説明

可変容量型排気ターボ過給機及び可変ノズル機構構成部材の製造方法

【課題】 可変ノズル機構の構成部材の締結をきわめて少ない工数で可能として低い製造コストを保持でき、かつ強固な締結状態を保持できて品質が安定した可変ノズル機構構成部材をそなえた排気ターボ過給機を提供する。
【解決手段】 タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構構成部材において、前記可変ノズル機構の構成部材のうち貫通穴を備えた貫通穴形成部材の貫通穴に固着される軸状部材を製作するにあたり、鋼板の上面に該鋼板よりも硬質で耐摩耗性の大きい耐摩耗材を一定厚さ肉盛りし、次いで該耐摩耗材の肉盛り部及び前記鋼板から所定の外径の前記軸状部材を切り出すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気ターボ過給機に用いられ、タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機及び該可変ノズル機構構成部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用内燃機関の可変容量型排気ターボ過給機においては、長期間無潤滑状態で運転される可変ノズル機構におけるリンク系摺動部の摩耗を低く抑える必要があり、これら摺動部を構成する摺動部材に、耐磨耗性の高い材料又はそれに類する表面処理を施したものを使用する必要がある。一般に前記摺動部材に使用される耐磨耗性の高い耐磨耗材料としては、高温硬さの高いタングステン系、ニッケル系、コバルト系、セラミック等が挙げられる。
一方、これら摺動部材を締結するドライブリング等の連結部材は、プレス加工等の塑性加工の容易性からステンレス鋼が多く使用されている。しかしながら、前記摺動部材に使用される耐磨耗材料は、硬さが高い反面きわめて脆く、連結部材であるステンレス鋼との締結に、かしめなどの塑性加工は採用できない。
【0003】
一般に異材の締結には、圧入、焼きばめが採用されている。しかしながら前記可変ノズル機構の構成部品は、使用時の温度が600℃を超えるため、ドライブピンの線膨張係数がドライブリングよりも小さい場合、前記のような高温下で十分な圧入代を確保出来ず、ドライブピンが抜け出してしまう。かかる観点から、従来、ドライブリングとドライブピンの締結手段として、図7〜図8に示される手段が採用されている。
【0004】
図7はかかる従来のドライブリングとドライブピンとの締結態様を示し、(A)はドライブリングの正面図、(B)は(A)におけるZ−Z線断面図である。また、図8は前記ドライブリングとドライブピンとの締結部の詳細を示す拡大断面図(図7(B)のV部拡大図)である。図7〜8において、耐摩耗材で製作されたドライブピン032は、その締結部032aをステンレス鋼等の鋼板からなるドライブリング3の貫通穴31に圧入後、端部032cを溶接することにより該ドライブリング3に固着されている。032bは図示しないレバープレートとの係合部である。
【0005】
また、車両用内燃機関に用いられる小型排気ターボ過給機において、該過給機の構成部材のうち高温下で作動する排気タービンにセラミックス材を使用し、このセラミックス材製排気タービンと低温下で作動する金属製のコンプレッサとをろう付けにて締結するように構成された排気ターボ過給機が、特許文献1(特開昭59−78983号公報)にて提案されている。
【0006】
かかる排気ターボ過給機においては、セラミックス材からなる排気タービンの軸部先端に先細の円錐突部を形成し、金属製のコンプレッサに前記円錐突部と嵌合可能な円錐窪部を形成し、さらに前記円錐突部及び円錐窪部の一方または双方にろう充填用凹部を設け、前記円錐突部と円錐窪部とを嵌合しろう材を介して両者を締結するように構成して、セラミックス材と金属材との間の接合寸法精度を高く保持するとともに、ろう材を介することによってセラミックス材製の排気タービンと金属製のコンプレッサとよりなるタービンロータの接合強度を増大せしめている。
【特許文献1】特開昭59−78983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排気ターボ過給機、特に車両用内燃機関に用いられる小型排気ターボ過給機においては、機関からの排ガス流量と過給機の最適作動条件となるガス流量とのマッチングをなすために、渦巻状のスクロールからタービンロータに送られる排ガス流量を機関の運転状態に応じて可変とする可変容量タービンを備えた可変容量型排気ターボ過給機が、近年多く用いられている。
かかる可変容量型排気ターボ過給機において、複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構の構成部材のうち、ノズルベーン側のレバープレートに連結されるドライブピンとドライブリングとの締結部には、前記のように、図7〜8に示されるような締結構造が適用されている。
【0008】
図7〜8に示される従来技術にあっては、ドライブピン032に使用される耐摩耗材つまり耐摩耗性の高い金属材料は、溶接に対する割れ感受性が高く、歩留まりが悪いという問題がある。従って、かかる耐摩耗材製のドライブピン032をステンレス鋼等の鋼板からなるドライブリング3に溶接する場合には、ドライブリング3とドライブピン032との組立体に安定した品質、信頼性を確保することは困難となり、更に、前記のような歩留まりの悪さに伴うスクラップ品の増大により、低コストで部品を製作することも困難となる。
【0009】
また、前記のように、排気ターボ過給機の構成部材の締結手段として、セラミックス材製の排気タービンと金属製のコンプレッサとをろう付けにて固着する手段が特許文献1(特開昭59−78983号公報)にて提案されているが、かかる締結手段には次のような問題点があり、可変ノズル機構の構成部材の締結手段としては適用できない。
即ち、特許文献1のろう付けによる締結手段は、高温下で高トルクが作動するタービンロータの締結であるため、排気タービン側の円錐突部とコンプレッサ側の円錐窪部との締結部は、締結面の全面に亘ってろう充填用凹部を形成して該凹部にろうを充填して締結する構造となっているが、締結面の一部にろうの充填が不充分な部位がある場合には、この部分からタービンロータの破損発生の恐れがある。
【0010】
このため、かかるタービンロータの締結手段にあっては、前記排気タービン側の円錐突部とコンプレッサ側の円錐窪部との締結部のろう付けを締結面の全面に亘って均一かつ確実に行なう必要があることから、タービンロータのろう付け作業に多大な作業工数を必要とする。
また、かかるタービンロータの締結手段にあっては、コンプレッサ側が先詰まりの円錐窪部であるため、締結部の奥側におけるろうの浸透状況を確認することが困難であり、タービンロータ締結部の品質不良があっても抽出困難で、タービンロータの品質の安定性に課題がある。
特許文献1のろう付けによる締結手段は、以上のような問題点を有しているため、可変ノズル機構の構成部材の締結手段としては適用できないこととなる。
また、前記ドライブピン032の芯部を鋼材又は焼結材料で製作し、摺動面の表層にプラズマ溶射などのコーティングをする方法が提案されていが、かかる方法では、ドライブピン032のような小さな部品の場合は、材料の90%程度が飛散してしまい、材料の歩留まりが悪い。
【0011】
本発明はかかる従来技術の課題に鑑み、可変ノズル機構の構成部材の締結をきわめて少ない工数で可能として低い製造コストを保持でき、かつ強固な締結状態を保持できて品質が安定した可変ノズル機構構成部材をそなえた排気ターボ過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明はかかる目的を達成するもので、タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構構成部材の製造方法において、前記可変ノズル機構の構成部材のうち貫通穴を備えた貫通穴形成部材の貫通穴に固着される軸状部材を製作するにあたり、鋼板の上面に該鋼板よりも硬質で耐摩耗性の大きい耐摩耗材を一定厚さ肉盛りし、次いで該耐摩耗材の肉盛り部及び前記鋼板から所定の外径の前記軸状部材を切り出すことを特徴とする。
【0013】
また前記製造方法によって製造された可変ノズル機構構成部材をそなえた可変容量型排気ターボ過給機の発明は、タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機において、前記可変ノズル機構のドライブリングと該ドライブリングの貫通穴に圧入されるドライブピンとの締結部を該貫通穴にドライブピンをかしめ固定して構成するとともに、前記ドライブピンを、硬質材料からなる耐摩耗部材と該耐摩耗部材よりも軟質の材料からなる締結部材とが軸方向に肉盛り接着された2層構造に形成し、さらに該ドライブピンの前記締結部材側を前記貫通穴に圧入して該貫通穴にかしめ固定した締結部に構成し、かつ前記耐摩耗部材側を該ドライブピンに連結される相手部材との摺動部に構成したことを特徴とする。
かかる発明において、前記耐摩耗部材をCo−Mo系合金で構成し、前記締結部材をステンレス鋼及び炭素鋼を含む鋼材で構成するのが好ましい。
【0014】
かかる発明によれば、可変ノズル機構のドライブピンに好適な、好ましくはCo−Mo系合金からなる硬質で耐摩耗性の大きい耐摩耗材は、かしめによる固定が困難であるが、該耐摩耗材をこれよりも軟質で靭性が大きくかしめによる固定が可能なステンレス鋼、炭素鋼等の鋼材上に一定厚さ肉盛りして、好ましくは電解加工によって軸状部材を切り出すことによって、好ましくはCo−Mo系合金からなる耐摩耗材とステンレス鋼、炭素鋼等の鋼材とが軸方向に2層に締結されたドライブピン等の軸状部材を得ることができる。
従って、かかるCo−Mo系合金からなる耐摩耗材とステンレス鋼、炭素鋼等の鋼材との2層の軸状部材をドライブリング等の貫通穴形成部材の貫通穴内に挿入して鋼材部分をかしめることにより、高硬度で耐摩耗性が大きいCo−Mo系合金等からなる耐摩耗材を用いたドライブピンに好適な軸状部材を、ドライブリング等の貫通穴形成部材にかしめによって確実に固着することが可能となる。
【0015】
またかかる発明によれば、ドライブピン等の軸状部材とドライブリング等の貫通穴形成部材との締結をかしめによって行なうことで、従来技術に係る溶接とは異なり、ドライブピン等の軸状部材に局所的な熱を加える必要は無く、これによる熱変形を回避することができる。
また、前記軸状部材と前記貫通穴形成部材との締結をかしめによって行なうことで、ドライブリング等の貫通穴形成部材に局所的な熱を加えることによる熱変形を回避する必要が無いため、ドライブリング等の貫通穴形成部材を薄くすることが可能となる。
またかかる発明によれば、前記軸状部材の前記貫通穴形成部材との締結部に該貫通穴形成部材と同じ鋼材を使用することで、前記締結部の線膨張係数を同一として、可変ノズル機構構成部材を高温で使用する場合にも、圧入のみで締結力を確保することができる。
【0016】
またかかる発明によれば、前記ドライブピン等の軸状部材を2層構造とすることで、該軸状部材の摺動部の材料に左右されることなく、同一の締結方法でドライブピン等の軸状部材とドライブリング等の貫通穴形成部材とを締結することができる。
また、前記軸状部材を耐摩耗性を必要とする部分のみをCo−Mo系合金等の高価な耐摩耗材を使用し、前記貫通穴形成部材との締結部は安価な鋼材を使用したので、高価な耐摩耗材の使用量を少なくすることができて、可変ノズル機構の製造コストを低く抑えることができる。
さらに、鋼板の上面に耐摩耗材を一定厚さ肉盛りし、該耐摩耗材の肉盛り部及び鋼板から前記軸状部材を電解加工等によって切り出すので、プラズマ溶射などのコーティングと比較して、高価な耐摩耗材の単位使用量当たりの製作部品数が多くなって、耐摩耗材の歩留まりを向上できる。
【0017】
また本発明は、タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構構成部材の製造方法において、前記可変ノズル機構の構成部材のうち貫通穴を備えた貫通穴形成部材と該貫通穴に固着される軸状部材とを製作するにあたり、円筒状に形成され燒結材料からなる耐摩耗部材の内周に、棒状に形成され前記耐摩耗部材よりも軟質の材料からなる締結部材の一端側を圧入・固着して前記耐摩耗部材と締結部材とにより2層に形成された前記軸状部材を製作し、次いで該軸状部材の前記締結部材側を前記貫通穴に圧入して該貫通穴に前記軸状部材の端部をかしめ固定することを特徴とする。
【0018】
そして前記製造方法によって製造された可変ノズル機構構成部材をそなえた可変容量型排気ターボ過給機の発明は、タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機において、前記可変ノズル機構のドライブリングと該ドライブリングの貫通穴に圧入されるドライブピンとの締結部を、該貫通穴にドライブピンをかしめ固定して構成するとともに、前記ドライブピンを、円筒状に形成され硬質材料からなる耐摩耗部材の内周に、棒状に形成され前記耐摩耗部材よりも軟質の材料からなる締結部材の一端側を圧入・固着してなる2層構造に形成し、さらに該ドライブピンの前記締結部材側を前記貫通穴に圧入して該貫通穴にかしめ固定した締結部に構成し、かつ前記耐摩耗部材側を該ドライブピンに連結される相手部材との摺動部に構成したことを特徴とする。
かかる発明において、前記耐摩耗部材を燒結材料で構成し、前記締結部材をステンレス鋼及び炭素鋼を含む鋼材または燒結材料のいずれか一方で構成するのが好ましい。
【0019】
かかる発明によれば、ドライブピン等の軸状部材の形状の自由度を高くすることができ、また余肉を少なくすることで、材料の歩留まりを高め、さらに加工を容易にすることが可能となる。またドライブピン等の軸状部材の締結部にステンレス鋼等の鋼材を使用することで、高価な耐摩耗材の使用量を低減することができる。
また、ドライブピン等の軸状部材は、円筒状に形成された耐摩耗材を焼結材料とすることで、芯部の鋼材材に、必要な厚さの耐摩耗材を被覆することができ、使用条件に合わせたドライブピン等の軸状部材の製作が可能となる。
また、前記ドライブピン等の軸状部材は、摺動部を焼結材料とすることで、形状の自由度が高く、材料の歩留まりを高めることができて、加工コスト低減できる。
さらに、必要に応じて、焼結材料からなる前記耐摩耗材の厚さを調整し、可変ノズル機構の負荷に見合ったドライブピン等の軸状部材を製作可能となり、該軸状部材材料コストを低く抑えることができる。
【0020】
また本発明は、タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構構成部材の製造方法において、前記可変ノズル機構の構成部材のうち貫通穴を備えた貫通穴形成部材と該貫通穴に固着される軸状部材とを製作するにあたり、棒状に形成され硬質材料からなる耐摩耗部材の接合用端面と棒状に形成された締結部材の接合用端面とを摩擦圧接または拡散圧接のいずれか一方により接合して軸方向に2層の前記軸状部材を製作し、次いで軸状部材の前記締結部材側を前記貫通穴に圧入して該貫通穴に前記軸状部材の端部をかしめ固定することを特徴とする。
【0021】
そして前記製造方法によって製造された可変ノズル機構構成部材をそなえた可変容量型排気ターボ過給機の発明は、タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機において、前記可変ノズル機構のドライブリングと該ドライブリングの貫通穴に圧入されるドライブピンとの締結部を、該貫通穴にドライブピンをかしめ固定して構成するとともに、前記ドライブピンを、棒状に形成され硬質材料からなる耐摩耗部材の接合用端面と棒状に形成された締結部材の接合用端面とを圧接してなる軸方向に2層の2層構造ドライブピンに形成し、さらに該ドライブピンの前記締結部材側を前記貫通穴に圧入して該貫通穴にかしめ固定した締結部に構成し、かつ前記耐摩耗部材側を該ドライブピンに連結される相手部材との摺動部に構成したことを特徴とする。
【0022】
かかる発明によれば、硬質材料からなる棒状の耐摩耗部材の接合用端面と、鋼材からなる棒状の締結部材の接合用端面とを摩擦圧接または拡散圧接のいずれか一方により接合して、軸方向に2層の前記軸状部材を製作するので、難締結材である耐摩耗材を、軟質材料の鋼材からなる締結部材を介して、鋼材からなるドライブリング等の貫通穴形成部材に容易に締結することが可能となる。
またかかる発明によれば、一般的な工法である摩擦圧接あるいは拡散圧接により、前記軸状部材におけるニッケルベース、コバルトベース等の耐摩耗材とステンレス鋼等の鋼材との接合強度を高く維持することが可能となる。
【0023】
またかかる発明によれば、溶接肉盛りや焼結等の工法が用いにくい耐摩耗材についても、塑性加工の容易なオーステナイト系ステンレス鋼材との接合が可能となる。
また、ドライブピン等の軸状部材の摺動部と締結部とを摩擦圧接あるいは拡散接合することで、異材の接合強度を高く確保することができるとともに、溶接肉盛り、粉末冶金等の特殊技術を不要とし、一般的な工法で容易に可変ノズル機構構成部材を製作できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、可変ノズル機構のドライブピンに好適な、Co−Mo系合金等の耐摩耗材とステンレス鋼、炭素鋼等の鋼材との2層の軸状部材をドライブリング等の貫通穴形成部材の貫通穴内に挿入して、鋼材部分をかしめることにより、高硬度で耐摩耗性が大きいCo−Mo系合金等からなる耐摩耗材を用いたドライブピンに好適な軸状部材を、ドライブリング等の貫通穴形成部材にかしめによって確実に固着することが可能となる。
これにより、可変ノズル機構の構成部材の締結がきわめて少ない工数で可能となり、該可変ノズル機構の構成部材の製造コストを低く保持して強固な締結状態を保持でき、品質が安定した可変ノズル機構構成部材をそなえた排気ターボ過給機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0026】
図1は本発明に係る可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機の要部縦断面図である。
図1において、10はタービンケーシング、11は該タービンケーシング10の外周部に渦巻状に形成されたスクロールである。12はラジアル流型のタービンロータで、図示しないコンプレッサと同軸に設けられこれのタービンシャフト12aが軸受ハウジング13に軸受13aを介して回転自在に支持されている。100aは該排気ターボ過給機の回転軸心である。
2はノズルベーンで、前記スクロール11の内周側にタービンの円周方向等間隔に複数枚配置されるとともに、これの翼端部に形成されたノズル軸02が前記タービンケーシング10に固定されたノズルマウント4に回動可能に支持され、可変ノズル機構100によりその翼角を変化せしめられるようになっている。
【0027】
3は円盤状に形成されたドライブリングで、前記タービンケーシング10に回転可能に支持されるとともに、円周方向等間隔にドライブピン32が固着されている。1はレバープレートで、入力側の溝が該ドライブピン32に係合され、出力側が前記ノズル軸02に固定されている。
8は前記ノズルベーン2の駆動源であるアクチュエータ(図示省略)に連結されるクランク機構、5は該クランク機構8に連結されるレバー、6は該レバー5に固定されて前記ドライブリング3に係合し該ドライブリング3を回動駆動するコントロールスリーブである。
【0028】
かかる構成からなる可変ノズル機構付き可変容量型排気ターボ過給機において、内燃機関(図示省略)からの排ガスは前記スクロール11に入り、該スクロール11の渦巻きに沿って周回しながらノズルベーン2に流入する。そして、該排ガスは、前記ノズルベーン2の翼間を流過して前記タービンロータ12にその外周側から流入し、中心側に向かい半径方向に流れて該タービンロータ12に膨張仕事をなした後、軸方向に流出してガス出口10bに案内されて機外に送出される。
【0029】
かかる可変容量タービンの容量を制御するにあたっては、前記アクチュエータに対し、前記ノズルベーン2を流れる排ガスの流量が所要の流量になるような該ノズルベーン2の翼角を、翼角制御手段(図示省略)により設定する。かかる翼角に対応するアクチュエータの往復変位はクランク機構8、レバー5、コントロールスリーブ6を介してドライブリング3に伝達され、該ドライブリング3が回転駆動される。
該ドライブリング3の回転により、該ドライブリング3に円周方向等間隔に固着されているドライブピン32がレバープレート1を前記ノズル軸02廻りに回動させ、該ノズル軸02の回動によりノズルベーン2が回動して前記アクチュエータにて設定された翼角に変化せしめられる。
本発明は、以上のように構成された可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機におけるドライブリングとドライブピンとの締結部等の貫通穴形成部材と軸状部材との締結部の改良に係るものである。
【実施例1】
【0030】
図2は本発明の第1実施例を示し、(A)はドライブリングの正面図、(B)は(A)におけるC−C線断面図である。図3(A)は前記第1実施例におけるドライブリングとドライブピンとの締結部の詳細を示す拡大断面図(図2(B)のY部拡大図)、(B)はドライブピンの製作方法の説明図(斜視図)、図4は2層構造のドライブピンの側面図である。
図2〜4において、3は可変ノズル機構100(図1参照)のドライブリング(貫通穴形成部材)、31は該ドライブリング3の円周方向に沿って等間隔に穿孔された貫通穴からなるピン穴で、図3のように、各ピン穴31にはドライブピン(軸状部材)32が圧入され、端部をかしめ(32cはかしめ部)によって固着されている。
【0031】
かかる第1実施例においては、図2(A)、(B)に示されるように、前記可変ノズル機構100の構成部材であるドライブリング3のピン穴(貫通穴)31にドライブピン32を圧入して両者をかしめにて固着するとともに、図3(A)及び図4のように前記ドライブピン32をCo−Mo系合金(Co60重量%、Mo20重量%程度が好適)からなる耐摩耗部材32bとステンレス鋼材からなる締結部材32aとが軸方向に肉盛り接着された2層構造のドライブピン32に構成し、該ドライブピン32の締結部材32a側を前記ピン穴31に圧入して前記ドライブリング3にかしめにて固着するように構成している。32d(図4参照)は前記耐摩耗部材32bと締結部材32aとの接合部、32cはかしめ部である。
【0032】
図3(B)は前記2層構造のドライブピン32の製作方法の説明図であり、該ドライブピン32を製作するにあたっては、ステンレス板032aの上面にCo−Mo系合金を一定厚さ肉盛りし(032bは肉盛り部)、次いでかかるCo−Mo系合金の肉盛り部032b及び前記ステンレス板032aから所定の外径の前記ドライブピン32を電解放電加工によって切り出す(尚、この電解放電加工は、ワイヤーカット等で代用しても良い)ことにより、図3のように耐摩耗部材32bと締結部材32aとが軸方向に肉盛り接着された2層構造のドライブピン32を粗材製作する。
【0033】
かかる第1実施例において、さらに前記粗材製作品に一般的な機械加工を施すことで、最終的な形状のドライブピン32とする。
前記Co−Mo系合金のようなコバルト系の耐摩耗材は、一般的に溶接材として使用されており、信頼性の高い溶接盛りが可能である。
耐摩耗性の高い金属は、硬い反面脆く、塑性加工での締結は困難である。然るに本発明の第1実施例では、ドライブピン32の締結部に塑性加工の容易なステンレス鋼材を使用することで、かしめでの締結を可能にしている。これにより、耐摩耗部材32bからなる摺動部の耐摩耗性が高く、ステンレス鋼材からなる締結部は信頼性の高い締結の組み付けが容易となる。
またオーステナイト系ステンレス鋼材などで製作されたドライブリング3と、Co−Mo系合金のようなコバルトベース、ニッケルベースなどの耐摩耗部材32bは、高温時の線膨張係数が異なるため、圧入のみでの締結では、高温時に圧入代が無くなる等、十分な締結力が確保できないのに対して、かかる第1実施例の構造は、圧入部分の材料(ステンレス鋼材からなる締結部材32a)をドライブリング3と同一の線膨張係数とすることで、圧入のみで締結力を確保することも可能となる。
【0034】
また、通常ドライブリング3の全周9〜13箇所に設けるドライブピン32で、摩耗の条件が厳しくない部分は通常の耐熱鋼を使用し、摩耗の条件の厳しい部分は前記Co−Mo系合金のようなコバルトベース、ニッケルベースなどの耐摩耗材を使用する必要がある場合、両者では締結方法が異なるため、工程が複雑になる。
これに対しかかる第1実施例では、摺動部に耐摩耗部材32bを使用しても、締結部材32aを他の耐熱鋼と類似特性の材料とすることで、ドライブリング3の全周において同一の締結方法でドライブリング3を製作することができる。
さらに、前記Co−Mo系合金のようなコバルトベース、ニッケルベースなどの耐摩耗材は、非常に高価である。かかる第1実施例では、摺動部の耐摩耗部材32bのみこのような材料を使用し、他の締結部材32aなどはより安価な材料を使用することが出来るため、材料費を低く抑えることができる。
【0035】
かかる第1実施例によれば、可変ノズル機構100のドライブピン32に好適な、高硬度で耐摩耗性が大きい反面、かしめによる固定が困難なCo−Mo系合金からなる耐摩耗部材32bを、該Co−Mo系合金32bよりも軟質で靭性が大きくかしめによる固定が可能なステンレス鋼材からなる締結部材32a上に一定厚さ肉盛りして、電解放電加工でドライブピン32を切り出すことによって、耐摩耗部材32bと締結部材32aとが軸方向に2層に締結されたドライブピン32を得ることができる。
従って、かかるCo−Mo系合金からなる耐摩耗部材32bとステンレス鋼材からなる締結部材32aとの2層のドライブピン32(軸状部材)を、ドライブリング3のピン穴31内に挿入してステンレス鋼材からなる締結部材32aの部分をかしめることにより、高硬度で耐摩耗性が大きいCo−Mo系合金を用いたドライブピン32を、ドライブリング3のピン穴31内にかしめによって確実に固着することが可能となる。
【0036】
またかかる第1実施例によれば、ドライブピン32とドライブリング3との締結をかしめにすることで、従来技術に係る溶接とは異なり、ドライブピン32に局所的な熱を加える必要は無く、これによる熱変形を回避することができる。
また、前記ドライブピン32とドライブリング3との締結をかしめによって行なうことで、ドライブリング3に局所的な熱を加えることによる熱変形を回避する必要が無いため、該ドライブリング3を薄くすることが可能となり、該ドライブリング3を軽量、小型化できる。
またかかる第1実施例によれば、前記ドライブピン32のドライブリング3との締結部に該ドライブリング3と同じステンレス鋼材を使用することで、前記締結部の線膨張係数を同一として、可変ノズル機構100の構成部材を高温で使用する場合にも、圧入のみで締結力を確保することができる。
【0037】
またかかる第1実施例によれば、前記ドライブピン32を2層構造とすることで、該ドライブピン32の耐摩耗部材32bからなる摺動部の材料に左右されることなく、同一の締結方法でドライブピン32とドライブリング3とを締結することができる。
また、前記ドライブピン32を、耐摩耗性を必要とする部分のみをCo−Mo系合金等の高価な耐摩耗材を使用し、ドライブリング3との締結部は安価なステンレス鋼材を使用したので、高価な耐摩耗材の使用量を少なくすることができて、可変ノズル機構100の製造コストを低く抑えることができる。
さらに、ステンレス鋼板032aの上面にCo−Mo系合金からなる耐摩耗材032bを一定厚さ肉盛りし、該耐摩耗材032bの肉盛り部及びステンレス鋼板032aから前記ドライブピン32を電解放電加工によって切り出すので、プラズマ溶射などのコーティングと比較して、高価な耐摩耗材の単位使用量当たりの製作部品数が多くなって、耐摩耗材の歩留まりを向上できる。
【実施例2】
【0038】
図5は、本発明の第2実施例におけるドライブリングとドライブピンとの締結部の詳細を示す拡大断面図である。
かかる第2実施例においては、前記可変ノズル機構100のドライブリング3と該ドライブリング3の貫通穴31に圧入されるドライブピン32との締結部を、該貫通穴31にドライブピン32をかしめ(32cはかしめ部)固定して構成するとともに、前記ドライブピン32を、円筒状に形成され硬質の燒結材料からなる耐摩耗部材321の内周に、棒状に形成され、ステンレス鋼、炭素鋼等の前記耐摩耗部材321よりも軟質の材料からなる締結部材322の一端側を圧入・固着してなる2層構造に形成している。
そして、該ドライブピン32の前記締結部材322側を前記ドライブリング3の貫通穴31に圧入して該貫通穴31に軸端のかしめ部32cにてかしめ固定し、かつ前記耐摩耗部材321側を該ドライブピン32に連結される相手部材であるレバープレート1(図1参照)との摺動部に構成している。
前記締結部材は、前記のようなステンレス鋼、炭素鋼等の鋼材のほか、燒結材料を用いることもできる。
尚、図5においては、前記締結部材322が貫通穴31を貫通した形状となっているが、該貫通穴31の途中で止めた形状でも良い。
【0039】
かかる第2実施例における可変ノズル機構100の前記ドライブリング3(貫通穴形成部材)とこれの貫通穴31に固着されるドライブピン(軸状部材)32とを製作するにあたっては、円筒状に形成され燒結材料からなる耐摩耗部材321の内周に、棒状に形成され耐摩耗部材321よりも軟質の材料からなる締結部材322の縮径された一端側を圧入・固着して前記耐摩耗部材321と締結部材322とにより2層に形成された前記ドライブピン32を製作し、次いで該ドライブピン32の前記締結部材322側を前記貫通穴31に圧入して、該貫通穴31に前記ドライブピン32の端部をかしめ部32cにてかしめ固定する。
前記焼結材料からなる耐摩耗部材321の部位は、MIM法(Metal Injection Molding)で代用しても良い。
【0040】
かかる第2実施例によれば、ドライブピン32の形状の自由度を高くすることができ、また余肉を少なくすることで、材料の歩留まりを高め、さらに加工を容易にすることが可能となる。また該ドライブピン32の締結部材322にステンレス鋼等の鋼材を使用することで、高価な耐摩耗材の使用量を低減することができる。
また、ドライブピン32は、円筒状に形成された耐摩耗材を焼結材料とすることで、芯部の鋼材に必要な厚さの耐摩耗材を被覆することができ、使用条件に合わせたドライブピン32の製作が可能となる。
さらに、必要に応じて、焼結材料からなる前記耐摩耗部材321の厚さを調整し、可変ノズル機構100の負荷に見合ったドライブピ32を製作可能となり、該ドライブピ32の材料コストを低く抑えることができる。
【実施例3】
【0041】
図6は、本発明の第3実施例におけるドライブリングとドライブピンとの締結部の詳細を示す拡大側面である。
かかる第3実施例においては、前記可変ノズル機構100のドライブリング3と該ドライブリング3の貫通穴31に圧入されるドライブピン32との締結部を、該貫通穴31にドライブピン32をかしめ固定(32cがかしめ部)して構成するとともに、前記ドライブピン32を、棒状に形成されCo−Mo系合金のような硬質材料からなる耐摩耗部材323の接合用端面と、棒状に形成され前記耐摩耗部材321よりも軟質の鋼材からなる締結部材324の接合用端面とを圧接して(32eが接合面)軸方向に2層の2層構造ドライブピン32に形成する。
そして、該ドライブピン32の前記締結部材324側を前記貫通穴31に圧入して、該貫通穴31にかしめ部32cにてかしめ固定し、かつ前記耐摩耗部材323側を該ドライブピン32に連結される相手部材であるレバープレート1(図1参照)との摺動部に構成している。
【0042】
かかる第3実施例における可変ノズル機構100の前記ドライブリング3(貫通穴形成部材)とこれの貫通穴31に固着されるドライブピン(軸状部材)32とを製作するにあたっては、棒状に形成されCo−Mo系合金のような硬質材料からなる耐摩耗部材323の接合用端面と、棒状に形成され鋼材からなる締結部材324の接合用端面とを摩擦圧接あるいは拡散圧接により接合面32eで接合して、前記耐摩耗部材323と締結部材324とが接合面32eで圧接された軸方向に2層の前記ドライブピン32を製作し、次いで該ドライブピン32の前記締結部材324側を前記ドライブリング3の貫通穴31に圧入して、該貫通穴31に前記ドライブピン32の端部のかしめ部32cをかしめ固定する。
【0043】
かかる第3実施例によれば、棒状の硬質材料からなる耐摩耗部材323の接合用端面と棒状の締結部材324の接合用端面とを摩擦圧接あるいは拡散圧接により接合して、軸方向に2層のドライブピン32を製作するので、難締結材である耐摩耗部材323を、軟質の鋼材からなる締結部材324を介して、鋼材からなるドライブリング3に容易に締結することが可能となる。
また、一般的な工法である摩擦圧接あるいは拡散圧接により、Co−Mo系合金のようなニッケルベース、コバルトベース等からなる耐摩耗部材323と、ステンレス鋼等の鋼材からなる締結部材324との接合強度を高く維持することが可能となる。
【0044】
またかかる第3実施例によれば、溶接肉盛りや焼結等の工法が用いにくい耐摩耗材についても、塑性加工の容易なオーステナイト系ステンレス材との接合が可能となる。
また、前記耐摩耗部材323と締結部材324とを摩擦圧接あるいは拡散圧接により接合することで、異材の接合強度を高く確保することができるとともに、溶接肉盛り、粉末冶金等の特殊技術を不要とし、一般的な工法で容易に可変ノズル機構100の構成部材を製作できる。
【0045】
尚、前記各実施例においては、ドライブリング3とドライブピン32との締結について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、可変ノズル機構100の構成部材のうち、貫通穴を備えた貫通穴形成部材と該貫通穴に挿入される軸状部材との締結部の全てに適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明によれば、可変ノズル機構の構成部材の締結がきわめて少ない工数で可能となり、低い製造コストを保持でき、かつ強固な締結状態を保持できて品質が安定した可変ノズル機構構成部材をそなえた排気ターボ過給機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機の要部縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施例を示し、(A)はドライブリングの正面図、(B)は(A)におけるC−C線断面図である。
【図3】(A)は前記第1実施例におけるドライブリングとドライブピンとの締結部の詳細を示す拡大断面図(図2(B)のY部拡大図)、(B)はドライブピンの製造要領を示す概略斜視図である。
【図4】前記第1実施例における2層構造のドライブピンの側面図である。
【図5】本発明の第2実施例におけるドライブリングとドライブピンとの締結部の詳細を示す拡大断面図である。
【図6】本発明の第3実施例におけるドライブリングとドライブピンとの締結部の詳細を示す拡大側面である。
【図7】従来のドライブリングとドライブピンとの締結態様を示し、(A)はドライブリングの正面図、(B)は(A)におけるZ−Z線断面図である。
【図8】前記従来のドライブリングとドライブピンとの締結部の詳細を示す拡大断面図(図7(B)のV部拡大図)である。
【符号の説明】
【0048】
1 レバープレート
2 ノズルベーン
02 ノズル軸
3 ドライブリング
4 ノズルマウント
5 レバー
6 コントロールスリーブ
10 タービンケーシング
12 タービンロータ
31 ピン穴
32 ドライブピン
32a、322、324 締結部材
32b、321、323 耐摩耗部材
32c かしめ部
100 可変ノズル機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構構成部材の製造方法において、前記可変ノズル機構の構成部材のうち貫通穴を備えた貫通穴形成部材の貫通穴に固着される軸状部材を製作するにあたり、鋼板の上面に該鋼板よりも硬質で耐摩耗性の大きい耐摩耗材を一定厚さ肉盛りし、次いで該耐摩耗材の肉盛り部及び前記鋼板から所定の外径の前記軸状部材を切り出すことを特徴とする可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構構成部材の製造方法。
【請求項2】
タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機において、前記可変ノズル機構のドライブリングと該ドライブリングの貫通穴に圧入されるドライブピンとの締結部を該貫通穴にドライブピンをかしめ固定して構成するとともに、前記ドライブピンを、硬質材料からなる耐摩耗部材と該耐摩耗部材よりも軟質の材料からなる締結部材とが軸方向に肉盛り接着された2層構造に形成し、さらに該ドライブピンの前記締結部材側を前記貫通穴に圧入して該貫通穴にかしめ固定した締結部に構成し、かつ前記耐摩耗部材側を該ドライブピンに連結される相手部材との摺動部に構成したことを特徴とする可変容量型排気ターボ過給機。
【請求項3】
前記耐摩耗部材をCo−Mo系合金で構成し、前記締結部材をステンレス鋼及び炭素鋼を含む鋼材で構成したことを特徴とする請求項2記載の可変容量型排気ターボ過給機。
【請求項4】
タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構構成部材の製造方法において、前記可変ノズル機構の構成部材のうち貫通穴を備えた貫通穴形成部材と該貫通穴に固着される軸状部材とを製作するにあたり、円筒状に形成され燒結材料からなる耐摩耗部材の内周に、棒状に形成され前記耐摩耗部材よりも軟質の材料からなる締結部材の一端側を圧入・固着して前記耐摩耗部材と締結部材とにより2層に形成された前記軸状部材を製作し、次いで該軸状部材の前記締結部材側を前記貫通穴に圧入して該貫通穴に前記軸状部材の端部をかしめ固定することを特徴とする可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構構成部材の製造方法。
【請求項5】
タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機において、前記可変ノズル機構のドライブリングと該ドライブリングの貫通穴に圧入されるドライブピンとの締結部を、該貫通穴にドライブピンをかしめ固定して構成するとともに、前記ドライブピンを、円筒状に形成され硬質材料からなる耐摩耗部材の内周に、棒状に形成され前記耐摩耗部材よりも軟質の材料からなる締結部材の一端側を圧入・固着してなる2層構造に形成し、さらに該ドライブピンの前記締結部材側を前記貫通穴に圧入し該貫通穴にかしめ固定した締結部に構成し、かつ前記耐摩耗部材側を該ドライブピンに連結される相手部材との摺動部に構成したことを特徴とする可変容量型排気ターボ過給機。
【請求項6】
前記耐摩耗部材を燒結材料で構成し、前記締結部材をステンレス鋼及び炭素鋼を含む鋼材または燒結材料のいずれか一方で構成したことを特徴とする請求項5記載の可変容量型排気ターボ過給機。
【請求項7】
タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構構成部材の製造方法において、前記可変ノズル機構の構成部材のうち貫通穴を備えた貫通穴形成部材と該貫通穴に固着される軸状部材とを製作するにあたり、棒状に形成され硬質材料からなる耐摩耗部材の接合用端面と棒状に形成された締結部材の接合用端面とを摩擦圧接または拡散圧接のいずれか一方により接合して軸方向に2層の前記軸状部材を製作し、次いで軸状部材の前記締結部材側を前記貫通穴に圧入して該貫通穴に前記軸状部材の端部をかしめ固定することを特徴とする可変容量型排気ターボ過給機における可変ノズル機構構成部材の製造方法。
【請求項8】
タービンケーシングを含むケース部材に回動可能に支持された複数のノズルベーンの翼角を変化せしめる可変ノズル機構を備えた可変容量型排気ターボ過給機において、前記可変ノズル機構のドライブリングと該ドライブリングの貫通穴に圧入されるドライブピンとの締結部を、該貫通穴にドライブピンをかしめ固定して構成するとともに、前記ドライブピンを、棒状に形成され硬質材料からなる耐摩耗部材の接合用端面と棒状に形成された締結部材の接合用端面とを圧接してなる軸方向に2層の2層構造ドライブピンに形成し、さらに該ドライブピンの前記締結部材側を前記貫通穴に圧入して該貫通穴にかしめ固定した締結部に構成し、かつ前記耐摩耗部材側を該ドライブピンに連結される相手部材との摺動部に構成したことを特徴とする可変容量型排気ターボ過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−220092(P2006−220092A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35309(P2005−35309)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】