説明

同期機

【課題】直列励磁式同期機を提供する。
【解決手段】本発明は、電気的に励磁される回転子と給電される固定子巻線とを備える、電気励磁式同期機であって、固定子の三相巻線に直列な整流手段など、状況に応じて制御可能な非線形手段をさらに含み、回転子の界磁巻線がこの非線形手段から給電されるように構成されている、電気励磁式同期機に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期機に関し、特に同期機の直列励磁に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石式同期機(PMSM:Permanent Magnet Synchronous Machines)は、その高トルクと高電力密度ゆえに、ますます普及してきている。主な欠点は、磁石の価格、界磁を弱めることが困難であること、および磁石から生じる力が強いために場合によっては組立/分解が若干難しいことである。
【0003】
別の問題は、永久磁石を製造するための合金に使われる金属が限られた天然資源であり、無尽蔵の供給源がないために、地球環境の観点からこのような金属の使用を減らす必要があることである。
【0004】
電気励磁式同期機(EMSM:Electrically Magnetized Synchronous Machines)は、永久磁石式同期機とほぼ同じ特性を有する。ただし、この同期機の1つの欠点は、回転子に界磁巻線を必要とすることであり、この励磁を行うために、対応する電源とスリップリングまたは回転変圧器、および整流器が必要である。電気励磁式同期機を使用する利点は、永久磁石式同期機に比べ界磁を弱めることが行いやすい点である。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
本発明は、整流手段など、必要に応じて制御可能な非線形手段を電気励磁式同期機の固定子の三相巻線に直列に接続し、界磁巻線の給電を非線形手段から行うという技術思想に基づく。
【0006】
この結果、界磁電流は、三相電流の最大モジュラス(modulus)に常に等しくなり、相電流の位相角の影響を受けなくなる。
【0007】
これによって、電気励磁式同期機にさらなる利点がもたらされる。たとえば、界磁巻線のための追加電源が不要である。
【0008】
電気励磁式同期機が永久磁石式同期機の特性を得るが、励磁が可変である。
【0009】
別の利点は、cosφ、すなわち位相ずれ、を1またはほぼ1に等しく保持することができる、すなわち、位相ずれが皆無であるか、またはほとんど皆無であるので、どのようなパワーエレクトロニクスに対しても負荷が最小化される。
【0010】
本構成を従来の電気励磁式同期機および永久磁石式同期機から区別するために、本新規構成を直列励磁式同期機(SMSM:Series Magnetized Synchronous Machines)と名付けた。
【0011】
本発明は、理論的および実験的に検討されている。したがって、本発明が良好に機能し、かつ界磁指向制御との組み合わせでも良好に機能することが判明している。
【0012】
次に添付図面を参照しながら本発明についてより詳細に説明するが、本発明はこれだけに限定されるものではない。
【0013】
先行技術のPMSMを示す図1において、同期機のアウトゴーイングシャフト(outgoing shaft)に接続されている永久磁石はN−S記号の付いた回転子によって表されており、固定子巻線は巻線記号で示され、固定子電流はそれぞれi、i、およびiと示され、それぞれの電圧u、u、およびuも示されている。PMSMにおいては、電流は固定子にのみ与えられるので、電流を回転子に送る必要はなく、界磁巻線の機能は永久磁気材料によって実現される。
【0014】
図2において、アウトゴーイングシャフトに接続されている電気的に励磁される回転子は、巻線記号によって示されている。固定子巻線は巻線記号で示され、固定子電流はi、i、およびiとそれぞれ示され、それぞれの電圧u、u、およびuも示されている。回転子の軸と位相との間に角度θが与えられる。EMSMにおいては、電流は固定子に印加されるばかりでなく、スリップリング経由で給電される別個の電線路を介して界磁巻線にも与えられる。
【0015】
図3は、本発明による電流による電気的励磁を行うための回路を示す。各固定子巻線はそれぞれa、b、およびcと示されている。この回路図に示すように、巻線a、b、およびcに直列な整流器laと1b、2aと2b、および3aと3bがあるので、スリップリング4および5を介して位相ごとに回転子巻線の磁界に給電される。各線の間、つまりaとbとの間、aとcとの間、およびbとcとの間に、コンデンサ6、7、および8が挿入されており、好適な一実施形態においては、これらのコンデンサは高周波数/高回転数において界磁電流を減らす働きをする。
【0016】
界磁巻線の電圧の大きさは、PMSMにおける固定子巻線の抵抗電圧降下の大きさと同じオーダであるので、供給電圧のごく一部にすぎず、これは定格運転において相電圧または相間電圧として表わされる。
【0017】
界磁電流は、界磁巻線へのエネルギーの伝達に依存する。この伝達は、スリップリング4および5を介して行うことができる。スリップリング4および5の代わりに、電流を界磁巻線に伝達する何れか別の手段を使用してもよい。1つの代替案として、電気スリップリングの代わりに、回転子に対して静止している磁界源から磁気「スリップリング」を介して磁界を回転子に供給してもよい。
【0018】
電解コンデンサなど、さらに別のコンデンサ9を界磁巻線に並列に配置することができる。コンデンサ9の代わりに、星形結線または三角結線のコンデンサ6、7、および8を使用することも、この逆も可能であり、またこれらを同時に使用することもできる。
【0019】
非線形手段を通過する電流は、同期機の有効な固定子電流だけではなく、無効な固定子電流も非線形手段および界磁巻線を通過する。これによって、同期機の動作を制御するためのさまざまな機会が得られる。
【0020】
したがって、本発明は、同期機の電流、磁束の鎖交、トルク、速度、または位置を制御するために、界磁指向制御、直接トルク制御、ベクトル制御、または回転子指向制御に使用することができる。
【0021】
ダイオード、シリコンダイオード、半導体、セレン整流器、多くの場合はシリコン制御整流器または別のpnpn素子であるサイリスタ、サイラトロンつまりガス入り継電器、トランジスタ整流器、水銀蒸気整流器、金属整流器、および同期機的整流器など、さまざまな種類の整流器を使用することができる。
【0022】
本発明の同期機は、PM同期機およびEM同期機と同じ用途に使用することができる。このような用途として、たとえば産業用ロボットまたは空調機器での使用が挙げられる。本機は電力、特に可変周波数派生電力、を発電するための発電機としても使用できる。
【0023】
本機は、三相400V網などの純粋なAC網電流で運転できるが、パワーエレクトロニクス制御を介して運転することが好ましい。
【0024】
したがって、本SMSMは、変形曲線など、形態に依存しない任意のACで運転することができる。
【0025】
本機の効率は、同程度の非同期機より高く、PMSMに匹敵する。
【0026】
本SM同期機の効果密度がPMSMに匹敵することも判明している。
【0027】
電圧および効果ニーズについては、SMSMはどのようなPMSMまたは非同期機(AM)と同じであると見なすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】永久磁石式同期機(先行技術)の原理を示す図。
【図2】電気励磁式同期機(先行技術)の原理を示す図。
【図3】本発明による直列励磁式同期機を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に励磁される回転子と、給電される固定子巻線とを備える電気励磁式同期機において、
固定子の三相巻線に直列な、必要に応じて制御可能な非線形手段をさらに含み、直列励磁式同期機を形成するために、回転子の界磁巻線が前記非線形手段から給電されるように構成されていることを特徴とする電気励磁式同期機。
【請求項2】
前記非線形手段が整流手段である請求項1記載の電気励磁式同期機。
【請求項3】
前記整流手段が半導体整流器である請求項2記載の電気励磁式同期機。
【請求項4】
前記整流手段がダイオード整流器である請求項2記載の電気励磁式同期機。
【請求項5】
前記整流手段がサイリスタ整流器である請求項2記載の電気励磁式同期機。
【請求項6】
前記整流手段がトランジスタ整流器である請求項2記載の電気励磁式同期機。
【請求項7】
前記整流手段がサイラトロン整流器である請求項2記載の電気励磁式同期機。
【請求項8】
前記回転子界磁巻線がスリップリングを介して給電される請求項1記載の電気励磁式同期機。
【請求項9】
前記回転子界磁巻線が磁気スリップリングを介して磁束によって給電される請求項1記載の電気励磁式同期機。
【請求項10】
前記直列励磁式同期機が界磁指向制御によって制御される請求項1〜9いずれか1項記載の電気励磁式同期機。
【請求項11】
前記直列励磁式同期機が回転子指向のベクトル制御によって制御される請求項1〜9いずれか1項記載の電気励磁式同期機。
【請求項12】
前記直列励磁式同期機がベクトル制御によって制御される請求項1〜9いずれか1項記載の電気励磁式同期機。
【請求項13】
前記直列励磁式同期機が直接トルク制御によって制御される請求項1〜9いずれか1項記載の電気励磁式同期機。
【請求項14】
請求項1〜13いずれか1項又は複数の項記載の電気励磁式同期機を備える自動車始動用電動機。
【請求項15】
請求項1〜13いずれか1項又は複数の項記載の電気励磁式同期機を備える自動車用発電機。
【請求項16】
請求項1〜13いずれか1項又は複数の項記載の電気励磁式同期機を備える産業用ロボット用電動機。
【請求項17】
請求項1〜13いずれか1項又は複数の項記載の電気励磁式同期機を備える空調機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−521080(P2006−521080A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507968(P2006−507968)
【出願日】平成16年3月17日(2004.3.17)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000396
【国際公開番号】WO2004/084385
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(502004928)フォルスカーパテント イー エスイーデー アーベー (7)
【Fターム(参考)】