説明

呼気中の生体ガス濃度を測定する方法及びその簡易型測定装置

【課題】呼気中の生体ガスを簡便かつ高感度に計測し、定量する方法及びその簡易型測定装置を提供する。
【解決手段】熱電式ガスセンサを用いて呼気中の生体ガス濃度を測定する方法であって、生体ガスと触媒材との触媒反応による発熱を、熱電変換により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出することにより呼気中の生体ガス濃度を測定することからなる呼気中の生体ガス濃度測定方法、ヒトの呼気を採取し、該呼気中に含まれる水素又は一酸化炭素等の生体ガス濃度を定量測定する、前記の方法、及びその簡易型測定装置。
【効果】ヒトの呼気中の水素又は一酸化炭素等の生体ガスを高感度に高選択的に計測、測定する方法、及びその簡易型測定装置を提供し、被験者の病態生理学的な解析を簡便かつ高感度に行うことを可能とする新規診断手法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトの呼気中の水素及び一酸化炭素ガス等の生体ガス濃度を測定する方法及びその装置測定に関するものであり、更に詳しくは、呼気を採集し、それを測定するガスセンサとして、水素及び一酸化炭素ガス等の生体ガスと触媒材との触媒反応による発熱を、熱電変換効果により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出するガス検出センサを用いて、これらの生体ガスを高感度に選択的に計測、測定する、呼気中の水素及び一酸化炭素ガス等の生体ガスの濃度を測定する方法及びその簡易型測定装置に関するものである。本発明は、ヒトの呼気中の水素又は一酸化炭素等の生体ガスを高感度に高選択的に計測、測定する方法及びその簡易型測定装置を提供し、被験者の病態生理学的な解析を簡便かつ高感度に行うことを可能とする新しい診断手法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、乳糖等の糖質は、胃で消化され、小腸で吸収される。しかし、糖質の吸収不良があると、小腸で吸収されなかった糖質は、そのまま大腸に到達する。ヒトの大腸内には、数百種の腸内細菌が常在し、腸内細菌叢(水素産生菌、メタン産生菌等)が、吸収されなかった糖質を用いて発酵することにより、水素(又はメタン)等の生体ガスを産生する。ここで発生した水素(又はメタン)ガスは、血液循環を介して呼気中に排泄される。この原理を利用して、糖質の消化吸収不全等を診断する方法が、呼気中生体ガス測定法である。
【0003】
呼気中の生体ガス濃度を分析することで、ヒトの健康状態又はストレスを評価することができる。例えば、水素は、腸内細菌の産生するガスが腸管から吸収され、呼気中に出ることから、呼気中の生体ガスの水素は、腸内細菌の活動の様を如実に反映し、消化機能低下のストレスマーカとなる。同じく、呼気中の生体ガスのメタンは、腸内メタン産生菌が産生するが、発生メカニズム等は不明確(水素と連動)である。同じく、呼気中の可燃性ガスの一酸化炭素は、フリーラヂカル、活性酸素による生体損傷(炎症)の酸化ストレスマーカとして知られている。
【0004】
このように、呼気中の水素は、腸内細菌の産生するガスであり、全てのヒトが産生しており、摂食物の質や吸収状態により水素の生成量が大きく変動し、それが、個人によって相違する。また、呼気中の一酸化炭素は、Heme oxygenase(HO)によって、Heme核の壊裂から産生されるが、ヘム酸化酵素は、酸化ストレスにより誘導され、一酸化炭素濃度は増加する。呼気中の一酸化炭素は、フリーラジカル、活性酸素による生体損傷、各種炎症等の酸化ストレスマーカとなる。更に、呼気中のメタンは、消化管内の細菌により作られるガス成分で、腸管から吸収され、呼気中に排泄される。呼気中に含まれる水素、一酸化炭素、メタンの生体ガスの産生を計測、測定することで、ヒトの病態生理学的な解析を行うことが可能である。
【0005】
例えば、呼気中の水素・メタン検査は、終末呼気を採取して測定する方法で、基本的に無侵襲検査法(痛みのない検査)であり、頻繁に呼気採取しても、技術的にも、また、被験者に対しても全く問題にならない。しかし、採取ガスを分析するためには、高価な分析設備を必要とするため、診療室で簡易に分析することは困難である。
【0006】
近年、採取したガスを外来の処置室等で分析できる簡易型呼気装置が開発されている(例えば、株式会社タイヨウ、生体ガス測定システム トライライザーmBA−3000)。この装置は、高価な設備としての分析機器とは違い、図1に示されるような構成の装置であり、ガスクロマトグラフィ分析を原理とした簡易型呼気分析装置として開発されたものである。
【0007】
また、この装置は、図2に示されるようなガスクロマトグラフィのピークから、ガス種とその量を分析することが可能であり、分析用キャリアーガスは、室内空気を用いているため、専用のガスが不要であり、測定時間は、4−10分程度である、等の特徴を有する。尚、図2は、水素、メタン、一酸化炭素の濃度を、ガスクロマトグラフィからの時間差のピーク強度から分析計測したものである。
【0008】
上記計測技術では、ガス検知部に用いられるセンサは、可燃性ガスに高感度な半導体式センサ素子を利用している。代表的な製品は、フィガロ技研のTGS821、TGS2600等のセンサ素子である。これらは、半導体式センサ素子を用いているため、検出信号が、上記測定技術では、特に、湿度の影響を大きく受け、経時変化(ドリフト)する等の問題がある。これらの問題があるため、上記計測技術では、特に、ppmレベルの低濃度水素・メタン測定を精度よく定量的に行なうためには、専用の校正ガスで機器を校正する必要がある。また、この種の装置は、ガス選択性を与えるために、ガスクロマトグラフィ部分を含め、機器の形態が大きくなり、高価な装置となる。
【0009】
一方、本発明者らは、触媒反応と熱電変換機能とを組み合せた動作原理を利用して、水素の触媒燃焼により発生した温度差を素子自ら電圧を信号とする熱電式ガスセンサを開発している。この熱電式ガスセンサは、1)触媒を選択することで水素(又は一酸化炭素)選択性のセンサとすることが可能であり(非特許文献1、2参照)、2)センサの触媒温度を100℃として湿気の影響を無くすことが可能であり(非特許文献3参照)、3)マイクロセンサ触媒燃焼で発生した熱を効率的に電圧信号に変換することが可能である(非特許文献4参照)、等の特徴を有している。
【0010】
例えば、呼気中の水素を測定するためには、数ppm−数百ppmの濃度範囲の水素を高感度に選択的に検出する必要がある。特に、呼気中には多くの種類の生体ガスが含まれているため、例えば、その中から水素のみの情報を取り出すためには、生体ガスに対する選択性が高選択性であることが非常に重要である。
【0011】
【非特許文献1】Shin, W., Matsumiya, M., Izu,N., and Murayama, N., “Hydrogen-selective Thermoelectric Gas Sensor”, Sens.Actuators, B, 93 (2003) 304-308
【非特許文献2】Matsumiya, M., Shin, W., Izu,N., and Murayama, N., “Thermoelectric CO Gas Sensor Using Thin-film Catalyst ofAu and Co3O4”, J. Electrochem. Soc., 151 (1), H7-H10 (2004)
【非特許文献3】Sawaguchi, N., Tajima, K.,Shin, W., Izu, N., Matsubara, I., and Murayama, N., “Effect of humidity on the sensing property ofthermoelectric hydrogen sensor”, Sens. Actuators, B, 108 (2005) 461-466
【非特許文献4】Nishibori M., Shin W., Houlet,L., Tajima, K., Izu, N., Itoh, T., Murayama, N. and Matsubara, I., “New Structural Design ofMicro-thermoelectric Sensor for Wide range Hydrogen detection”, J. Ceram. Soc. Japan, vol.114, p 853-856 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、呼気中の水素及び一酸化炭素等の生体ガス濃度を高感度に高選択的に計測できると共に、全体の計測、測定システムを簡易型にすることが可能な新しい測定方法及びその測定装置を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、ガスセンサとして、本発明者らが開発した熱電式ガスセンサを用いることにより、生体ガス成分を高感度に高選択的に測定可能であり初期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
本発明は、呼気中の水素及び一酸化炭素等の生体ガス濃度を高感度に高選択的に計測、測定することができるガス測定方法及びその測定装置であって、ガスセンサとして、本発明者らが開発した熱電式ガスセンサを呼気中の水素及び一酸化炭素等の生体ガス濃度の計測に用いて、全体の計測、測定システムを簡便にすることを可能とした生体ガス濃度の測定方法及びその簡易型測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)熱電式ガスセンサを用いて呼気中の生体ガス濃度を測定する方法であって、呼気中の生体ガス成分と触媒材との触媒反応による発熱を、熱電変換により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出することにより呼気中の生体ガス成分の濃度を測定することを特徴とする呼気中の生体ガス濃度測定方法。
(2)ヒトの呼気を採取し、該呼気中に含まれる生体ガス成分の濃度を定量する、前記(1)に記載の呼気中の生体ガス濃度測定方法。
(3)呼気中の生体ガス成分と選択的に触媒反応する触媒材を用いて、該触媒反応による発熱を、熱電変換により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出する、前記(1)に記載の呼気中の生体ガス濃度測定方法。
(4)生体ガス成分と触媒反応する触媒材として、水素又は一酸化炭素又はメタンガスに選択的に触媒反応する触媒材を用いることで、水素又は一酸化炭素又はメタン濃度を選択的に測定する、前記(3)に記載の呼気中の生体ガス濃度測定方法。
(5)触媒材として、白金系の貴金属合金、白金と酸化物の複合体又は白金系の貴金属合金と酸化物の複合体からなる複合触媒部材を使用し、呼気中に含まれる水素ガス濃度を選択的に測定する、前記(4)に記載の呼気中の生体ガス濃度測定方法。
(6)触媒材として、金系の貴金属合金、金と酸化物の複合体又は金系の貴金属合金と酸化物の複合体からなる複合触媒部材を使用し、呼気中に含まれる一酸化炭素ガス濃度を選択的に測定する、前記(4)に記載の呼気中の生体ガス濃度測定方法。
(7)触媒材として、Pt/酸化物触媒とAu/酸化物触媒を使用し、呼気中に含まれる水素及び一酸化炭素濃度を選択的に測定する、前記(4)に記載の呼気中の生体ガス濃度測定方法。
(8)生体ガス成分と触媒反応する触媒材の温度条件を、100℃から150℃の範囲のいずれかの温度に制御することにより、計測に必要な呼気ガス量を低減する、前記(4)に記載の呼気中の生体ガス濃度測定方法。
(9)前記(1)から(8)のいずれか1項に記載の測定方法に用いる生体ガス成分濃度の測定装置であって、ガスセンサとして、生体ガス成分と触媒材との触媒反応による発熱を、熱電変換により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出するガス検出センサを含むことを特徴とする呼気中の生体ガス成分濃度の測定装置。
(10)除湿フィルタと、呼気を取り込むためのエアーポンプと、ガスセンサ部を構成要素として含み、該ガスセンサ部が生体ガス成分と触媒材との触媒反応による発熱を、熱電変換により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出するガス検出センサからなり、クロマトグラフィーもしくは分離膜を用いるガス分離手段を含まないことを特徴とする、前記(9)に記載の呼気中の生体ガス成分濃度の測定装置。
(11)前記(1)から(8)のいずれか1項に記載の測定方法を使用して、ヒトの呼気中の生体ガス濃度を検出することを特徴とする簡易診断方法。
【0015】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、熱電式ガスセンサを用いて呼気中の生体ガス濃度を測定する方法であって、生体ガスと触媒材との触媒反応による発熱を、熱電変換により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出することにより呼気中の生体ガス濃度を測定することを特徴とするものである。
【0016】
本発明では、ヒトの呼気を採取し、該呼気中に含まれる生体ガス濃度を定量すること、呼気中の生体ガス成分と選択的に触媒反応する触媒材を用いて、該触媒反応による発熱を、熱電変換により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出すること、を好ましい実施の態様としている。
【0017】
本発明では、生体ガス成分と触媒反応する触媒材として、水素又は一酸化炭素又はメタンガスに選択的に触媒反応する触媒材を用いることで、水素又は一酸化炭素又はメタンを選択的に濃度測定すること、触媒材として、白金系の貴金属合金、白金と酸化物の複合体又は白金系の貴金属合金と酸化物の複合体からなる複合触媒部材を使用し、呼気中に含まれる水素ガス濃度を選択的に測定すること、を好ましい実施の態様としている。
【0018】
本発明では、触媒材として、金系の貴金属合金、金と酸化物の複合体又は金系の貴金属合金と酸化物の複合体からなる複合触媒部材を使用し、呼気中に含まれる一酸化炭素ガス濃度を選択的に測定すること、触媒材として、Pt/酸化物触媒とAu/酸化物触媒を使用し、呼気中に含まれる水素及び一酸化炭素濃度を選択的に測定すること、を好ましい実施の態様としている。
【0019】
また、本発明は、上記方法を用いて呼気中の生体ガス濃度を測定する際に、生体ガス成分と触媒反応する触媒材の温度条件を100℃から150℃の範囲のいずれかの温度に制御することにより、計測に必要な呼気ガス量を低減すること、を特徴とするものである。
【0020】
更に、本発明は、上記方法に用いる測定装置であって、ガスセンサとして、生体ガス成分と触媒材との触媒反応による発熱を、熱電変換により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出するガス検出センサを含むことを特徴とするものであり、除湿フィルタと、呼気を取り込むためのエアーポンプと、ガスセンサ部を構成要素として含み、該ガスセンサ部が生体ガス成分と触媒材との触媒反応による発熱を、熱電変換により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出するガス検出センサからなり、クロマトグラフィーもしくは分離膜を用いるガス分離手段を含まないこと、を好ましい実施の態様としている。
【0021】
本発明者らが開発した熱電式ガスセンサは、触媒反応と熱電変換機能とを組み合わせた動作原理で(図3参照)、例えば、水素の触媒燃焼により発生した温度差を素子自ら電圧を信号とするため、従来の半導体式や接触燃焼式の水素センサに比較して、以下のような特徴を有している。
【0022】
すなわち、熱電式ガスセンサは、1)触媒を選択することで水素(又は一酸化炭素)等の生体ガス選択性を可能にしたセンサであり、2)センサの触媒温度を100℃として湿気の影響を無くすことが可能であり、3)周囲温度の変動の影響を受けにくく、4)計測可能な濃度範囲が広く、5)ドリフトが無い、という特徴を持っていることから、これを、呼気中の水素及び一酸化炭素等の生体ガス濃度の計測手段に用いると、全体の測定システムを簡便な構成にすることが可能となる。
【0023】
この熱電式ガスセンサ素子の高感度、高選択、高速な応答のためには、素子をマイクロ素子化することが有効である。本発明者らは、シリコンウェハ上に、薄膜状の熱電膜、触媒膜、電極、配線、ヒータを集積したマイクロ素子を開発した。シリコン基板上に、熱電素子、ヒータ、電極、配線、触媒等を集積し、更に、基板の裏側を選択的に取り除くプロセスにより、マイクロ素子を作製する。
【0024】
図4に、マイクロ熱電式水素センサの作製プロセスを示す。これを具体的に説明すると、本発明では、例えば、複数の異なる触媒材を配設した基板、ガスと触媒材の触媒反応による発熱の温度差を電気信号に変換する熱電変換部から構成されるセンサ素子が用いられる。これにより、呼気中に含まれる生体ガスの特定ガス成分を高感度に高選択的に検出することが可能である。触媒材としては、白金/金系の貴金属合金、白金/金と酸化物の複合体又は白金/金系の貴金属合金と酸化物複合体からなる複合触媒材が例示される。
【0025】
触媒は、例えば、ペースト状の材料を素子表面に形成してから加熱処理して焼成することにより作製することができる。この場合、例えば、最終的な触媒の構造が酸化物のナノ粒子と、その表面に数ナノメートルの大きさの貴金属とが分散された複合体となるように、予め原料配合及びその微細構造を設計し、原料のペーストを調製し、ペースト状に素子表面に形成し、焼成する。
【0026】
酸化物のナノ粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ、酸化スズのナノ粒子、また、貴金属としては、例えば、Pt、Pd、Au、また、微細構造としては、例えば、酸化物の表面に金属のナノ粒子が所定の分散状態で分散されている構造、が例示される。また、触媒からの発熱エネルギーが周辺に伝わらないように、例えば、熱伝導の低いメンブレンの上に触媒が形成される。
【0027】
本発明において、触媒用粉末及びペースト材料の調製は、例えば、市販の塩化白金、塩化パラジウムの水溶液を作り、直接、酸化物の粉末と混ぜて、これを加熱乾燥することで出発原料の触媒用粉末を調製し、これを、例えば、テルピネオールとエチルセルロース等で作ったビークルと混合し、ペースト状の材料を調製する。
【0028】
微細パターンの形成は、例えば、素子の所定の位置に、ディスペンサを用いて触媒を塗布し、例えば、300℃で1時間加熱して触媒を作製することで行われる。触媒の大きさは、例えば、直径約0.5〜2.0mmの円形、あるいは幅0.5〜1.5mmの正方形のパターンとして形成することができる。
【0029】
一酸化炭素を検出する触媒としては、例えば、粒子径が5nm以下の金の粒子を酸化チタンや酸化鉄等に担持させたAu/TiO触媒等が例示される。また、水素を検出する触媒としては、例えば、Pt系のPt/Al触媒が例示される。これらの触媒は、例えば、金属酸化物担体を浸漬した塩化物金酸水溶液をpH6〜10の範囲内で一定に保持し、熟成することにより、水酸化金を担体上にだけ析出・沈澱させた後、水洗・乾燥後、空気中で25℃、30分焼成することで作製することができる。
【0030】
このAu/TiO触媒として、例えば、触媒組成が3wt%Au/TiOで、金粒子径が2.8nm(TEM標準偏差0.8nm)の超微粒子の触媒材が例示される。この場合、文献(例えば、特開2006−047276号公報)に記載のペースト作製法を利用して、触媒材を素子上に塗布、集積化することができる。
【0031】
本発明では、マイクロセンサ素子を構築し、使用することができる。例えば、熱電式ガスセンサ素子において、触媒からの発熱エネルギーが周辺に伝わらないように、熱伝導の低いメンブレの上に、ディスペンサを用いて触媒の微細パターンを形成して、マイクロ素子を作製することができる。この場合、マイクロ熱電式ガスセンサ素子の作製プロセスは、基本的には、基板に、熱遮蔽のためのメンブレンを形成する工程、このメンブレン上に、熱電変換材料膜パターン、ヒータパターン、配線パターン、及び触媒材料パターンを形成する工程から構成される。
【0032】
図5に、作製したマイクロ熱電式水素センサの写真を示す。水素センサ素子のデザインは、1)素子熱容量を最小化すること、2)熱拡散を効率的に防止すること、を目的に適宜決定する。熱遮蔽のために形成したメンブレンの面内に、ヒータ、熱電薄膜、及び電極を集積する。メンブレンの作製には、例えば、KOH溶液を用いたシリコン基板の異方性ウェットエッチング技術を利用することができる。厚み300nm程度のSiGe熱電薄膜は、スパッタ法で形成し、結晶化のために、高温熱処理プロセスを行う。
【0033】
水素燃焼触媒として、アルミナに白金を担持させたセラミックス触媒を集積化したマイクロセンサ素子は(図5参照)、薄膜触媒を用いた素子に比べて、水素に対する信号電圧が飛躍的に向上する。図6に、触媒温度を100℃にしたマイクロ熱電式水素センサの電圧信号の水素濃度依存性を示す。このマイクロ熱電式センサは、従来のバルクタイプのセンサに比較して、マイクロセンサ触媒燃焼で発生した熱を効率的に電圧信号に変換することができる。
【0034】
このため、特に、水素濃度が低濃度側での特性が向上し、水素濃度0.5ppmの低濃度から5%の高濃度まで、直線性の優れた応答特性を示す。本発明の、熱電式ガスセンサを利用した呼気中生体ガス濃度計測、測定の全体システムは、図7に示すよう、シリカゲルを筒等に詰めた簡易除湿フィルタと呼気を取り込むためのエアーポンプとセンサから構成される簡便なものである。
【0035】
本発明では、熱電式ガスセンサを用いることで、湿気に依存しない安定した性能が発揮できることが分かった。しかし、実際の環境では、ヒトの呼気は、36℃で相対湿度95%以上の高温多湿のガスであり、これを、そのままシステムに入れると、通常、システムの温度は、室温25℃前後のため、システムの中に結露が生じる等の問題が発生する。本発明の測定装置では、上述の市販の装置のように、湿度を丁寧に除去する必要はないが、例えば、シリカゲル程度の簡易除湿部を設けることで、測定システムの安定性を確保することが可能である。
【0036】
従来、熱電式ガスセンサは、可燃性ガスの測定用センサとして公知であるが、ヒトの呼気中の生体ガスの分析に使用された例は無く、しかも、36℃で相対湿度95%以上の多湿条件下で生体ガス成分を高感度に高選択的に検知できるか否かは全く不明であった。本発明は、後記する実施例に示した実験を重ねた結果、ヒトの呼気中の生体ガス成分を、高湿度条件下においても、高感度に高選択的に分析し得ることを実証したものであり、これらの知見は、文献の記載からは全く予期し得ない新規かつ格別のものである。
【0037】
前述のように、本発明では、呼気中の水素を選択的に検知する触媒材としては、例えば、白金系の貴金属合金、白金と酸化物の複合体又は白金系の貴金属合金と酸化物の複合体からなる複合触媒部材が例示される。また、呼気中の一酸化炭素を選択的に検知する触媒材としては、例えば、金系の貴金属合金、金と酸化物の複合体又は金系の貴金属合金と酸化物の複合体からなる複合触媒部材が例示される。また、呼気中の水素及び一酸化炭素を選択的に検知する触媒材としては、例えば、Pt/酸化物触媒とAu/酸化物触媒が例示されるが、同効の触媒材であれば同様に使用することで可能であり、これらに制限されるものではない。
【0038】
本発明では、上記方法を用いて呼気中の生体ガス濃度を測定する際に、生体ガス成分と触媒反応する触媒材の温度条件を100℃から150℃の範囲のいずれかの温度に制御することにより、低濃度ガスに対する応答速度及び安定時間を向上させ、計測に必要な被験者から採取する呼気ガス量を低減し、計測時間を短縮することが可能となる。本発明では、ヒトの呼気中の生体ガス濃度を検出することを可能とする簡易診断手法と手段を構築し、提供することができる。
【0039】
本発明では、上記方法に用いる測定装置として、除湿フィルタと、呼気を取り込むためのエアーポンプと、ガスセンサ部を構成要素として含み、該ガスセンサ部が生体ガス成分と触媒材との触媒反応による発熱を、熱電変換により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出するガス検出センサからなり、クロマトグラフィーもしくは分離膜を用いるガス分離手段を含まないことを特徴とする呼気中の生体ガス濃度測定装置が用いられる。上記装置を構成する除湿フィルタ、エアーポンプ、及びガスセンサ部の具体的な構成は、特に限定されるものではなく、必要に応じて任意に設計することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)ヒトの呼気中の水素又は一酸化炭素等の生体ガスを高感度に高選択的に計測、測定する方法及びその簡易型測定装置を提供することができる。
(2)上述の市販の装置のように、特殊な除湿機構を設けて呼気サンプリングガスの湿度を下げなくても、シリカゲル程度の簡易除湿部を設けることで足りる。
(3)ガスを選択・選別するためのガスクロマトグラフィ等が必要とされないため、システムを簡便な構造に構成することができる。
(4)低濃度ガスに対する応答速度及び安定時間が短いため、計測に必要な被験者から採取する呼気ガス量が少なく、負担が少ない。
(5)複雑な除湿部、ガスクロマトグラフィ部が必要とされないため、ガス流を制御するエアーポンプも簡単で小型でも十分計測可能である。
(6)従来の簡易型分析装置では、図2に示されるようなガスクロマトグラフィのピークから、ガス種とその量を分析するが、本発明の熱電式水素センサのシステムでは、センサ自らがガス選択性であるため、ガスクロマトグラフィ部分が不要である。
(7)これらのことから、コンパクトな装置で、十数秒以内で水素(又は一酸化炭素)等の生体ガス濃度を高精度で計測、測定することが可能である。
(8)ヒトの呼気中の生体ガス濃度を検出することを可能とする簡易診断手法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0042】
図8に示す簡易型呼気分析装置に、半導体式ガスセンサと、熱電式水素センサとを用いてガス濃度計測を行い、その違いを実験で確認した。使用したセンサ素子としては、半導体式センサは、市販センサ素子TGS821(フィガロ技研製)であり、熱電式水素センサは、マイクロ熱電式水素センサ(非特許文献4と同様のプロセスで作製した素子)であった。
【0043】
(1)実験の詳細
室内の空気(シリカゲルによる除湿後と同程度)をガス採集用袋に採集し、その袋に水素を計量注入し、(水素/空気)となるよう調製した混合模擬ガスを準備した。この混合ガスを300ccmの流量でガスセンサ部に流し、ガスセンサからの信号を記録した。サンプリングガスとフローガスの2つのガスを同じくサンプリング袋に入れ、切り替えて流した。ガスの湿度は、室温で相対湿度約20%であった。
【0044】
(2)定量的な検知性能
図9に示すように、熱電式水素センサから、1000ppmレベルまで定量的な計測が可能な信号が得られた。これを基に検量線を引くことで、呼気中の水素濃度を定量的に評価した。
【0045】
(3)メタンガスの干渉特性
図10に示すように、熱電式水素センサと半導体式ガスセンサのメタンガスによる干渉特性(メタンガスのみ)を調べた。熱電式水素センサは、100ppmのメタンガスには殆ど応答しなかった。通常の呼気中のメタン濃度は、最大で100ppm程度であり、熱電式水素センサは、この応用では、メタンに応答しないと考えても良い。
【0046】
1000ppmのメタンガスには、熱電式水素センサでも応答が見られた。しかし、応答した信号の大きさは、水素ガス換算で5ppm以下であり、無視できる程度と考えられる。半導体式のセンサの場合は、メタンに応答した。また、水素ガスの応答に比べて小さく、約1/10の信号であつた。
【0047】
しかし、実際の呼気の場合、水素とメタンは混合された状態であり、この状態で水素の濃度計測にメタンの量が合わせられると正確な計測ができなくなる。図11に、水素ガスとメタンガスを混合した場合の熱電式水素センサと半導体式ガスセンサのメタンガスによる干渉特性を示す。熱電式水素センサの場合、メタンガスによる影響は殆ど無いことが分かった。しかし、半導体式センサは100ppmのメタンでも干渉特性があった。
【0048】
(4)湿度の影響・ガスセンサの違い
室内の空気(シリカゲルによる除湿後と同程度)をガス採集用袋に採集し、その袋に水素を計量注入し、20ppm(水素/空気)となるように調製した混合ガスを準備した。また、高湿度ガスを別途準備し、これも20ppm(水素/空気)となるように調製した。これらの混合ガスを300ccmの流量でガスセンサ部に流して、熱電式水素センサと半導体式ガスセンサからの信号を記録した。サンプリングガスとフローガスの2つのガスを同じくサンプリング袋に入れ、切り替えて流した。
【0049】
(5)熱電式水素センサ
熱電式水素センサと半導体式センサは、高湿度のガスに影響を受ける。熱電式水素センサの場合は、高濃度の水素計測の場合、殆ど影響が無いが、PPMレベルとなると、図10に示したような影響が発生する。そのため、簡易的な処置でも、計測するガスをシリカゲル等の乾燥剤を通し、湿度を落せば、図10の乾燥の状態のような計測が、再現性良く繰り返し、定量的に、図9のような検量が可能であることが分かった。
【0050】
(6)半導体式センサ
半導体式センサは、可燃性ガスの選択性は悪いが、ppmレベルの低濃度でも高感度に応答する特性を示す。しかし、その動作原理から、全ての検知濃度範囲において、分析ガスに含まれている湿度にも敏感に応答する。その傾向としては、図10に示したように、湿度が高いと応答電圧が大きくなる。
【0051】
他の問題としては、図10からも、ガス流の切替の際に、応答が遅いこと、計測ガスから空気に切り替えても、信号が残ってしまい、ベースラインヘ素早く戻ることができないこと、等の問題が確認できる。このセンサとガスクロマトグラフィとを組み合わせた呼気分析装置の場合、ガスクロマトグラフィが時間差によるガス分別原理を用いるため、このような、立ち上がり、立下りの応答特性の問題は、ガス濃度計測に致命的な問題となる。
【実施例2】
【0052】
熱電式水素センサを用いて呼気測定を行った。具体的には、図8に示されるような簡易型分析システムに、熱電式水素センサを用いて呼気ガス濃度計測を行った。呼気採取としては、30代の男性(本発明者ら)から呼気採集袋に呼気を吹き込んで採敗した。採取ガスを300ccmの流量でガスセンサ部に流して、ガスセンサからの信号を記録した。採取ガスとフローガスの2つのガスを同じくサンプリング袋に入れ、切り替えて流した。この呼気の熱電式水素センサを用いた簡易型呼気分析装置による呼気中の水素濃度測定結果を図13に示す。熱電式水素センサの応答は、経過時間100sでの応答で2.6μVであり、検量線から考えると、6.5ppmの水素と計測された。
【実施例3】
【0053】
図8に示されるような簡易型分析システムに、熱電式水素センサを用いてガス濃度計測を行った。その際、触媒温度100℃から150℃まで、ガス流量300ccmから100ccmまで変化させ、触媒温度とガス流量による応答速度の違いを確認した。
【0054】
(1)実験の詳細
温度25℃・相対湿度55%に調整した空気を、ガス採集用袋に採集し、その袋に水素を計量注入し、(水素/空気)となるよう調製した混合模擬ガスを準備した。この混合ガスを300ccmから100ccmの流量でガスセンサ部に流し、ガスセンサからの信号を記録した。サンプリングガスとフローガスの2つのガスを同じくサンプリング袋に入れ、空気30秒・混合模擬ガス150秒・空気60秒と切り替えて計測を行った。
【0055】
(2)触媒温度100℃での応答特性
図14に、触媒温度100℃での応答特性を示す。水素濃度1000ppmにおいて、300ccmでは、立ち上がりは早いが、徐々に電圧が低下し、ガス切り替え後、安定するまでに60秒程度かかった。また、100ccmでは、ガス置換のタイムラグがあるが、ガス切り替え後、60秒程度で電圧が安定するため、安定するまでに必要なガス量は、流速に依存せず一定であると言える。水素濃度100ppmにおいて、300ccm,100ccmともに、ガス切り替え後、安定するまで150秒程度かかった。また、流速により最大応答値が変化した。
【0056】
(3)触媒温度125℃での応答特性
図15に、触媒温度125℃での応答特性を示す。水素濃度1000ppmにおいて、300ccmでは、立ち上がりが早く、ガス切り替え後、20秒程度で電圧が安定した。また、100ccmでは、ガス置換のタイムラグがあるが、ガス切り替え後、安定するまでの時間は40秒程度であった。水素濃度100ppmにおいて、300ccmでは、ガス切り替え後、20秒程度で電圧が安定し、ガス置換のタイムラグがあるが、100ccmでさえ、ガス切り替え後、40秒程度で安定した。
【0057】
(4)触媒温度150℃での応答特性
図16に、触媒温度150℃での応答特性を示す。水素濃度1000ppmにおいて、300ccmでは、立ち上がりが早く、ガス切り替え後、20秒程度で電圧が安定した。また、100ccmでは、ガス置換のタイムラグがあるが、ガス切り替え後、安定するまでの時間は40秒程度であった。水素濃度100ppmにおいて、300ccmでは、ガス切り替え後、20秒以内に電圧が安定し、ガス置換のタイムラグがあるが、100ccmでさえ、ガス切り替え後、40秒程度で安定した。
【0058】
(5)触媒温度と流量による応答速度の違い
触媒温度を125℃にした場合、100℃の場合と比べて、格段に応答速度及びガス切り替え後、安定するまでの時間が速くなることが分かった。しかしながら、触媒温度150℃の場合は、125℃の場合と比べ、大きく改善される点は見られなかった。
【0059】
(6)計測に必要とされるガス量
計測に必要とされるガス量は、上述の結果から、以下の表1のように見積もることができた。
【0060】
【表1】

【0061】
触媒温度を変えることで、低濃度計測での反応時間(応答速度)を速め、計測に必要なガス流量を少なくすることができた。例えば、動作温度を100℃から125℃にすることで、水素濃度100ppmの計測に必要なガス量は、最大1/6となる。このことは、測定時間の短縮及び測定に必要な呼気ガス採取量の減少等、測定時の被験者に対する負担を減少させることにつながることを意味する。
【実施例4】
【0062】
ガスの選択性について検討するために、図8に示されるような簡易型分析システムに、熱電式水素センサを用いて、干渉ガスに対する濃度計測を行った。温度25℃・相対湿度55%に調整した空気を、ガス採集用袋に採集し、その袋に、一酸化炭素あるいはイソブタンを計量注入して調製した混合ガスを準備した。この混合ガスを300ccmの流量でガスセンサ部に流し、ガスセンサからの信号を記録した。混合ガスとフローガスの2つのガスを同じくサンプリング袋に入れ、空気30秒・混合模擬ガス150秒・空気60秒と切り替えて計測を行った。
【0063】
(1)一酸化炭素
図17に、一酸化炭素の場合の計測結果を示す。一酸化炭素単独ガスに対して、動作温度100℃では、100ppm,10ppm共に検知しないことが分かった。しかしながら、動作温度が高くなるにつれ、検知感度が高くなり、10ppmに対しても応答を示した。一酸化炭素は、触媒表面に吸着することで被毒となり、水素の燃焼を阻害しうるが、この場合、一酸化炭素を燃焼するため、被毒とはならず、水素検知の妨げにならないことが分かった。
【0064】
(2)イソブタン
図18に、イソブタンの場合の計測結果を示す。イソブタンに対して、動作温度150℃でも検知せず、動作温度200℃以上で、わずかに検知し始めた。したがって、本発明の分析に影響を与える恐れはないことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上詳述したように、本発明は、呼気中の生体ガスを測定する方法及びその簡易型測定装置に係るものであり、本発明により、コンパクトな装置で、十数秒以内の短時間で、呼気中の水素又は一酸化炭素ガス濃度を高感度に計測、測定することができる、呼気中の生体ガス濃度測定方法及びその簡易型測定装置を提供することができる。本発明は、ヒトの呼気中の水素又は一酸化炭素等の生体ガスを高感度に高選択的に計測、測定する方法及びその簡易型測定装置を提供し、被験者の病態生理学的な解析を簡便かつ高感度に行うことを可能とする新規診断手法を提供するものとして有用である。
【0066】
本発明では、熱電式ガスセンサを用いるため、センサ自体がガス選択性であり、そのため、ガスクロマトグラフィ部分が不要であり、システム全体を簡便にすることができる。本発明は、ヒトの呼気中の水素又は一酸化炭素ガス濃度を計測して、糖質の消化吸収不全等を診断することを可能とする、システム全体が簡便で、低コストの簡易診断装置を提供するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】簡易型呼気分析装置の構成を示す。
【図2】市販の簡易型呼気分析装置からの測定例(H:23.0ppm、CO:89ppm、CH:1.2ppm)株式会社タイヨウのホームページ(http://www.t-taiyo.com/)から抜粋を示す。
【図3】水素ガスとPt触媒との触媒発熱から発生する局部的な温度差を熱電変換材料により電圧信号に変換する動作原理で水素ガスを検知する熱電式ガス(水素)センサを示す。
【図4】マイクロ熱電式水素センサの作製プロセスを示す。
【図5】マイクロ熱電式水素センサの写真を示す。
【図6】マイクロ熱電式水素センサの電圧信号の水素濃度依存性を示す。
【図7】熱電式水素センサを用いた簡易型呼気分析装置の構成を示す。
【図8】熱電式水素センサを用いた簡易型呼気分析装置の写真を示す。
【図9】熱電式水素センサの水素ガス濃度依存性を示す。
【図10】熱電式水素センサと半導体式ガスセンサのメタンガスによる干渉特性(メタンガスのみ)を示す。
【図11】熱電式水素センサと半導体式ガスセンサのメタンガスによる干渉特性(水素ガスとメタンガスを混合した場合)を示す。
【図12】熱電式水素センサと半導体式ガスセンサの湿度依存性を示す。
【図13】熱電式水素センサを用いた簡易型呼気分析装置による呼気測定結果を示す。
【図14】触媒温度100℃での応答特性を示す。
【図15】触媒温度125℃での応答特性を示す。
【図16】触媒温度150℃での応答特性を示す。
【図17】一酸化炭素に対する、動作温度100℃、125℃、150℃での応答特性を示す。
【図18】イソブタンに対する、動作温度150℃、200℃での応答特性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電式ガスセンサを用いて呼気中の生体ガス濃度を測定する方法であって、呼気中の生体ガス成分と触媒材との触媒反応による発熱を、熱電変換により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出することにより呼気中の生体ガス成分の濃度を測定することを特徴とする呼気中の生体ガス濃度測定方法。
【請求項2】
ヒトの呼気を採取し、該呼気中に含まれる生体ガス成分の濃度を定量する、請求項1に記載の呼気中の生体ガス濃度測定方法。
【請求項3】
呼気中の生体ガス成分と選択的に触媒反応する触媒材を用いて、該触媒反応による発熱を、熱電変換により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出する、請求項1に記載の呼気中の生体ガス濃度測定方法。
【請求項4】
生体ガス成分と触媒反応する触媒材として、水素又は一酸化炭素又はメタンガスに選択的に触媒反応する触媒材を用いることで、水素又は一酸化炭素又はメタン濃度を選択的に測定する、請求項3に記載の呼気中の生体ガス濃度測定方法。
【請求項5】
触媒材として、白金系の貴金属合金、白金と酸化物の複合体又は白金系の貴金属合金と酸化物の複合体からなる複合触媒部材を使用し、呼気中に含まれる水素ガス濃度を選択的に測定する、請求項4に記載の呼気中の生体ガス濃度測定方法。
【請求項6】
触媒材として、金系の貴金属合金、金と酸化物の複合体又は金系の貴金属合金と酸化物の複合体からなる複合触媒部材を使用し、呼気中に含まれる一酸化炭素ガス濃度を選択的に測定する、請求項4に記載の呼気中の生体ガス濃度測定方法。
【請求項7】
触媒材として、Pt/酸化物触媒とAu/酸化物触媒を使用し、呼気中に含まれる水素及び一酸化炭素濃度を選択的に測定する、請求項4に記載の呼気中の生体ガス濃度測定方法。
【請求項8】
生体ガス成分と触媒反応する触媒材の温度条件を、100℃から150℃の範囲のいずれかの温度に制御することにより、計測に必要な呼気ガス量を低減する、請求項4に記載の呼気中の生体ガス濃度測定方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の測定方法に用いる生体ガス成分濃度の測定装置であって、ガスセンサとして、生体ガス成分と触媒材との触媒反応による発熱を、熱電変換により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出するガス検出センサを含むことを特徴とする呼気中の生体ガス成分濃度の測定装置。
【請求項10】
除湿フィルタと、呼気を取り込むためのエアーポンプと、ガスセンサ部を構成要素として含み、該ガスセンサ部が生体ガス成分と触媒材との触媒反応による発熱を、熱電変換により電圧信号に変換し、それを検出信号として検出するガス検出センサからなり、クロマトグラフィーもしくは分離膜を用いるガス分離手段を含まないことを特徴とする、請求項9に記載の呼気中の生体ガス成分濃度の測定装置。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項に記載の測定方法を使用して、ヒトの呼気中の生体ガス濃度を検出することを特徴とする簡易診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−256680(P2008−256680A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63369(P2008−63369)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】