説明

可変遅延回路、及びスペクトル拡散回路

【課題】従来技術と比較して、簡易な構成でスペクトラム拡散機能を有する可変遅延回路及びスペクトル拡散回路を提供する。
【解決手段】第1の直列回路の遅延セル14の各々及び第2の直列回路の遅延セル14の各々に対応して設けられると共に、対応する遅延セル14から出力されたクロック信号が入力され、かつ切換信号が入力され、入力されたクロック信号に同期させて入力された切換信号を保持し、保持した切換信号を選択信号として対応する遅延セルに出力し、かつ保持した切換信号を出力するフリップフロップ28が直列接続された第3の直列回路と、入力されたクロック信号に同期させて入力された切換信号を保持し、保持した切換信号を出力するフリップフロップ28と、第3の直列回路の最後段に設けられたフリップフロップ28から出力された切換信号を反転して、第1の直列回路の最前段に設けられた遅延セル14に入力するインバータ30とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可変遅延回路、及びスペクトル拡散回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基準クロックを発振する基準発振器と、2つの信号の位相を比較し、位相差に応じた信号を送出する位相比較器と、低周波数帯域の信号を通過させる低域通過フィルタと、入力信号をスペクトラム拡散する変調器と、印加電圧により発振周波数が制御される電圧制御発振器と、電圧制御発振器からの信号を分周して位相比較器に送出する分周器とを少なくとも有するスペクトラム拡散機能付き位相同期発振器を用いたクロック回路において、基準発振器として高調波成分を含まない正弦波基準発振器を用いることにより、基準発振器の高調波信号が電圧制御発振器の電圧制御端子に印加されることを防止する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、一般的に、図6に示すように、クロック(クロック信号)のスペクトラム拡散回路はPLL90と一体で構成されており、入力されるクロックである参照クロックの周波数をある一定の周期で上下にスイープするように変調を行う。
【0004】
PLL90は、位相・周波数検出回路(PFD)91、チャージポンプ(CP)92、ローパスフィルタ(LPF)93、電圧制御発振回路(VCO)94、フィードバック分周期95により構成されるが、スペクトル拡散回路ではLPF93とVCO94との間に電圧加算器96を設け、アナログ変調器97で生成された変調波形を加えることでVCO制御電圧を変調する。
【0005】
VCO94の発振周波数は制御電圧に対して線形の特性を持っているので、変調された制御電圧と同じように発振周波数の変調が行われる。これにより、入力される参照クロックに対して変調された出力クロックが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−246900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記で説明した従来技術では、周波数変調を実現するにはPLL及びアナログ変調技術が必要となるために設計が複雑になる。そのため、簡単に取り込むことができない、という問題点があった。それに加え、PLLのLPFやアナログ変調回路で使用される受動素子が非常に大きな面積を占める、という問題点もあった。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するために成されたものであり、従来技術と比較して、簡易な構成でスペクトラム拡散機能を有する可変遅延回路及びスペクトル拡散回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の可変遅延回路は、電圧値が徐々に小さくなる複数の第1の電圧、電圧値が徐々に大きくなる複数の第2の電圧、及び所定の大きさの第3の電圧を生成する生成手段と、前記第1の電圧及び前記第3の電圧が印加されると共に、クロック信号、切換信号、及び選択信号が入力され、入力された前記選択信号に応じて前記第1の電圧または前記第3の電圧を選択し、選択された電圧に応じて入力されたクロック信号のパルス幅を変更したクロック信号及び入力された切換信号のパルス幅を変更した切換信号を出力する遅延回路を複数個備え、前記複数の遅延回路が、前段に設けられた遅延回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が後段に設けられた遅延回路に入力されるように直列に接続された第1の直列回路と、前記第2の電圧及び前記第3の電圧が印加されると共に、クロック信号、切換信号、及び選択信号が入力され、入力された前記選択信号に応じて前記第2の電圧または前記第3の電圧を選択し、選択された電圧に応じて入力されたクロック信号のパルス幅を変更したクロック信号及び入力された切換信号のパルス幅を変更した切換信号を出力する遅延回路を複数個備え、前記複数の遅延回路が、前段に設けられた遅延回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が後段に設けられた遅延回路に入力されるように直列に接続されると共に、前記第1の直列回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が入力されるように前記第1の直列回路と接続された第2の直列回路と、前記第1の直列回路の遅延回路の各々及び前記第2の直列回路の遅延回路の各々に対応して設けられると共に、対応する遅延回路から出力されたクロック信号が入力され、かつ切換信号が入力され、入力されたクロック信号に同期させて入力された切換信号を保持し、保持した切換信号を選択信号として対応する遅延回路に出力し、かつ保持した切換信号を出力する第1の切換信号出力回路を複数個備え、前記複数の第1の切換信号出力回路が、前段に設けられた第1の切換信号出力回路から出力された切換信号が後段に設けられた第1の切換信号出力回路に入力されるように直列接続された第3の直列回路と、前記第2の直列回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が入力され、入力されたクロック信号に同期させて入力された切換信号を保持し、保持した切換信号が前記第3の直列回路の最前段の第1の切換信号出力回路に入力されるように、保持した切換信号を出力する第2の切換信号出力回路と、前記第3の直列回路の最後段に設けられた第1の切換信号出力回路から出力された切換信号を反転して、前記第1の直列回路の最前段に設けられた遅延回路に入力する反転回路とを含んで構成されている。
【0010】
本発明の可変遅延回路によれば、上記の第1の直列回路、第2の直列回路、及び第3の直列回路の動作によって、クロック信号のスペクトラム拡散を行うので、PLL及びアナログ変調技術を必要としないため設計が複雑にならずに、スペクトラム拡散機能を実現することができる。従って、本発明の可変遅延回路は、従来技術と比較して、簡易な構成でスペクトラム拡散を行うことができる。
【0011】
また、請求項2に係る発明の可変遅延回路は、前記第1の切換信号出力回路及び前記第2の切換信号出力回路をフリップフロップで構成したものである。
【0012】
また、請求項3に係る発明の可変遅延回路は、前記フリップフロップが、外部からのリセット信号に基づいて、保持して出力する信号の状態を初期化するようにしたものである。これにより、任意の時間から変調動作を開始することができるので、入力されたクロック信号の周波数及び振幅が安定してから変調動作を開始することができる。
【0013】
また、上記目的を達成するために、請求項4に係る発明のスペクトル拡散回路は、電圧値が徐々に小さくなる複数の第1の電圧、電圧値が徐々に大きくなる複数の第2の電圧、及び所定の大きさの第3の電圧を生成する生成手段と、前記第1の電圧及び前記第3の電圧が印加されると共に、クロック信号、切換信号、及び選択信号が入力され、入力された前記選択信号に応じて前記第1の電圧または前記第3の電圧を選択し、選択された電圧に応じて入力されたクロック信号のパルス幅を変更したクロック信号及び入力された切換信号のパルス幅を変更した切換信号を出力する遅延回路を複数個備え、前記複数の遅延回路が、前段に設けられた遅延回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が後段に設けられた遅延回路に入力されるように直列に接続された第1の直列回路と、前記第2の電圧及び前記第3の電圧が印加されると共に、クロック信号、切換信号、及び選択信号が入力され、入力された前記選択信号に応じて前記第2の電圧または前記第3の電圧を選択し、選択された電圧に応じて入力されたクロック信号のパルス幅を変更したクロック信号及び入力された切換信号のパルス幅を変更した切換信号を出力する遅延回路を複数個備え、前記複数の遅延回路が、前段に設けられた遅延回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が後段に設けられた遅延回路に入力されるように直列に接続されると共に、前記第1の直列回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が入力されるように前記第1の直列回路と接続され、かつ最後段の遅延回路から出力されるクロック信号が、入力されたクロック信号に基づいて動作する装置に入力されるように前記最後段の遅延回路が設けられた第2の直列回路と、前記第1の直列回路の遅延回路の各々及び前記第2の直列回路の遅延回路の各々に対応して設けられると共に、対応する遅延回路から出力されたクロック信号が入力され、かつ切換信号が入力され、入力されたクロック信号に同期させて入力された切換信号を保持し、保持した切換信号を選択信号として対応する遅延回路に出力し、かつ保持した切換信号を出力する第1の切換信号出力回路を複数個備え、前記複数の第1の切換信号出力回路が、前段に設けられた第1の切換信号出力回路から出力された切換信号が後段に設けられた第1の切換信号出力回路に入力されるように直列接続された第3の直列回路と、前記第2の直列回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が入力され、入力されたクロック信号に同期させて入力された切換信号を保持し、保持した切換信号が前記第3の直列回路の最前段の第1の切換信号出力回路に入力されるように、保持した切換信号を出力する第2の切換信号出力回路と、前記第3の直列回路の最後段に設けられた第1の切換信号出力回路から出力された切換信号を反転して、前記第1の直列回路の最前段に設けられた遅延回路に入力する反転回路とを含んで構成されている。
【0014】
本発明のスペクトル拡散回路によれば、上記の第1の直列回路、第2の直列回路、及び第3の直列回路の動作によって、クロック信号のスペクトラム拡散を行うので、PLL及びアナログ変調技術を必要としないため設計が複雑にならずに、スペクトラム拡散機能を実現することができる。従って、本発明のスペクトル拡散回路は、従来技術と比較して、簡易な構成でスペクトラム拡散を行うことができる。
【0015】
また、請求項5に係る発明のスペクトル拡散回路は、前記第1の切換信号出力回路及び前記第2の切換信号出力回路をフリップフロップで構成したものである。
【0016】
また、請求項6に係る発明のスペクトル拡散回路は、前記フリップフロップが、外部からのリセット信号に基づいて、保持して出力する信号の状態を初期化するようにしたものである。これにより、任意の時間から変調動作を開始することができるので、入力されたクロック信号の周波数及び振幅が安定してから変調動作を開始することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の可変遅延回路及びスペクトル拡散回路によれば、従来技術と比較して、簡易な構成でスペクトラム拡散を行うことができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る可変遅延回路の構成を示す概略図である。
【図2】遅延セルの回路構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る可変遅延回路の動作の一例を説明するための図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る可変遅延回路の動作結果を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る可変遅延回路の変形例の構成を示す概略図である。
【図6】従来技術を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態のスペクトル(スペクトラム)拡散回路としての可変遅延回路10は、電圧生成回路部12、可変遅延回路部14、及び制御レジスタ部18を備えている。
【0021】
電圧生成回路部12には、電源電圧VDDとGNDとの間にn+2個の抵抗20_〜20_n+2が直列に接続されて設けられていると共に、電源電圧VDDとGNDとの間にn+1個の抵抗22_〜22_n+1が直列に接続されて設けられている。このように、電圧生成回路部12は、所定電圧としての電源電圧VDDを抵抗20_〜20_n+2及び22_〜22_n+1によって分圧することにより各々異なる電圧を生成して、詳細を後述する可変遅延回路部14の遅延セル14_〜14〜2nの各々に電圧を供給する。なお、本実施の形態では、2n+3個の抵抗(抵抗20_〜20_n+2、22_〜22_n+1)の各々の抵抗値R[Ω]が全て同一の例について説明する。
【0022】
すなわち、電圧生成回路部12は、電圧値が徐々に小さくなる複数の第1の電圧V〜V、電圧値が徐々に大きくなる複数の第2の電圧Vn+1〜V2n、及び所定の大きさの第3の電圧Vを生成する。なお、電圧生成回路12は、本発明の生成手段に対応する。
【0023】
可変遅延回路部14は、2n個の遅延セル14_〜14〜2nと2つのバッファ(buffer)24、26とを含んで構成される。
【0024】
遅延セル14_〜14〜2nの各々は、2種類の遅延を生成するための2つの電圧印加端子Bias1、Bias2、制御電圧を選択するための選択信号入力端子sel、論理信号入力端子in1、in2、及び入力されたin1、in2の論理を変えないで出力する出力端子out1、out2を備えている。遅延セル14_(1≦m≦2n−1)の出力端子out1と、遅延セル14_m+1の入力端子in1とは直列に接続されている。また、遅延セル14_(1≦m≦2n−1)の出力端子out2と、遅延セル14_m+1の入力端子in2とは直列に接続されている。なお、遅延セル14_〜14_が直列に接続された部分の直列回路は本発明の第1の直列回路の一例である。また、遅延セル14_n+1〜14_2nが直列に接続された部分の直列回路は本発明の第2の直列回路の一例である。
【0025】
初段(1段目)の遅延セル14(すなわち遅延セル14_)の入力端子in1には、参照クロックの信号である参照クロック信号が入力される。そして、最終段(2n段目)の遅延セル14(すなわち遅延セル14_2n)の出力端子out1はバッファ24の入力端子に接続され、バッファ24の出力が出力クロックとなる。この出力クロックは、入力されたクロック信号に基づいて動作する装置(図示せず)に入力される。
【0026】
遅延セル14_の入力端子in2は、制御レジスタ部18の出力resoutに接続されている。なお、遅延セル14_(1≦m≦2n)の入力端子in2には、切換信号が入力される。また、遅延セル14_2nの出力端子out2は、バッファ26の入力端子に接続され、バッファ26の出力が制御レジスタ部18の入力resinに接続される。
【0027】
遅延セル14_〜14_2nの各々の電圧印加端子Bias1には、電圧生成回路部12の出力Vc(=VDD・(n+1)/(n+2))が接続される。
【0028】
また、遅延セル14_(1≦m≦n)の電圧印加端子Bias2には、出力Vm(=VDD・(n+1−m)/(n+2))が入力される。
【0029】
更に、遅延セル14_(n+1≦m≦2n)の電圧印加端子Bias2には、出力Vm(=VDD・(m−n)/(n+2))が入力される。
【0030】
遅延セル14_〜14_2nの各々は、Vcの電圧が印加されたときの遅延をT、抵抗20(または抵抗22)一つ分の電圧変化で変動する遅延量をΔtとする特性をもつ。これにより、m(1≦m≦n)段目の遅延セル14_は、参照クロックを入力として、遅延T及び遅延T+m*Δtの遅延を持たせている。同様に、m(n+1≦m≦2n)段目の遅延セル14_は、遅延Tと遅延T+(2n−m+1)*Δtの遅延を持たせている。
【0031】
なお、本実施の形態では、遅延セル14_(1≦m≦2n)の各々は、選択信号入力端子selにHigh(=1)が入力されると、Bias2を選択してBias2から電圧が印加され、選択信号入力端子selにLow(=0)が入力されると、Bias1を選択してBias1から電圧が印加される。これにより、上記で説明したように、遅延セル14_(1≦m≦n)の各々は、Bias1から電圧を取り込んだ場合には、参照クロックを遅延T遅らせて出力し、Bias2から電圧を取り込んだ場合には、参照クロックを遅延T+m*Δt遅らせて出力する。同様に、遅延セル14_(n+1≦m≦2n)の各々は、Bias1から電圧を取り込んだ場合には、参照クロックを遅延T遅らせて出力し、Bias2から電圧を取り込んだ場合には、参照クロックを遅延T+(2n−m+1)*Δt遅らせて出力する。
【0032】
遅延セル14_(1≦m≦2n)は、例えば、図2に示すような回路構成によって上記で説明した機能を実現できる。しかしながら、遅延セル14_(1≦m≦2n)は、上記で説明した機能が実現可能であるならば、図2に示す回路構成以外の構成をとってもよい。
【0033】
以上、説明したように、本実施の形態の遅延回路としての遅延セル14_(1≦m≦n)は、上記で説明した第1の電圧及び第3の電圧が印加されると共に、クロック信号、切換信号、及び選択信号が入力され、入力された選択信号に応じて第1の電圧または第3の電圧を選択し、選択された電圧に応じて入力されたクロック信号のパルス幅を変更したクロック信号及び入力された切換信号のパルス幅を変更した切換信号を出力する。同様に、本実施の形態の遅延回路としての遅延セル14_(n+1≦m≦2n)は、上記で説明した第2の電圧及び第3の電圧が印加されると共に、クロック信号、切換信号、及び選択信号が入力され、入力された選択信号に応じて第2の電圧または第3の電圧を選択し、選択された電圧に応じて入力されたクロック信号のパルス幅を変更したクロック信号及び入力された切換信号のパルス幅を変更した切換信号を出力する。
【0034】
制御レジスタ部18は、2n+1個のフリップ・フロップ(フリップフロップ)28_〜28_2n+1を含んで構成される。フリップ・フロップ28_〜28_2n+1の各々は、クロック端子の立ち上がりエッジでD入力の値がQ出力として保持される。フリップ・フロップ28_(1≦m≦2n)の各々のクロック端子には、可変遅延回路部14の対応する遅延セル14_の出力端子out1が接続される。また、フリップ・フロップ28_(1≦m≦2n)の各々のデータ入力端子Dには、前段の遅延セル14_m+1のout1にクロック端子が接続されたフリップ・フロップ28_m+1のデータ出力端子Qが接続されている。なお、データの流れを考慮すると、フリップ・フロップ28_に対して、前段のフリップ・フロップは、フリップ・フロップ28_m+1となる。
【0035】
以上、説明したように、本実施の形態の第1の切換信号出力回路としてのフリップ・フロップ28_(1≦m≦2n)は、上記で説明した第1の直列回路の遅延セル14_(1≦m≦n)の各々及び第2の直列回路の遅延セル14_(n+1≦m≦2n)の各々に対応して設けられると共に、対応する遅延セル14_(1≦m≦2n)から出力されたクロック信号が入力され、かつ切換信号が入力され、入力されたクロック信号に同期させて入力された切換信号を保持し、保持した切換信号を選択信号として対応する遅延セル14_(1≦m≦2n)に出力し、かつ保持した切換信号を出力する。なお、フリップ・フロップ28_(1≦m≦2n)が直列接続された部分は、本発明の第3の直列回路の一例である。
【0036】
また、フリップ・フロップ28_2n+1のクロック端子には、バッファ24の出力端子が接続されており、フリップ・フロップ28_2n+1のデータ入力端子Dには、バッファ26の出力端子が接続されている。すなわち、フリップ・フロップ28_2n+1は、上記で説明した第2の直列回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が入力され、入力されたクロック信号に同期させて入力された切換信号を保持し、保持した切換信号が第3の直列回路の最前段の第1の切換信号出力回路としてのフリップ・フロップ28_2nに入力されるように、保持した切換信号を出力する。なお、フリップ・フロップ28_2n+1は、本発明の第2の切換信号出力回路の一例である。
【0037】
更に、フリップ・フロップ28_のデータ出力端子Qには、インバータ30の入力端子が接続されており、インバータ30は入力されたデータを反転させてその出力端子から出力する。インバータ30の出力端子は、遅延セル14_の入力端子in2に接続されている。すなわち、インバータ30は、上記で説明した第3の直列回路の最後段に設けられた第1の切換信号出力回路としてのフリップ・フロップ28_から出力された切換信号を反転して、第1の直列回路の最前段に設けられた遅延回路としての遅延セル14_に入力する。なお、インバータ30は、本発明の反転回路の一例である。
【0038】
次に本実施の形態の可変遅延回路10の作用について、図3のタイミングチャートを参照して説明する。
【0039】
参照クロックが入力される前は、レジスタとしての機能を有する全てのフリップ・フロップ28_〜28_2n+1の各々は0の状態にあり、クロックの立上りエッジが遅延セル14_(1≦m≦2n)の入力端子in1に印加されると遅延T後に出力端子out1からの信号が立上る。出力端子out1からの信号が立上ると、出力端子out1に接続されたフリップ・フロップ28_が前段のフリップ・フロップ28_m+1の出力を保持する。前段のフリップ・フロップ28_m+1の出力が0の場合、当該フリップ・フロップ28_の出力も0を保持し、遅延セル14_の選択信号入力端子selに入力される信号である選択信号は変化しないため、次に立上りエッジが遅延セル14_に印加されても遅延はTとなる。一方、前段のフリップ・フロップ28_m+1の出力が1の場合、当該フリップ・フロップ28_の出力は1に遷移し、遅延セル14_の選択信号入力端子selに入力される信号である選択信号も1に変化するため、次に立上りエッジが遅延セル14_(1≦m≦2n)の入力端子in1に印加されると遅延は、1段目からn段目までの遅延セル14_(1≦m≦n)についてはT+m*Δt、n+1段目から2n段目までの遅延セル14_(n+1≦m≦2n)についてはT+(2n−m+1)*Δtとなる。最初に出力クロックに立ち上がりエッジが現れると可変遅延制御が開始され、制御レジスタ部18内のフリップ・フロップ28_m+1〜フリップ・フロップ28_(1≦m≦2n)間で1を伝播する。全てのフリップ・フロップ28_(1≦m≦2n+1)が1となったときには、最終段のフリップ・フロップ28_の出力がインバータ30によって反転され、反転された信号resout(この場合は0)が、1段目の遅延セル14_の入力端子in2に入力される。この信号は、参照クロックと同じ遅延でresinまで到達して出力クロックとして現れると今度は、制御レジスタ部18内のフリップ・フロップ28_m+1〜フリップ・フロップ28_(1≦m≦2n)間で0を伝播する。この繰り返しにより、クロックが伝播する毎に遅延が、以下の式(1)で制御されることでクロックの周期が変化し、周波数が変調される。
【0040】
【数1】

【0041】
ただし、sel(m)は、遅延セル14_の選択信号入力端子selに入力された選択信号の状態(0または1)を示す関数である。
【0042】
ここで、図4、及び以下の表1にn=5、T=1ns、Δt=10psで参照クロック周波数40MHzを入力した場合の遅延変化、周期の変化及び周波数の変化を示す。この場合、変調周波数はf/(4n+2)より1.818MHzで、変調率はn*Δt/(1/f)より±0.002%の変調クロックを得ることができる。
【0043】
【表1】

【0044】
以上説明したように本実施の形態の可変遅延回路10によれば、デジタル回路と電圧制御の遅延セルを設け、クロックの立上りエッジ毎に遅延の増減を制御することで入力された参照クロックを変調することができるので、デジタル回路と電圧制御の遅延セルを準備するだけで変調クロックを生成できるという効果が得られる。また、デジタル回路と抵抗で構成されているので、面積も小さくすることができるという効果が得られる。従って、本実施の形態のスペクトル拡散回路としての可変遅延回路10によれば、従来技術と比較して、簡易な構成でスペクトラム拡散機能を有することができる。
【0045】
なお、図5に示すように、制御レジスタ部18の各フリップ・フロップ28_(1≦m≦2n+1)がリセット機能を備え、全てのリセット入力端子Rは外部からのリセット信号入力に接続されるようにしてもよい。このとき、リセット機能が活性状態となる信号がリセット入力端子Rから入力されると遅延を制御する制御レジスタ部の全てのフリップ・フロップ28_(1≦m≦2n+1)が0設定となり、変調動作初期状態となる。従って、このように制御レジスタ部18のフリップ・フロップ28_(1≦m≦2n+1)をリセット機能付きとした場合には、任意の時間から変調動作を開始することができるので発振回路が参照クロックとして接続されている場合、周波数及び振幅が安定してから変調動作を開始することができる、という効果が得られる。
【0046】
また、上記では、可変遅延回路部14へ遅延制御用の電圧を供給する電圧生成回路部12に抵抗(抵抗20_〜20_n+2、22_〜22_n+1)を用いた例について説明したが、ダイオード接続されたトランジスタを用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10・・・可変遅延回路
12・・・電圧生成回路部
14・・・可変遅延回路部
18・・・制御レジスタ部
20、22・・・抵抗
24、26・・・バッファ
28・・・フリップ・フロップ
30・・・インバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧値が徐々に小さくなる複数の第1の電圧、電圧値が徐々に大きくなる複数の第2の電圧、及び所定の大きさの第3の電圧を生成する生成手段と、
前記第1の電圧及び前記第3の電圧が印加されると共に、クロック信号、切換信号、及び選択信号が入力され、入力された前記選択信号に応じて前記第1の電圧または前記第3の電圧を選択し、選択された電圧に応じて入力されたクロック信号のパルス幅を変更したクロック信号及び入力された切換信号のパルス幅を変更した切換信号を出力する遅延回路を複数個備え、前記複数の遅延回路が、前段に設けられた遅延回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が後段に設けられた遅延回路に入力されるように直列に接続された第1の直列回路と、
前記第2の電圧及び前記第3の電圧が印加されると共に、クロック信号、切換信号、及び選択信号が入力され、入力された前記選択信号に応じて前記第2の電圧または前記第3の電圧を選択し、選択された電圧に応じて入力されたクロック信号のパルス幅を変更したクロック信号及び入力された切換信号のパルス幅を変更した切換信号を出力する遅延回路を複数個備え、前記複数の遅延回路が、前段に設けられた遅延回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が後段に設けられた遅延回路に入力されるように直列に接続されると共に、前記第1の直列回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が入力されるように前記第1の直列回路と接続された第2の直列回路と、
前記第1の直列回路の遅延回路の各々及び前記第2の直列回路の遅延回路の各々に対応して設けられると共に、対応する遅延回路から出力されたクロック信号が入力され、かつ切換信号が入力され、入力されたクロック信号に同期させて入力された切換信号を保持し、保持した切換信号を選択信号として対応する遅延回路に出力し、かつ保持した切換信号を出力する第1の切換信号出力回路を複数個備え、前記複数の第1の切換信号出力回路が、前段に設けられた第1の切換信号出力回路から出力された切換信号が後段に設けられた第1の切換信号出力回路に入力されるように直列接続された第3の直列回路と、
前記第2の直列回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が入力され、入力されたクロック信号に同期させて入力された切換信号を保持し、保持した切換信号が前記第3の直列回路の最前段の第1の切換信号出力回路に入力されるように、保持した切換信号を出力する第2の切換信号出力回路と、
前記第3の直列回路の最後段に設けられた第1の切換信号出力回路から出力された切換信号を反転して、前記第1の直列回路の最前段に設けられた遅延回路に入力する反転回路と、
を含む可変遅延回路。
【請求項2】
前記第1の切換信号出力回路及び前記第2の切換信号出力回路をフリップフロップで構成した請求項1記載の可変遅延回路。
【請求項3】
前記フリップフロップは、外部からのリセット信号に基づいて、保持して出力する信号の状態を初期化する請求項2記載の可変遅延回路。
【請求項4】
電圧値が徐々に小さくなる複数の第1の電圧、電圧値が徐々に大きくなる複数の第2の電圧、及び所定の大きさの第3の電圧を生成する生成手段と、
前記第1の電圧及び前記第3の電圧が印加されると共に、クロック信号、切換信号、及び選択信号が入力され、入力された前記選択信号に応じて前記第1の電圧または前記第3の電圧を選択し、選択された電圧に応じて入力されたクロック信号のパルス幅を変更したクロック信号及び入力された切換信号のパルス幅を変更した切換信号を出力する遅延回路を複数個備え、前記複数の遅延回路が、前段に設けられた遅延回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が後段に設けられた遅延回路に入力されるように直列に接続された第1の直列回路と、
前記第2の電圧及び前記第3の電圧が印加されると共に、クロック信号、切換信号、及び選択信号が入力され、入力された前記選択信号に応じて前記第2の電圧または前記第3の電圧を選択し、選択された電圧に応じて入力されたクロック信号のパルス幅を変更したクロック信号及び入力された切換信号のパルス幅を変更した切換信号を出力する遅延回路を複数個備え、前記複数の遅延回路が、前段に設けられた遅延回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が後段に設けられた遅延回路に入力されるように直列に接続されると共に、前記第1の直列回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が入力されるように前記第1の直列回路と接続され、かつ最後段の遅延回路から出力されるクロック信号が、入力されたクロック信号に基づいて動作する装置に入力されるように前記最後段の遅延回路が設けられた第2の直列回路と、
前記第1の直列回路の遅延回路の各々及び前記第2の直列回路の遅延回路の各々に対応して設けられると共に、対応する遅延回路から出力されたクロック信号が入力され、かつ切換信号が入力され、入力されたクロック信号に同期させて入力された切換信号を保持し、保持した切換信号を選択信号として対応する遅延回路に出力し、かつ保持した切換信号を出力する第1の切換信号出力回路を複数個備え、前記複数の第1の切換信号出力回路が、前段に設けられた第1の切換信号出力回路から出力された切換信号が後段に設けられた第1の切換信号出力回路に入力されるように直列接続された第3の直列回路と、
前記第2の直列回路から出力されたクロック信号及び切換信号の各々が入力され、入力されたクロック信号に同期させて入力された切換信号を保持し、保持した切換信号が前記第3の直列回路の最前段の第1の切換信号出力回路に入力されるように、保持した切換信号を出力する第2の切換信号出力回路と、
前記第3の直列回路の最後段に設けられた第1の切換信号出力回路から出力された切換信号を反転して、前記第1の直列回路の最前段に設けられた遅延回路に入力する反転回路と、
を含むスペクトル拡散回路。
【請求項5】
前記第1の切換信号出力回路及び前記第2の切換信号出力回路をフリップフロップで構成した請求項4記載のスペクトル拡散回路。
【請求項6】
前記フリップフロップは、外部からのリセット信号に基づいて、保持して出力する信号の状態を初期化する請求項5記載のスペクトル拡散回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−9854(P2011−9854A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148864(P2009−148864)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(308033711)OKIセミコンダクタ株式会社 (898)
【Fターム(参考)】