説明

同期回路

【課題】 リセット端子を持たない1:nDEMUXやn:1MUXの複数個を同期させて並列動作させることが可能な同期回路を実現する。
【解決手段】 クロック信号を入力して作動する複数のカウンタIC手段の動作タイミングを一致させる同期回路において、前記複数のカウンタIC手段のうち、基準となるカウンタIC手段のクロック信号と同期対象となる他のカウンタIC手段のクロック信号との位相差を検出する位相差検出手段と、検出された前記位相差に基づいて前記他のカウンタIC手段のクロック信号の位相を制御する位相制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロック信号を入力して作動する複数のカウンタIC手段の動作タイミングを一致させる同期回路に関する。
【背景技術】
【0002】
クロック信号の分配に関連する先行技術文献としては次のようなものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−78014号公報
【0004】
図4は、従来の同期手法による複数のカウンタIC手段を有するビットエラー検出装置の構成例を示す機能ブロック図である。ポート1及びポート2に、検査対象となる例えば周波数40Gbit/sのデータ信号及び40GHzのクロック信号CLKが1:4のデマルチプレクサ(以下、DEMUX)3に入力される。
【0005】
1:4DEMUX3は、40Gbit/sのデータ信号を4個の10Gbit/sのデータ信号に変換して4個の1:nDEMUX41,42,43,44にシリアル/パラレル変換して分配すると共に、40GHzのクロック信号を10GHzのクロック信号に変換して4個の1:nDEMUX41,42,43,44に与える。
【0006】
これら並列動作する4個の1:nDEMUX41,42,43,44は、リセット端子を有し、ポート5に与えられるリセット信号RSにより所定のタイミングでリセットされて内部カウンタのカウンタ値を初期化して同期させている。6は、DEMUX41,42,43,44からのパラレル信号を入力するビットエラー検出手段である。
【0007】
図5は、一般的な、1:nDEMUXの動作を説明するタイミングチャートである。
1:nDEMUXに、(A)に示すデータ信号と(B)に示すクロック信号が入力されると、(C)に示すn分周されたクロック信号とそのエッジに合わせて、(D)に示すようにn本に分離されたデータ信号を出力する。
【0008】
この動作例では、n分周されたクロック信号の立ち下がりエッジで、データ信号の変換点が生じる。このような1:nDEMUXをm個並列して使用する場合には、m個の1:nDEMUXに同時にリセット信号を入力し、IC内部のカウンタの値をそろえることで同期を取る。
【0009】
同期が取れた場合には、m個の1:nDEMUXに同じデータ信号を入力すると、n本に分離されたデータ信号は、各ICの同じ出力端子から同じデータ信号が出力される。
【0010】
一般に1:nDEMUXやn:1マルチプレクサ(以下、MUX)を、m個同期させて並列動作を行う場合、それらICの内部のカウンタ値の初期値が不確定なため、リセット信号を用いてIC内部のカウンタ値を初期化し、同期させる必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
リセット信号を利用した従来の同期手法では、次のような問題点がある。
(1)高速のDEMUXやMUXは、リセット端子を持っているとは限らず、リセット端子がなければ、DEMUXやMUXを高速で並列動作させることができない。
【0012】
(2)リセット端子を有する高速のDEMUXやMUXでも、リセット信号の入力タイミングを高速で行う必要があり、高速のリセット信号の生成手段にコストがかかり、装置のコストバランス上採用ができにくい。
【0013】
従って本発明が解決しようとする課題は、リセット端子を持たない1:nDEMUXやn:1MUXの複数個を同期させて並列動作させることが可能な同期回路を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような課題を達成するために、本発明の構成は次の通りである。
(1)クロック信号を入力して作動する複数のカウンタIC手段の動作タイミングを一致させる同期回路において、前記複数のカウンタIC手段のうち、基準となるカウンタIC手段のクロック信号と同期対象となる他のカウンタIC手段のクロック信号との位相差を検出する位相差検出手段と、検出された前記位相差に基づいて前記他のカウンタIC手段のクロック信号の位相を制御する位相制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0015】
(2)前記位相制御手段は、請求項1記載の同期回路において、前記位相差が所定のレベルを超えて増加したときに作動することを特徴とする。
【0016】
(3)請求項1又は請求項2記載の同期回路において、前記位相差を電圧信号に変換する電圧変換手段と、前記電圧信号が所定のスレッシュホールド値を超えたときに前記位相制御手段に制御信号を与えるウィンドウコンパレータと、を備えたことを特徴とする。
【0017】
(4)請求項1乃至請求項4記載の同期回路において、前記位相制御手段は、前記制御信号で開閉制御されるスイッチング手段で実現されることを特徴とする。
【0018】
(5)請求項1乃至請求項4記載の同期回路において、前記カウンタIC手段は、マルチプレクサであることを特徴とする。
【0019】
(6)請求項1乃至請求項4記載の同期回路において、前記カウンタIC手段は、デマルチプレクサであることを特徴とする。
【0020】
(7)請求項1乃至請求項6記載の同期回路において、前記制御信号が少なくとも一個発生している期間にエラー信号を発生する異常監視手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、リセット端子を持たない高速のDEMUXやMUXを高速で並列動作させることが可能となる。
【0022】
また、リセット端子を有する高速のDEMUXやMUXでも、高速のリセット信号を生成するコストのかかる手間を不要とし、コストバランスのとれた装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。図1は本発明の同期手法による複数のカウンタIC手段を有するビットエラー検出装置の構成例を示す機能ブロック図である。図4で説明した従来装置と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。以下、本発明の特徴部について説明する。
【0024】
図1において、101,102,103,…10mは、並列動作を行なうm個の1:nDEMUXである。ここで、101が基準となるDEMUX、102乃至10mが同期対象となる他のDEMUXである。
【0025】
ポート2に与えられるクロック信号CLKは、分配器8により各DEMUXのクロック入力端子に与えられるが、基準となるDEMUX101には直接CLK1で与えられ、他のDEMUXについては、夫々位相制御手段202,203,…20mを経由してCLK2,CLK3,…CLKmとして入力される。
【0026】
各DEMUX101,102,103,…10mは、入力されたクロック信号CLK2,CLK3,…CLKmを、n分周したCLK1/n,CLK2/n,CLK3/n,…CLKm/nを出力する。
【0027】
302,303,…30mは、DEMUX102,103,…10mに対応して設けられた位相差検出手段である。これら位相差検出手段には、基準となるDEMUX101の分周クロック信号CLK1/nが共通に入力され、対応するDEMUX102,103,…10mの分周クロック信号CLK2/n,CLK3/n,…CLKm/nとの位相差を検出する。
【0028】
位相差検出手段302,303,…30mは、ローパスフィルタ手段を介して位相差検出信号P2,P3,…Pmを出力し、電圧変換手段402,403,…40mに渡す。これら電圧変換手段は、位相差検出信号P2,P3,…Pmを、電圧信号Vp2,Vp3,…Vpmに変換してウィンドウコンパレータ502,503,…50mに渡す。
【0029】
これらウィンドウコンパレータ502,503,…50mは、入力される電圧信号Vp2,Vp3,…Vpmの値を監視し、正側又は負側に設定された所定レベルのスレッシュホールド値を超えたときに、制御信号Vc2,Vc3,…Vcmを前記位相制御手段202,203,…20mに与えて分周クロック信号CLK2/n,CLK3/n,…CLKm/nの位相と分周クロック信号CLK1/nの位相が一致する制御を実行する。
【0030】
位相差が所定の範囲に入れば、ウィンドウコンパレータ出力は発生しなくなり、位相制御機能は停止する。位相制御手段202,203,…20mは、制御信号Vc2,Vc3,…Vcmで開閉制御される単純なスイッチング手段により実現可能である。
【0031】
位相制御手段をスイッチング手段で実現した場合には、位相が合うまで、スイッチの開閉を繰り返して、IC内部のカウンタの値を変化させ、位相が合ったら、スイッチを閉とする。DEMUX102,103,…10mに対応して設けられた位相制御手段202,203,…20mのいずれかのスイッチング手段が開に規制された場合には、同期が取れていない状態であり、エラーとなる。
【0032】
600は、エラー監視手段であり、制御信号Vc2,Vc3,…Vcmを入力して監視し、1個でも制御信号が発生していればエラー信号ERを出力し、処理結果を破棄する等の処理をおこなう。エラー信号ERがなければDEMUX101,102,103,…10mは、同期が取れているものと判断し、処理結果を保存する。
【0033】
図2は、本発明が適用された、40Gbit/sのパルスパターン発生装置の機能ブロック図である。パルスパターン発生部700で生成されたパターンは、4個のn:1MUX801,802,803,804でパラレル/シリアル変換され、4チャンネルの10Gbit/s帯のシリアルデータとなる。
【0034】
その後、4チャンネルの10Gbit/s帯のシリアルデータは、4:1MUX900でパラレル/シリアル変換され、40Gbit/sのデータを発生し、ポート1000に与える。鎖線のブロックで示した4個のn:1MUX801,802,803,804の並列動作には、本発明の同期回路2000が適用されている。
【0035】
図3は、本発明が適用された、40Gbit/sのエラー検出装置の機能ブロック図である。この実施形態は、図4で説明したリセット信号による従来手法と対応している。ポート1に与えられる40Gbit/sのデータは、1:4DEMUX3でシリアル/パラレル変換され、4チャンネルの10Gbit/s帯のシリアルデータとなる。
【0036】
その後、4チャンネルの10Gbit/s帯のシリアルデータは、夫々4個の1:nDEMUX101,102,103,104でシリアル/パラレル変換され、ビットエラー検出部6でビットエラーレートを測定する。鎖線のブロックで示した4個の1:nDEMUX101,102,103,104の並列動作には、本発明の同期回路2000が適用されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の同期手法による複数のカウンタIC手段を有するビットエラー検出装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】本発明が適用された、40Gbit/sのパルスパターン発生装置の機能ブロック図である。
【図3】本発明が適用された、40Gbit/sのエラー検出装置の機能ブロック図である。
【図4】従来の同期手法による複数のカウンタIC手段を有するビットエラー検出装置の構成例を示す機能ブロック図である。
【図5】一般的な、1:nDEMUXの動作を説明するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0038】
2 ポート
8 分配器
101,102,103,…10m 1:nDEMUX
202,203,…20m 位相制御手段
302,303,…30m 位相差検出手段
402,403,…40m 電圧変換手段
502,503,…50m ウィンドウコンパレータ
600 エラー監視手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号を入力して作動する複数のカウンタIC手段の動作タイミングを一致させる同期回路において、
前記複数のカウンタIC手段のうち、基準となるカウンタIC手段のクロック信号と同期対象となる他のカウンタIC手段のクロック信号との位相差を検出する位相差検出手段と、
検出された前記位相差に基づいて前記他のカウンタIC手段のクロック信号の位相を制御する位相制御手段と、
を備えたことを特徴とする同期回路。
【請求項2】
前記位相制御手段は、前記位相差が所定のレベルを超えて増加したときに作動することを特徴とする請求項1に記載の同期回路。
【請求項3】
前記位相差を電圧信号に変換する電圧変換手段と、
前記電圧信号が所定のスレッシュホールド値を超えたときに前記位相制御手段に制御信号を与えるウィンドウコンパレータと、
を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の同期回路。
【請求項4】
前記位相制御手段は、前記制御信号で開閉制御されるスイッチング手段で実現されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の同期回路。
【請求項5】
前記カウンタIC手段は、マルチプレクサであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の同期回路。
【請求項6】
前記カウンタIC手段は、デマルチプレクサであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の同期回路。
【請求項7】
前記制御信号が少なくとも一個発生している期間にエラー信号を発生する異常監視手段を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の同期回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−324752(P2006−324752A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143908(P2005−143908)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】