説明

吸着装置

【課題】小型で騒音の小さい吸着装置を提供する。
【解決手段】モータ200と、モータ200に入力端が連結されたクランク機構300と、シリンダ400と、吸気室505に通じる吸気路504が形成されており、吸気路504の端部に、吸気室505内の負圧が作用すると開放され、正圧が作用すると閉鎖される吸気用チェック弁502を有するシリンダヘッド500と、クランク機構300の出力端に連結されてシリンダ400内を上下動するピストン603によってシリンダヘッド500の吸気室505内の圧力を変化させる構成とされており、ピストン603に形成された排気路613の端部に、吸気室505内の負圧が作用すると閉鎖され、正圧が作用すると開放される排気用チェック弁602を有するダイヤフラムポンプ600と、シリンダヘッド500に設けられたバキュームパット700と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着装置は、被吸着体を保持するために、例えば運搬機器、電気機器等の製造ラインの組み立て装置に取り付けられる。この吸着装置は、外部のポンプから高圧エアーをホースによってエジェクターに送り込み、エジェクターで高真空な吸着力を発生させている。
【0003】
ちなみに、特許文献1には、真空ポンプとしてダイヤフラムポンプを用いることが開示されている。しかし、具体的にどの様な構成として用いるかが開示されていない。しかも、ダイヤフラムポンプは吸着面を清潔にするために用いている。
【特許文献1】特開2000−21963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように従来の吸着装置は、外部のポンプから高圧エアーをホースによってエジェクターに送り込み、エジェクターで高真空な吸着力を発生させる構成であるので、小型化することができない。また、エジェクターを用いているので、騒音が大きい。
本発明の目的は、小型で騒音の小さい吸着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る吸着装置は、
モータと、
前記モータに入力端が連結されたクランク機構と、
シリンダと、
吸気室に通じる吸気路が形成されており、前記吸気路の端部に、前記吸気室内の負圧が作用すると開放され、正圧が作用すると閉鎖される吸気用チェック弁を有するシリンダヘッドと、
前記クランク機構の出力端に連結されて前記シリンダ内を上下動するピストンによって前記シリンダヘッドの吸気室内の圧力を変化させる構成とされており、前記ピストンに形成された排気路の端部に、前記吸気室内の負圧が作用すると閉鎖され、正圧が作用すると開放される排気用チェック弁を有するダイヤフラムポンプと、
前記シリンダヘッドに設けられたバキュームパットと、を備え
被吸着体を吸着するときは、前記バキュームパット内の空気を吸気するべく、前記モータの駆動力によって前記ピストンを引き上げて前記シリンダヘッドの吸気室内の圧力を下げ、前記排気側チェック弁を閉鎖すると共に、前記吸気側チェック弁を開放し、前記バキュームパット内の空気を前記シリンダヘッドの吸気路に導いて前記吸気室内に吸気する工程と、
前記吸気室内の空気を排気するべく、前記モータの駆動力によって前記ピストンを押し下げて前記吸気室内の圧力を上げ、前記吸気側チェック弁を閉鎖すると共に、前記排気側チェック弁を開放し、前記吸気室内の空気を前記ピストンの排気路に導いて前記排気路から外部に排気する工程と、を繰り返す。外部のポンプから高圧エアーをホースによってエジェクターに送り込み、エジェクターで高真空な吸着力を発生させる構成ではないので、小型化することができる。しかも駆動力としてモータを用いたので、騒音を低減することができる。また、吸着装置は、ホースを省略することができるので、取り回しが容易で信頼性が高い。さらに、吸着装置は、一度バキュームパット内を略真空にすると、その状態を維持することができるので、省エネで二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0006】
上述のクランク機構は、
前記シリンダに立設された支持部材によって回転可能に支持されており、モータに連結された、入力端を成す回転軸と、
回転中心から離れた偏心位置に前記回転軸が連結された軸受と、
一方の端部に前記軸受が嵌め込まれ、他方側の端部がピストンに回転可能に連結された、出力端を成すリンク部材と、を備えていることが好ましい。
【0007】
上述のシリンダヘッドは、
第1の吸気路及び前記第1の吸気路に通じる吸気室が形成されたシリンダヘッド本体部と、
伸長及び収縮する可変部と、前記可変部に連結されたピストン部とを有し、前記吸気室の第1室に、前記ピストン部の上下動によって前記第1の吸気路が開閉されるように配置された吸気用チェック弁と、
前記吸気室の第1室と第2室とを隔てており、前記第1室と前記第2室とを結ぶ第2の吸気路を有し、前記吸気用チェック弁の可変部の上端が連結されたチェック弁サポートと、を備え、
前記ピストンが押し下げられて前記シリンダヘッドの吸気室内の圧力が上がると、前記吸気室の正圧によって前記吸気用チェック弁のピストン部が下方に移動し、前記ピストン部が前記シリンダヘッド本体部に接して前記第1の吸気路を閉鎖し、前記バキュームパット内の空気の吸気を遮断し、
前記ピストンが引き上げられて前記吸気室内の圧力が下がると、前記吸気室の負圧によって前記吸気用チェック弁のピストン部が上方に移動し、前記ピストン部が前記シリンダヘッド本体部から離れて前記第1の吸気路を開放し、前記バキュームパット内の空気を、前記第1の吸気路から前記吸気室の第1室を介して前記第2の吸気路に導いて前記第2室に吸気することが好ましい。
【0008】
上述のダイヤフラムポンプは、
空洞部が形成されており、前記空洞部と外部とを結ぶ第1の排気路を有するピストンサポートと、
伸長及び収縮する可変部と、前記可変部に連結されたピストン部とを有し、前記空洞部の上端に前記可変部の上端が連結された排気用チェック弁と、
前記シリンダヘッドの吸気室内と前記空洞部とを結ぶ第2の排気路が形成されており、前記空洞部に、前記排気用チェック弁のピストン部の上下動によって、前記第2の排気路が開閉されるように挿入され一体化されたピストンと、
前記ピストンの外周に設けられており、前記シリンダと前記シリンダヘッドとの間に挟み込まれたダイヤフラムと、を備え、
前記ピストンサポートは前記クランク機構の出力端に連結されており、前記ピストンが引き上げられて前記シリンダヘッドの吸気室内の圧力が下がると、前記吸気室の負圧によって前記排気用チェック弁のピストン部が下方に移動し、前記ピストン部が前記ピストンと接して前記第2の排気路を閉鎖し、前記吸気室内の空気の排気を遮断し、
前記ピストンが押し下げられて前記吸気室内の圧力が上がると、前記吸気室の正圧によって前記排気用チェック弁のピストン部が上方に移動し、前記ピストン部が前記ピストンから離れて前記第2の排気路を開放し、前記吸気室内の空気を、前記空洞部から前記第2の排気路を介して前記第1の排気路に導いて外部に排気することが好ましい。
【0009】
ここで、吸着装置は、真空度センサー又は吸着確認検出器を備えていることが好ましい。信頼性を高めることができるだけでなく、効率良く稼働させて電流使用を大幅に低減することができる。
【0010】
さらに、上述のシリンダヘッドに真空解除弁を備えていることが好ましい。簡単に被吸着体を外すことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型で騒音の小さい吸着装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る吸着装置の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。なお、本発明の上下左右は、便宜上、図1の紙面上における各構成部材の位置関係をいうものであって、使用形態によって変化する。
【0013】
この吸着装置1は、図1に示すように、モータ200と、クランク機構300と、シリンダ400と、シリンダヘッド500と、ダイヤフラムポンプ600と、バキュームパット700とを備えている。
【0014】
モータ200としては、電動小型モータを用いることができる。モータ200は出力軸201が連結部材8を介してクランク機構300の入力端に連結されており、図1の二点鎖線で示したカバー部材9内に収められてシリンダ400に支持されている。ちなみに、モータ200の電源としては充電式電池を用いることが好ましい。電源供給用の配線を省略することができ、取り回しが良くなる。
【0015】
クランク機構300は、回転軸301と、軸受302、304と、リンク部材303とを備えている。
【0016】
回転軸301は、シリンダ400に立設された支持部材10によって回転可能に支持されている。回転軸301はクランク機構300の入力端を成し、一方の端部がモータ200に連結されている。
【0017】
軸受302はベアリングである。軸受302はリンク部材303の上部に嵌め込まれている。軸受302の内輪302aには、図2に示すように、内輪302aの回転中心Oから離れた偏心位置に回転軸301の他方側の端部が通されて固定されている。
【0018】
リンク部材303は、カム形状に形成されている。リンク部材303はクランク機構300の出力端を成し、リンク部材303の下部がダイヤフラムポンプ600に回転可能に連結されている。
【0019】
軸受304もベアリングである。軸受304はリンク部材303の下部に嵌め込まれている。
【0020】
つまり、クランク機構300は、モータ200の出力軸201に連結された回転軸301が回転することによって、軸受302の内輪302aが偏心回転し、リンク部材303を上下動させる。その結果、リンク部材303に連結されたダイヤフラムポンプ600が上下動する構成とされている。このとき、リンク部材303が若干左右に振られるが、リンク部材303の下部は軸受304を介してダイヤフラムポンプ600に回転可能に連結されているので、リンク部材303の左右への振れが吸収される。
【0021】
但し、クランク機構300は、モータ200の回転駆動力をダイヤフラムポンプ600の上下動に変換することができる構成とされていれば良い。
【0022】
シリンダ400は、ダイヤフラムポンプ600が内部に収められた貫通穴401が形成されている。貫通穴401は、ダイヤフラムポンプ600が上下動することができる内径と深さを有する。このシリンダ400の上面には、図3に示すように、クランク機構300の回転軸301を軸受302の両側で支持する支持部材10が立設されたフランジ部材11がボルト等の接合手段で連結されている。フランジ部材11の中央部には、ダイヤフラムポンプ600が吸い上げた空気が、シリンダ400から良好に外部に排気されるように、排気用穴11aが形成されている。
【0023】
シリンダヘッド500は、シリンダ400の下端部に密閉空間を形成するべく、シリンダ400の下面に連結されている。このシリンダヘッド500は、図3に示すように、シリンダヘッド本体部501と、吸気用チェック弁502と、チェック弁サポート503とを備えている。
【0024】
シリンダヘッド本体部501は、第1の吸気路504及び前記第1の吸気路504に通じる吸気室505が形成されている。吸気室505は、ダイヤフラムポンプ600が一回の上下動で吸気及び排気ができる容積とされている。この吸気室505は、チェック弁サポート503によって第1室505aと第2室505bとに隔てられている。第1室505aの内径は第2室505bの内径より小さく且つ吸気用チェック弁502が良好に上下動できる深さを有する。第2室の内径はシリンダ400の内径と略等しい。
【0025】
吸気用チェック弁502は、ゴム等の弾性部材によって形成されている。この吸気用チェック弁502は、可変部506と、ピストン部507とを備えている。
【0026】
可変部506は、チェック弁サポート503に嵌め込まれて連結された筒状部508の下端部から放射状に広がっている。この可変部506が押し潰されて収縮し、又は引き伸ばされて伸長して、ピストン部507を上下動させる。
【0027】
ピストン部507は、可変部506の下端縁から吊り下げるように連結されている。ピストン部507の外径は、第1室505aの内径より小さく且つ第1の吸気路504の内径より大きく形成されている。
【0028】
このような吸気用チェック弁502は、吸気室505の第1室505aに、ピストン部507の上下動によって第1の吸気路504が開閉されるように配置されている。つまり、吸気用チェック弁502は、吸気室505内の負圧が作用すると、ピストン部507が上方に移動し、シリンダヘッド本体部501の第1室505aの下面からピストン部507が離れて第1の吸気路504を開放する。一方、吸気用チェック弁502は、吸気室505内の正圧が作用すると、ピストン部507が下方に移動し、シリンダヘッド本体部501の第1室505aの下面にピストン部507が接して第1の吸気路504を閉鎖する。
【0029】
チャック弁サポート503は、中央に吸気用チェック弁502の筒状部508が嵌め込まれて連結された嵌合穴509と、嵌合穴509の周辺に第1室505aと第2室505bとを結ぶ第2の吸気路510とが形成された板状部材であり、第2室505bの内径と略等しい外径を有する。チェック弁サポート503は、第1室505aの内径を第2室505bの内径より小さくするべく、内方に突出した部分にボルト等の接合手段で連結されている。
【0030】
ダイヤフラムポンプ600は、ピストンサポート601と、排気用チェック弁602と、ピストン603と、ダイヤフラム604とを備えている。このダイヤフラムポンプ600は、クランク機構300の出力端に連結されてシリンダ400内を上下動するピストン603によって、シリンダヘッド500の吸気室505内の圧力を変化させる構成とされている。
【0031】
ピストンサポート601は、図4に示すように、シリンダ400の貫通穴401の内径と略等しい外径に形成された円筒部材であり、シリンダ400内に摺動可能に嵌め込まれている。ちなみに、本実施形態では、ピストンサポート601がシリンダ400内を良好に摺動することができるように、ピストンサポート601の外周とシリンダ400の内周との間にブッシュ12が配置されている。
【0032】
ピストンサポート601の上部には、クランク機構300のリンク部材303の下部を嵌め込む嵌合穴605が形成されている。このピストンサポート601には、ピストンサポート601とリンク部材303とを連結するピストンピン13を通す貫通穴606が水平に形成されている。リンク部材303の下部に嵌め込まれた軸受304と貫通穴606とが同心位置に配置されるようにリンク部材303が嵌合穴605に嵌め込まれ、ピストンピン13を通して相互が連結されている。
【0033】
ピストンサポート601の下部には、排気用チェック弁602及びピストン603の上部が収められた空洞部607が形成されている。空洞部607の上面には排気用チェック弁602の上端が嵌め込まれて連結された嵌合穴608が形成されている。
【0034】
ピストンサポート601には、空洞部607と外部とを結ぶ第1の排気路609が形成されている。
【0035】
排気用チェック弁602は、ゴム等の弾性部材によって形成されている。この排気用チェック弁602は、可変部610と、ピストン部611とを備えている。
【0036】
可変部610は、ピストンサポート601の嵌合穴608に嵌め込まれて連結された筒状部612の下端部から放射状に広がっている。この可変部610が押し潰されて収縮し、又は引き伸ばされて伸長して、ピストン部611を上下動させる。
【0037】
ピストン部611は、可変部610の下端縁から吊り下げるように連結されている。ピストン部611の外径は、空洞部607の内径より小さく且つピストン603に形成された第2の排気路613の内径より大きく形成されている。
【0038】
ピストン603は、シリンダヘッド本体部501の第2室505bの内径、即ちピストンサポート601の外径と略等しい外径を有する大径部603aと、空洞部607の内径と略等しい外径を有し、空洞部607に嵌め込まれて一体化される小径部603bとを備えている。
【0039】
大径部603a及び小径部603bには、シリンダヘッド500の吸気室505内と空洞部607とを結ぶ第2の排気路613が形成されている。小径部603bは、空洞部607の上面に連結された排気用チェック弁602の上下動によって、第2の排気路613が開閉されるように、空洞部607に嵌め込まれ一体化されている。つまり、排気用チェック弁602は、吸気室505内の負圧が作用すると、ピストン部611が下方に移動し、ピストン603の上面603cにピストン部611が接して第2の排気路613を閉鎖する。一方、排気用チェック弁602は、吸気室505内の正圧が作用すると、ピストン部611が上方に移動し、ピストン603の上面603cからピストン部611が離れて第2の排気路613を開放する。
【0040】
ちなみに、本実施形態では、小径部603bの上面周縁部に、排気用チェック弁602のピストン部611の外径より大きな内径を有する立ち上がり部614が形成されているが、省略しても良い。
【0041】
ダイヤフラム604は、ピストン603の大径部603aと小径部603bとの境界部分の外周に設けられている。このダイヤフラム604は、シリンダ400とシリンダヘッド500との間に挟み込まれ、ダイヤフラムポンプ600を支持すると共に、ピストン603の上下動を可能にしている。また、ダイヤフラム604は、シリンダヘッド500の吸気室505内の空気が、ダイヤフラムポンプ600の第2の排気路613以外から漏れ出さないようにする役割を担っている。
【0042】
バキュームパット700は、被吸着体に良好に吸い付くことができるように、ゴム等の吸盤部材である。このバキュームパット700の上端は、シリンダヘッド本体部501の下端部に嵌め込まれて連結されている。
【0043】
このような構成の吸着装置1を用いて被吸着体を吸着するときは、以下の吸気工程と排気工程とを繰り返す。
吸気工程は、図5に示すように、バキュームパット700内の空気を吸気するべく、モータ200の駆動力によってバキュームポンプ600のピストン603を引き上げる。それにより、シリンダヘッド500の吸気室505内の圧力を下げ、吸気室505の負圧によって排気用チェック弁602のピストン部611を下方に引き下げ、ピストン部611がピストン603の上面603cと接して第2の排気路613を閉鎖し、吸気室505内の空気の排気を遮断する。
【0044】
同時に、吸気室505内の圧力が下がると、吸気室505の負圧によって吸気用チェック弁502のピストン部507が上方に引き上げられ、第1の吸気路504を開放する。このとき、ピストン部507の外周と吸気室505の第1室505aの内周との間には、隙間T1が確保されているので、吸気室505の負圧によって第1の吸気路504から吸気されたバキュームパット700内の空気は、第1室505aにおけるピストン部507周辺の隙間T1を介して第2の吸気路510を通過して、第2室505bに吸気される。
【0045】
排気工程は、図6に示すように、吸気室505内の空気を排気するべく、モータ200の駆動力によってバキュームポンプ600のピストン603を押し下げる。それにより、シリンダヘッド500の吸気室505内の圧力を上げ、吸気室505の正圧によって吸気用チェック弁502のピストン部507を下方に押し下げ、第1の吸気路504を閉鎖する。
【0046】
同時に、吸気室505内の圧力が上がると、吸気室505の正圧によって排気用チェック弁602のピストン部611が上方に引き上げられ、ピストン部611がピストン603の上面603cから離れて第2の排気路613を開放する。このとき、ピストン部611の外周とピストンサポート601の内周(本実施形態では立ち上がり部614の内周)との間には、隙間T2が確保されているので、吸気室505の正圧によって吸気室505から吸気された空気は、ピストン部611周辺の隙間T2を通過して、ピストンサポート601の第1の排気路609に導いて外部に排気する。
【0047】
このように、上記実施形態の吸着装置1は、吸気工程と排気工程とを繰り返して、バキュームパット700内を略真空にして被吸着体を吸着する。即ち、外部のポンプから高圧エアーをホースによってエジェクターに送り込み、エジェクターで高真空な吸着力を発生させる構成ではないので、小型化することができる。しかも駆動力としてモータを用いたので、騒音を低減することができる。
【0048】
また、吸着装置1は、ホースを省略することができるので、取り回しが容易で信頼性が高い。
【0049】
さらに、吸着装置1は、一度バキュームパット700内を略真空にすると、その状態を維持することができるので、省エネで二酸化炭素の排出量を低減することができる。
【0050】
なお、吸気装置1は、図示は省略したが、真空度センサー又は吸着確認検出器を備えていることが好ましい。信頼性を高めることができるだけでなく、効率良く稼働させて電流使用を大幅に低減することができる。
【0051】
また、吸着装置1は、シリンダヘッド500に電磁弁などの真空解除弁14を備えていることが好ましい。簡単に被吸着体を外すことができる。
【0052】
この吸着装置1は、例えば自動車のウインドガラス反転装置や位置決め装置又は取り付けハンドルに好適に用いることができる。また、図7に示すようにロボットのハンドリング冶具15に好適に用いることができる。また、図8に示すようにウインド貼付バックアップ冶具16に用いたり、図9に示すように簡易ハンド17に用いることができる。
【0053】
以上、本発明に係る吸着装置の実施形態を説明したが、上記の構成に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の吸着装置を示した断面図である。
【図2】リンク機構周辺を示した側面図である。
【図3】シリンダ及びシリンダヘッドを概略的に示した分解斜視図である。
【図4】クランク機構及びダイヤフラムポンプを概略的に示した分解斜視図である。
【図5】吸着装置の吸気工程を示した断面図である。
【図6】吸着装置の排気工程を示した断面図である。
【図7】吸着装置をロボットのハンドリング冶具に用いた形態を示した斜視図である。
【図8】吸着装置をウインド貼付バックアップ冶具に用いた形態を示した斜視図である。
【図9】吸着装置を簡易ハンドに用いた形態を示した側面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 吸着装置
14 真空解除弁
200 モータ
201 出力軸
300 クランク機構
301 回転軸
303 リンク部材
400 シリンダ
500 シリンダヘッド
501 シリンダヘッド本体部
502 吸気用チェック弁
503 チェック弁サポート
504 第1の吸気路
505 吸気室
505a 第1室
505b 第2室
506 可変部
507 ピストン部
510 第2の吸気路
600 ダイヤフラムポンプ
601 ピストンサポート
602 排気用チェック弁
603 ピストン
604 ダイヤフラム
607 空洞部
609 第1の排気路
610 可変部
611 ピストン部
613 第2の排気路
700 バキュームパット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータに入力端が連結されたクランク機構と、
シリンダと、
吸気室に通じる吸気路が形成されており、前記吸気路の端部に、前記吸気室内の負圧が作用すると開放され、正圧が作用すると閉鎖される吸気用チェック弁を有するシリンダヘッドと、
前記クランク機構の出力端に連結されて前記シリンダ内を上下動するピストンによって前記シリンダヘッドの吸気室内の圧力を変化させる構成とされており、前記ピストンに形成された排気路の端部に、前記吸気室内の負圧が作用すると閉鎖され、正圧が作用すると開放される排気用チェック弁を有するダイヤフラムポンプと、
前記シリンダヘッドに設けられたバキュームパットと、を備え
被吸着体を吸着するときは、前記バキュームパット内の空気を吸気するべく、前記モータの駆動力によって前記ピストンを引き上げて前記シリンダヘッドの吸気室内の圧力を下げ、前記排気側チェック弁を閉鎖すると共に、前記吸気側チェック弁を開放し、前記バキュームパット内の空気を前記シリンダヘッドの吸気路に導いて前記吸気室内に吸気する工程と、
前記吸気室内の空気を排気するべく、前記モータの駆動力によって前記ピストンを押し下げて前記吸気室内の圧力を上げ、前記吸気側チェック弁を閉鎖すると共に、前記排気側チェック弁を開放し、前記吸気室内の空気を前記ピストンの排気路に導いて前記排気路から外部に排気する工程と、
を繰り返す吸着装置。
【請求項2】
前記クランク機構は、
前記シリンダに立設された支持部材によって回転可能に支持されており、モータに連結された、入力端を成す回転軸と、
回転中心から離れた偏心位置に前記回転軸が連結された軸受と、
一方の端部に前記軸受が嵌め込まれ、他方側の端部がピストンに回転可能に連結された、出力端を成すリンク部材と、を備えていることを特徴とする、請求項1に記載の吸着装置。
【請求項3】
前記シリンダヘッドは、
第1の吸気路及び前記第1の吸気路に通じる吸気室が形成されたシリンダヘッド本体部と、
伸長及び収縮する可変部と、前記可変部に連結されたピストン部とを有し、前記吸気室の第1室に、前記ピストン部の上下動によって前記第1の吸気路が開閉されるように配置された吸気用チェック弁と、
前記吸気室の第1室と第2室とを隔てており、前記第1室と前記第2室とを結ぶ第2の吸気路を有し、前記吸気用チェック弁の可変部の上端が連結されたチェック弁サポートと、を備え、
前記ピストンが押し下げられて前記シリンダヘッドの吸気室内の圧力が上がると、前記吸気室の正圧によって前記吸気用チェック弁のピストン部が下方に移動し、前記ピストン部が前記シリンダヘッド本体部に接して前記第1の吸気路を閉鎖し、前記バキュームパット内の空気の吸気を遮断し、
前記ピストンが引き上げられて前記吸気室内の圧力が下がると、前記吸気室の負圧によって前記吸気用チェック弁のピストン部が上方に移動し、前記ピストン部が前記シリンダヘッド本体部から離れて前記第1の吸気路を開放し、前記バキュームパット内の空気を、前記第1の吸気路から前記吸気室の第1室を介して前記第2の吸気路に導いて前記第2室に吸気することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の吸着装置。
【請求項4】
前記ダイヤフラムポンプは、
空洞部が形成されており、前記空洞部と外部とを結ぶ第1の排気路を有するピストンサポートと、
伸長及び収縮する可変部と、前記可変部に連結されたピストン部とを有し、前記空洞部の上端に前記可変部の上端が連結された排気用チェック弁と、
前記シリンダヘッドの吸気室内と前記空洞部とを結ぶ第2の排気路が形成されており、前記空洞部に、前記排気用チェック弁のピストン部の上下動によって、前記第2の排気路が開閉されるように挿入され一体化されたピストンと、
前記ピストンの外周に設けられており、前記シリンダと前記シリンダヘッドとの間に挟み込まれたダイヤフラムと、を備え、
前記ピストンサポートは前記クランク機構の出力端に連結されており、前記ピストンが引き上げられて前記シリンダヘッドの吸気室内の圧力が下がると、前記吸気室の負圧によって前記排気用チェック弁のピストン部が下方に移動し、前記ピストン部が前記ピストンと接して前記第2の排気路を閉鎖し、前記吸気室内の空気の排気を遮断し、
前記ピストンが押し下げられて前記吸気室内の圧力が上がると、前記吸気室の正圧によって前記排気用チェック弁のピストン部が上方に移動し、前記ピストン部が前記ピストンから離れて前記第2の排気路を開放し、前記吸気室内の空気を、前記空洞部から前記第2の排気路を介して前記第1の排気路に導いて外部に排気することを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の吸着装置。
【請求項5】
吸着装置は、真空度センサー又は吸着確認検出器を備えていることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の吸着装置。
【請求項6】
前記シリンダヘッドに真空解除弁を備えていることを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の吸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−262287(P2009−262287A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115511(P2008−115511)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(594133456)株式会社アラキ製作所 (8)
【出願人】(504192759)株式会社アイ・アンド・ティー (13)
【Fターム(参考)】