスラスト方向厚さを短くすることで、ガイド部を含めたノズルマウントのスラスト方向厚さを薄くすることができ、製造においてプレス加工による製造が可能になるため、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機の要部縦断面図を示す。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる可変ノズル機構を示し、(A)はレバープレート側から視た正面図、(B)は(A)におけるA−A断面図である。
【図3】図2のB−B断面で本発明の第1実施形態にかかるノズルマウントにネイルピンを圧入した部分の拡大断面図、(B)はノズルマウント側の圧入孔拡大図、(C)はネイルピンの概略図を示す。
【図4】(A)は本発明の第2実施形態にかかるノズルマウントにネイルピンを圧入した部分の拡大断面図、(B)はノズルマウント側の圧入孔拡大図、(C)はネイルピンの概略図を示す。
【図5】第3実施形態にかかるネイルピンの概略形状図を示す。
【図6】従来技術の説明図で、図6(A)にタービンハウジング010を示し、図6(B)に(A)のP部の部分拡大図、図6(C)に(B)の部品分解図を示す。
【図7】従来技術の説明である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。
但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0017】
(第1実施形態)
図1は本発明にかかる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機の要部縦断面図である。
図1において、30はタービンケーシング、38は該タービンケーシング30の外周部に渦巻状に形成されたスクロール部である。34はラジアル流型のタービンロータ、35はコンプレッサ、32は該タービンロータ34とコンプレッサ35とを連結するタービンシャフト、31はコンプレッサハウジング、36は軸受ハウジングである。
該タービンロータ34とコンプレッサ35とを連結するタービンシャフト32は、2個の軸受37,37を介して軸受ハウジング36に回転自在に支持されている。8は排ガス出口、CLは該排気ターボ過給機の回転軸心である。
【0018】
2はノズルベーンで、前記スクロール部38の内周側にタービンの円周方向等間隔に複数枚配設されると共に、これらの翼端部に形成されたノズル軸2aが前記タービンケーシング30に固定されたノズルマウント5に回動可能に支持されている。
ノズル軸2aの前記翼端部の反対側にはノズル軸2aを回転させてノズルベーン2の翼角を変化させるレバープレート1がドライブリング3に連結ピン10を介して連結されている。
33はアクチュエータ(図示省略)からの往復運動を伝えるアクチュエータロッドで、該アクチュエータロッド33の往復運動(図面に対し略直角方向に往復運動)を回転軸15aによって回転運動に変換し、該回転運動を回転軸15aに固着されたレバー15bの他端部に配置の駆動ピン15cにてドライブリング3を回転駆動する駆動機構39である。
一点差線で囲んだ部分100は前記ノズルベーン2の翼角を変化せしめる可変ノズル機構の一部分である。
【0019】
図1のように構成された可変ノズル機構付き可変容量型排気ターボ過給機の運転時において、内燃機関(図示省略)からの排ガスは前記スクロール部38に入り、該スクロール38部の渦巻きに沿って、周回しながらノズルベーン2に流入する。そして、排ガスは前記ノズルベーン2の翼間を流過して前記タービンロータ34にその外周側から流入し、中心側に向かい半径方向に流れて該タービンロータ34に膨張仕事をした後、軸方向に流出して排ガス出口8に案内されて機外に送出される。
【0020】
かかる可変容量タービンの容量を制御するにあたっては、前記アクチュエータに対し、前記ノズルベーン2を流れる排ガスの流量が所要の流量になるような該ノズルベーン2の翼角を、翼角制御手段(図示省略)により設定する。かかる翼角に対するアクチュエータの往復変位は駆動機構39を介してドライブリング3に伝達され、該ドライブリング3が回転駆動される。
該ドライブリング3の回転により、後述する連結ピン10を介してレバープレート1が前記ノズル軸2a廻りに回動せしめられ、該ノズル軸2aの回動によりノズルベーン2が回動してアクチュエータによって設定された翼角に変化せしめられる。
【0021】
図2は可変ノズル機構を示し、(A)はレバープレート1側から視た正面図、(B)は(A)におけるA−A断面図である。
100は前記ノズルベーン2の翼角を変化せしめる可変ノズル機構で、次のように構成されている。
3は円盤状に形成されたドライブリングで、ノズルマウント5の軸心CL(排気ターボ過給機の回転軸心に同じ)方向に突出した円筒状のガイド部5a〔図2(B)参照〕に外嵌して回転可能に支持されると共に、後述する連結ピン部10が係合される溝3yが円周方向等間隔に形成されている。3zは前記駆動機構39のアクチュエータロッド33が係合する駆動溝である。
【0022】
1はレバープレートで前記ドライブリング3の溝3yと同数が円周方向等間隔に設置されている。各レバープレート1の外周側には連結ピン部10が形成され、内周側には前記ノズルベーンのノズル軸2aが固定されている。
6は環状に形成されたノズルプレート、61は該ノズルプレート6と前記ノズルマウント5とを連結する複数のノズルサポートである。
【0023】
可変ノズル機構においては、図2(B)のように、レバープレート1を軸方向内側(図1におけるコンプレッサハウジング31側)に配置し、該レバープレート1の側面とノズルマウント5の側面との間に、ドライブリング3を前記レバープレート1及びノズルマウント5と軸方向に併設した形態で配設している。
連結ピン部10は、各レバープレート1の一側面をプレス機械によって加圧され、該一側面側に矩形状の凹部10aを形成すると共に、反対側の側面を矩形状に突出させる押出し成形によって母材と一体で形成される。
【0024】
このように構成された可変ノズル機構100のドライブリング3は、ノズルマウント5とネイルピン20の鍔部20aの間及び、ドライブリング3の内周面とガイド部5aの外周面の間夫々が適正な隙間を有して保持される必要がある。
該隙間が規定値より大きい場合、ドライブリング3はノズルマウント5の軸心方向に振れるため、ガイド部5aとドライブリング3の摺動面のスラスト方向端部が片あたり(片側接触)となり固着の原因になる。
一方、隙間が規定値より小さい場合、ノズルマウント5との摺動抵抗が大きくなり、摺動部の固着の原因になる。
その固着を防止するために、ノズルマウント5とドライブリング3のスラスト方向の隙間L8〔図3(B)参照〕を適性量に確保するために、ガイド部5aの端面の外周端縁部にスラスト方向に穿設された圧入孔5bに、鍔部20aを有したピンいわゆるネイルピン20を圧入して、該隙間を該鍔によって適正に維持するようになっている。
【0025】
図3は図2のB−B断面で本発明の第1実施形態にかかるノズルマウント5にネイルピンを圧入した部分の拡大断面図、(B)はノズルマウント側の圧入孔拡大図、(C)は(B)の圧入孔に圧入されるネイルピンの概略図を示す。
ガイド部5aの端面にはドライブリング3が回動するときにノズルマウント5の軸心CL方向に振れるのを防止する鍔部20aを有したネイルピン20がピン圧入孔5bに圧入されている。
図3(A)において、ノズルマウント5の軸心CL方向に突出した円筒状のガイド部5aに円板状のドライブリング3がラジアル方向に若干の隙間L7を有して外嵌している。
ガイド部5aの長さL1(突出量)は、ノズルマウント5のドライブリング3が接触する接触部5cからガイド部5aの端面までが当該部に外嵌するドライブリング3の板厚T2相当より小さい長さになっている。
ノズルマウント5は、該ノズルマウント5の厚さT1(スラスト方向)をプレス加工可能な最大厚さにすることにより加工コスト及び、重量の低減を図ったためである。
ノズルマウント5の厚さT1は、プレス加工による精度向上によってノズルマウント5に圧入するネイルピン20、ノズルベーン2の翼角の全閉位置を規定するため揺動するレバープレート1の揺動量を規制するストッパピン(図示省略)の直角度、圧入による固着強度を維持している。
【0026】
図3(B)は圧入孔5bの詳細図、(C)は圧入されるピンであるネイルピン20を示している。圧入孔5bはガイド部5aの端面の外周端縁部に周方向へ等間隔で且つ、ノズルマウント5の軸心CLに沿った方向に複数穿設されている。
圧入孔5bは孔の軸心に沿って孔径が2段階に変化しており、ネイルピン20の挿入口
側(L4の範囲)がΦ1、続いてその奥(L3−L4)の範囲がΦ2の径になっており、Φ1>Φ2の関係になっている。
孔径Φ1の長さL4の範囲は接触部5cから奥側(図面上において接触部5cより左側位置)からガイド部5aの端面となっている。
【0027】
ネイルピン20は、圧入孔5bに圧入されるピン部20bと、鍔部20aと、ドライブリング3と鍔部20aとの適正隙間L8を形成する調整部材である段部20cと、鍔部20aのピン部20bと反対側に突出した突出部20dとを備えている。
ネイルピン20は、段部20cを一体的に形成している。
この段部20cのスラスト方向厚さL5によって適正量の隙間L8が形成される。
孔径Φ2はネイルピン20の先端部の径φ3より小さく、該孔径Φ2と径φ3とは圧入
嵌合の寸法関係に形成され、ピン先端部が孔径Φ2に圧入される長さL9(圧入代)は該ネイルピン20がドライブリング3の作動によって容易に圧入孔5bから抜けないような固着力を有する長さになっている。
また、段部20cの外径φ4の外周面は、ネイルピン20を圧入孔5bに圧入した時に、ガイド部5aの外周面からラジアル方向に突出しないようになっている。
【0028】
尚、突出部20dはネイルピン20を圧入孔5bに圧入する際に、圧入工具を当接させる部分である。該突出部20dを削除すると、圧入の際、ピン部20bに作用する圧入力によりピン部20bが変形し、該変形に伴い鍔部20aが変形するので、変形を防止して組付け容易化を可能にするものである。
また、圧入孔5bにネイルピン20を圧入した時に、該ネイルピン20の鍔部20aとドライブリング3との適正隙間L8が確保されるようにガイド部5aの高さL1と段部20cの厚さL5は設定されている。
更に、ドライブリング3の摺動面幅(T2)が位置する部分は、ネイルピン20とピン圧入孔5bのL1部分には空間部5eが形成されている。
従って、ノズルマウント5の圧入孔5bのドライブリング3側部分は肉厚が薄く剛性が低いにも係わらず、ネイルピン20の圧入による当該部の外方への膨出を防止できる。
但し、この実施形態の中では、空間部5eは無くても問題無い。
【0029】
ノズルマウント5の接触部5cとガイド部5aの連続部にはドライブリング3の摺動面幅(T2)の端縁がガイド部5aに確実に接触するように逃げRを設けてある。
これはドライブリング3の摺動面がガイド部5aに全域にわたって接するようにすることにより、ドライブリング3の回動時にスラスト方向の触れを少なくすることで、ドライブリング3の摺動面幅の端縁とガイド部5aとの固着を防止するものである。
また、側面の逃げRの外周側にはドライブリング3のラジアル方向側面が接触する円板状の接触部5cが形成されている。これは、ノズルマウント5の側面とドライブリング3のラジアル方向側面との摩擦抵抗を軽減させ、ドライブリング3の回動を円滑にするものである。
【0030】
このような構造にすることにより、ノズルマウント5の加工をプレス加工にすることにより、ノズルマウント5のガイド部5aの長さL1が小さくなり、ノズルマウント5のスラスト方向全体の厚さT1が段部20cの厚さL5分薄くすることができるので、重量の軽減及び、材料費の削減効果をえることができる。
従来、ガイド部5aのスラスト方向の加工(エンドミル加工)はノズルマウント5の形状(ガイド部周囲の形状)が複雑で精度を確保するために多くの工数を要していたが、ネイルピン20に調整部である段部を一体に設ける構造は、旋盤加工で高い精度が容易に確保できるので、加工コストが大幅に軽減できる。
また、ドライブリング3の摺動面幅T2が位置する部分には、ネイルピン20とピン圧入孔5bのL4部分には空間部5eが形成されるので、ガイド部5aの表面にネイルピン20の圧入による膨出部が発生しないので、ガイド部5a表面の滑らかな面が維持され、ドライブリング3とガイド部5aとの固着を防止することができる。
尚、空間部5eがなくても、膨出部が発生しないようにピン部20bとピン圧入孔5bのL4部分の嵌合寸法を調整すればよい。
また、圧入孔5bのL4部分の径を大きくする構造なので、圧入作業が容易になる。
【0031】
(第2実施形態)
図4に基づいて本実施形態について説明する。
尚、本実施形態はノズルマウント51にネイルピン21を圧入する構造以外は、第1実施形態に同じなので、可変ノズル機構等の説明は省略する。
更に、同一形状で、同じ作用をする部品については、同一符号を付して、その説明は省略する。
【0032】
図4(A)は本発明の第2実施形態にかかるノズルマウントにネイルピンを圧入した部分の拡大断面図、(B)はノズルマウント側の圧入孔拡大図、(C)は(B)の圧入孔に圧入されるネイルピンの概略図を示す。
図4(A)において、51はガイド部51aにドライブリング3を外嵌するノズルマウントで、1はレバープレートである。
図4(B)はネイルピン21が圧入される圧入孔51b、図4(C)は該圧入孔51bに圧入されるネイルピン21である。
径φ2の圧入孔51bはガイド部51aの端面の外周縁端部に周方向へ等間隔で且つ、ノズルマウント51の軸心CLに沿った方向に複数穿設されている。
孔径Φ2の長さL4の範囲はガイド部51aの端面から接触部51cの奥側(図面上において接触部51cより左側位置)位置までとなっている。
そして、ガイド部51aの長さL1(突出量)は、ノズルマウント51のドライブリング3が接触する接触部51cからガイド部51a端面までが当該部に外嵌するドライブリング3の板厚T2相当より小さい長さになっている。
【0033】
ネイルピン21は、圧入孔51bに圧入嵌合されるピン先端部21bと、該ピン先端部21bより縮径した縮径部21cと、外径部がガイド部51aの外周面からラジアル方向へ突出しない外径を有した円板形状の調整部材である段部21fと、ドライブリング3の側面と適正な隙間L8〔図4(B)参照〕を保持しながら、ドライブリング3の側面がスラスト方向に振れるのを規制する鍔部21aと、鍔部21a基準に段差21fと反対側に突出した突出部21dとを備え、一体的に形成されている。
圧入孔51bに圧入されるネイルピン21のピン先端部21bは径φ3に形成されており、ピン先端部21bから段部21fまでの縮径部21cが径φ5に形成されており、径φ3>径φ5の状態になっている。
【0034】
そして、段部21fのスラスト方向厚さL5は、ドライブリング3の側面と鍔部21aとの適正隙間L8を確保するように決められる。
また、先端部21bの径φ3の長さL10(圧入代)は、圧入孔51bにネイルピン21を圧入した時に、該ネイルピン21がドライブリング3の操作時にピン圧入孔51bから容易に抜けないような固着力を有する長さになっている。
また、ネイルピン21を圧入孔51bに圧入する際、該圧入孔51bのドライブリング3と対向する部分(L1)が塑性変形しないようにするため、ネイルピン21の先端部21b及び、圧入孔51b夫々が弾性変形領域内のシマリバメ寸法に形成されている。
従って、ネイルピン21を圧入孔51bに圧入嵌合すると、段部21fがガイド部51aの端面に当接して、適正隙間L8を形成できるようになっている。
【0035】
このような構造にすることにより、ノズルマウント51のスラスト方向全体の厚さT1が段部21fの厚さL5相当分薄くすることができるので、重量の軽減及び、材料費の削減効果をえることができる。
従来、ガイド部51aのスラスト方向の加工(エンドミル加工)はノズルマウント51の形状(ガイド部周囲の形状)が複雑で精度を確保するために多くの工数を要していたが、ネイルピン21に調整部である段部を一体に設ける構造は、旋盤加工で高い精度が容易に確保できるので、加工コストが大幅に軽減できる。
また、ドライブリング3の摺動面(T2)が位置する部分には、ネイルピン21とピン圧入孔51bのL1部分には空間部21eが形成されるので、ガイド部51aの表面にネイルピン21の圧入による膨出部の発生を防止して、ガイド部51a表面の滑らかな面が維持され、ドライブリング3とガイド部51aとの固着を防止することができる。
【0036】
(第3実施形態)
図5に基づいて本実施形態について説明する。
尚、本実施形態は第1実施形態に対し、ネイルピンの形状が異なる以外は同じなので、ネイルピン以外の説明は省略する。
ネイルピン22は、圧入孔5b〔図3(B)参照〕に圧入されるピン部22bと、ドライブリング3〔図3(B)参照〕のスラスト方向の振れを規制する鍔部22aと、該鍔部22aに対しピン部22bと反対側に突出したネイルピン22を圧入孔5bに圧入する際の圧入工具受部22dとを有している。
そして、ピン部22bの鍔部22aと接する部分には調整部材であるスペーサ23(第1実施形態の段部20cに相当)が圧入されている。
【0037】
スペーサ23はネイルピン22が圧入孔5bに圧入された時に、該スペーサ23の外周面がガイド部5a〔図3(B)参照〕の外周面より外方へ突出しないように寸法調整されている。
本実施形態では、ネイルピン22にスペーサ23を圧入することで、該スペーサ23の内周面とピン部22bとの隙間をなくし、スペーサ23の外周径を圧入孔5bの軸線とガイド部5aの外周面との距離の2倍を最大径することで、該スペーサ23がガイド部5aの外周面より外方へ突出するのを防止して、ドライブリング3の内周面とスペーサ23との隙間L7〔図3(B)参照〕を確保し、当該部が固着するのを防止すると共に、ドライブリング3のスラスト方向の隙間L8も同時に確保するものである。
【0038】
また、本実施形態では、スペーサ23をピン部22bに圧入する構造としたが、ピン部22bとスペーサ23の内周面との隙間を、ネイルピン22を圧入孔5bに圧入した際に、スペーサ23がガイド部5a側に寄っても、該スペーサ23の外周部がガイド部5aの外周面より外方へ突出せずに、該外周部と面一か又は、若干スペーサ23の中心側に位置するように形成すれば圧入する必要はなく、同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構のドライブリングをノズルマウントのガイド部に適正な間隔を容易に保持できるようにして、ドライブリングの内周面とガイド部の外周面との固着を防止して、コスト低減と耐久信頼性の向上を図ることのできる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機を提供できる。
【符号の説明】
【0040】
1 レバープレート
2 ノズルベーン
3 ドライブリング
5 ノズルマウント
5a ガイド部
5b、51b 圧入孔
5e、21e 空間部
7 ストッパピン
10 連結ピン
20、21,22 ネイルピン(圧入ピン)
20a,21a,22a 鍔部
20b 21b、22b ピン部
20c、21f、22c 段部(調整部材)
20d、21d、22d 突出部
30 タービンハウジング
31 コンプレッサハウジング
100 可変ノズル機構
L7,L8 適正隙間(規定間隔)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気ガスにより駆動される可変容量型排気ターボ過給機のタービンケーシングを含むケースに固定されたノズルマウントに回動可能に支持される複数のノズルベーンと、
アクチュエータに連動され前記ノズルマウントの中央部に軸線方向に突出した環状のガイド部に嵌合するドライブリングと、
一端側を前記ドライブリングに設けた溝部に連結ピン部を介して嵌合し、他端側を前記ノズルベーンに連結したレバープレートと、
前記ドライブリングを前記ガイド部のスラスト方向に保持するため、前記ガイド部の端面に前記スラスト方向に沿って穿設された圧入孔に前記ドライブリングの側面と対向する鍔部を備えた圧入ピンと、
前記ガイド部のスラスト方向幅を前記ドライブリングの幅より短く形成すると共に、前記圧入ピンの鍔部と前記ガイド部の端面との間に配設される調整部材と、
を備え、前記調整部材によって、前記ドライブリンクを挟持する前記ノズルマウントの側面と前記圧入ピンの鍔部との間隔が調整されることを特徴とする可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機。
【請求項2】
前記調整部材は前記鍔部に一体的に形成された前記圧入ピンであることを特徴とする請求項1記載の可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機。
【請求項3】
調整部材は環状形状からなり、前記圧入ピンとは別部材で形成されることを特徴とする請求項1記載の可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−72402(P2013−72402A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213557(P2011−213557)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【特許番号】特許第5129882号(P5129882)
【特許公報発行日】平成25年1月30日(2013.1.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】