説明

合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造並びに合成樹脂製シリンダヘッドカバー

【課題】プラグチューブガスケットを合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対して容易に且つ確実に取り付け得る構造を提供する。
【解決手段】内周面の上部に第一の係合部26が一体形成されたプラグチューブ挿通孔24内に、プラグチューブガスケット46を、その上端面が第一の係合部26に係合させて位置せしめる一方、シリンダヘッドカバー10の内側に溶着されるバッフルプレート32に対して、プラグチューブ挿通孔24内のプラグチューブガスケット46の下端面に係合する第二の係合部42を一体形成することにより、プラグチューブガスケット46を、それら第一の係合部26と第二の係合部42との間で挟圧保持せしめて、シリンダヘッドカバー10に取り付けるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製シリンダヘッドカバーとそれに設けられたプラグチューブ挿通孔に挿通されるプラグチューブとの間をシールするプラグチューブガスケットを、かかるシリンダヘッドカバーに対して有利に取り付け得るように改良された、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造と、そのような構造を有する合成樹脂製シリンダヘッドカバーとに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、火花点火式内燃機関、例えば自動車のガソリンエンジン等においては、シリンダヘッドカバーに対して、それを貫通するプラグチューブ挿通孔が設けられ、このプラグチューブ挿通孔内に、例えば下端部においてシリンダヘッドに固定されたプラグチューブの上端部が挿通位置せしめられている。そして、かかるプラグチューブ内に、火花を発生せしめる点火プラグとそれに通電するプラグコイル等を備えたプラグ装置が、着脱可能に収容されている。
【0003】
また、そのような自動車のガソリンエンジン等における従来のシリンダヘッドカバーでは、プラグチューブ挿通孔内に、弾性部材からなるプラグチューブガスケットが、プラグチューブ挿通孔の内周面とプラグチューブの外周面のそれぞれに対して、部分的に接触位置せしめた状態で、取り付けられている。これにより、プラグチューブとシリンダヘッドカバーとの間がシールされて、エンジン内部のブローバイガスやオイルミストの外部への漏出が防止され得るようになっているのである。
【0004】
ところで、よく知られているように、シリンダヘッドカバーには、大別して、アルミダイキャスト等からなる金属製のものと、繊維強化樹脂材料等を用いた金型成形品等からなる合成樹脂製のものの2種類のものがある。それらのうち、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーにおいては、一般に、ブローバイガス中からオイルミストを分離しつつ、オイルミストを含まないブローバイガスを吸気系に導くオイル分離室が、合成樹脂製のバッフルプレートを、カバー本体に対して、その内側(下側)に所定間隔を隔てた位置において溶着することで、比較的に容易に形成されるようになっている。
【0005】
そして、そのような従来の合成樹脂製シリンダヘッドカバーにあっては、例えば、カバー本体に対して、プラグチューブが挿通可能な貫通孔が設けられると共に、この貫通孔を取り囲む筒状部が、カバー本体の内側面(下面)に対して、貫通孔と同軸上に一体形成されて、それら貫通孔と筒状部の内孔とにて、プラグチューブ挿通孔が構成される。また、そのようなプラグチューブ挿通孔内に、プラグチューブガスケットが、その上面部分において、プラグチューブ挿通孔の内周面の上部に一体形成された段部に接触するまで、圧入乃至は挿入される。更に、バッフルプレートとは別個の部材からなる合成樹脂製の支持体が、プラグチューブガスケットの下面部分に接触せしめられた状態で、カバー本体に対して溶着される。かくして、プラグチューブガスケットが、プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられた状態で、段部と支持体との間で挟圧保持されて、シリンダヘッドカバーに取り付けられるようになっているのである(例えば、下記特許文献1及び2参照)。
【0006】
このような合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造によれば、プラグチューブガスケットを、プラグチューブ挿通孔の内周面とプラグチューブの外周面との間に、単に圧入しただけでは、プラグチューブ挿通孔を構成する筒状部の変形によって不安定となりがちなプラグチューブ挿通孔内でのプラグチューブガスケットの保持力が、シリンダヘッドカバーに一体的に設けられた段部とシリンダヘッドカバーに溶着された支持体との間での挟持力によって補完され、以て、プラグチューブガスケットが、シリンダヘッドカバーに対して、より確実に且つ安定的に取り付けられる。そして、それにより、シリンダヘッドカバーとプラグチューブとの間の良好なシール性能が、十分に確保され得るようになっているのである。
【0007】
ところが、かかる従来構造を採用する際には、通常、バッフルプレートが、バイブレーション溶着手法により、シリンダヘッドカバーに溶着されるのに対して、支持体が、超音波溶着手法にて、シリンダヘッドカバーに溶着されるようになる。従って、そのような従来構造に基づいて、プラグチューブガスケットを合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに取り付ける場合にあっては、バッフルプレートをシリンダヘッドカバーに溶着する手法とは異なる手法で、且つバッフルプレートの溶着操作とは別個の操作にて、支持体をシリンダヘッドカバーに溶着する必要があり、それによって、プラグチューブガスケットの取付作業が不可避的に繁雑化するといった問題が惹起されていたのである。
【0008】
【特許文献1】実開平6−34153号公報
【特許文献2】特開2002−22015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、プラグチューブガスケットを、プラグチューブ挿通孔内において十分な保持力をもって保持させて、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対して確実に且つ安定的に取り付けることが出来、しかも、その取付操作が極めて容易に実施され得るように改良された、合成樹脂製シリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造を提供することにある。また、本発明にあっては、そのようなプラグチューブガスケットの取付構造が有利に具備されてなる合成樹脂製シリンダヘッドカバーを提供することをも、その解決課題とするところである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そして、本発明にあっては、かかる課題の解決のために、その要旨とするところは、筒状の弾性部材からなるガスケットであって、且つ合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに設けられたプラグチューブ挿通孔内において、外周部と内周部のそれぞれの少なくとも一部が、該プラグチューブ挿通孔の内周面と、該プラグチューブ挿通孔内に挿通されるプラグチューブの外周面とに対して、それぞれ接触して、位置せしめられることにより、該プラグチューブと該シリンダヘッドカバーとの間をシールするプラグチューブガスケットを、該シリンダヘッドカバーに取り付けるための構造において、前記プラグチューブ挿通孔の内周面における前記シリンダヘッドカバーの外側への開口側部位に、第一の係合部を一体的に突出形成して、該プラグチューブ挿通孔内に、前記プラグチューブガスケットを、その上端面において、該第一の係合部に接触し、係合させた状態で位置せしめる一方、該シリンダヘッドカバーの内側に配置されて、該シリンダヘッドカバーに溶着されるバッフルプレートに対して、該プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられた該プラグチューブガスケットの下端面に接触して、係合する第二の係合部を一体的に設けることにより、該プラグチューブガスケットを、該第一の係合部と該第二の係合部との間で移動不能に挟圧保持せしめて、該シリンダヘッドカバーに取り付けるようにしたことを特徴とする、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造にある。
【発明の効果】
【0011】
すなわち、この本発明に従う、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造にあっては、プラグチューブ挿通孔内でのプラグチューブガスケットの保持力が、位置固定の第一の係合部とシリンダヘッドカバーに溶着されるバッフルプレートに一体形成された第二の係合部との間で発揮されるプラグチューブガスケットに対する挟持力により、有利に且つ十分に高められ得る。
【0012】
そして、特に、本発明構造では、プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられたプラグチューブガスケットの下端面に接触、係合する第二の係合部が、バッフルプレートに一体形成されているところから、バッフルプレートとは別個の部材からなる、前述せる如き支持体を用いた従来のプラグチューブガスケットの取付構造とは異なって、プラグチューブガスケットをシリンダヘッドカバーに取り付けるために、バッフルプレートをシリンダヘッドカバーに溶着する操作とは別に、バッフルプレートとは別個の部材をシリンダヘッドカバーに溶着する操作を何等行うことなく、単に、バッフルプレートをシリンダヘッドカバーに溶着する1回の溶着操作のみで、プラグチューブ挿通孔内のプラグチューブガスケットを、シリンダヘッドカバーに対して、確実に取り付けることが出来る。
【0013】
従って、かくの如き本発明に従う、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造によれば、プラグチューブガスケットを、プラグチューブ挿通孔内において十分な保持力をもって保持させて、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対して確実に且つ安定的に取り付けることが出来、しかも、そのような取付操作を、極めて容易に且つ迅速に実施することが可能となる。そして、その結果として、シリンダヘッドカバーとプラグチューブとの間の良好なシール性能が、簡便な操作にて、より十分に確保され得ることとなるのである。
【発明の態様】
【0014】
ところで、本発明は、少なくとも、以下に列挙する如き各種の態様において、好適に実施され得るものである。
【0015】
<1> 筒状の弾性部材からなるガスケットであって、且つ合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに設けられたプラグチューブ挿通孔内において、外周部と内周部のそれぞれの少なくとも一部が、該プラグチューブ挿通孔の内周面と、該プラグチューブ挿通孔内に挿通されるプラグチューブの外周面とに対して、それぞれ接触して、位置せしめられることにより、該プラグチューブと該シリンダヘッドカバーとの間をシールするプラグチューブガスケットを、該シリンダヘッドカバーに取り付けるための構造において、前記プラグチューブ挿通孔の内周面における前記シリンダヘッドカバーの外側への開口側部位に、第一の係合部を一体的に突出形成して、該プラグチューブ挿通孔内に、前記プラグチューブガスケットを、その上端面において、該第一の係合部に接触し、係合させた状態で位置せしめる一方、該シリンダヘッドカバーの内側に配置されて、該シリンダヘッドカバーに溶着されるバッフルプレートに対して、該プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられた該プラグチューブガスケットの下端面に接触して、係合する第二の係合部を一体的に設けることにより、該プラグチューブガスケットを、該第一の係合部と該第二の係合部との間で移動不能に挟圧保持せしめて、該シリンダヘッドカバーに取り付けるようにしたことを特徴とする、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【0016】
<2> 上記せる態様<1>において、前記シリンダヘッドカバーに、前記プラグチューブ挿通孔が複数設けられる一方、それら複数のプラグチューブ挿通孔の全てを包囲する枠状壁部が、該シリンダヘッドカバーの内側面に対して一体的に立設され、更に、前記バッフルプレートが、該枠状壁部の該シリンダヘッドカバー側とは反対側の下側開口部の全体を覆蓋する状態で、該枠状壁部の下端面に溶着されると共に、該バッフルプレートにおける前記複数のプラグチューブ挿通孔との対応部位のそれぞれに、該プラグチューブ挿通孔よりも小さな貫通孔が設けられて、該バッフルプレートにおける各貫通孔の周辺部分により、前記第二の係合部が各々構成されて、それら各貫通孔の周辺部分が、該複数のプラグチューブ挿通孔内にそれぞれ位置せしめられた前記プラグチューブガスケットの下端面に接触して、係合せしめられるようになっていること。
【0017】
この本態様によれば、バッフルプレートが、十分に大きな大きさにおいて構成され得るようになり、それによって、シリンダヘッドカバーの全体のうち、内側にバッフルプレートが位置せしめられて、二重構造とされた部分の占める割合が、有利に増大せしめられ得る。そして、その結果、シリンダヘッドカバーを通じてのエンジン内の騒音の外部への漏出が効果的に低減せしめられ得ると共に、シリンダヘッドカバーの剛性が、有利に高められ得る。
【0018】
また、本態様においては、特に、シリンダヘッドカバーが、シリンダヘッドの上部に所定距離を隔てて、シリンダヘッドを覆うように位置せしめられると共に、内側にバッフルプレートが溶着されるカバー本体を含んで構成される場合に、そのようなカバー本体に対して上記の如き十分に大きなバッフルプレートを溶着せしめる工程中において、カバー本体のバッフルプレート側とは反対側の面の広い範囲に所定の押圧力が作用せしめられるようになり、それによって、カバー本体の平面度が効果的に高められ得るといった利点が、得られることとなる。
【0019】
<3> 上記せる態様<1>又は態様<2>において、前記シリンダヘッドカバーに、貫通孔が設けられると共に、該シリンダヘッドカバーの内側面に、該貫通孔よりも大径の筒状部が、該貫通孔を包囲し且つ該貫通孔と同軸的に位置するように一体的に立設されて、それら貫通孔と筒状部の内孔とにて、前記プラグチューブ挿通孔が構成される一方、該シリンダヘッドカバーにおける該貫通孔の周辺部分のうち、内側面が該筒状部にて包囲された部分にて、前記第一の係合部が構成されていること。かかる本態様によれば、第一の係合部が容易に且つ確実に形成され得る。
【0020】
<4> 上記の態様<1>乃至態様<3>のうちの何れか一つにおいて、前記プラグチューブガスケットの内部に、剛性部材からなる筒状の補強体が、同軸的に位置する状態で埋設されていること。このような本態様によれば、第一の係合部と第二の係合部との間で作用せしめられる挟持力によるプラグチューブガスケットのヘタリが効果的に防止され得て、プラグチューブガスケットが、それら第一の係合部と第二の係合部との間で、より長期に亘って安定的に挟持され得る。また、プラグチューブガスケットの外周部及び内周部とプラグチューブ挿通孔の内周面及びプラグチューブの外周面との間のそれぞれの密接状態が、より効果的に確保され得て、プラグチューブとシリンダヘッドカバーとの間のシール性能の更なる向上が有利に実現され得る。
【0021】
<5> 上記せる態様<1>乃至態様<4>のうちの何れか一つにおいて、前記プラグチューブガスケットの外周面に、周方向に連続して延びる外周面側シール突起が一体的に突出形成される一方、その内周面に対して、周方向に連続して延びる内周面側シール突起が一体的に突出形成されていること。この本態様によれば、プラグチューブとシリンダヘッドカバーとの間の良好なシール性能が、更に有利に高められ得る。
【0022】
<6> 内燃機関のシリンダヘッドに取り付けられる合成樹脂製のシリンダヘッドカバーであって、(a)プラグチューブが挿通されるプラグチューブ挿通孔が設けられたカバー本体と、(b)筒状の弾性部材からなり、前記カバー本体の前記プラグチューブ挿通孔内において、外周部と内周部のそれぞれの少なくとも一部が、該プラグチューブ挿通孔の内周面と、該プラグチューブ挿通孔内に挿通される前記プラグチューブの外周面とに対してそれぞれ接触して、位置せしめられることにより、該プラグチューブと該カバー本体との間をシールするプラグチューブガスケットと、(c)前記プラグチューブ挿通孔の内周面における前記カバー本体の外側への開口側部位に一体的に突出形成されて、該プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられた前記プラグチューブガスケットの上端面に接触して、係合する第一の係合部と、(d)前記カバー本体の内側に配置されて、該カバー本体に溶着されるバッフルプレートと、(e)該バッフルプレートに一体形成されて、前記プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられた前記プラグチューブガスケットの下端面に接触して、係合する第二の係合部とを含み、前記プラグチューブガスケットが、前記第一の係合部と前記第二の係合部との間で移動不能に挟圧保持せしめられて、前記カバー本体に取り付けられていることを特徴とする合成樹脂製のシリンダヘッドカバー。
【0023】
この本態様によれば、プラグチューブガスケットが、プラグチューブ挿通孔内でのプラグチューブガスケットの保持力が有利に且つ十分に高められ得、それによって、プラグチューブガスケットが、確実に且つ安定的に取り付けられ得る。しかも、バッフルプレートをシリンダヘッドカバーに溶着する1回の溶着操作を行うだけの簡単且つ迅速な作業にて、プラグチューブ挿通孔内のプラグチューブガスケットが、シリンダヘッドカバーに対して、容易に且つ確実に取り付けられ得る。そして、その結果として、シリンダヘッドカバーとプラグチューブとの間の良好なシール性能が、簡便な操作にて、より十分に確保され得ることとなるのである。
【0024】
<7> 上記せる態様<6>において、前記カバー本体に、前記プラグチューブ挿通孔が複数設けられる一方、それら複数のプラグチューブ挿通孔の全てを包囲する枠状壁部が、該カバー本体の内側面に対して一体的に立設され、更に、前記バッフルプレートが、該枠状壁部の該カバー本体側とは反対側の下側開口部を覆蓋する状態で、該枠状壁部の下端面に溶着されると共に、該バッフルプレートにおける前記複数のプラグチューブ挿通孔との対応部位のそれぞれに、該プラグチューブ挿通孔よりも小さな貫通孔が設けられて、該バッフルプレートにおける各貫通孔の周辺部分により、前記第二の係合部が各々構成されて、それら各貫通孔の周辺部分が、該複数のプラグチューブ挿通孔内にそれぞれ位置せしめられた前記プラグチューブガスケットの下端面に接触して、係合せしめられるようになっていること。
【0025】
かかる本態様によれば、十分に大きなバッフルプレートが溶着されて、かかるバッフルプレートとの二重構造とされた部分が有利に増大せしめられ得る。その結果、シリンダヘッドカバーを通じてのエンジン内の騒音の外部への漏出が効果的に低減せしめられ得ると共に、シリンダヘッドカバーの剛性が、有利に高められ得る。また、そのような十分に大きなバッフルプレートがカバー本体に溶着される際に、カバー本体のバッフルプレート側とは反対側の面の広い範囲に所定の押圧力が作用せしめられるようになり、それによって、カバー本体の平面度が効果的に高められ得るといった利点が、得られることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0027】
先ず、図1及び図2には、本発明に従う合成樹脂製シリンダヘッドカバーの一実施形態として、自動車エンジンの合成樹脂製シリンダヘッドカバーが、エンジンに取り付けられた状態での縦断面形態と横断面形態とにおいて、それぞれ概略的に示されている。それらの図において、10は、シリンダヘッドカバーであって、例えば、ポリアミド樹脂をマトリックスとするガラス繊維強化樹脂材料等を用いた射出成形品からなるカバー本体11を有して、構成されている。また、このシリンダヘッドカバー10のカバー本体11は、略長手矩形平板状の天板部12と、かかる天板部12の外周縁部に全周に亘って一体形成された側壁部14とを、更に有している。そして、このカバー本体11が、従来と同様に、天板部12にて、シリンダヘッド15の上部を覆って位置せしめられた状態で、側壁部14の下端部において、シリンダヘッド15に対して、ボルト固定等により、取り付けられている。
【0028】
また、そのようなカバー本体11の天板部12には、それを板厚方向(上下方向)に貫通する、比較的に径が大きな円形の貫通孔16が、天板部12の長手方向に1列に並んで、4個設けられている。更に、かかる天板部12の内側面(下面)には、貫通孔16よりも所定寸法大きな径の内孔18を有する厚肉の円筒部20が、各貫通孔16との同軸上に、所定の高さをもって、それぞれ一個ずつ一体的に立設されている。これにより、それら4個の貫通孔16と4個の円筒部20の内孔18の互いに対応するもの同士にて、天板部12の内側と外側とを連通せしめる連通孔が、4個形成されている。そして、そのような貫通孔16と内孔18とからなる4個の連通孔のそれぞれのものに対して、シリンダヘッド15に下端部が固定されたプラグチューブ22が、それぞれ1個ずつ、その上端部において、同軸的に挿通せしめられている。
【0029】
かくして、ここでは、シリンダヘッドカバー10の天板部12に設けられた貫通孔16と内孔18の互いに対応するもの同士からなる4個の連通孔が、シリンダヘッドカバー10の天板部12を貫通し、所定高さの内周面をもって上下方向に延びるように形成されて、プラグチューブ22が挿通されるプラグチューブ挿通孔24として、各々構成されている。換言すれば、シリンダヘッドカバー10の天板部12に対して、同軸的に位置せしめられた貫通孔16と内孔18とからなるプラグチューブ挿通孔24が、互いに一定の間隔をおいて、天板部12の長手方向に1列に並んで、4個形成されているのである。
【0030】
また、そのようなプラグチューブ挿通孔24においては、それを構成する貫通孔16と内孔18のうち、後者の内径が前者の内径よりも大きくされていることで、かかる貫通孔16の内周面からなる上側内周面部位が、内孔18の内周面部分からなる下側内周面部位よりも、径方向内方に突出せしめられている。
【0031】
これによって、プラグチューブ挿通孔24の内周面の上側部位、つまり、かかる内周面におけるシリンダヘッドカバー10の外側への開口側部位に、径方向内方に所定高さ突出し且つ周方向に連続して延びる円環板状の内フランジ形態を呈する第一の係合部26が、一体的に設けられている。換言すれば、天板部12における貫通孔16の周辺部分のうち、内側面が円筒部20にて包囲された部分にて、第一の係合部26が構成されている。また、そのような第一の係合部26では、その下面が、プラグチューブ挿通孔24の内周面を、その下部部位が上部部位よりも大径となるように段付けする円環面からなる上側押圧面28とされている。
【0032】
さらに、それら4個のプラグチューブ挿通孔24を有するカバー本体11の天板部12の内側面には、前記側壁部14よりも一周り小さな矩形の枠形態を呈する枠状壁部30が、4個のプラグチューブ挿通孔24の全てを包囲する状態で、一体的に立設されている。なお、この枠状壁部30は、プラグチューブ挿通孔24の下側内周面部位を構成する前記円筒部20と同一の高さを有している。
【0033】
更にまた、カバー本体11の天板部12の内側には、バッフルプレート32が、天板部12の内側面に対向して、配置されている。このバッフルプレート32は、カバー本体11と同じガラス繊維強化樹脂材料等を用いて形成された、枠状壁部30よりも少しだけ大きな長手矩形平板からなり、天板部12の内側面の大部分を覆い得る十分に大なる大きさをもって、構成されている。
【0034】
また、かかるバッフルプレート32においては、その幅方向の中央部に、板厚方向に貫通する円形の透孔34が、長手方向に一定の間隔を隔てて、4個形成されている。なお、それら各透孔34は、天板部12に設けられたプラグチューブ挿通孔24の下側内周面部位を構成する内孔18の内径、つまりプラグチューブ挿通孔24の下側開口部の内径よりも小さく、且つ上側内周面部位を与える貫通孔16の内径、つまりプラグチューブ挿通孔24の上側開口部と同じか若しくはそれよりも大きな内径を有している。また、そのような4個の透孔34のうち、互いに隣り合うもの同士の中心間の距離が、天板部12に設けられた4個のプラグチューブ挿通孔24のうちの互いに隣り合うもの同士の中心間の距離と同一の大きさとされている。
【0035】
そして、このようなバッフルプレート32が、枠状壁部30の天板部12側とは反対側の開口部の全部を閉塞すると共に、4個の透孔34内に、前記プラグチューブ22をそれぞれ挿通せしめて、それら各透孔34を、天板部12の4個のプラグチューブ挿通孔24にそれぞれ同軸的に位置せしめた状態で、枠状壁部30と各円筒部20のそれぞれの下端面に対して溶着されている。
【0036】
これにより、カバー本体11の内側における天板部12とバッフルプレート32との間に、それら天板部12の下面(内側面)と、バッフルプレート32の上面と、枠状壁部30の内側側面と、各円筒部20の外周面とにて囲まれてなるオイル分離室36が、設けられている。また、このオイル分離室36は、枠状壁部30に設けられたガス導入口38を通じて、エンジン内部(シリンダヘッドカバー10とシリンダヘッド15との間の空間)に連通せしめられている一方、天板部12に形成されたガス排出口40を通じて、エンジン外部に連通せしめられ、図示されてはいないものの、所定の接続管路を通じて吸気系に接続されている。
【0037】
かくして、ここでは、エンジン内部に存在するオイルミストを含むブローバイガスが、ガス導入口38を通じて、オイル分離室36内に導入され、そこで冷却される等して、ブローバイガス中からオイルが分離されるようになっている。また、オイルが分離されたブローバイガスは、ガス排出口40からエンジン外部に排出され、そして、図示されてはいないものの、ガス排出口40に接続された接続管路を経て、吸気系(共に図示せず)内に流入せしめられるようになっている。なお、オイル分離室36内でブローバイガス中から分離されたオイルは、バッフルプレート32に設けられた、図示しないドレン孔を通じて、エンジン内部に戻されるようになる。
【0038】
そして、本実施形態では、特に、バッフルプレート32に設けられた4個の透孔34のそれぞれの内径が、天板部12に設けられて、それら各透孔34と同軸的に位置せしめられた各プラグチューブ挿通孔24の下側開口部の内径よりも小さくされているところから、バッフルプレート32における各透孔34の周辺部分が、各プラグチューブ挿通孔24の下側開口部の外周部分を覆蓋するように位置せしめられている。
【0039】
これにより、そのようなバッフルプレート32における各透孔34の周辺部分が、前記円環板状形態を呈する第一の係合部26と上下方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられた、円環板状形態を呈する第二の係合部42として、構成されている。また、かかる第二の係合部42の上面が、第一の係合部26の前記上側押圧面28と対向する円環面からなる下側押圧面44とされている。
【0040】
而して、本実施形態においては、かくの如き構造とされたシリンダヘッドカバー10に対して、プラグチューブガスケット46が、プラグチューブ挿通孔24内に挿入位置せしめられた状態で、従来には見られない特別な構造をもって取り付けられているのである。
【0041】
すなわち、図1及び図3から明らかなように、ここでは、プラグチューブガスケット46が、ゴム製の円筒体からなるガスケット本体48を有している。また、このガスケット本体48は、十分に厚い肉厚と、プラグチューブ挿通孔24の下側部分を構成する円筒部20の内孔18の内径よりも僅かに小さな外径とを備えており、更に、かかる内孔18の高さ、換言すれば、前記第一の係合部26の上側押圧面28と前記第二の係合部42の下側押圧面44との間の距離よりも所定寸法大きな高さを有している。
【0042】
また、そのようなガスケット本体48の内部には、それよりも所定寸法小さな高さを有する金属製の円筒状補強体50が、同軸的に位置する状態で、埋設されている。これにより、ガスケット本体48における円筒状補強体50よりも内周側の部分と外周側の部分のそれぞれの径方向のばね特性が、有利に硬くされていると共に、軸方向に作用せしめられる荷重に対するガスケット本体48の耐ヘタリ性が、効果的に高められている。
【0043】
さらに、かかるプラグチューブガスケット46においては、ガスケット本体48の内周面の下端部と外周面の軸方向中間部とに、内周面側シール突起52と外周面側シール突起54とが、それぞれ、一体形成されている。
【0044】
内周面側シール突起52は、環状スプリング56が埋設されて、ガスケット本体48の内孔内に同軸的に位置せしめられた内側ゴムリング58と、この内側ゴムリング58とガスケット本体48の内周面の下端部とを一体的に連結する、厚肉円環板状の連結ゴム膜60とにて、構成されている。そして、かかる内周面側シール突起52の内側ゴムリング58と環状スプリング56は、それぞれ、前記プラグチューブ22の外径よりも所定寸法だけ小さな内径を有して、拡径可能とされている。また、連結ゴム膜60は、その内周部と外周部とが互いに近接するよう撓まされてなる形態を有して、構成されている。かくして、内周面側シール突起52においては、内側ゴムリング58と環状スプリング56とを拡径しつつ、連結ゴム膜60の内周部を外周部に更に接近せしめるような作用力が加えられたときに、かかる作用力に抗する付勢力が、それら内側ゴムリング58と環状スプリング56と連結ゴム膜60とにおいて発揮されるようになっている。
【0045】
また、外周面側シール突起54は、ガスケット本体48の外周面上において所定高さ突出し且つ周方向に連続して延びる突条形態をもって、構成されている。そして、かかる外周面側シール突起54は、圧縮変形せしめられたときに、かかる圧縮変形状態から復元せしめられるように、付勢力が発揮されるようになっている。
【0046】
而して、かくの如き構造とされたプラグチューブガスケット46にあっては、内周面側シール突起52の内側リング58にプラグチューブ22を内挿せしめつつ、ガスケット本体48が、プラグチューブ挿通孔24内に、同軸的に挿入されている。また、そのようなプラグチューブ挿通孔24内への挿入下で、ガスケット本体48の上端面が、第一の係合部26の上側押圧面28に接触、係合せしめられている一方、その下端面が、第二の係合部42の下側押圧面44に接触、係合せしめられて、かかるガスケット本体48が、上側押圧面28にて下方に押圧されると共に、下側押圧面44にて上方に押圧されている。更に、外周面側シール突起54が、プラグチューブ挿通孔24の内周面に押圧されて、圧縮変形せしめられた状態で、プラグチューブ挿通孔24の内周面に圧接(密接)せしめられる一方、内周面側シール突起52の内側リング58と環状スプリング56とが、プラグチューブ22にて拡径されて、連結ゴム膜60が、その内周部を外周部に接近せしめるように撓み変形せしめられた状態で、内側リング58の内周部において、プラグチューブ22の外周面に圧接せしめられている。
【0047】
これにより、プラグチューブガスケット46が、内周面側シール突起52と外周面側シール突起54とにおいて発揮される付勢力に基づいて、プラグチューブ22の外周面とプラグチューブ挿通孔24の内周面との間を液密にシールしつつ、プラグチューブ22の外周面とプラグチューブ挿通孔24の内周面との間に圧入されると共に、かかる圧入下において、上下及び径方向への移動が不能とされるように、第一の係合部26の上側押圧面28と第二の係合部42の下側押圧面44との間で挟圧保持されているのである。
【0048】
なお、このようなプラグチューブガスケット46の配置状態は、例えば、以下のような操作を行うことにより、容易に得られる。即ち、先ず、内周面側シール突起52の内側ゴムリング58内に、プラグチューブ22を挿通せしめつつ、ガスケット本体48の上端面が、第一の係合部26の上側押圧面28に接触位置せしめられるまで、プラグチューブガスケット46が、プラグチューブ挿通孔24内に挿入せしめられる。そして、その後、バッフルプレート32における各透孔34の周辺部分からなる第二の係合部42の上側押圧面44が、プラグチューブ挿通孔24内のプラグチューブガスケット46におけるガスケット本体48の下端面に接触、係合せしめられるように位置せしめた状態下において、バッフルプレート32が、天板部12の内側面上に立設された枠状壁部30と各円筒部20のそれぞれの下端面に対して溶着される。これにより、プラグチューブガスケット46が、プラグチューブ22の外周面とプラグチューブ挿通孔24の内周面との間に圧入され、且つ第一の係合部26と第二の係合部42との間で挟圧保持された状態で、プラグチューブ挿通孔24内に配置されるようになる。
【0049】
このように、本実施形態のシリンダヘッドカバー10においては、プラグチューブガスケット46が、プラグチューブ挿通孔24の内周面とプラグチューブ22の外周面との間に圧入されていることに加えて、天板部12に一体形成された第一の係合部26と、天板部12に溶着されたバッフルプレート32の一部分からなる第二の係合部42との間で挟圧保持されているところから、プラグチューブ挿通孔24内において、更に一層十分な保持力をもって保持せしめられ、以て、シリンダヘッドカバー10に対して確実に且つ安定的に取り付けられ得るようになっているのである。
【0050】
そして、本実施形態にあっては、上記せるように、例えば、プラグチューブガスケット46をプラグチューブ挿通孔24内に挿通位置せしめた状態で、バッフルプレート32をカバー本体11の天板部12に溶着することにより、プラグチューブガスケット46が、第一の係合部26と第二の係合部42との間で挟圧保持されるようになっているところから、バッフルプレート32のカバー本体11への溶着操作とは別の溶着操作によりカバー本体11に溶着された、バッフルプレート32とは別個の部材からなる支持体にて、プラグチューブ挿通孔24内のプラグチューブガスケット46を支持し、保持するようにした従来品とは異なって、単に、バッフルプレート32をカバー本体11に溶着する1回の溶着操作のみで、プラグチューブ挿通孔24内のプラグチューブガスケット46を、シリンダヘッドカバー10に対して、確実に取り付けることが出来る。
【0051】
従って、かくの如き本実施形態のシリンダヘッドカバー10にあっては、プラグチューブガスケット46が、プラグチューブ挿通孔24内において十分な保持力をもって保持せしめられた状態で、極めて容易に且つ迅速に取り付けられ得る。そして、その結果として、シリンダヘッドカバー10とプラグチューブ22との間の良好なシール性能が、簡便な操作にて、より十分に確保され得ることとなるのである。
【0052】
また、かかる本実施形態においては、カバー本体11の天板部12に溶着されるバッフルプレート32が、天板部12の内側面の大部分を覆い得るような十分に大きな大きさを有しているところから、天板部12のうち、そのようなバッフルプレート32との二重構造とされた部分も、十分に大きくされている。これによって、シリンダヘッドカバー10を通じてのエンジン内の騒音の外部への漏出が効果的に低減せしめられ得ると共に、シリンダヘッドカバー10の剛性が、有利に高められ得る。また、そのような十分に大きなバッフルプレート32がカバー本体11に溶着される際に、カバー本体11のバッフルプレート32側とは反対側の面の広い範囲に所定の押圧力が作用せしめられるようになり、それによって、カバー本体11の天板部12や側壁部14の平面度が、それぞれ効果的に高められ得る。
【0053】
さらに、本実施形態では、天板部12の内側面に、貫通孔16よりも大径の円筒部20が、貫通孔16と同軸的に位置する状態で一体的に立設されて、かかる天板部12における貫通孔16の周辺部分のうち、内側面が円筒部20にて包囲された部分にて、第一の係合部26が構成されている。それ故、天板部12に対して円筒部20を設けるだけで、第一の係合部26が容易に且つ確実に形成され得るといった利点が得られる。
【0054】
更にまた、本実施形態においては、プラグチューブガスケット46におけるガスケット本体48の内部に金属製の円筒状補強体50が埋設されて、かかるガスケット本体48の円筒状補強体50よりも外周側の部分における径方向のばね特性が硬くされていることにより、プラグチューブガスケット46の外周面とプラグチューブ挿通孔24の内周面との間のシール性能も、より十分に高められ得る。
【0055】
また、ガスケット本体48の内部への円筒状補強体50の埋設により、上下方向(軸方向)に作用せしめられる荷重に対するガスケット本体48の耐ヘタリ性が高められているため、第一の係合部26と第二の係合部42との間でのガスケット本体48の挟持状態、ひいてはプラグチューブガスケット46のシリンダヘッドカバー10に対する取付状態が、より長期に亘って安定的に維持され得る。そして、その結果、プラグチューブ22の外周面とプラグチューブ挿通孔24の内周面との間のプラグチューブガスケット46による良好なシール性能が、より有利に確保され得ることとなる。
【0056】
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
【0057】
例えば、シリンダヘッドカバー10のカバー本体11の形成材料は、合成樹脂材料であれば、例示のものに、特に限定されるものではなく、シリンダヘッドカバーの形成材料として従来から用いられるものが、何れも採用され得る。
【0058】
また、プラグチューブガスケット46は、筒状の弾性部材からなり、プラグチューブ挿通孔24内に位置して、プラグチューブ22の外周面とプラグチューブ挿通孔24の内周面との間をシールし得るものであれば、その構造や全体形状、更には構成材料も、例示のものに、決して限定されるものでないことは、勿論である。
【0059】
さらに、第一の係合部26は、プラグチューブ挿通孔24の内周面におけるシリンダヘッドカバー10の外側への開口側部位に一体形成されるものであれば、その構造が、例示のものに、特に限定されるものではない。従って、例えば、プラグチューブ挿通孔24を、内周面が軸方向に同一に径をもって延びる円筒面とされた円形孔にて構成して、かかる円筒状内周面の上部部位に、一個又は互いに独立した複数の各種の突起を設け、それらの突起にて、第一の係合部を構成することも出来る。
【0060】
なお、前記実施形態に示されるように、小径の貫通孔16と大径の円筒部20の内孔18にてプラグチューブ挿通孔24を形成すると共に、天板部12における貫通孔16の周辺部分のうち、内側面が円筒部20にて包囲された部分にて、第一の係合部26が構成される場合にあっても、そのような天板部12における円筒部20による包囲部分が、必ずしも円環板形状とされている必要はない。
【0061】
また、前記実施形態では、天板部12の内側面に、複数のプラグチューブ挿通孔24の全てを包囲する長手矩形の枠状壁部30が一体形成されて、かかる枠状壁部30の下側開口部の全体を覆蓋する長手矩形のバッフルプレート32が、枠状壁部30と各円筒部20の下端面に溶着されていたが、バッフルプレート32の形状は、何等これに限定されるものではなく、枠状壁部30の形状に応じて、適宜に変更され得る。
【0062】
例えば、図4に示されるように、天板部12の内側面に、複数のプラグチューブ挿通孔24の形成部位を除く天板部12部分を取り囲むようにして、枠状壁部30が、略H字状の形状をもって一体的に設けられる場合等にあっては、この枠状壁部30の全体形状に対応した略H字状のバッフルプレート32を、枠状壁部30と各円筒部20の下端面に溶着するように為しても良い。この場合にあっても、第二の係合部42が、かかるバッフルプレート32に一体形成されることは、勿論である。
【0063】
また、バッフルプレート32に一体形成される第二の係合部42も、プラグチューブ挿通孔24内に位置するプラグチューブガスケット46の下端面に接触、係合して、第一の係合部26との間で、プラグチューブガスケット46を挟圧保持せしめ得る構造を有しておれば、その形状が、例示された円環板形状に、何等限定されるものではない。例えば、透孔34の内周面に、一個又は互いに独立した複数の各種の突起を設け、それらの突起にて、第二の係合部を構成することも出来る。
【0064】
加えて、前記実施形態では、本発明を、自動車エンジンに取り付けられる合成樹脂製シリンダヘッドカバーと、そのような合成樹脂製シリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造とに適用したものの具体例を示したが、本発明は、その他、自動車エンジン以外の火花発火式内燃機関に取り付けられる合成樹脂製シリンダヘッドカバーと、そのような合成樹脂製シリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造の何れに対しても適用可能であることは、勿論である。
【0065】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に従うシリンダヘッドカバーの一実施形態を、自動車エンジンに取り付けた状態において示す縦断面説明図である。
【図2】図1におけるII−II断面説明図である。
【図3】図1に示されたシリンダヘッドカバーに装着されるプラグチューブガスケットを示す縦断面説明図である。
【図4】本発明に従うシリンダヘッドカバーの別の実施形態を示す図2に対応する図である。
【符号の説明】
【0067】
10 シリンダヘッドカバー 11 カバー本体
12 天板部 16 貫通孔
18 内孔 20 円筒部
22 プラグチューブ 24 プラグチューブ挿通孔
26 第一の係合部 32 バッフルプレート
42 第二の係合部 46 プラグチューブガスケット
52 内周面側シール突起 54 外周面側シール突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の弾性部材からなるガスケットであって、且つ合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに設けられたプラグチューブ挿通孔内において、外周部と内周部のそれぞれの少なくとも一部が、該プラグチューブ挿通孔の内周面と、該プラグチューブ挿通孔内に挿通されるプラグチューブの外周面とに対して、それぞれ接触して、位置せしめられることにより、該プラグチューブと該シリンダヘッドカバーとの間をシールするプラグチューブガスケットを、該シリンダヘッドカバーに取り付けるための構造にして、
前記プラグチューブ挿通孔の内周面における前記シリンダヘッドカバーの外側への開口側部位に、第一の係合部を一体的に突出形成して、該プラグチューブ挿通孔内に、前記プラグチューブガスケットを、その上端面において、該第一の係合部に接触し、係合させた状態で位置せしめる一方、該シリンダヘッドカバーの内側に配置されて、該シリンダヘッドカバーに溶着される合成樹脂製のバッフルプレートに対して、該プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられた該プラグチューブガスケットの下端面に接触して、係合する第二の係合部を一体的に設けることにより、該プラグチューブガスケットを、該第一の係合部と該第二の係合部との間で移動不能に挟圧保持せしめて、該シリンダヘッドカバーに取り付けるようにしたことを特徴とする、合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【請求項2】
前記シリンダヘッドカバーに、前記プラグチューブ挿通孔が複数設けられる一方、それら複数のプラグチューブ挿通孔の全てを包囲する枠状壁部が、該シリンダヘッドカバーの内側面に対して一体的に立設され、更に、前記バッフルプレートが、該枠状壁部の該シリンダヘッドカバー側とは反対側の下側開口部の全体を覆蓋する状態で、該枠状壁部の下端面に溶着されると共に、該バッフルプレートにおける前記複数のプラグチューブ挿通孔との対応部位のそれぞれに、該プラグチューブ挿通孔よりも小さな貫通孔が設けられて、該バッフルプレートにおける各貫通孔の周辺部分により、前記第二の係合部が各々構成されて、それら各貫通孔の周辺部分が、該複数のプラグチューブ挿通孔内にそれぞれ位置せしめられた前記プラグチューブガスケットの下端面に接触して、係合せしめられるようになっている請求項1に記載の合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【請求項3】
前記シリンダヘッドカバーに、貫通孔が設けられると共に、該シリンダヘッドカバーの内側面に、該貫通孔よりも大径の筒状部が、該貫通孔を包囲し且つ該貫通孔と同軸的に位置するように一体的に立設されて、それら貫通孔と筒状部の内孔とにて、前記プラグチューブ挿通孔が構成される一方、該シリンダヘッドカバーにおける該貫通孔の周辺部分のうち、内側面が該筒状部にて包囲された部分にて、前記第一の係合部が構成されている請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【請求項4】
前記プラグチューブガスケットの内部に、剛性部材からなる筒状の補強体が、同軸的に位置する状態で埋設されている請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載の合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【請求項5】
前記プラグチューブガスケットの外周面に、周方向に連続して延びる外周面側シール突起が一体的に突出形成される一方、その内周面に対して、周方向に連続して延びる内周面側シール突起が一体的に突出形成されている請求項1乃至請求項4のうちの何れか1項に記載の合成樹脂製のシリンダヘッドカバーに対するプラグチューブガスケットの取付構造。
【請求項6】
内燃機関のシリンダヘッドに取り付けられる合成樹脂製のシリンダヘッドカバーであって、
プラグチューブが挿通されるプラグチューブ挿通孔が設けられたカバー本体と、
筒状の弾性部材からなり、前記カバー本体の前記プラグチューブ挿通孔内において、外周部と内周部のそれぞれの少なくとも一部が、該プラグチューブ挿通孔の内周面と、該プラグチューブ挿通孔内に挿通される前記プラグチューブの外周面とに対してそれぞれ接触して、位置せしめられることにより、該プラグチューブと該カバー本体との間をシールするプラグチューブガスケットと、
前記プラグチューブ挿通孔の内周面における前記カバー本体の外側への開口側部位に一体的に突出形成されて、該プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられた前記プラグチューブガスケットの上端面に接触して、係合する第一の係合部と、
前記カバー本体の内側に配置されて、該カバー本体に溶着されるバッフルプレートと、
該バッフルプレートに一体形成されて、前記プラグチューブ挿通孔内に位置せしめられた前記プラグチューブガスケットの下端面に接触して、係合する第二の係合部と、
を含み、前記プラグチューブガスケットが、前記第一の係合部と前記第二の係合部との間で移動不能に挟圧保持せしめられて、前記カバー本体に取り付けられていることを特徴とする合成樹脂製のシリンダヘッドカバー。
【請求項7】
前記カバー本体に、前記プラグチューブ挿通孔が複数設けられる一方、それら複数のプラグチューブ挿通孔の全てを包囲する枠状壁部が、該カバー本体の内側面に対して一体的に立設され、更に、前記バッフルプレートが、該枠状壁部の該カバー本体側とは反対側の下側開口部を覆蓋する状態で、該枠状壁部の下端面に溶着されると共に、該バッフルプレートにおける前記複数のプラグチューブ挿通孔との対応部位のそれぞれに、該プラグチューブ挿通孔よりも小さな貫通孔が設けられて、該バッフルプレートにおける各貫通孔の周辺部分により、前記第二の係合部が各々構成されて、それら各貫通孔の周辺部分が、該複数のプラグチューブ挿通孔内にそれぞれ位置せしめられた前記プラグチューブガスケットの下端面に接触して、係合せしめられるようになっている請求項6に記載の合成樹脂製のシリンダヘッドカバー。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−138718(P2007−138718A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329327(P2005−329327)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】