回転ダンパ及びこの回転ダンパを具備した車輌用シート

【課題】応答性に優れた一方向にのみ制動作用を発揮する回転ダンパ及びこの回転ダンパを具備した車輌用シートを提供する。
【解決手段】流通路11を備えた隔壁部12を内部に備えたケーシングと、ケーシングの内部に回転自在に配されているとともに、ケーシングと協働してケーシングの内部を二室に区画する一対の回転翼14、15を備えた回転体16と、ケーシングの内部に収容される粘性流体Lと、回転体の一方向への回転移動に対してのみ上下方向に直交する方向に拡開して粘性流体の二室間への流動を阻止するように一対の回転翼に装着されたリップシール17と、ケーシングの開口部を閉塞する蓋体18とからなる回転ダンパ10及びこの回転ダンパ10を具備した車輌用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転動作する制御対象物、例えば車輌用シートに対して所定の制動力を与えて、その回転動作を緩衝する回転ダンパ及びこの回転ダンパを具備した車輌用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車輌用シートとしては、図27に示すように、シートクッション(座側)1とシートバック(背凭れ側)2とをヒンジ機構3で連結して、シートバック2を前後方向の所定の角度位置で傾動可能にし、所望の傾動角度でシートバック2を固定できるようにした、主にフロントシート4側に設けられたリクライニング装置や、シートクッション1Aをその前下部において車体フロア5に固定したヒンジ機構6に連結し、該ヒンジ機構6を支点にしてシートクッション1Aを鎖線1A1で示すように略90°起立させ、更に鎖線1A2で示すように略180°反転させるとともに、車体フロア5に固定されたヒンジ機構7に連結されたシートバック2Aを略90°起立させ、あるいは略180°反転したシートクッション1Aの空間位置に鎖線2A1で示すように前方に倒すことにより荷室空間を拡張できるようにした、主にリアシート8側に設けられたダブルフォールダウンシートがある。
【0003】
ところで、起立位置にあるシートバック2又は2Aの固定を解除すると、シートバック2及び2Aは、ヒンジ機構3及び6に配されたリターンばね(渦巻きばね)の付勢力により前方に急速に回転傾動する。例えば、シートクッション1又は1Aに幼児を座らせたままシートバック2又は2Aの固定解除を行なったときには、体を挟むなど幼児に大きなダメージを与えることになり、またシートクッション1又は1Aに置かれた物品等に対してもそれを損傷させる虞がある。
【0004】
上記の不具合を解決するべく、従来、車輌用シートのシートバック等の回転動作する制御対象物に対して、所定の制動力を与えてその回転動作を緩慢なものとさせ、制御対象物の急速な回転傾動を阻止するように作用する回転ダンパ(ロータリーダンパ)を前記ヒンジ機構に取り付けたもの、あるいはオイルダンパ又はエアダンパをシートクッションとシートバックとの間に取り付けたものなどが提案されている(例えば、特許文献6及び7)。
【0005】
ヒンジ機構に取り付けられる回転ダンパは、粘性流体が収容された流体室(ケーシング)内に配されるベーン(回転翼)が該流体室内を回転することにより、粘性流体の流動抵抗力を発生させるものである。このような回転ダンパとしては、ベーンが一方向にのみ制動力を発揮し得るように逆止弁を有して構成される一方向性の回転ダンパ(例えば、特許文献1乃至5)と、ベーンの回転方向を問わずに制動力を発揮し得るように逆止弁を設けないで構成される双方向性の回転ダンパとがある。
【0006】
この種の回転ダンパは、ベーンが回転することにより押圧される粘性流体が、ベーンと流体室の内周壁との僅かな隙間を通して流動する際に生じる流動抵抗力により、制御対象物の回転動作を緩慢なものとし、当該制御対象物の固定部材への衝撃的な当接を防止するものである。
【0007】
したがって、回転ダンパが発揮する制動力の大きさは、粘性流体が流動する際に通過する隙間の大きさを可変とすることによって変化させることができる。すなわち、粘性流体が流動する隙間を大きくすれば、粘性流体の流動抵抗は小さくなるので、制動力を小さくでき、また粘性流体が流動する隙間を小さくすれば、粘性流体の流動抵抗は大きくなるので、制動力を大きくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−242318号公報
【特許文献2】特開平4−282039号公報
【特許文献3】特開平5−52228号公報
【特許文献4】特開平5−263847号公報
【特許文献5】特開平7−301272号公報
【特許文献6】実開平5−34940号公報
【特許文献7】実開平7−265148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に開示されたダンパでは、ロータ本体と翼片と制御弁とが比較的大きくずれないと、粘性流体が流通する開閉通路が開閉されないという問題がある。また、特許文献2乃至5に開示されたダンパは、ロータに該ロータから放射状に延びた相対向する一対のベーンを形成し、制御弁を断面コ字状に形成し、制御弁の移動量を大きくすることにより一方向ダンパを形成しているもので、制動状態から非制動状態へ、あるいは非制動状態から制動状態へ反転するときの制御弁のベーンに対する移動距離が長くなり、応答性の悪いものであった。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、応答性に優れた一方向にのみ制動作用を発揮する回転ダンパ及びこの回転ダンパを具備した車輌用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の回転ダンパは、流通路を有する隔壁部を内部に備えたケーシングと、該ケーシングの内部に回転自在に配されているとともに、前記ケーシングと協働して前記ケーシングの内部を二室に区画する一対の回転翼を備えた回転体と、該ケーシングの内部に収容された粘性流体と、該回転体の一方向への回転移動に対してのみ該粘性流体の二室間への流動を阻止するように一対の回転翼に装着されたリップシールと、該ケーシングの開口部を閉塞する蓋体とからなることを特徴とする。
【0012】
本発明の回転ダンパによれば、回転体の急速な一方向への回転移動に伴い、一対の回転翼に装着されたリップシールは、ケーシングの内部に収容された粘性流体の流動抵抗によって該回転翼の回転移動方向に対して上下方向に直交する方向に拡開し、該リップシールとケーシングの環状底部の上面、蓋体の下面及びケーシングの円筒内周面との間に密な接触が行なわれる。該リップシールとケーシングの環状底部の上面、蓋体の下面及びケーシングの円筒内周面との間に密な接触により、一対の回転翼によって区画された二室間への粘性流体の流動が阻止され、粘性流体はケーシング内の隔壁部に形成された流通路を通って他方の室内に流入することになる。この流通路を通る際、該回転体の回転移動に対して粘性流体の大きな粘性抵抗力が作用し、回転体の急速な回転移動が阻止され、該回転体は緩やかに回転する。
【0013】
反対に、回転体の他方向への回転移動に伴い、一対の回転翼に装着されたリップシールは、粘性流体の流動抵抗によって上下方向の拡開位置から元の状態に閉鎖し、該リップシールとケーシングの環状底部の上面、蓋体の下面及びケーシングの円筒内周面との間の密な接触が解除される。リップシールとケーシングの環状底部の上面、蓋体の下面及びケーシングの円筒内周面との間の密な接触が解除される結果、回転翼によって区画された二室間への粘性流体の流動が許容され、回転体は粘性流体の抵抗をほとんど受けることなく速やかに回転する。
【0014】
本発明の回転ダンパにおいて、回転体の外周面に一体に形成された一対の回転翼には、その上下面に該回転翼を長手方向に沿って二分する係合長溝が形成され、二分された回転翼の一方の回転翼の上下面の高さは他方の回転翼の上下面の高さより低く、かつ長手方向の長さは短く形成されている。二分された回転翼の端面はそれぞれ円弧状凸面に形成されている。
【0015】
本発明の回転ダンパにおいて、前記リップシールは、略方形状の第一のシール片と、該シール片の下端の両角部において連結された一対の第二のシール片とからなり、第二のシール片は、略長方形状の板状部と該板状部の一方の短辺側の端面に形成された円弧状凹面と該板状部の一方の長辺側の端部に長手方向に沿って該円弧状凹面の近傍まで延びて形成された立壁部と板状部の裏面と立壁部の裏面との角部に形成された面取り部とを有し、該第二のシール片は、立壁部が形成された側の面を相対向させるとともに、該立壁部の長手方向の端部において該第一のシール片に連結され、該第一のシール片の内面は円弧状凹面に形成されているとともに、外面は外面から該第二のシール片の立壁部の端面にかけて円弧状凸面に形成されている。
【0016】
該リップシールは、前記上下面の高さが低く、かつ長手方向の長さが短い側の回転翼に装着されるもので、第二のシール片の一対の立壁部を回転翼の上下面に形成された係合長溝にそれぞれ係合させ、一対の板状部をそれぞれ回転翼の上下面に覆わせるとともに、第一のシール片を回転翼の端面の円弧状凸面に覆わせ、該第二のシール片の一対の円弧状凹面を回転体の帯状突出円筒部の外周面に当接させて該回転翼に装着されている。該回転翼に装着されたリップシールの第二のシール片の外面及び該第二のシール片の立壁部の端面の円弧状凸面と他方の回転翼の端面の円弧状凸面とは連続し、またリップシールの回転翼の上面を覆う第二のシール片の板状部の長手方向の端面は、回転翼の長手方向の端面よりも突出している。
【0017】
前記リップシールは、回転翼の上下面を覆う第二のシール片の板状部の長手方向の端面が回転翼の長手方向の端面よりも突出して装着されているので、ケーシングの内部に収容された粘性流体の流動抵抗により、該回転翼に装着されたリップシールの第一のシール片及び第二のシール片の板状部が回転翼の一方向の回転移動方向に対して直交する上下方向に拡開乃至閉鎖するように形成されている。そして、回転体の一方向への回転移動に伴って該回転翼に装着されたリップシールの第一のシール片及び第二のシール片の板状部が粘性流体の流動抵抗によって回転体の回転移動方向と直交する上下方向に拡開した際には、該第一のシール片の外面の円弧状凸面とケーシングの円筒内周面との間、第二のシール片の板状部とケーシングの環状底部の上面及び蓋体の下面との間に密な接触が行なわれる。第一のシール片の外面の円弧状凸面とケーシングの円筒内周面との間、第二のシール片の板状部とケーシングの環状底部の上面及び蓋体の下面との間に密な接触が行なわれる結果、一対の回転翼によって区画された二室間への粘性流体の流動が阻止され、粘性流体はケーシング内の隔壁部に形成された流通路を通って他方の室内に流入することになる。この流通路を通る際、該回転体の回転移動に対して粘性流体の大きな粘性抵抗力が作用し、回転体の急速な回転移動が阻止され、該回転体は緩やかに回転する。
【0018】
また、反対に回転体の他方向への回転移動に伴って該回転翼に装着されたリップシールの第一のシール片及び第二のシール片の板状部が粘性流体の流動抵抗によって回転体の回転移動方向と直交する上下方向の拡開位置から元の状態に閉鎖した際には、第一のシール片の外面の円弧状凸面とケーシングの円筒内周面との間、第二のシール片の板状部とケーシングの環状底部の上面及び蓋体の下面との間に密な接触が解除される。リップシールの第一のシール片の外面の円弧状凸面とケーシングの円筒内周面との間、第二のシール片の板状部とケーシングの環状底部の上面及び蓋体の下面との間に密な接触が解除される結果、粘性流体の流動が許容され、回転体は粘性流体の抵抗をほとんど受けることなく速やかに回転する。
【0019】
本発明の回転ダンパを具備した車輌用シートは、シートクッションとシートバックとの幅方向両側の連結部の一方側にリクライニング装置が設けられている車輌用シートであり、シートクッションとシートバックとの幅方向両側の連結部の他方側には、該シートバックの前方への傾動時に当該シートバックの急速な傾動速度を制動する回転ダンパが設けられ、該回転ダンパが上記回転ダンパとなる。
【0020】
本発明の回転ダンパを具備した他の車輌用シートは、シートクッションをその前下部において車体フロアに固定されたヒンジ機構に連結し、該ヒンジ機構を支点にしてシートクッションを略90°起立させ、あるいは略180°反転させるとともに、車体フロアに固定されたヒンジ機構に連結されたシートバックを略90°起立させ、あるいは略180°反転したシートクッションの空間位置に倒すことにより荷室空間を拡張できるようにしたダブルフォールダウンシートであり、前方へ傾動するシートバックのヒンジ機構に該シートバックの急速な傾動速度を制動する回転ダンパが設けられ、該回転ダンパが上記回転ダンパとなる。
【0021】
本発明の回転ダンパを具備した車輌用シートによれば、シートバックは、リクライニング装置おけるロック解除によりシートバックの前後方向の傾動が許容され、その所望の角度位置でシートバックをロック保持するように構成されている。そして、起立位置にロック保持されたシートバックに対し、ロックを解除すると、該シートバックは渦巻きばねの付勢力により急速に前方に傾動する。このとき、ケーシングにおいてシートバック側に係合され、回転体においてヒンジ機構の回転枢軸に固定された回転ダンパが作動し、当該シートバックは前方への傾動速度が制動されて急速な傾動が阻止され、該シートバックは速やかに前方へ傾動する。
【0022】
すなわち、シートバック側に係合された回転ダンパのケーシングと、ヒンジ機構の回転枢軸に固定された回転ダンパの回転体との間に相対回転が生じる。シートバックが渦巻きばねの付勢力により前方へ急速に傾動し、ヒンジ機構の回転枢軸に固定された回転ダンパの回転体は回転移動する。この回転体の回転移動により、該回転体に一体に形成された一対の回転翼も回転し、該回転翼に装着されたリップシールは、ケーシング内に収容された粘性流体の流動抵抗により第一のシール片を外方に拡開するとともに、第二のシール片の板状部を該回転体の回転移動方向に対して直交する上下方向に拡開し、該第一のシール片とケーシングの円筒内周面との間に、また第二のシール片の板状部とケーシングの環状底部の上面及び蓋体の下面との間に密な接触が生じ、回転翼によって区画されたケーシング内の二室間への粘性流体の流動が阻止され、該粘性流体はケーシング内の隔壁部に形成された流通路を流動することになる。この粘性流体が隔壁部の流通路を流動する際に大きな粘性抵抗力が作用し、該回転体の急速な回転移動が阻止される結果、該シートバックの前方への傾動は緩やかに行なわれる。
【0023】
反対に、前方への傾動位置に保持されたシートバックを起立位置に戻す際には、回転翼に装着されたリップシールは、ケーシング内に収容された粘性流体の流動抵抗により第一のシール片は元の位置に閉鎖するとともに、第二のシール片の板状部は回転体の回転移動方向に対して直交する上下方向の元の位置に閉鎖し、該第一のシール片とケーシングの円筒内周面との間の密な接触が解除されるとともに、第二のシール片の板状部とケーシングの環状底部の上面及び蓋体の下面との間に密な接触が解除され、回転翼によって区画されたケーシング内の二室間への粘性流体の流動が許容される結果、回転体は粘性流体の粘性抵抗をほとんど受けることなくシートバックの速やかな起立位置への復帰が行なわれる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、回転体の急速な一方向への回転移動に伴い該回転体の一対の回転翼に装着された第一及び第二のシール片からなるリップシールは、ケーシング内に収容された粘性流体の流動抵抗によって該回転翼の回転移動方向に対して上下方向に直交する方向及び径方向に拡開し、該リップシールの第一のシール片とケーシングの円筒内周面との間並びに第二のシール片の板状部とケーシングの環状底部の上面及び蓋体の下面との間に密な接触が行なわれ、一対の回転翼によって区画された二室間への粘性流体の流動が阻止され、粘性流体はケーシング内の隔壁部に形成された流通路を流動し、回転体の粘性流体の大きな粘性抵抗力が作用して該回転体の急速な回転移動を阻止するという応答性に優れた回転ダンパ及び該回転ダンパを具備した車輌用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の回転ダンパの一実施の形態を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の回転ダンパの平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】本発明の回転ダンパの一部切欠き底面図である。
【図6】図5のC−C線断面図で、本発明の回転ダンパにおけるリップシールの閉鎖状態を示す断面図である。
【図7】本発明の回転ダンパにおけるリップシールの拡開状態を示す断面図である。
【図8】本発明の回転ダンパにおけるケーシングの斜視図である。
【図9】図8に示すケーシングの平面図である。
【図10】図9のD−D線断面図である。
【図11】図9のE−E線断面図である。
【図12】図9に示すケーシングの底面図である。
【図13】本発明の回転ダンパにおける回転体の斜視図である。
【図14】図13に示す回転体の平面図である。
【図15】図14のF−F線断面図である。
【図16】図14に示す回転体の正面図である。
【図17】図16に示す回転体の背面図である。
【図18】図16に示す回転体の左側面図である。
【図19】図16に示す回転体の右側面図である。
【図20】図14に示す回転体の底面図である。
【図21】本発明の回転ダンパにおけるリップシールの正面図である。
【図22】図21のG−G線断面図である。
【図23】図21に示すリップシールの平面図である。
【図24】本発明の回転ダンパにおける蓋体の斜視図である。
【図25】図24に示す蓋体の平面図である。
【図26】図25のH−H線断面図である。
【図27】車輌用シートを示す説明図である。
【図28】車輌用シートのリクライニング装置を示す概略図である。
【図29】本発明の回転ダンパを具備した車輌用シートにおける回転ダンパの取付け状態を示す概略図である。
【図30】本発明の回転ダンパを具備した車輌用シートにおける回転ダンパの取付け状態を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に、本発明を、図に示す好ましい実施の形態の例に基づいて更に詳細に説明する。尚、本発明はこれらの例に何等限定されない。
【0027】
図1乃至図5に示すように、本発明の回転ダンパ10は、流通路(オリフィス通路)11を有する一対の隔壁部12及び12を内部に備えた筒状のケーシング13と、このケーシング13の内部に回転自在に配されているとともに、ケーシング13と協働して該ケーシング13の内部をそれぞれ二室R1及びR2に区画する一対の回転翼14及び15を備えた回転体16と、ケーシング13の内部に収容された粘性流体Lと、回転体16の一方向への回転移動に対して該粘性流体Lの二室R1及びR2間への流動を阻止するように作用する一対の回転翼14及び15に装着されたリップシール17と、該ケーシング13の開口部を閉塞する蓋体18とから構成されている。
【0028】
回転ダンパ10におけるケーシング13は、図8乃至図12に示すように、環状底部19と、該環状底部19の上面20の外周縁に立設された円筒立壁部21と、該環状底部19の中央部の裏面22に突設された円筒突出部23と、該円筒突出部23の内面に形成された挿通孔24と、該挿通孔24と環状肩部25を介して連通し、該環状底部19の上面20に開口する貫通孔26と、円筒立壁部21の外周面27に径方向外方に突設され、長円状の貫通孔28を備えた取付耳部29と、円筒立壁部21の端面30に該円筒立壁部21の開口部31を囲繞して形成された環状凹溝32と、該円筒突出部23の内面の挿通孔24に形成された環状凹部33を備えている。
【0029】
該ケーシング13には、該円筒立壁部21の円筒内周面34に、該挿通孔24の中心O1を挟んで相対向する一対の平面視扇形の隔壁部12及び12が環状底部19の上面20と円筒立壁部21の円筒内周面34とにわたって一体に形成されている。該隔壁部12及び12の先端部35は、前記挿通孔24と環状肩部25を介して連通する貫通孔26の直径よりも大きい直径の円弧状凹面に形成されているとともに、該隔壁部12及び12の上面36には、ケーシング13の内部に収容された粘性流体Lが流通する流通路(オリフィス通路)11及び11が形成されている。
【0030】
該ケーシング13の円筒立壁部21の端面30には、該端面30に形成された環状凹溝32の外側であって、その円周方向に沿って複数個のねじ穴37・・37が形成され、また隔壁部12及び12の先端部35側の上面36には、ねじ穴38及び38が形成されている。
【0031】
該ケージング13の円筒突出部23の挿通孔24に形成された環状凹部33にはすべり軸受39(図3参照)が嵌装される。該すべり軸受39としては、例えばポリアセタール樹脂等の熱可塑性合成樹脂からなるすべり軸受が使用されて好適である。
【0032】
上記構成からなるケーシング13及び該ケーシング13の環状底部19の上面20と円筒立壁部21の円筒内周面34とにわたって一体に形成された一対の隔壁部12及び12は、アルミニウム又はアルミニウム合金あるいは亜鉛又は亜鉛合金を使用したダイカスト鋳造法により形成されるか、合成樹脂又は補強基材入り合成樹脂を使用した射出成形法により形成される。
【0033】
回転体16は、図13乃至図20に示すように、内面に角孔(本実施の形態においては六角孔を示す。)40を有し、外面に円筒面41を有する円筒状基体42と、該円筒状基体42の外周円筒面41に該上端側に所定の幅の円筒状基体42aを残して一体に形成され、該外周円筒面41の外径よりも大きな外径を有する帯状円筒突出部43と、該帯状円筒突出部43の外周円筒面44に該角孔40の中心O2を挟んで径方向外方に相対向して突設された一対の回転翼14及び15を備えている。
【0034】
一対の回転翼14及び15の一方の回転翼14の上面45及び下面46は、前記回転体16の帯状円筒突出部43の端面47と軸方向に僅かな段部tを有し、該回転翼14の上面45及び下面46には、その長手方向に沿って平面視矩形状の係合長溝48及び49が該回転翼14の端面側に開口して形成されている。該係合長溝48及び49によって二分された回転翼14a及び14bの一方の回転翼14aの上面45aから下面46aの高さh1は、他方の回転翼14bの上面45から下面46にかけての高さh2よりも低く(h1<h2)形成されている。また、一方の回転翼14aの径方向の長さl1は、他方の回転翼14bの径方向の長さl2よりも短く(l1<l2)形成され、該回転翼14aの端面50及び回転翼14bの端面51は円弧状凸面に形成されている。該回転翼14bの端面51に形成された円弧状凸面は、前記ケーシング13の円筒立壁部21の円筒内周面34に摺接するべく該円筒内周面34の曲率と同じ曲率に形成されている。
【0035】
同様に、一対の回転翼14及び15の他方の回転翼15の上面52及び下面53は、前記回転体16の帯状円筒突出部43の端面47と軸方向に僅かな段部tを有し、該回転翼15の上面52及び下面53には、その長手方向に沿って平面視矩形状の係合長溝54及び55が該回転翼15の端面側に開口して形成されている。該係合長溝54及び55によって二分された回転翼15a及び15bの一方の回転翼15aの上面52aから下面53aにかけての高さh1は、他方の回転翼15bの上面52から下面53にかけての高さh2よりも低く(h1<h2)形成されている。また、一方の回転翼15aの径方向の長さl1は、他方の回転翼15bの径方向の長さl2よりも短く(l1<l2)形成され、該回転翼15aの端面56及び回転翼15bの端面57は円弧状凸面に形成されている。該回転翼15bの端面57に形成された円弧状凸面は、前記ケーシング13の円筒立壁部21の円筒内周面34に摺接するべく該円筒内周面34の曲率と同じ曲率に形成されている。
【0036】
回転体16は、円筒状基体42の外周円筒面41を前記ケーシング13の円筒突出部23の内面に形成された挿通孔24に、図3に示すように、該挿通孔24の環状凹部33に嵌装されたすべり軸受39を介して挿通させるとともに、該挿通孔24と貫通孔26とを連通する環状肩部25に嵌着されたOリングP1に該回転体16の帯状円筒突出部43の下端側の端面47aを密接させて該ケーシング13の内部に配されている。
【0037】
上記構成からなる一対の回転翼14及び15を一体に備えた回転体16は、例えばポリアセタール樹脂等の熱可塑性合成樹脂あるいは補強基材入り熱可塑性合成樹脂を使用した射出成形法により形成される。
【0038】
一対の回転翼14及び15に装着されるリップシール17は、図21乃至図23に示すように、略方形状の第一のシール片58と、該第一のシール片58の下端の両角部59及び59において連結された一対の第二のシール片60とからなり、該リップシール17は、例えばポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂等を用いて射出成型法により形成される。
【0039】
第二のシール片60は、略長方形状の板状部61と該板状部61の一方の短辺側の端面62に形成された円弧状凹面63と該板状部61の一方の長辺側の端部に長手方向に沿って該円弧状凹面63の近傍まで延びて形成された立壁部64と板状部61の裏面と立壁部64の裏面との角部に形成された面取り部65とを有し、第二のシール片60は、立壁部64が形成された側の面66を相対向させるとともに、立壁部64の端部において前記第一のシール片58の下端の両角部59及び59に連結され、第一のシール片58の内面67は前記回転翼14aの端面50及び15aの端面56に形成された円弧状凸面の曲率と同じ曲率の円弧状凹面に形成されているとともに、外面68は外面68から第二のシール片60の板状部61の端面にかけて連続する円弧状凸面に形成されている。
【0040】
該リップシール17は、第二のシール片60の相対向する一対の立壁部64及び64を
、一対の回転翼14の上面45及び下面46に形成された係合長溝48及び49並びに回転翼15の上面52及び下面53に形成された係合長溝54及び55にそれぞれ係合させ、一対の板状部61及び61を回転翼14aの上面45a及び下面46a並びに回転翼15aの上面52a及び下面53aに覆わせ、第一のシール片58の内面67の円弧状凹面を回転翼14aの端面50及び回転翼15aの端面56の円弧状凸面にそれぞれ覆わせて回転翼14a及び回転翼15aに装着されている。回転翼14aの端面50の円弧状凸面及び回転翼15aの端面56の円弧状凸面を覆うリップシール17の第一のシール片58の外面68から第二のシール片60の立板状部61の端面にかけて連続する円弧状凸面は、回転翼14bの端面51に形成された円弧状凸面及び回転翼15bの端面57に形成された円弧状凸面にそれぞれ連続した円弧状凸面を形成し、連続した円弧状凸面がケーシング13の円筒立壁部21の円筒内周面34に摺接する。
【0041】
回転翼14a及び回転翼15aに装着されたリップシール17において、図6に示すように、第二のシール片60の一対の板状部61及び61の他方の長辺側の端面69及び69は、回転翼14aの上面45a及び下面46aの幅w1並びに回転翼15aの上面52a及び下面53aの幅w1よりも突出して装着されているとともに、該回転翼14aの上面45a及び下面46aを覆った板状部61及び61の上下面は、回転翼14bの上面45及び下面46及び回転翼15bの回転翼15bの上面52及び下面53とそれぞれ面一にして装着されている。
【0042】
回転翼14a及び回転翼15aに装着されたリップシール17は、回転翼14aの上面45a及び下面46a並びに回転翼15aの上面52a及び下面53aを覆う第二のシール片60の一対の板状部61及び61の端面が回転翼14aの上面45a及び下面46aの幅w1並びに回転翼15aの上面52a及び下面53aの幅w1よりも突出して装着されているので、図4に示す回転体16に矢印X方向(反時計回り方向)の急速な回転移動が生じた場合、ケーシング13の内部に収容された粘性流体Lの流動抵抗により第二のシール片60の一対の板状部61及び61の端面69及び69は、図7に示すように、回転翼14a及び回転翼15aの回転移動方向に対して直交する上下方向に回転翼14の上面45及び下面46並びに回転翼15の上面52及び下面53と回転体16の帯状円筒突出部43の端面47との軸方向の段部tの距離に相当する量だけ拡開するとともに、第一のシール片58は径方向外方に拡開する。この第二のシール片60の一対の板状部61及び61の端面69及び69の上下方向への拡開により、該板状部61及び61の端面69及び69はケーシング13の環状底部19の上面20及び蓋体18の下面74に密に接触し、また第一のシール片58の径方向外方への拡開により、第一のシール片58の外面68の円弧状凸面はケーシング13の円筒内周面34に密に摺接するように形成されている。
【0043】
反対に、図4に示す回転体16に矢印Y方向(時計回り方向)の回転移動が生じた場合、回転体16の回転移動に伴って回転翼14aの上面45a及び下面46a並びに回転翼15aの上面52a及び下面53aを覆って装着され、ケーシング13の環状底部19の上面20及び蓋体18の下面74に密に接触したリップシール17の第二のシール片60の板状部61の端面69及びケーシング13の円筒内周面34に密に摺接した第一のシール片58は、粘性流体Lの流動抵抗により拡開位置から閉鎖してそれぞれの密な接触が解除されるように形成されている。
【0044】
ケーシング13の円筒立壁部21の開口部31を覆って配される蓋体18は、図24乃至図26に示すように、円板状の基板70と、内面に貫通孔71を有して該基体70の中央部に突出する円筒突部72と、該貫通孔71と環状肩部73を介して拡径し下面74に開口する係合孔75と備え、該基板70の外周縁には円周方向に沿って複数個の孔76・・76が形成されているとともに、該基板70の円筒突部72を挟んで相対向する位置に一対の取付孔77及び77が形成されている。
【0045】
図1乃至図3に示すように、蓋体18は、ケーシング13の円筒立壁部21の開口部31を覆い、下面74を該円筒立壁部21の端面30の環状凹溝32に嵌着されたOリングP2に密接させ、回転体16の円筒状基体42aを貫通孔71に挿通させ、環状肩部73を帯状円筒突出部43の上端側の端面47に嵌着されたOリングP3に密接させて配置するとともに、外周縁の複数個の孔76・・76をケーシング13の円筒立壁部21の端面30のねじ穴37・・37に合致させてねじ78・・78を螺合し、一対の取付孔77及び77をケーシング13の隔壁部12及び12に合致させ、ねじ79及び79の鍔部79aと取付孔80との間にOリングP4を介してねじ79及び79を螺合して該ケーシング13に固定される。
【0046】
上記構成からなる蓋体18は、前記ケーシング13と同様、アルミニウム又はアルミニウム合金あるいは亜鉛又は亜鉛合金を使用したダイカスト鋳造法により形成されるか、合成樹脂又は補強基材入り合成樹脂を使用した射出成形法により形成される。
【0047】
前記ケーシング13の円筒内壁部21の内面に収容される粘性流体Lとしては、100から1000センチストークス(cSt)のシリコン油が好適であるが、これに限定されない。
【0048】
上述した構成からなる回転ダンパ10において、図4に示す回転体16に急速な矢印X方向の回転移動が生じた場合、回転体16に一体に形成された一対の回転翼14及び回転翼15も回転移動し、係合長溝48及び49並びに係合長溝54及び55で二分された一対の回転翼14及び回転翼15の一方の回転翼14a及び回転翼15aに装着されたリップシール17の第二のシール片60の板状部61及び61の端面69及び69は、ケーシング13の円筒内壁部21の内面に収容された粘性流体Lの流動抵抗によって該回転翼14a及び回転翼15aの回転移動方向に直交する上下方向に回転翼14の上面45及び下面46並びに回転翼15の上面52及び下面53と回転体16の帯状円筒突出部43の端面47との軸方向の段部tの距離に相当する量だけ拡開するとともに、リップシール17の第一のシール片58は径方向外方に拡開する。この第二のシール片60の板状部61及び61の端面69及び69の上下方向への拡開により、該板状部61及び61の端面69及び69はケーシング13の環状底部19の上面20及び蓋体18の下面74に密に接触し、また第一のシール片58の径方向外方への拡開により、第一のシール片58の外面68の円弧状凸面はケーシング13の円筒内周面34に密に摺接する。
【0049】
該リップシール17の第二のシール片60の板状部61及び61の端面69及び69とケーシング13の環状底部19の上面20及び蓋体18の下面74との密な接触及び第一のシール片58の外面68の円弧状凸面とケーシング13の円筒内壁部21の円筒内周面34との密な摺接により、回転翼14及び回転翼15によって区画された二室R1及びR2間への粘性流体Lの流動が阻止され、室R2内の粘性流体Lはケーシング13内の隔壁部12及び12に形成された流通路11及び11を通って室R1内に流入することになる。この流通路11及び11を通る際、回転体16の回転移動に対して粘性流体Lの大きな粘性抵抗力が作用し、回転体16の急速な回転移動が阻止され、該回転体16は緩やかに回転する。
【0050】
反対に、図4に示す回転体16に矢印Y方向(時計回り方向)の回転移動が生じた場合、回転体16の回転移動に伴って回転翼14aの上面45a及び下面46a並びに回転翼15aの上面52a及び下面53aを覆って装着され、ケーシング13の環状底部19の上面20及び蓋体18の下面74に密に接触したリップシール17の第二のシール片60の板状部61及び61の端面69及び69並びにケーシング13の円筒立壁部21の円筒内周面34に密に摺接した第一のシール片58の外面68の円弧状凸面は、粘性流体Lの流動抵抗により拡開位置から閉鎖してそれぞれの密な接触が解除され、粘性流体Lは室R2からR1への流動が許容され、回転体16は粘性流体Lの抵抗をほとんど受けることなく速やかに回転する。
【0051】
ケーシング13に対して回転体16の中心O2回りの一方向の相対的な回転移動を制動するように構成されている以上の回転ダンパ10を、例えば前記した図27に示すような車輌用シートに用いてもよい。すなわち、第一の例の車輌用シートはフロントシート4で、シートクッション1とシートバック2とをヒンジ機構3で連結して、シートバック2を前後方向の所定の角度位置で傾動可能にし、所望の傾動角度でシートバック2を固定できるようにしたフロントシート4の幅方向両側の連結部の一方側にリクライニング装置100(図28参照)が設けられ、他方側に回転ダンパ10(図29参照)が設けられている。
【0052】
リクライニング装置100は、シートバック2に固定された可動ヒンジブラケット101と、シートクッション1に固定された固定ヒンジブラケット102と、該可動ヒンジブラケット101と固定ヒンジブラケット102を連結するヒンジ機構3の回転枢軸103と、一方の端部が該可動ヒンジブラケット101に固設された固定ピン104に係合固定され、他方の端部が回転枢軸103に固定されてシートバック2の前方(図27及び図28中の矢印Z1方向)への傾動を付勢する渦巻きばね105と、可動ヒンジブラケット101の下端部に形成されたギヤ106と、該ギヤ106に噛合し固定ヒンジブラケット102に固定されたラチェットギヤ107と、ラチェットギヤ107の近傍とコイルばね108を介して連結された操作レバー109とから構成されている。そして、操作レバー109を持上げてギヤ106とラチェットギヤ107の噛合によるロックを解除することにより、シートバック2を後方に傾動させることができ、またシートバック2を前方へ付勢するように設けられた渦巻きばね105の付勢力によりシートバック2が後方から前方へ傾動する構造であり、持上げられた操作レバー109を放すと再びロックがかかるものである。
【0053】
シートクッション1とシートバック2との幅方向両側の連結部の他方側に設けられた回転ダンパ10は、シートバック2に固定された可動ヒンジブラケット101に固設された固定ピン115に該回転ダンパ10を形成するケーシング13の取付耳部29の長円状の貫通孔28を係合させ、可動ヒンジブラケット101と固定ヒンジブラケット102とを連結するヒンジ機構3の回転枢軸103の六角軸部111に該回転ダンパ10を形成する回転体16の角孔40を嵌合固定することにより、シートクッション1とシートバック2との幅方向の他方側の連結部に取り付けられている。
【0054】
上記した本発明の回転ダンパ10を具備したフロントシート4によれば、回転枢軸103とリクライニング装置100とで支持されたシートバック2は、リクライニング装置100の操作レバー109によるロック解除により、シートバック2の前後方向の傾動が許容され、その所望の角度位置で操作レバー109を放すことにより再びロック保持される。そして、起立位置にロック保持されたシートバック2に対し、操作レバー109によりロック保持を解除すると、該シートバック2は渦巻きばね105のばね付勢力により急速に前方(図27及び図28中の矢印Z1方向)に傾動する。このとき、ケーシング13の取付耳部29においてシートバック2の可動ヒンジブラケット101に固設された固定ピン115に係合され、ケーシング13の円筒立壁部21の内部に配された回転体16の角孔40において可動ヒンジブラケット101と固定ヒンジブラケット102とを連結する回転枢軸103の六角軸部111に嵌合固定された回転ダンパ10が作動する。
【0055】
すなわち、取付け耳部29の長円状の貫通孔28がシートバック2の可動ヒンジブラケット101に固設された固定ピン115に嵌合し、該シートバック2が渦巻きばね105の付勢力により前方へ傾動すると同時に該固定ピン115が長円状の貫通孔28内を移動し、該貫通孔28の内壁に当接することにより、回転枢軸104の六角軸部111に嵌合固定された回転ダンパ10を形成する回転体16が回転移動する。この回転体16の回転移動により、該回転体16に一体に形成された一対の回転翼14及び回転翼15も回転移動し、係合長溝48及び49並びに係合長溝54及び55で二分された一対の回転翼14及び回転翼15の一方の回転翼14a及び15aにそれぞれ装着されたリップシール17の第二のシール片60の板状部61及び61の端面69及び69は、ケーシング13の円筒内壁部21の内面に収容された粘性流体Lの流動抵抗によって該回転翼14a及び回転翼15aの回転移動方向に直交する上下方向に回転翼14の上面45及び下面46並びに回転翼15の上面52及び下面53と回転体16の帯状円筒突出部43の端面47との軸方向の段部tの距離に相当する量だけ拡開するとともに、リップシール17の第一のシール片58は径方向外方に拡開する。この第二のシール片60の板状部61及び61の端面69及び69の上下方向への拡開により、該板状部61及び61の端面69及び69はケーシング13の環状底部19の上面20及び蓋体18の下面74に密に接触し、また第一のシール片58の径方向外方への拡開により、第一のシール片58の外面68の円弧状凸面はケーシング13の円筒内周面34に密に摺接する。
【0056】
該リップシール17の第二のシール片60の板状部61及び61の端面69及び69とケーシング13の環状底部19の上面20及び蓋体18の下面74との密な接触及び第一のシール片58の外面68の円弧状凸面とケーシング13の円筒内壁部21の円筒内周面34との密な摺接により、回転翼14及び回転翼15によって区画された二室R1及びR2間への粘性流体Lの流動が阻止され、室R2内の粘性流体Lはケーシング13内の隔壁部12及び12に形成された流通路11及び11を通って室R1内に流入することになる。この流通路11及び11を通る際、回転体16の回転移動に対して粘性流体Lの大きな粘性抵抗力が作用し、回転体16の急速な回転移動が阻止され、回転体16を嵌合固定した回転枢軸103に支持されたシートバック2の前方への緩やかな傾動が行なわれる。
【0057】
また、シートバック2を前方への傾動位置から起立位置に起こす場合は、回転体16の回転移動に伴って回転翼14aの上面45a及び下面46a並びに回転翼15aの上面52a及び下面53aを覆って装着され、ケーシング13の環状底部19の上面20及び蓋体18の下面74に密に接触したリップシール17の第二のシール片60の板状部61及び61の端面69及び69並びにケーシング13の円筒立壁部21の円筒内周面34に密に摺接した第一のシール片58は、粘性流体Lの流動抵抗により拡開位置から閉鎖され、それぞれの密な接触が解除される。その結果、粘性流体Lは室R2からR1への流動が許容され、回転体16は粘性流体Lの抵抗をほとんど受けることなく速やかに回転し、回転体16を嵌合固定した回転枢軸104に支持されたシートバック2の起立位置への復帰は速やかに行なわれる。
【0058】
第二の例の車輌用シートはリアシート8であり、前記図27に示すシートクッション1Aをその前下部において車体フロア5に固定されたヒンジ機構6に連結し、該ヒンジ機構6を支点としてシートクッション1Aを鎖線1A1で示すように略90°起立させ、更に鎖線1A2で示すように略180°反転させるとともに、車体フロア5に固定されたヒンジ機構7に連結されたシートバック2Aを略90°起立させ、あるいは略180°反転したシートクッション1Aの空間位置に鎖線2A1で示すように前方に倒すことにより荷室空間を拡張できるようにしたリアシート8側に構成されたダブルフォールダウンシートにおけるシートバック2Aのヒンジ機構7に回転ダンパ10が設けられている。
【0059】
すなわち、図30に示すように、シートバック2Aに固定された可動ヒンジブラケット101と、車体フロア5に固定された固定ヒンジブラケット102、該可動ヒンジブラケット101と固定ヒンジブラケット102を連結するヒンジ機構7の回転枢軸112と、一方に端部が該回転枢軸112にかしめ固定され、他方の端部が固定ヒンジブラケット102に固定されてシートバック2Aの前方(図27中の矢印Z2方向)への傾動を付勢する渦巻きばね113と、該回転枢軸112の六角軸部114に回転体16の角孔40を嵌合固定し、ケーシング13の取付耳部29の長円状の貫通孔28を固定ヒンジブラケット102に立設された固定ピン115に係合させて設けられた回転ダンパ10とから形成されている。
【0060】
このリアシート8においても、前記フロントシート4と同様に、起立位置にロック保持されたシートバック2Aに対し、ロック保持を解除すると、該シートバック2Aは渦巻きばね113の付勢力により急速に前方(図27中の矢印Z2方向)に傾動する。このとき、ケーシング13の取付耳部29の貫通孔28が車体フロア5に固定された固定ヒンジブラケット102に固設された固定ピン115に係合され、回転体16の角孔40が可動ヒンジブラケット101に固定された回転枢軸112の六角軸部114に嵌合固定された回転ダンパ10が作動する。
【0061】
すなわち、取付け耳部29の長円状の貫通孔28が車体フロア5に固定された固定ヒンジブラケット102に固設された固定ピン115に嵌合し、該シートバック2Aが渦巻きばね113の付勢力により前方へ傾動すると同時に該固定ピン115が長円状の貫通孔28内を移動し、該貫通孔28の内壁に当接することにより、回転枢軸112の六角軸部114に嵌合固定された回転体16が回転移動する。この回転体16の回転移動により、該回転体16に一体に形成された一対の回転翼14及び回転翼15も回転移動し、係合長溝48及び49並びに係合長溝54及び55で二分された一対の回転翼14及び回転翼15の一方の回転翼14a及び回転翼15aにそれぞれ装着されたリップシール17の第二のシール片60の板状部61及び61の端面69及び69は、ケーシング13の円筒内壁部21の内面に収容された粘性流体Lの流動抵抗によって該回転翼14a及び回転翼15aの回転移動方向に直交する上下方向に回転翼14の上面45及び下面46並びに回転翼15の上面52及び下面53と回転体16の帯状円筒突出部43の端面47との軸方向の段部tの距離に相当する量だけ拡開するとともに、リップシール17の第一のシール片58は径方向外方に拡開する。この第二のシール片60の板状部61及び61の端面69及び69の上下方向への拡開により、該板状部61及び61の端面69及び69はケーシング13の環状底部19の上面20及び蓋体18の下面74に密に接触し、また第一のシール片58の径方向外方への拡開により、第一のシール片58の外面68の円弧状凸面はケーシング13の円筒内周面34に密に摺接する。
【0062】
該リップシール17の第二のシール片60の板状部61及び61の端面69及び69とケーシング13の環状底部19の上面20及び蓋体18の下面74との密な接触及び第一のシール片58の外面68の円弧状凸面とケーシング13の円筒内壁部21の円筒内周面34との密な摺接により、回転翼14及び回転翼15によって区画された二室R1及びR2間への粘性流体Lの流動が阻止され、室R2内の粘性流体Lはケーシング13内の隔壁部12及び12に形成された流通路11及び11を通って室R1内に流入することになる。この流通路11及び11を通る際、回転体16の回転移動に対して粘性流体Lの大きな粘性抵抗力が作用し、回転体16の急速な回転移動が阻止され、回転体16を嵌合固定した回転枢軸112に支持されたシートバック2Aの前方への緩やかな傾動が行なわれる

【0063】
このように回転ダンパ10は、シートバック2又は2Aの急速な傾動に対して粘性流体Lの大きな粘性抵抗が作用して回転体16の急速な回転を阻止するという応答性に優れたものであり、シートバック2又は2Aの前方への緩やかな傾倒が行なわれることにより、シートクッション1又は1Aに幼児を座らせたままシートバック2又は2Aのロック解除を行なった時に生じる体を挟むなどの幼児への大きなダメージや、シートクッション1又は1Aに置かれた物品等の損傷等の不具合を解消することができる。
【符号の説明】
【0064】
1、1A シートクッション
2、2A シートバック
10 回転ダンパ
11 流通路
12 隔壁部
13 ケーシング
14・15、14a・15a、14b・15b 回転翼
16 回転体
17 リップシール
18 蓋体
58 第一のシール片
60 第二のシール片
L 粘性流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流通路を備えた隔壁部を内部に備えたケーシングと、該ケーシングの内部に回転自在に配されているとともに、前記ケーシングと協働して前記ケーシングの内部を二室に区画する一対の回転翼を備えた回転体と、該ケーシングの内部に収容される粘性流体と、該回転体の一方向への回転移動に対してのみ上下方向に直交する方向に拡開して該粘性流体の二室間への流動を阻止するように前記一対の回転翼に装着されたリップシールと、該ケーシングの開口部を閉塞する蓋体とからなることを特徴とする回転ダンパ。
【請求項2】
前記一対の回転翼には、その上下面に該回転翼を二分する長手方向に沿う係合長溝が形成されているとともに、二分された回転翼の一方の回転翼の上下面の高さは他方の回転翼の上下面の高さより低く、かつ長手方向の長さが短く形成され、前記リップシールは前記係合長溝に係合して該回転翼の上下面及び端面を覆ってその上下方向に開閉可能に装着されていることを特徴とする請求項1に記載の回転ダンパ。
【請求項3】
前記リップシールは、略方形状の第一のシール片と、該シール片の下端の両角部において連結された一対の第二のシール片とからなり、該第二のシール片は、略長方形状の板状部と該板状部の一方の短辺側の端面に形成された円弧状凹面と該板状部の一方の長辺側の端部に長手方向に沿って該円弧状凹面の近傍まで延びて形成された立壁部と前記板状部の裏面と前記立壁部の裏面との角部に形成された面取り部とを有し、該第二のシール片は、前記立壁部が形成された側の面を相対向させるとともに、該立壁部の長手方向の端部において該第一のシール片に連結され、該第一のシール片の内面は円弧状凹面に形成されているとともに、外面は外面から該第二のシール片の前記立壁部の端面にかけて円弧状凸面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載された回転ダンパ。
【請求項4】
前記リップシールは、第二のシール片の一対の立壁部を一対の回転翼の一方の回転翼の上面及び下面に形成された係合長溝及び一対の回転翼の他方の回転翼の上面及び下面に形成された係合長溝にそれぞれ係合させ、一対の板状部において上下面の高さが低い側の回転翼の上面及び下面をそれぞれ覆うとともに、前記第一のシール片において上下面の高さが低い側の回転翼の端面をそれぞれ覆っており、該上下面の高さが低い側の回転翼の上面及び下面を覆う板状部の長手方向の端面は、上下面の高さが低い側の回転翼の上面及び下面の長手方向の端面よりも突出して装着され、該第一のシール片の端面の円弧状凸面は、前記一対の回転翼の他方の回転翼の端面の円弧状凸面と連続していることを特徴とする請求項3に記載の回転ダンパ。
【請求項5】
シートバックとシートクッションとの幅方向両側の連結部の一方側にリクライニング機構が設けられている車輌用シートであって、前記シートバックと前記シートクッションとの幅方向両側の連結部の他方側には、前記シートバックに固定された可動ヒンジブラケットに固設された固定ピンに前記ケーシングの取付け耳部の長円状の挿通孔を嵌合させ、前記可動ヒンジブラットと固定ヒンジブラケットとを連結する回転枢軸の角棒部に回転体の角孔を嵌合固定させた請求項1から4のいずれか一項に記載の回転ダンパが取付けられていることを特徴とする車輌用シート。
【請求項6】
シートクッションをその前下部において車体フロアに固定されたヒンジ機構に連結し、該ヒンジ機構を支点として前記シートクッションを略90°起立させ、更に略180°反転させるとともに、前記車体フロアに固定されたヒンジ機構に連結されたシートバックを略90°起立あるいは略180°反転した前記シートクッションの空間位置に前方に倒すことにより荷室空間を拡張できるようにしたダブルフォールダウンシートにおけるシートバックのヒンジ機構に請求項1から4のいずれか一項に記載の回転ダンパが取り付けられていることを特徴とする車輌用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−47311(P2012−47311A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192182(P2010−192182)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000103644)オイレス工業株式会社 (384)
【Fターム(参考)】