説明

回路パターン検査装置

【課題】単一のセンサユニットで導電パターンのオープン/ショートを検出可能な回路パターン検査装置およびその方法を提供する。
【解決手段】ガラス基板3上に列状に配設された導電パターン2の良否を非接触で検査する際、検査信号を供給する給電部12と、その信号を検知するためのセンサ13とを近接して配する。かかる構成とすることで、オープン状態のない正常な導電パターン上にセンサ13がある場合と、オープン箇所のある導電パターン上にセンサ13が位置したときとで、そのセンサ13による検査電流の検出レベルに顕著な相違が生じるため、オープン状態の検出を確実に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路パターン検査装置およびその方法に関し、例えば、ガラス基板に形成された櫛歯状導電パターンの良否を検査可能な回路パターン検査装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に形成された回路パターンを検査する方法として、従来より知られているものに、導体パターンの一端より検査信号を供給し、その導体パターンの他端より検査信号が検出されれば導通が確保されたとして、被検査回路パターンが正常状態にあり、逆に検査信号が検出されなければ、導体パターンが断線状態にあると判断する方法があり、実際の回路基板検査に使用されていた。
【0003】
さらには、被検査導体パターンに供給した検査信号が、その導体パターンを正常に通過したことを確認するのみならず、検査プローブを被検査導体パターンに隣接するパターンにも配置し、その隣接パターンの他端からも信号が検出されるか否かを判断することで、被検査導体パターンと隣接パターンとの短絡(ショート)状態を判定する方法も採用されていた。
【0004】
具体的には、(1)検査対象の導体パターンの両端に、例えばピンプローブを直接接触させるもの(ピンコンタクト方式とも呼ばれ、その詳細は、例えば特許文献1に記載されている)、(2)検査信号の供給側でのみピンプローブを直接接触させ、他端側では、導体パターンとセンサ間の容量結合を介して非接触状態で検査信号を検出するもの(非接触−接触併用方式)、(3)被検査導体パターンと信号供給プローブ間の容量結合を介して検査信号を供給し、他端では導体パターンとセンサ間の容量結合を介して検査信号を検出するもので、信号の供給側と検出側の両方において非接触状態で導通検査を行うもの(非接触方式)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−275295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した(1)のピンコンタクト方式は、検査対象とする基板の全端子に金属性のピンプローブを立てて、これらのプローブを経由して導電パターンへ電気信号を送り込んでいた。このため、検査信号について良好なS/N比(信号対雑音比)が得られるという利点はあったが、検査対象製品自体やそのパターンを傷つけるおそれがあり、高細密なパターンには使用できなかった。
【0007】
また、上記従来の回路パターン検査装置や検査方法では、検査対象の導電パターンがオープン状態(パターン断線状態)か否かを検出するための手段としてのオープン検出センサと、隣接パターンとの短絡状態(ショート状態)を検査するためのショートセンサとを個別に設ける構成をとっている。その場合、それらのセンサからの検知信号を各々解析する必要があり、解析のためのプログラムや検査装置の構成が複雑化し、それに伴う検査時間も必要となることから、検査性能や検査効率の向上に対しても限外が生じていた。
【0008】
一方、上記(2),(3)の方法では、検出レベルが低く、精度のよい検査が難しかった。また、従来の検査装置では、図9に示すように検査信号を供給する給電部101と信号検知用のセンサ103が、検査対象である導電パターン上の一端部と他端部とに一定の距離を置いて分かれた状態で配されている。そのため、これら給電部とセンサからなるユニットの小型化が難しいという問題もある。特に検査対象(例えば、液晶表示パネルやタッチ式パネル等)や製品の機種等によって、その導電パターンの長さが異なるため、それに応じた給電部とセンサの配置が必要となり、個々の検査対象ごとにそれに合ったユニットを用意しなければならなかった。
【0009】
さらに、図9に示すようにパターンの一方が繋がった櫛歯状パターンでは、その導電パターンにオープン状態がなく、他の導電パターンに検査信号が回り込んだときの検出信号レベルと、導電パターンにオープン箇所があるときの検出信号レベルのわずかなレベル差をもとに導電パターンのオープン検出を行っているため、確実かつ十分な検査ができないという問題があった。
【0010】
すなわち、図9に示すように、一端が開放され、他端がショートバー104で短絡された櫛歯状導電パターン120,121等において、導電パターン121の一部が断線状態(その断線箇所を符号110で示す)にある場合を想定する。給電部101から検査信号を供給したとき、断線がない場合、導電パターンに流れていた信号電流をオープン検出センサ103で検出したレベル(図10のA)と、断線110のために電流が流れなくなったときのレベル(図10のB)とを比べると、図10から分るように、その差はわずか(例えば、正常時の10%のレベル低下)である。そのため、検出信号とノイズとの区別が困難な場合があり、検出結果の信頼性という点において問題が生じていた。
【0011】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、導電パターンのオープン状態/ショート状態を高精度で検出できる回路パターン検査装置およびその方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、簡易な装置構成で導電パターンのオープン状態/ショート状態を検出可能な回路パターン検査装置およびその方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として、例えば、以下の構成を備える。すなわち、本発明は、基板上に延設された導電パターンの断線状態を検査する回路パターン検査装置であって、前記導電パターン上方に離間し、交流信号からなる検査信号を、容量結合を介して印加する信号供給手段と、前記導電パターンの延設方向で上方に離間し、且つ前記信号供給手段に近接して1つのユニットとして設けられて、前記導電パターンに印加された前記検査信号を、容量結合を介して検出する信号検出手段と、前記ユニットを前記導電パターンと交差する方向に前記離間した状態で移動させる移動手段と、前記信号検出手段で検出された前記検出信号と予め設定した基準値とを比較し、該検出信号が該基準値以上か否かで前記導電パターンの断線を識別する識別手段と、を備える回路パターン検査装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検査対象である基板上の導電パターンのオープン状態等を精度よく、かつ簡単に検出できる。また、本発明によれば、検出ユニットの小型化が可能となり、基板検査装置の製造コストダウンも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の実施の形態例に係る基板検査装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、給電部とセンサを内蔵するユニットと、検査対象との位置関係を示す平面図である。
【図3】図3は、正常な導電パターンにおけるユニットと導電パターンを流れる検査信号の測定結果の一例を示す図である。
【図4】図4は、導電パターンにオープン箇所がある場合における、ユニットと導電パターンを流れる検査信号の測定結果の一例を示す図である。
【図5】図5は、ショートバーを有しない導電パターンにおける、ユニットと検査対象との位置関係を示す平面図である。
【図6】図6は、導電パターンにオープン箇所がある場合の給電部から供給された検査交流信号の経路を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態例に係る基板検査装置における検査信号の流れを模式的に示す回路図である。
【図8】図8は、実施の形態例に係る基板検査装置での検査手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、従来の回路パターン検査装置における検査信号の給電部と信号検知用センサの配置例を示す図である。
【図10】図10は、従来の回路パターン検査装置における導電パターンの断線の有無に対応したオープン検出センサによる信号電流の検出レベルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施の形態例を詳細に説明する。
図1は、本実施の形態例に係る基板検査装置の全体構成を示すブロック図である。図1に示す基板検査装置の検査対象1は、例えば、液晶表示パネルやタッチ式パネルであり、ここでは、ガラス製の基板3上に配設された櫛歯状導電パターン2の良否(導電パターンの断線状態、および導電パターン相互の短絡状態)を検査する。なお、櫛歯状導電パターン2は、例えば、これらのパネルにおける張り合わせ前の導電パターンであり、その導電性材料として、例えば、クロム、銀、アルミニウム、ITO等が使用されている。
【0016】
図1において、制御部15は、本実施の形態例に係る基板検査装置の全体の制御を行う、例えばマイクロプロセッサであり、検査シーケンスを統括的に制御する。ROM18には、後述する基板検査手順を含む制御手順がコンピュータプログラムとして格納されている。また、RAM17は、制御データ、検査データ等を一時的に格納するための作業領域として使用するメモリである。
【0017】
ユニット5は、非接触方式で櫛歯状導電パターン2に所定周波数の交流信号を供給可能な給電部12と、検査対象の導電パターン2がオープン状態(パターン断線状態)か否か等を非接触方式で検出するセンサ13と、センサ13が検出した微弱な信号を増幅するための増幅器(アンプ)20からなる。また、ユニット5は、非接触方式で検査を行うため、櫛歯状導電パターン2と所定距離離間した位置に位置決めされる。
【0018】
駆動部16は、制御部15からの制御信号を受けて、検査対象1を載置しているステージ14全体を所定方向に所定の速度で移動させることで、ユニット5が、非接触状態で検査対象1の櫛歯状導電パターン2の導電パターン2a〜2e(図2等を参照)を順次走査できるようにしている。そのため駆動部16は、μmオーダーでステージ14を所定方向へ移動する。
【0019】
給電部12には、検査信号の発振器である信号生成部10が接続されており、本実施の形態例では、例えば、200kHzの高周波信号が給電部12に対して出力されている。また、給電部12は、上述したように非接触方式で櫛歯状導電パターン2に交流信号を供給するため平板プレートを備えている。そのため検査信号は、給電部12と導電パターン間の容量結合を介して導電パターンへ供給される。同様に、導電パターンへ供給された検査信号は、導電パターンとセンサ13間の容量結合を介して、導電パターンからセンサ13へ到達する。
【0020】
給電部12とセンサ13は、ユニット5内において互いに近接した状態で配置されており、ユニット5が、検査の対象である導電パターンの一端部に配されながら、例えば、図2において矢印で示す方向へ移動するように、ステージ14の駆動制御が行われる。このようにすることで、基板3上に櫛歯状に配された導電パターン2a〜2eのオープン状態等を個別に検査できる。
【0021】
なお、給電部12の長さは、例えば40mmであり、センサ13の長さは、例えば2mmである。また、これら近接配置された給電部12とセンサ13については、センサ13が給電部12からの検査出力信号の影響を直接受けないように、例えば10mmの間隔が空けられている。
【0022】
増幅器20は、センサ13で検出された微小な信号を所定の増幅度で増幅するため、例えば、演算増幅器(オペアンプ)等で構成されている。本実施の形態例では、ユニット5内においてセンサ13の直後に増幅器20を配することで、検出信号に対する外来ノイズ等の影響を排除している。
【0023】
増幅器20からの出力信号は、信号処理部21へ送られる。この信号処理部21は、増幅後の交流信号を直流レベルの信号に変換する波形処理や、アナログ信号をデジタル信号に変換する等の変換処理を行う。そして、制御部15は、信号処理部21で処理して得られた結果と、予め設定した基準値とを比較し、処理結果が基準値以上か否かを判定する。判定結果は、制御部15から表示部25へ送られる。
【0024】
表示部25は、例えば、CRTや液晶表示器等からなり、制御部15から送られた判定結果である検査対象(導電パターン)の良否を検査員が解る形式で可視表示する。櫛歯状導電パターン2の導電パターン2a〜2eに不良箇所があれば、その導電パターンの基板上での位置も、例えば、パターン番号や座標等で表示する。なお、検査結果の表示は、可視表示に限定されず、音声等の形式で出力してもよい。また、可視表示と音声を混在させてもよい。
【0025】
次に、本実施の形態例に係る基板検査装置における検査原理について説明する。図2は、上述した給電部12とセンサ13を内蔵するユニット5と、検査対象(導電パターン)との位置関係を示す平面図である。図3は、正常な導電パターンにおけるユニットと導電パターンを流れる検査信号の測定結果の一例を示す図である。一方、図4は、導電パターンにオープン箇所がある場合における、ユニットと導電パターンを流れる検査信号の測定結果の一例を示す図である。
【0026】
図2に示すように、基板(図1参照)上には、検査すべき櫛歯状導電パターン2が配されており、その櫛部分に相当する導電パターン2a〜2eは、その一端が開放され、基部がショートバー4で短絡された構成を有する。また、給電部12とセンサ13を内蔵してなるユニット5は、図2に示すように検査時において導電パターン2a〜2eの開放端近傍に配され、矢印方向に移動することで、導電パターン2a〜2eそれぞれのオープン状態の有無を判定する。
【0027】
本実施の形態例に係る基板検査装置では、基板検査の際、ガラス製の基板3の上に櫛歯状導電パターン2が配された検査対象1全体をステージ14に乗せており、そのステージ14は電気的に接地されている。そのため、櫛歯状導電パターン2の各導電パターン2a〜2eには、ガラス3とステージ14を含んでなる容量(キャパシタ)が等価的に接続されていることになり、給電部12からの信号電流は、各導電パターンを介して、これらの容量へ流れ込む。
【0028】
図7は、本実施の形態例に係る基板検査装置における検査信号の流れを模式的に示す回路図である。図7において、抵抗R1,R2はそれぞれ、非接触状態にある給電部−導電パターン間の結合容量、導電パターン−センサ間の結合容量に相当するインピーダンスである。また、R3は、増幅器20の入力インピーダンス、R4は、ステージと接地(アース)間の容量に相当するインピーダンスである。
【0029】
R1,R2は、空気ギャップに相当するため高いインピーダンス値を有し、増幅器の入力抵抗であるR3も高抵抗である。また、R4は、ショートバーを含む導電パターンの接地インピーダンスであるため、そのインピーダンス値は、R1,R2等に比べて非常に小さい。例えば、本基板検査装置における検査信号の周波数に対して、R1,R2が500kΩ、R3は100kΩ、R4は500Ω〜1kΩである。
【0030】
そこで、導電パターンが正常な場合(オープン箇所がない場合)、給電部10から供給された検査交流信号は、上述した抵抗の分割比に従い、R1と導電パターン2を介して、インピーダンスの小さいR4に流れ込む(図7では、その電流をiで示す)。しかし、導電パターンにオープン箇所があれば、検査信号の大部分が、R2を介して増幅器20へ流れる。
【0031】
すなわち、本実施の形態例に係る基板検査装置では、増幅器20に流れ込む電流i’による入力抵抗R3における電圧降下の値を求め、それが基準値以上か否かをもって導電パターンの断線の有無を判定している。
【0032】
検査対象である櫛歯状導電パターン2の導電パターン2a〜2eのいずれにもオープン箇所がない場合、図3(a)に示すように、ユニット5が矢印方向に所定距離だけ移動すると、それぞれの移動位置(位置III, V, VII, IX)の直下にある導電パターンに交流信号が供給され、その電流が図7に示すR4に流れ込む。
【0033】
図3(b)は、いずれの導電パターンにもオープン箇所のない正常な場合におけるセンサ13での信号検出レベルを示している。図3(b)において、横軸はユニット5の移動距離(μm)、縦軸はセンサ13による検出電圧レベル(mVpp)(より具体的には、センサ13で検知し、増幅器20の入力抵抗R3に現れた電圧値である)。
【0034】
ユニット5のセンサ13は、上述したようにセンサ13と導電パターン間の容量結合を介して、それぞれの導電パターンを流れる信号を検出するが、導電パターンが正常な場合、R3に流れ込む電流はほとんどないため、その検出レベルは非常に小さい。しかし、検出電圧のレベルは小さくても、ユニット5が移動して、検査対象の導電パターン上に位置するときレベルが最大となり、ユニット5が導電パターン上にないときは、電圧レベルが低下するという状態が繰り返される。
【0035】
すなわち、図3(a)に示すように、ユニット5が矢印方向へ移動して、導電パターン上に位置するとき(図中の位置I, III, V, VII, IXに対応)は、図3(b)に示すように、センサ13での検出電圧レベルが最大になる。また、ユニット5が、隣接する導電パターンの間に位置する(つまり、その直下に導電パターンがない)ときには、センサ13で検出される電圧レベルが低下する(図中の位置II, IV, VI, VIII, Xに対応している)。
【0036】
一方、検査対象である導電パターンにオープン箇所がある場合、例えば、図4(a)に示すように導電パターン2bにおいて、符号41で示す箇所がオープン状態になっている場合について説明する。この場合、ユニット5が導電パターン2a上に位置するとき(位置I)、給電部12からの交流信号の大部分が、導電パターン2aを介して、インピーダンスの小さいR4(図7参照)に流れ込む。このときのセンサ13での検出電圧レベルは、図4(b)において“位置I”に対応して示すレベルとなる。
【0037】
ところが、ユニット5が、一部にオープン箇所41のある導電パターン2b上に位置したときには(このときのユニット位置は、図4(a)に示すように“位置III”である)、給電部12からの交流信号は、オープン箇所41があるため阻止され、R4に流れ込むことはない。
【0038】
この場合、図6に示すように、給電部12から供給された交流信号iは、その大部分が、給電部12→給電部12−導電パターン2b間の結合容量C1→導電パターン2b→導電パターン2b−センサ13間の結合容量C2の経路を辿ってセンサ13に達することになる。つまり、検査対象の導電パターンにオープン箇所がある場合、給電部12からの交流信号のうち大部分の電流(i’)が、その給電部12に近接して設けたセンサ13を経由して、増幅器20の入力抵抗R3に流れ込む。
【0039】
その結果、センサ13で検出され、増幅器20の抵抗R3に現れた、“位置III”における電圧レベルは、図4(b)に示すように、通常状態(導体パターンにオープン箇所がない正常なとき)に比べて著しく上昇する。例えば、通常状態での検出レベルを1とした場合、本実施の形態例に係る基板検査装置におけるユニット5のセンサ13での検出レベルは、7〜8となる。
【0040】
そして、ユニット5がそのまま所定方向へ移動して、導電パターン2b上から導電パターン2c上に達したとき(位置V)、給電部12からの交流信号は、そのパターン2cが正常であるため、インピーダンスの小さいR4(図7参照)に流れ込む。また、これ以降においてユニット5が走査するいずれの導電パターンにも、図4(a)に示すようにオープン箇所がないので、図3(b)に示す場合と同様、ユニット5の位置に対応して、センサ13における検出電圧レベルの上昇と低下が繰り返される、という検査結果が得られることになる(図4(b)参照)。
【0041】
なお、上述した例では、検査対象である導電パターンの一端が開放され、その基部がショートバーで短絡された構成を有するとして説明したが、導電パターンの構成は、これに限定されるものではなく、例えば、図5に示すように、ショートバーを有しないパターンにおいても、ユニット5によって導電パターン2a〜2eを順次、走査することによって、上記と同じ原理でパターンの良否を判定できる。特にパターン長が長い場合、その等価的な回路は、ショートバーがある場合と同じと考えることができる。
【0042】
また、基板上における検査対象の導電パターンの配設は、基板上に図2に示すパターンのみが配された例に限定されず、同一基板上に縦横とも複数組の検査パターンが配設されたものにも、本発明の検査方法を適用できる。
【0043】
さらに、本実施の形態例に係る基板検査装置では、導電パターンのショート状態についても、上述した導電パターンのオープン状態の判定と同様に検出可能である。例えば、隣接する導電パターンどうしが短絡(ショート)している場合、給電部12からの検査信号の供給開始とともに、給電部と導電パターン間の容量結合を介して、検査対象とする導電パターンおよびそれと短絡している導電パターンの両方にほぼ同時に検出信号が流れ込む。そのため、短絡のない場合と比較して検出信号の強度に差異が生じる。その結果、センサ13が感知する電圧レベルにも変化が生じる。
【0044】
よって、導電パターンがショートしている場合、ショートのない正常時における検査電流以上の電流が、給電部12に近接して配したセンサ13の直下を瞬時に流れることになる。そのため、そのときのセンサ13での電圧検出レベルが上昇する。そこで、正常時の電圧検出値(すなわち、連続信号がどのように変化するか)を予め測定しておき、検査工程でそれと異なる電圧値(信号変化)が得られた場合には、導電パターンがショート状態にあると判定できる。
【0045】
このように導電パターンが、隣接する他のパターンとショート状態にあるときの電圧検出レベルの上昇度合いは、上述したオープン状態の判定時に検知される著しい電圧レベルの上昇とは明らかに異なる、わずかな変化であるため、導電パターンのオープン状態とショート状態の区別は容易である。
【0046】
次に、本実施の形態例に係る基板検査装置における検査手順等について説明する。図8は、本実施の形態例に係る基板検査装置での検査手順を示すフローチャートである。図8のステップS1において、その表面に検査対象である導電パターンが形成されたガラス基板(検査基板)が、不図示の搬送路に従って、基板検査装置の所定位置に搬送されてくる。そして、ステップS2で、検査基板が上述した基板搭載ステージ14により保持され、位置決めされる。
【0047】
この基板搭載ステージ14は、XYZCθ角度の4軸制御により三次元位置制御が可能に構成されており、検査対象基板をセンサ位置より一定距離離反させた測定前の基準となる位置に位置決めする。例えば、ユニット5が、図2に示す導電パターンのうち、最も左側の導電パターン2aの開放端側の中央部にくるように位置決めする。
【0048】
このように検査基板の測定位置への位置決め後、ステップS3において、例えば、制御部15によって信号生成部10を制御して、上述した200kHzの高周波信号(検査信号)が給電部12に供給されるようにする。ステップS5で、信号処理部21において、上述した波形処理や信号変換処理等を行い、続くステップS6において、制御部15は、これらの処理結果をメモリ(RAM17)に格納する。
【0049】
ステップS7において、検査対象とする全ての導電パターンについて処理・検査が終了したかどうかを判定する。この判定は、例えば、検査基板の移動距離が、全ての導電パターン幅の合計と、それらのパターン間隔の合計とを合算して得た距離に合致しているか否かに基づいて行う。そこで、ステップS7での判定の結果、全導電パターンの処理・検査が終了していない場合には、制御部15は、ステップS8において、次に検査すべき導電パターンがユニット5の直下に位置するよう、駆動部16を制御して検査基板を所定距離移動させる(具体的には、隣接する列状導電パターンの中心間の距離だけ、図2の矢印方向にユニット5が相対的に移動するよう制御する)。
【0050】
その後、制御部15は、処理をステップS5に戻し、上述したのと同様の処理を行う。その結果、上述した波形処理等が、検査すべき導電パターンについて連続して実行され、RAM17には、各パターンに対応した処理結果が順次、蓄積されることになる。
【0051】
一方、検査対象とする全ての導電パターンについての検査が終了した場合、つまり、検査基板の移動距離が全導電パターン幅の合計とパターン間隔の合計との合算値に一致した場合(ステップS7でYES)、ステップS9において、RAM17に格納した処理結果を解析して、その解析結果をもとに検査対象の良否を判定する。具体的には、センサ出力信号を処理して得た結果と基準値とを比較し、それが基準値以上であれば、その導電パターンはオープン状態にないと判定する。
【0052】
ステップS10において、各導電パターン位置での検出信号レベルが全て所定範囲内にあると判定されれば、全導電パターンが正常であるとして、ステップS12において、制御部15は、検査対象が良品である旨の表示をするよう表示部25を制御する。
【0053】
このように検査対象が良品の場合、検査基板を搬送位置まで下降させて搬送路上に載置し、次のステージに搬送する。なお、連続した検査を行う場合は、ステップS1に戻って、次に検査する基板を基板検査装置の所定位置に搬送する。
【0054】
しかし、導電パターン位置での検出信号レベルが1箇所でも所定範囲内になければ、その導電パターンは不良であるとして、制御部15は、ステップS13において、表示部25に対して検査対象が不良品である旨の表示をするよう制御する。そして、検査基板を搬送位置まで下降させて搬送路上に載置し、次のステージに搬送するか、あるいは、不良基板を搬送路から外す等の処理を行う。
【0055】
以上説明したように、基板上に列状に配設された導電パターンの良否を非接触で検査する際、検査信号を供給する給電部と、その信号を検知するためのセンサとを近接して配することで、オープン状態のない正常な導電パターン上にセンサがある場合とオープン箇所のある導電パターン上にセンサが位置したときとで、そのセンサによる検査電流の検出レベルに顕著な相違が生じるため、導電パターンのオープン状態の検出精度が格段に向上する。
【0056】
すなわち、導電パターンにオープン箇所がある場合、給電部からの交流信号は、他の導電パターンに流れ込むことがないため、導電パターンとセンサ間の結合容量を介して、その給電部に近接して配されたセンサに殆どの信号が流入する。その結果、センサでの検出電圧レベルが、導体パターンにオープン箇所がない正常なときに比べて著しく上昇するので、オープン状態の判別が容易になる。
【0057】
さらに、導電パターンが、隣接する他の導体パターンと短絡(ショート)しているときにも、センサの電圧検出レベルがわずかに上昇し、その変化の程度は、導電パターンのオープン状態のときに検知される著しい電圧レベルの上昇とは明らかに異なる。そのため、給電部とセンサが内蔵された単一のユニットで、導電パターンのオープン状態とショート状態の両方を判別できるので、従来のようにオープン/ショートを個別に検査する場合に比べて検査効率が向上し、検査時間を大幅に短縮することができる。また、これに伴い、基板検査プログラム(検査ロジック)を簡素化することができる。
【0058】
さらには、給電部とセンサを同一のユニット内に近接して配置しているため、ユニットの小型化が可能となり、基板検査装置そのものの製造コストも低減することができる。また、従来のように給電部とセンサをパターンの一端部と他端部とに分ける構造をとる必要がないため、1種類の検査ユニットで、液晶表示パネルやタッチ式パネル等に配された、あらゆる長さを有するパターンの良否検査に対応できるという利点がある。
【符号の説明】
【0059】
1…検査対象、2…導電パターン、3…基板、4…ショートバー、5…ユニット、10…信号生成部、12…給電部、13…センサ、14…ステージ、15…制御部、16…駆動部、17…RAM、18…ROM、20…増幅器、21…信号処理部、25…表示部、41…オープン箇所。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に延設された導電パターンの断線状態を検査する回路パターン検査装置であって、
前記導電パターン上方に離間し、交流信号からなる検査信号を、容量結合を介して印加する信号供給手段と、
前記導電パターンの延設方向で上方に離間し、且つ前記信号供給手段に近接して1つのユニットとして設けられて、前記導電パターンに印加された前記検査信号を、容量結合を介して検出する信号検出手段と、
前記ユニットを前記導電パターンと交差する方向に前記離間した状態で移動させる移動手段と、
前記信号検出手段で検出された前記検出信号と予め設定した基準値とを比較し、該検出信号が該基準値以上か否かで前記導電パターンの断線を識別する識別手段と、
を備えることを特徴とする回路パターン検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−229467(P2009−229467A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100719(P2009−100719)
【出願日】平成21年4月17日(2009.4.17)
【分割の表示】特願2005−12007(P2005−12007)の分割
【原出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(594157142)オー・エイチ・ティー株式会社 (28)
【Fターム(参考)】