説明

回路基板装置

【課題】金属体による放熱性能を維持したまま発熱部品が両面実装できるようにした回路基板装置を提供すること。
【解決手段】回路基板15に面実装された発熱部品2、20の熱を、電極端子7、70から回路基板15の本体に埋め込まれた金属体30を介して放熱部材120に伝達させる方式の回路基板装置において、金属体20は、電極端子7、70に接合された部分の両側から夫々外部に延長させた形の拡張部30a、30bを備え、放熱部材120は、回路基板15に対する取付面に窪み部122を備え、この放熱部材120は、窪み部122以外の平面部分121により拡張部30a、30bに熱的に結合された状態で回路基板15に取り付けられ、このとき回路基板15の裏面で発熱部品2の裏側に、窪み部122により空間Sが形成され、裏面の発熱部品20が納まるようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に放熱部材を備えた回路基板装置に係り、特に、発熱の大きな部品を回路基板に面実装した回路基板装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板には、通常、電子デバイスや回路素子など各種の部品が搭載されるが、このとき搭載される部品の種類によっては動作に大きな発熱を伴い、放置すれば動作中に温度が上昇してしまう。
このことは、搭載される部品がトランジスタや発光ダイオードなど電力用電子デバイスの場合、特に著しく、従って、このような発熱の多い、いわゆる発熱部品の搭載に際しては、何らかの放熱手段を適用し、温度上昇を抑える必要がある。
そこで、従来から回路基板に放熱部材を取り付けて回路基板装置とし、放熱が促進されるようにしている。
【0003】
ところで、回路基板には、通常、面実装型の部品、いわゆる面実装部品が用いられるが、この場合、発熱部品の熱は、当該部品が搭載されている回路基板を介して放熱部材に伝導されるのが通例である。
しかして、この場合、回路基板の本体は電気絶縁材に限られるため、例えばダイヤモンドなどの特定の材質のものを除き、通常、あまり大きな熱伝導性は期待できない。
【0004】
そこで、或る従来技術によれば、配線基板の本体にスルーホールを設け、当該スルーホールにより、配線基板の厚み方向に高い熱伝導性を与えて効率的な放熱が得られるようにしている(例えば特許文献1参照)。
また、他の従来技術によれば、プリント回路の基板本体に金属体を埋め込む方法について提案している。そこで、以下、この従来技術について、図4により説明する。
【0005】
ここで、この図4において、(a)は、正面から見た図で、(b)は、A−A’線による断面図、(c)は、裏面から見た図、そして(d)は、放熱部材に組み合わされた状態を側面から見た図であり、これらの図において、1は回路基板、2は発熱部品、3は金属体、4は回路パターン、5はランドパターン、6、7は発熱部品の電極端子、8は回路パターン、9は半田層、10はグランドパターン、11は樹脂層、それに12は放熱部材である。
【0006】
ここで、まず、回路基板1は、例えばガラス−エポキシ板を基板本体とし、これに、図示のように、回路パターン4、8とランドパターン5、それにグランドパターン10などの導体層のパターンを設けたものである。
ここで、この回路基板については、プリント基板や配線基板と呼ばれる場合もある。
【0007】
そして、この回路基板1に発熱部品2が装着されるが、この従来技術では、発熱部品2がFETの場合のものであり、従って、電極端子6、7は、それぞれFETのソース、ドレイン、ゲートの各電極の端子となる。
このとき発熱部品の熱は、主に特定の電極から流れ出すので、当該電極の端子を発熱端子とすると、この従来技術の場合、電極端子7が発熱端子となる。
なお、この回路基板1には、発熱部品2以外にも他の部品が搭載され、他の回路パターンが形成される場合が一般的であるが、ここでは省略してある。
【0008】
次に、金属体3は、銅などの金属を電極端子7と略同じ平面形状にして回路基板1の本体に埋め込み、熱の伝導路としたもので、このため、例えば所望の平面形状のスルーホールを形成し、これに、スルーホールと同じ平面形状の銅板を嵌め込んだり、メッキして銅を充填したりした上で、表面を基板本体の配線パターンと面一(ツライチ)に仕上げたものである。
そして、この金属体3の一方の面に発熱端子である電極端子7が半田層9により接合され、各々のランドパターン5には電極端子6が半田層9により接合され、この結果、発熱部品2が回路基板1に装着(面実装)されることになる。
【0009】
ここで、グランドパターン10は、図示のように、回路基板1の裏面、つまり発熱部品2の装着面とは反対側の面に全面にわたって設けられた導体層で、その名の如く接地電位にされる。
なお、このグランドパターン10は、このとき回路基板1に形成された回路がマイクロストリップラインを構成している場合には必須であるが、そうでなければ必ずしも必要なものではない。
【0010】
そして、この回路基板1の裏面で発熱部品2が表面に装着されている部分の裏側に、図4(d)に示されているように、樹脂層11により放熱部材12が接着され、回路基板装置として完成されることになる。
このとき、樹脂層11には、例えばシリコン樹脂など、比較的熱伝導性のよい合成樹脂が用いられ、これにより、回路基板1と放熱部材11の結合に良好な熱伝導性能が与えられるようにする。
なお、シリコン樹脂の場合、その熱伝導率は約170W/(m・K)である。
【0011】
次に、放熱部材12には、例えばアルミニウムやアルミニウム合金など、従来から放熱用の部材として一般的な金属材料が用いられ、放熱フィンを備えた一体成型部材として作られている。
なお、放熱フィンは図示されていない。
【0012】
従って、この従来技術によれば、発熱部品2の熱が熱伝導性に優れた金属体3を介して放熱部材12に伝達されるので、効率的な放熱が得られ、通電動作中における発熱部品2の温度を適正な範囲に容易に收めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−210851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記従来技術は、発熱部品の両面実装について配慮がされておらず、実装密度の向上に問題があった。
従来技術においては、図4により説明したように、回路基板1の裏面、つまりプリント回路パターンが形成されている面とは反対側の面に放熱部材12が取り付けられている。
このため回路基板1を両面プリント回路基板にしても、その裏面で金属体10がある部分には発熱部品が搭載できず、従って、両面実装による実装密度の向上に問題が生じてしまうのである。
【0015】
本発明の目的は、金属体による放熱性能を維持したまま発熱部品が両面実装できるようにした回路基板装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的は、回路基板に面実装された部品の熱を、当該部品の電極端子から前記回路基板の本体に埋め込まれた金属体を介して放熱部材に伝達させる方式の回路基板装置において、前記金属体は、前記電極端子に接合された部分の両側から夫々外部に延長させた形の拡張部分を備え、前記放熱部材は、前記回路基板に対する取付面に窪み部分を備え、前記放熱部材は、前記窪み部分以外の平面部分により前記拡張部分に熱的に結合された状態で前記回路基板に取り付けられ、このとき前記回路基板の裏面で前記面実装された部品の裏側に、前記窪み部分により所望の広さの空間が形成されるようにして達成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、放熱部材に窪み部分を設けても、金属体による熱伝達に支障を来す虞がない。
従って、本発明によれば、回路基板の裏面に、放熱部材の窪み部分によるスペースが作り出せ、この結果、回路基板の両面に発熱部品が面実装でき、実装密度を上げ、回路基板の小型化が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による回路基板装置の第1の実施形態を示す分解説明図である。
【図2】本発明による回路基板装置の第2の実施形態を示す一部断面図である。
【図3】本発明による回路基板装置の第3の実施形態を示す一部断面図である。
【図4】従来技術による回路基板装置の一例を示す分解説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による回路基板装置について、図示の実施の形態により詳細に説明する。
ここで図1は、本発明の第1の実施形態で、これは、本発明を、両面基板構成の回路基板装置に適用した場合の一実施の形態であり、この図1において、(a)は、正面から見た図で、(b)は、A−A’線による断面図、(c)は、裏面から見た図、それに(d)は、放熱部材に組み合わされた状態を側面から見た図である。
【0020】
そして、これらの図において、15は両面回路基板、20は発熱部品、30は金属体、40は回路パターン、50はランドパターン、60、70は発熱部品の電極端子、80は回路パターン、100はグランドパターン、120は放熱部材、121は平面部分、それに122は窪み部分である。
なお、この図1の実施形態でも、発熱部品2、回路パターン4、ランドパターン5、発熱部品2の電極端子6、7、回路パターン8、半田層9、それに樹脂層11は、図4の従来技術の場合と同じである。
【0021】
ここで、まず、両面回路基板15は、例えばガラス−エポキシ板を基板本体とし、その一方の面(以下、表面という)に回路パターン4、8とランドパターン5などの導体層(銅箔層)パターンが設けられ、他方の面(同、裏面という)は回路パターン40、80とランドパターン50などの導体層パターンが設けられたものであるが、ここで、この実施形態の場合、基板本体が内層としてグランドパターン100を備えたもので構成されている。
【0022】
そして、この両面回路基板15の表面に発熱部品2が、裏面には発熱部品20が夫々装着されるが、ここで、この実施形態でも、発熱部品2、20が何れもFETの場合であり、従って、電極端子6、60、7、70が夫々のFETにおけるソース、ドレイン、ゲートの各電極の端子となり、このとき、電極端子7、70が発熱端子になっている。
なお、ここでは省略してあるが、この実施形態においても、両面回路基板15には、発熱部品2、20以外にも他の部品が搭載され、他の回路パターンが形成される場合があるのは、従来技術の場合と同じである。
【0023】
次に、金属体30は、銅を、両面回路基板15の本体に埋め込んだもので、これも従来技術と同様、例えば所望の平面形状のスルーホールを銅により形成し、これに、スルーホールと同じ平面形状の銅板を嵌め込んだり、銅をメッキして充填したりした上で、表面を基板本体の配線パターンと面一(ツライチ)に仕上げたもので、熱伝導体として機能するが、しかし、この金属体30の場合、従来技術における金属体3と比較した場合、その平面形状に特徴がある。
【0024】
ここで、まず、従来技術の場合、その金属体3は、図4から明らかなように、電極端子7の平面形状と略同じ平面形状をしている。
しかして、この実施形態の場合、その金属体30は、発熱部品2の電極端子7に接触する部分の平面形状と略同じ平面形状をした部分があるのは勿論であるが、それだけではなく、図1に示されているように、更に、その両側から外部にはみ出して拡張された部分、すなわち拡張部分30a、30bが設けてあり、これが、この実施形態の特徴の一である。
【0025】
そして、金属体30の一方の面(表面)には、図1(a)、(b)に示すように、発熱部品2の電極端子7を半田層9により接合させ、他方の面(裏面)には、図1(b)、(c)に示すように、発熱部品20の電極端子70を半田層9により接合させる。このときランドパターン5には電極端子6を、そして、ランドパターン50には電極端子60を、夫々半田層9により接合させる。
【0026】
この結果、両面回路基板15の表面には発熱部品2が、裏面には発熱部品20が夫々面装着される。
そこで、この両面回路基板15の裏面に放熱部材120を取り付ければ回路基板装置として完成されることになるが、しかし、この実施形態の場合、両面回路基板15の裏面には発熱部品20が装着されている。
そこで、この実施形態では、放熱部材120に窪み部122を設け、これにより、以下に説明するように、発熱部品20があっても、支障なく放熱部材120が取り付けられるようにしている。
【0027】
ここで、放熱部材120は、通常、放熱フィンを備えた一体成型部材として、例えばアルミニウムやアルミニウム合金など、従来から放熱用の部材として一般的な金属材料を用いて作られている。
しかして、この点は、従来技術の場合と同じで、放熱フィンが図示されていない点でも同じであり、従って、この放熱部材120が、従来技術の放熱部材12と異なっている点は、窪み部122が形成されている点にある。
【0028】
そして、この窪み部122は、図示のように、平面部分121を残した形で、放熱部材120の両面回路基板15が取り付けられる方の面に形成されている。
従って、この放熱部材120は、両面回路基板15の裏面において、樹脂層11を接着材として、平面部分121により金属体30の拡張部分30a、30bに取り付けられることになる。
このとき窪み部122は、特に図1(d)から明らかなように、放熱部材120が両面回路基板15に取り付けられたとき、発熱部品20が余裕を持って収容可能な大きさの空間Sが当該放熱部材120の中に形成されるように機能する。
【0029】
そこで、両面回路基板15の裏面に放熱部材120を取り付け、金属体30の拡張部分30a、30bに放熱部材120が結合されるようにしたとき、両面回路基板15の裏面にある発熱部品20は、窪み部122の中に余裕をもって納まることになり、従って、取り付けには何の支障もない。
【0030】
このとき、樹脂層11には、例えばシリコン樹脂など、比較的熱伝導性のよい合成樹脂が用いられ、これにより金属体30の拡張部分30a、30bと放熱部材120の間に充分な熱的結合が与えられるようにしてある。
ここで、シリコン樹脂の場合、その熱伝導率は約170W/(m・K)であることは前述の通りである。
【0031】
ここで、この実施形態においては、発熱部品2と発熱部品20の熱は、そのまま熱伝導性に優れた金属体30の拡張部分30a、30bを介して放熱部材120に伝達されるので、効率的な放熱が得られ、通電動作中における発熱部品2、20の温度を適正な範囲に容易に收めることができる。
【0032】
そして、この実施形態の場合、金属体30には拡張部分30a、30bが設けられ、放熱部材120には窪み部122が設けられているので、金属体30による優れた熱伝導性を保持したまま発熱部品の両面実装に対応することができ、従って、この実施形態によれば、実装密度の向上が容易に図れることになる。
【0033】
次に、本発明の他の実施形態について説明すると、まず、図2は、両面回路基板15に対する放熱部材120の取り付けにネジを用いた場合の一実施の形態で、この場合、放熱部材120の平面部分121に雌ねじ穴を設け、これに対応して両面回路基板15にある金属体30の拡張部分30a、30bに通し孔を設けておき、ビス13を用いて両面回路基板15と放熱部材120を相互に締め付けて固定するのである。
【0034】
この図2の実施形態の場合、金属体30の拡張部分30a、30bに対する放熱部材120の接合が金属同士の直接的な接触により与えられるので、発熱部品2、20から放熱部材120までの熱伝達が更に効率化され、従って、この実施形態によれば、放熱効果のより一層の向上が図れ、更に発熱量の多い発熱部品の搭載にも容易に対応することができる。
【0035】
次に、図3は、発熱部品20と放熱部材120の間に熱伝導体を設けた場合の一実施の形態で、図において、16は樹脂部材で、例えば上記した熱伝導性が高いシリコン樹脂の板材で作られ、発熱部品20と放熱部材120の窪み部122の間に介在させ、発熱部品20の熱が樹脂部材16を介して直接、放熱部材120に伝達されるようにしたものである。
【0036】
この図3の実施形態の場合、発熱部品20から放熱部材120に至る熱伝達経路が、樹脂部材16によっても与えられるので、発熱部品20として更に発熱量の多いものでも使用できるようになり、従って、この実施形態によれば、回路基板に搭載可能な部品の多様化にも容易に対応することができる。
【0037】
ところで、以上に説明した実施形態では、両面回路基板として、何れも内層にグランドパターンを備えた場合を例に挙げているが、本発明はグランドパターンを持たない両面回路基板により実施してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1 回路基板
2 発熱部品(FETなど通電動作中発熱する部品)
3 金属体(熱伝導用の金属部材)
4 回路パターン
5 ランドパターン
6、7 電極端子(発熱部品の電極端子)
8 回路パターン
9 半田層
10 グランドパターン
11 樹脂層
12 放熱部材
13 ビス
15 両面回路基板
16 樹脂部材(熱伝導用の樹脂部材)
20 発熱部品(FETなど通電動作中発熱する部品)
30 金属体(熱伝導用の金属部材)
30a、30b 拡張部分(金属体30の両側から拡張された部分)
40 回路パターン
50 ランドパターン
60、70 電極端子(発熱部品の電極端子)
80 回路パターン
100 グランドパターン(両面回路基板15の内層)
120 放熱部材
121 平面部分(放熱部材120の平面部分)
122 窪み部(放熱部材120の窪み部分)
S 空間(窪み部122により作り出された空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に面実装された部品の熱を、当該部品の電極端子から前記回路基板の本体に埋め込まれた金属体を介して放熱部材に伝達させる方式の回路基板装置において、
前記金属体は、前記電極端子に接合された部分の両側から夫々外部に延長させた形の拡張部分を備え、前記放熱部材は、前記回路基板に対する取付面に窪み部分を備え、
前記放熱部材は、前記窪み部分以外の平面部分により前記拡張部分に熱的に結合された状態で前記回路基板に取り付けられ、このとき前記回路基板の裏面で前記面実装された部品の裏側に、前記窪み部分により所望の広さの空間が形成されることを特徴とする回路基板装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−49307(P2012−49307A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189573(P2010−189573)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】