説明

吸着コレットおよび実装方法

【課題】六角錘状の錐体を有するチップを傾きなく安定して保持することができるとともにチップの破損を防止することができる吸着コレット、および六角錘状の錐体を有するチップの破損を防止しつつ当該チップを実装基板に対して位置精度良く実装することが可能な実装方法を提供する。
【解決手段】吸着コレット30は、六角錘状の錐体11を有するチップたるLEDチップ10を吸着するためのチップ吸着用凹所31がコレット本体30aの先端部に形成され、当該コレット本体30に、チップ吸着用凹所31に連通する真空吸着孔32が形成されている。チップ吸着用凹所31は、六角形状に開口され六角錘状の錐体31の各側面11aそれぞれに面接触可能な6つの傾斜面31aで囲まれた六角錘状の凹所からなり、コレット本体30aは、全芳香族ポリイミド樹脂により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップを実装基板に実装する際に用いる吸着コレットおよびそれを用いた実装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、LEDチップやICチップなどのチップを実装基板に実装する際に用いる吸着コレットとして、平コレットや角錐コレットが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
ここにおいて、上記特許文献1には、チップを実装基板にフリップチップ実装するにあたって、吸着コレットとして平コレットを用い、吸着コレットにより吸着したチップの電極に形成されているバンプと実装基板のチップ接合用導体パターンとを位置合わせしてから熱圧着する際に吸着コレットに超音波を水平方向に印加して超音波振動を付加することにより、接合温度の低温化および接合強度の向上を図れることが記載されている。また、上記特許文献2には、チップを実装基板にフリップチップ実装するにあたって、吸着コレットとして角錐コレットを用いることが記載されている。なお、角錐コレットは、先端部に形成されたチップ吸着用凹所が四角錘状であり、チップ吸着用凹所の4つの内側面(傾斜面)が矩形板状のチップの外周縁に接した状態でチップを保持することができる。
【0004】
ところで、近年、LEDチップとして、ZnO結晶からなる六角錘状の錐体の下面側にGaN系材料により形成されたLED部、アノード電極、およびカソード電極が形成されたものが提案されており(例えば、非特許文献1)、この種のLEDチップを錐体よりもLED部が実装基板に近い側となる形で実装基板に実装する際には、角錐コレットを用いることが考えられる。
【特許文献1】特開2004−153055号公報
【特許文献2】特開平6−310566号公報
【非特許文献1】日経エレクトロニクス,日経BP社,2008年2月11日号,p.16−17
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記非特許文献1に開示されているようなLEDチップを角錐コレットを用いて実装基板に実装する場合には、LEDチップを傾きなく安定して保持することが難しく、また、LEDチップに超音波を効率良く伝播させることが難しく、再現性が低下して生産性が低下してしまうという問題があった。
【0006】
また、上述のLEDチップは、結晶成長用基板であるサファイア基板上にLED部を形成した後でLED部とZnO基板とを接合し、その後、サファイア基板を除去してから、ZnO基板を塩酸系溶液により異方性エッチングすることによって形成されており、結晶成長用基板上にLED部が形成されたLEDチップに比べて脆弱であり、角錐コレットが超硬合金(WC、TiC、TaCなどの遷移元素系列の硬質金属炭化物粉末をCo、Niなどの鉄族金属を結合剤として圧縮成形したのち、高温で焼結したもの)や、セラミック(例えば、窒化アルミニウム、アルミナ、酸化チタン、シリカなど)により形成されている場合、角錐コレットにより、LEDチップを吸着したり、LEDチップを実装基板側へ押し付けたり、LEDチップに超音波を伝播させる際にLEDチップが破損して実装工程の歩留まりが低下してしまうことが考えられる。
【0007】
また、LEDチップに超音波を印加することなくLEDチップを実装基板に実装する実装方法として、実装基板のチップ接合用導体パターンとLEDチップの電極とをAuSnバンプを介して接合することが考えられるが、吸着コレットをLEDチップから離した後でAuSnバンプを溶融させた際に実装基板の上記一表面に平行な面内でLEDチップの位置ずれが発生して歩留まりが低下してしまう。なお、チップのチップ接合用導体パターンやチップの電極に、チップを実装基板に実装する際の位置精度を向上させるための凹凸構造を設ける技術も知られているが、このような凹凸構造を設ける場合にはコストが高くなるとともに、溶融したAuSnバンプ中にボイドが発生して接合信頼性の低下や熱抵抗の増加の原因となってしまうことがある。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、六角錘状の錐体を有するチップを傾きなく安定して保持することができるとともにチップの破損を防止することができる吸着コレット、および六角錘状の錐体を有するチップの破損を防止しつつ当該チップを実装基板に対して位置精度良く実装することが可能な実装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、六角錘状の錐体を有するチップを吸着するためのチップ吸着用凹所がコレット本体の先端部に形成され、当該コレット本体に、チップ吸着用凹所に連通する真空吸着孔が形成された吸着コレットであって、チップ吸着用凹所が、六角形状に開口され六角錘状の錐体の各側面それぞれに面接触可能な6つの傾斜面で囲まれた六角錘状の凹所からなり、コレット本体が、全芳香族ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、イミド樹脂の群から選択される樹脂により形成されてなることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、コレット本体に形成されたチップ吸着用凹所が、六角形状に開口され六角錘状の錐体の各側面それぞれに面接触可能な6つの傾斜面で囲まれた六角錘状の凹所からなるので、六角錘状の錐体を有するチップを傾きなく安定して保持することができ、しかも、コレット本体が、全芳香族ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、イミド樹脂の群から選択される樹脂により形成されているので、チップの破損を防止することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記コレット本体は、前記先端部に前記チップ吸着用凹所が複数形成されてなることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、複数の前記チップを1つの実装基板に実装するような場合に、実装基板上の複数の前記チップの配置に複数の前記チップ吸着用凹所の形成位置を対応させておくことにより、複数の前記チップを1つの実装基板に同時に実装することが可能となる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2記載の吸着コレットを用いてチップを実装基板に実装する実装方法であって、実装基板の一表面側に設けられているチップ接合用導体パターンの所定部位上にAuSnバンプを形成した後、実装基板の他表面側からの熱伝導によりAuSnバンプを加熱した状態で、六角錘状の錐体を有するチップの各電極それぞれが対応するAuSnバンプに圧接するように、当該チップを吸着している吸着コレットを実装基板に近づけ、その後、吸着コレットのチップ吸着用凹所の傾斜面とチップの錐体の各側面との間に実装基板の前記一表面に平行な面内において規定したチップの許容位置ずれ距離以下の隙間が形成されるように吸着コレットをチップから浮かせた状態でAuSnバンプを溶融させることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、六角錘状の錐体を有するチップの各電極それぞれが対応するAuSnバンプに圧接するようにチップを吸着している請求項1または請求項2記載の吸着コレットを実装基板に近づけ、その後、吸着コレットのチップ吸着用凹所の各傾斜面とチップの錐体の各側面との間に実装基板の一表面に平行な面内において規定したチップの許容位置ずれ距離以下の隙間が形成されるように吸着コレットをチップから浮かせた状態でAuSnバンプを溶融させるので、AuSnバンプが溶融した状態で吸着コレットによりチップの位置ずれが規制されるから、六角錘状の錐体を有するチップを実装基板に対して位置精度良く実装することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明は、六角錘状の錐体を有するチップを傾きなく安定して保持することができるとともにチップの破損を防止することができるという効果がある。
【0016】
請求項3の発明は、六角錘状の錐体を有するチップの破損を防止しつつ当該チップを実装基板に対して位置精度良く実装することが可能となるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では、本実施形態の吸着コレットを利用した実装方法を適用して製造するデバイスの一例であってチップとしてLEDチップを備える発光装置について図1(a)に基づいて説明し、その後、本実施形態の吸着コレットについて図1および図2に基づいて説明する。
【0018】
発光装置は、図1(a)に示すように、LEDチップ10と、当該LEDチップ10が一表面側に実装される矩形板状の実装基板20とを備えている。
【0019】
実装基板20は、電気絶縁性を有し且つ熱伝導率の高い窒化アルミニウム基板からなる絶縁性基板20aの一表面側に、LEDチップ10のアノード電極13aおよびカソード電極13bそれぞれが金属材料(例えば、Auなど)からなるAuSnバンプ14a,14bを介して接合されるチップ接合用導体パターン(配線パターン)23a,23b、LEDチップ10から放射された光を反射する光反射膜(図示せず)が形成されている。なお、絶縁性基板20aは、LEDチップ10で発生した熱を伝熱させる伝熱板を兼ねたものであり、ガラスエポキシ樹脂基板などの有機系基板に比べて熱伝導率の高いものであればよく、窒化アルミニウム基板に限らず、例えば、アルミナ基板や、ホーロー基板、表面にシリコン酸化膜が形成されたシリコン基板などを採用してもよい。また、チップ接合用導体パターン23a,23bは、Cu膜とNi膜とAu膜との積層膜により構成され、最上層がAu膜となっている。また、上記光反射膜は、Ni膜とAg膜との積層膜により構成してあるが、材料や層構造は特に限定するものではなく、例えば、Ni膜とAl膜との積層膜により構成してもよい。
【0020】
LEDチップ10は、青色光を放射するGaN系の青色LEDチップであり、p形窒化物半導体層と発光層とn形窒化物半導体層との積層構造を有するLED部(発光部)12、n形窒化物半導体層に電気的に接続されたカソード電極13bおよびp形窒化物半導体層に電気的に接続されたアノード電極13aが導電性を有するZnO結晶(n形ZnO結晶)からなる六角錘状の錐体11の下面側に形成されており、錐体11よりもLED部12が実装基板20に近くなる形で実装基板20に実装される。
【0021】
LEDチップ10のLED部12は、n形窒化物半導体層をn形GaN層により構成し、発光層をInGaN層により構成し、p形窒化物半導体層を発光層側のp形AlGaN層と当該p形AlGaN層における発光層側とは反対側のp形GaN層とで構成してあるが、LED部12の積層構造は特に限定するものではなく、発光層は単層構造に限らず、多重量子井戸構造ないし単一量子井戸構造でもよい。
【0022】
また、LEDチップ10は、カソード電極13bが、LED部12のn形窒化物半導体層に接する形で形成されて当該n形窒化物半導体層と電気的に接続され、アノード電極13aが錐体11の下面に接する形で形成され当該錐体11を介してp形窒化物半導体層と電気的に接続されている。したがって、n形窒化物半導体層と発光層とp形窒化物半導体層との平面サイズを同じにすることができる。ここで、LEDチップ10のアノード電極13aおよびカソード電極13bは、下層側のTi膜と上層側のAu膜との積層膜により構成されている。アノード電極13aおよびカソード電極13bそれぞれとチップ接合用導体パターン23a,23bとの間に介在するAuSnバンプ14a,14bの数は特に限定するものではないが、AuSnバンプ14a,14bの数が多いほどLEDチップ10と実装基板20との間の熱抵抗を低減できて放熱性を高めることができる。
【0023】
上述のLEDチップ10は、主表面がc面のサファイアウェハの主表面側に上記積層構造を有するLED部12をエピタキシャル成長法(例えば、MOVPE法など)により成長し、その後、LED部12を錐体11の基礎となるn形ZnOウェハに接合してから、サファイアウェハを除去し、続いて、塩酸系のエッチング液(例えば、塩酸水溶液など)を用いてエッチング速度の結晶方位依存性を利用した異方性エッチングを行うことによりn形ZnOウェハの一部からなる六角錘状の錐体11を形成している。なお、n形ZnOウェハとしては、水熱合成法を利用して製造したものを用いている。錐体11の高さは、n形ZnOウェハの厚さで規定することができ、本実施形態では、n形ZnOウェハとして厚さが500μmのものを用いているので、錐体11の高さは500μmとなっているが、n形ZnOウェハの厚さは特に限定するものではない。また、錐体11の下面に対する各側面11aそれぞれの傾斜角は、n形ZnOウェハの結晶軸方向で規定され、n形ZnOウェハにおいて錘体11の下面となるZn極性面である(0001)面とは反対側のO極性面である(000−1)面に適宜パターニングされたマスクを設けてn形ZnOウェハをO極性面側から異方性エッチングすることにより錐体11を形成しているので、下面に対する各側面11aそれぞれの傾斜角が60°となっている。
【0024】
上述の発光装置では、LED部12がZnO結晶からなる錐体11の下面側に形成され、錐体11よりもLED部12が実装基板20に近くなる形で実装基板20に実装されており、ZnOはサファイアに比べて屈折率がGaNに近いので、LEDチップ10からの光取り出し効率を高めることができる。なお、波長が450nmの光に対するZnOの屈折率は2.1、GaNの屈折率は2.4、サファイアの屈折率は1.8である。
【0025】
以上説明した発光装置によれば、LEDチップ10は、n形窒化物半導体層とp形窒化物半導体層とを有するLED部12、n形窒化物半導体層に電気的に接続されたカソード電極13bおよびp形窒化物半導体層に電気的に接続されたアノード電極13aがZnO結晶からなる六角錘状の錐体11の下面側に形成され、錐体11よりもLED部12が実装基板20に近くなる形で実装基板20に実装されているので、LEDチップ10の出射光の広がり角を大きくすることができる。
【0026】
ここにおいて、単位立体角当たりの放射光強度が最大値に対して50%以上となる角度範囲を光出射角(出射光の広がり角)と定義すると、上述の発光装置では、LEDチップ10の光出射角が120°以上である。なお、上述のLEDチップ10は、LED部12のn形GaN層におけるp形GaN層側とは反対側の表面の平坦部に対してカソード電極13bが形成され、n形GaN層の上記表面においてカソード電極13bが形成されていない領域に、LED部12で発生した光のうちn形GaN層の上記表面側に放射された光の進行方向を変える微細凹凸構造が形成されているので、LED部12で発生した光を効率良くn形ZnO基板3に導入できるようになって、光取り出し効率が向上し、結果的に発光効率が向上する。
【0027】
上述の発光装置では、LEDチップ10の発光色を青色光としてあるが、LEDチップ10の発光色は青色光に限らず、例えば、赤色光、緑色光、紫色光、紫外光などでもよい。また、上述の発光装置において、LEDチップ10から放射される光によって励起されてLEDチップ10よりも長波長の光を放射する蛍光体を含有した透光性材料により形成され実装基板20との間にLEDチップ10を囲む形で実装基板20に固着される色変換部材を設ければ、LEDチップ10から放射される光と蛍光体から放射される光との混色光を得ることができ、例えば、LEDチップ10として青色LEDチップを用い、蛍光体として黄色蛍光体を用いれば、白色光を得ることができる。
【0028】
以下、上述の六角錘状の錐体11を有するLEDチップ10を吸着する吸着コレット30について図1および図2に基づいて説明する。
【0029】
吸着コレット30は、LEDチップ10を吸着するためのチップ吸着用凹所31が角柱状(ここでは、四角柱状)のコレット本体30aの先端部(図1(a)における下端部)に形成され、コレット本体30aに、チップ吸着用凹所31に連通する真空吸着孔32が形成されている。ここで、チップ吸着用凹所31は、コレット本体30aの先端面側(下面側)が開放されており、真空吸着孔32は、チップ吸着用凹所31と中心線が一致するようにチップ吸着用凹所31の上方に形成されている。なお、コレット本体30aの形状は四角柱状に限らず、例えば、六角柱状の形状でもよい。
【0030】
ところで、吸着コレット30のチップ吸着用凹所31は、六角形状に開口され六角錘状の錐体11の各側面11aそれぞれに面接触可能な6つの傾斜面31aで囲まれた六角錘状の凹所により構成されている。要するに、吸着コレット30のチップ吸着用凹所31は、LEDチップ10の錐体11に整合する形状に設計されている。また、吸着コレット30の真空吸着孔32は、円形状に開口されており、吸着コレット30は、真空吸着孔32の内周面とチップ吸着用凹所31の各傾斜面31aとが連続して形成されている。ここにおいて、吸着コレット30は、図2(a)に示すように、コレット本体30aの中心線M1に対する各傾斜面31aの傾斜角θを30°に設定し、中心線M1に直交する仮想平面(ここでは、コレット本体30aの先端面を含む平面)に対する各傾斜面31aの傾斜角βを60°に設定してある。なお、真空吸着孔32の中心線およびチップ吸着用凹所31の中心線はコレット本体30aの中心線M1上に位置している。
【0031】
また、吸着コレット30は、吸着対象のLEDチップ10を吸着した状態において当該LEDチップ10の錐体11の下面がコレット本体30aの先端面を含む平面よりも突出するように、チップ吸着用凹所31の深さ寸法を、吸着対象のLEDチップ10の錐体11の高さ寸法よりも小さく設定してある。
【0032】
ところで、吸着コレット30のコレット本体30aは、ベスペル(登録商標)などの全芳香族ポリイミド樹脂により形成してあるので、他のエンジニアプラスチックにより形成する場合に比べて、耐熱性および耐摩耗性に優れている。ただし、コレット本体30aは、全芳香族ポリイミド樹脂に限らず、全芳香族ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、イミド樹脂などの耐熱性および耐摩耗性の優れた樹脂により形成すればよい。
【0033】
以上説明した本実施形態の吸着コレット30によれば、コレット本体30aに形成されたチップ吸着用凹所31が、六角形状に開口され六角錘状の錐体11の各側面11aそれぞれに面接触可能な6つの傾斜面31aで囲まれた六角錘状の凹所からなるので、六角錘状の錐体11を有するLEDチップ10を傾きなく安定して保持することができ、しかも、コレット本体30aが全芳香族ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、イミド樹脂などにより形成されているので、LEDチップ10の破損を防止することができる。その結果、実装工程の再現性を高めることができて生産性の向上を図れる。
【0034】
次に、上述の吸着コレット30を用いてLEDチップ10を実装基板20に実装する実装方法について説明する。
【0035】
本実施形態における実装方法では、実装基板20の上記一表面側に設けられているチップ接合用導体パターン23a,23bの所定箇所の上にAuSnバンプ14a,14bを形成した後、実装基板20をダイボンド装置(図示せず)のステージの表面側に載置して保持し、実装基板20の他表面側からの熱伝導によりAuSnバンプ14a,14bを当該AuSnバンプ14a,14bの溶融温度よりも低い所定温度(例えば、270℃)に加熱した状態で、上記ダイボンド装置の駆動部により上記ダイボンド装置のヘッド(ボンディングヘッド)に設けた吸着コレット30を移動させて吸着コレット30の真空吸着孔32を通して真空吸引することで吸着コレット30によりLEDチップ10を真空吸着させて保持し、その後、上記駆動部により吸着コレット30を移動させて、図1(a)に示すように、LEDチップ10のアノード電極13aおよびカソード電極13bと上記ステージの上記表面側に保持された実装基板20のチップ接合用導体パターン23a,23b上のバンプ14a,14bとを対向させる。
【0036】
その後、六角錘状の錐体11を有するLEDチップ10の各電極であるアノード電極13aおよびカソード電極13bそれぞれが対応するAuSnバンプ14a,14bに圧接するように、当該LEDチップ10を吸着している吸着コレット30を実装基板20に近づけ、その後、図1(b)に示すように、吸着コレット30のチップ吸着用凹所31の各傾斜面31aとLEDチップ10の錐体11の各側面11aとの間に実装基板20の上記一表面に平行な面内において規定したチップの許容位置ずれ距離以下の隙間Gが形成されるように吸着コレット30をLEDチップ10から浮かせた状態でAuSnバンプ14a,14bを溶融させ、その後、冷却することにより、LEDチップ10のアノード電極13aおよびカソード電極13bそれぞれと実装基板20のチップ接合用導体パターン23a,23bとをAuSnバンプ14a,14bを介して接合する。
【0037】
なお、AuSnバンプ14a,14bの加熱は、上記ステージに設けたヒータにより行えばよい。また、LEDチップ10のアノード電極13aに接合するAuSnバンプ14aは、半田バンプにより構成し、LEDチップ10のカソード電極13bに接合するAuSnバンプ14bは、めっきバンプにより構成している。
【0038】
以上説明した本実施形態の実装方法では、実装基板20の上記一表面側に設けられているチップ接合用導体パターン23a,23bの所定部位上にAuSnバンプ14a,14bを形成した後、実装基板20の上記他表面側からの熱伝導によりAuSnバンプ14a,14bを加熱した状態で、六角錘状の錐体11を有するLEDチップ10の各電極であるアノード電極13aおよびカソード電極13bそれぞれが対応するAuSnバンプ14a,14bに圧接するように、当該LEDチップ10を吸着している吸着コレット30を実装基板20に近づけ、その後、吸着コレット30のチップ吸着用凹所31の各傾斜面31aとLEDチップ10の錐体11の各側面11aとの間に実装基板20の上記一表面に平行な面内において規定したLEDチップ10の許容位置ずれ距離以下の隙間Gが形成されるように吸着コレット30をLEDチップ10から浮かせた状態でAuSnバンプ14a,14bを溶融させるので、AuSnバンプ14a,14bが溶融した状態で吸着コレット30により横方向のLEDチップ10の位置ずれが規制されるから、六角錘状の錐体11を有するLEDチップ10を実装基板20に対して位置精度良く実装することが可能となる。また、吸着コレット30のコレット本体30aを全芳香族ポリイミド樹脂や、ポリアミド樹脂やイミド樹脂などの樹脂により形成することでLEDチップ10の破損を防止でき、しかも、吸着コレット30をLEDチップ10から浮かせた状態でAuSnバンプ14a,14bを溶融させるので、LEDチップ10側からの伝熱によりコレット本体30aの温度が当該コレット本体30aの耐熱温度を越えて熱ダメージを受けるのを防止することができる。なお、あらかじめ、LEDチップ10のアノード電極13aおよびカソード電極13bそれぞれの最表面側にAuSn層をスパッタ法などにより形成しておけば、AuSnバンプ14a,14bとの濡れ性が向上する。
【0039】
ところで、上述の吸着コレット30は、コレット本体30aの先端部に1つのチップ吸着用凹所31を形成してあるが、図3に示すように、コレット本体30aの先端部にチップ吸着用凹所31を複数形成したものでもよい。ここで、図3に示した構成の吸着コレット30によれば、同図に示すように、複数のLEDチップ10を1つの実装基板20に実装するような場合に、実装基板20上の複数のLEDチップ10の配置に複数のチップ吸着用凹所31の形成位置を対応させておくことにより、複数のLEDチップ10を1つの実装基板20に同時に実装することが可能となり、上述の実装方法に適用すれば、複数のLEDチップ10を実装基板20に対して位置精度良く実装することが可能となる。
【0040】
なお、吸着コレット30による吸着対象のチップは、LEDチップ10に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施形態の吸着コレットを用いた実装方法の説明図である。
【図2】同上における吸着コレットを示し、(a)は概略断面図、(b)は概略下面図である。
【図3】同上の他の吸着コレットを用いた実装方法の説明図である。
【符号の説明】
【0042】
10 LEDチップ(チップ)
11 錐体
11a 側面
12 LED部
13a アノード電極
13b カソード電極
14a AuSnバンプ
14b AuSnバンプ
20 実装基板
23a,23b チップ接合用導体パターン
30 吸着コレット
31 チップ吸着用凹所
31a 傾斜面
32 真空吸着孔
G 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
六角錘状の錐体を有するチップを吸着するためのチップ吸着用凹所がコレット本体の先端部に形成され、当該コレット本体に、チップ吸着用凹所に連通する真空吸着孔が形成された吸着コレットであって、チップ吸着用凹所が、六角形状に開口され六角錘状の錐体の各側面それぞれに面接触可能な6つの傾斜面で囲まれた六角錘状の凹所からなり、コレット本体が、全芳香族ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、イミド樹脂の群から選択される樹脂により形成されてなることを特徴とする吸着コレット。
【請求項2】
前記コレット本体は、前記先端部に前記チップ吸着用凹所が複数形成されてなることを特徴とする請求項1記載の吸着コレット。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の吸着コレットを用いてチップを実装基板に実装する実装方法であって、実装基板の一表面側に設けられているチップ接合用導体パターンの所定部位上にAuSnバンプを形成した後、実装基板の他表面側からの熱伝導によりAuSnバンプを加熱した状態で、六角錘状の錐体を有するチップの各電極それぞれが対応するAuSnバンプに圧接するように、当該チップを吸着している吸着コレットを実装基板に近づけ、その後、吸着コレットのチップ吸着用凹所の各傾斜面とチップの錐体の各側面との間に実装基板の前記一表面に平行な面内において規定したチップの許容位置ずれ距離以下の隙間が形成されるように吸着コレットをチップから浮かせた状態でAuSnバンプを溶融させることを特徴とする実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−141131(P2010−141131A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316056(P2008−316056)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】