回路基板、および薄膜太陽電池とその製造方法
【課題】 高い自由度で且つ簡便に三次元形状に成形できる回路基板と、該回路基板を用いた薄膜太陽電池および該太陽電池の製造方法を提供する。
【解決手段】 耐熱性熱可塑性樹脂基材の表面に金属層による回路パターンが形成されてなり、三次元形状に成形可能な回路基板であって、少なくとも一部には、平面視で、細分化された金属層の、個々の目が碁盤目状に配列された箇所を有しており、互いに隣接する金属層の目の間には、該金属層を構成する金属による帯状導電ゾーン、または各金属層の目同士を非導電とする非導電ゾーンが存在し、上記帯状導電ゾーンは、互いに隣接する金属層の目同士を電気的に接続するために、上記耐熱性熱可塑性樹脂基材が伸びを伴う変形をした際の伸び代を残した形状の導電パターンを有するものであることを特徴とする回路基板と、該回路基板の金属層の目に対応する位置に光電変換素子を設けてなる薄膜太陽電池である。
【解決手段】 耐熱性熱可塑性樹脂基材の表面に金属層による回路パターンが形成されてなり、三次元形状に成形可能な回路基板であって、少なくとも一部には、平面視で、細分化された金属層の、個々の目が碁盤目状に配列された箇所を有しており、互いに隣接する金属層の目の間には、該金属層を構成する金属による帯状導電ゾーン、または各金属層の目同士を非導電とする非導電ゾーンが存在し、上記帯状導電ゾーンは、互いに隣接する金属層の目同士を電気的に接続するために、上記耐熱性熱可塑性樹脂基材が伸びを伴う変形をした際の伸び代を残した形状の導電パターンを有するものであることを特徴とする回路基板と、該回路基板の金属層の目に対応する位置に光電変換素子を設けてなる薄膜太陽電池である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂基材と金属層を構成要素に含む回路基板、該回路基板を用いた薄膜太陽電池および該薄膜太陽電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平板状のプリント配線板は、硬質タイプのもの、フレキシブルタイプのものなどが、各種の電子部品に利用されている。他方、各種の電子部品の小型化、組み立ての省力化が進められている中で、三次元形状を有する導電回路付き樹脂成形品(樹脂製回路基板)が求められるようになってきた。
【0003】
例えば、最近では、薄膜太陽電池と称される薄形の太陽電池において、設置場所と合わせた形状にしたり、デザイン性を高める目的で、三次元形状に成形加工できることも要求されている。よって、こうした三次元形状を有する薄膜太陽電池などの基板として用い得る樹脂製の回路基板が要望されているのである。
【0004】
こうした要望に対して、例えば、(A)樹脂成形体に無電解めっきにより回路を形成する技術、(B)樹脂成形体の成形と同時に回路を形成する技術、が提案されている。
【0005】
(A)の技術の代表的なものとしては、特許文献1〜3に開示のものが挙げられる。特許文献1の技術は、射出成形体の表面にレジストコートを施し、該レジストコートにレーザーでパターン形成を行った後、無電解めっきを施すことで導体パターンを形成するというものである。
【0006】
特許文献2の技術は、樹脂基板に無電解めっき用の触媒で回路パターンを形成した後に三次元形状に成形し、その後、回路パターン上に導電性の無電解めっき層を鍍着させるというものである。特許文献3の技術は、三次元形状とされた成形体上に、触媒入りのフィルムなどで回路パターンを形成し、この触媒入りフィルム上に無電解めっきを施すというものである。
【0007】
また、(B)の技術の代表的なものとしては、特許文献4、5に開示のものが挙げられる。特許文献4に開示の技術は、予め導電回路を形成した転写シートを用意しておき、樹脂成形体の成形と同時に、該転写シートにより導電回路を成形体に転写することで、導電回路を有する一次成形体とし、この一次成形体に部分的に凹凸を賦形して二次成形体とするものである。特許文献5に開示の技術は、フィルム上に配線パターンを形成した配線シートの上に、三次元構造の樹脂成形体を射出成形して一体化するというものである。
【特許文献1】特開平6−334308号公報
【特許文献2】特開平7−66534号公報
【特許文献3】特開2003−8180号公報
【特許文献4】特開平5−283849号公報
【特許文献5】特開平11−307904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記(A)の技術(特許文献1〜3)によって三次元形状を有する回路基板を得るには、ドライ工程である成形工程後に、ウエット工程である無電解めっき工程、さらには十分な洗浄工程とその後の乾燥工程などといった多くの工程を経る必要があり、製法が複雑で手間がかかるという問題がある。
【0009】
また上記(B)の技術のうち、特許文献4に開示の技術では、微細な回路に精度よく対応することが困難であり、工程が複雑であるという問題もある。さらに特許文献5に開示の技術は、例えば、単なる折れ曲がりが要求される三次元形状加工には対応できるが、球面の如き基板に伸びが要求されるような形状とすると、導電回路の応力緩和が不十分となり、樹脂成形体(回路基板)にシワが発生する。よって、成形可能な形状が非常に限られるといった問題がある。
【0010】
このように、従来の技術は必ずしも満足の行くものではなく、三次元形状への成形が、高い自由度で且つ簡便に達成できる回路基板の登場が嘱望されていた。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い自由度で且つ簡便に三次元形状に成形できる回路基板と、該回路基板を用いた薄膜太陽電池および該太陽電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成し得た本発明の回路基板は、耐熱性熱可塑性樹脂基材の表面に金属層による回路パターンが形成されてなり、三次元形状に成形可能な回路基板であって、少なくとも一部には、平面視で、細分化された金属層の個々の目が碁盤目状に配列された箇所を有しており、互いに隣接する金属層の目の間には、該金属層を構成する金属による帯状導電ゾーン、または各金属層の目同士を非導電とする非導電ゾーンが存在し、上記帯状導電ゾーンは、互いに隣接する金属層の目同士を電気的に接続するために、上記耐熱性熱可塑性樹脂基材が伸びを伴う変形をした際の伸び代を残した形状の導電パターンを有するものであるところに要旨が存在する。
【0013】
なお、本発明に係る「細分化された金属層の個々の目」における「細分化された」状態とは、金属層の目の一つ一つが、平面視で完全に独立した状態のみを指す訳ではなく、隣接する金属層の目同士が上記帯状導電ゾーンで連結されている部分を有している状態を含む意味である。
【0014】
上記の「耐熱性熱可塑性樹脂基材が伸びを伴う変形をした際の伸び代を残した形状」としては、例えば、平面視で曲折した形状が挙げられる。
【0015】
なお、上記非導電ゾーンには、上記金属層を構成する金属による帯が、不連続に複数存在していることが好ましいが、こうした金属が存在せず、上記耐熱性熱可塑性樹脂基板の露出面のみで構成されていてもよい。
【0016】
上記耐熱性熱可塑性樹脂基材を構成する樹脂としては、液晶ポリマーが好ましい。
【0017】
本発明の回路基板には、上記各構成を有する平板状のものの他、該平板状の回路基板が成形され、三次元形状が付されたものも含まれる。
【0018】
また、本発明の薄膜太陽電池は、上記本発明の回路基板(平板状の回路基板)における金属層表面または金属層形成面の反対面に光電変換素子が形成されており、且つ細分化された金属層に対応して上記光電変換素子が分離形成されているところに特徴を有している。
【0019】
本発明の薄膜太陽電池には、三次元形状が付される前の平面状のものと、三次元形状を付されたもののいずれもが包含される。
【0020】
更に本発明の薄膜太陽電池の製造方法は、上記本発明の回路基板(平板状の回路基板)の金属層表面または金属層形成面の反対面に光電変換素子を形成するに際し、細分化された金属層に対応して上記光電変換素子を分離形成することを特徴とする。また、光電変換素子形成後に、真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法により、光電変換素子形成面の反対面を金型に密着させて三次元形状とする製造方法も、本発明法の一態様である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の回路基板は、上記構成の採用により、成形時の回路の断線を抑制できるため、高い自由度で且つ簡便に三次元形状成形が可能である。よって、三次元形状が付された後の回路基板は、例えば携帯電話などの、優れたデザイン曲面や高度な省スペース化が求められる装置内部に適用される立体曲面電子回路として好適に用い得る。更に、本発明の回路基板では、細分化された金属層が耐熱性熱可塑性樹脂基材を補強するため、可撓性を保持しつつ、良好な機械的強度が確保できる。
【0022】
また、上記本発明の回路基板を有してなる本発明の薄膜太陽電池は、三次元形状に成形しても、光電変換素子の破壊が防止できるため、薄膜太陽電池が設置される場所に合わせた形状とすることができる。例えば、自動車の車体(自動車を構成する素材のうち、ガラスなどの透明素材の内側も含む)に設置する場合、本発明の薄膜太陽電池では、自動車の上部形状に合わせた形とすることが可能であることから、従来の平面形状のみの太陽電池に比べて設置可能面積が増大するため、発電量をより高めることができる。また、優れたデザイン性が要求される用途にも対応が容易である。
【0023】
更に、本発明の薄膜太陽電池の製造方法では、良好な可撓性と機械的強度を有する本発明の回路基板を使用することから、基板自体の機械的強度が優れていると共に、光電変換素子形成に、後述のロール・ツー・ロール方式を採用しても、該回路基板に十分な張力をかけることができる。よって、光電変換素子形成時におけるシリコン膜(特に結晶性のシリコン膜)の生成に伴う応力に起因する反りの発生を抑えつつ、三次元形状に成形可能な本発明の薄膜太陽電池を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の回路基板では、伸びを伴う自由な三次元形状成形を可能とすべく、耐熱性熱可塑性樹脂基材で構成することとした点、および回路パターンを形成するために該基材表面に設ける金属層に、平面視で特定の形状を付した点に、最大の特徴を有している。
【0025】
図1は、本発明の回路基板(一部)の一例を示す平面図であり、10が回路基板、11が細分化された金属層の目である。図1では詳細を省略しているが、金属層の個々の目の間の部分12の少なくとも一部には、隣接する金属層の目同士を電気的に接続するために、上記耐熱性熱可塑性樹脂基材が伸びを伴う変形をした際の伸び代を残した形状の導電パターンを有する帯状導電ゾーンが設けられている。そして、金属層の個々の目の間の部分12のうち、上記帯状導電ゾーンが設けられていない箇所は、非導電ゾーンとなる。
【0026】
図2は、図1の一部を拡大したものである。図2中、図1と同じ部分には、同じ符号を付して重複説明を避ける(以下の図においても、同じ)。図2の(a)は成形前の状態を表しており、(b)は、回路基板に三次元形状が付された成形後の状態を表している。図2中、13は帯状導電ゾーン、14は非導電ゾーン、15は耐熱性熱可塑性樹脂基材(露出部)である。
【0027】
本発明の回路基板10では、耐熱性熱可塑性樹脂基材を用いている。これにより、加熱成形を可能とした。ちなみに、樹脂製のフレキシブル基板としてはポリイミド基板が知られているが、これは熱硬化性ポリイミドの硬化体から構成されるものであるため、安定した三次元形状形成が実質的に不可能であり、平板状の基板として用いられるのみである。これに対し、本発明の回路基板に用いる樹脂基材は、熱可塑性樹脂により構成されるものであるため、加熱することで良好に成形することができる。
【0028】
また、本発明の回路基板10では、平面視で、金属層を、個々の目11が碁盤目状に配列された状態に細分化すると共に、互いに隣接する金属層の目11同士の間には、該金属層を構成する金属による帯状導電ゾーン13、または各金属層の目11同士を非導電とする非導電ゾーン14を設けた。金属層の目11は、主に耐熱性熱可塑性樹脂基材15を補強する役割と、回路の一部を構成する役割を担うものである。また、回路基板に搭載される電子機器(太陽電池や発光素子、その他の半導体など)の電極部として利用することもできる。
【0029】
なお、金属層の目11は、必要に応じて更に2以上の部分に分割され、夫々の部分の間に耐熱性熱可塑性樹脂基材の露出部を有していてもよい。例えば、後記の実施例で示すように、金属層の目を2つの部分に分割し、一方を光電変換素子形成部とし、他方を光電変換素子の端子を接続する部分に利用することができる。
【0030】
帯状導電ゾーン13は、金属層の目11同士を電気的に接続するためのものであり、この帯状導電ゾーン13の配置の選択によって、回路パターン(導電回路)を作成する。例えば、図2(a)回路基板では、図示している3つの金属層の目11が、互いに帯状導電ゾーン13で接続されており、これらが導電回路を形成している。
【0031】
平面状の回路基板10が三次元形状に成形される際には、金属層の目11が表面に存在する箇所では、耐熱性熱可塑性樹脂基材15は殆ど変形せず、金属層の目同士11の間の、帯状導電ゾーン13部分、非導電ゾーン14部分、および耐熱性熱可塑性樹脂基材15の露出部(耐熱性熱可塑性樹脂基材の両面に金属層が形成されているときは、表裏共が露出している部分)で主に変形が生じる。耐熱性熱可塑性樹脂基材15に比べて、帯状導電ゾーン13を形成している金属は、一般に伸び性が劣る。よって、耐熱性熱可塑性樹脂基材15が伸びを伴う変形をした場合、帯状導電ゾーン13は、この変形(伸び)に追随できずに破断しやすい。
【0032】
そこで、本発明の回路基板では、帯状導電ゾーンに、耐熱性熱可塑性樹脂基材が伸びを伴う変形をした際の伸び代を残した形状を付すこととし、回路基板成形時の帯状導電ゾーンの破断を抑制することとした。上記形状としては、例えば、平面視で曲折した形状が挙げられる。
【0033】
すなわち、回路基板10が成形され、帯状導電ゾーン13部分に伸びが生じると、図2(b)に示すように、帯状帯電ゾーン13の曲折の程度が小さくなり、金属層の目11同士の間における見かけの長さが伸びる。これにより、耐熱性熱可塑性樹脂に比べて伸び性が非常に劣る金属を素材とするにも関わらず、帯状導電ゾーン13の破断は抑制されるため、回路内の導電性が維持できるのである。
【0034】
上記の「平面視で曲折した形状」としては、例えば、所謂うねり形状や波形状、ジグザグ形状などが含まれる(これらの形状は全て平面視での形状である。以下同じ。)。より具体的には、U字状;S字状;V字状;U字状、S字状、V字状などのいずれかが連続している形状;U字状、S字状、V字状などのいずれかの形状と、その反転形状が交互に連続している形状;これらの2以上の形状を含む連続形状;などが挙げられる。なお、連続形状の場合には、各形状(U字状、S字状、V字状など)の大きさや曲折の程度は一定でなくてもよい。また、U字状やS字状などの場合には、曲がり部が直角などの角度を持っていても良く、曲線で曲がっていても構わない。なお、図2に示した回路基板における帯状導電ゾーンは、U字とその反転形状が交互に連続した形状である。曲折の程度、帯状導電ゾーンの実長さなどは、三次元形状への成形の際に、帯状導電ゾーンの破断防止作用が十分に発揮できる限り特に制限はない。
【0035】
また、上記の「曲折した形状」には、金属層の目の配列方向に略平行方向に、帯状導電ゾーンの一端から他端へ向かい且つ他端まで到達しないスリットが設けられてなる形状や、更には、該スリットが2以上設けられる場合には、該スリットの開始端部が交互になるように設けられてなる形状も含まれる(以下、これらを纏めて「スリット形状」という)。
【0036】
上記スリット形状の場合、帯状導電ゾーンに設けられるスリットの本数や、スリット間距離、個々のスリットの長さは、三次元形状への成形の際に、帯状導電ゾーンの破断防止作用が十分に発揮できる限り特に制限はない。スリットの形成位置は、例えば、回路基板が三次元形状に成形される際に、より大きく変形する部分に合致するようにすることが好ましい。また、スリットの長さおよび本数は、例えば、スリット形成により形成される帯状導電ゾーンが、その位置によらず略同等の幅となるように調整することが、電気伝導上の安定化と、三次元形状に成形する際の帯状導電ゾーンの破断防止効果とのバランスをとることができることから、好ましい。
【0037】
図3に、帯状導電ゾーンが上記スリット形状を有する場合の一例を示す。図3(a)が成形前、図3(b)が成形後の状態を示している。図3中、16がスリットである。成形の際に帯状導電ゾーン13において、スリット16の間隔が広がり、金属層の目11同士の間における見かけの長さが伸びる。これにより、帯状帯電ゾーン13の破断が抑制される。
【0038】
なお、金属層の目同士の間において、該目同士を電気的に接続する必要がない箇所(すなわち、非導電ゾーン)では、耐熱性熱可塑性樹脂基材が露出するのみであってもよいが、図2および図3に示すように、金属層を構成する金属による帯17が、不連続に複数存在することが好ましい。より好ましくは、非導電ゾーンに存在する上記帯が、不連続であり且つ帯状導電ゾーンにおける導電パターンと同様に配されている態様である(図3)。
【0039】
上記の通り、回路基板の成形の際には、主に、帯状導電ゾーン、非導電ゾーンおよび耐熱性熱可塑性樹脂基材の露出部で変形が生じる。ここで、金属層の目同士の間のうち、非導電ゾーンにおいて耐熱性熱可塑性樹脂基材が露出しているだけの場合には、帯状導電ゾーンが設けられた箇所に比べて非導電ゾーンが弱く、成形時の変形が大きくなり易い。
【0040】
これに対し、非導電ゾーンにおいて、金属層を構成する金属による帯が不連続に複数存在する場合、さらには該帯が、帯状導電ゾーンにおける導電パターンと同様に配されている場合には、帯状導電ゾーンと非導電ゾーンの強度をほぼ同等にできる。よって、巨視的に見ると回路基板の三次元形状に成形される箇所に均一に成形圧力がかかるようになるため、より均一性の高い成形が可能となる。
【0041】
細分化された金属層の個々の目は、その形状に特に制限はなく、正方形の他、長方形などの四角形や任意の他の形状であってもよい。なお、細分化された金属層の個々の目は、三次元形状への成形が予定される箇所では、全てが同じ形状であることが好ましいが、異なる形状のものを組み合わせることも可能である。より好ましい金属層の個々の目の形状は四角形である。細分化された金属層の目の形状が四角形の場合には、図1に示すように、金属層の目以外の箇所(図1中12)が直線の条となるため、三次元形状成形性がより向上する。また、電子機器を搭載して配線する際の容易さなどを考慮すれば、正方形とすることが好ましい。なお、例えば、四角形(正方形や長方形など)の四隅の一部または全部を切って八角形などの多角形など(角の部分が曲線であってもよい)としたものも、実質的には四角形と同様の取り扱いができるため、好ましい。また、細分化された金属層の目を、伸び代のある帯状導電ゾーンで導電接合した状態で、面状に限らず線状とすることも可能である。
【0042】
細分化後の金属層の個々の目のサイズは、特に制限はなく、回路基板に要求される三次元形状の大きさや曲げる部分の曲率により、適宜変更すればよい。例えば、金属層の個々の目の平面視による面積が、回路基板における三次元形状への成形が予定される箇所の、平面視による総面積に対して、0.1%以上であって、25%以下、より好ましくは13%以下であることが望ましい。回路基板の総面積に対して、金属層の個々の目の面積が小さすぎると、三次元形状に加工するには小さすぎて効率が悪くなることがある。他方、回路基板の総面積に対して、金属層の個々の目の面積が大きすぎると、例えば曲面を得るための単位としては大きすぎて、使用し難くなることがある。
【0043】
以下、本発明の回路基板の構成要素および三次元形状への成形方法、並びに本発明の回路基板の用途について説明する。
【0044】
<耐熱性熱可塑性樹脂基材>
耐熱性熱可塑性樹脂基材を構成する樹脂は、耐熱性の熱可塑性樹脂であり、例えば、熱変形可能な温度が130℃以上のものであることが好ましい。回路基板に電子機器を搭載する際には、種々の工程において基板に熱がかかるため、これに耐え得る程度の耐熱性が要求されるのである。なお、樹脂が熱変形可能な温度は、融点を有する樹脂では、融点または熱変形温度(HDT)で、融点を有しない樹脂であればガラス転移温度(Tg)で判断すればよい。融点やTgは、例えばJIS K 7121の規定に準じて測定できる。また、HDTは、ASTM D648(荷重:18.6kg/cm2)の規定に従って測定できる。
【0045】
耐熱性熱可塑性樹脂基材の素材に好適な樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(融点:267℃)、ポリブチレンテレフタレート(融点:225℃)、ポリエチレンナフタレート(融点:270℃)、ポリアリレート(Tg:175℃)、サーモトロピック液晶ポリエステル(例えば、HDTが330℃のI型、HDTが220℃のII型、HDTが135℃のIII型)、その他の芳香族ポリエステル(例えば、Tgが140℃のもの)などのポリエステル系樹脂;ナイロン6(融点:228℃)、ナイロン66(融点:246℃)などのポリアミド系樹脂;液晶ポリエステルアミド(HDT:240℃);環状ポリオレフィンコポリマー(例えば、Tgが145℃のもの)、ポリメチルペンテン(融点:240℃)などのポリオレフィン系樹脂;ポリエーテルスルホン(Tg:230℃)、ポリエーテルケトン(融点:334℃)、ポリエーテルエーテルケトン(融点:334℃)などのポリエーテル系樹脂;ポリサルホン(Tg:140℃);ポリカーボネート(Tg:150℃);ポリフェニレンスルフィド(融点:285℃);熱可塑性ポリイミド(例えば、融点が338℃のもの);などが挙げられる。これらの樹脂は1種単独で用いられる他、本発明の効果を損なわない限り、2種以上の樹脂を組み合わせて使用することもできる。これらの中でも、上記のサーモトロピック液晶ポリエステルや液晶ポリエステルアミド(サーモトロピック液晶ポリエステルアミド)などの液晶ポリマー(サーモトロピック液晶ポリマー)が好適である。
【0046】
なお、上記のサーモトロピック液晶ポリマー(以下、単に「液晶ポリマー」という)とは、例えば、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールや芳香族ヒドロキシカルボン酸などのモノマーを主体として合成される芳香族ポリエステルや液晶ポリエステルアミドであって、溶融時に液晶性を示すものである。
【0047】
その代表的なものとしては、パラヒドロキシ安息香酸(PHB)と、テレフタル酸と、4,4’−ビフェノールから合成されるI型[下式(1)]、PHBと2,6−ヒドロキシナフトエ酸から合成されるII型[下式(2)]、PHBと、テレフタル酸と、エチレングリコールから合成されるIII型[下式(3)]が挙げられる。
【0048】
【化1】
【0049】
液晶ポリマーとしては、I型〜III型のいずれのものでもよいが、耐熱性、寸法安定性、水蒸気バリア性の面からは全芳香族液晶ポリエステル(I型およびII型)や全芳香族液晶ポリエステルアミドが好ましい。
【0050】
耐熱性熱可塑性樹脂基材の形態としては、所謂フィルムであればよい。なお、本明細書でいう「フィルム」とは、シート、板、箔(特に金属層の構成素材について)を含む概念である。
【0051】
こうした耐熱性熱可塑性樹脂基材を得るに当たっては、これを構成する樹脂に応じた公知の各種方法を採用すればよい。また、本発明法において特に好適な上記例示の液晶ポリマーを用いたフィルムとしては、例えば、ジャパンゴアテックス株式会社製の「BIAC―BA(商品名)」などの市販品を用いることができる。
【0052】
耐熱性熱可塑性樹脂基材の厚みは、回路基板の用途や素材(樹脂)に応じて適宜選択すればよいが、例えば、5μm以上、より好ましくは50μm以上であって、300μm以下、より好ましくは150μm以下とすることが望ましい。厚みが薄すぎると、三次元成形時に基材に破れやシワが生じやすくなる。他方、厚みが厚すぎると、素材が無駄になるばかりでなく、三次元形状とするための成形性が低下する。
【0053】
<金属層>
金属層を構成する金属としては、特に制限はなく、銅、アルミニウム、スズ、銀、金、白金、亜鉛、鉄や、これらの金属を含む合金[ステンレス鋼(SUS)、42アロイ、銅合金など]などが挙げられる。
【0054】
金属層は単層構造でもよく、異なる2種以上の金属を組み合わせた積層構造であってもよい。積層の方法も特に制限はなく、例えば、耐熱性熱可塑性樹脂基材と金属板を貼り合わせた後、該金属板表面に真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法、CVD法などで、金属板の構成金属とは異なる種類から構成される金属層を設ける方法などが採用できる。
【0055】
また、金属層は、耐熱性熱可塑性樹脂基材の片面にのみ設けられていてもよく、耐熱性熱可塑性樹脂基材の両面に設けられていても構わない。
【0056】
回路を形成するための金属層の厚みは、例えば、0.5μm以上、より好ましくは5μm以上であって、1000μm以下、より好ましくは50μm以下とすることが望ましい。金属層が薄すぎると、回路としての信頼性に欠ける他、回路基板を三次元形状に成形する際に、わずかな張力が掛かっただけで破断してしまうことがある。他方、金属層が厚すぎると、エッチングなどによる回路パターンの形成が困難になる他、三次元形状とする際の成形性が損なわれる傾向にある。
【0057】
この金属層の一部を除去して、金属層を細分化すると共に、金属層の目の間に、帯状導電ゾーンまたは非導電ゾーンを形成する(すなわち、回路パターンを形成する)。その方法としては、公知のエッチング法が好適である。エッチング法としては、例えば、公知のフォトレジスト法により金属層の除去する部分が露出するようにパターンを形成したレジスト膜を金属層表面に設け、金属層を溶解可能な液(例えば、銅系の合金層であれば、塩化第二鉄水溶液など)などを用いて金属層の該露出部を溶解除去した後に、該レジスト膜を除去する方法が挙げられる。エッチングに用いるレジスト樹脂や、金属層の溶解液、レジスト膜の除去液、レジスト膜の形成条件や金属層の溶解条件などは特に制限は無く、金属層の素材や形成する回路パターンに応じて適宜選択することができる。
【0058】
細分化された金属層の目、帯状導電ゾーンおよび非導電ゾーンから形成される回路パターンは、回路基板の全体に形成されていてもよく、必要とされる一部(すなわち、成形により変形を受ける箇所)にのみ形成されていてもよい。すなわち、回路基板が三次元形状に成形される際に、変形を受けない箇所については、耐熱性熱可塑性樹脂基材部分の伸びが発生しないため、金属層が細分化されることなく設けられていても、回路基板の成形性が損なわれることがないことから、当該箇所では、金属層を細分化しなくてもよい。
【0059】
例えば、本発明の回路基板(平板状)を長尺のものとし、所謂ロール・ツー・ロール方式により、連続的に電子機器などを搭載し、その後裁断・三次元形状成形を行う製法が採用される場合などでは、回路基板の長手方向に平行な両端部において、金属層を細分化せずに残すことが望ましい。この場合、耐熱性熱可塑性樹脂基材の両面に金属層を設けている場合には、回路基板の長手方向に平行な両端部を細分化せずに残す金属層の部分を、片面の金属層のみとしてもよく、両面の金属層としても構わない。このような構成とすることにより、ロール・ツー・ロール法による連続製造時に基板に負荷される張力に耐えるに十分なレベルの機械的強度を容易に確保できる。また、この場合、金属層を残した両端部に、連続生産時の送り用スプロケットを設けると、良好な強度が確保できることから有利である。
【0060】
<三次元形状への成形方法>
平板状の回路基板を、三次元形状に成形する方法は特に限定されず、例えば、金型を用いた通常の成形法(プレス成形法など)や、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法などが採用できる。
【0061】
中でも真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法は、回路パターン形成面には金型を密着させることなく三次元形状に成形することが可能であるため、例えば薄膜太陽電池の場合、形成した光電変換素子のキズ付き、割れなどを防止できる点で推奨される。また、成形時にキズ付き、割れなどを起こし難いものについては、通常の金型成形法(プレス成形法など)を採用することが可能である。
【0062】
なお、本発明の回路基板は、比較的高い自由度で三次元形状に成形できるが、金属層が細分化されているとはいっても、例えば曲率の非常に小さいものには対応し難くなる。変形の程度(例えば曲率の程度)に応じて、細分化後の金属層の個々の目のサイズを上記範囲内で調整して、ある程度の対応を図ることは可能であるが、本発明の回路基板は、例えば、図7に示すような比較的大きな曲率を有する三次元形状に成形する用途に特に好適である。
【0063】
成形に用いる金型の形状や材質については特に制限はなく、回路基板に要求される形状で公知の素材からなる金型を用いればよい。成形条件については、回路基板の特性が損なわれない限り特に制限はない。例えば、耐熱性熱可塑性樹脂基材が、液晶ポリマーフィルムであるジャパンゴアテックス社製の「BIAC−BA(商品名)」で構成される場合、温度は290〜340℃とし、通常の金型成形法の場合には、圧力を6MPa以下で、時間を20分以下、真空成形法の場合には、圧力を1300Pa以下で、時間を3分以下、真空圧空成形法の場合には、真空系は圧力を1300Pa以下、加圧系は圧力をゲージ圧で10kPa〜1MPa、時間を5分以下とするなどの条件が採用できる。
【0064】
上記の成形により、三次元形状を有する本発明の回路基板が得られるが、例えば、平板状の本発明の回路基板に予め電子機器を搭載し、その後三次元形状に成形することも可能である。この場合、上記の真空成形法や圧空成形法、真空圧空成形法を採用することが好ましい。これらの成形法であれば、電子機器搭載面には金型を密着させずに三次元形状とできるため、成形時の電子機器などの破損を防止できるからである。この場合の成形条件は、例えば、上記の回路基板成形条件の範囲内から適宜選択することができる。
【0065】
<本発明の回路基板の用途>
本発明の回路基板は、比較的自由度の高い三次元形状成形を可能としているため、例えば携帯電話などの、優れたデザイン曲面や高度な省スペース化が求められる装置内部に適用される立体曲面電子回路として好適に用い得る。
【0066】
搭載される電子機器は特に制限されない。例えば、発光体とするための発光素子(発光ダイオード)、太陽電池とするための光電変換素子、その他記憶装置などとするための半導体素子などが挙げられる。これらの電子機器は、金属層側の面に、好ましくは細分化された金属層の目に対応する位置に搭載する。搭載する方法は特に限定されず、公知の各種方法から、搭載する電子機器に応じて適宜選択すればよい。例えば、発光素子その他の半導体素子であれば、銀ペーストなどを用いたダイボンディングが採用できる。薄膜太陽電池の場合、光電変換素子を形成する各層(電極層やシリコン膜層など)をCVD法などにより直接形成してもよい。
【0067】
<本発明の薄膜太陽電池とその製造方法>
本発明の薄膜太陽電池は、上記本発明の回路基板を太陽電池用基板として用い、これに二層の電極層(下部電極層および透明電極層)、および半導体材料層(微結晶シリコン層、アモルファスシリコン層、またはその他の化合物半導体層)で構成される光電変換素子を形成してなるものである。太陽電池用基板として試用される本発明の回路基板は、以下の(1)から(3)の作用を有する。
【0068】
(1)金属層が細分化されることで、金属層形成面側には、熱可塑性樹脂が露出した部分が形成されるが、太陽電池の三次元形状成形の際に、該露出部は変形が容易となるために、成形性が向上する。
【0069】
(2)太陽電池用基板上(金属層形成面または金属層形成面の反対面)に、細分化された金属層の個々の目のサイズに合わせて光電変換素子を形成すれば、該光電変換素子も細分化された状態になる。すなわち、上記の熱可塑性樹脂の露出部には、光電変換素子を形成しないか、または、光電変換素子の形成後、細分化された金属層以外の箇所に形成されている光電変換素子の部分をレーザーなどにより切断しておく。よって、太陽電池の三次元形状成形の際に、熱可塑性樹脂の露出部が変形しても、光電変換素子への変形応力の伝達は大きく低減される。そのため、三次元形状に成形した際の光電変換素子の破壊が高度に抑制される。
【0070】
(3)金属層により耐熱性熱可塑性樹脂フィルムを補強し得るため、光電変換素子を直接形成しても、シリコン膜層の内部応力による基板の変形などを抑制できる。また、所謂ロール・ツー・ロール法による光電変換素子を構成する各層の連続形成も可能となる。
【0071】
上記の作用によって、基板に光電変換素子を形成した後に成形を施して得られる三次元形状を有する薄膜太陽電池を、生産性良く提供することが可能となる。
【0072】
なお、本発明の薄膜太陽電池は、本発明の回路基板を用いることによって、三次元形状への成形を容易としているが、他方、次のような応用展開も可能である。上記の通り、薄膜太陽電池の製造に当たり、シリコン膜層(微結晶シリコン膜層)を基板上に形成する際には、該層の内部応力によって基板は反りやすい。こうしたシリコン膜層の内部応力によるマクロ的な基板の反り(すなわち、三次元的な変形)を、本発明の回路基板(すなわち、細分化された金属層の目を有する基板)を使用することにより、マクロに平滑化(二次元化)することも可能である。
【0073】
図4〜図6に、薄膜太陽電池の例を示す。図4は、回路基板の金属層表面に光電変換素子を形成してなる薄膜太陽電池(一部)の例を示している。また、図5は、回路基板の金属層形成面の反対面に光電変換素子を形成してなる薄膜太陽電池(一部)の例を示している。更に図6は、両表面に金属層を有する回路基板の、片面の金属層表面に光電変換素子を形成してなる薄膜太陽電池(一部)の例を示している。図4、図5および図6中、20a、20bおよび20cが薄膜太陽電池、21が光電変換素子である。なお、これらの図面では、各光電変換素子間の導電接合部分は省略している。
【0074】
光電変換素子21は、基板側から、下部電極層、シリコン膜層、透明電極層の順に各層が形成されてなる構造を有している(図示しない)。
【0075】
下部電極層は、導電体であり、且つ光線反射率が高いものであれば特に限定されるものではない。例えば、銀、アルミニウム、銅、金、プラチナ、ニッケル、錫、鉄などの純金属類、ステンレスやアルミ合金などの合金類、ITO(インジウム−スズ複合酸化物)や酸化アルミ、酸化錫などの金属酸化物類などの従来公知の素材を用いて、従来公知の方法(加熱加圧融着法、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、電気めっき法、無電解めっき法、またはこれらの手法の組み合わせなど)によって形成することができる。また、下部電極層の表面に形成されるシリコン膜層への、下部電極金属の拡散を防止するため、ZnO、SnO2などの金属酸化物層を、例えばスパッタリング法や真空蒸着法などによって形成してもよい。なお、薄膜太陽電池が図4や図6に示す構成の場合には、金属層の目11を下部電極層、または下部電極層の構成材料の一部として利用することもできる。
【0076】
シリコン膜層は、アモルファスシリコン膜層または微結晶シリコン膜層からなるシングル型構造、あるいは異なる2種類以上の層が積層されたタンデム型構造のいずれであってもよい。タンデム型構造の場合は、2層のみならず、3層以上に積層することも可能である。ただし、シリコン膜層の厚さは、全体の厚さで0.2〜20μmとすることが好ましい。
【0077】
上記アモルファスシリコン膜層や上記微結晶シリコン膜層中の構造は特に限定されず、例えば、薄膜太陽電池で通常採用されているnip構造(リン、窒素などの不純物がドープされたn型シリコン膜層−不純物を含まないi型シリコン膜層−ホウ素などの第III族元素がドープされたp型シリコン膜層の積層構造)を採用すればよい。シリコン膜層の形成方法も特に限定されず、従来公知の方法(例えば、容量結合型プラズマCVD法や、誘導結合型プラズマCVD法などのCVD法)によって形成することが可能であり、例えば、特開2001−274434号公報などに開示されている従来公知の各種方法を採用することができる。
【0078】
透明電極層は、例えば、酸化スズ、ITO、FTO(フッ素をドープした酸化スズ)、酸化亜鉛などの公知の金属酸化物を、公知の方法(真空蒸着法やスパッタリング法、CVD法など)によって形成することができる。
【0079】
なお、透明電極層の上部には、発生した電力を損失なく取り出すため、取り出し電極(図示しない)を設ける。取り出し電極には、銀、金、白金、銅、アルミニウムなどの金属を用いることができ、従来公知の形成法(スパッタリング法、真空蒸着法、印刷法、エッチング法、めっき法またはこれらの組み合わせなど)で形成可能である。また、取り出し電極の形状は特に限定されないが、櫛状とするのが一般的である。
【0080】
この他、透明電極層の上には、光を効率よく取り込むために、公知の反射防止層などを設けることも可能である。
【0081】
以上のようにして基板上に光電変換素子を形成するが、この光電変換素子は、基板の金属層側表面、金属層形成面の反対面のいずれに形成されるかによらず、細分化された金属層に対応した位置に分離形成し、耐熱性熱可塑性樹脂基材が表裏共に露出した部分には、光電変換素子が存在しないようにすることが好ましい。
【0082】
光電変換素子が、細分化されている金属層の個々の目よりも大き過ぎると、薄膜太陽電池の三次元形状に成形する際に、金属層の目に対応する部分からはみ出した光電変換素子部分が破壊され易くなる。他方、光電変換素子が、細分化されている金属層の個々の目よりも小さ過ぎると、基板上の光電変換素子が形成されている部分が少なくなるため、薄膜太陽電池の単位面積当たりの発電効率が低下してしまう。
【0083】
なお、太陽電池用基板として用いる回路基板では、光電変換素子の形成予定部表面(金属層の目表面または耐熱性熱可塑性樹脂基材表面)がテクスチャ構造(凹凸構造)を有していることが好ましい。表面にテクスチャ構造を有する耐熱性熱可塑性樹脂基板を有する回路基板を用いることで、微結晶シリコン膜層を有する薄膜太陽電池のエネルギー変換効率を相当程度高くすることができる。
【0084】
例えば、基板上に下部電極層、シリコン膜層、透明電極層の順に各層を積層した構成の太陽電池では、透明電極層側からシリコン膜層に入射した光が光電変換に寄与するが、特に間接遷移を示す結晶系シリコン膜(微結晶シリコン膜)では、光の吸収係数が小さいため、十分に太陽光を吸収するには、ある程度の膜厚(層厚)が必要となる。しかし、薄膜太陽電池では、通常、シリコン膜層の厚みが数μm〜数十μmと非常に薄いため、入射光の光路長が短く、効率よく光電変換することが困難である。
【0085】
これに対し、回路基板の光電変換素子形成予定面の表面にテクスチャ構造を持たせることで、その表面に形成した下部電極層表面もテクスチャ構造を有するようになるため、シリコン膜層で吸収されなかった光が、下部電極層表面で多重反射して、シリコン膜層中での光路が長くなり、効率よくシリコン膜層に吸収されて光電変換に寄与するようになる(所謂「光閉じ込め効果」)。これにより、薄膜太陽電池のエネルギー変換効率を高めることができる。
【0086】
なお、本発明の薄膜太陽電池では、回路基板の細分化された金属層の目と上記の帯状導電ゾーンを含む導電回路によって電気の取り出しを行うため、例えば、図5に示すように、回路基板の金属層形成面の反対面に光電変換素子を形成してなる薄膜太陽電池の場合には、回路基板の両表面に存在する金属層と光電変換素子とを導通接合する必要がある。
【0087】
回路基板の両表面に存在する金属層と光電変換素子とを導通接合する方法としては特に制限はなく、従来公知の各種方法が採用できる。例えば特開平6−216523号公報などに開示されているように、回路基板の耐熱性熱可塑性樹脂基材に50〜500μm程度の直径の穴を開け、穴内壁を金属メッキして導通を取る方法(スルーホールメッキ法);特開2004−221345号公報や特開平6−216523号公報などに開示されているように、回路基板の耐熱性熱可塑性樹脂基材に100μm〜数mmの直径の穴を開け、そこに導電ペーストを埋め込む方法;回路基板の耐熱性熱可塑性樹脂基材に1mm程度かそれ以上の穴を開け、穴内壁をハンダディップし埋め込む方法や、この際、ハンダと穴の上下からハトメのように金具でかしめ、ハンダ接合する方法;金属のスパッタリング法;などが挙げられる。
【0088】
これらの手法によって、図5に示す薄膜太陽電池のように、光電変換素子が回路基板の金属層形成面と反対側の面に形成されている場合でも、光電変換素子により得られた電子を裏面側の金属層形成面の回路に流すことができる。そして、耐熱性熱可塑性樹脂基材が伸びを伴う変形をした際の伸び代を残した形状の導電パターンを有する上記帯状導電ゾーンに導電回路の一部を構成させることにより、例えば、図4や図6に示す薄膜太陽電池と同様に、薄膜太陽電池を三次元形状に成形した際にかかる力を緩和して、導電回路の破壊を防止することができる。
【0089】
上記のようにして得られる平面状の薄膜太陽電池は、例えば、図7に示すような三次元形状に成形可能である。その成形法としては、真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法が挙げられる。真空成形法や圧空成形法、真空圧空成形法は、真空または空気圧を利用して、基板の片面のみを金型に密着させて成形する技術である。よって、金型が密着する面を光電変換素子形成面の反対面のみとすることができ、光電変換素子部分の傷付きや破壊を防止しつつ薄膜太陽電池を成形することが可能である。
【0090】
金型の形状や材質については特に制限はなく、薄膜太陽電池に要求される形状で公知の素材からなる金型を用いればよい。成形条件については、薄膜太陽電池の特性が損なわれない限り特に制限はない。例えば、耐熱性熱可塑性樹脂基材が、液晶ポリマーフィルムであるジャパンゴアテックス社製の「BIAC−BA(商品名)」で構成される場合には、回路基板の三次元形状の成形について上述した成形条件と同じ条件が採用できる。
【0091】
なお、例えば、三次元形状に成形した後の薄膜太陽電池には、その表面を、透明樹脂を含む塗料でコーティングしたり、薄膜太陽電池と同形状に成形した透明フィルムを被せたり、透明フィルムを、必要に応じて変形させつつ薄膜太陽電池の表面形状に沿わせて張り合わせるなどして、絶縁皮膜を形成することもできる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0093】
実験1
12.5cm×12.5cmのサーモトロピック液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス社製「BIAC−BA(商品名)」、厚み:100μm)の両面に、金属層とするための電解銅箔(古河サーキットフォイル社製「GTS−18」、厚み:18μm)を、320℃、4MPaの条件で5分間加圧し、100℃まで冷却し、取り出すという工程により貼り付けた。
【0094】
次に、この金属層の細分化を行った。細分化は、個々の目が平面視で9mm×9mmで、金属層の目同士の間隔を1mmとし、更に、両表面の金属層において、細分化された金属層の目の位置が互いに一致するようにした。そして、一方の面(以下、「表側の面」という)の金属層は、図8に示すように正方形の一部を切り離した形状とし、その離れた部分11a(以下、「接続端子部」という)と、隣接する細分化された金属層の目とが、伸び代を残した帯状導電ゾーン13で接続するように金属層を残した。そして、接続端子部11aと、隣接する細分化された金属層の目11との間で導電接合する必要がない箇所については、非導電ゾーンとすべく、図8に示すように、金属の帯17が不連続に残るようにした。また、他方の面(以下「裏側の面」という)は、図9に示すように、単に正方形の細分化された金属層の目11のみが残るようにした。
【0095】
なお、金属層の細分化は、以下の方法で行った。金属層表面に厚み:50μmの塩基性水溶液現像型ドライフィルムレジスト(日立化成社製「HF450」)を、加熱したロールラミネーター(ロール表面温度:105℃)を用いて、速度:0.5m/分、線圧:0.2〜0.4MPaの条件でラミネートし、室温で15分放置した。その後、所定のマスクをレジスト塗布面に重ね、真空密着露光機を用いて、100mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。さらに室温で15分放置し、その後Na2CO3の1%水溶液を用い、温度:30℃、スプレー圧:0.2MPa、時間:60秒の条件でドライフィルムレジストを現像し、レジストパターンを形成した。
【0096】
レジストパターン形成後の樹脂フィルムの金属層を、塩化第二鉄水溶液(塩化第二鉄:500gを、HClの3%水溶液:1Lに溶解させたもの)を用いてエッチングした。その後、NaOHの3%水溶液を用い、温度:50℃、スプレー圧:0.1MPaの条件でドライフィルムレジストを剥離し、平板状の回路基板No.1(太陽電池用基板)を得た。
【0097】
次に、得られた回路基板の表裏面の金属層を無電解銀メッキにより銀で完全に覆った。その後、この表側の面の銀表面に、スパッタリングによって、200℃で500Åの厚みで酸化亜鉛膜を形成した。この回路基板の表側の面の銀・酸化亜鉛コートを下部電極層として、以下の工程により微結晶シリコンによる光電変換層を形成した。
【0098】
下部電極層を形成した回路基板No.1をプラズマCVD装置に入れ、1.33×10−5Paになるまで装置内を減圧し、続いて、基板温度を180℃とし、水素ガスおよび少量のPH3ガスを含むモノシランガス(モル比、SiH4:H2:PH3=1:143:8×10−3)を用いて、酸化亜鉛膜上に厚み0.4μmのn型シリコン膜層を形成した。引き続き、基板温度を180℃とし、水素ガスおよびモノシランガス(モル比、SiH4:H2=1:39)を用いて、n型シリコン膜層上に厚み2μmのi型シリコン膜層を形成した。引き続き、基板温度を140℃として、水素ガスおよびB2H6ガスを含むモノシランガス(モル比、SiH4:H2:BH4=1:181:3×10−3)を用いて、i型シリコン膜層上に厚み0.2μmのp型シリコン膜層を形成した。なお、この際、特にi型シリコン膜層をやや大きくし、下部電極層を確実にカバーできるようにした。その後十分に冷却し、回路基板No.1を装置から取り出した。
【0099】
次に、RFスパッタリング法により、p型シリコン膜層上にITO層(透明電極層)を、基板温度200℃の条件で700Åの厚みで形成した。その後、櫛形形状のマスクを用い、基板温度を常温とし、DCスパッタリング法によって3000ÅのAg薄膜による櫛形電極を、ITO層上に形成して、薄膜太陽電池No.1を得た。図8に示すように、この櫛形電極22は、接続端子部11aまで伸ばして、細分化された金属層の目11と接続端子部11aを導電接合した。なお、図8は薄膜太陽電池No.1の表面を図示しているが、回路基板No.1の構成および櫛形電極22の理解を容易にするために、他の構成要素については図示していない。
【0100】
上記の光電変換素子の形成は、細分化された金属層の個々の目以外の部分を覆う金属製のマスクを回路基板No.1に被せて行い、光電変換素子が金属層の目にのみ形成されるようにした。また、回路基板上の光電変換素子の形成箇所は、縦10cm×横10cmとした。
【0101】
上記の薄膜太陽電池No.1を、図10および図11に示す形状のポーラスアルミ製金型を用いて真空成形装置(ジャパンゴアテックス社製「真空成形機 TFT−1」)によって三次元形状に加工して、薄膜太陽電池No.2を得た。成形条件は、セラミックヒーターによる加熱温度を320℃とし、真空度を670Pa、加熱時間を10秒、成形時間を10秒とした。なお、図11に示す金型のサイズの単位は「mm」である。
【0102】
上記の薄膜太陽電池No.2の光電変換素子表面には、大日本塗料株式会社製の透明塗料「オートVフロン300クリア(商品名)」をスプレー塗布し、常温で2時間乾燥後、60℃で1時間硬化させて保護膜を形成した。
【0103】
実験2
12.5cm×12.5cmのサーモトロピック液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス社製「BIAC−BC(商品名)」、厚み:100μm)の両面に、金属層とするための圧延銅箔(日興マテリアル社製「BHY−13B−T」、厚み:18μm)を、300℃、4MPaの条件で5分間加圧し、80℃まで冷却し、取り出すという工程により貼り付けた。その後、図12に示す箇所となるように予定される部分に、直径500μmのスルーホール23a、23bを開けた。
【0104】
次に、この金属層の細分化を、実験1と同じ方法で行い、回路基板No.2(太陽電池用基板No.2)を得た。なお、細分化は、個々の目が平面視で9mm×9mmで、金属層の目同士の間隔を1mmとし、更に、両表面の金属層において、細分化された金属層の目の位置が互いに一致するようにした。そして、表側の面の金属層は、図12に示すように正方形の一部を切り離した形状とし、その離れた部分である接続端子部11aと、接続端子部11aを切り離した後の正方形の一角11bに、上記のスルーホール23a、23bが位置するようにした。
【0105】
また、裏側の面の金属層も、図13に示すように、表側の面の金属層と同様に正方形の一部を切り離した形状とし、その離れた部分である接続端子部11cと、表側の面の金属層における接続端子部11aとが、対応する箇所に位置するようにした。そして、裏側の面の金属層では、図13に示すように、接続端子部11cと隣接する細分化された金属層の目11とが、伸び代を残した帯状導電ゾーン13で接続するように金属層を残し、接続端子部11cと、隣接する細分化された金属層の目11との間で導電接合する必要がない箇所については、非導電ゾーンとすべく、金属の帯17が不連続に残るようにした。
【0106】
次に、得られた回路基板の両面の金属層を無電解銀メッキにより銀で完全に覆った。その後、表側の面の銀表面およびスルーホールの内面に、スパッタリングによって、2000Åの厚みで銀膜を形成した。続いて、この銀膜の表面に、スパッタリングによって、200℃で500Åの厚みの酸化亜鉛膜を形成した。この回路基板の表側の面の銀・酸化亜鉛コートを下部電極層として、実験1と同様にして微結晶シリコンによる光電変換層を形成した。
【0107】
その後、実験1と同様にしてITO層を形成し、さらに櫛形電極を形成した。また、上記の櫛形電極形成と同時に、下部電極層の露出部におけるスルーホール内壁にも銀層を形成させて回路基板の表裏面を導電接合し、平板状の薄膜太陽電池No.3を得た。このとき、各工程では、実験1に準じてマスキング法を用い、必要な箇所にのみ目的の層が形成できるようにした。
【0108】
なお、図12に示すように、櫛形電極22は、接続端子部11aまで伸ばして、細分化された金属層の目11と接続端子部11aを導電接合した。ここで、図12は薄膜太陽電池No.3の表面を図示しているが、回路基板No.2の構成および櫛形電極22の理解を容易にするために、他の構成要素については図示していない。
【0109】
上記の薄膜太陽電池No.3について、実験1と同じ装置および金型を用いて、三次元形状成形を行い、三次元形状の薄膜太陽電池No.4を得た。なお、成形条件は、セラミックヒーターによる加熱温度を300℃とし、真空度を670Pa、加熱時間を10秒、成形時間を10秒とした。得られた薄膜太陽電池No.4の光電変換素子表面には、実験1と同様にして保護膜を設けた。
【0110】
実験3
12.5cm×12.5cmのサーモトロピック液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス社製「BIAC−BC(商品名)」、厚み:100μm)の表面に銀を直接スパッタリングして、片面にのみ銀の薄膜を形成した。次に実験1に準じて酸化亜鉛膜を形成し、これを下部電極層として、金属箔を貼り合わせることなく回路基板No.3とした。この回路基板No.3を用いて、金属層の細分化をすることなく、実験1の方法に準じて光電変換素子を形成し、平板状の薄膜太陽電池No.5を作製した。ただし、このときに形成する光電変換層は、微結晶シリコンではなく、アモルファスシリコンとし、これを常法により形成した。さらに、この薄膜太陽電池No.5から、実験2と同様の条件で三次元形状を有する薄膜太陽電池No.6を作製した。
【0111】
実験4
12.5cm×12.5cmのサーモトロピック液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス社製「BIAC−BC(商品名)」、厚み:100μm)を用意し、その片面にのみ、実験1と同様にして銅箔を貼り付けて金属層を設けて裏面とし、この裏面の金属層の細分化を行わずに回路基板No.4とした。この回路基板No.4を用い、その表面に、実験3と同様の手法により表面にアモルファスシリコンによる光電変換層を有する細分化されていない光電変換素子を形成し、平板状の薄膜太陽電池No.7を作製した。さらに、この薄膜太陽電池No.7から、実験2と同様の条件で三次元形状を有する薄膜太陽電池No.8を作製した。
【0112】
<薄膜太陽電池の特性評価>
上記の各薄膜太陽電池に発光素子(LED、東芝社製「TLR−116A」)を接続し、晴れた日に、設置勾配を水平として薄膜太陽電池に太陽光を当てて、なお、LEDは、1/2ワット500Ωの抵抗器と直列に接続した。また、薄膜太陽電池の作動評価は、LEDの発光のあり・なしで行った。結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1から、細分化された金属層を有する回路基板No.1および回路基板No.2を用いて得られた薄膜太陽電池では、平板状(No.1およびNo.3)、三次元形状(No.2およびNo.4)共に良好な特性を有しており、回路基板No.1および回路基板No.2を用いることにより良好な三次元形状成形性が確保できることが確認できた。
【0115】
これに対し、細分化された金属層を有しない回路基板No.3を用いて得られた薄膜太陽電池では、平板状の場合(No.5)では発電が確認できたものの、三次元形状に成形すると(No.6)、光電変換素子面に亀裂が入り、太陽電池としての機能を果たせなかった。
【0116】
また、金属層が細分化されていない回路基板No.4を用いて得られた薄膜太陽電池でも、平板状の場合(No.7)では発電が確認できたものの、三次元形状に成形すると(No.8)、裏面の金属箔が十分に伸びずにしわが発生すると共に光電変換層が破損するといった成形不良が生じ、太陽電池としての機能を果たせなかった。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の回路基板(平板状)の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の回路基板(平板状)の一例を示す平面拡大図である。
【図3】本発明の回路基板(平板状)の他の例示す平面拡大図である。
【図4】本発明の薄膜太陽電池の一例を示す縦断面図である。
【図5】本発明の薄膜太陽電池の他の例を示す縦断面図である。
【図6】本発明の薄膜太陽電池の他の例を示す縦断面図である。
【図7】三次元形状を有する本発明の薄膜太陽電池の一例を示す縦断面図である。
【図8】実験1で作製した薄膜太陽電池の表面を示す平面図である。
【図9】実験1で作製した薄膜太陽電池の裏面を示す平面図である。
【図10】実施例で使用した薄膜太陽電池成形用のポーラスアルミニウム製金型を示す斜視図である。
【図11】図10の金型の構造を示す図であり、(a)平面図、(b)および(c)側面図である。
【図12】実験2で作製した薄膜太陽電池の表面の一部を示す平面図である。
【図13】実験2で作製した薄膜太陽電池の裏面の一部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0118】
10、10a、10b 回路基板
11 金属層の目
11a、11c 接続端子部
13 帯状導電ゾーン
14 非導電ゾーン
15 耐熱性熱可塑性樹脂フィルム
16 スリット
17 金属層を構成する金属による帯
20a、20b、20c、20d 薄膜太陽電池
21 光電変換素子
22 櫛形電極
23a、23b スルーホール
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂基材と金属層を構成要素に含む回路基板、該回路基板を用いた薄膜太陽電池および該薄膜太陽電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平板状のプリント配線板は、硬質タイプのもの、フレキシブルタイプのものなどが、各種の電子部品に利用されている。他方、各種の電子部品の小型化、組み立ての省力化が進められている中で、三次元形状を有する導電回路付き樹脂成形品(樹脂製回路基板)が求められるようになってきた。
【0003】
例えば、最近では、薄膜太陽電池と称される薄形の太陽電池において、設置場所と合わせた形状にしたり、デザイン性を高める目的で、三次元形状に成形加工できることも要求されている。よって、こうした三次元形状を有する薄膜太陽電池などの基板として用い得る樹脂製の回路基板が要望されているのである。
【0004】
こうした要望に対して、例えば、(A)樹脂成形体に無電解めっきにより回路を形成する技術、(B)樹脂成形体の成形と同時に回路を形成する技術、が提案されている。
【0005】
(A)の技術の代表的なものとしては、特許文献1〜3に開示のものが挙げられる。特許文献1の技術は、射出成形体の表面にレジストコートを施し、該レジストコートにレーザーでパターン形成を行った後、無電解めっきを施すことで導体パターンを形成するというものである。
【0006】
特許文献2の技術は、樹脂基板に無電解めっき用の触媒で回路パターンを形成した後に三次元形状に成形し、その後、回路パターン上に導電性の無電解めっき層を鍍着させるというものである。特許文献3の技術は、三次元形状とされた成形体上に、触媒入りのフィルムなどで回路パターンを形成し、この触媒入りフィルム上に無電解めっきを施すというものである。
【0007】
また、(B)の技術の代表的なものとしては、特許文献4、5に開示のものが挙げられる。特許文献4に開示の技術は、予め導電回路を形成した転写シートを用意しておき、樹脂成形体の成形と同時に、該転写シートにより導電回路を成形体に転写することで、導電回路を有する一次成形体とし、この一次成形体に部分的に凹凸を賦形して二次成形体とするものである。特許文献5に開示の技術は、フィルム上に配線パターンを形成した配線シートの上に、三次元構造の樹脂成形体を射出成形して一体化するというものである。
【特許文献1】特開平6−334308号公報
【特許文献2】特開平7−66534号公報
【特許文献3】特開2003−8180号公報
【特許文献4】特開平5−283849号公報
【特許文献5】特開平11−307904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記(A)の技術(特許文献1〜3)によって三次元形状を有する回路基板を得るには、ドライ工程である成形工程後に、ウエット工程である無電解めっき工程、さらには十分な洗浄工程とその後の乾燥工程などといった多くの工程を経る必要があり、製法が複雑で手間がかかるという問題がある。
【0009】
また上記(B)の技術のうち、特許文献4に開示の技術では、微細な回路に精度よく対応することが困難であり、工程が複雑であるという問題もある。さらに特許文献5に開示の技術は、例えば、単なる折れ曲がりが要求される三次元形状加工には対応できるが、球面の如き基板に伸びが要求されるような形状とすると、導電回路の応力緩和が不十分となり、樹脂成形体(回路基板)にシワが発生する。よって、成形可能な形状が非常に限られるといった問題がある。
【0010】
このように、従来の技術は必ずしも満足の行くものではなく、三次元形状への成形が、高い自由度で且つ簡便に達成できる回路基板の登場が嘱望されていた。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高い自由度で且つ簡便に三次元形状に成形できる回路基板と、該回路基板を用いた薄膜太陽電池および該太陽電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成し得た本発明の回路基板は、耐熱性熱可塑性樹脂基材の表面に金属層による回路パターンが形成されてなり、三次元形状に成形可能な回路基板であって、少なくとも一部には、平面視で、細分化された金属層の個々の目が碁盤目状に配列された箇所を有しており、互いに隣接する金属層の目の間には、該金属層を構成する金属による帯状導電ゾーン、または各金属層の目同士を非導電とする非導電ゾーンが存在し、上記帯状導電ゾーンは、互いに隣接する金属層の目同士を電気的に接続するために、上記耐熱性熱可塑性樹脂基材が伸びを伴う変形をした際の伸び代を残した形状の導電パターンを有するものであるところに要旨が存在する。
【0013】
なお、本発明に係る「細分化された金属層の個々の目」における「細分化された」状態とは、金属層の目の一つ一つが、平面視で完全に独立した状態のみを指す訳ではなく、隣接する金属層の目同士が上記帯状導電ゾーンで連結されている部分を有している状態を含む意味である。
【0014】
上記の「耐熱性熱可塑性樹脂基材が伸びを伴う変形をした際の伸び代を残した形状」としては、例えば、平面視で曲折した形状が挙げられる。
【0015】
なお、上記非導電ゾーンには、上記金属層を構成する金属による帯が、不連続に複数存在していることが好ましいが、こうした金属が存在せず、上記耐熱性熱可塑性樹脂基板の露出面のみで構成されていてもよい。
【0016】
上記耐熱性熱可塑性樹脂基材を構成する樹脂としては、液晶ポリマーが好ましい。
【0017】
本発明の回路基板には、上記各構成を有する平板状のものの他、該平板状の回路基板が成形され、三次元形状が付されたものも含まれる。
【0018】
また、本発明の薄膜太陽電池は、上記本発明の回路基板(平板状の回路基板)における金属層表面または金属層形成面の反対面に光電変換素子が形成されており、且つ細分化された金属層に対応して上記光電変換素子が分離形成されているところに特徴を有している。
【0019】
本発明の薄膜太陽電池には、三次元形状が付される前の平面状のものと、三次元形状を付されたもののいずれもが包含される。
【0020】
更に本発明の薄膜太陽電池の製造方法は、上記本発明の回路基板(平板状の回路基板)の金属層表面または金属層形成面の反対面に光電変換素子を形成するに際し、細分化された金属層に対応して上記光電変換素子を分離形成することを特徴とする。また、光電変換素子形成後に、真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法により、光電変換素子形成面の反対面を金型に密着させて三次元形状とする製造方法も、本発明法の一態様である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の回路基板は、上記構成の採用により、成形時の回路の断線を抑制できるため、高い自由度で且つ簡便に三次元形状成形が可能である。よって、三次元形状が付された後の回路基板は、例えば携帯電話などの、優れたデザイン曲面や高度な省スペース化が求められる装置内部に適用される立体曲面電子回路として好適に用い得る。更に、本発明の回路基板では、細分化された金属層が耐熱性熱可塑性樹脂基材を補強するため、可撓性を保持しつつ、良好な機械的強度が確保できる。
【0022】
また、上記本発明の回路基板を有してなる本発明の薄膜太陽電池は、三次元形状に成形しても、光電変換素子の破壊が防止できるため、薄膜太陽電池が設置される場所に合わせた形状とすることができる。例えば、自動車の車体(自動車を構成する素材のうち、ガラスなどの透明素材の内側も含む)に設置する場合、本発明の薄膜太陽電池では、自動車の上部形状に合わせた形とすることが可能であることから、従来の平面形状のみの太陽電池に比べて設置可能面積が増大するため、発電量をより高めることができる。また、優れたデザイン性が要求される用途にも対応が容易である。
【0023】
更に、本発明の薄膜太陽電池の製造方法では、良好な可撓性と機械的強度を有する本発明の回路基板を使用することから、基板自体の機械的強度が優れていると共に、光電変換素子形成に、後述のロール・ツー・ロール方式を採用しても、該回路基板に十分な張力をかけることができる。よって、光電変換素子形成時におけるシリコン膜(特に結晶性のシリコン膜)の生成に伴う応力に起因する反りの発生を抑えつつ、三次元形状に成形可能な本発明の薄膜太陽電池を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の回路基板では、伸びを伴う自由な三次元形状成形を可能とすべく、耐熱性熱可塑性樹脂基材で構成することとした点、および回路パターンを形成するために該基材表面に設ける金属層に、平面視で特定の形状を付した点に、最大の特徴を有している。
【0025】
図1は、本発明の回路基板(一部)の一例を示す平面図であり、10が回路基板、11が細分化された金属層の目である。図1では詳細を省略しているが、金属層の個々の目の間の部分12の少なくとも一部には、隣接する金属層の目同士を電気的に接続するために、上記耐熱性熱可塑性樹脂基材が伸びを伴う変形をした際の伸び代を残した形状の導電パターンを有する帯状導電ゾーンが設けられている。そして、金属層の個々の目の間の部分12のうち、上記帯状導電ゾーンが設けられていない箇所は、非導電ゾーンとなる。
【0026】
図2は、図1の一部を拡大したものである。図2中、図1と同じ部分には、同じ符号を付して重複説明を避ける(以下の図においても、同じ)。図2の(a)は成形前の状態を表しており、(b)は、回路基板に三次元形状が付された成形後の状態を表している。図2中、13は帯状導電ゾーン、14は非導電ゾーン、15は耐熱性熱可塑性樹脂基材(露出部)である。
【0027】
本発明の回路基板10では、耐熱性熱可塑性樹脂基材を用いている。これにより、加熱成形を可能とした。ちなみに、樹脂製のフレキシブル基板としてはポリイミド基板が知られているが、これは熱硬化性ポリイミドの硬化体から構成されるものであるため、安定した三次元形状形成が実質的に不可能であり、平板状の基板として用いられるのみである。これに対し、本発明の回路基板に用いる樹脂基材は、熱可塑性樹脂により構成されるものであるため、加熱することで良好に成形することができる。
【0028】
また、本発明の回路基板10では、平面視で、金属層を、個々の目11が碁盤目状に配列された状態に細分化すると共に、互いに隣接する金属層の目11同士の間には、該金属層を構成する金属による帯状導電ゾーン13、または各金属層の目11同士を非導電とする非導電ゾーン14を設けた。金属層の目11は、主に耐熱性熱可塑性樹脂基材15を補強する役割と、回路の一部を構成する役割を担うものである。また、回路基板に搭載される電子機器(太陽電池や発光素子、その他の半導体など)の電極部として利用することもできる。
【0029】
なお、金属層の目11は、必要に応じて更に2以上の部分に分割され、夫々の部分の間に耐熱性熱可塑性樹脂基材の露出部を有していてもよい。例えば、後記の実施例で示すように、金属層の目を2つの部分に分割し、一方を光電変換素子形成部とし、他方を光電変換素子の端子を接続する部分に利用することができる。
【0030】
帯状導電ゾーン13は、金属層の目11同士を電気的に接続するためのものであり、この帯状導電ゾーン13の配置の選択によって、回路パターン(導電回路)を作成する。例えば、図2(a)回路基板では、図示している3つの金属層の目11が、互いに帯状導電ゾーン13で接続されており、これらが導電回路を形成している。
【0031】
平面状の回路基板10が三次元形状に成形される際には、金属層の目11が表面に存在する箇所では、耐熱性熱可塑性樹脂基材15は殆ど変形せず、金属層の目同士11の間の、帯状導電ゾーン13部分、非導電ゾーン14部分、および耐熱性熱可塑性樹脂基材15の露出部(耐熱性熱可塑性樹脂基材の両面に金属層が形成されているときは、表裏共が露出している部分)で主に変形が生じる。耐熱性熱可塑性樹脂基材15に比べて、帯状導電ゾーン13を形成している金属は、一般に伸び性が劣る。よって、耐熱性熱可塑性樹脂基材15が伸びを伴う変形をした場合、帯状導電ゾーン13は、この変形(伸び)に追随できずに破断しやすい。
【0032】
そこで、本発明の回路基板では、帯状導電ゾーンに、耐熱性熱可塑性樹脂基材が伸びを伴う変形をした際の伸び代を残した形状を付すこととし、回路基板成形時の帯状導電ゾーンの破断を抑制することとした。上記形状としては、例えば、平面視で曲折した形状が挙げられる。
【0033】
すなわち、回路基板10が成形され、帯状導電ゾーン13部分に伸びが生じると、図2(b)に示すように、帯状帯電ゾーン13の曲折の程度が小さくなり、金属層の目11同士の間における見かけの長さが伸びる。これにより、耐熱性熱可塑性樹脂に比べて伸び性が非常に劣る金属を素材とするにも関わらず、帯状導電ゾーン13の破断は抑制されるため、回路内の導電性が維持できるのである。
【0034】
上記の「平面視で曲折した形状」としては、例えば、所謂うねり形状や波形状、ジグザグ形状などが含まれる(これらの形状は全て平面視での形状である。以下同じ。)。より具体的には、U字状;S字状;V字状;U字状、S字状、V字状などのいずれかが連続している形状;U字状、S字状、V字状などのいずれかの形状と、その反転形状が交互に連続している形状;これらの2以上の形状を含む連続形状;などが挙げられる。なお、連続形状の場合には、各形状(U字状、S字状、V字状など)の大きさや曲折の程度は一定でなくてもよい。また、U字状やS字状などの場合には、曲がり部が直角などの角度を持っていても良く、曲線で曲がっていても構わない。なお、図2に示した回路基板における帯状導電ゾーンは、U字とその反転形状が交互に連続した形状である。曲折の程度、帯状導電ゾーンの実長さなどは、三次元形状への成形の際に、帯状導電ゾーンの破断防止作用が十分に発揮できる限り特に制限はない。
【0035】
また、上記の「曲折した形状」には、金属層の目の配列方向に略平行方向に、帯状導電ゾーンの一端から他端へ向かい且つ他端まで到達しないスリットが設けられてなる形状や、更には、該スリットが2以上設けられる場合には、該スリットの開始端部が交互になるように設けられてなる形状も含まれる(以下、これらを纏めて「スリット形状」という)。
【0036】
上記スリット形状の場合、帯状導電ゾーンに設けられるスリットの本数や、スリット間距離、個々のスリットの長さは、三次元形状への成形の際に、帯状導電ゾーンの破断防止作用が十分に発揮できる限り特に制限はない。スリットの形成位置は、例えば、回路基板が三次元形状に成形される際に、より大きく変形する部分に合致するようにすることが好ましい。また、スリットの長さおよび本数は、例えば、スリット形成により形成される帯状導電ゾーンが、その位置によらず略同等の幅となるように調整することが、電気伝導上の安定化と、三次元形状に成形する際の帯状導電ゾーンの破断防止効果とのバランスをとることができることから、好ましい。
【0037】
図3に、帯状導電ゾーンが上記スリット形状を有する場合の一例を示す。図3(a)が成形前、図3(b)が成形後の状態を示している。図3中、16がスリットである。成形の際に帯状導電ゾーン13において、スリット16の間隔が広がり、金属層の目11同士の間における見かけの長さが伸びる。これにより、帯状帯電ゾーン13の破断が抑制される。
【0038】
なお、金属層の目同士の間において、該目同士を電気的に接続する必要がない箇所(すなわち、非導電ゾーン)では、耐熱性熱可塑性樹脂基材が露出するのみであってもよいが、図2および図3に示すように、金属層を構成する金属による帯17が、不連続に複数存在することが好ましい。より好ましくは、非導電ゾーンに存在する上記帯が、不連続であり且つ帯状導電ゾーンにおける導電パターンと同様に配されている態様である(図3)。
【0039】
上記の通り、回路基板の成形の際には、主に、帯状導電ゾーン、非導電ゾーンおよび耐熱性熱可塑性樹脂基材の露出部で変形が生じる。ここで、金属層の目同士の間のうち、非導電ゾーンにおいて耐熱性熱可塑性樹脂基材が露出しているだけの場合には、帯状導電ゾーンが設けられた箇所に比べて非導電ゾーンが弱く、成形時の変形が大きくなり易い。
【0040】
これに対し、非導電ゾーンにおいて、金属層を構成する金属による帯が不連続に複数存在する場合、さらには該帯が、帯状導電ゾーンにおける導電パターンと同様に配されている場合には、帯状導電ゾーンと非導電ゾーンの強度をほぼ同等にできる。よって、巨視的に見ると回路基板の三次元形状に成形される箇所に均一に成形圧力がかかるようになるため、より均一性の高い成形が可能となる。
【0041】
細分化された金属層の個々の目は、その形状に特に制限はなく、正方形の他、長方形などの四角形や任意の他の形状であってもよい。なお、細分化された金属層の個々の目は、三次元形状への成形が予定される箇所では、全てが同じ形状であることが好ましいが、異なる形状のものを組み合わせることも可能である。より好ましい金属層の個々の目の形状は四角形である。細分化された金属層の目の形状が四角形の場合には、図1に示すように、金属層の目以外の箇所(図1中12)が直線の条となるため、三次元形状成形性がより向上する。また、電子機器を搭載して配線する際の容易さなどを考慮すれば、正方形とすることが好ましい。なお、例えば、四角形(正方形や長方形など)の四隅の一部または全部を切って八角形などの多角形など(角の部分が曲線であってもよい)としたものも、実質的には四角形と同様の取り扱いができるため、好ましい。また、細分化された金属層の目を、伸び代のある帯状導電ゾーンで導電接合した状態で、面状に限らず線状とすることも可能である。
【0042】
細分化後の金属層の個々の目のサイズは、特に制限はなく、回路基板に要求される三次元形状の大きさや曲げる部分の曲率により、適宜変更すればよい。例えば、金属層の個々の目の平面視による面積が、回路基板における三次元形状への成形が予定される箇所の、平面視による総面積に対して、0.1%以上であって、25%以下、より好ましくは13%以下であることが望ましい。回路基板の総面積に対して、金属層の個々の目の面積が小さすぎると、三次元形状に加工するには小さすぎて効率が悪くなることがある。他方、回路基板の総面積に対して、金属層の個々の目の面積が大きすぎると、例えば曲面を得るための単位としては大きすぎて、使用し難くなることがある。
【0043】
以下、本発明の回路基板の構成要素および三次元形状への成形方法、並びに本発明の回路基板の用途について説明する。
【0044】
<耐熱性熱可塑性樹脂基材>
耐熱性熱可塑性樹脂基材を構成する樹脂は、耐熱性の熱可塑性樹脂であり、例えば、熱変形可能な温度が130℃以上のものであることが好ましい。回路基板に電子機器を搭載する際には、種々の工程において基板に熱がかかるため、これに耐え得る程度の耐熱性が要求されるのである。なお、樹脂が熱変形可能な温度は、融点を有する樹脂では、融点または熱変形温度(HDT)で、融点を有しない樹脂であればガラス転移温度(Tg)で判断すればよい。融点やTgは、例えばJIS K 7121の規定に準じて測定できる。また、HDTは、ASTM D648(荷重:18.6kg/cm2)の規定に従って測定できる。
【0045】
耐熱性熱可塑性樹脂基材の素材に好適な樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(融点:267℃)、ポリブチレンテレフタレート(融点:225℃)、ポリエチレンナフタレート(融点:270℃)、ポリアリレート(Tg:175℃)、サーモトロピック液晶ポリエステル(例えば、HDTが330℃のI型、HDTが220℃のII型、HDTが135℃のIII型)、その他の芳香族ポリエステル(例えば、Tgが140℃のもの)などのポリエステル系樹脂;ナイロン6(融点:228℃)、ナイロン66(融点:246℃)などのポリアミド系樹脂;液晶ポリエステルアミド(HDT:240℃);環状ポリオレフィンコポリマー(例えば、Tgが145℃のもの)、ポリメチルペンテン(融点:240℃)などのポリオレフィン系樹脂;ポリエーテルスルホン(Tg:230℃)、ポリエーテルケトン(融点:334℃)、ポリエーテルエーテルケトン(融点:334℃)などのポリエーテル系樹脂;ポリサルホン(Tg:140℃);ポリカーボネート(Tg:150℃);ポリフェニレンスルフィド(融点:285℃);熱可塑性ポリイミド(例えば、融点が338℃のもの);などが挙げられる。これらの樹脂は1種単独で用いられる他、本発明の効果を損なわない限り、2種以上の樹脂を組み合わせて使用することもできる。これらの中でも、上記のサーモトロピック液晶ポリエステルや液晶ポリエステルアミド(サーモトロピック液晶ポリエステルアミド)などの液晶ポリマー(サーモトロピック液晶ポリマー)が好適である。
【0046】
なお、上記のサーモトロピック液晶ポリマー(以下、単に「液晶ポリマー」という)とは、例えば、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールや芳香族ヒドロキシカルボン酸などのモノマーを主体として合成される芳香族ポリエステルや液晶ポリエステルアミドであって、溶融時に液晶性を示すものである。
【0047】
その代表的なものとしては、パラヒドロキシ安息香酸(PHB)と、テレフタル酸と、4,4’−ビフェノールから合成されるI型[下式(1)]、PHBと2,6−ヒドロキシナフトエ酸から合成されるII型[下式(2)]、PHBと、テレフタル酸と、エチレングリコールから合成されるIII型[下式(3)]が挙げられる。
【0048】
【化1】
【0049】
液晶ポリマーとしては、I型〜III型のいずれのものでもよいが、耐熱性、寸法安定性、水蒸気バリア性の面からは全芳香族液晶ポリエステル(I型およびII型)や全芳香族液晶ポリエステルアミドが好ましい。
【0050】
耐熱性熱可塑性樹脂基材の形態としては、所謂フィルムであればよい。なお、本明細書でいう「フィルム」とは、シート、板、箔(特に金属層の構成素材について)を含む概念である。
【0051】
こうした耐熱性熱可塑性樹脂基材を得るに当たっては、これを構成する樹脂に応じた公知の各種方法を採用すればよい。また、本発明法において特に好適な上記例示の液晶ポリマーを用いたフィルムとしては、例えば、ジャパンゴアテックス株式会社製の「BIAC―BA(商品名)」などの市販品を用いることができる。
【0052】
耐熱性熱可塑性樹脂基材の厚みは、回路基板の用途や素材(樹脂)に応じて適宜選択すればよいが、例えば、5μm以上、より好ましくは50μm以上であって、300μm以下、より好ましくは150μm以下とすることが望ましい。厚みが薄すぎると、三次元成形時に基材に破れやシワが生じやすくなる。他方、厚みが厚すぎると、素材が無駄になるばかりでなく、三次元形状とするための成形性が低下する。
【0053】
<金属層>
金属層を構成する金属としては、特に制限はなく、銅、アルミニウム、スズ、銀、金、白金、亜鉛、鉄や、これらの金属を含む合金[ステンレス鋼(SUS)、42アロイ、銅合金など]などが挙げられる。
【0054】
金属層は単層構造でもよく、異なる2種以上の金属を組み合わせた積層構造であってもよい。積層の方法も特に制限はなく、例えば、耐熱性熱可塑性樹脂基材と金属板を貼り合わせた後、該金属板表面に真空蒸着法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、めっき法、CVD法などで、金属板の構成金属とは異なる種類から構成される金属層を設ける方法などが採用できる。
【0055】
また、金属層は、耐熱性熱可塑性樹脂基材の片面にのみ設けられていてもよく、耐熱性熱可塑性樹脂基材の両面に設けられていても構わない。
【0056】
回路を形成するための金属層の厚みは、例えば、0.5μm以上、より好ましくは5μm以上であって、1000μm以下、より好ましくは50μm以下とすることが望ましい。金属層が薄すぎると、回路としての信頼性に欠ける他、回路基板を三次元形状に成形する際に、わずかな張力が掛かっただけで破断してしまうことがある。他方、金属層が厚すぎると、エッチングなどによる回路パターンの形成が困難になる他、三次元形状とする際の成形性が損なわれる傾向にある。
【0057】
この金属層の一部を除去して、金属層を細分化すると共に、金属層の目の間に、帯状導電ゾーンまたは非導電ゾーンを形成する(すなわち、回路パターンを形成する)。その方法としては、公知のエッチング法が好適である。エッチング法としては、例えば、公知のフォトレジスト法により金属層の除去する部分が露出するようにパターンを形成したレジスト膜を金属層表面に設け、金属層を溶解可能な液(例えば、銅系の合金層であれば、塩化第二鉄水溶液など)などを用いて金属層の該露出部を溶解除去した後に、該レジスト膜を除去する方法が挙げられる。エッチングに用いるレジスト樹脂や、金属層の溶解液、レジスト膜の除去液、レジスト膜の形成条件や金属層の溶解条件などは特に制限は無く、金属層の素材や形成する回路パターンに応じて適宜選択することができる。
【0058】
細分化された金属層の目、帯状導電ゾーンおよび非導電ゾーンから形成される回路パターンは、回路基板の全体に形成されていてもよく、必要とされる一部(すなわち、成形により変形を受ける箇所)にのみ形成されていてもよい。すなわち、回路基板が三次元形状に成形される際に、変形を受けない箇所については、耐熱性熱可塑性樹脂基材部分の伸びが発生しないため、金属層が細分化されることなく設けられていても、回路基板の成形性が損なわれることがないことから、当該箇所では、金属層を細分化しなくてもよい。
【0059】
例えば、本発明の回路基板(平板状)を長尺のものとし、所謂ロール・ツー・ロール方式により、連続的に電子機器などを搭載し、その後裁断・三次元形状成形を行う製法が採用される場合などでは、回路基板の長手方向に平行な両端部において、金属層を細分化せずに残すことが望ましい。この場合、耐熱性熱可塑性樹脂基材の両面に金属層を設けている場合には、回路基板の長手方向に平行な両端部を細分化せずに残す金属層の部分を、片面の金属層のみとしてもよく、両面の金属層としても構わない。このような構成とすることにより、ロール・ツー・ロール法による連続製造時に基板に負荷される張力に耐えるに十分なレベルの機械的強度を容易に確保できる。また、この場合、金属層を残した両端部に、連続生産時の送り用スプロケットを設けると、良好な強度が確保できることから有利である。
【0060】
<三次元形状への成形方法>
平板状の回路基板を、三次元形状に成形する方法は特に限定されず、例えば、金型を用いた通常の成形法(プレス成形法など)や、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法などが採用できる。
【0061】
中でも真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法は、回路パターン形成面には金型を密着させることなく三次元形状に成形することが可能であるため、例えば薄膜太陽電池の場合、形成した光電変換素子のキズ付き、割れなどを防止できる点で推奨される。また、成形時にキズ付き、割れなどを起こし難いものについては、通常の金型成形法(プレス成形法など)を採用することが可能である。
【0062】
なお、本発明の回路基板は、比較的高い自由度で三次元形状に成形できるが、金属層が細分化されているとはいっても、例えば曲率の非常に小さいものには対応し難くなる。変形の程度(例えば曲率の程度)に応じて、細分化後の金属層の個々の目のサイズを上記範囲内で調整して、ある程度の対応を図ることは可能であるが、本発明の回路基板は、例えば、図7に示すような比較的大きな曲率を有する三次元形状に成形する用途に特に好適である。
【0063】
成形に用いる金型の形状や材質については特に制限はなく、回路基板に要求される形状で公知の素材からなる金型を用いればよい。成形条件については、回路基板の特性が損なわれない限り特に制限はない。例えば、耐熱性熱可塑性樹脂基材が、液晶ポリマーフィルムであるジャパンゴアテックス社製の「BIAC−BA(商品名)」で構成される場合、温度は290〜340℃とし、通常の金型成形法の場合には、圧力を6MPa以下で、時間を20分以下、真空成形法の場合には、圧力を1300Pa以下で、時間を3分以下、真空圧空成形法の場合には、真空系は圧力を1300Pa以下、加圧系は圧力をゲージ圧で10kPa〜1MPa、時間を5分以下とするなどの条件が採用できる。
【0064】
上記の成形により、三次元形状を有する本発明の回路基板が得られるが、例えば、平板状の本発明の回路基板に予め電子機器を搭載し、その後三次元形状に成形することも可能である。この場合、上記の真空成形法や圧空成形法、真空圧空成形法を採用することが好ましい。これらの成形法であれば、電子機器搭載面には金型を密着させずに三次元形状とできるため、成形時の電子機器などの破損を防止できるからである。この場合の成形条件は、例えば、上記の回路基板成形条件の範囲内から適宜選択することができる。
【0065】
<本発明の回路基板の用途>
本発明の回路基板は、比較的自由度の高い三次元形状成形を可能としているため、例えば携帯電話などの、優れたデザイン曲面や高度な省スペース化が求められる装置内部に適用される立体曲面電子回路として好適に用い得る。
【0066】
搭載される電子機器は特に制限されない。例えば、発光体とするための発光素子(発光ダイオード)、太陽電池とするための光電変換素子、その他記憶装置などとするための半導体素子などが挙げられる。これらの電子機器は、金属層側の面に、好ましくは細分化された金属層の目に対応する位置に搭載する。搭載する方法は特に限定されず、公知の各種方法から、搭載する電子機器に応じて適宜選択すればよい。例えば、発光素子その他の半導体素子であれば、銀ペーストなどを用いたダイボンディングが採用できる。薄膜太陽電池の場合、光電変換素子を形成する各層(電極層やシリコン膜層など)をCVD法などにより直接形成してもよい。
【0067】
<本発明の薄膜太陽電池とその製造方法>
本発明の薄膜太陽電池は、上記本発明の回路基板を太陽電池用基板として用い、これに二層の電極層(下部電極層および透明電極層)、および半導体材料層(微結晶シリコン層、アモルファスシリコン層、またはその他の化合物半導体層)で構成される光電変換素子を形成してなるものである。太陽電池用基板として試用される本発明の回路基板は、以下の(1)から(3)の作用を有する。
【0068】
(1)金属層が細分化されることで、金属層形成面側には、熱可塑性樹脂が露出した部分が形成されるが、太陽電池の三次元形状成形の際に、該露出部は変形が容易となるために、成形性が向上する。
【0069】
(2)太陽電池用基板上(金属層形成面または金属層形成面の反対面)に、細分化された金属層の個々の目のサイズに合わせて光電変換素子を形成すれば、該光電変換素子も細分化された状態になる。すなわち、上記の熱可塑性樹脂の露出部には、光電変換素子を形成しないか、または、光電変換素子の形成後、細分化された金属層以外の箇所に形成されている光電変換素子の部分をレーザーなどにより切断しておく。よって、太陽電池の三次元形状成形の際に、熱可塑性樹脂の露出部が変形しても、光電変換素子への変形応力の伝達は大きく低減される。そのため、三次元形状に成形した際の光電変換素子の破壊が高度に抑制される。
【0070】
(3)金属層により耐熱性熱可塑性樹脂フィルムを補強し得るため、光電変換素子を直接形成しても、シリコン膜層の内部応力による基板の変形などを抑制できる。また、所謂ロール・ツー・ロール法による光電変換素子を構成する各層の連続形成も可能となる。
【0071】
上記の作用によって、基板に光電変換素子を形成した後に成形を施して得られる三次元形状を有する薄膜太陽電池を、生産性良く提供することが可能となる。
【0072】
なお、本発明の薄膜太陽電池は、本発明の回路基板を用いることによって、三次元形状への成形を容易としているが、他方、次のような応用展開も可能である。上記の通り、薄膜太陽電池の製造に当たり、シリコン膜層(微結晶シリコン膜層)を基板上に形成する際には、該層の内部応力によって基板は反りやすい。こうしたシリコン膜層の内部応力によるマクロ的な基板の反り(すなわち、三次元的な変形)を、本発明の回路基板(すなわち、細分化された金属層の目を有する基板)を使用することにより、マクロに平滑化(二次元化)することも可能である。
【0073】
図4〜図6に、薄膜太陽電池の例を示す。図4は、回路基板の金属層表面に光電変換素子を形成してなる薄膜太陽電池(一部)の例を示している。また、図5は、回路基板の金属層形成面の反対面に光電変換素子を形成してなる薄膜太陽電池(一部)の例を示している。更に図6は、両表面に金属層を有する回路基板の、片面の金属層表面に光電変換素子を形成してなる薄膜太陽電池(一部)の例を示している。図4、図5および図6中、20a、20bおよび20cが薄膜太陽電池、21が光電変換素子である。なお、これらの図面では、各光電変換素子間の導電接合部分は省略している。
【0074】
光電変換素子21は、基板側から、下部電極層、シリコン膜層、透明電極層の順に各層が形成されてなる構造を有している(図示しない)。
【0075】
下部電極層は、導電体であり、且つ光線反射率が高いものであれば特に限定されるものではない。例えば、銀、アルミニウム、銅、金、プラチナ、ニッケル、錫、鉄などの純金属類、ステンレスやアルミ合金などの合金類、ITO(インジウム−スズ複合酸化物)や酸化アルミ、酸化錫などの金属酸化物類などの従来公知の素材を用いて、従来公知の方法(加熱加圧融着法、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、電気めっき法、無電解めっき法、またはこれらの手法の組み合わせなど)によって形成することができる。また、下部電極層の表面に形成されるシリコン膜層への、下部電極金属の拡散を防止するため、ZnO、SnO2などの金属酸化物層を、例えばスパッタリング法や真空蒸着法などによって形成してもよい。なお、薄膜太陽電池が図4や図6に示す構成の場合には、金属層の目11を下部電極層、または下部電極層の構成材料の一部として利用することもできる。
【0076】
シリコン膜層は、アモルファスシリコン膜層または微結晶シリコン膜層からなるシングル型構造、あるいは異なる2種類以上の層が積層されたタンデム型構造のいずれであってもよい。タンデム型構造の場合は、2層のみならず、3層以上に積層することも可能である。ただし、シリコン膜層の厚さは、全体の厚さで0.2〜20μmとすることが好ましい。
【0077】
上記アモルファスシリコン膜層や上記微結晶シリコン膜層中の構造は特に限定されず、例えば、薄膜太陽電池で通常採用されているnip構造(リン、窒素などの不純物がドープされたn型シリコン膜層−不純物を含まないi型シリコン膜層−ホウ素などの第III族元素がドープされたp型シリコン膜層の積層構造)を採用すればよい。シリコン膜層の形成方法も特に限定されず、従来公知の方法(例えば、容量結合型プラズマCVD法や、誘導結合型プラズマCVD法などのCVD法)によって形成することが可能であり、例えば、特開2001−274434号公報などに開示されている従来公知の各種方法を採用することができる。
【0078】
透明電極層は、例えば、酸化スズ、ITO、FTO(フッ素をドープした酸化スズ)、酸化亜鉛などの公知の金属酸化物を、公知の方法(真空蒸着法やスパッタリング法、CVD法など)によって形成することができる。
【0079】
なお、透明電極層の上部には、発生した電力を損失なく取り出すため、取り出し電極(図示しない)を設ける。取り出し電極には、銀、金、白金、銅、アルミニウムなどの金属を用いることができ、従来公知の形成法(スパッタリング法、真空蒸着法、印刷法、エッチング法、めっき法またはこれらの組み合わせなど)で形成可能である。また、取り出し電極の形状は特に限定されないが、櫛状とするのが一般的である。
【0080】
この他、透明電極層の上には、光を効率よく取り込むために、公知の反射防止層などを設けることも可能である。
【0081】
以上のようにして基板上に光電変換素子を形成するが、この光電変換素子は、基板の金属層側表面、金属層形成面の反対面のいずれに形成されるかによらず、細分化された金属層に対応した位置に分離形成し、耐熱性熱可塑性樹脂基材が表裏共に露出した部分には、光電変換素子が存在しないようにすることが好ましい。
【0082】
光電変換素子が、細分化されている金属層の個々の目よりも大き過ぎると、薄膜太陽電池の三次元形状に成形する際に、金属層の目に対応する部分からはみ出した光電変換素子部分が破壊され易くなる。他方、光電変換素子が、細分化されている金属層の個々の目よりも小さ過ぎると、基板上の光電変換素子が形成されている部分が少なくなるため、薄膜太陽電池の単位面積当たりの発電効率が低下してしまう。
【0083】
なお、太陽電池用基板として用いる回路基板では、光電変換素子の形成予定部表面(金属層の目表面または耐熱性熱可塑性樹脂基材表面)がテクスチャ構造(凹凸構造)を有していることが好ましい。表面にテクスチャ構造を有する耐熱性熱可塑性樹脂基板を有する回路基板を用いることで、微結晶シリコン膜層を有する薄膜太陽電池のエネルギー変換効率を相当程度高くすることができる。
【0084】
例えば、基板上に下部電極層、シリコン膜層、透明電極層の順に各層を積層した構成の太陽電池では、透明電極層側からシリコン膜層に入射した光が光電変換に寄与するが、特に間接遷移を示す結晶系シリコン膜(微結晶シリコン膜)では、光の吸収係数が小さいため、十分に太陽光を吸収するには、ある程度の膜厚(層厚)が必要となる。しかし、薄膜太陽電池では、通常、シリコン膜層の厚みが数μm〜数十μmと非常に薄いため、入射光の光路長が短く、効率よく光電変換することが困難である。
【0085】
これに対し、回路基板の光電変換素子形成予定面の表面にテクスチャ構造を持たせることで、その表面に形成した下部電極層表面もテクスチャ構造を有するようになるため、シリコン膜層で吸収されなかった光が、下部電極層表面で多重反射して、シリコン膜層中での光路が長くなり、効率よくシリコン膜層に吸収されて光電変換に寄与するようになる(所謂「光閉じ込め効果」)。これにより、薄膜太陽電池のエネルギー変換効率を高めることができる。
【0086】
なお、本発明の薄膜太陽電池では、回路基板の細分化された金属層の目と上記の帯状導電ゾーンを含む導電回路によって電気の取り出しを行うため、例えば、図5に示すように、回路基板の金属層形成面の反対面に光電変換素子を形成してなる薄膜太陽電池の場合には、回路基板の両表面に存在する金属層と光電変換素子とを導通接合する必要がある。
【0087】
回路基板の両表面に存在する金属層と光電変換素子とを導通接合する方法としては特に制限はなく、従来公知の各種方法が採用できる。例えば特開平6−216523号公報などに開示されているように、回路基板の耐熱性熱可塑性樹脂基材に50〜500μm程度の直径の穴を開け、穴内壁を金属メッキして導通を取る方法(スルーホールメッキ法);特開2004−221345号公報や特開平6−216523号公報などに開示されているように、回路基板の耐熱性熱可塑性樹脂基材に100μm〜数mmの直径の穴を開け、そこに導電ペーストを埋め込む方法;回路基板の耐熱性熱可塑性樹脂基材に1mm程度かそれ以上の穴を開け、穴内壁をハンダディップし埋め込む方法や、この際、ハンダと穴の上下からハトメのように金具でかしめ、ハンダ接合する方法;金属のスパッタリング法;などが挙げられる。
【0088】
これらの手法によって、図5に示す薄膜太陽電池のように、光電変換素子が回路基板の金属層形成面と反対側の面に形成されている場合でも、光電変換素子により得られた電子を裏面側の金属層形成面の回路に流すことができる。そして、耐熱性熱可塑性樹脂基材が伸びを伴う変形をした際の伸び代を残した形状の導電パターンを有する上記帯状導電ゾーンに導電回路の一部を構成させることにより、例えば、図4や図6に示す薄膜太陽電池と同様に、薄膜太陽電池を三次元形状に成形した際にかかる力を緩和して、導電回路の破壊を防止することができる。
【0089】
上記のようにして得られる平面状の薄膜太陽電池は、例えば、図7に示すような三次元形状に成形可能である。その成形法としては、真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法が挙げられる。真空成形法や圧空成形法、真空圧空成形法は、真空または空気圧を利用して、基板の片面のみを金型に密着させて成形する技術である。よって、金型が密着する面を光電変換素子形成面の反対面のみとすることができ、光電変換素子部分の傷付きや破壊を防止しつつ薄膜太陽電池を成形することが可能である。
【0090】
金型の形状や材質については特に制限はなく、薄膜太陽電池に要求される形状で公知の素材からなる金型を用いればよい。成形条件については、薄膜太陽電池の特性が損なわれない限り特に制限はない。例えば、耐熱性熱可塑性樹脂基材が、液晶ポリマーフィルムであるジャパンゴアテックス社製の「BIAC−BA(商品名)」で構成される場合には、回路基板の三次元形状の成形について上述した成形条件と同じ条件が採用できる。
【0091】
なお、例えば、三次元形状に成形した後の薄膜太陽電池には、その表面を、透明樹脂を含む塗料でコーティングしたり、薄膜太陽電池と同形状に成形した透明フィルムを被せたり、透明フィルムを、必要に応じて変形させつつ薄膜太陽電池の表面形状に沿わせて張り合わせるなどして、絶縁皮膜を形成することもできる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は、本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは、全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0093】
実験1
12.5cm×12.5cmのサーモトロピック液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス社製「BIAC−BA(商品名)」、厚み:100μm)の両面に、金属層とするための電解銅箔(古河サーキットフォイル社製「GTS−18」、厚み:18μm)を、320℃、4MPaの条件で5分間加圧し、100℃まで冷却し、取り出すという工程により貼り付けた。
【0094】
次に、この金属層の細分化を行った。細分化は、個々の目が平面視で9mm×9mmで、金属層の目同士の間隔を1mmとし、更に、両表面の金属層において、細分化された金属層の目の位置が互いに一致するようにした。そして、一方の面(以下、「表側の面」という)の金属層は、図8に示すように正方形の一部を切り離した形状とし、その離れた部分11a(以下、「接続端子部」という)と、隣接する細分化された金属層の目とが、伸び代を残した帯状導電ゾーン13で接続するように金属層を残した。そして、接続端子部11aと、隣接する細分化された金属層の目11との間で導電接合する必要がない箇所については、非導電ゾーンとすべく、図8に示すように、金属の帯17が不連続に残るようにした。また、他方の面(以下「裏側の面」という)は、図9に示すように、単に正方形の細分化された金属層の目11のみが残るようにした。
【0095】
なお、金属層の細分化は、以下の方法で行った。金属層表面に厚み:50μmの塩基性水溶液現像型ドライフィルムレジスト(日立化成社製「HF450」)を、加熱したロールラミネーター(ロール表面温度:105℃)を用いて、速度:0.5m/分、線圧:0.2〜0.4MPaの条件でラミネートし、室温で15分放置した。その後、所定のマスクをレジスト塗布面に重ね、真空密着露光機を用いて、100mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。さらに室温で15分放置し、その後Na2CO3の1%水溶液を用い、温度:30℃、スプレー圧:0.2MPa、時間:60秒の条件でドライフィルムレジストを現像し、レジストパターンを形成した。
【0096】
レジストパターン形成後の樹脂フィルムの金属層を、塩化第二鉄水溶液(塩化第二鉄:500gを、HClの3%水溶液:1Lに溶解させたもの)を用いてエッチングした。その後、NaOHの3%水溶液を用い、温度:50℃、スプレー圧:0.1MPaの条件でドライフィルムレジストを剥離し、平板状の回路基板No.1(太陽電池用基板)を得た。
【0097】
次に、得られた回路基板の表裏面の金属層を無電解銀メッキにより銀で完全に覆った。その後、この表側の面の銀表面に、スパッタリングによって、200℃で500Åの厚みで酸化亜鉛膜を形成した。この回路基板の表側の面の銀・酸化亜鉛コートを下部電極層として、以下の工程により微結晶シリコンによる光電変換層を形成した。
【0098】
下部電極層を形成した回路基板No.1をプラズマCVD装置に入れ、1.33×10−5Paになるまで装置内を減圧し、続いて、基板温度を180℃とし、水素ガスおよび少量のPH3ガスを含むモノシランガス(モル比、SiH4:H2:PH3=1:143:8×10−3)を用いて、酸化亜鉛膜上に厚み0.4μmのn型シリコン膜層を形成した。引き続き、基板温度を180℃とし、水素ガスおよびモノシランガス(モル比、SiH4:H2=1:39)を用いて、n型シリコン膜層上に厚み2μmのi型シリコン膜層を形成した。引き続き、基板温度を140℃として、水素ガスおよびB2H6ガスを含むモノシランガス(モル比、SiH4:H2:BH4=1:181:3×10−3)を用いて、i型シリコン膜層上に厚み0.2μmのp型シリコン膜層を形成した。なお、この際、特にi型シリコン膜層をやや大きくし、下部電極層を確実にカバーできるようにした。その後十分に冷却し、回路基板No.1を装置から取り出した。
【0099】
次に、RFスパッタリング法により、p型シリコン膜層上にITO層(透明電極層)を、基板温度200℃の条件で700Åの厚みで形成した。その後、櫛形形状のマスクを用い、基板温度を常温とし、DCスパッタリング法によって3000ÅのAg薄膜による櫛形電極を、ITO層上に形成して、薄膜太陽電池No.1を得た。図8に示すように、この櫛形電極22は、接続端子部11aまで伸ばして、細分化された金属層の目11と接続端子部11aを導電接合した。なお、図8は薄膜太陽電池No.1の表面を図示しているが、回路基板No.1の構成および櫛形電極22の理解を容易にするために、他の構成要素については図示していない。
【0100】
上記の光電変換素子の形成は、細分化された金属層の個々の目以外の部分を覆う金属製のマスクを回路基板No.1に被せて行い、光電変換素子が金属層の目にのみ形成されるようにした。また、回路基板上の光電変換素子の形成箇所は、縦10cm×横10cmとした。
【0101】
上記の薄膜太陽電池No.1を、図10および図11に示す形状のポーラスアルミ製金型を用いて真空成形装置(ジャパンゴアテックス社製「真空成形機 TFT−1」)によって三次元形状に加工して、薄膜太陽電池No.2を得た。成形条件は、セラミックヒーターによる加熱温度を320℃とし、真空度を670Pa、加熱時間を10秒、成形時間を10秒とした。なお、図11に示す金型のサイズの単位は「mm」である。
【0102】
上記の薄膜太陽電池No.2の光電変換素子表面には、大日本塗料株式会社製の透明塗料「オートVフロン300クリア(商品名)」をスプレー塗布し、常温で2時間乾燥後、60℃で1時間硬化させて保護膜を形成した。
【0103】
実験2
12.5cm×12.5cmのサーモトロピック液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス社製「BIAC−BC(商品名)」、厚み:100μm)の両面に、金属層とするための圧延銅箔(日興マテリアル社製「BHY−13B−T」、厚み:18μm)を、300℃、4MPaの条件で5分間加圧し、80℃まで冷却し、取り出すという工程により貼り付けた。その後、図12に示す箇所となるように予定される部分に、直径500μmのスルーホール23a、23bを開けた。
【0104】
次に、この金属層の細分化を、実験1と同じ方法で行い、回路基板No.2(太陽電池用基板No.2)を得た。なお、細分化は、個々の目が平面視で9mm×9mmで、金属層の目同士の間隔を1mmとし、更に、両表面の金属層において、細分化された金属層の目の位置が互いに一致するようにした。そして、表側の面の金属層は、図12に示すように正方形の一部を切り離した形状とし、その離れた部分である接続端子部11aと、接続端子部11aを切り離した後の正方形の一角11bに、上記のスルーホール23a、23bが位置するようにした。
【0105】
また、裏側の面の金属層も、図13に示すように、表側の面の金属層と同様に正方形の一部を切り離した形状とし、その離れた部分である接続端子部11cと、表側の面の金属層における接続端子部11aとが、対応する箇所に位置するようにした。そして、裏側の面の金属層では、図13に示すように、接続端子部11cと隣接する細分化された金属層の目11とが、伸び代を残した帯状導電ゾーン13で接続するように金属層を残し、接続端子部11cと、隣接する細分化された金属層の目11との間で導電接合する必要がない箇所については、非導電ゾーンとすべく、金属の帯17が不連続に残るようにした。
【0106】
次に、得られた回路基板の両面の金属層を無電解銀メッキにより銀で完全に覆った。その後、表側の面の銀表面およびスルーホールの内面に、スパッタリングによって、2000Åの厚みで銀膜を形成した。続いて、この銀膜の表面に、スパッタリングによって、200℃で500Åの厚みの酸化亜鉛膜を形成した。この回路基板の表側の面の銀・酸化亜鉛コートを下部電極層として、実験1と同様にして微結晶シリコンによる光電変換層を形成した。
【0107】
その後、実験1と同様にしてITO層を形成し、さらに櫛形電極を形成した。また、上記の櫛形電極形成と同時に、下部電極層の露出部におけるスルーホール内壁にも銀層を形成させて回路基板の表裏面を導電接合し、平板状の薄膜太陽電池No.3を得た。このとき、各工程では、実験1に準じてマスキング法を用い、必要な箇所にのみ目的の層が形成できるようにした。
【0108】
なお、図12に示すように、櫛形電極22は、接続端子部11aまで伸ばして、細分化された金属層の目11と接続端子部11aを導電接合した。ここで、図12は薄膜太陽電池No.3の表面を図示しているが、回路基板No.2の構成および櫛形電極22の理解を容易にするために、他の構成要素については図示していない。
【0109】
上記の薄膜太陽電池No.3について、実験1と同じ装置および金型を用いて、三次元形状成形を行い、三次元形状の薄膜太陽電池No.4を得た。なお、成形条件は、セラミックヒーターによる加熱温度を300℃とし、真空度を670Pa、加熱時間を10秒、成形時間を10秒とした。得られた薄膜太陽電池No.4の光電変換素子表面には、実験1と同様にして保護膜を設けた。
【0110】
実験3
12.5cm×12.5cmのサーモトロピック液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス社製「BIAC−BC(商品名)」、厚み:100μm)の表面に銀を直接スパッタリングして、片面にのみ銀の薄膜を形成した。次に実験1に準じて酸化亜鉛膜を形成し、これを下部電極層として、金属箔を貼り合わせることなく回路基板No.3とした。この回路基板No.3を用いて、金属層の細分化をすることなく、実験1の方法に準じて光電変換素子を形成し、平板状の薄膜太陽電池No.5を作製した。ただし、このときに形成する光電変換層は、微結晶シリコンではなく、アモルファスシリコンとし、これを常法により形成した。さらに、この薄膜太陽電池No.5から、実験2と同様の条件で三次元形状を有する薄膜太陽電池No.6を作製した。
【0111】
実験4
12.5cm×12.5cmのサーモトロピック液晶ポリマーフィルム(ジャパンゴアテックス社製「BIAC−BC(商品名)」、厚み:100μm)を用意し、その片面にのみ、実験1と同様にして銅箔を貼り付けて金属層を設けて裏面とし、この裏面の金属層の細分化を行わずに回路基板No.4とした。この回路基板No.4を用い、その表面に、実験3と同様の手法により表面にアモルファスシリコンによる光電変換層を有する細分化されていない光電変換素子を形成し、平板状の薄膜太陽電池No.7を作製した。さらに、この薄膜太陽電池No.7から、実験2と同様の条件で三次元形状を有する薄膜太陽電池No.8を作製した。
【0112】
<薄膜太陽電池の特性評価>
上記の各薄膜太陽電池に発光素子(LED、東芝社製「TLR−116A」)を接続し、晴れた日に、設置勾配を水平として薄膜太陽電池に太陽光を当てて、なお、LEDは、1/2ワット500Ωの抵抗器と直列に接続した。また、薄膜太陽電池の作動評価は、LEDの発光のあり・なしで行った。結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1から、細分化された金属層を有する回路基板No.1および回路基板No.2を用いて得られた薄膜太陽電池では、平板状(No.1およびNo.3)、三次元形状(No.2およびNo.4)共に良好な特性を有しており、回路基板No.1および回路基板No.2を用いることにより良好な三次元形状成形性が確保できることが確認できた。
【0115】
これに対し、細分化された金属層を有しない回路基板No.3を用いて得られた薄膜太陽電池では、平板状の場合(No.5)では発電が確認できたものの、三次元形状に成形すると(No.6)、光電変換素子面に亀裂が入り、太陽電池としての機能を果たせなかった。
【0116】
また、金属層が細分化されていない回路基板No.4を用いて得られた薄膜太陽電池でも、平板状の場合(No.7)では発電が確認できたものの、三次元形状に成形すると(No.8)、裏面の金属箔が十分に伸びずにしわが発生すると共に光電変換層が破損するといった成形不良が生じ、太陽電池としての機能を果たせなかった。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の回路基板(平板状)の一例を示す平面図である。
【図2】本発明の回路基板(平板状)の一例を示す平面拡大図である。
【図3】本発明の回路基板(平板状)の他の例示す平面拡大図である。
【図4】本発明の薄膜太陽電池の一例を示す縦断面図である。
【図5】本発明の薄膜太陽電池の他の例を示す縦断面図である。
【図6】本発明の薄膜太陽電池の他の例を示す縦断面図である。
【図7】三次元形状を有する本発明の薄膜太陽電池の一例を示す縦断面図である。
【図8】実験1で作製した薄膜太陽電池の表面を示す平面図である。
【図9】実験1で作製した薄膜太陽電池の裏面を示す平面図である。
【図10】実施例で使用した薄膜太陽電池成形用のポーラスアルミニウム製金型を示す斜視図である。
【図11】図10の金型の構造を示す図であり、(a)平面図、(b)および(c)側面図である。
【図12】実験2で作製した薄膜太陽電池の表面の一部を示す平面図である。
【図13】実験2で作製した薄膜太陽電池の裏面の一部を示す平面図である。
【符号の説明】
【0118】
10、10a、10b 回路基板
11 金属層の目
11a、11c 接続端子部
13 帯状導電ゾーン
14 非導電ゾーン
15 耐熱性熱可塑性樹脂フィルム
16 スリット
17 金属層を構成する金属による帯
20a、20b、20c、20d 薄膜太陽電池
21 光電変換素子
22 櫛形電極
23a、23b スルーホール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性熱可塑性樹脂基材の表面に金属層による回路パターンが形成されてなり、三次元形状に成形可能な回路基板であって、
少なくとも一部には、平面視で、細分化された金属層の、個々の目が碁盤目状に配列された箇所を有しており、
互いに隣接する金属層の目の間には、該金属層を構成する金属による帯状導電ゾーン、または各金属層の目同士を非導電とする非導電ゾーンが存在し、
上記帯状導電ゾーンは、互いに隣接する金属層の目同士を電気的に接続するために、上記耐熱性熱可塑性樹脂基材が伸びを伴う変形をした際の伸び代を残した形状の導電パターンを有するものであることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
上記帯状導電ゾーンは、平面視で曲折した形状の導電パターンを有するものである請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
上記非導電ゾーンには、上記金属層を構成する金属による帯が、不連続に複数存在している請求項1または2に記載の回路基板。
【請求項4】
上記非導電ゾーンが、露出した耐熱性熱可塑性樹脂基材表面により構成されている請求項1または2に記載の回路基板。
【請求項5】
上記細分化された金属層の個々の目は、平面視における面積が、回路基板の三次元形状への成形が予定される箇所の、平面視における総面積に対して、0.1〜25%である請求項1〜4のいずれかに記載の回路基板。
【請求項6】
上記耐熱性熱可塑性樹脂基材を構成する樹脂は、液晶ポリマーである請求項1〜5のいずれかに記載の回路基板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の回路基板に、三次元形状が付されてなることを特徴とする回路基板。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の回路基板における金属層表面または金属層形成面の反対面に光電変換素子が形成されており、且つ
細分化された金属層に対応して上記光電変換素子が分離形成されているものであることを特徴とする薄膜太陽電池。
【請求項9】
三次元形状を有する請求項8に記載の薄膜太陽電池。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の回路基板の金属層表面または金属層形成面の反対面に光電変換素子を形成するに際し、
細分化された金属層に対応して上記光電変換素子を分離形成することを特徴とする薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項11】
更に、真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法により、上記光電変換素子形成面の反対面を金型に密着させて三次元形状とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項1】
耐熱性熱可塑性樹脂基材の表面に金属層による回路パターンが形成されてなり、三次元形状に成形可能な回路基板であって、
少なくとも一部には、平面視で、細分化された金属層の、個々の目が碁盤目状に配列された箇所を有しており、
互いに隣接する金属層の目の間には、該金属層を構成する金属による帯状導電ゾーン、または各金属層の目同士を非導電とする非導電ゾーンが存在し、
上記帯状導電ゾーンは、互いに隣接する金属層の目同士を電気的に接続するために、上記耐熱性熱可塑性樹脂基材が伸びを伴う変形をした際の伸び代を残した形状の導電パターンを有するものであることを特徴とする回路基板。
【請求項2】
上記帯状導電ゾーンは、平面視で曲折した形状の導電パターンを有するものである請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
上記非導電ゾーンには、上記金属層を構成する金属による帯が、不連続に複数存在している請求項1または2に記載の回路基板。
【請求項4】
上記非導電ゾーンが、露出した耐熱性熱可塑性樹脂基材表面により構成されている請求項1または2に記載の回路基板。
【請求項5】
上記細分化された金属層の個々の目は、平面視における面積が、回路基板の三次元形状への成形が予定される箇所の、平面視における総面積に対して、0.1〜25%である請求項1〜4のいずれかに記載の回路基板。
【請求項6】
上記耐熱性熱可塑性樹脂基材を構成する樹脂は、液晶ポリマーである請求項1〜5のいずれかに記載の回路基板。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の回路基板に、三次元形状が付されてなることを特徴とする回路基板。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の回路基板における金属層表面または金属層形成面の反対面に光電変換素子が形成されており、且つ
細分化された金属層に対応して上記光電変換素子が分離形成されているものであることを特徴とする薄膜太陽電池。
【請求項9】
三次元形状を有する請求項8に記載の薄膜太陽電池。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれかに記載の回路基板の金属層表面または金属層形成面の反対面に光電変換素子を形成するに際し、
細分化された金属層に対応して上記光電変換素子を分離形成することを特徴とする薄膜太陽電池の製造方法。
【請求項11】
更に、真空成形法、圧空成形法または真空圧空成形法により、上記光電変換素子形成面の反対面を金型に密着させて三次元形状とする請求項10に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−81237(P2007−81237A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268936(P2005−268936)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000107387)ジャパンゴアテックス株式会社 (121)
【Fターム(参考)】
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