説明

吸音性積層材、吸音性材料および吸音性床敷材料

【課題】吸音性、成形性に優れた軽量な吸音性表皮材、及びそれを用いた吸音材を提供する。
【解決手段】繊維シート3の片面または両面に、クレープ加工及び/又はエンボス加工された延伸性紙材(例えばクレープ加工紙1b)を積層して吸音性積層材6とした。前記延伸性紙材は、クレープ率を10〜50%、突起高さを0.02〜2.00mm、突起数を20〜200個/cmとした。また、吸音性積層材6にシート状の通気性多孔質材料7を積層して吸音性材料8とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の床材、家屋の壁材等に使用する吸音性積層材、及び該吸音性積層材を用いた吸音性材料、あるいは吸音性床敷材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油資源や温暖化等の問題により、特に自動車産業において燃費の向上が急務の課題となっている。また、一方では、性能向上のため、自動車車内及び車外に対しての防音対策が必要となり各種の吸音材料が提案されている。なお、前記吸音材料は、基材に吸音性のある表皮材を積層し、該積層物を適宜成形して用いられることが多い。
【0003】
一般的な表皮材としては、不織布などの繊維シート、あるいはグラスウール、発泡ウレタン等といった多孔質材料が使用されている。また、最終製品の各周波数における吸音、遮音性能を最大とするために、該表皮材に対し、概ね通気抵抗を0.6から20.0kPa・s/m程度に調整することも知られている。
例えば、特許文献1には、単層フェルトからなる吸音フェルトが記載されている。また、特許文献2には、樹脂バインダ付着繊維ウエブからなる自動車用内装材が記載されている。また、特許文献3には、繊維集合体からなる吸音層と発泡材からなる表皮層との積層体から構成される自動車用インシュレータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−195989号公報
【特許文献2】特開2004−325973号公報
【特許文献3】特開2003−081028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来発明は、以下の問題点があった。例えば自動車又は建築壁材用の吸音材料は、所定の吸音性能を確保するため、該吸音材料を繊維シートのみ、あるいは発泡材等の多孔質材のみで構成した場合には、当該吸音材料の厚みをある程度増大させなければならず、そのために該吸音材料の重量は相当なものとなる。このことは、重量増による作業性の悪化を招き、特に自動車用の場合、省燃費化、軽量化を図る上で不利となる。具体的に、上記特許文献1の発明は、フェルトの片側表層と反対側表層との空気流れ抵抗値をバインダー樹脂の塗布量の差により連続的に変化させたものであるが、重量が1500g/mと大きくなってしまう。また、上記特許文献2の発明も、内装材として1750g/mの重量となってしまう。また、上記特許文献3の発明は、軽量化はされているが、発泡層が表面となるため表面強度が弱い問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、好適な吸音性能を保持しつつ、軽量化を図ることができると共に、種々の用途に利用することができるように成形性が良い吸音性積層材、及び該吸音性積層材を用いた吸音性材料及び吸音性床敷材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、繊維シートの片面または両面に、表面に多数の凹凸が形成され、かつ通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mである延伸性紙材が積層されている吸音性積層材を提供するものである。また、本発明は、繊維シートの片面または両面に、クレープ加工によって多数の皺状凹凸が形成され、かつ通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mである延伸性紙材が積層されている吸音性積層材を提供するものである。また、本発明は、繊維シートの片面または両面に、エンボス加工によって多数の突起が形成され、かつ通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mである延伸性紙材が積層されている吸音性積層材を提供するものである。さらに、本発明は、繊維シートの片面または両面に、クレープ加工によって多数の皺状凹凸が形成され、かつ、エンボス加工によって多数の突起が形成され、更に通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mである延伸性紙材が積層されている吸音性積層材を提供するものである。
前記クレープ加工によって多数の皺状凹凸が形成されている延伸性紙材にあっては、クレープ率が10〜50%であることが望ましい。前記エンボス加工によって多数の突起が形成されている延伸性紙材にあっては、突起高さが0.02〜2.00mmかつ突起数が20〜200個/cmであることが望ましい。前記延伸性紙材の目付量は10〜50g/mであることが望ましい。また、前記繊維シートと前記延伸性紙材とが多孔性接着剤層を介して積層されている構成が望ましい。また、前記繊維シート及び/又は前記延伸性紙材には、合成樹脂が塗布及び/又は含浸されている構成としてもよい。また、吸音性積層材の通気抵抗は必要とする周波数に応じて適宜設定されるが、0.100〜5.000kPa・s/mが望ましい。
さらに、本発明は、上記の吸音性積層材にシート状の通気性多孔質材料が積層されている吸音性材料を提供するものである。この場合、前記繊維シート、前記延伸性紙材、及び前記通気性多孔質材料のうち少なくともいずれかに合成樹脂が塗布及び/又は含浸されている構成としてもよい。前記吸音性材料の通気抵抗は必要とする周波数に応じて適宜設定されるが、0.400〜20.000kPa・s/mが望ましい。また、前記吸音性材料の延伸性紙材には上記通気性多孔質材料の色を隠蔽する色に着色がされている構成としてもよい。
更に本発明は、上記吸音性積層材をカーペットの裏面に配した吸音性床敷材料を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
〔作用〕
本発明に係る吸音性積層材にあっては、繊維シートによる吸音性と表面に多数の凹凸のある延伸性紙材の吸音性とが相俟って好適な吸音性能が発揮される。また、該吸音性積層材は、吸音性能を維持したまま繊維シートの厚みを減少させることができるため、従来の吸音材料に比べて軽く、軽量化を図ることができ、また材料が低減されることによって安価に提供出来る。また、クレープ率や突起高さ等を上記範囲内とすることにより、延伸性紙材の伸び性が向上することとなり、凹凸形状、曲面形状等の成形形状に対する追従性、無理嵌め性に対する耐久性が向上し、自動車や家屋の床材、壁材等に使用する吸音材料に好適に採用され得る。なお、繊維シート及び/又は延伸性紙材に合成樹脂が塗布及び/又は含浸されると、該吸音性積層材の耐水性、強度、耐久性等が向上する。さらに、上記吸音性積層材を用いた吸音性材料は目的に応じて所定形状に成形することもできる。
【0009】
〔効果〕
本発明の吸音性積層材は、繊維シートと延伸性紙材とを積層した構成としたため、繊維シートを薄くしても好適な吸音性能を保持しつつ、軽量化を図り、かつ材料削減による低廉化を図ることができると共に、成形性が良く種々の用途に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】通気抵抗Rの測定方法を説明する説明図である。
【図2】突起高さhを説明する説明図である。
【図3】吸音性材料8の縦断側面図である。
【図4】実施例11における吸音性床敷材料101,102,103の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を以下に詳細に説明する。
〔繊維シート〕
本発明に用いられる繊維シート3の繊維材料としては、例えばポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ウレタン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維等の合成繊維、とうもろこしやサトウキビ等の植物から抽出された澱粉からなる生分解繊維、パルプ、木綿、ヤシ繊維、麻繊維、竹繊維、ケナフ繊維等の天然繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石綿繊維等の無機繊維、あるいはこれらの繊維を使用した繊維製品のスクラップを解繊して得られた再生繊維の1種または2種以上の繊維が使用されるが、例えばガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、石綿繊維、ステンレス繊維等の無機繊維やポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維等のアラミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維等の望ましくは融点が250℃以上の耐熱性合成繊維を使用すれば、耐熱性の極めて高い吸音性積層材6が得られる。その中でも炭素繊維は焼却処理が可能で細片が飛散しにくい点で有用な無機繊維であり、アラミド繊維は比較的安価で入手し易い点で有用な合成繊維である。
【0012】
また、繊維シート3には、上記繊維の全部または一部として、融点が180℃以下である低融点熱可塑性繊維を使用することができる。
上記低融点熱可塑性繊維としては、例えば融点180℃以下のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリウレタン繊維、ポリエステル繊維、ポリエステル共重合体繊維、ポリアミド繊維、ポリアミド共重合体繊維等がある。これらの低融点熱可塑性繊維は、単独あるいは2種以上組み合わせて使用される。該低融点熱可塑性繊維の繊度は、0.1〜60dtexの範囲であることが好ましい。本発明に使用する望ましい低融点熱可塑性繊維としては、例えば180℃以上の融点を有する通常繊維を芯成分とし、該低融点熱可塑性繊維の材料樹脂である融点100〜180℃の低融点熱可塑性樹脂を鞘成分とする芯鞘型繊維がある。該芯鞘型繊維を使用すると、得られる繊維シート3の剛性や耐熱性が低下しない。
【0013】
本発明の繊維シート3は、上記繊維のウェブのシートあるいはマットをニードルパンチングによって絡合する方法やスパンボンド法、あるいは上記繊維のウェブのシートあるいはマットが上記低融点熱可塑性繊維からなるか、あるいは上記低融点熱可塑性繊維が混合されている場合には上記繊維のウェブのシートあるいはマットを加熱して該低融点熱可塑性繊維を軟化せしめることによって結着するサーマルボンド法か、あるいは上記繊維のウェブのシートまたはマットに合成樹脂バインダーを含浸あるいは混合して結着するケミカルボンド法か、あるいは上記繊維のウェブのシートまたはマットをニードルパンチングによって絡合した上で該低融点熱可塑性繊維を加熱軟化せしめて結着するか、あるいは糸で縫い込むステッチボンド法や高圧水流で絡ませるスパンレース法、上記ニードルパンチングを施したシートまたはマットに上記合成樹脂バインダーを含浸して結着する方法、更に上記繊維を編織する方法等によって製造される。
なお、本発明に係る繊維シート3の目付量、厚みは原則任意に設定可能であるが、望ましくは、目付量10〜200g/m、厚み0.01〜10mmに設定され得る。
【0014】
〔延伸性紙材〕
本発明の延伸性紙材1としては、表面に縮緬状の皺(皺状凹凸)を形成したクレープ加工紙、表面に多数の突起を形成したエンボス加工紙、表面に縮緬状の皺と多数の突起を形成したエンボスクレープ加工紙等が例示される。
上記クレープ加工紙は、原紙にクレープ加工を施したものであり、上記クレープ加工には、湿紙の状態でプレスロールやドクターブレード等を用いて縦方向(抄造方向)に圧縮して皺付けを行なうウェットクレープと、シートをヤンキードライヤーやカレンダーで乾燥した後、ドクターブレード等を用いて縦方向に圧縮して皺付けを行なうドライクレープとがある。例えばクレープ加工された延伸性紙材は、クレープ率が10〜50%であることが望ましい。
ここで、該クレープ率は、
クレープ率(%)=(A/B)×100(Aは紙製造工程における抄紙速度、Bは紙の巻き取り速度)
換言すれば、該クレープ率はペーパーウェブがクレーピングで縦方向(抄造方向)に圧縮される割合である(参考:特開2002-327399、特表平10-510886)。
ここで、クレープ率が10%に満たないとクレープ加工紙(延伸性紙材)の吸音性能が悪くなり、かつ延伸性が不十分となって成形時に皺が入り易くなる。一方、該クレープ率が50%を越えると、やはり成形時に皺が入り易くなる。
上記エンボス加工紙は、表面に多数の凹凸が彫られたロール(エンボスロール)やプレート(エンボスプレート)を原紙に押圧して紙の表面に多数の突起を形成したものであり、該突起の突起高さが0.02〜2.00mmであり、かつ、突起数が20〜200個/cmであることが望ましい。該突起高さが0.02mmに満たないと、エンボス加工紙(延伸性紙材)の吸音性能が悪くなり、かつ延伸性が不十分となって成形時に皺が入り易い。また、突起高さが2.00mmを越えても、やはり成形時に皺が入り易い。また、突起数が20個/cmに満たないと、エンボス加工紙(延伸性紙材)の吸音性能が悪くなり、また延伸性が不十分となって成形時に皺が入り易い。また、突起数が200個/cmを越えても、エンボス加工紙(延伸性紙材)の吸音性能が悪くなる。なお、図2において、エンボス加工紙1a(延伸性紙材)には突起2が多数形成されており、突起高さは、図2に示す「h」に相当する。
なお、上記エンボス加工工程において、原紙にクレープ加工紙を用いれば、エンボスクレープ加工紙が得られる。
上記クレープ加工紙やエンボス加工紙等に使用するパルプとしては、例えば広葉樹木材パルプ、針葉樹木材パルプ、麻パルプ、ケナフパルプ、竹パルプ、エスバルトパルプ、バガスパルプ、葦パルプ等がある。また、これら木材パルプや、非木材パルプ等の天然パルプ以外に合成繊維を1〜50%程度、混合してもよい。
【0015】
上記延伸性紙材1の目付量は10〜50g/mが望ましい。該目付量が10g/mに満たない場合には成形性が低下して成形時に皺が生じ易くなり、また吸音性能も悪い。一方、目付量が50g/mを越えると質量が増大しかつ成形性が低下する。
【0016】
また、上記延伸性紙材1の通気抵抗は、少なくとも0.06〜3.0kPa・s/mであることが望ましい。
ここで、上記の通気抵抗(Pa・s/m)とは、通気性材料の通気の程度を表す尺度である。この通気抵抗の測定は定常流差圧測定方式により行われる。図1に示すように、シリンダー状の通気路W内に試験片Tを配置し、一定の通気量V(図中矢印の向き)の状態で図中矢印の始点側の通気路W内の圧力P1と、図中矢印の終点P2の圧力差を測定し、次式より通気抵抗Rを求めることが出来る。
【0017】
R=ΔP/V
ここで、ΔP(=P1−P2):圧力差(Pa)、V:単位面積当りの通気量(m/m・s)である。
通気抵抗は、例えば、通気性試験機(製品名:KES−F8−AP1、カトーテック株式会社製、定常流差圧測定方式)によって測定することが出来る。
【0018】
なお、本発明の延伸性紙材1の通気抵抗は、最終製品において必要となる周波数に応じて適宜設定される。該通気抵抗の調整は、延伸性紙材の繊維相互の絡みや目付量ならびに塗布及び/又は含浸される樹脂の塗布量で調整することができる。
【0019】
〔通気性多孔質材料〕
本発明に用いられる通気性多孔質材料7としては上記で記載されたものと同じ繊維材料のほかに不織布、繊維編織物等の繊維シート、ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、ポリ塩化ビニル発泡体、エポキシ樹脂発泡体、メラミン樹脂発泡体、尿素樹脂発泡体、フェノール樹脂発泡体等の樹脂発泡体のうち通気性を有する樹脂発泡体、上記プラスチックのビーズの焼結体等が使用される。
【0020】
〔吸音性積層材、及び吸音性材料〕
上記繊維シート3と上記延伸性紙材1とを積層して吸音性積層材6とする場合、または更に該吸音性積層材6と上記通気性多孔質材料7とを積層して吸音性材料8とする場合(図3参照)は、通常の溶液型や水性エマルジョン型の接着剤、粉末状、くもの巣状、溶液型、あるいは水性エマルジョン型のホットメルト接着剤等が使用される。粉末状、くもの巣状のホットメルト接着剤の場合には多孔性接着剤層となるため通気性を確保でき、積層材の通気性を阻害しない。例えば、図3に示すように、繊維シート3とクレープ加工紙1b(延伸性紙材)とが多孔性接着剤層5aを介して積層され、さらに繊維シート3とクレープ加工紙1bとからなる吸音性積層材6とフェルト7(通気性多孔質材料)とが多孔性接着剤層5bを介して積層された吸音性材料8が例示される。
溶液型あるいは水性エマルジョン型の接着剤の場合にはスプレー塗装あるいはシルク印刷塗装、オフセット印刷塗装等によって点状に接着剤を塗布し、積層材の通気性を確保することが望ましい。
なお、該吸音性積層材6の通気抵抗は0.100〜5.000kPa・s/mの範囲に設定することが望ましい。該通気抵抗が5.000kPa・s/mを超えると、成形性が低下する。
また、該吸音性材料8の通気抵抗は0.400〜20.000kPa・s/mの範囲に設定することが望ましい。該通気抵抗が0.400kPa・s/mに満たない場合には吸音性が悪くなり、また20.00kPa・s/mを超えると、性能が吸音性よりも遮音性となってくる。
なお、本発明の吸音性積層材6と吸音性材料8の通気抵抗は、最終製品において必要となる周波数に応じて適宜設定される。該通気抵抗の調整は、延伸性紙材1の繊維相互の絡みや目付量ならびに塗布及び/又は含浸される樹脂の塗布量で調整することができる。なお、塗布および/または含浸される樹脂が接着性を有する場合は、特別に接着剤を用いて上記接着層を形成しなくてもよい。
【0021】
上記吸音性材料8の場合、吸音性積層材6に使用される繊維シート3が、通気性多孔質材料7の色を透過するようなもの(例えば薄い不織布)である場合、延伸性紙材1を介して上記通気性多孔質材料7の色が吸音性積層材6から透けて見え、得られた吸音性材料8の外観が悪化する場合がある。
そのために上記延伸性紙材1を上記通気性多孔質材料7の色を隠蔽する色、具体的には繊維シート3と同系統の色、例えば繊維シート3が黒色、濃紺色、濃赤色等の濃色であれば延伸性紙材1を濃色に着色し、砂色、白色等の淡色であれば淡色に着色して、繊維シート3及び延伸性紙材1からなる吸音性積層材6の色を濃くして強調することで、下地(通気性多孔質材料7)の色が透けて見えないようにすることが望ましい。
上記着色は例えば上記延伸性紙材1に合成樹脂を含浸あるいはスプレー塗布する場合に、該合成樹脂(溶液タイプ、エマルジョンタイプ、ディスパージョンタイプ)に着色剤を添加しておく。着色剤としては、通常カーボンブラックが使用され、延伸性紙材1を黒色に着色する。
【0022】
〔合成樹脂〕
本発明に係る吸音性積層材6及び吸音性材料8にあって、繊維シート3、延伸性紙材1、及び通気性多孔質材料7のうち少なくともいずれかに、合成樹脂を塗布及び/又は含浸させてもよい。合成樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂が例示される。
【0023】
上記熱可塑性樹脂としては、例えばアクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸エチル(EEA)樹脂、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合(ASA)樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合(AS)樹脂、アクリロニトリル・塩素化ポリエチレン・スチレン共重合(ACS)樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合(EVA)樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合(EVOH)樹脂、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリブタジエン(BDR)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合(ABS)樹脂、塩素化ポリエチレン(CPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリプロピレン(PP)、酢酸繊維素(セルロースアセテート:CA)樹脂、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリオキシメチレン(=ポリアセタール)(POM)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)エラストマー、熱可塑性エラストマー(TPE)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、全芳香族ポリエステル(POB)等が例示される。このような熱可塑性樹脂は、上記繊維シート、延伸性紙材、あるいは通気性多孔性材料に含浸または塗布されて、成形形状保持性および剛性に優れた熱可塑性シートを与える。
【0024】
上記熱可塑性樹脂は、2種以上混合使用されてもよく、また熱可塑性シートの熱可塑性樹脂を阻害しない程度で若干量の熱硬化性樹脂の1種または2種以上を混合使用してもよい。該熱可塑性樹脂は取り扱いが容易な点から水溶液、水性エマルジョン、水性ディスパージョンの形のものを使用することが好ましいが、有機溶剤溶液の形のものを使用してもよい。
【0025】
上記熱硬化性樹脂としては、例えばウレタン樹脂、メラミン樹脂、熱硬化型アクリル樹脂、特に加熱によりエステル結合を形成して硬化する熱硬化性アクリル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化型ポリエステル等が使用されるが、該合成樹脂を生成するウレタン樹脂プレポリマー、尿素樹脂プレポリマー(初期縮合体)、フェノール樹脂プレポリマー(初期縮合体)、ジアリルフタレートプレポリマー、アクリルオリゴマー、多価イソシアナート、メタクリルエステルモノマー、ジアリルフタレートモノマー等のプレポリマー、オリゴマー、モノマー等の合成樹脂前駆体が使用されてもよい。該熱硬化性樹脂も取り扱いが容易な点から、水溶液、水性エマルジョン、水性ディスパーションの形のものを使用することが好ましいが、有機溶剤溶液の形のものを使用してもよい。
上記合成樹脂、特に熱硬化性樹脂の添加は、繊維シート、延伸性紙材、あるいは通気性多孔質材料の成形形状保持性と剛性を共に向上せしめる。
【0026】
また、特に本発明で使用される樹脂として望ましいのは、フェノール系樹脂である。該フェノール系樹脂は、フェノール系化合物とホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体とを縮合させることによって得られる。
【0027】
(フェノール系化合物)
上記フェノール系樹脂に使用されるフェノール系化合物としては、一価フェノールであってもよいし、多価フェノールであってもよいし、一価フェノールと多価フェノールとの混合物であってもよいが、一価フェノールのみを使用した場合、硬化時および硬化後にホルムアルデヒドが放出され易いため、好ましくは多価フェノールまたは一価フェノールと多価フェノールとの混合物を使用する。
【0028】
(一価フェノール)
上記一価フェノールとしては、フェノールや、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、キシレノール、3,5−キシレノール、ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、ノニルフェノール等のアルキルフェノール、o−フルオロフェノール、m−フルオロフェノール、p−フルオロフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ブロモフェノール、m−ブロモフェノール、p−ブロモフェノール、o−ヨードフェノール、m−ヨードフェノール、p−ヨードフェノール、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、o−ニトロフェノール、m−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、2,4,6−トリニトロフェノール等の一価フェノール置換体、ナフトール等の多環式一価フェノールなどが挙げられ、これら一価フェノールは単独でまたは二種以上混合して使用することが出来る。
【0029】
(多価フェノール)
上記多価フェノールとしては、レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン、ビスフェノール、ジヒドロキシナフタリン等が挙げられ、これら多価フェノールは単独でまたは二種以上混合して使用することができる。多価フェノールのうち好ましいものは、レゾルシンまたはアルキルレゾルシンであり、特に好ましいものはレゾルシンよりもアルデヒドとの反応速度が速いアルキルレゾルシンである。
【0030】
アルキルレゾルシンとしては、例えば5−メチルレゾルシン、5−エチルレゾルシン、5−プロピルレゾルシン、5−n−ブチルレゾルシン、4,5−ジメチルレゾルシン、2,5−ジメチルレゾルシン、4,5−ジエチルレゾルシン、2,5−ジエチルレゾルシン、4,5−ジプロピルレゾルシン、2,5−ジプロピルレゾルシン、4−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−エチルレゾルシン、2−メチル−5−プロピルレゾルシン、2,4,5−トリメチルレゾルシン、2,4,5−トリエチルレゾルシン等がある。
エストニア産オイルシェールの乾留によって得られる多価フェノール混合物は安価であり、かつ5−メチルレゾルシンのほか反応性の高い各種アルキルレゾルシンを多量に含むので、本発明において特に好ましい多価フェノール原料である。
なお上記多価フェノールのうち、レゾルシンおよびアルキルレゾルシン等のレゾルシノール系化合物の一種または二種以上の混合物(エストニア産オイルシェールの乾留によって得られる多価フェノール混合物を含む)と、アルデヒド及び/又はアルデヒド供与体からなるレゾルシノール系樹脂は、本発明のフェノール系樹脂として使用されることが望ましい。
【0031】
(ホルムアルデヒド供与体)
本発明では上記フェノール系化合物とホルムアルデヒドおよび/またはホルムアルデヒド供与体が縮合せしめられるが、上記ホルムアルデヒド供与体とは分解するとホルムアルデヒドを生成供与する化合物またはそれらの二種以上の混合物を意味する。このようなアルデヒド供与体としては例えばパラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラオキシメチレン等が例示される。本発明ではホルムアルデヒドとホルムアルデヒド供与体とを合わせて、以下ホルムアルデヒド類と云う。
【0032】
(フェノール系樹脂の製造)
上記フェノール系樹脂には二つの型があり、上記フェノール系化合物に対してホルムアルデヒド類を過剰にしてアルカリ触媒で反応することによって得られるレゾールと、ホルムアルデヒド類に対してフェノールを過剰にして酸触媒で反応することによって得られるノボラックとがあり、レゾールはフェノールとホルムアルデヒドが付加した種々のフェノールアルコールの混合物からなり、通常水溶液で提供され、ノボラックはフェノールアルコールに更にフェノールが縮合したジヒドロキシジフェニルメタン系の種々な誘導体からなり、通常粉末で提供される。
本発明に使用されるフェノール系樹脂にあっては、まず上記フェノール系化合物とホルムアルデヒド類とを縮合させて初期縮合物とし、該初期縮合物を繊維シートに付着させた後、硬化触媒および/または加熱によって樹脂化する。
上記縮合物を製造するには、一価フェノールとホルムアルデヒド類とを縮合させて一価フェノール単独初期縮合物としてもよいし、また一価フェノールと多価フェノールとの混合物とホルムアルデヒド類とを縮合させて一価フェノール−多価フェノール初期共縮合物としてもよい。上記初期縮合物を製造するには、一価フェノールと多価フェノールのどちらか一方または両方をあらかじめ初期縮合物としておいてもよい。
【0033】
本発明において、望ましいフェノール系樹脂は、フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物である。上記フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物は、該共縮合物(初期共縮合物)の水溶液の安定が良く、かつフェノールのみからなる縮合物(初期縮合物)に比較して、常温で長期間保存することが出来るという利点がある。また該水溶液をシート基材に含浸あるいは塗布させ、プレキュアして得られる繊維シートの安定性が良く、該繊維シートを長期間保存しても成形性を喪失しない。また更にアルキルレゾルシンはホルムアルデヒド類との反応性が高く、遊離アルデヒドを捕捉して反応するので、樹脂中の遊離アルデヒド量が少なくなる等の利点も有する。
上記フェノール−アルキルレゾルシン共縮合物の望ましい製造方法は、まずフェノールとホルムアルデヒド類とを反応させてフェノール系樹脂初期縮合物を製造し、次いで該フェノール系樹脂初期縮合物にアルキルレゾルシンを添加し、所望なればホルムアルデヒド類を添加して反応せしめる方法である。
【0034】
例えば、上記(a) 一価フェノールおよび/または多価フェノールとホルムアルデヒド類との縮合では、通常一価フェノール1モルに対し、ホルムアルデヒド類0.2〜3モル、多価フェノール1モルに対し、ホルムアルデヒド類0.1〜0.8モルと、必要に応じて溶剤、第三成分とを添加し、液温55〜100℃で8〜20時間加熱反応させる。このときホルムアルデヒド類は、反応開始時に全量加えてもよいし、分割添加または連続滴下してもよい。
【0035】
更に本発明では、上記フェノール系樹脂として、所望なれば、尿素、チオ尿素、メラミン、チオメラミン、ジシアンジアミン、グアニジン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、2,6ジアミノ−1,3−ジアミンのアミノ系樹脂単量体および/または該アミノ系樹脂単量体からなる初期縮合体を添加してフェノール系化合物および/または初期縮合物と共縮合せしめてもよい。
【0036】
上記フェノール系樹脂の製造の際、必要に応じて反応前あるいは反応中あるいは反応後に、例えば塩酸、硫酸、オルト燐酸、ホウ酸、蓚酸、蟻酸、酢酸、酪酸、ベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ナフタリン−α−スルホン酸、ナフタリン−β−スルホン酸等の無機または有機酸、蓚酸ジメチルエステル等の有機酸のエステル類、マレイン酸無水物、フタル酸無水物等の酸無水物、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、燐酸アンモニウム、チオシアン酸アンモニウム、イミドスルホン酸アンモニウム等のアンモニウム塩、モノクロル酢酸またはそのナトリウム塩、α,α’−ジクロロヒドリン等の有機ハロゲン化物、トリエタノールアミン塩酸塩、塩酸アニリン等のアミン類の塩酸塩、サルチル酸尿素アダクト、ステアリン酸尿素アダクト、ヘプタン酸尿素アダクト等の尿素アダクト、N−トリメチルタウリン、塩化亜鉛、塩化第2鉄等の酸性物質、アンモニア、アミン類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、石灰等のアルカリ土類金属の酸化物、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、燐酸ナトリウム等のアルカリ金属の弱酸塩類等のアルカリ性物質を触媒またはpH調整剤として混合してもよい。
【0037】
本発明のフェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物を含む)には、更に、上記ホルムアルデヒド類あるいはアルキロール化トリアゾン誘導体等の硬化剤を添加混合しても良い。
上記アルキロール化トリアゾン誘導体は尿素系化合物と、アミン類と、ホルムアルデヒド類との反応によって得られる。アルキロール化トリアゾン誘導体の製造に使用される上記尿素系化合物として、尿素、チオ尿素、メチル尿素等のアルキル尿素、メチルチオ尿素等のアルキルチオ尿素、フェニル尿素、ナフチル尿素、ハロゲン化フェニル尿素、ニトロ化アルキル尿素等の単独または二種以上の混合物が例示される。特に望ましい尿素系化合物は尿素またはチオ尿素である。またアミン類としてメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン等の脂肪族アミン、ベンジルアミン、フルフリルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン類のほか更にアンモニアが例示され、これらは単独でまたは二種以上の混合物として使用される。上記アルキロール化トリアゾン誘導体の製造に使用されるホルムアルデヒド類はフェノール系樹脂の初期縮合物の製造に使用されるホルムアルデヒド類と同様なものである。
上記アルキロール化トリアゾン誘導体の合成には、通常、尿素系化合物1モルに対してアミン類および/またはアンモニアは0.1〜1.2モル、ホルムアルデヒド類は1.5〜4.0モルの割合で反応させる。上記反応の際、これらの添加順序は任意であるが、好ましい反応方法としては、まずホルムアルデヒド類の所要量を反応器に投入し、通常60℃以下の温度に保ちながらアミン類および/またはアンモニアの所要量を徐々に添加し、更に所要量の尿素系化合物を添加し、80〜90℃で2〜3時間攪拌加熱して反応せしめる方法がある。ホルムアルデヒド類としては通常37%ホルマリンが用いられるが、反応生成物の濃度をあげるためにその一部をパラホルムアルデヒドに置き換えても良い。またヘキサメチレンテトラミンを用いると、より高い固形分の反応生成物が得られる。尿素系化合物と、アミン類および/またはアンモニアと、ホルムアルデヒド類との反応は通常水溶液で行われるが、水の一部または全部に代えてメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のアルコール類の単独または二種以上の混合物が使用されても差し支えないし、またアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類等の水可溶性有機溶剤の単独または二種以上の混合物が添加使用出来る。上記硬化剤の添加量はホルムアルデヒド類の場合は本発明のフェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物)100質量部に対して10〜100質量部、アルキロール化トリアゾン誘導体の場合は上記フェノール系樹脂の初期縮合物(初期共縮合物)100質量部に対して10〜500質量部である。
【0038】
(フェノール系樹脂のスルホメチル化および/またはスルフィメチル化)
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために、上記フェノール系樹脂をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化することが望ましい。
【0039】
(スルホメチル化剤)
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために使用できるスルホメチル化剤としては、例えば、亜硫酸、重亜硫酸またはメタ重亜硫酸と、アルカリ金属またはトリメチルアミンやベンジルトリメチルアンモニウム等の第四級アミンもしくは第四級アンモニウムとを反応させて得られる水溶性亜硫酸塩や、これらの水溶性亜硫酸塩とアルデヒドとの反応によって得られるアルデヒド付加物が例示される。
該アルデヒド付加物とは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、クロラール、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒドと、上記水溶性亜硫酸塩とが付加反応したものであり、例えばホルムアルデヒドと亜硫酸塩からなるアルデヒド付加物は、ヒドロキシメタンスルホン酸塩である。
【0040】
(スルフィメチル化剤)
水溶性フェノール系樹脂の安定性を改良するために使用できるスルフィメチル化剤としては、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート(ロンガリット)、ベンズアルデヒドナトリウムスルホキシラート等の脂肪族、芳香族アルデヒドのアルカリ金属スルホキシラート類、ナトリウムハイドロサルファイト、マグネシウムハイドロサルファイト等のアルカリ金属、アルカリ土類金属のハイドロサルファイト(亜ジチオン酸塩)類、ヒドロキシメタンスルフィン酸塩等のヒドロキシアルカンスルフィン酸塩等が例示される。
【0041】
上記フェノール系樹脂初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化する場合、該初期縮合物に任意の段階でスルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤を添加して、フェノール系化合物および/または初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化する。
スルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤の添加は、縮合反応前、反応中、反応後のいずれの段階で行ってもよい。
【0042】
スルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤の総添加量は、フェノール系化合物1モルに対して、通常0.001〜1.5モルである。0.001モル以下の場合はフェノール系樹脂の親水性が充分でなく、1.5モル以上の場合はフェノール系樹脂の耐水性が悪くなる。製造される初期縮合物の硬化性、硬化後の樹脂の物性等の性能を良好に保持するためには、0.01〜0.8モル程度とするのが好ましい。
【0043】
初期縮合物をスルホメチル化および/またはスルフィメチル化するために添加されるスルホメチル化剤および/またはスルフィメチル化剤は、該初期縮合物のメチロール基および/または該初期縮合物の芳香環と反応して、該初期縮合物にスルホメチル基および/またはスルフィメチル基が導入される。
【0044】
このようにしてスルホメチル化および/またはスルフィメチル化したフェノール系樹脂の初期縮合物の水溶液は、酸性(pH1.0)〜アルカリ性の広い範囲で安定であり、酸性、中性およびアルカリ性のいずれの領域でも硬化することが出来る。特に、酸性側で硬化させると、残存メチロール基が減少し、硬化物が分解してホルムアルデヒドを発生するおそれがなくなる。
【0045】
〔難燃剤〕
また、上記繊維シート、延伸性紙材、及び通気性多孔質材料のうち少なくともいずれかは、難燃剤が添加されてもよい。上記難燃剤としては、例えば燐系難燃剤、窒素系難燃剤、硫黄系難燃剤、ホウ素系難燃剤、臭素系難燃剤、グアニジン系難燃剤、燐酸塩系難燃剤、燐酸エステル系難燃剤、アミノ樹脂系難燃剤、膨張黒鉛等がある。
本発明においては特に水に難溶または不溶の粉末状の固体難燃剤が使用されることが望ましい。水に難溶または不溶の粉末状の固体難燃剤は吸音性積層材及び吸音材に耐水性、耐久性に優れた難燃性を付与する。特に本発明の繊維シートおよび通気性多孔質材料は粗構造を有しているから、上記粉末状の固体難燃剤が内部にまで円滑に浸透して高度な難燃性ないし不燃性を付与する。
【0046】
また本発明にあっては、上記繊維シートまたは通気性多孔質材料の繊維として炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等の無機繊維、石綿繊維等の鉱物繊維、アラミド繊維(芳香族ポリアミド繊維)、羊毛(天然ウール)等の獣毛繊維などといった難燃・防炎繊維を使用した場合、後述する難燃剤を使わずとも、吸音性積層材、吸音材に難燃・防炎性を付与することが可能となる。
【0047】
本発明で使用する熱可塑性樹脂には、更に、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、雲母、珪藻土、ドロマイト、石膏、タルク、クレー、アスベスト、マイカ、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、
鉄粉、アルミニウム粉、ガラス粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填材;天然ゴムまたはその誘導体;スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、イソプレンゴム、イソプレン−イソブチレンゴム等の合成ゴム;ポリビニルアルコール、アルギン酸ナトリウム、澱粉、澱粉誘導体、ニカワ、ゼラチン、血粉、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子や天然ガム類;木粉、クルミ粉、ヤシガラ粉、小麦粉、米粉等の有機充填材;ステアリン酸、パルミチン酸等の高級脂肪酸、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール;ブチリルステアレート、グリセリンモノステアレート等の脂肪酸のエステル類;脂肪酸アミド類;カルナバワックス等の天然ワックス類、合成ワックス類;パラフィン類、パラフィン油、シリコンオイル、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリビニルアルコール、グリス等の離型剤;アゾジカーボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、アゾビス−2,2’−(2−メチルグロピオニトリル)等の有機発泡剤;重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸アンモニウム等の無機発泡剤;シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、発泡ガラス、中空セラミックス等の中空粒体;発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン等のプラスチック発泡体や発泡粒;顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、燐系化合物、窒素系化合物、硫黄系化合物、ホウ素系化合物、臭素系化合物、グアニジン系化合物、燐酸塩系化合物、燐酸エステル系化合物、アミノ系樹脂等の難燃剤、難燃剤、防炎剤、撥水剤、撥油剤、防虫剤、防腐剤、ワックス類、界面活性剤、滑剤、老化防止剤、紫外線吸収剤;DBP、DOP、ジシクロヘキシルフタレートのようなフタル酸エステル系可塑剤やその他のトリクレジルホスフェート等の可塑剤等を添加、混合してもよい。
【0048】
〔コロイダルシリカ〕
本発明に使用されるコロイダルシリカは、シリカ微粒子、あるいは表面にアルミナコーティングをしたシリカ微粒子であり、通常平均粒径が1〜100μm、望ましくは3〜50μmである。上記コロイダルシリカは通常水に分散した分散液として提供される。
平均粒径100μmを越えるシリカ微粒子の場合は樹脂滲出層が白っぽくなるおそれがあり、平均粒径1μm未満のシリカ微粒子の場合は、表面積が過大となり、分散液の安定性が悪くなる。
【0049】
また、本発明に係る撥水撥油剤としては、天然ワックス、合成ワックス、フッ素樹脂、シリコン系樹脂等がある。
【0050】
上記繊維シートに上記熱可塑性樹脂を含浸するには、通常熱可塑性樹脂の水性エマルジョンあるいは水性ディスパージョンに該繊維シートを浸漬するか、あるいはナイフコーター、ロールコーター、フローコーター等によって塗布する。
上記熱可塑性樹脂を含浸または塗布した繊維シート中の熱可塑性樹脂量を調節するには、熱可塑性樹脂を含浸または塗布後、該繊維シートを絞りロールやプレス盤を使用して絞る。この場合、該繊維シートはその厚みを減少させるが、該繊維シートが低融点繊維からなるか、あるいは低融点繊維が含まれている場合には、上記熱可塑性樹脂含浸前に該繊維シートを加熱して低融点繊維を溶融させ、繊維を該溶融物によって結着しておくことが望ましい。そうすると該繊維シートは強度および剛性が更に向上し、熱可塑性樹脂含浸の際の作業性が向上し、また絞り後の厚みの復元も顕著になる。
上記繊維シートに上記熱可塑性樹脂を含浸または塗布した後は、上記繊維シートを常温
または加熱して乾燥させ、熱可塑性シートとする。
【0051】
上記したように該繊維シートには低融点熱可塑性繊維が使用されてもよいが、その場合には該繊維シート自体が熱可塑性を有することが出来るので、必ずしも該熱可塑性樹脂を塗布又は含浸させる必要はない。
【0052】
以下に本発明を更に具体的に説明するための実施例を記載するが、本発明は該実施例にのみ限定されるものではない。
【0053】
〔実施例1〕
ポリエステル繊維80質量%、ポリプロピレン繊維20質量%からなるサーマルボンド法による目付量30g/mの繊維シートの裏面に、共重合ポリエステルからなるくもの巣状のホットメルト接着剤(融点:110℃、目付量15g/m)を重ねて積層し、該積層物の上にマニラ麻パルプ90質量部、レーヨン10質量部からなるエンボス加工クレープ加工紙(クレープ率:45%、突起高さ:0.1mm、突起数:64個/cm、目付量15g/m、通気抵抗1.15kPa・s/m)を重合し、表面温度が140〜150℃に調整されたヒートロールにて圧接した後、冷熱ロールにて圧接し、吸音性積層材を作製した。このものの通気抵抗は1.28kPa・s/mであった。次に、さらにその上に上記のくもの巣状のホットメルト接着剤を重ね、ポリエステル繊維70質量%、および芯鞘構造の低融点繊維シート(融点:130℃)30質量%からなるポリエステル繊維からなる目付量300g/mの繊維ウェブを通気性多孔質材料とし、上記吸音性積層材を重合して200℃で60秒間加熱後、冷圧プレスにて厚さ5mmで通気抵抗2.74kPa・s/mである板状の吸音性材料を作製した。該吸音性材料は断熱性に優れ、建物の合板や石膏ボード等に貼り合わせて用いられる。なお、上記吸音性材料における各材料は繊維ウェブ(通気性多孔質材料)、エンボス加工クレープ加工紙(延伸性紙材)、繊維シートの順で、各層間にくもの巣状のホットメルト接着剤層を介在させて相互に接着されており、特に記載のない限り以降の実施例、参考例、比較例もこれに倣う。
【0054】
〔実施例2〕
ポリエステル繊維からなるニードルパンチング法による目付量80g/mの繊維シートを、アクリルエマルジョン(固形分:45質量%)30質量部、コロイダルシリカ(無水珪酸含有量:20質量%水溶液)、水65質量部からなる混合溶液に固形分として30g/mの塗布量になるように含浸させ、120℃で2分乾燥させプレキュアさせた。次に、該繊維シートの裏面に、共重合ポリアミドからなるくもの巣状のホットメルト接着剤(融点:110℃、目付量:15g/m)を重ね、さらにその上に針葉樹パルプ80質量%、広葉樹パルプ20質量%からなるクレープ加工紙(クレープ率:30%、目付量20g/m、通気抵抗2.50kPa・s/m)を該ホットメルト接着剤塗布面に重ね、表面温度が120〜125℃に調整されたヒートロールに圧接した後、冷却ロールにて圧接し、該繊維シートにクレープ加工紙を接着した。次に、該繊維シートのクレープ加工紙側に、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合エマルジョン(固形分:40質量%、MFT:4℃)40質量部、ホットメルト接着剤として共重合ポリアミド樹脂(融点:110℃、粒度:100〜150μm)20質量部、水40質量部からなる混合溶液を固形分として18g/mの塗布量でスプレー塗布し、120℃で4分間乾燥させ通気抵抗3.44kPa・s/mの吸音性積層材を作製した。次に、通気性多孔質材料として硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂粉末が20%添加されている再生フェルト未硬化原綿(目付量500g/m、厚さ:20mm)を用い、該通気性多孔質材料の片面に上記吸音性積層材を重合させ200℃×60秒熱圧プレス成形して所定形状とし吸音性材料を作製した。該吸音性材料は、形状により部分的に差はあるが、通気抵抗が3.60〜4.25kPa・s/mの範囲にあり、軽くて成形性及び吸音性能及び難燃性に優れ、成形時の皺が無く外観における意匠性に優れた成形物であり、自動車のエンジンアンダーカバー、シリンダーヘッドカバー、フードサイレンサ、ダッシュアウタサイレンサ、ダッシュインナサイレンサ、フェンダーライナー等に有用である。
【0055】
〔実施例3〕
ポリエステル繊維70質量%、炭素繊維30質量%からなるニードルパンチング法による目付量70g/mの繊維シートの裏面に、共重合ナイロン(融点:135℃、粒度:200〜300μm)からなるホットメルト接着剤を塗布量が5g/mになるようにスキャタリング法により塗布させた後、マニラ麻パルプ90質量部、レーヨン10質量部、からなるエンボス加工クレープ加工紙(クレープ率35%、突起高さ:0.2mm、突起数:50個/cm、目付量:15g/m、通気抵抗:1.54kPa・s/m)を重合し、表面温度が140〜150℃に調整されたヒートロールにて圧接した後、冷熱ロールにて圧接し、該繊維シートとエンボス加工クレープ加工紙とを接着させた積層物をスルホメチル化フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(固形分:45質量%水溶液)40質量部、フッソ系撥水、撥油剤(固形分:20質量%水溶液)2質量部、リン−チッソ系難燃剤(固形分:40質量%水溶液)10質量部、水48質量部からなる樹脂混合溶液に固形分として15g/mの塗布量になるように含浸させ、さらにエンボス加工クレープ加工紙側に、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合エマルジョン(固形分:48質量%、Tg:−40℃、MFT:<0℃)30質量部、ホットメルト接着剤としてポリアミド(粒度:50〜100μm、軟化点:130℃)10質量部、難燃剤としてリン−チッソ系難燃剤(固形分:40質量%水溶液)20質量部、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.3質量部、カーボンブラック(固形分:20質量%水分散溶液)1質量部、および水38.7質量部からなる水溶液を固形分として10g/mの塗布量でスプレー塗布し、140℃で2分乾燥させ、該スルホメチル化フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物をプレキュアさせた吸音性積層材を作製した。このものの通気抵抗は2.08kPa・s/mであった。
ケナフ繊維60質量%、ポリエステル繊維15質量%、および芯鞘構造の低融点ポリエステル繊維(融点:160℃)25質量%からなる目付量400g/mの繊維ウェブを、スルホメチル化フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(固形分:45質量%水溶液)40質量部、ポリリン酸アンモニウム粉末10質量部、水50質量部からなる樹脂混合溶液に固形分として200g/mの塗布量になるように含浸させ、吸引しながら110℃で10分乾燥し、該スルホメチル化フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物をプレキュアさせた厚さ20mmの通気性多孔質材料を作製した。このものの通気抵抗は0.68kPa・s/mであった。次に、上記吸音性積層材と、上記通気性多孔質材料を重合し、200℃で50秒間熱圧プレス成形し所定形状の吸音性材料を作製した。この吸音性材料は形状により部分的に差はあるが、通気抵抗が3.30〜5.08kPa・s/mの範囲にあり、耐候性がよく、しかも軽量で吸音性、難燃性に優れ、成形時の皺が無く外観における意匠性に優れた成形物であり、自動車のエンジンアンダーカバー、シリンダーヘッドカバー、フードサイレンサ、ダッシュアウタサイレンサ、フェンダーライナー等に有用な成形物である。
【0056】
〔実施例4〕
針葉樹パルプ85質量%、広葉樹パルプ15質量%の配合からなるクレープ加工紙(延伸性紙材)11(目付量:20g/m、クレープ率:25%、通気抵抗1.05kPa・s/m))を作製した。
ポリエステル繊維65質量%およびポリエステル芯鞘型複合繊維(鞘成分の融点140℃)35質量%の混合繊維からなる目付量160g/mの繊維ウェブを用い、該繊維ウェブを180℃で1分加熱した後、冷却プレス成形機にて厚さ3.0mmの繊維シート31および厚さ4.0mmの繊維シート32を作製した。
上記繊維シート31の片面にくもの巣状のホットメルト接着剤を介して、上記延伸性紙材11を重合し、熱プレス機にて130℃で5秒間軽く圧着させて吸音性積層材61,62を作製した。また、同様の方法で、上記延伸性紙材11の両面に繊維シート32を接着した吸音性積層材63を作製した。
【0057】
上記吸音性積層材61,62,63は図4に示すように裏面にポリエチレン裏打ち層9を設けたカーペット10に裏打ちされて吸音性床敷材料101,102,103が製造される。
図4aとbにおいて、吸音性積層材61と吸音性積層材62とは同一構成のものであるが、図4aの吸音性床敷材料101においては吸音性積層材61の延伸性紙材11側を上側に向け、図4bの吸音性床敷材料102においては、吸音性積層材62の延伸性紙材11側を下側に向けて配置した構成を採用している。
更に図4cにおいて、吸音性積層材63は延伸性紙材11の両面に繊維シート32、32が積層された構成を採用している。上記吸音性床敷材料101、102、103は吸音性に優れ、家屋の床や自動車のフロア等に有効な成形物である。
【0058】
〔実施例5〕
ポリエステル繊維からなるスパンボンド法による目付量50g/mの繊維シートを用い、該繊維シートの裏面に、共重合ポリアミド樹脂(融点:120℃、粒径:200〜250μm)からなるホットメルト接着剤パウダーをスキャタリング方式にて塗布量が10g/mになるようにランダム散布した後、針葉樹パルプ50質量%、広葉樹パルプ50質量%からなるエンボス加工紙(突起高さ:0.10mm、突起数:72個/cm、目付量:15g/m、通気抵抗:0.12kPa・s/m)を重ね、表面温度が140〜150℃に調整されたヒートロールにて圧接した後、冷熱ロールにて圧接し、該エンボス加工紙と該繊維シートとを接着させた。次に、該エンボス加工紙側にアクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合エマルジョン(固形分:48質量%、Tg:−40℃、MFT:<0℃)87質量部、金雲母(粒径:10〜50μm)10質量部、カーボンブラック(50質量%水分散液)3質量部からなる溶液を固形分として25g/mの塗布量でスプレー塗布し、120℃で乾燥させ、通気抵抗1.22kPa・s/mの吸音性積層材を作製した。次に、通気性多孔質材料として硬化剤入りノボラック型フェノール樹脂粉末が20%添加されている再生フェルト未硬化原綿(目付量50g/m、厚さ:20mm)を用い、該再生フェルト未硬化原綿の片面に上記吸音性積層材を重合させ200℃×60秒で熱圧プレス成形し、所定形状として吸音性材料を作製した。
上記吸音性材料は、形状により部分的に差はあるが、通気抵抗が1.50〜6.38kPa・s/mの範囲にあり、軽くて成形性及び吸音性能に優れ、自動車のフロアマットやルームパーティション等に最適である。
【0059】
〔実施例6〕
通気性多孔質材料として、未硬化レゾール型フェノール樹脂が20質量%含有する未硬化ガラスウール原綿(目付量:450g/m、厚さ:30mm)を作製し、上記実施例3で作製した吸音性積層材を重合し、200℃で1分間熱圧プレス機で成形し、所定形状の吸音性材料を作製した。この吸音性材料は軽量で形状により部分的に差はあるが、通気抵抗が2.61〜3.85kPa・s/mの範囲にあり、吸音性、難燃性に優れ、成形時の皺が無く、また、上記吸音性積層材は樹脂混合溶液中に含まれるカーボンブラックによりクレープ加工紙が全体的に黒色に着色され、所定形状に成形された吸音性材料が、その表皮側(繊維シート側)から見た場合に通気性多孔質材料であるガラスウールの黄色が透けて見えず、外観における意匠性に優れた成形物であり、自動車のエンジンアンダーカバー、フードサイレンサ、ダッシュアウタサイレンサ等に有用である。
【0060】
〔参考例1〕
実施例3において用いた吸音性積層材で、エンボス加工クレープ加工紙側にスプレー塗布した水溶液を、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合エマルジョン(固形分:48質量%、Tg:−40℃、MFT:<0℃)30質量部、ホットメルト接着剤としてポリアミド(粒度:50〜100μm、軟化点130℃)10質量部、難燃剤としてリン−チッソ系難燃剤(固形分:40質量%水溶液)20質量部、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.3質量部、および水39.7質量部からなる水溶液とした他は同様にして所定形状の吸音性材料を作製した。この吸音性材料は軽量で、形状により部分的に差はあるが、通気抵抗が2.61〜3.85kPa・s/mの範囲にあり吸音性、難燃性に優れ、成形時の皺がない吸音性材料であったが、エンボス加工クレープ加工紙に塗布した水溶液にカーボンブラックが配合されていないため、表皮側(繊維シート側)から見た場合に通気性多孔質材料であるガラスウールの黄色が透けて見え、外観としては見栄えが良くなかった。
【0061】
〔実施例7〕
ポリエステル繊維70質量%、炭素繊維30質量%からなるニードルパンチング法による目付量70g/mの繊維シートの裏面に、共重合ナイロン(融点:135℃、粒度:200〜300μm)からなるホットメルト接着剤を塗布量が5g/mになるようにスキャタリング法により塗布させた後、マニラ麻パルプ90質量部、レーヨン10質量部、からなるエンボス加工クレープ加工紙(クレープ率35%、突起高さ:0.2mm、突起数:50個/cm、目付量:15g/m、通気抵抗:1.54kPa・s/m)を重合し、表面温度が140〜150℃に調整されたヒートロールにて圧接した後、冷熱ロールにて圧接し、該繊維シートとエンボス加工クレープ加工紙とを接着させた積層物をスルホメチル化フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(固形分:45質量%水溶液)40質量部、カーボンブラック(固形分:20質量%水分散溶液)1質量部、フッソ系撥水、撥油剤(固形分:20質量%水溶液)2質量部、リン−チッソ系難燃剤(固形分:40質量%水溶液)10質量部、水47質量部からなる樹脂混合溶液に固形分として15g/mの塗布量になるように含浸させ、さらにエンボス加工クレープ加工紙側に、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合エマルジョン(固形分:48質量%、Tg:−40℃、MFT:<0℃)30質量部、ホットメルト接着剤としてポリアミド(粒度:50〜100μm、軟化点:130℃)10質量部、難燃剤としてリン−チッソ系難燃剤(固形分:40質量%水溶液)20質量部、分散剤としてポリアクリル酸ソーダ0.3質量部、および水39.7質量部からなる水溶液を固形分として10g/mの塗布量でスプレー塗布し、140℃で2分乾燥させ、該スルホメチル化フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物をプレキュアさせた吸音性積層材を作製した。このものの通気抵抗は2.08kPa・s/mであった。次に、通気性多孔質材料として目付量250g/m、厚さ25mmからなるメラミン発泡体シートの両面に上記吸音性積層材を重合し、200℃で50秒間熱圧プレス成形し所定形状の吸音性材料を作製した。該吸音性材料は耐候性が良く、しかも軽量で形状により部分的に差はあるが通気抵抗が5.21〜6.02kPa・s/mの範囲にあり、吸音性、難燃性に優れ、成形時の皺が無く、外観における意匠性に優れた成形物であり、自動車のエンジンアンダーカバー、シリンダーヘッドカバー、フードサイレンサ、ダッシュアウタサイレンサ、フェンダーライナー等に有用である。
【0062】
〔実施例8〕
ポリエステル繊維からなるニードルパンチング法による目付量80g/mの繊維シートに、スルフィメチル化フェノール−アルキルレゾルシン−ホルムアルデヒド初期縮合物(固形分:45質量%水溶液)40質量部、カーボンブラック(固形分:20質量%水分散溶液)1質量部、フッソ系撥水、撥油剤(固形分:20質量%水溶液)2質量部、リン−チッソ系難燃剤(固形分:40質量%水溶液)10質量部、水47質量部からなる混合液を固形分として30g/mの塗布量になるように含浸させ、150℃で2分乾燥させ、該初期縮合物をプレキュアさせた後、該繊維シートの裏面に、共重合ポリアミドからなるくもの巣状のホットメルト接着剤(融点:135℃、目付量15g/m)を重ね、さらにその上にエンボス加工紙(突起高さ:0.05mm、突起数:225個/cm、目付量:25g/m、通気抵抗:0.10kPa・s/m)を重ね、さらに該ホットメルト接着剤を重ねて積層し、該積層物を目付量340g/mで厚さ17mmからなる発泡ウレタンフォームの両面に重合し、180℃で50秒間熱圧プレス成形し所定形状の吸音性材料を作製した。該吸音性材料は耐候性が良く、しかも軽量で形状により差はあるが、通気抵抗が15.05〜18.26kPa・s/mの範囲にあり、吸音性、難燃性に優れ、成形時の皺が無く、外観における意匠性に優れた成形物であり、自動車のエンジンアンダーカバー、シリンダーヘッドカバー、フードサイレンサ、ダッシュアウタサイレンサ、フェンダーライナー等に有用である。
【0063】
〔実施例9〕
ポリエステル繊維からなるニードルパンチング法による目付量80g/mの繊維シートの裏面に、熱溶融させたポリアミド(融点:130℃)からなるホットメルト接着剤を塗布量が15g/mになるようにスプレー塗布した後、針葉樹パルプ60質量%、広葉樹パルプ40質量%からなるクレープ加工紙を前記繊維シートのホットメルト塗布面に重ねて積層し、該積層物を表面温度が140〜150℃に調整されたヒートロールにて圧接し、さらにその後、冷熱ロールにて圧接し、クレープ加工紙と繊維シートの積層物からなる吸音性積層材を作製した。前記クレープ加工紙としては、次に示す4種類のクレープ加工紙を用いた。
1:クレープ率15%、目付量15g/m、通気抵抗0.20kPa・s/m
2:クレープ率15%、目付量40g/m、通気抵抗0.23kPa・s/m
3:クレープ率30%、目付量15g/m、通気抵抗0.21kPa・s/m
4:クレープ率30%、目付量40g/m、通気抵抗0.34kPa・s/m
次に、ポリエステル繊維からなる芯鞘構造の低融点繊維(融点:160℃)を30質量%含むポリエステル繊維からなる目付量600g/mで厚さが15mmからなるフェルトを通気性多孔質材料として用い、該フェルトの片面に上記ホットメルト接着剤をスプレー方法にて塗布量が15g/mになるように塗布した。次に上記吸音性積層材のクレープ加工紙面と該フェルトのホットメルト接着面とを重合し、200℃に調整された加熱炉にて50秒間加熱した後、冷圧プレス成形し所定形状に成形し、吸音性材料を作製した。また、吸音性能試験用として、厚さ10mmの平板状の吸音材も同時に成形した。
【0064】
〔実施例10〕
実施例9におけるクレープ加工紙をエンボス加工紙に代えて、実施例10の吸音性積層材と吸音材を作製した。また、吸音性能試験用として、厚さ10mmの平板状の吸音材も同時に成形した。前記エンボス加工紙としては、次に示す4種類のエンボス加工紙を用いた。
5:突起高さ0.2mm、突起数150個/cm、目付量15g/m、通気抵抗0.28kPa・s/m
6:突起高さ0.2mm、突起数150個/cm、目付量40g/m、通気抵抗0.30kPa・s/m
7:突起高さ1.5mm、突起数20個/cm、目付量15g/m、通気抵抗0.11kPa・s/m
8:突起高さ1.5mm、突起数20個/cm、目付量40g/m、通気抵抗0.13kPa・s/m
【0065】
〔参考例2〕
実施例9の1,2においてクレープ加工紙のクレープ率を5%、実施例9の3,4においてクレープ加工紙のクレープ率を55%にした他は同様にして、参考例1の9〜12の試料を作製した。
【0066】
〔参考例3〕
実施例9の1,3においてクレープ加工紙の目付量を8g/m、実施例9の2,4においてクレープ加工紙の目付量を55g/mにした他は同様にして、参考例2の13〜16の試料を作製した。
【0067】
〔比較例1〕
実施例9において、クレープ加工紙に代えて、クレープ加工前の表面が平滑でフラット形状である抄紙を用いた。さらに、該抄紙は、目付量を15g/mおよび40g/mにした。そして他は同様にして比較例1の17および18の試料を作製した。
【0068】
〔参考例4〕
実施例10の5,6においてエンボス加工紙の突起高さを0.01mm、実施例10の7,8においてエンボス加工紙の突起高さを2.5mmとした他は同様にして、参考例3の19〜22の試料を作製した。
【0069】
〔参考例5〕
実施例10の5,6においてエンボス加工紙の突起高さを0.2mmで突起数を250個/cmとし、実施例10の7,8においてエンボス加工紙の突起高さを1.5mmで突起数を10個/cmとした他は同様にして、参考例4の23〜26の試料を作製した。
【0070】
〔参考例6〕
実施例10の5,7において、エンボス加工紙の目付量を8g/m、実施例10の6,8においてエンボス加工紙の55g/mにした他は同様にして、参考例5の27〜30の試料を作製した。
【0071】
上記実施例9,10、参考例2〜6、比較例1の各々について吸音性能と成形性に関する試験結果を表1〜3に示す。ただし、以下に示す表2,3,5において、比較例、参考例における「吸音性積層材の通気抵抗」の欄は、当該比較例における積層材の通気抵抗が記載されている。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
通気抵抗:フラジール型通気度試験器に準じ、カトーテック株式会社製通気性試験機(KES−F8−AP1)を用い、単位面積当たりの通気量を4cc/s・cmとしたときの通気抵抗を測定した(t=10mm)。
吸音率:JIS−A1405に準じ、厚さ10mmの垂直入射吸音率(%)を測定した(t=10mm)。
成形性:所定形状に成形したものについて成形性を調べた。
◎:皺、破れ等がなく、深絞り部分も良好に成形できた。
△:平坦部分、及び深絞り部分に皺が発生する。
▲:深絞り部分に紙の追従性が悪く、紙の破れが発生し、吸音性積層材表面に筋となって見られる。
×:樹脂が吸音性積層材表面に滲みだし、外観不良となる。
【0076】
〔考察〕
表1〜3にあって、本発明の実施例9,10の試料1〜8、参考例2〜6の試料9〜15、19〜30、および比較例1の試料17,18の試験結果から下記のことがわかった。
本発明の、クレープ加工又はエンボス加工された紙であって特性が特定の範囲内にある延伸性紙材を用いると、垂直入射吸音率(%)の各周波数における吸音率は、概ね、表4に示す範囲となった。
【0077】
【表4】

【0078】
参考例2の試料9,10のようにクレープ率が小さいものは、本実施例に比べて吸音率が格段に悪く、成形性も劣った。試料11,12のようにクレープ率が大きいものは、本実施例に比べて吸音性能が同程度であるが、クレープ皺による凹凸が多すぎるため成形時に皺が発生した。
参考例3の試料13,15のように目付量が小さいものは、本実施例に比べて吸音性能が劣り成形性も悪かった。試料14,16のように目付量が大きいと、本実施例に比べて成形時に深絞り部分で皺の破れが見られた。
比較例1のように紙の表面が平滑でフラット形状であると、積層材又は吸音性材料として通気抵抗が本実施例と同程度であっても、吸音率が悪かった。また成形時において深絞りの追従が悪く成形性が悪かった。
参考例4の試料19,20のように突起高さが小さいと、本実施例に比べて吸音性能が悪く、また成形性も悪かった。試料21,22のように突起高さが大きいと、これも同様に吸音性能が悪く、成形性も悪かった。
参考例5の試料23,24のように突起数が多いと、本実施例に比べて吸音性能及び成形性が悪くなった。試料25,26のように突起数が少ないと、これも同様に吸音性能及び成形性が悪くなった。
参考例6の試料27,29のように目付量が小さいと、本実施例に比べて吸音性能が劣り成形性も悪かった。試料28,30のように目付量が大きいと、成形時において深絞り部分で皺の破れが見られた。
以上の結果から、高性能の吸音性積層材や吸音性材料を作製する場合は、単に吸音性積層材や吸音性材料の通気抵抗を調整するのではなく、本発明のような特定の延伸性紙材を採用すると、該延伸性紙材の表面の微細な凹凸形状が吸音性能および成形性に対して良好に作用して好適であることがわかった。また、成形物として、重量低減の観点からも非常に有用であることがわかった。
【0079】
〔実施例11〕
ポリエステル繊維からなるニードルパンチング法による目付量70g/mの繊維シートを用い、該繊維シートの片面に熱溶融させたポリエステル(融点:130℃)からなるホットメルト接着剤を塗布量が10g/mになるようにスプレー塗布した後、針葉樹パルプ80質量%、広葉樹パルプ20質量%からなるクレープ加工紙(クレープ率:30%、目付量:20g/m、通気抵抗:0.08kPa・s/m)を該ホットメルト接着剤塗布面に重ね、表面温度が140〜150℃に調整されたヒートロールにて圧接した後、冷却ロールにて圧接し、クレープ加工紙を繊維シートに接着した。次に、繊維シートに接着されたクレープ加工紙面に、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合エマルジョン(固形分:40質量%、MFT:4℃)40質量部、ホットメルト接着剤として共重合ポリエステル樹脂(融点:110℃、粒度:100〜150μm)20質量部、50質量%カーボンブラック水溶液2質量部、水38質量部からなる混合溶液を固形分として18g/mの塗布量でスプレー塗布し、120℃で4分間乾燥させ吸音性積層材を作製した。なお、この吸音性積層材の通気抵抗は、0.63kPa・s/mであった。
次に、ポリエステル繊維70質量%、および芯鞘構造の低融点繊維シート(融点:160℃)30質量%からなるポリエステル繊維からなる目付量600g/mで厚さが20mmの繊維ウェブを通気性多孔質材料として用い、該繊維ウェブの片面に上記吸音性積層材を重合させ、200℃に調整された加熱炉にて60秒間加熱した後、直ちに冷圧プレス成形し所定形状に成形して吸音性材料成形物を作製した。また、吸音性能試験用として、厚さ10mmの平板状の成形物も同時に成形した。なお、吸音性能試験用の成形物の通気抵抗は1.24kPa・s/mであった。該成形物の吸音率や成形性の試験結果は表5に示す。
【0080】
〔比較例2〕
実施例11において、クレープ加工紙を、表面がフラットの通常紙(目付量:20g/m)に代えた他は同様にして吸音性材料成形物を作製した。なお、この積層材の通気抵抗は0.65kPa・s/mであり、厚さ10mmの成形物の通気抵抗は1.26kPa・s/mであった。該成形物の吸音率や成形性の試験結果は表5に示す。
【0081】
〔比較例3〕
実施例11において、ポリエステル繊維からなるニードルパンチング法による目付量70g/mの繊維シートを用い、該繊維シートの片面に熱溶融させた共重合ポリエステル(融点:130℃)からなるホットメルト接着剤を塗布量が10g/mになるようにスプレー塗布した積層材(通気抵抗:0.03kPa・s/m)を、次の3種類の通気性多孔質材料である繊維ウェブと重合させ、200℃に調整された加熱炉にて60秒間加熱した後、直ちに冷圧プレス成形し所定形状に成形させ吸音性材料成形物を作製した。
33.ポリエステル繊維70質量%、および芯鞘構造の低融点繊維シート(融点:160℃)30質量%からなるポリエステル繊維からなる目付量600g/mの繊維ウェブ
34.同ポリエステル繊維からなる目付量900g/mの繊維ウェブ
35.同ポリエステル繊維からなる目付量1800g/mの繊維ウェブ
また、吸音性能試験用として、厚さ10mmの平板状の成形物も同時に成形した。なお、10mm厚さの各成形物の通気抵抗は、基材目付量600g/mのものが0.38kPa・s/m、900g/mのものが0.56kPa・s/m、1800g/mのものが1.28kPa・s/mであった。該成形物の吸音率や成形性の試験結果は表5に示す。
【0082】
〔比較例4〕
実施例3において、ポリエステル繊維からなるニードルパンチング法による目付量70g/mの繊維シートを用い、該繊維シートの片面に、アクリル酸エステル/メタクリル酸エステル共重合エマルジョン(固形分:40質量%、MFT:4℃)60質量部、ホットメルト接着剤として共重合ポリエステル樹脂(融点:110℃、粒度:100〜150μm)20質量部、水20質量部からなる混合溶液を固形分として250g/mの塗布量でスプレー塗布し、吸引しながら140℃で10分間乾燥させて積層材を作製した。該積層材の通気抵抗は0.67kPa・s/mであった。次に、ポリエステル繊維70質量%、および芯鞘構造の低融点繊維シート(融点:160℃)30質量%からなるポリエステル繊維からなる目付量900g/mの通気性多孔質材料に上記積層材を重合させ200℃に調整された加熱炉にて60秒間加熱した後、直ちに冷圧プレス成形し所定形状に成形させ吸音性材料成形物を作製した。なお、10mm厚さの成形物の通気抵抗は、1.30kPa・s/mであった。該成形物の吸音率や成形性の試験結果は表5に示す。
【0083】
【表5】

【0084】
〔考察〕
実施例11の試料31と比較例3の試料33,34,35を比較すると、従来の積層材として用いられるものはその成形物全体としての目付量を増やすことにより吸音性能を向上させる必要があることがわかった。実施例11の試料31と比較例3の試料35を比較すると、試料35では通気性多孔質材料の目付量が1800g/mで、実施例11の基材目付量の600g/mに近づくのがわかった。すなわち、従来と同程度の吸音性能を発揮させる場合において、本発明では従来構成の約1/3程度の成形物重量でよいことがわかった。また、同時に成形性も良好であった。
比較例2の試料32では、同種である紙を使用しても、その表面がフラット状であるため、吸音性積層材及び吸音性材料の通気抵抗が同程度であっても吸音性能が劣り、また成形性も悪かった。このため、紙表面の微細な凹凸が吸音性能に有効であると考えられる。
比較例4の試料36では、従来の多孔質材料の通気抵抗をある程度の数値にするには、かなりの量の樹脂を塗布する必要があり、またこのため、成形時に樹脂の滲みだしが見られ成形性が劣るものとなった。
なお、本発明に係る上記吸音性材料は、軽く、吸音性に優れ、自動車の天井材やトランクルームマット、フロアマット、ダッシュサイレンサ等に最適である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、軽量で吸音性、成形性に優れた吸音性積層材であるため産業上利用可能である。また、該吸音性積層材を用いた吸音材は自動車や建築に用いられ得るため産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0086】
1a エンボス加工紙(延伸性紙材)
1b クレープ加工紙(延伸性紙材)
2 突起
3 繊維シート
5a,5b 多孔性接着剤層
6 吸音性積層材
7 通気性多孔質材料
8 吸音性材料
10 カーペット
101,102,103 吸音性床敷材料
R 通気抵抗


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維シートの片面または両面に、表面に多数の凹凸が形成され、かつ通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mである延伸性紙材が積層されていることを特徴とする吸音性積層材。
【請求項2】
繊維シートの片面または両面に、クレープ加工によって多数の皺状凹凸が形成され、かつ通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mである延伸性紙材が積層されていることを特徴とする吸音性積層材。
【請求項3】
繊維シートの片面または両面に、エンボス加工によって多数の突起が形成され、かつ通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mである延伸性紙材が積層されていることを特徴とする吸音性積層材。
【請求項4】
繊維シートの片面または両面に、クレープ加工によって多数の皺状凹凸が形成され、かつ、エンボス加工によって多数の突起が形成され、更に通気抵抗が0.06〜3.0kPa・s/mである延伸性紙材が積層されていることを特徴とする吸音性積層材。
【請求項5】
前記クレープ加工によって多数の皺状凹凸が形成されている延伸性紙材にあっては、クレープ率が10〜50%である請求項2又は請求項4記載の吸音性積層材。
【請求項6】
前記エンボス加工によって多数の突起が形成されている延伸性紙材にあっては、突起高さが0.02〜2.00mmかつ突起数が20〜200個/cmである請求項3又は請求項4記載の吸音性積層材。
【請求項7】
前記延伸性紙材の目付量は10〜50g/mである請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の吸音性積層材。
【請求項8】
前記繊維シートと前記延伸性紙材とが多孔性接着剤層を介して積層されている請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の吸音性積層材。
【請求項9】
前記繊維シート及び/又は前記延伸性紙材には、合成樹脂が塗布及び/又は含浸されている請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の吸音性積層材。
【請求項10】
通気抵抗が0.100〜5.000kPa・s/mである請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の吸音性積層材。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の吸音性積層材にシート状の通気性多孔質材料が積層されていることを特徴とする吸音性材料。
【請求項12】
前記繊維シート、前記延伸性紙材、及び前記通気性多孔質材料のうち少なくともいずれかに合成樹脂が塗布及び/又は含浸されている請求項11記載の吸音性材料。
【請求項13】
通気抵抗が、0.400〜20.000kPa・s/mである請求項11又は請求項12記載の吸音性材料。
【請求項14】
上記延伸性紙材料には上記通気性多孔質材料の色を隠蔽する色に着色が施されている請求項11乃至請求項13のいずれか1項に記載の吸音性材料。
【請求項15】
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の吸音性積層材をカーペットの裏面に配したことを特徴とする吸音性床敷材料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−214871(P2009−214871A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24830(P2009−24830)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(000243892)名古屋油化株式会社 (78)
【Fターム(参考)】