説明

回路接続材料

【課題】支持基材上に設けられたときに支持基材からの脱落が抑制され、同時に、回路部材同士を接続した接続体において十分な接着力及び接続信頼性を発現する回路接続材料を提供すること。
【解決手段】光又は熱によって硬化する硬化性樹脂と、窒素原子を有しないモノマー単位のみから構成されるアクリル樹脂と、を含有する、回路電極を有する回路部材同士を接続するために用いられる回路接続材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路電極を有する回路部材同士を接続するために用いられる回路接続材料に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や液晶表示素子用の接着剤(回路接続材料)としては、接着性に優れ、かつ高い信頼性を示すエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられている(例えば、特許文献1参照)。上記接着剤の構成成分としては、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂と反応性を有するフェノール樹脂等の硬化剤、エポキシ樹脂と硬化剤との反応を促進する熱潜在性触媒が一般に用いられている。熱潜在性触媒は、接着剤の硬化温度及び硬化速度を決定する重要な因子となっており、室温での貯蔵安定性及び加熱時の硬化速度の観点から種々の化合物が用いられている。
【0003】
ところで、アニオン重合により硬化するエポキシ樹脂よりも低温速硬化性を得るために、ラジカル硬化系の接着剤の採用が検討され、実用化されている(特許文献2)。しかしながら、ラジカル硬化系の接着剤は、その接着性が被着体の表面状態に左右されやすいという欠点を有している。そこで、エポキシ樹脂を用いた低温速硬化の硬化系について検討され、カチオン重合により硬化するエポキシ樹脂を用いた回路接続材料が実用化されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−113480号公報
【特許文献2】特開2002−203427号公報
【特許文献3】特開平7−90237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の回路接続材料は、支持基材上に設けられたときに、回路接続材料を支持基材から被着体である回路部材に転写する工程、すなわち仮圧着工程の前の段階で、回路接続材料が支持基材から脱落するという問題を有していた。特に、カチオン重合により硬化するエポキシ樹脂を用いた回路接続材料の場合、回路接続材料と支持基材との密着力が不足して、この脱落の問題が発生し易い傾向にあった。支持基材表面の剥離力を大きくすることにより、脱落はある程度抑制され得るが、そうすると回路接続材料の転写自体が困難になる傾向がある。
【0006】
そして、脱落の発生が抑制されるとともに、回路部材同士を接続した接続体の接着力及び接続信頼性を発現する回路接続材料が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、支持基材上に設けられたときに支持基材からの脱落が抑制され、同時に、回路部材同士を接続した接続体において十分な接着力及び接続信頼性を発現する回路接続材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、回路電極を有する回路部材同士を接続するために用いられる回路接続材料に関する。本発明に係る回路接続材料は、光又は熱によって硬化する硬化性樹脂と、窒素原子を有しないモノマー単位のみから構成されるアクリル樹脂とを含有する接着剤組成物を含む。
【0009】
上記本発明に係る回路接続材料によれば、支持基材上に設けられたときに支持基材からの脱落が抑制され、同時に、回路部材同士を接続した接続体において十分な接着力及び接続信頼性を発現することができる。
【0010】
接着力及び接続信頼性向上の観点から、硬化性樹脂は、エポキシ樹脂と、加熱又は光によって活性化されてエポキシ樹脂を硬化させる潜在性硬化剤とを含むことが好ましい。
【0011】
上記潜在性硬化剤は、カチオン重合によりエポキシ樹脂を硬化させるものであることが好ましい。カチオン重合系のエポキシ樹脂は、低温速硬化性の点では有利であるものの、支持基材からの脱落が生じ易いことから、本発明の採用が特に有用である。さらには、アクリル樹脂が窒素原子を有しないモノマー単位のみから構成されることから、エポキシ樹脂のカチオン重合が阻害されることがなく、十分に高い接着力及び接続信頼性がより容易に発現される。
【0012】
上記アクリル樹脂は、好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位と、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーに由来するモノマー単位とから構成される。
【0013】
上記のようなモノマー単位から構成されるアクリル樹脂は、窒素原子を含有しなくとも、凝集力が高いために高い接着強度が得られる。また、アクリル樹脂がエポキシ樹脂と反応するため、高温高湿下での接続抵抗の上昇が抑制され、より高い接続信頼性が達成される。
【0014】
本発明に係る回路接続材料は、導電性粒子を更に含むことが好ましい。これにより、同一回路部材の回路電極同士の絶縁状態を維持しつつ、回路部材同士をより安定して電気的に接続できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、支持基材上に設けられたときに支持基材からの脱落が抑制され、同時に、回路部材同士を接続した接続体において十分な接着力及び接続信頼性を発現する回路接続材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】フィルム状の回路接続材料の一実施形態を示す断面図である。
【図2】回路部材の接続体の一実施形態を示す断面図である。
【図3】回路部材の接続体の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は、回路接続材料及びこれを備える接着シートの一実施形態を示す断面図である。図1に示す接着シート1は、支持基材8と、支持基材8上に設けられたフィルム状の回路接続材料7とを備える。
【0019】
回路接続材料7は、絶縁性の接着剤組成物3と、接着剤組成物3内に分散した導電性粒子5とを含む。接着剤組成物3は、光又は熱によって硬化する硬化性樹脂と、アクリル樹脂とを含有する。
【0020】
硬化性樹脂は、好ましくは、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂をカチオン重合により硬化させる潜在性硬化剤とを含む。
【0021】
エポキシ樹脂としては、2個以上のオキシラン基を有する各種のエポキシ化合物が用いられる。例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールA、F又はD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂が代表的である。その他、グリシジルエステル、脂環式、複素環式等のエポキシ樹脂がある。これらは単独又は2種以上混合して用いることが可能である。これらエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品であることが、エレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0022】
上記エポキシ樹脂の中でも、分子量の異なるグレードが広く入手可能で、接着性や反応性等を任意に設定できることから、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。中でもビスフェノールF型エポキシ樹脂は、粘度が低いことからフェノキシ樹脂との組み合わせで流動性を広範囲に設定できることや、液状であり粘着性も得やすいことから特に好ましい。また、1分子内に3個以上のオキシラン基を有するいわゆる多官能エポキシ樹脂を用いて、硬化後の架橋密度を高めて耐熱性の向上を図ることもできる。溶剤による接続部の補修を容易にするために、多官能性エポキシ樹脂の割合は、接着剤組成物3の全体量を基準として30質量%以下であることが好ましい。
【0023】
カチオン重合によりエポキシ樹脂を硬化させる潜在性硬化剤は、例えば、芳香族ジアゾニウム塩及び芳香族スルホニウム塩のような感光性オニウム塩から選択される。これら感光性オニウム塩は、エネルギー線照射により活性化してエポキシ樹脂を硬化させる。潜在性硬化剤は、脂肪族スルホニウム塩であってもよい。脂肪族スルホニウム塩は、一般に、熱によって活性化されてエポキシ樹脂を硬化させる。熱により活性化されるスルホニウム塩は、活性化温度が60℃以上でかつ硬化反応の60%が終了する温度が160℃以下であり、低温での反応性に優れながら、ポットライフが長く好適に用いられる。特に、下記式(I)で示されるスルホニウム塩が好適に用いられる。
【0024】
【化1】

【0025】
式(I)中、Rは水素原子又は電子吸引性の基を示し、R及びRはそれぞれ独立に電子供与性の基を示し、Yは、非求核性陰イオンを示す。
【0026】
カチオン重合の開始剤として推定されるベンジルカチオンを効率的に発生させるために、Rは、水素原子、ニトロソ基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、トリアルキルアンモニウム基又はフルオロメチル基であることが好ましい。R2及びR3は、アミノ基、水酸基、アルキル基(メチル基等)、又はアルキルカルボニルオキシ基(アセトキシ基等)であることが好ましい。Y-は、例えば、ヘキサフルオロアルセネート(AsF-)、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)又はテトラフルオロボレート(BF)である。式(I)のスルホニウム塩の具体例としては、p−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウム塩がある。
【0027】
潜在性硬化剤は、接着剤組成物3の全体量100重量部に対して0.05〜10重量部であることが好ましく、1.5〜5重量部であることがより好ましい。潜在性硬化剤の配合量が多いと、電食の原因となりやすく、また、硬化反応が過剰に進行する傾向がある。
【0028】
接着剤組成物3に含まれるアクリル樹脂は、窒素原子を有しない1種又は2種以上のモノマーのみを重合させて得られる重合体である。
【0029】
このアクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下である。アクリル樹脂のTgがある程度低いと、硬化前の回路接続材料に適正なレベルのタックが付与される。タックが適正であると回路接続時の位置合わせが容易であり、作業性が向上するので好ましい。
【0030】
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は好ましくは10万以上、より好ましくは30万〜120万、さらに好ましくは40万〜100万である。アクリル樹脂の重量平均分子量が小さいと接着剤組成物の凝集力が低下して、高い接着力が得にくくなる傾向がある。アクリル樹脂のTgが高すぎると、アクリル樹脂の他の成分との相溶性が低下したり、アクリル樹脂を取り扱い難くなったりする傾向がある。
【0031】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー法(GPC)により標準ポリスチレンによる検量線を用いて求められる値を意味する。GPCは、例えば以下の条件に従って測定される。
GPC条件
使用機器:日立L−6000型((株)日立製作所)
カラム:ゲルパックGL−R420+ゲルパックGL−R430+ゲルパックGL−R440(計3本)(日立化成工業(株)製商品名)
溶離液:テトラヒドロフラン
測定温度:40℃
流量:1.75mL/min.
検出器:L−3300RI
【0032】
接着剤組成物3の全体量を基準として、アクリル樹脂の割合は好ましくは2質量%以上、より好ましくは3〜50質量%、さらに好ましくは5〜40質量%である。
【0033】
上記アクリル樹脂は、アルキル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位を含む。「アルキル(メタ)アクリレート」はアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートを意味する。
【0034】
アルキルアクリレートは、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート及びオクチルアクリレートから選ばれる。アルキルメタクリレートは、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート及びプロピルメタクリレートから選ばれる。
【0035】
アクリル樹脂は、アルキルメタクリレートに由来するモノマー単位を含むことが好ましい。アルキルメタクリレートが含まれることにより、アクリル樹脂の凝集力を上げることができ、それを用いた回路接続材料の接着力を更に向上させることができる。アルキルメタクリレートの比率としては、アクリル樹脂全体を基準として10〜50質量%が好ましく、15〜45質量%がより好ましい。アルキルメタクリレートの比率が10質量%未満であると、凝集力が低下する傾向があり、50質量%より大きいと、アクリル樹脂自体がゲル化して、他の成分との相溶性が低下する傾向がある。
【0036】
アクリル樹脂は、上記アルキル(メタ)アクリレートと、エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーとのみを共重合させた共重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルはアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを、(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタクリル酸を、それぞれ意味する。
【0037】
アクリル樹脂中にカルボキシル基やエポキシ基が存在すると、アクリル樹脂の他の成分との相溶性が向上する。アクリル樹脂中にヒドロキシ基が存在する回路面との接着性が更に向上する。
【0038】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、グリシジルアクリレート及びグリシジルメタアクリレートがある。ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、ヒドロキシエチルアクリレートがある。
【0039】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルから選ばれるモノマーの割合は、アクリル樹脂全体を基準として0.2質量%以上であることが好ましい。この割合は0.5〜7重量%であることがより好ましく、0.7〜5質量%であることがさらに好ましい。この割合が小さいと、回路面への吸着性が低下して、硬化後に汎用溶剤による除去が困難になる傾向があり、大きすぎると回路接続材料の保存安定性が低下する傾向がある。
【0040】
アクリル樹脂は、上記のようなモノマー単位に加えて、スチレンに由来するモノマー単位を含んでいてもよい。
【0041】
回路接続材料7が導電性粒子5を含んでいることにより、安定して回路接続することが可能となる。導電性粒子5が含まれていなくとも、回路電極同士の直接接触により回路部材を接続することが可能である。
【0042】
導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属の粒子、及びカーボン粒子等が挙げられる。ポットライフを十分に長くするため、導電性粒子は、Au、Ag、白金属の金属を含むことが好ましく、Auを含むことがより好ましい。
【0043】
導電性粒子は、Ni等の遷移金属、非導電性のガラス、セラミック又はプラスチックから形成された核としての粒子と、該粒子の表面を被覆するAu等の貴金属からなる被覆層とを有していることが好ましい。このような貴金属の被覆層を有する導電性粒子は、回路接続材料を加熱及び加圧したときに変形することにより回路電極との接触面積が増加して、信頼性がより向上する。貴金属の被覆層の厚みは、良好な接続抵抗を得るためには、100オングストローム以上であることが好ましい。更に、核がNi等の遷移金属の粒子である場合には、被覆層の厚みは300オングストローム以上であることがより好ましい。
【0044】
導電性粒子の最表面の金属層がNiの場合、径が50オングストローム以上Ni突起を有することが好ましい。Ni突起があることで、IZOのような平滑性の高い導体回路に対しても、樹脂を排除し、接触を得やすい。また、不導体で覆われた金属回路に対しても、不導体を排除し、内側の金属と直接接触しやすい。その結果、信頼性が向上する。
【0045】
導電性粒子の量は、接着剤組成物100体積部に対して、0.1〜30体積部であることが好ましい。過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止するためには、0.1〜10体積部とするのがより好ましい。
【0046】
回路接続材料(接着剤組成物3)は、熱可塑性樹脂を更に含んでいてもよい。熱可塑性樹脂は、フィルム形成成分として機能し得る。この熱可塑性樹脂は、例えば、ポリビニルアセタール、フェノキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ポリオレフィン、及びエチレン系アイオノマーから選ばれる。フィルム形成性や溶融時の流動性、樹脂相互の溶解性を考慮して、これらの熱可塑性樹脂の重量平均分子量は10000以上80000以下が好ましい。熱可塑性樹脂が水酸基(OH基)及びカルボキシル基(COOH基)などの極性基を有すると、エポキシ樹脂との相溶性が向上し均一な外観や特性を有するフィルムが得られ、かつ、エポキシ基との反応性を有するので好ましい。
【0047】
回路接続材料は、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤等を含有することもできる。カップリング剤としては、ビニル基、アクリル基又はエポキシ基を有する化合物が、接着性の向上の点から好ましい。
【0048】
支持基材8としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)が用いられる。支持基材8の回路接続材料7と密着する面は離型処理が施されていてもよい。支持基材8の回路接続材料7と密着する面は、1000〜2000N/25mmの剥離力を有していることが好ましい。剥離力が係る範囲内にあることにより、接着剤組成物3がカチオン重合系のエポキシ樹脂組成物である場合であっても、適度な転写性を維持しながら、回路接続材料の脱落がより確実に防止される。剥離力の測定方法に関しては後述の実施例において詳細に説明される。
【0049】
図2は、回路部材の接続体の一実施形態を示す断面図である。図2に示す接続体101は、第一の基板11及びこれの主面上に接着剤層12を介して形成された第一の回路電極13を有する第一の回路部材10と、第二の基板21及びこれの主面上に形成された第二の回路電極23を有する第二の回路部材20と、第一の回路部材20と第二の回路部材との間に介在しこれらを接続する回路接続部材1aとを備える。回路接続部材1aは、上述の回路接続材料が硬化した硬化物からなる。接続体101においては、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが対峙するとともに導電性粒子5を介して電気的に接続されている。
【0050】
第一の基板11は、例えば、ポリエステルテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂及びポリイミド樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む樹脂フィルムである。
【0051】
回路電極13は、電極として機能し得る程度の導電性を有する材料(好ましくは金、銀、錫、白金族の金属及びインジウム−錫酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種)で形成されている。複数の回路電極13が、接着剤層12を介して第一の基板11の主面上に接着されている。接着剤層12は、回路部材において通常用いられる接着剤等で形成される。
【0052】
第二の基板21はガラス基板であり、第二の基板21の主面上には、複数の第二の回路電極23が形成されている。
【0053】
接続体101は、例えば、第一の回路部材10と、上記のフィルム状の回路接続材料7と、第二の回路部材20とを、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが対峙するようにこの順に積層した積層体を加熱及び加圧することにより、第一の回路電極13と第二の回路電極23とが電気的に接続されるように第一の回路部材10と第二の回路部材20とを接続する方法によって、得られる。積層体を加熱及び加圧するとともに、または過熱及び加圧するのに代えて、光照射してもよい。加熱及び加圧は、加熱加圧ヘッドを用いて行うことができる。
【0054】
この方法においては、まず、支持基材8に形成されているフィルム状の回路接続材料7を第二の回路部材20上に貼り合わせた状態で加熱及び加圧して回路接続材料1を仮圧着し、支持基材8を剥離してから、第一の回路部材10を、回路電極を位置合わせしながら載せて、積層体を準備することができる。
【0055】
上記積層体を加熱及び加圧する条件は、回路接続材料中の接着剤組成物の硬化性等に応じて、回路接続材料が硬化して十分な接着強度が得られるように、適宜調整される。回路部材は、接続時の加熱による揮発成分による接続への影響を抑制するために、回路接続材料による接続工程の前に予め加熱処理することが好ましい。
【0056】
図3は、回路部材の接続体の他の実施形態を示す断面図である。図3に接続体102は、第一の回路部材10において、第一の基板11の主面上に第一の回路電極13が直接形成されている他は、回路部材の接続構造101と同様のものである。
【0057】
本実施形態に係る回路接続材料によって接続される回路部材としては、半導体チップ、抵抗体チップ及びコンデンサチップのようなチップ部品、プリント基板等の基板がある。回路部材には回路電極(接続端子)が通常は多数(場合によっては単数でもよい)設けられている。
【0058】
より良好な電気的接続を得るためには、回路電極(接続端子)の少なくとも一方の表面が、金、銀、錫及び白金族から選ばれる少なくとも1種の金属から形成されることが好ましい。回路電極は、銅/ニッケル/金のように複数の金属を組み合わせた多層構成を有していてもよい。回路電極は、銅箔及び銅箔上に形成された金又は錫からなる表面層から構成されていてもよい。
【0059】
回路部材の基板は、半導体チップ類のシリコーン、ガリウム・ヒ素等、ガラス、セラミックス、ガラス・エポキシ複合体、プラスチック等の絶縁基板であり得る。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0061】
アクリル樹脂の調製
ブチルアクリレート(BA)、エチルアクリレート(EA)、メチルメタアクリレート(MMA)、エチルメタアクリレート(EMA)及びアクリロニトリル(AN)を主成分のモノマーとして用い、アクリル酸(AA)、メタアクリル酸(MAA)、グリシジルメタアクリレート(GMA)及びヒドロキシルエチルメタアクリレート(HEMA)を官能基含有モノマーして用いた。各モノマーを表1に示す質量比でパール重合により共重合し、アクリル樹脂を生成させた。アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特公昭45−22221号公報に示される方法により主成分のモノマーの質量比から算出した。また、アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)をGPC法による標準ポリスチレン換算値として測定した。アクリロニトリルを用いずに調整したアクリル樹脂A〜Dは、窒素原子を有しないモノマー単位のみから構成される。得られた各アクリル樹脂をメチルエチルケトンに溶解し、固形分10質量%のアクリル樹脂溶液を得た。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例1
フィルム形成成分であるビスフェノールA型フェノキシ樹脂(PKHC、平均分子量45000、インケム・コーポレーション製)を、トルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶媒に溶解して、40質量%の溶液を調製した。得られた溶液100重量部(不揮発分:40重量部)と、上述のアクリル樹脂Aの10質量%溶液200重量部(不揮発分:20重量部)と、プロピレンオキサイド変成エポキシ樹脂(エポキシ当量330〜390)30重量部と、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量175〜195)10重量部と、導電性粒子3重量部とを配合し、更に、シランカップリング剤であるγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(SH6040、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)を2重量部と、潜在性硬化剤であるp−アセトキシフェニルベンジルメチルスルホニウム塩(非求核性陰イオン:ヘキサフルオロアンチモネート)3重量部とを配合し、これらを均一に混合して、塗布液を得た。導電粒子としては、平均粒径3μmのポリスチレン球状粒子の表面に0.1μmのNi層とAu層をこの順に形成させたものを用いた。得られた塗布液を、アプリケータを用いて支持基材であるPETフィルム上に塗布した。塗布された塗布液を、70℃、10分の熱風乾燥により乾燥させて、厚み20μmの接着剤層を回路接続材料として形成させた。
【0064】
上記PETフィルムは1000〜2000N/25mmの剥離力を有していた。PETフィルムの剥離力は以下に示す1)〜3)の手順により測定した。
1)10cm×20cmの大きさのPETフィルムを準備する。
2)上記PETフィルムの測定面に日東電工(製)31B粘着テープ(両面テープ)を貼り付け、重さ2kg、幅45mmの圧着ローラーで1往復荷重をかける。
3)25mm幅×150mmの試験片を切り出し、切り出された試験片の31B粘着テープのテープ面をアルミ板に貼り付けて固定する。
4)アルミ板を引張り試験機に固定し、剥離速度300mm/分で、31B粘着テープを180°の方向に剥離して、そのときの剥離力を測定する。3検体の平均値をPETの剥離力とする。
【0065】
実施例2
実施例1と同様のビスフェノールA型フェノキシ樹脂の溶液50質量部(不揮発分:20質量部)と、上述のアクリル樹脂Aの10質量%溶液400質量部(不揮発分:40質量部)とを配合した。これ以外は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0066】
実施例3
実施例1と同様のビスフェノールA型フェノキシ樹脂の溶液100質量部(不揮発分:40質量部)と、上述のアクリル樹脂Bの10質量%溶液200質量部(不揮発分:20質量部)とを配合した。これ以外は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0067】
実施例4
実施例1と同様のビスフェノールA型フェノキシ樹脂の溶液50質量部(不揮発分:20質量部)と、上述のアクリル樹脂Bの10質量%溶液400質量部(不揮発分:40質量部)とを配合した。これ以外は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0068】
実施例5
実施例1と同様のビスフェノールA型フェノキシ樹脂の溶液75質量部(不揮発分:30質量部)と、上述のアクリル樹脂Cの10質量%溶液300質量部(不揮発分:30質量部)とを配合した。これ以外は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0069】
実施例6
実施例1と同様のビスフェノールA型フェノキシ樹脂の溶液75質量部(不揮発分:30質量部)と、上述のアクリル樹脂Dの10質量%溶液300質量部(不揮発分:30質量部)とを配合した。これ以外は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0070】
比較例1
実施例1と同様のビスフェノールA型フェノキシ樹脂の溶液100質量部(不揮発分:40質量部)と、アクリル樹脂に代わる成分としてメチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体のコアシェル型架橋ゴム(平均粒径0.2μm、EXL−2655、ローム・アンド・ハース製)20質量部とを配合した。これ以外は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0071】
比較例2
実施例1と同様のビスフェノールA型フェノキシ樹脂の溶液75質量部(不揮発分:30質量部)と、上述のアクリル樹脂Eの10質量%溶液300重量部(不揮発分:30質量部)とを配合した。これ以外は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0072】
比較例3
実施例1と同様のビスフェノールA型フェノキシ樹脂の溶液75質量部(不揮発分:30質量部)と、上述のアクリル樹脂Fの10質量%溶液300質量部(不揮発分:30質量部)とを配合した。これ以外は実施例1と同様にして、回路接続材料を得た。
【0073】
実施例1〜6及び比較例1〜3の回路接続材料の組成を質量部(不揮発分換算)で表2に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
PETフィルムと回路接続材料の密着力の測定
スライドガラスなどの平面板に貼り付けた両面テープ(日立化成ポリマー製、ハイボン11−583)に、PETフィルム上の回路接続材料を貼り付けた。次いで、PETフィルムを、剥離速度50mm/minで90°の角度に剥離した。山谷の繰り返しを示す剥離プロファイルの中で、谷の位置の値の平均値を算出し、これを基材密着力とした。
回路接続(COF)
【0076】
厚み38μmのポリイミドフィルム及び該ポリイミドフィルム上に直接形成された銅回路(ライン幅25μm、ピッチ50μm、厚み8μm)を有するフレキシブル回路板(COF−TEG)と、厚み0.7mmのガラス板及び該ガラス板全面に酸化インジウム(ITO)薄膜が形成された基板とを、上述の各回路接続材料を用いて170℃、3MPa、5秒の条件で幅2.0mmにわたって接続して、接続体を得た。この際、ITO薄膜に回路接続材料を貼り付け、80℃、1MPaで2秒間加熱及び加圧して仮圧着し、その後PETフィルムを剥離してから、上記基板とCOF−TEGを接続した。
【0077】
接着力の測定
上記接続体の接着強度を、90°剥離、剥離速度50mm/minの条件で測定した。
【0078】
接続抵抗の測定(接続信頼性)
上記接続体における、COF−TEGの隣接回路間の抵抗値を、マルチメーターを用いて測定した。測定は、初期と、85℃/85%RHの高温高湿槽中で500時間処理した後に行った。150点の測定値を測定し、それらからx+3σ(x:平均値、σ:標準偏差)を求め、これをサンプルの接続抵抗とした。この値が、初期で2Ω以下、かつ、初期抵抗に対する高温高湿試験後の上昇倍率が2倍以内であるとき、そのサンプルは良好なレベルにあると判断した。
【0079】
【表3】

【0080】
実施例1〜6および比較例2、3は、100mN/cmを超える基材密着力を示し、支持基材(PETフィルム)からの脱落は発生しなかった。比較例1は、基材密着力は30mN/cmと低く、支持基材からの脱落がしばしば発生した。比較例1以外の回路接続材料はアクリル樹脂を含有しており、これが基材密着力向上に有効に働いたと考えられる。
【0081】
すべての実施例および比較例1の接続体は、6N/cm以上の良好な接着力を示した。一方、比較例2、3の接続体は、約2N/cmの弱い接着力を示した。比較例2、3は、窒素含有のアクリル樹脂を用いた回路接続材料であり、カチオン重合の硬化阻害により接着能が充分に発現されなかったと考えられる。
【0082】
すべての実施例および比較例1は、初期及び高温高湿試験後に良好な接続抵抗を示した。一方、比較例2、3は、初期から10Ωを超える接続抵抗を示した。比較例2、3は、窒素含有のアクリル樹脂を用いた回路接続材料であり、カチオン重合の硬化阻害により硬化収縮力が充分に発現されなかったと考えられる。
【符号の説明】
【0083】
1…接着シート、1a…回路接続部材、5…導電性粒子、7…回路接続材料、8…支持基材、10…第一の回路部材、11…第一の基板、12…接着剤層、13…第一の回路電極、20…第二の回路部材、21…第二の基板、23…第二の回路電極、101…接続体、102…接続体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光又は熱によって硬化する硬化性樹脂と、
窒素原子を有しないモノマー単位のみから構成されるアクリル樹脂と、
を含有する接着剤組成物を含む、
回路電極を有する回路部材同士を接続するために用いられる回路接続材料。
【請求項2】
前記硬化性樹脂が、エポキシ樹脂と、加熱又は光によって活性化されて前記エポキシ樹脂を硬化させる潜在性硬化剤と、を含む、請求項1に記載の回路接続材料。
【請求項3】
前記潜在性硬化剤が、カチオン重合により前記エポキシ樹脂を硬化させる、請求項2に記載の回路接続材料。
【請求項4】
前記アクリル樹脂が、
アルキル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位と、
エポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも一種のモノマーに由来するモノマー単位と、
から構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路接続材料。
【請求項5】
導電性粒子を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路接続材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−111474(P2011−111474A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266641(P2009−266641)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】