説明

可変速領域における風力発電機の出力変動の低減化制御装置およびその制御方法

【課題】風速変動に対して風力発電機の出力もそれに応じて変動する。出力変動の低減化を図り出力変動の低減化制御装置およびその制御法を提供することにある。
【解決手段】出力変動を伴う風力発電の発電機3はコンバータ4、DCリンク11、インバータ5と変圧器6を介して電力系統9に接続されている。前記発電機3の電力指令値2aの演算結果と出力変動低減化回路2bの出力信号を加え合わせ点で演算した信号2cと電力センサ7で検出した発電機の出力7aの制御偏差をなくすように制御部8で励磁用コンバータ4に励磁周波数10を与える出力変動の低減化制御装置と軸速度が一定の時には出力変動低減化回路の出力は無いものとする制御方式

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変速風力発電の電力制御において可変速領域内における風力発電機の出力変動の低減化制御方法に関し、出力変動を低減して系統にストレスを与えない制御装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不規則な風力エネルギーで運転している風車は風速変動により出力変動がある。従来、発電機の出力変動の制限対策として定格風速以上ではピッチ角の制御により出力変動を定格値に制限する方法が広く採用されているが定格風速以下の風速に対しては風車のピッチ角は固定して運転しているので出力変動の制御上の対策はなされていない。
固定速風力発電方式では、発電機出力が系統に直接接続されているために軸速度がほぼ一定で電力系統周波数と同期しているため風速変動により発電機出力変動は急峻となる。一方可変速風力発電方式では発電機出力が電力変換制御装置(コンバータとインバータ)を介して電力系統に接続されているので発電機は風速に応じて可変速運転しているので発電機出力周波数は変化している。風速が急峻に大きく増加の方に変動した場合風車出力と発電機出力との差は風車の加速エネルギーとなり軸速度で定まる最大出力点である平衡点まで加速される。この過程で風速変動分は一時的に風車慣性に吸収されてすぐにはロータ軸には伝達されないので急峻な出力変動は固定速発電方式に比較すると少なくなることが知られている。
【0003】
(従来技術)
系統安定化装置は電力変動を伴う風力発電などの分散電源に連系させた電力系統では、電力変動による電力系統の電圧および周波数変動を抑制するために設置されている。系統安定化装置は、風力発電機が接続されている系統母線に連係用変圧器を介して電力変換器を接続し、その直流側に二次電池を備えて出力変動による電力系統の電圧および周波数を抑制する装置構成からなっている。さらに運転損失の低減を考慮して風力発電機の電力変動量又は電力量を計器用変圧器および変流器により検出しその検出量が予め設定された一定の制定レベル以下となりかつ予め制定された一定時間だけ継続した時点で電力変換機およびその補機を停止している。ここでは安定化装置を設けないで風力発電機単独で出力変動の低減化制御を行う。
【0004】
以下、図2により従来の可変速風力発電機の出力制御について説明する。風速の変動に応じて風車から最大出力を取り出すためには風車出力をその軸速度の3乗に比例するように設定すればよい。そこで発電機出力指令値を軸速度の3乗に比例するように制御する。1は風車、2は軸速度センサ、3はかご形誘導発電機、4は励磁用PWMコンバータ、5は出力用PWMインバータ、6は変圧器、7は誘導発電機が発生した電力を測定する電力センサである。
【0005】
軸速度センサ2で検出した軸速度により軸速度の3乗に比例するように電力指令値を2aで演算した結果を電力センサ7で検出した発電機の出力値7aとを加え合わせ点で比較して電力偏差がなくなるように制御装置の制御部8で励磁周波数を演算して励磁用コンバータ4に励磁周波数10を与え誘導発電機3の1次励磁を行うと同時に後段のDCリンク11に発電機出力を中継する。出力インバータ5はDCリンク11からの出力を変圧器6を介して電力系統9に出力する。可変速領域で固定速発電方式よりも風車の始動風速が小さくて発電量が多い可変速風力発電方式においてさらに出力変動の低減化を図り出力変動の低減化を行う制御技術の確立を提供する。

【非特許文献1】松坂、土屋、「風力発電機の出力変動安定化制御に関する研究」,電学論B,Vol.117,No.5,pp.625-633,'97
【非特許文献2】堀内、川人、鈴木,「かご形誘導発電機を用いた可変速風力発電機の電力制御実験」,風力エネルギー,Vol.26,No.3,pp.94−98,2002
【非特許文献3】株式会社日立エンジニアリングサービスカタログ,風力発電システム,カタログ番号PW-04
【非特許文献4】日本鋼管株式会社カタログ,NKK‐LAGERWEY[風力発電設備]カタログ番号NSS2000-9-(9)-1NSS
【特許文献1】公開特許公報(A)特開2001-286062(P2001-286062A)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように急峻な風速変動は発電機の出力が変動する。風車を多数設置しているウインドファームにおいては同じ場所に風力発電機が設置されるので総合的に電力の平滑化はされるが、ここでは単体で設置する場合を対象とする。
【0007】
本発明は、従来の風力発電システムが有していた出力変動の問題を解決し出力変動を低減化するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成する為の制御手段として請求項1に係る発明は電力制御装置の基準電力指令値を補償する出力変動の低減化補償制御回路を設けて補正した基準電力指令を与える事を特徴とする発電機の出力変動の低減化制御装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は軸速度の変動状態を判断して軸速度の変動時のみ出力変動を補償する信号を出力し、軸速度一定の時は通常の最大出力制御で運転する制御方式を特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
急激な風速変動に対して風車出力もそれに応じて急激に変動する。本発明の出力変動低減化の制御装置は風速変動による出力変動の低減化を実現でき、風力発電機システム内部の機械的ストレスや電力系統に与える電力変動も少なくなる。従って風力発電機システムにおいて電気的ストレスと機械的ストレスが軽減されるため、システム全体の耐用年数が長くなる可能性がある。保守面からも点検期間の延長とやり易さの可能性もある。システムの定格出力に対する利用率で定義されている設備利用率(通常20%以上が望ましいとされている)は出力変動の低減化制御を行うと出力変動の低減化回路のパラメータの設定にもよるが低減化しない時よりも数パーセント平均電力が低下するので設備利用率は少し下がるが上述の機械的・電気的ストレスの軽減化の方がシステムとして重要と考える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る風力発電機の出力変動の低減化制御装置及びその制御方法の実施形態を以下に述べる。図1は風力発電装置の概略図と制御装置のブロック図を示す。風車1の回転力は誘導発電機3、コンバータ4、DCリンク11とインバータ5を用いてAC−DC−ACに変換して規定の周波数の交流電力に変換して変圧器6を介して電力系統9に送出する。従来の軸速度の3乗に比例する基準電力指令値を補正するために出力変動を低減化させる出力変動低減化回路2b設けた。出力変動低減化回路2bの動作は軸速度が上昇すれば電力指令値の上昇が大きくならないように補償し、軸速度が減少すれば電力指令値の減少を補償する回路からなっているが発電機が誘導発電機であるため風速変動があれば、出力低減化をしない時に比べて軸速度は大きくなるが、すべりを小さくして出力変動を低減させている。基準電力指令回路2aと出力変動低減化回路2bの出力信号が加え合わせ点で比較された信号2cと電力センサ7で検出した発電機の出力7aの制御偏差がなくなるように制御装置の制御部8で励磁用コンバータ4に励磁用周波数10を与える出力変動低減化制御装置である。出力変動低減化回路2bは軸速度の変化状態を判断する演算機能を有しており軸速度の変動がある時だけ補償信号を出力する回路からなっている。軸速度の変動がない時は一定風速と判断して出力変動低減化回路2bの出力信号はない回路となっている。
【実施例】
【0012】
シミュレーション実験により実施した一実施例を説明する。図3は風車に与える平均風速7m/secの擬似自然風を示す。図4は風力発電機の出力変動低減化を実施した時と実施しない時の発電機の出力を示している。実線は出力変動低減化を実施しない場合の発電機の出力を示し、破線は出力変動低減化を実施した場合の発電機の出力を示している。本図の場合では、出力低減化を実施した場合は実施しない場合に比べて平均電力は約2.9%と減少しているが出力変動は低減化されて出力波形は滑らかになっている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態における出力変動低減化概略構成を示す回路図
【図2】従来の出力変動を考慮していない時の概略構成図
【図3】風車に与える模擬自然風
【図4】風力発電機の出力
【符号の説明】
【0014】
1 風車
2 軸速度センサ
2a 発電機指令値
2b 電力低減化補償回路
2c 補償後の発電機出力指令値
3 かご形誘導発電機
4 励磁用PWMコンバータ
5 出力用PWMインバータ
6 変圧器
7 電力センサ
7a 発電機の出力
8 制御装置の制御部
9 電力系統
10 コンバータ4に与える励磁周波数
11 DCリンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不規則な風力エネルギーで運転している電力系統に連係されている可変速風力発電システムの発電機と発電機に軸速度で定まる基準電力指令を与える電力制御装置を備え、前記発電機の出力変動を低減化するために基準電力指令を補償する出力変動の低減化補償制御回路設けて補正した基準電力指令を与える発電機の出力変動の低減化制御装置
【請求項2】
前記発電機の電力制御装置の出力変動の低減化制御装置は軸速度の変動状態を判断して軸速度の変動時のみ出力変動を補償する信号を出力し、軸速度一定の時は通常の最大出力制御で運転する制御方式

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−262583(P2006−262583A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−74780(P2005−74780)
【出願日】平成17年3月16日(2005.3.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年9月25日 平成16年度電気関係学会四国支部連合大会実行委員会主催の「平成16年度 電気関係学会四国支部連合大会」において文書をもって発表
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】